ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――歴代プリキュア達は様々な要因でダイ・アナザー・デイを戦ったわけだが、内に闇を抱えたままで戦うことになったキュアドリーム/夢原のぞみ。立場上、表向きは中島錦として生きていかなければならないため、苦労も人一倍であった。彼女はデザリアム戦役を迎えた後、シャイニングブレイクでアナベル・ガトーと一戦を交えた――

「まさか、お前まで機動兵器に乗るなんて…」

「なんか血が騒いじゃって」

「まぁいい。この武人ぶってるムカつき野郎をぶっ飛ばすぞ!」

「フ、威勢はよし。だが、相手がヒヨッコではな」

「あんたをぶっ飛ばすのに、経験の差なんて関係ない!」

紅蓮聖天八極式・改、レプリカのフルバーニアン、ノビタダ少尉のZプロンスト、のぞみのシャイニングブレイクなどのエース機を向こうに回しての大立ち回りを見せるアナベル・ガトー。コウ・ウラキを中心に次々と立ち向かうが、流石に百戦錬磨のエースパイロットであるアナベル・ガトーは乗機の性能を限界まで引き出し、旧式の改造機に過ぎないリゲルグで複数の新型機に伍する戦闘を見せた。

「ジオンのパイロットはどうなってんの!?射撃が当たらない!」

「ジオンのエースパイロットに射撃は無理だ!接近戦で勝負をかけるしかない!」

ジオンの百戦錬磨のエースパイロットには射撃はニュータイプでもなければ当たらない。見切りを鍛えられてきているからだが、逆に言えば、エースパイロット/熟練兵と一般兵の練度の差が大きいことの表れである。ライフルがかすりもしないことに驚愕するのぞみ、それを落ち着かせ、自身はサーベル戦で戦うコウ・ウラキ。

「向こうのロングライフルに当たるなよ、その機体では擬似的にダメージが来るぞ!」

「えぇ!?こういう時に簡易式とは言え、モビルトレースシステムは嫌だなぁ」

「愚痴ってる場合かよ!援護しろ、取り付いて、輻射波動を直接叩き込んでやる!」

シャーリー(北条響)は紅月カレン時代と同じく、輻射波動を叩き込むと息巻く。

「待った。危険すぎる」

「おい、なんで止めるんだよ、のび太!」

「あ、今は『ノビタダ』だよ。昔の僕とは別の存在だしさ」

「あ、昔ののび太くんと別の存在扱いなの?」

「そうさ。別々の存在だから。昔の僕自身とは別の人間ってことさ。転生体だしね」

のぞみもそこは気が付かなかったが、ノビ少尉、つまりノビ・ノビタダはのび太の転生体であるが、かつてののび太とは正式には別の存在となる。

「記憶を受け継いだ程度に考えてくれると良いかも。肉体が違う分で引っ張られて、性格もちょっと変わってる感覚有るし」

「転生は不思議なもんだなぁ」

「コウさん、関心してる場合ですか、来ますよ!」

「何、奴の癖は掴んでいる」

ガトーがビームサーベルを振り下ろすが、コウはビーム・ジュッテをライフルから展開し、受け止める。

「ぬ!ジュッテか!?」

「こんなこともあろうかと、この機能があるライフルを持ってきたんだ!」

ジュッテでリゲルグのサーベルを弾いたコウ・ウラキは畳み掛けた。デラーズ紛争当時と違い、経験を増した彼にとって、勝手知ったるガトーとの戦いは手慣れたものだ。

「ほう。腕を上げたな」

「伊達にグリプス戦役やネオ・ジオン戦争を生き残ってはいないぞ、ガトー!」

見かけはデラーズ紛争当時のフルバーニアンだが、中身は別物である。ビーム・ライフルも当時と違い、ビームマグナムである。外見は78系だが、中身は完全にZ計画系MSの構造に変わっており、フルバーニアンの外装を持つマークVと言ってもいい。


「あの時のガンダムを修復したかと思ったが、レプリカか。……面白い!」

「あの時のようにはいかないぞ、ガトー!俺もフルバーニアンも強くなっているんだ!!」

お互いに、つば競り合いを中心にした高機動戦を展開するフルバーニアンとリゲルグ。フルバーニアンはバーニアポッドをフルに用いて、高度なマニューバーを展開。リゲルグに追いすがる。リゲルグは持ち前の高推力を用い、フルバーニアンの攻撃を時にはいなし、サーベルをぶつけ合う。まさにアニメで見たようなつば競り合いだ。


「す、凄い。あんな強引な動き、よく取れるなぁ」

コウとガトーの格闘戦は白熱するが、フルバーニアンのバーニアポッドをフルに使う強引な機動はのぞみを驚かせる。この設計はデラーズ紛争当時では賛否両論で、パイロットへの負担が大きいと、ガンダム試作0号機の開発主任は批判していたという。もっとも、次作であるはずのガンダム試作四号機がガンダムとして当時に完成しなかった事もあり、0号機の主任の汚名返上の機会は訪れなかったが。

「バーニアポッドのおかげだよ。それに元々、推力は歴代随一だから、制御は結構負担がかかるよ。フルバーニアンは」

「へー」

「ま、あたしはG耐性が高いからいいけど、お前はニルヴァーシュしか乗ってなかったろ」

「うっ!そ、それは…」

のぞみは前世の内の一つが『レントン・サーストン』だったので、機動兵器に意外に適性がある。それは歴代プリキュアでも意外に少ない特徴だ。

「あ、キュアレモネードも機動兵器に適性あるそうな」

「え、うららが!?」

「前世のどこかでシャンブロに乗ってたからだって」

「……それ、喜んでいい類の経験じゃないだろ。死ぬやん」

「ま、それ言ったら、キュアベリーなんて、聖闘士の前世ありだよ」

「はぁ!?美希のやつが!?」

「魔鈴さんだって」

「何ーーー!?」

キュアベリー/蒼乃美希は魔鈴が前世、今生は『ダージリン』という経歴で、仲間内の笑いを誘っているが、戦闘能力は本物で、白銀聖闘士最高位である。

「あんにゃろ、後でとっちめてやる」

「それはそれとして、ヤツの頭を押さえるよ」

「スルーすんじゃねー!畜生、メルトダウナー猛烈に撃ちてぇ…」

シャーリーはノビタダにスルーされつつも、ワイドレンジの輻射波動とマイクロミサイルの一斉射撃でガトーの進路を塞ぐ。ノビタダはライフルで牽制し、のぞみは突っ込み、ガトーのリゲルグに蹴りを食らわせる。

「あんたの好きにはさせない!!」

「ぬ…!この私の背後を取るとは…!だが!」

「ガッ…!?」

ガトーもさるもの、すぐにカウンターを入れ、シャイニングブレイクを華麗に吹き飛ばす。そして、すぐに至近距離から腕部のグレネードランチャーを叩き込み、シャイニングブレイクの装甲にダメージを入れる。

「か、かはっ…!これがMFのダメージの入り方…。キツイッ…!」

のぞみはMFというものを体感し、MFの操縦というものが過酷なものかを思い知った。シャイニングブレイクはベース機と違い、スーパーモードを持たないため、扱いが難しい面がある。なお、シャイニングフィンガーを変化させた『シャイニグブーストフィンガー』もついているが、武器を介して発動させるため、ベース機の特徴を変化させすぎという意見もあるが、軍用MFであるので問題なしとされた。また、可変機構もあるなど、機体にギミックは多いが、のぞみがそれを扱いきれないという問題がのしかかり、のぞみ自身も自覚していたか、シャイニングブレイクを失った後はオーソドックスな操縦システムのGX系に乗り換えることになる。

「大丈夫か?」

「まだまだ…!あいつ、声だけ聞くと、なんだか初めて会った感じがしないんだよね…」

「ムシバーン、だろ?」

「よく覚えてたな」

「二度もこの手で葬った相手だもの」

態勢を立て直し、のぞみはコウ・ウラキのチャンバラに加勢した。MFの利点は格闘戦の際の柔軟性であり、そこもガトーの隙を突けた理由である。

「はぁあっ!」

「何ぃ!?」

のぞみの一太刀はコウとのチャンバラに気を取られていたガトーの機体のウイングバインダーを損傷させる。シャイニングドリームの際に掴んでいたコツでエースパイロットに一太刀を浴びせたのである。

「……っ、不覚!場を読み違えたか!?」

『少佐、退け。直に大気圏突入に入る』

「了解。……おのれ、ロンド・ベル……。この恥辱、二度と忘れん!」

シャアからと思われる通信が入ったガトーは一同との戦闘を打ち切り、帰還していった。

「みんな、ここからだと直に大気圏突入したほうが早い。のぞみちゃん。その機体には可変機構があるはず。レバーを入れてみて」

「う、うん」

シャイニングブレイクは『シャイニングベルクート』というウェーブライダー形態に変形できる。変形後の操縦はオーソドックスなものに切り替わる。巡航形態はウェーブライダー形態というのが可変機のお約束だ。

「ど、どうする?」

「このコースだと、近くを降下してる『スタリオン』と鉢合わせする。降りたら拾ってもらってから、シナノに連絡を入れよう。シャーリーさんは僕の機体の上に。コウさんはシャイニングブレイクの上に」

「わかった。スタリオンに連絡を入れておく」

スタリオン。ペガサス級六番艦であり、グレイファントムとアルビオンとの過渡的位置づけの艦で、デラーズ紛争ではアトミック・バズーカの直撃を避けられたという幸運艦。ちなみに戦後も使われているという、数少ないペガサス級である。

「ペガサス級?まだ現役なの、この時代に」

「内惑星巡航艦隊では強力な部類だからね、まだ現役だよ。退役したり、戦没で数減ったけどね」

ペガサス級強襲揚陸艦は多くが建造されたものの、『連邦の象徴』と見做された事から、戦没率も高い。これまでの戦争で大半が失われ、初期艦で無事に退役できたのは『ペガサス』と『ホワイトベースjr.』のみ。あとは准同型艦も含めて大半が失われている。より大型で強力な『ラー・カイラム級機動戦艦』の登場後は旧式化し、置き換えが始まっている。(なお、地球連邦軍は遠征艦隊である外周巡航艦隊や機動艦隊には波動エンジン艦やフォールド機関艦が配備されているが、内惑星巡航艦隊は核融合炉搭載の従来型で編成されており、俗に言う『沿岸警備艦隊』のような位置づけである)

「見えた。あれだ」

降下中のペガサス級の姿が見える。運よく、パルチザンの拠点である日本の佐世保に降下中であるため、大気圏の熱圏を突破したら着艦する。アルビオンとグレイファントムの中間のような姿であり、過渡期のペガサス級であるのがわかる。

「……アルビオン?」

「いや、スタリオン。グレイファントムからアルビオンに至るまでの過渡期に建造されたペガサス級六番艦だよ」

ペガサス級は現存数は多くないが、この時代でも『連邦の反攻の象徴』としてプロパガンダされている。デザリアムとの戦いでは、こうした万能艦が好まれているのだ。

「もうじき熱圏を突破する。突破したら、スタリオンで補給を受けて、休憩するぞ」

「了解」

――地上に降下した一同。地上はデザリアムの地球占領軍の支配下に入った地域が多いが、日本は重核子爆弾が陣取った以外はスーパーロボットの奮闘でパルチザンが取り戻しているため、パルチザンの本部となっている。地球連邦軍の『気概のある部隊』はパルチザンに合流して戦っており、これ以後はパルチザン所属経験者が優遇される事になる伏線が出来上がる。基本的にこれ以後の地球連邦軍は『侵略者に立ち向かう気概があるか』が出世の条件に位置づけられるようになる。だが、この後の時代、デザリアムへの恭順を選んでいたハト派の一部が行き場を失い、過激化して『地球連邦の敵』に転ずるなどの難点も生じるなど、必ずしも大団円ではない。だが、デザリアム戦役を境に、地球人同士のテロの頻度が大きく下がった点では後世に『評価』されるのである――


――着艦後 スタリオン 格納庫――

「のび太くん、連絡は?」

「コウさんが取ったよ。補給と大気圏内用のセッティングが終わったら、グアムに向かってるシナノに合流するよ」

「グアム?なんでまた」

「現地の部隊の回収だよ。陸軍の空挺部隊が取り残されてるんだって」

「空挺部隊ねぇ。でもよ、ペガサス級って装備は優遇されてんだな。ジャベリンを積んでるぞ、この艦」

「これがサラミス級とかだったら、ジェガンどころか、ジムVだからね。連邦も金まわりいいわけじゃないから、沿岸警備隊の装備は古めなのさ」

「一年戦争の艦がまだ現役って時点でわかるよ。でも、マゼランが退役してるのは流石に?」

「ガトランティスとの戦いで砲台代わりに使われて、大半が沈没したんだ。ペガサス級は頑強な構造だから、割に轟沈しやすいマゼランやサラミスより生存率があってね。だから、長生きなんだよ」

ノビタダ少尉は『23世紀におけるのび太の役目を担う者』としての側面を持つ。お互いに別の存在と認識はしているが、記憶は引き継いでいるし、のび太としての友人関係も維持している。そこも時空を超えた二人の関係を表している。

「この艦の艦長には、コウさんが説明してるから、直に挨拶しに行こう。一夜の宿だしね」

「あ、あたしはどっちを名乗ればいいんだろう」

「プリキュア変身者としての名前でいいと思うよ。君はダイ・アナザー・デイで有名になったし」

「そ、そうかなぁ…」

「流石にこの時代はいいよな、時空管理局と交流があるから、プリキュア変身者としての名前を暗黙の了解で名乗れるし」

「その分、戦闘はキツイよ。ジオンのチートじみたエースとの遭遇率高いし」

「あいつら、ライフルの銃身を向けた瞬間から避けてるっておかしくない!?」

「ジオンは連邦と違って、『機動性で避けきる』ドクトリンで育成してるからね。一年戦争の時に装甲技術で差があった時の名残さ。ビームシールドも嫌ってるからね、連中。連邦がビームシールド時代を迎えてるのに、連中は『とにかく避けろ』だよ。ジオンの一般兵にゃ同情するね」

ノビタダは連邦軍がとうにビームシールド時代を迎えている時勢でも、ジオンは実体シールド主体であり続け、しかも『シールドなし』の機体も未だにあるという事を暗に『時代遅れ』と揶揄した。連邦はビームシールドの普及に一定の成功を収め、Iフィールドも小型化に成功しつつあるからだ。

「その分、一般兵とエースの練度に差があるんだよ、連中は。一年戦争の時の熟練兵はほとんどが高齢になるか、死ぬかで殆どいなくなって、今いる殆どは他の組織の敗残兵か、若手だよ。連中はこの戦を最後の機会と考えてる。ジオンの名に求心力が無くなってきてるしね」

「ジオンは同じスペースノイドも数十億殺ったしな。一年戦争の事を考えると、連中が宇宙移民の代表面していいはずねぇんだよ。それに宇宙大航海時代迎えてんだ。ジオンの歴史意義はもう果たし終えてる。そんな時代遅れの落ち武者共が誰もかれも殺していいはずねぇんだ」

シャーリー(北条響)は熱り立つ。生前と違い、言葉づかいはシャーリーとしての中性的なものだが、紅月カレンとしてのガサツさも重なり、かなり荒い印象を与える。

「響、かなりガサツになってない?」

「お前と違って、ずっと戦いと切っても切れない人生だったからな。それに、直前の前世は紅月カレンだ。否応なしにそうなる」

「あたしは前世が不幸だったからかなぁ。嫌なことを時々考えちゃうんだ。りんちゃんが記憶を無くしたって聞いた時、どうにかなりそうだった。転生してからずっと、それを考えないようにしてたんだ。前世で先立たれた時の記憶があるから…。それに、りんちゃんは『一緒にいる』のが当たり前だったから…。まさか…、こんなことが…」

「お前のせいじゃない、気に病むなよ」

「あたしは……あいつらを……ヌーベルエゥーゴを許さない。あいつらは、あたしがこの手で地獄に送って……!」

のぞみは前世の後半生の薄幸ぶりのせいか、自分の大切な誰かを傷つけた者には情け容赦しなくなった側面を垣間見せる。心の闇が急速に表面化し始めているらしく、現役時代ならば、絶対に口にしなかったような苛烈な言葉を口にする。それほどにりんを傷つけた『ヌーベルエゥーゴ』へ怒りを滾らせているのだ。

「お、お前……!」

驚くシャーリー。

「りんちゃんはあたしの『家族』だったんだよ、響。小さい頃からずっと一緒だった……。転生して、やっと会えたと思ったら……あいつらは絶対に許さない!!」

のぞみはシャーリーの十八番を口にする。今回は冗談ではなく、本気である。

「だから、あの男はあたしにやらせて、響、のび太くん。シューティングスターか、ソリューションで地獄に送ってやるから」

ハッキリと断言する。だが、のぞみがこの時点で決め手としている技は『タウ・リン』の前には無力に等しかった。そのショックもあり、のぞみの闇は一気に表面化してしまうのである。

「血気に逸るな。それだけで勝てたら…」

「わかってる!わかってるよ…!」

シャーリーも見たことがないほどに、のぞみは怒りに燃える。語気を強め、りんを傷つけた組織である、タウ・リン率いるヌーベルエゥーゴを憎んでいる事を大っぴらにする。その姿を目の当たりにし、前々からの懸念を強めたノビタダとシャーリーだった。






――この時期、『Sv-262 ドラケンV』の一部の機体が『ウィンダミアに納入できずに工場で放置されていた』ため、地球人の搭乗を想定した仕様に改造され、パルチザンが戦力として使用したとされる。これは同機の主生産メーカー『ディアン・ケヒト社』の地球圏最大の生産工場が空爆され、壊滅した後に同地を奪還したパルチザンが無事だった機体を領収したからで、その後は局地戦闘機扱いで地球圏で一定数が使用されたとされる。これは同社がデザリアム戦役で生産工場に大打撃を蒙り、ウィンダミアに納入するどころではなくなり、経営も傾き、VFの二大メーカーのどちらかへの吸収合併すら取り沙汰された故の決断であった。ウィンダミア王国過激派の誤算はVFの納入が滞るという想定外が起こったり、ヴァールシンドロームに強い耐性がある地球本星軍の介入、ゲッターエンペラーの介入であり、頼りのプロトカルチャーの遺跡すらも『ゲッターエンペラーの前ではあまりに微力』である事実はウィンダミア過激派の心を完全にへし折る事になる。また、王統が近い将来に絶える事が確実化(色々な要因で新王の肉体的寿命は間近になってしまった)した事、現れたゲッターエンペラー(エンペラーイーグル号)が『地球から手を退かなければ、星団まるごとをゲッタービームで直ちに消し飛ばす』と宣言し、実際に配下のゲッター軍団母艦の『ダース・デス砲』で惑星エーベルのウィンダミア軍が星ごと全滅させられるなどの報に震撼したウィンダミアは最終的にゲッター軍団とロンド・ベルの力の前にウィンダミア王国は屈伏する。プロトカルチャーの遺跡すら無力に等しい地球連邦の全力を思い知った事で、事実上の無条件降伏を選択するしか無く、動乱はウィンダミア過激派の一掃の効果をもたらした。同時に『侵略者には情け容赦ない』地球連邦の苛烈さも知れ渡る事となった。その直後にボラー連邦との大戦争が起こったのと併せ、後世にウィンダミアは銀河連邦から批判を受ける事となったが、ウィンダミアが過激派の手で『王制の近い将来の自然消滅』が確実となったことでの同情論も生じた。『気概を見せた』事は評価されるが、同時にあまりに過激な手を使ったために、怒った地球連邦本星軍の軍事介入を招いた事は最大の愚策と判定されるのだった――


――ウィンダミアのどこか――

「地球連邦に鉄槌を!」

「しかし、各地に展開している外周巡航艦隊に介入されれば…」

「それがどうした!風の歌を駆使すれば……」

「地球本星の人間はヴァールシンドロームに高い耐性がある上、ゲッター線を使用した兵器を使っている!!あの宇宙線を制御したということは……」

「ふん、たかが一宇宙線を制御したくらいで何を恐れるのだ!我らにはプロトカルチャーの遺産があるのだ!!」

地球圏がデザリアム戦役でてんやわんやしている頃、ウィンダミア王国のどこかでは、過激派が蜂起の段取りを相談していた。彼らはプロトカルチャーの遺産に絶対の自信があったのだが、ゲッター線の恐ろしさを知らない者が大半であったのが運の尽きであった。大いなるゲッター線の意思を体現する『皇帝』の前には、プロトカルチャーの遺産などは児戯に等しいという事実はそう遠くない未来の時間軸で示される。地球打倒を謳いながら、地球の力に頼るという矛盾はすぐに露呈。王家の自然消滅(王統が絶えた)の確定もあり、ウィンダミアはその後、どこかで体制が王制から共和制へ移行し、地球連邦の勢力圏に組み込まれていく。同国はゲッターエンペラーの怒りを買った割に穏便な道を辿ったのは、最後の国王は地球連邦との絶滅戦争は望まず、自分らの権利を地球連邦に認めさせれば良しとしていたからである。


――同国は最後の国王の若年での死去後は共和制へ移行。地球連邦に恭順しつつも、交易で生計を立てる国家へ変貌する。彼らは王家が過激派の行いのせいで絶えた後、ウィンダミアが生きる道は交易しかないとし、軍事政策を縮小。ヴァールシンドローム発症者の軍事利用を廃し、空中騎士団も儀仗的意味合いだけを持つ部隊に改組する(共和制移行で廃止が検討されるが、国家の伝統でもあるので、特例で存続した)など、大幅な軍縮を推し進め、銀河連邦にも加盟するなど、独自路線を放棄する。ゲッターエンペラーとゲッター軍団の強大さを思い知り、直接的に地球連邦の『自分達への侵略者と見なした者への圧倒的報復』を見せつけられ、種族の生存のために自尊心をかなぐり捨てたのである。この顛末を後世のウィンダミアの人々は『血気に逸った王家が勝手に始めた戦争で多くの血が流れた』と冷めた目で見るが、現地の地球連邦軍の高慢さが招いた戦でもあったのは事実だ。そのため、同地の地球連邦軍部隊は編成替えの名目で粛清が行われ、かなりの高官が軍法会議で裁かれたという。その影響で、ウィンダミアのある星団の地域はしばし、アースフリートの直轄地域扱いになったという――



――こうして、未来世界の戦争に関わる事となったキュアドリーム/夢原のぞみ。親友を実質的に奪われた彼女の心の闇はここから急速に表面化する。プリキュアとしての後輩であり、この時点では彼女の妹分になっていたキュアフェリーチェ/花海ことは』はシャーリーからの連絡を受け、予てからの行動を実行に移す事を決める。『プリキュア5』メンバーの年長組であるキュアアクア/水無月かれん、キュアミント/秋元こまちの捜索である。それがのぞみを闇から救い出すための最終手段であった。ミルキィローズ/美々野くるみ、キュアレモネード/春日野うららの了承を得たフェリーチェはこの頃から、仮面ライダーディケイド/門矢士の協力を得る形で捜索を始める。だが、捜索は難航。やっと世界の特定に成功したのは、ここからしばらく経った後であった。その世界にのぞみが自ら訪れた時のこと――


――その時間軸――」

『貴方は私達の知らないところで、何か大きな闇を抱え込んでいる…。そう見えるわ。何を求めているの、のぞみ!』

『……力、ですよ、かれんさん。教師生活に行き詰まった時、何もしてくれなかった神様よりはよほど役に立つモノです』

『……!?』

『私の軍での先輩は、正義がなくとも地球は回る』って言っています。確かにその通り。だけど、自分の仁義だけは貫きますよ』

の場に、かれんしかいないのもあって、圭子と同じように、煙草型の喉の薬を咥える姿を見せた。精神的に大人である事を示す意図もあるのだろう。

『貴方には、そこまで追い詰められる前に、戻る道もあったはずよ、のぞみ』


『……訂正します。戻れなくなったんじゃない、戻る気が無くなったのかもしれません。ある時点で、もう……。ココとの約束を破りたくないから、教師生活は定年まで続けましたけど』

哀しげな表情ののぞみ。水無月かれんは、その表情で、目の前の『夢原のぞみ』が直面したであろう残酷な光景が何であるかを悟ってしまった。その一方で、戦う事で自らの存在意義を見出す、証明しようとする姿を『哀しい』と評する。

『職場の誰かがほんの少し優しければ――、貴方は教師生活に行き詰まる事もなければ、ココとどこかの時間で結婚して、パルミエ王国で幸せに暮らしていたでしょう…。でも、そうはならなかった。なれなかった。そうでしょう――?』

かれんの15歳とは思えぬ真理を突いた言葉。Gウィッチとしての夢原のぞみが後半生で味わった『孤独』、『挫折』、『疎外感』。それをなんとなく悟ったのである。静かに語りかけるぶん、のぞみにはものすごく重く感じた。そして、それを経た自分はもう、『14歳の夢原のぞみ』には戻れない。そう悟らせるような空気を纏っている。

『のぞみ。あなたは『変わってしまった』からこそ、プリキュアとしての現役の頃に郷愁を感じた。過去を乗り越えるために、いったいいくつの決意が必要なの?』

『…手厳しいですね、かれんさん』

『のぞみ、結束よりも結果が、意志の確認よりも、自分の望む結果が必要な人間も世の中にはいるのよ。哀しいけど、これが現実よ』

かれんは皮肉めいた一言を言う。目の前ののぞみが『後半生の何かかしらの悲しい出来事で挫折した』人生を辿ってきた存在であることを見抜いた上での一言である。

『裏世界じゃあ、この世に信奉すべきは剛力のみって、いつ、どこの誰が言ったのかは分からない格言が残ってます。わたしは確かに大人の世界に呑まれて、変わった。…だけど、一つだけ確かな事はあります。この頃の私は生きてるってことをプリキュアの力に賭けた。それだけは嘘にしたくないんです。ココ、ナッツのためにも』

のぞみは『プリキュアであった』という事実だけが自分に残されたモノであると明言し、持参したタバコ型の喉の薬を吸う。転生者である以上、精神的には『大人』である。それをかれんへ明確にする。

『兵器を裏で売りさばいて、平和を訴えてるド阿呆共に限って、道徳を説くものですよ、かれんさん。そういう連中の説く道徳ってのは欺瞞に満ちてるのが『お決まり』なんですよ』

のび太やフェリーチェの『仕事』に関わったが故に、考えが裏世界の論理に染まったらしき黒さをかれんに見せるのぞみ。どこか哀しげな雰囲気を見せる。

『ある世界じゃ、一週間で数十億が死んだ戦争をしても、断続的に戦争状態の国と国もあるんです。それに比べれば、第二次世界大戦はまだ環境に優しいほうです。世界の裏側を見ちゃうと、殺るか殺られるか。極端に言えばそれが真理なんですよ。力がなきゃ、全てが頭越しに否定されるだけです』

『私と、生まれ変われた何人かのプリキュアは職場で辛い目にあった。けっこう誹謗中傷にあいましたよ。魔法が普通にある世界でも、異質と見られたのは、ショックでした』


『プリキュアの力はリスクが有る場合の魔法と違って、目立った弱点がないもの。フェリーチェを見る限り、魔法と両立さえ出来る。嫉妬されて当たり前よ、のぞみ。特に、その力を特権と見てるような輩には』

『なんだか、現実って残酷だなって思っちゃって…。本当に』

『貴方の挫折もそうだけど、必ずしも理想で食べて行けるほど、現実は甘くはないわ。ココとの約束を守ろうとした事が、貴方を逆に追い詰めた事は残念だけど、それは可能性の一つ。ここでの貴方はそうなるとは限らない』

『ええ。それはわかってます。ここでのあたしは、このあたしを快くは思わないでしょうね』

『ある意味、貴方と対極の位置にいるもの。ここでの貴方には、家の都合で今日はナッツハウスに来れないって言ってあるけれど、貴方の強さを訝しっているわ。それとフェリーチェの事を。私はこの前のオールスターズの戦いで会ったけれど、あの子は会っていない。それも貴方達の言うことを鵜呑みにしない理由よ』

『それは面倒だなー…。今度、フェリーチェがここに来たら、自分の相手をさせます。それで強さを思い知ってもらうしか』

『それがいいわ。世界のバランスを取るためにも、平行世界の同一人物を長時間、同じ場所で会わすわけにはいかないもの。この前のような短時間はともかく』

のぞみはこの時にこう発言し、『オールスターズ大決戦』を経験できなかった自分の同位体にフェリーチェが戦う世界の厳しさを思い知らせる事を明言した。それからしばらく話した後、こう会話を締めくくる。

『また、来れたら来なさい。そっちの私の分も、話し相手になってあげる。それと…、もし、貴方と同じようになれたら…』

『……ありがとうございます、かれんさん。肩の荷が下りました』

『貴方は溜め込むから。今とそこは変わらないのね』

だが、この会話がなされた日から何程も経たない内にのぞみはタウ・リンに実質的に敗れ去り、とうとう精神バランスを崩してしまい、錯乱。独房に軟禁状態に置かれてしまう。フェリーチェはその知らせを以て最終手段を取り、キャプテン・ハーロックに懇願し、その世界を再び訪れ、かれんとこまちに正式に参戦を要請するのである。二人は承諾するが、その世界ののぞみに不満を抱かせてしまい、後日に勝負を挑まれるのであった。



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