短編『ある魔法少女とガンダムファイターの出会い』
(ドラえもん×多重クロス)



――地球連邦軍の軍備は次元世界においても有数のものである。これはフェイトやはやてが調査した末の結論だった。時空管理局はこの報告に紛糾した。一つの国や政体にはつきものの右派と左派、事なかれ主義、中道派などのせめぎ合いであった。

――新暦73年頃

「かの観測指定世界の軍備は質量兵器中心であり、大変危険である!政府に我が管理局の魔導師を常駐させ、軍備を放棄させるべきだ」

「君は馬鹿か?既にあの世界の地球は恒星間国家へ脱皮を始めている。宇宙の敵と戦い続け、遂には恒星間国家をいくつも崩壊させたほどの軍事力を持つのだぞ?そんな国がおいそれとぽっと出の我らに従うと思うか?ヘタすればあの破壊兵器で星ごと吹き飛ばされるだけだ」

この時の時空管理局会議の議題は数年前から引き続いて、地球についての議論であった。地球連邦に対する出方への見解は右派、左派、中道派のどれも分かれており、数年間の議論を重ねても未だに正式な結論は出ないままだった。当時の主流派の首魁であったレジアス・ゲイスはこの様子を“文明人のカルチャーショックを受けた未開人のようだ”と評したと言う。そう。彼等には初めてだったのだ。科学と魔術が併存している上に、双方のレベルがミッドチルダと同等か、あるいは一部でも凌駕しうる水準の世界は。

「では質量兵器をあのまま容認しろと?他の世界に示しがつかんぞ」

「君にはできるのかね?神の加護がついている聖人、あるいは超科学の塊であるあのスーパーロボットに挑んで倒すことが」

右派の議員はこの一言で押し黙る。SS級魔導師と言えども神の加護付きの聖人や星を滅ぼせるスーパーロボットを相手取って五体満足でいられる自信は0だからだ。地球連邦軍の軍備を見れば、真っ向から戦争を挑む事が如何に愚かな行為であるかをおろずと知らしめている。波動砲やマクロスキャノンなどの星を貫く殲滅兵器、ある一定の文明ならどこも生み出す破壊兵器である核兵器(かつてはミッドチルダも旧体制下で保有していたので存在は知っている)……。核兵器ならばまだ対応可能だが、さすがに波動砲などを宇宙から打ち込まれたら為す術はない。

「とにかくだ、あの世界とは敵対せずに友好的にしておくべきなのだ。そうすれば我々の寛容さを次元世界に示せる」


これら議論はミッドチルダ各地域に生中継されており、日本などの地球各国での国会中継と同じ感覚で見られている。ここにいる一人の少女もそうであった。なのはである。当時は17歳。一等空尉としての給金や出版されたインタビュー本などの印税、地球連邦軍少尉としての給金を自己の収入にしていたので、既に一財産築いて悠々自適な生活を送っていた。それは両親や兄弟も承知している。

「上の連中も大変だねぇ。まだこんな議論してるんだから」

「しょうがないよ。上の連中は建前上は質量兵器廃止を国是にしてるんだから。そりゃ揉めるよ」

なのはとフェイトはこの時期には同居生活を送っており、互いに仕事をしつつも団欒を楽しんでいた。なのはが師の影響か、ずぼらな一面を見せるようになっていたため、やりくりは一部、フェイトが担当していた。

「やれやれ。あっち寄りの人たちは何考えてんだか」

TVの中継に呆れ顔のなのは。こういう政治的な話には興味は薄いようだが、一端の考えは持っているらしい。自分の気質的に政治向けではないのはよく理解しているが、ある程度の見解を持っていなければ上層部にいいように使われる。それは色々な軍人仲間や師から教わった。

「あ、フェイトちゃん。ちょっと買い物行ってくるよ。折角の休暇だから長くなるよー」

「いってらっしゃい。夕飯は適当にやっとくよ」

「ごめんね〜それじゃ行って来ます」

なのはは仕事が多忙を極め、中々休暇が取れない。なので、たまの休暇には思い切り羽を伸ばす事にしていた。この日は繁華街に出かけ、食べ物などを買い食いしていた。近頃は個人として羽を伸ばせる機会が減っていたので、これ幸いとばかりにハメを外していた。

「おっちゃん〜チョコパフェちょうだい」

「おう」

地球から流れてきた文化である屋台。ミッドチルダでの起源は30年ほど前にどこかの地球から漂流してきた人々(日本人)が持ち込み、そのまま定着したとの事。地球から越してきても違和感が沸かなかったのは地球発の文化が多く存在していたためかもしれない。因みにこの時のなのはの服装は山伏風の赤心少林拳の道着。普段の姿だと公で有名すぎるので、途中でこの格好に着替えたのだ。髪形はサイドテールから普通のポニーテールに変えている。


「さて、次はどこ行くかな」

パフェを食い終わり、スックと立ち上がる。完璧な変装(……と本人は思っている)だ。バレるはずはない。が、服装と髪形を変えただけなので、知り合いにはバレバレであった。

「ありゃなのはじゃねーか。何して……むぎゅ」

「わ〜わ〜わ〜!」

何という偶然、ヴィータと鉢合わせしてしまった。咄嗟にヴィータの口を抑え、強制的に連行する。こういう時の手並みは素早い。軍隊生活の訓練で身につけたからだ。

「……ぶはぁ!て、テメー!殺す気かぁ!」

「ご、ごめん」

なのはは事情を説明する。休日に羽根を伸ばしたいがために変装したと。しかし変装というにはお粗末(髪形を多少変え、服装を山伏風の赤心少林拳の道着に変えただけ)なのでバレバレだ。

「あのなぁ……そんなお粗末な変装じゃ周りは騙せてもあたしらはごまかせねーよ。しかしまぁよく赤心少林拳の道着なんて持ってたな?」

「16の時に仮面ライダースーパー1の沖一也さんに護身術教わったから、その時にもらったんだ」

「なるほどな。その格好、お前にしちゃ頑張った方だぜ?」

「それどーいう意味ぃ〜」

からかうヴィータと、若干膨れ顔になるなのは。こういうところは子供時代から変わらず、間が抜けているといおうか、アホというべきか、なのはらしいと再確認するヴィータ。

「まっ、お前が羽を伸ばしたいっーのはわかるぜ。ガキの頃からお前はミッドチルダじゃ有名人だもんな」

そう。なのははミッドチルダでは2つの管理外世界の事件を解決して、13歳で教導隊入りした管理局が誇る俊英として名を馳せている。出身が管理外世界というのも管理局の広告塔にちょうどいい。更に11歳の時に味わったあの“生還”は管理局の英雄として宣伝するのにうってつけなのだ。当人としてはこのような宣伝を快くは思っていない。上層部には常に実力以上の結果を求められるようになるからだ。

「良し悪しだけどね。上からは実力以上の結果を求められるし、周りからは期待の眼差しで見られる。こちとらフツーの高校二年の女の子だっつーの!」

言葉使いに兜甲児などの江戸っ子の影響が出ている。子供の頃に兜甲児などが発する江戸弁を聴きまくっていたためか、いつの間にか影響されていたらしい。

「昔に比べると、オメェも荒っぽくなったなぁ」

「もう17だからね。高校生やってると苦労が多いんだよ、ヴィータちゃん」

「期末試験はどうしたんだ?またあの人達呼んだのか?」

「今回はなんとか実力で赤点すり抜けたよ。ヤマ張ってたのが歴史で当たってさ」

「テスタロッサにはなんて言われた?」

「フェイトちゃんは呆れてたけど、試験が終わったら野球見に行ってたよ。ほら大阪のあの球団の試合」

「ああ、タ●ガースか。アイツも好きだなぁ」

フェイトは地球滞在中に日本野球で伝統ある、大阪の縦縞で、猛虎な球団の熱烈ファンになっていた。中学以降は暇が取れると、シーズン中は数週間にいっぺんの割合で試合を観戦しており、試合結果に一喜一憂しているという意外な一面を持つようになった。この年のなのはの地球でのタ●ガースは久しぶりの黄金期を迎えており、敵なしの状態。クライマックスシリーズ進出は確実な情勢であった。そのためフェイトは勉強がはかどり、成績が上昇したらしい。

「うん。日曜日には地球に戻って見に行くって」

「……は、はは…」

ヴィータはフェイトが熱烈な野球ファン化していた事に意外そうにも、呆れたとも取れる反応を見せる。なのはもこればかりは面白そうらしく、笑っている。敏腕執務官も野球が絡むとただの野球女子になってしまうという、なのはが読んでいる漫画の、サッカー小僧な某『身体は子ども、頭脳は大人』な名探偵を思わせる状態だからだろう。こうしてなのははヴィータとの会話を終え、市街地を離れて森林地区へ向かった。
















――ミッドチルダと23世紀の地球が国交を結んではや数年が経過していた。軍人や政治家、民間人の交流や観光もかなり活発になり始めていた。そんな中、一人の男が修行のためにミッドチルダを訪れていた。その男はかつて地球をデビルガンダムの脅威から守り、シャッフル同盟のリーダーとなったドモン・カッシュである。彼はレイン・ミカムラと結婚して籍を入れたもの、武道家である性分は抑えきれなかったようで、愛機のゴッドガンダム(本来はネオジャパンコロニーの所有物だが、ドモンが優勝を勝ち取った後は半分私物化しているフシがあり、修行にはレインの整備を受けた後に持って行っている。)と共に修行のため森林地区へ出向いていた。

「ふんっ!」

ドモンは大木を指一本の突きで倒してみせる。23世紀現在の状況ではドモンは人間としては、唯一無二の『流派東方不敗』継承者である。現在は自らの弟子となる若者を探しながら、自らの更なる限界を探す旅の最中だとの事。

「師匠や兄さんたちが逝かれてもう何年たったか……思えばあっという間だったな」

ドモンは自身が初めて戦った日々を回想していく。シャイニングガンダム、そしてゴッドガンダムと共に駆け抜けた闘い、そして今は生涯の伴侶となったレイン・ミカムラへの告白。

『俺は、お前が……お前が……ッ!お前が好きだぁぁあ!!!お前が欲ぉしいぃぃぃ!!!レイィィィンゥゥゥ!!!!』

ドモンにとってこの愛の告白は一世一代のものであったが、台詞はその場で考えついたものをそのままストレートに言っただけである。だが、ストレートなこの言葉がデビルガンダムの呪縛からレインを解き放った。2201年現在、この告白は『地球圏で最も恥ずかしく、最も熱い愛の告白』としてギネスブックに載せられている。

(後から思えば、アレは恥ずかしかったな……。まぁ、終わりよければ全てよしというし)

当人も事後から振り返ると恥ずかしかったらしい。今はアツアツな結婚生活を送っているが、レインを怒らせるとガンダムで追いかけてくるので、ドモンはロンド・ベルの仲間に頼んで、定期的に自分の近況報告をしてもらっている。何時の時代も女は強しということだ。早くも恐妻家の片鱗を見せているドモンであった。



「さぁて……久しぶりにやってみるか!」

彼はガンダムの搭乗者と言っても、ほぼスーパーロボットに近い特性を持つモビルファイター(モーションキャプチャーを極限まで発達させたモビルトレースシステムを操縦系に採用しているタイプの機体をそう総称する。機体のダメージをパイロットにフィードバックさせる機構がある高度なもので、競技用という名目とは言え、MS関連技術では最高峰の技術が使われている。その特性上、武道家であるほうが真価を発揮する)の搭乗者である。鍛えあげた身体能力は完全にゼントラーディ人すらも遥かに越え、高層ビルを生身の蹴りで押し出せるというバトル漫画の主人公級の所業を平気でできるのだ!




『俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!』

彼は必殺技を試し撃ちしようと気を高める。流派東方不敗の最終奥義“石破天驚拳”だ。ガンダム越しで放った場合は正にスーパーロボット級の破壊力を持つ。生身で放っても何mもある大岩を一撃で粉砕できるが、ドモンはこの技とフィンガー系の技と掛け合わせ、威力を高めている。

『ばぁぁぁぁく熱!ゴォォぉッドフィィィンガーァァ……!石破!!天驚ぉぉぉぉぉぉけぇえええん!!』

この時、ドモンの体が黄金に輝いているように見えるが、これは彼が明鏡止水と呼ばれる境地に達しているせいである。その境地で放たれた石破天驚拳は目標である大岩を一撃で粉砕し、地面を深く抉る。

「よし……ここのところ撃ってなかったから鈍ってるかと思ってたが、そんなことは無かったな」

安心するドモン。地球圏で並び立つ者はもはや同じシャッフル同盟(その歴史は古く、一説によれば紀元前には既に存在していたとされる。古くから戦争が一線を越えてしまうのを阻止し続けたが、ドモン・カッシュらの先代の時に当時のキング・オブ・ハートであった東方不敗マスターアジアが度重なる戦争で疲弊した地球の現状を憂いるあまりに悪の道へ堕ちてしまい、同志たちと相争ってしまった経緯がある。ドモン・カッシュらはこの先代時に起こってしまった悲劇を避けるために、シャッフル同盟としてのルールを一部緩和し、先代らまで禁止されていた、紋章継承後も一般の格闘技大会などに普通に出てもよいとしたとの事)の面々のみ。ドモンは地球連邦がミッドチルダと国交を確立させたという報を聞きつけると、ガンダムファイト優勝経験者&シャッフル同盟の一員である自らの身分を活用、ミッドチルダへ足を運んだのだ。彼は先ほどなぎ倒した木を明鏡止水の境地に達した状態での手刀で細切れにし、薪にすると火をつけて、その上に食料を乗せて焚き火をする。その火に釣られたのか、そこへ人の気配がやって来る。

「おい、そこにいる奴。隠れてないで出てきたらどうだ?」

ドモンほどの達人だと並の軍人、武道家程度の気配はすぐに分かる。勘弁したらしく、気配の主が現れる。

「あ、やっぱりわかりました?」


なのはだった。ドモンの姿を見て、すぐに誰であるか分かり、しばらくこっそり後をつけていたが、ドモンにはバレバレだったようだ。

「何者だ?」

「別に怪しいものじゃありません。時空管理局の者です」

「管理局の魔導師さんか……。なぜこんなところにいる?それにその格好は赤心少林拳の道着だろう?地球出身者か?」

「ええ。そうです。今日は休暇で……。それとこの格好は前にある人から護身術教わったんで、それで」

「さしずめ、沖一也にか?」

「一也さんを知ってるんですか?」

「沖一也とはメカトピア戦争の時に会って、手合わせした事がある。……中々の男だった。奴が仮面ライダースーパー1だったのを知ったのは戦後の事だかな。ところで、お前の名はなんていうんだ?俺の名はドモン・カッシュ。地球連邦は、ネオジャパンコロニーのガンダムファイターだ」

「高町なのはです。管理局の一等空尉をしてます」

「高町なのは……聞いたことがあると思ったら“管理局のエースオブエース”さんか」

「あたしのことも知ってるんですね」

「まあな。これでおあいこさ」


お互いの事が別の世界にまで知れ渡っていた事を笑い合う二人。ここで二人は地球連邦とミッドチルダが国交を確立させた事による“世界の狭さ”を実感した。なのはがドモンになぜ次元世界に来たのかと問うと、彼は『地球圏で流派東方不敗にまともに対抗できるやつは仲間内にしかいなくなったから、次元世界に興味があった。昔のTVゲームの主人公じゃ無いが、俺より強いやつに会いに行く的な理由さ』と答えた。なのはは以前からドモンの強さについてはロンド・ベルの同僚に話を聞いたり、ガンダムファイトの時の記録映像で十分すぎるほど見ていたので、その考えはわかるような気がした。

「あの、ドモンさん。ちょっと聞いていいですか?」

「なんだ?」


「修行に来たってことは持ってきたんですか?ゴッドガンダム」

「もちろんだ。いざとなったら役に立つからな」

「いいんですか?それ」

「ガンダムファイト用の機体はファイトが終わるとお役御免になる場合が多いんだ。次のファイトまで年単位で間があるから新しい機体がどんどん造られていくからな。中には同じ機体で3連覇した奴もいるけど、それは例外中の例外だ。それでデビルガンダムの一件の後にコロニーから貰い受けたのさ」

ガンダムファイトには一種の、旧各国の流れを組むコロニー間の代理戦争的な側面がある。そのため、ファイトの度にその時点での最新技術を惜しげも無く投入したガンダムが新造される。ゴッドは前大会時点での最強の機体だが、次の大会にはゴッドの後継機か発展型が用意されるという情報もあるとドモンは言う。

「へえ……」

なのははドモンから焼肉を手渡され、それを器用にほうばる。さすがはドモン・カッシュ。サバイバル術も心得ているようだ。

「これからどうするんだ?」

「買い物終わったんでドモンさんについていってもいいですか?最近、体動かしてないんで訛ってるんです。士官にもなるとデクスワーク多くなってきてるんで」

「それは別に構わんが……?俺のはハードだぜ?」

この後、フェイトに断りを入れたなのははドモンの修行についていった。ドモンはもう地球人(ゼントラーディ系含めて)の身体能力を超越しており、飛天御剣流の心得を得ていたなのはでさえ、ドモンの動きについていくので精一杯であった。

(はぁ……はぁ、はぁ……。こ、これがドモン・カッシュ……本当にガンダムファイターはバケモノ……これで息乱さないって……どーいう肺と心臓してんのよ……)

数時間の全力疾走でもドモンは息一つ乱していないが、なのはは息も絶え絶え。ドモンはかつての東方不敗よりは落ちるが、それでもオリンピック選手が裸足で逃げ出すレベルの速さを息一つ乱さず維持できる。なのはもこの頃は常人を超えるレベルの身体能力を身につけてはいたが、もはや人間の領域を超えたドモンと比べると大人と子供ほどの差があった。



――この日、ドモン・カッシュと知己を得たなのはであったが、彼を含めた、思春期に出会った者達の都合上、青年期真っ只中の後年には“砲撃が可能な近接格闘形の魔導師”として知られるようになる。後の19歳時にバダンから名指しされた異名と含めて、少なくとも三つ以上の通り名で呼ばれるようになった。しかしこれは平凡な少女を自認する当人としては不本意だったと、18歳時に小学生時代からの親友であるアリサ・バニングスと月村すずかに語った。だが、アリサからは『どこの世界に魔法使って、剣術の心得があって、軍人な女子高生がいるのよ?』とツッコまれたとか。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


目次

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.