ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部
――加東圭子。その別名は『レベッカ・リー』。レベッカとしての通称はレヴィ。21世紀頃の日本の漫画のヒロインの姿と性格を『借りた』ケイのもう一つの姿。それを初めて見せたのは、ダイ・アナザー・デイ作戦が終わった後の総括だった――
――45年 501新基地――
「入り給え、大佐」
「んじゃ、失礼して」
ガランドに促され、作戦室に入る一人の女性。口にタバコを咥え、ホットパンツ、黒のタンクトップ、巨乳、肩のタトゥー。どう贔屓目に見ても堅気には見えない風貌だった。
「諸君に伝えなくてはならぬことがある。この女性は加東圭子大佐が自己の能力で変身した姿である。彼女は『グランウィッチ』への覚醒者なのだ」
場がどよめく。圭子は『落ち着いた、包容力のある大人の女性』と言える風貌であったからで、それとまるっきり別人だからだ。
「あ、あの、大佐、タバコをおおっぴらに吸うのはどうかと」
リーネがたしなめると、圭子、いや、レヴィはパッケージをリーネへ放り投げた。
「これ、薬だぜ?喉の。変身する様になった始めのころ怒鳴りすぎてソーヤーみたいな声に成りそうになってな、それ以来愛用してんだわ」
サラッと言ってのけるレヴィ。そして、今の姿での仮の名前を告げる。
「今は加東圭子じゃない。中華系リベリオン人の『レベッカ・リー』。レヴィと呼んでくれ」
「えぇ〜〜!?」
「そんなに驚くことか?ガキ共」
「その態度、扶桑海の時に見た……。それが貴方の素なんですか?」
「素と言えば素だな。あん時は元の姿だったがな。竹井、覚えてたのか」
「え、ええ…。なんとなくですけど……。貴方のその言動で完全に」
「気遣いばっかしてると、肩がこってな。お前にはわりぃが、性格的にプロパガンダには向かねぇから、あたしは特に補正が強かったわけだ。でもケイだって素ではあるんだぜ?要するに、どっちもあたしの本質っつーわけだ」
「その格好はなんですの?目のやり場に困りますわ」
「そうか、この時代のセンスじゃ理解できねぇか。21世紀以降じゃ、割と普通のセンスだぜ、ペリーヌ」
この時代、サブリナパンツすら無いような時代である上、ウィッチ世界は女性の下着に関する文化が根本的に未来世界とは異なる。が、それでもレヴィの服装は過激と取られたようだ。
「大佐は、この姿である時は『二丁拳銃』の異名を持つほどの名うての銃使いだ。元から電光の異名を取っていたのは知っているな?この姿である時はそれから打って変わって、『銃を主に使う接近戦を主体にした』戦法を用いるプロだ」
「でも、それは人を殺すための技能ですよね?怪異との戦いには必要とは……」
「リーネさん、貴方。まだ……!」
「言わせてやれ、ペリーヌ。ガキ共の多くは今の状況を『墓場の骸骨』共とタンゴってるほど異常って思ってるらしいからな」
レヴィの目は、圭子としての目とは全く異なる性質を暗に示している。それは若手の多くが怯えるほどである。臆さずに意見を言うリーネは、ある意味では賞賛されるべきだろう。
「貴方は確かに、人を殺すための技能では群を抜いている。だけど、それは私達本来の存在理由とは関係ない、いえ、相容れないように思えます」
「存在理由か。確かに、近代に入ってからは『ウィッチ同士が互いに剣や銃を向けた』事例は無かった。が、それは静御前や森蘭丸に対する侮辱か?」
「え……?」
「ジャンヌ・ダルクはウィッチとして間違ってるらしいぞ?ペリーヌ」
「リーネさん、知らないんですの?ジャンヌ・ダルクのことを」
「え、その、あの…」
「お前の国の歴史の授業はどうなっとるんだ?これじゃのび太の時代の小学生の方がマシだ」
呆れるレヴィ。扶桑/日本はかなり歴史の授業を行っているし、必須科目だ。そんなことは、のび太でさえ知っている。
「私はその、あの、そんなつもりじゃ」
「勇気は認めるが、勉強不足だな。のび太でさえ知ってるぞ、そんな事」
あしらうレヴィ。リーネは赤面して黙り込む。
「お前は歴史の講習に参加すべきだな。場所が場所なら、晒し者級の赤っ恥だぞ」
リーネをあしらったレヴィは、ダイ・アナザー・デイ作戦で援軍に来た若本の質問に応える。
「グランウィッチっつー事は転生してんだよな、えーと、レヴィさん」
「そういうことだ、ガキンチョ」
「いつまでもガキンチョ扱いやめろよ!俺だって200機は落としたんだぜ!?」
「綾香が、まっつぁんから『ボウズ』って言われてんだろ?それと同じだ。それに、そんなんじゃ半分にもならねえ、転生前だって生涯戦果四桁で船だけでもエースだったんだ、今回は五桁のスコア目指すつもりだしよ」
「ずりぃーよ、ずりぃーよそれぇ!、俺は前史と今回合わせても250とちょいなんだぞ〜!」
「お前とあたしじゃ、差が出て当たり前だ。お前は今回が初めての転生らしいが、あたしは二回してるんだ。数が違うぜ。連邦の遠征部隊に参加すりゃ半年で三桁狙えるぞ?その内、銀河大戦起きるから待ってろ」
「ちぇーっ」
「あの、作戦中にいた貴方の娘さんという人は?」
「養子だ。兄貴の孫を引き取ったのさ。転生してるから、タイムマシンで来てもらってた。何だったら、下原。お前の孫でも呼ぶか?」
「えぇ!?」
「あたし達は予定が立て込んでてな。今度は23世紀で暗黒星団帝国との戦いが待ってるから、そっちに行かなきゃならねぇ。もし、意志があるんなら、あたしらについていくか?もう直枝、芳佳、邦佳、真美、ハインリーケ、義子は荷物を纏め始めてるはずだ」
レイブンズの『側近』のグランウィッチの一例であった。ラ號が23世紀に召還される一週間後を目指し、グランウィッチらはデザリアム戦役に備えての準備を進めている。それにはカールスラント勢の過半数が含まれ、行けないのが判明しているミーナ以外の殆どはデザリアム戦役に従軍する。
「行くのを強制はしない、好きにしろ。だが、これだけは覚えとけ。今の状況を『墓場の骸骨とタンゴってろ』と侮蔑して、お前らが信じてきた道を歩もうとしても、世界はもう変わり始めてるって事をよぉ」
それは、レヴィとしての皮肉であった。前史でも今回でもそうだが、若手からの批判に晒されてきた事がそうさせるのか、若手には冷ややかだった。それは事情を知る者であっても、薄ら恐ろしさを感じさせ、事情を知らぬ者には恐怖を煽った。
「戦争が嫌なら白旗持って突っ立ってろ、どっかに連れていかれて気が付きゃお星様になってるさ」
最後にそう言って終えた。圭子(レヴィ)はこれで何故か人気がグンと上がり、『レヴィの姉御』、『レヴィ姉様』と呼ばれるようになったとか。また、当人も普段の姿では言えないような事を気軽に言えるためか、普段はレヴィとしている方が常態となっていく。黒江と違い、姿を任務別に変えない事もあり、表向きは『黒江の友人の扶桑の駐在連絡員』という形で、野比家にも姿を見せるのだった。
――デザリアム戦役中――
「ガキ共は今頃、人間収容所に突撃かました頃か。で、どうだ、セシリア。小型化/改良されたISで生活する気分は」
「なんだか妙な気分ですわ……。各部が人と同じサイズになったためでしょうか……。なんだか、『乗っている』というよりは着ている感覚ですわね」
新生ブルー・ティアーズは連邦のパワードスーツ技術で小型化されたため、シンフォギアに近い印象を与えている。黒江とレヴィは、IS学園から鈴と入れ違いに派遣されたセシリアを鍛えていた。改造されたISは装甲服の体裁が強まっており、シンフォギアと似通った印象を与えていた。セシリアは派遣の直前、アガートラームを纏った箒、それと黒江に救われた(外見上は箒だったが)事がある。その内の前者は二回ほどあり、二回目の時は一夏も目の当たりにしている。最後の二回目は、一夏とセシリアが介入を止めようとしたところに、アリーナの観客席から躍り出、『Seilien coffin airget-lamh tron』の聖詠を唄っている。その後は独壇場と言えるほどに活躍したため、事情を知るものはマリアと箒の同調がかなりの領域に来ている事を実感させた。一夏が箒の怒りを買い、股間を蹴られたのもその時だ。
「でも、ここまで小型化できた要因はなんですの?」
「この世界の日本は元々、パワードスーツ研究がかなり進んでいてな。その関係で出来た。脹脛の後ろと背中にスラスターを纏めた分、以前より推力はむしろ上がったろうよ」
「確かに。それと歩行機能も追加された分、以前より取り回しは楽ですわ……。それとブルー・ティアーズの装備レイアウトも変わっていて、驚きましたわ」
「MSもあるから、背中の装備品のレイアウトの仕方は成熟している。背中周りはMSをかなり参考にしたそうな」
「なるほど」
「本当はビーム・サーベルを自衛用に持たせようかとなったらしいが、お前の戦闘データを解析して、射撃に特化させたほうがいいとなった」
「ええ。私は接近戦闘は苦手でして」
セシリアは接近戦は苦手で、ビームサーベルを持たせても、猫に小判であるので、追加装備として持たせる余裕はあるが、携行してはいない(シャルの場合は改良の際に追加されている)。
「シールドバッシュからの戦技組み立ては覚えておけ。今後の実戦のためにも、な」
「わかってますわ。剣でも、バヨネットならなんとか」
「そのライフルならセンサー閉じてグリップの後ろを握ればバヨネットモードだな。 長巻や槍に近い取り回しになるけど。あたしのようにトゥーハンドになれとは言わんが、狙撃頼りってのは頂けねぇぞ?」
「貴方のあの動きは信じられませんわ!正規軍人のラウラさんでも、あそこまで動けませんのよ?」
「こっちは第二次世界大戦から朝鮮戦争相当の頃の軍人だなんでな。実戦を潜り抜けてるんだよ」
タバコ型の喉の薬を咥え、アドバイスしつつ、自慢も忘れないレヴィ(圭子)。セシリアの携行しているライフルはZガンダムタイプのそれのダウンサイジング品であり、ビームバヨネットモードが有る。デザリアムとの空中戦では機会が少ないが、使用する機会はあると言い聞かせている。
「なるほど。一つお伺いしたい事が」
「なんだ?」
「貴方の出身国は何故、日本と連邦を?」
「根は一つだからな。それと、あたしらが情報を流したのさ。日本の連中の中には、あたしらの『故郷』を戦争に負けさせて、自分達が味わった辛苦と、軍備を奪われる悔しさを味わえって考えてる嫉妬深い連中が多いのさ。だから、今回は巻き込んでやったのさ。日本にも旨味の多い話なのは事実だし、戦後世代が戦前世代に持ってる、馬鹿げた優越感を打ち砕くいい機会でもあったしな」
レヴィは、日本連邦の結成に深く関与した一人である。そのため、連邦結成の目的の全てを知っている。前史での『重慶へのマスドライバー攻撃』で判明した『日本の扶桑への強烈な妬み』は根深く、扶桑が持つ『現存天守』などの国宝、旧中島地区などの消えた街。戦前の規模の皇室と旧華族の現存、戦前期の高い国際発言力、自前で出せる世界有数の軍事力。それらへの嫉妬が重慶へのマスドライバー攻撃の補助として具現化した。今回は日本全体を陣営に取り込むことで、戦争当事国にする事で裏切りを抑止する。それも目的の一つだった。
「かなり揉めたぞ。2000年からの数年で合意寸前だったのに、政権交代で精査し直しとかぬかしやがった上、軍備の整理って名目で、ウチの軍隊の解体を要求してきたんだぞ」
「あの総理大臣の時代じゃ仕方ありませんわ。理想主義者でしたから」
レヴィは、元の姿でその場に居合わせ、後で鳩山一郎に当たり散らした事があるらしく、一時的な政権交代が起こった時代の日本は腹立たしいらしい。結局、総理大臣の交代に伴う数回の変遷(扶桑での暴動含む)を経て、扶桑の軍備は保全された(暴動に怯えた日本の関係者は『し、少年兵の事はきちんとやってください……』と言うのが精一杯だったとか)。.だが、問題は山積していた。現役ウィッチの待遇変化への不満からの自主退役、14歳以下の者達の取り扱いと軍階級問題(戦功で少佐にまで登りつめた者も中にはいたため、それら高位の者達を一気に『曹長』にまで落とすわけにもいかなかった)の解決(勤務階級の維持の大義名分の確保と実階級の調整が難航した)も大きな問題だった。結果、対象が危険の大きい任務を実行する部署(ウィッチ)である事から、『勤務階級手当』を支給し、その時点での賃金を保証する事と、佐官であるものは、下がる実階級を調整し、教育完了と同時に中尉にすることで落ち着いたという。
「で、その時は大いに揉めて、軍艦の改装引受の縮小の提言も外交問題になったし、どんどん科学技術や戦訓が入るから、現場のほうが対応しきれてない。騎兵の名残りで軽戦車スキーも多いからな」
「ああ、それはあの方(黒江の事)も言っておられましたわ。でも、時間の流れが違うのでは?」
「この世界のこの時点の技術なら、時空と多元宇宙論研究の成果で、お互いの時間のズレはある一定は補正できるんだが、それでも時差は週間単位で出るからな。あたしの世界から21世紀日本に行く場合は、日付を一週間はずらして見積もる必要がある。渡航は自由だったんだが、問題が起こったから、渡航を制限した時期がある」
「問題?」
「ああ。21世紀人の多くが無自覚に動いたんだよ。あたしらの世界を自分たちの思いのままにしようとして、メチャクチャに動いて、遂にはロシア革命が成功寸前にまでなっちまった。そこで一般人の渡航を制限したそうだ」
21世紀とウィッチ世界の行き交いは、ロシア革命の一件が日本とオラーシャで外交問題になりかけた事で、一時的に制限されている。ウィッチ世界の国際連盟の依頼を受けた、21世紀の国際連合が問題の解決のため、仲介に動き、全世界の国々にウィッチ世界との安易な行き交いと、ウィッチ世界への過度の干渉をやめるように働きかけた(未来世界の記録では、この時の働きかけが地球連邦政府の構想が生まれるきっかけの一つともされる)。その為、2017年を迎える頃には、お互いの軍人や政府関係者などが主に定期便で行き交う程度に落ち着いていた。(扶桑が戦時に突入していった事もあるが)
「世界が違う国と連邦国家というのは無茶なように思えますもの。当然ですわね」
「お前も知ってんだろうが、日本が21世紀の始めの頃に抱えてた問題は深刻だった。この世界の日本は藁にもすがる思いで、連邦国家って選択にすがりついたんだ。所謂、パンドラの箱って奴だ」
「その結果は成功なのですか?」
「後から見れば…か?21世紀中頃の時空融合現象で途絶えて、100年近くは断絶してたって事になるからな。無理矢理感強いが、歴史の辻褄は合ってた事になるらしいが」
「かなり強引ですわね‥…」
「私からもそう思えるが、実際にそうなってるんだから、そうなんだろう。今の時点からなら、時空管理局も行き交いしてる分、ある程度は分別をわきまえてるしな」
23世紀人と21世紀人の意識の違い。それに巻き込まれたのも、ウィッチ世界の悲劇であるかもしれない。そもそもの始まりはティターンズ残党の行為にあるため、23世紀人は21世紀人にあまり強く言えない。(とりわけ日本人はオラーシャ革命騒ぎの主犯格の一人を出した事になるため)
「この時代の人間達も、時空関連の理論はまだ、統合戦争で散逸した資料の復元を進めてる段階だしな。わからんところは多い。だから、時空管理局とも連携しているんだ」
ウィッチ世界は『異なる世界』であるとする意識を持たない21世紀の人々が主に招いた混乱の責任を取る目的も、日本にはあったのかもしれない。最終的に連邦国家結成を政府が選んだのも、扶桑にもたらした損害を精神的にも補償したいという償いの意識も作用したのだろう。扶桑に倫理観の変容を強いるのもあり、表向きは『償い』が日本の外交アピールになったが、扶桑としても『問題を有耶無耶にして、戦時が間近だし、早く三自衛隊の助けを借りたい』が本音であり、目的の半分は利害の一致だったりしている。
「で、あたしらが23世紀にいるのは、23世紀と結んだ盟約だから、これまたややこしい。今は事情が分かったから、実質的に地球連邦の指示で動いてるがな」
レヴィもそのあたりは苦笑いだ。地球連邦が日本連邦関連の記録と記憶を取り戻したので、自動的に地球連邦軍の指揮下になったというややこしい事情がある。日本連邦軍籍が自動的に地球連邦軍の籍に移行していたとされたためだ。
「ややこしくありませんか?」
「あたしもそのあたりは詳しくは知らんが、今は地球連邦がウィッチ世界の防衛を担ってる事になってるのは確かだ」
日本連邦は地球連邦政府がそれ関連の記憶と記録を取り戻してからは、地球連邦の加盟国と見なされ、扶桑軍は移民星系軍と同様の扱いで、地球連邦軍の配下となった。従って、レヴィ(圭子)達も連邦軍人の扱いに移行したわけだ。
「これも、時空融合現象の名残りでしょうか」
「だろうな。今のあたし等は地球星間連邦宇宙軍に属している事になってるから、色々とややこしい身分なわけだ。
「ややこしいですわね。それと、何を見ているのですか?」
「時計だ。ガキ共の事が気になるんだよ。V3とXがついているから、まぁ大丈夫だろうが」
レヴィは元の姿での優しさも、時たま垣間見せる。そこもまた、元の世界での部下からの人気の理由だろう。
「貴方はガンクレイジーなだけじゃないのですね」
「部下をまとめるにゃ、アメとムチだ。そうでなきゃ、大佐まで出世するかよ」
見かけはナイスバディな戦闘狂美女だが、ケイとしての優しさも忘れてはおらず、口調はどきついが、優しさを見せるべき時には見せられる。それが彼女なのだろう。『姉御』と菅野や西沢からは慕われ、真美からは、ケイの時の場合のプライベートの時は『圭姉様』、レヴィとしては『レヴィ姉様』と呼ばれている。セシリアに見せた『優しさがどことなく感じられる微笑み』は『レヴィとして見せられる範囲での優しさの表現』であったのかも知れない。
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