ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部
――黒江達と同じく、転生を繰り返した存在である『不動明/デビルマン』。元々はデビルマン軍団とデーモン族のハルマゲドンが起こった世界で死亡したが、神々に『ルシファー/サタン』を阻止できる者として見出された結果、転生を繰り返す存在となった。そしてヒーローとしてのデビルマン像が確立されると、その姿で通すことになった。したがって、未来世界でのデビルマンは青緑色の肌で、ヒーロー然とした姿だが、元々は肌色で、より生物的な姿。デーモン族の勇者『アモン』の風貌を色濃く残していた。アモン自体、デーモン族の中でも上位の種族であり、元々は牙を持つワタリガラスの頭の人型のデーモン族であったが、ヤギとコウモリなどを取り込んだ結果、生まれた存在である。この合体を辿り、人型に近くなったデーモン族は強大な戦闘力を持てるようで、アモン以前には『妖獣ゴッド』がアモン同様の経緯でほぼ同じ容貌に行き着き、悪魔王ゼノンの親衛隊隊長に登りつめている。(アモンの上役だったらしい)ゴッドより遥かに若く、血気盛んなデーモンであったアモンだが、出世のために、上役にへつらうという側面もあった。しかしながら、不動明に乗っ取られた後においては卑屈な面は消え、血気盛んな面が明に受け継がれ、不動明の好戦的な性格の大本となっている――
――デザリアム戦役も始まってしばらく経った頃、野比家を訪れた不動明。服装は学生服だが、目つきは元の世界での鋭いものだ――
「明さん。どうしたんですか?」
「なあに、お前の転生体からメッセージを預かってるんでな。そいつを届けに来た」
「なるほど。上がってください」
「邪魔するぜ」
不動明の事ものび太は覚えており、黒江達を介してだが、協力関係にある。23世紀においてはヒーローである彼であるが、21世紀の頃はダークヒーローとしても名が通っている。彼が渡したメッセージ。転生体であるノビ少尉から、過去にいるのび太へのメッセージは『はーちゃんを戦線に出せ、りんが記憶喪失になった』という緊急事態。老いた両親に読まれないように、英語で記されていた。28歳前後ののび太であれば、英語は読めるので、すぐに事態を悟った。
「今、はーちゃんを呼んできます」
この頃になると、のび太の両親は、のび太がこの時代に住むマンションとは別のマンションに住んでいた。のび太が独身時代に住んでいた数km先のマンションの高層階で隠居しているのである。のび太が成人した後の両親は嘘のように穏やかに(特に玉子)なり、気のいい初老の婦人、定年退職間近の老年の翁といった雰囲気に変わっていた。のび太が30歳近くになると、両親は50代の後半に差し掛かる。まだまだ肉体的には若いが、ノビスケの存在もあってか、実年齢より落ち着いた感がある。
「親父とお袋が帰るまで、さっきまで相手してたんで、寝てるかもしれないですけど、起こします」
「いや、説明もあるから、三時頃まで寝かせてやれ。ご老人連中のお相手は疲れるもんだしな」
のび太を引き止めると、明は説明を始める。黒江が方針を転換した理由、のぞみの傷心、23世紀の情勢。のぞみは幼馴染のりんが身を挺してテロの被害を抑えた代償に記憶を失ったことに怒りと悲しみを懐き、更にヌーベルエゥーゴへの行き場のない憎悪も抱え込んだ結果、精神的に荒れていて、それを懸念した黒江がはーちゃんを必要としたのだと。さしもののぞみも、心の支えを失った場合、嘘のように脆さを見せてしまう事が不動明にまで認知されたのだ。
「そうですか、あの子が」
「奴は生前の経緯をあまり語れない。幼馴染のりんとも出身世界が違ってたからな。とは言え、幼馴染っー事には違いないから、心の支えにしてた。ところが、タウ・リンっていう元ジオン兵のテロリストの子分共のテロで記憶をやられやがった」
「どうして、記憶喪失に?」
「これは智子の推測だが、連中の封印回復状態と同じ症状なんだ。綾香とケイはテロの被害の収拾とフォン・ブラウンとパルチザンの連絡で飛び回ってて、それどころじゃない。智子が見て気づいた。一種のフェイルセーフだな」
「つまり、肉体の許容限界を超えた力の反動?」
「そうだ。転生で強大な力を得た連中が陥る、ありがちな症状だ。回復には半年はかかる。肉体の素地があった連中でも、回復に数年だからな」
「それで、はーちゃんを?」
「のぞみの奴、表面的には明るく振る舞ってるが、裏で荒れてるんだそうだ。それで清涼剤として、お前の転生体が必要としたんだよ」
明は煽るような形で説明する。実際、のぞみはショックで自暴自棄な行動を取っており、響に『ヌーベルエゥーゴの構成員を見つけたら殺しかねない』と危惧されるほど、ヌーベルエゥーゴへの憎悪を顕にしている。のぞみは元々、自分の大切な人間が傷つけられると、怒りの感情が爆発し、理性の抑えが効かなくなる(前世での恋人であったココなどのケースで顕著である)気質であった。一応、『殺して回っても効率悪いから、捕まえて情報吐かせて一網打尽にしよう、歯向かってきたら全力で潰すけど、それで死んじゃうのは仕方ないか』程度には理性は残っているが、南極条約違反の凄惨な拷問をしかねない事が危惧されたためだ。錦から受け継いだ、軍人としての知識が辛うじて、ブレーキとして機能している状態なのだ。響の危惧は紅月カレン時代の被差別の経験が由来であるので、のぞみの暴走を抑えるのに必死である。(紅月カレン時代は自分が体制側からすれば『テロリスト』だったし、ルルーシュ・ランペルージに利用されたりもしたため、プリキュアの戦友が憎しみに囚われてしまうのに怯えている)
「北条響と話したが、奴は怯えてる」
「何に?」
「プリキュア仲間が憎しみに囚われちまうのに、だ。奴は前世――『紅月カレン』――の記憶で、憎しみに囚われた連中の末路を見てきてる。戦友がそうなっちまう瀬戸際だからか、必死になってるんだよ」
その感情の根源はルルーシュ・ランペルージと枢木スザクの辿った道だ。元は親友と言えたはずが、道を違えたりした末に殺し合い、ついにはカレンを蚊帳の外において共犯者となり、ゼロ・レクイエムを起こした。その時の疎外感や二人へ抱いた感情を持ち越しているがため、『プリキュアの中でも前向きな』のぞみが歪んでしまうことを恐れている。見舞い後の宣言が効いている内は大丈夫なはずと、ラブから言葉をかけてもらったが、どうにも不安が拭えない事を不動明に漏らした北条響(シャーリー)。不動明は粗野であるが、意外な面として、女性や子供に優しい。『牧村美樹への愛』を戦う理由にしていた過去からも証明されている。それはプリキュアに対しても同じである。『俺が時々、見舞いに行ってやるよ』と言い、響の信頼を得ている。このように、彼はこういった気配りの出来るナイスガイなのである。牧村美樹の愛した地球を守護する事が生きがいとなったデビルマンにとって、こうしたメッセンジャーの仕事もお安い御用なのだ。
「そういうわけだ。兜甲児への借りも返さなくちゃならねぇし、デーモン・ハンターとしての仕事もたんまりだ」
「あ、妖獣ドリムーンがきたら、後ろから不意打ちですよ?」
「分かってる。奴の弱点は把握してるよ」
不動明/デビルマンは転生を経て、自身が率いるデビルマン軍団を再び結成している。軍団の統率と規律の維持のためか、かつてと同じように、デーモンを逆に乗っ取り、デビルマン化した僧侶の一団を取り立てて、日本に拠点を持つ。デビルマンの通信網、情報網は彼らが担っている。デビルマン化した人間は、デーモン族が不動明に倒されていった過程で、生き延びを図った者たちが無差別合体をした事で生まれていった。明はそれらデビルマン化した者を同志として集め、デビルマン軍団を結成し、デーモン族に対抗する勢力として旗揚げした。地球連邦にいる数は10万単位と推測されるデビルマンの長として、最強の男としてのカリスマ。それが不動明だ。
「デビルマン軍団の旗揚げは?」
「本部を東京の地下都市において、旗揚げしたよ。各地に俺の同志を散らばせて、兜甲児に情報を送ってやってるぜ」
23世紀の地下都市はデビルマン軍団の本部やら、プリベンターの日本支部やらが置かれ、重要拠点扱いである。また、甲児がパイロットのままでいる理由はデーモン族の討伐に参加する意志があるからでもある。ZEROの討伐もそうだが、甲児は自分の愛機にして、祖父の遺産が『悪魔と化した』事を『世界への罪』と気に病んでいる。
「甲児さんは気に病んでるんですか、ZEROの事を」
「ああ。少なくとも、魔法つかいプリキュアの世界を焼き払い、はーちゃんの帰る場所を消し飛ばしたことに罪の意識を抱いてやがるよ」
ここで、兜甲児がZEROの蛮行がはーちゃんを苦しめていた事を気に病み、別次元の自分の弱さが、ZEROの再来を招いたと責任を感じている事を不動明へ相談したらしい事が明らかになった。はーちゃんが見た悪夢の光景は兜甲児にとっても悪夢であった。
『悪魔ってのは大体、後発の宗教が土着信仰の神を貶める為に悪魔としたものが殆どなんだぜ?神と悪魔には差なんて無いのさ。日本神話の神々なんて、一神教徒からしたら悪魔信仰そのものさ。だから、マジンガーを神にするも悪魔にするもお前次第なんだぜ?』
甲児ははーちゃんの無垢な姿に罪の意識を抱いた。不動明は甲児を励ます。そして、甲児の再起を促したのは、祖父の人格をコピーしたコンピュータの一言だった。
『甲児よ。ワシはZを残した。じゃが、世界によっては世界征服のために作った経緯がある。ZEROはその可能性を極限まで追求した『マガイモノ』じゃ。それを打ち破るために、ワシはマジンカイザーを魔神を統べし皇帝として生まれるよう、早乙女に頼んだ。皇帝はお前に託した希望なのじゃ』
兜十蔵は早乙女博士に頼み、封印される前のエネルガーにゲッターエネルギーを照射してもらった。その事実の証明だ。エネルガーは強大なパワーを持つ反面、マシンパイルダーでの制御が覚束ないマシンであり、起動実験で兜剣造の妻を死に至らせた。公には、グレートの起動実験で兜剣造の妻は死亡したとされるが、実際はエネルガーの起動実験と、それに付随してのグレート用に試作された反応炉の起動実験の失敗である。
『Zは人体の拡大延長としての究極として、アルファベットの最後の文字“Z”を付けた。だが、マジンガーとしての可能性は更にその先にある事を、Zの設計で思い至り、基礎設計をした物を早乙女君に託した。ワシの身体が持たん事と、今のように意志を残せるか判らんかったしの』
剣造にZの強化型として、後のグレートの制作をさせる一方、進化した後のエネルガーの改修の基本コンセプト『皇帝メモ』を生前の早乙女博士に託した兜十蔵。つまり、カイザーは自己進化の後に、新早乙女研究所(壊滅後はネーサー)が光子力研究所と共同で調整を行い、戦役ごとに更に改修して、最終的に十蔵の残したメモのコンセプトを実現させた機体であり、その意味で『十蔵の最後にして、究極の遺産』なのだ。つまり、機体は違うが、コンセプトとしてのマジンガーZの『生まれ変わり』とも言えるのが、マジンカイザーの進化の最終到達点なのだ。甲児はその一言で再起し、マジンカイザーでのZEROの打倒を目指す。このように、魔法つかいプリキュアの敗死は各方面に影響を及ぼしていたのだ。
――不動明が青年のび太を訪ねた、2019年の盛夏の頃になると、21世紀日本政府が官僚の統制を強め始め、扶桑への内政干渉を抑え込もうと動き出したが、後手に回った感は否めなかった。市井の市民団体などの干渉までは統制できなかったため、扶桑はダイ・アナザー・デイ後のクーデターの首謀者達への極刑適応による萎縮、日本の市民団体などに醸成された反軍的風潮に悩む羽目となった。黒江達の懸念が現実になったのだ。軍事予算は減らされ、海軍の軽空母はほとんどが売却か予備役行きになった。ウィッチ兵科は『費用対効果』が疑問視され、既に始まっていた縮小傾向に拍車がかかり、ウィッチの社会的地位は大きく下がった。その風潮をなんとか乗り切ろうと、部内で『社会の和を乱す』、『突然変異』と迫害されていたはずの一騎当千のGウィッチ達を重宝する事が上層部の暗黙の了解となり、反軍的風潮の広がりによるウィッチの志願の激減の長期化を避けようと、あらゆる手でのプロパガンダに勤しむ。海軍航空隊への懲罰による同組織の形骸化もあり、エースウィッチを温存できた空軍の発言力が大きく増す。海軍航空隊はクーデターで空軍でのパワーゲームに敗北する形となり、懲罰人事で不満分子と見做された者の多くはアリューシャン諸島に島流しされた。(後の『開戦』で殆どが戦死)横空事件でメーカーからの信頼も揺らいだ。戦争で空軍と海軍の統合運用管理が進められたこともあり、海軍航空隊は『訓練と予算維持のために、組織の形だけをとどめた』と揶揄される事が幾度かの戦乱を挟んでの数十年もの間、続くことになる。その埋め合わせか、機材のみは世界最先端を常に配備されていた。人的には散々な状態が数十年は続いてゆくが、機材は世界がゆだれを垂らして、羨ましがるほどの先端技術を常に有するというアンバランスが継続してゆくのである。日本がもたらした風潮の代償と言えた――
――実際、扶桑軍は余剰人員を日本の『外地』へ供出し、その領空警備は空軍の役目であったので、政治的に扶桑海軍航空隊が疎んじられたのは確かである。防空部隊の装備が急激に近代化される一方、旧来型の野戦防空武器の扱いや戦略爆撃機、早期警戒管制機の配備数、陸軍装備の近代化の課題はダイ・アナザー・デイ後の重要事であり、それらに予算が割かれ、クーデターを起こした海軍航空隊への懲罰がなされるのは理に適う措置ではあった。しかし、1948年を待たずに敵が開戦してしまった事で、その前提条件が崩れてしまう。五輪と万博を強行した代償は、万単位の将兵の血が南洋で流される事だった。軍の近代化の進捗状況が予算削減で進まず、戦線の兵器不足が深刻なのを補うため、Gウィッチ(プリキュア、英霊を含む)はデザリアム戦役が終われば、今度はウィッチ世界の太平洋戦争に駆り出されるのだ。Gウィッチは21世紀の人々の『ヒーロー達やスーパーロボットに頼んだらいいじゃない、わざわざ子供を駆り出す必要がどこにあるの?』という疑問への回答、あからさまな予算削減へのほぼ唯一の対抗策として重宝されていく。Gウィッチはウィッチとしてしか、軍で働けない現役世代の通常ウィッチと違い、参謀、パイロット、戦車兵、整備兵などを兼任できる技能の持ち主であり、それぞれ優秀な技能を誇る。そのことも軍部の救いであった。彼女達をいずれ、元帥まで昇進させ、後世まで軍籍を維持(元帥は一生涯、軍籍が書類上は維持されるからだ)させる事は1945年当時の元帥/大将達の決定であった。ウィッチはMATとの住み分けが始まり、軍のウィッチが風潮的に劣勢になっていくことは1945年夏の時点で予測されている。志願数の激減が最悪、数十年は続くという結果も元帥/大将級の軍人達には予測の範疇であったため、Gウィッチの特権付与と引き換えの前線への投入、血の献身に見合う待遇の正式決定は未来世界がデザリアム戦役を遂行している頃には出されていた。『国防』に日本の政治家の殆どは無関心であり、扶桑の皇室にも、日本の皇室同様の露出を求めるなど、扶桑にとっては的外れな事を議論するなど、差し迫る太平洋戦争への準備は遅れ、満足な戦備構築もできぬままに開戦を迎えてしまう。そのため、つぶしの効かないウィッチは疎んじられていく。必然的にウィッチ社会のピラミッド型階層社会化が否応なしに起こり、Gウィッチを頂点に、現役世代が最下層になる、かつてと正反対の社会が当たり前の社会が到来する。また、扶桑の『魔力の発現を周囲に期待されたものの、結局は発現しなかった者への迫害』(黒田家)が問題視されたのも、扶桑のウィッチへの扱いが『腫れ物に触るように』なった理由で、それを理由に申告しない者も増えたため、世代交代スピードの鈍化を招く。Gウィッチ達のダイ・アナザー・デイでの血の献身の結果、軍内の立場はこれまで通りであったが、社会的には腫れ物の扱いになり始めている。その事が扶桑皇国のウィッチ動員のネックとなり、黒江達の『特権』が公的に認められていく。『優遇してやるから、とにかく、通常ウィッチの10倍の戦果を挙げろ』というのが上層部の課した命令である通り、デザリアム戦役にも全員が国籍を問わずに参戦していた。連合軍はジュネーブ条約に接触しない高年齢(20歳以上)のGウィッチを特に重宝するようになり、現役世代の肩身が狭くなる時代が到来してしまったと言える。――
――デザリアム戦役が始まり、地球連邦軍にも籍を置くGウィッチがそちらに従軍すると、現地は宇宙刑事ギャバン達が守護する事となった。現役世代ウィッチはダイ・アナザー・デイでのGウィッチの一騎当千と万能ぶりを『化物』と評した。伝説の電光三羽烏がレイブンズと同一の存在と判明したこともあり、『馬鹿らしい』と任務を放棄した部隊もいたほどだ。クーデターで海軍航空隊が形骸化したこともあり、空軍の設立前後には『空軍の任務』で議論が交わされたのも事実である。ダイ・アナザー・デイでの勝利で多少の時間的余裕が生じたものの、インフラ整備や五輪と万博に国力が割かれ、軍備の近代化を軽視した事で、日本の外地に配置された部隊を補うための扶桑軍の増員がままならず、旧式兵器が処分されたことでの駒不足が開戦後に顕になる。結局、この駒不足は未来兵器の大量購入で当面の間補いつつ、朝鮮戦争時代水準の性能を持つ兵器の生産で需要が賄われる。ダイ・アナザー・デイでの自衛隊/米軍の活躍でジェット戦闘機の未来を確信した扶桑は、F-14/F-15/F-16/F/A-18E/Fのライセンスを正式に取得。南洋島に工場を立てて、64F向けの生産を目論み、47年以降の供給を目指している。扶桑はGウィッチの存在で百戦錬磨のエース達の温存が叶い、存在感を高める。その煽りを食ったのが軍縮条約の締結されたカールスラントである。自国製ジェット戦闘機の商機が失われ、軍縮で国内の大量発注も見込めなくなったことで外貨獲得手段を失った。結局、政治的理由でF-86のライセンス取得となった事もあり、失望した航空技術者の流出が発生。同時に、ベテランのあがりが起こり、カールスラント空軍は質が低下、徐々に没落する。扶桑空軍の勃興と対照的な道を辿ることとなった。また、太平洋戦線に最初から参加するため、同国のGウィッチ達がダイ・アナザー・デイの終了と同時に表向きであるが、予備役に退いた事も拍車をかけた。(その後に復帰するが、この時は予備役からの義勇兵としての参加が政治的に穏当だった)ラルのみは空軍総監の職にあるので、『航路が遮断され、帰国不能になった』のを理由にして参戦する。扶桑皇国は情報網をGウィッチの人脈で増強する事を選択し、黒江と圭子に命じ、デビルマン軍団と協定を結ぶ。3000人の僧侶集団『ボンズ・オブ・ヒンズー』のテレパシー能力で独自の情報網を構築し、デザリアム戦役の情報を得ていく。こうした活用策で、扶桑皇国はウィッチ世界の次代の超大国の道を辿る。それは90年代以降は経済的低迷に喘いでいた日本国にも良い影響を及ぼし、日本連邦としての繁栄が始まる。扶桑が解体を予定していた(業者の入札まで終わっていた)仙台城の工事の中止に伴う代替工事(沿岸部と地下に軍事施設を建設)の手配、名古屋城の保護工事、広島城からの機密書類の一切の持ち出しなどが矢継ぎ早に決定された。横須賀航空隊の一軒以来、各地の部隊は国防省の強い統制を受けており、決定に逆らえるウィッチ部隊はいなかった。横須賀航空隊の起こした行為は『国防省』による部隊統制の強化を起こした。志賀はその事を招いたことで、部内の批判を浴びている。最も、偶々、彼女の不在のうちに事件が起こっただけだが、部下の管理責任を問われたのだ。ラルも似たようなもので、平行世界での物資横領、人材の掠め取りの一切の責任を負わされる形で、敢えて、自由に動けない要職に祭り上げられたが、半分はエディタ・ノイマンの左遷に伴う『代打』である。また、当人も御坂美琴の転生体である自覚が生まれたためか、ラルとしての悪童の面は鳴りを潜めつつある。このように、様々な変革を余儀なくされたウィッチ世界は次第に、史実と同じような『東西冷戦時代』への道筋を辿り、アメリカ役を扶桑が、東西ドイツとソ連役をリベリオンが演ずる事になる。そして、扶桑は史実より相当に早い段階で宇宙開発に踏み切るのである。――
――デザリアム戦役の主役は宇宙戦艦ヤマトと思われがちだが、それだけでは重核子爆弾の解除はできないため、パルチザンの抵抗は重要事である。しかし、ネオ・ジオンがヌーベルエゥーゴと手を組んで蹶起に踏み切った事で戦争の長期化は避けられない情勢となった。夢原のぞみは、現時点でプリキュアの最古参であるというプレッシャーと、幼なじみの夏木りんの記憶喪失のショックで精神バランスが崩れかけており、のび太の転生である『ノビ少尉』がはーちゃんを呼び寄せるほどであった。はーちゃんも20年近くの野比家での生活でだいぶ精神的に成長しており、フェリーチェとしての姿での言動との差異がだいぶ減っている――
「のぞみさん」
「はーちゃん……。どーしたらいいの〜!りんちゃんがぁ〜!」
「お、落ち着いてください。まだ希望はありますから……」
「あれ、はーちゃん。変身前からそういうキャラだっけ?」
「のび太のところに20年近くいましたから…。いくらなんでも」
「それもそうかぁ〜」
とっさに誤魔化すが、半分はフェリーチェから一時的に戻れなくなっていた時の名残りである事は内緒のはーちゃん。元々は妖精に近い存在であったのが、大地母神の後継者として、妖精から人の姿に成長した最終形態だからである。精神的成長が全くないわけではないため、あながち嘘ではない。のぞみはりんという心の支えを失い、荒れていた事もあり、響が戦闘に参加させなかったわけだが、最終的にはーちゃんの登場で、なんとかバランスを取り戻すことに成功した。はーちゃんも地球連邦軍の軍服姿であり、これでほぼ全員が軍隊階級を有することになった。
「でも、まさか、プリキュアしながら職業軍人になるなんて思いませんでしたよ」
「今回はショッカーの系譜とやりあうことになるから、相応に覚悟は必要だけど。はーちゃんは出来てる?」
「はい。のび太にせがんで、皆さんと一緒に戦う事を選びました、美希さん。それに連中は…みらいとリコの仇ですから」
フェリーチェである時と同じような口調で覚悟を伝えるはーちゃん。二人の仇討ちに燃えているらしい。20年という月日での野比家での療養生活でかなり鍛えたか、わずかながら、フェリーチェの時同様の凛々しさを垣間見せる。
「変わったわね、はーちゃん」
「わかったんです。みらいとリコがどんなに私のことを想ってくれていたのか。そんな当たり前の生活を壊されて、初めて気づいたんです。だから、今度は私がのぞみさんを支えます」
「は、はーちゃん……!」
感極まって、目に涙を浮かべるのぞみ。美希はそんなのぞみに『良かったわね』と優しい視線を向ける。うららも同様だ。
「そう言えば、ラブさんは?」
「ラブなら、黒江さんと智子さんに報告を入れてるところ。色々報告する事多いから、時間かかってるわ」
「その割には時間かかってませんか?」
「オーバーヒートでも起こしたかしら。見てくるわ」
美希はうららに促され、ラブの様子を見に行った。こうしている間に、士官食堂に残されたのは、プリキュア5組とはーちゃんだけになった。多少ながら、凛々しく成長したはーちゃん。その姿勢に感動しつつ、精神バランスをなんとか取り戻すきっかけを得られたのぞみ。そののぞみを補佐する役目を担うことを決意しているうらら。三者三様の現況だが、この後すぐ、北条響が紅蓮聖天八極式でクシャトリヤを鹵獲した事が知らされたのだった。
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