短編『ナチスドイツとティターンズの切り札』
(ドラえもん×多重クロス)



――ナチス・ドイツ及びティターンズ残党が奇しくも同時期に実用化に成功した、完全な“スーパーキャビテーション魚雷”。これは理論そのものは20世紀後半から存在していた『古い』概念だが、潜水艦閥の拡張を恐れた水上艦閥や航空閥の軍人らによって闇に葬られてきた歴史を持つ。それを双方は異なる思惑で実用化し、それぞれの有力兵器として配備した。(原理的には液体の流れで起こる空洞現象を意図的に起こし、応用した物)











――ケース1 ティターンズ残党軍の場合


ティターンズ残党軍は洋上艦艇としての戦艦や重巡洋艦を一撃で撃破、もしくは撃沈せしめる魚雷として封印されていた『それ』のデータを参照に完成させた。最盛期学園都市が配備させていたモデルの間接的後継モデルにあたる。威力は23世紀炸薬の効果で初期型超弩級戦艦であれば一撃轟沈せしめる。二発もあれば『金剛型』及び『扶桑型』世代は撃沈可能であった。流石に『ビック7』世代や『大和型』は想定外であるのだが、35cm砲艦であれば撃沈を容易にするこの魚雷は宇宙空間の資源衛星内の工廠で生産、水上艦及び潜水艦の武装として配備された。




――1944年 扶桑 呉周辺海域

ティターンズ海軍所属潜水艦“剣竜”(M型潜水母艦。ジオンがマッドアングラー級として運用していたものとほぼ同型艦)

「ソナーに感あり……データ照合……金剛型です」

「金剛型か。あの魚雷のテストにちょうどいい標的だ。どこへ向かっている?」

「軍港を出たところです。湾内をゆっくり進んでいます」

「よし。自国領域だと思ってたるんどるな。一番発射管開け。あのクラスの戦艦なら一発で事足りる。奇襲の第一弾だ。なお、空襲部隊は魚雷命中に呼応して襲う手はずとなっている。発射と同時に突撃する。護衛駆逐艦など構うな。どうせこの時代の対潜装備ではこの艦を探知すらできん。安全深度で待機しつつ、網に掛ける」

「了解」

彼等は呉軍港での撹乱を任務にする。水中用MSとしてアクア・ジム、水中型ガンダムを積むという、潜水母艦と言うよりは潜水空母と言うべき大型艦。本来は通常の潜水母艦として設計建造されていた同艦はMS時代の到来により、かつてのイ400潜水艦の系譜を継いだ潜水空母としてジオン仕様を逆輸入する形で設計変更され、戦後に造られた。ティターンズが連邦軍を一時的に支配下に収めていた際に配下に加えた艦の一つ。水中MSは温存し、潜水艦本来の任務に徹するのだ。


「てぃ!」

その魚雷は一発だけ放たれた。その雷速はこの時代では神速とも言える300ノットオーバー。もちろんあまりの速さに護衛駆逐艦らは無力であった。まっすぐに金剛型戦艦へ向かっていき……弱装甲部の水面下を23世紀の高性能炸薬で大破壊した。盛大に水面下を破壊された金剛型はダメコンすらままならぬ内に転覆、沈没した。これは後に霧島であったと判明する。ついでに狼狽えている護衛駆逐艦もの共に屠った彼等は近くにいる友軍空母に攻撃成功を打電。ここから怒涛の空襲が始まり、扶桑海軍艦艇郡と軍港を火の海へ変えていくのだ。このケースを重視したティターンズは魚雷を逐次、増産して海上通商破壊や艦艇攻撃に活用し、各国を震え上がらせていく……。























――ケース2 ナチスドイツの場合

ナチス・ドイツの場合は第二次世界大戦直後から数十年の月日をかけて実用化し、生産設備を確保していた。が、仮面ライダーストロンガーの時代に彼等との攻防で失われた。生産設備の再建は念のために2030年代まで先延ばしした。それは功を奏し、仮面ライダーが眠りについた100年をかけて実用試験を繰り返し、実用段階に達したモノをミッドチルダへ送り込んだ。直ちにUボートへ搭載され、停泊中の一般船や輸送艇を痛撃していた。








――ナチスドイツ 占領区間 

「例のあの魚雷の具合はどうか」

「ハッ。順調であります。既に管理局籍の輸送艇や一般船舶を痛撃し、この一週間で10万トンあまりの商船及び輸送艦を撃沈致しました」

「ご苦労。潜水艦による通商破壊は上々のようだな」

「元帥閣下、魚雷の配備数はどうなのですか?」

「うむ。例の魚雷の製造の割合を40%に増加させた。Uボートへの配備数も来月から増えるだろう。水上艦では日本海軍に勝てないが、潜水艦ならこっちの独壇場だ。駆逐艦を5隻沈めたそうだね」


そう。潜水艦はドイツ海軍のお家芸である。彼等は戦前と戦中のノウハウを保持したままで戦後型潜水艦を作った。それは近代化途上の扶桑海軍を苦戦させる成果を上げ、稚拙な対潜装備の扶桑海軍の朝潮型駆逐艦5隻を一日で撃沈するという記録も残している。

「ええ。アサシオタイプなので、もの足りないですがね」


「カゲロウタイプやユウグモタイプの近代化タイプには気をつけろ。CIWSや高度なソナー、アスロックを装備している」

「ええ。こちらも例の魚雷で対抗します」



スーパーキャビテーション魚雷。その独自型をそれぞれの技術で開発し、配備を進めるティターンズとナチス・ドイツ。それらは特に対潜装備の発達が遅れているウィッチ世界にとって重大な脅威として捉えられた。金剛型戦艦を一撃で屠れる(扶桑の工業力は大日本帝国比10倍であるので、それに見合った冶金技術がある。そのため防御力については大日本帝国海軍のそれより優れている)魚雷は酸素魚雷でも成し得なかった。旧型とは言え、超弩級戦艦を一撃で沈没に至らしめるというのは重大事。連邦政府には学園都市の兵器のデータが辛うじて残ってはいたもの、対抗策を講じるには予算がないという情けない状態だったが、海軍再建のための研究が行われる過程で予算が確保され、研究が始まった。その策は扶桑や亡命リベリオン軍などにもたらされ、CIWSやアスロック、CICの艦艇への設置などが行われていった。

「うむ。これは古くから行われているイタチごっこだ、十分に留意するように」

レーダー元帥は駆逐艦やフリゲート艦と潜水艦との競争を『イタチごっこ』だと評した。絶え間なく続く潜水艦と対潜装備の発達競争は終わりがないマラソンのようなものだからだ。

「わかっております。連邦軍が宇宙戦艦ヤマトを増援に送ったという情報もシンパより入電されました。ティルピッツ奪取作戦をデルザー軍団に通達します」

「うむ」





如何に彼らといえども、宇宙最強の誉れ高き宇宙戦艦ヤマトと正面からぶつかり合える戦艦は持ちえていない。ゆりかごも確かに強力だが、ヤマトに比べると攻防速共に巡洋艦レベルでしかない。そこで考えついたのが、連邦軍が次期旗艦候補として建造した戦艦の二番艦「ティルピッツ」の奪取だ。一番艦は既に連邦軍が竣工、配備させているが、二番艦は建造中の段階だ。それを奪うのだ。

「竣工した瞬間に艤装員に潜り込ませたシンパが手はずを整えます。あとはデルザーが乗員を皆殺しにすれば万事解決です」

「三番艦が建造初期段階なのが惜しいな。しかし波動エンジン艦さえ手に入れれば、ヤマトとやりあえる。そのためにゆりかごを失うのは想定内だ。そのためにシャドームーンに控えてもらった」

彼等は元ゴルゴム世紀王であるシャドームーンと手を組み、ゆりかごの機能停止状態が起こっても侵入した魔導師を皆殺しにできるようにしておくためだ。

「彼ですか。信用してよろしいので?」

「彼はゴルゴム時代の記憶を失っている。そのためか仮面ライダーと戦うという闘争本能だけを頼りに生きている。今の彼はゴルゴムとは関係のない一匹狼なのだ。」









レーダーはシャドームーンを一匹狼と評した。それは過去の栄光と引き換えに得た生を仮面ライダー打倒に費やす彼の生き様を評価しているのだろう。シャドームーンは今や悪の組織にとって、RXやZXに対抗しうる唯一無二の存在。バダンは意図的に月光を彼に浴びさせ、RX化(RXは創世王の最盛期の姿に酷似した姿であるとバダンはタイムマシンで掴んでいた。仮定として、太陽のエネルギーが本来、BLACKの体がシャドームーンのキングストーンで起こすはずであった、創世王への進化を擬似的に起こしたと結論づけた)させようという話も出ている。

「万が一、彼がRXに敗れし時は月光を浴びせよ。RXがBLACKから進化したように、月のキングストーンが奇跡を起こすかもしれぬからな」


それは彼等がクライシスと異なり、RXの誕生の秘密を全て解明していた故の発言であった。シャドームーンがもしRX化すれば、RXの戦力的アドバンテージは失われ、対等なところまで持っていける。それがバダンの目論見なのだ。それは今や潜在的パワーはZXをも凌ぐRXへの畏れなのだろう。

「どうせ聖王のクローンはオリジナルには及ばん。それはネオ・ジオンのクローンニュータイプが証明している」

「ですな」

それはエルピー・プルのクローンである数多のクローンニュータイプのことだ。プルツーは高い能力を持てたが、それ以降はいまいちパッとしない能力であったのを踏まえてのものだ。そのためにシャドームーンに控えてもらったのだ。それがナチスのジョーカーであった。



















――ティターンズ残党に連邦政府や軍内のティターンズ派(アースノイド至上主義者や反エゥーゴ系の派閥)が極秘裏に横流ししたMSや物資は実のところ旧ティターンズ系MSとガンダリウム合金などの物資。これはスペースノイドとの融和を進める旧エゥーゴ系軍人や政治家を侮蔑する右派議員(主にスペースノイドとの戦争で歴史上の大都市を失ったフランスやアメリカ系)が軍部の少数派に成り下がっている地球至上主義者を取り込んで、かつての多数派だったティターンズ残党へ極秘に援助物資を送っていた。その最大の目玉は一機のガンダムだった。








――シアトル とある豪邸

『G-X、送って大丈夫なのか?』

『なあに、ティターンズ系MSは疎んじられてトリントンや北極や南極送りにされとるんだ。問題ない。あれは元々、ティターンズのものとなるべきだったモノだ。あるべきところに戻るだけだ』

『パイロットがいなければ真価は発揮できんぞ。ペズンの反乱ではブレイブ・コッドが乗ったからあの強さだったのだぞ』

『わかっている。幸いにしてエース級がいる方面軍であったためにアレを乗りこなせるパイロットはいるそうだ。武装は正規仕様。ネオ・ジオンの奴らが重武装にしたドーベンウルフなどというものとは違う』



彼らはローレン・ナカモト博士のつてで手に入れたガンダムmk-Xをベースにしてネオ・ジオンが量産したドーベンウルフを酷評しつつ、シンプルな機体構造を持つG-Xを絶賛する。実際、Sガンダムをいま一歩のところまで追い詰めたポテンシャルは高く評価されている。

『近々、民間船に偽装した我が方の船で先方に運び入れる。プリベンターの連中に気取られんように末端の連中を買収しておく』

『頼むぞ。ティターンズ再興のため、そしてスペースノイド共に思い出させてやる。我々の軍靴の音を』





彼らは地球至上主義の復権を目論んでいた。ティターンズの崩壊はアースノイド優越思想の没落をも意味していた。エゥーゴのグリプス戦役での勝利とレビル将軍の帰還は改革派の復権を意味した。スペースノイドとの融和を信ずるレビル将軍が軍を掌握し、ティターンズを初めとする地球至上主義者達を悪と断ずると、連邦政府はプロパガンダとして、エゥーゴを正規軍の組織として祭り上げた。カミーユ・ビダンやジュドー・アーシタを“アムロ・レイに続く、若きニュータイプ戦士”と宣伝し、彼らに連邦軍籍を与えた。そして敗者のティターンズ兵士らは疎んじられ、僻地送りにされた。それは将校も例外でなかった。それが戦後にリベラルを気取って、議員に転じた元高級幹部らは表向きは穏健派を取り繕いつつも、実際は地球至上主義を捨てていない。偽りの生活に甘んじつつも、裏ではティターンズ残党へ援助する。この『隠れティターンズ派』とでも呼ぶべき風潮は連邦軍の中でもそれなりの支持を得ていた。特に一年戦争以来の惨禍で昔年の繁栄の残照すら失った旧アメリカ合衆国地域や旧フランス共和国地域出身者に多く、ギレン・ザビらのスペースノイドの指導者らが起こした所業の代償とも言えた。

『あそこのエゥーゴにはZガンダムがいるというぞ?』

『カミーユ・ビダンか……面白いではないか。積年の恨みを晴らせる千載一遇の好機だ』





彼等は一時は栄華を誇ったティターンズを討ち滅ぼした元凶である、元エゥーゴ出身のニュータイプであるカミーユ・ビダンと正規軍のRX-78に代わる新たなシンボルであるZガンダムを憎んでいる。それを倒すためにガンダムを用いるというのは彼等も連邦軍人であった事実とガンダム信仰の表れであった。Zガンダムは今やティターンズ派からは不倶戴天の仇敵、エゥーゴ系の多数派からは勝利と抵抗のシンボルとして見られている。


――Zを倒す時こそがティターンズ系派閥の復権の時。

『ティターンズに乾杯』

『地球に乾杯』


ティターンズの理想とは別に、地球が恒星間国家化する連邦の中で有名無実化するのを恐れる心がティターンズの復権を望む者たちを後押しする。これは地球環境を軽視した歴代のスペースノイド国家の起こした戦争の代償と言える現象であった。アースノイドとスペースノイドの間に横たわる対立は、かつての人類の遺産類(かつての世界遺産含め)をゴミとしか見ないスペースノイドの強硬派が主に引き起こしたといえるが、多数派のスペースノイドにとってははた迷惑でしかない。歴史の皮肉であった。




























――こちらは連邦軍とプリベンター上層部の会合。レビル将軍と藤堂平九郎軍令部総長は、プリベンターのトップであるプリベンター・ゴールドこと、レディ・アンが会合した理由は隠れティターンズ派の動向についてであった。レディ・アンは弱冠19歳でトレーズ・クシュリナーダの副官を務め、共にOZを束めていたほどの逸材。OZ解体後は軍を離れ、連邦政府の機関であるプリベンターのトップに就任。そこでも敏腕を振るう女傑である。


「単刀直入に申し入れますが、隠れティターンズ派は政府の議員や軍部にかなりの支持を得ています。これはかつてのティターンズへの郷愁もありますが、政府が進めるスペースノイドの権利拡大政策への反発があると我々は見ています」


「さながら南北戦争や公民権運動の時のアメリカのようですな。馬鹿らしいにも程がある。今や宇宙無しでは地球は生きられんというのに。デラーズ・フリートはティターンズの台頭を招いたが、一部は成功したというべきか」

藤堂平九郎はデラーズ・フリートとの戦いの当時は宇宙軍の旧・地球軌道艦隊の上級幕僚の一人であった。そこで目の当たりにした星の屑作戦。この時のデラーズ紛争で北米の穀倉地帯が壊滅的打撃を被った事で、コスモクリーナーDで環境を往年に近い状態へ戻した現在でもデラーズ紛争で起こった地球の食糧危機は去っていない。供給量が大きく減ってしまい、惑星エデンや友邦のバード星などの近郊の星からの輸入が半分以上になっているからだ。北米地域の住人が反スペースノイドに舵を切っても文句が言えない状況である。


「エギーユ・デラーズはスペースノイドの発言力増大と連邦政府への一撃加えを目論見、半分は成功、半分は失敗しました。しかしそれはアースノイドにジオン残党への恐怖を埋めつけ、ティターンズの台頭を後押ししてしまった。それが現在の反スペースノイドの世論に大きく関係しています。彼の置き土産は私がOZ時代にしようとした事と比べても業が大きい」

レディ・アンはトレーズ・クシュリナーダ存命中は彼のために色々と汚いことも行った。だが、エギーユ・デラーズが残した業はそれがいたずら小僧のいたずらに見えてしまうほどに大きい。スペースノイドとアースノイドの間の溝を決定的に大きくしたという……。




「ええ。奴はギレンの親衛隊だった。それがあれを招き、ティターンズ対等の下地を自分で作ってしまったと思うと同情したくなりますが、ティターンズのほうがあの場合は大義があったと言わざるを得ない。が、ジオンは何度も蘇ってくる。ゾンビと言おうか、なんと言おうか……。そして驚きなのはジオン・ダイクンの忘れ形見が赤い彗星ということです。彼は何をしようとしているのでしょうか」

「アムロ・レイ少佐との決着でしょうね。シャア・アズナブルは彼との決着に執着していると我々の間では有名です。そのためにνガンダムにサイコフレームをつけさせたという情報もあります」

「アムロ・レイか。一年戦争のガンダムの坊やが今や赤い彗星が執着するほどの撃墜王とはな……年は取りたくないものだ」

レビルは一年戦争中に当時、15歳ほどだったアムロと対面している。当時はケツの青い坊やだったアムロも2201年ではすっかり一端の将校である。時間の流れというものをこの場で実感したのは一年戦争時からタイムスリップしてきた彼であったのかもしれない。レビルは赤い彗星の復活を予見し、アムロ用の新型ガンダム開発と配備を前年に承認した。νガンダムの強化発展型であるHI-νガンダムである。

「HI-νガンダムを彼に与えた。これで抑止力になればいいが……」

そう。ネオ・ジオンの再興を阻止するためにレビルはHI-νガンダム開発計画と“UC計画”にゴーサインを出した。ガンダムの名を活用した抑止力だ。以前の連邦政府はガンダムタイプの平時運用に及び腰で、一時は『核兵器同様の扱いで秘匿』扱いだった。だが、今はガンダムの威力を“戦争抑止力”、“戦争に勝利する鍵”とし、平時でも運用が許可される。ロンド・ベルのガンダムが平時に没収されなくなったのは連邦政府の及び腰が戦争を招いたことからの反省である。

「ロンド・ベルに正式にシナノを配備させる。既に与えてあるが、将来的に彼等には外宇宙に出て貰う予定だ。ムサシもできれば回したい。いいな、藤堂?」

「軍令部のほうは儂がなんとかしよう。護衛艦もクラップ級からドレッドノート級と戦闘空母部隊一式に編成を変えておこう。レディさんロンド・ベルにミッドチルダの状況を伝えてください。こちらでは状況がつかめんのです」

「わかりました」

彼等の言葉からはロンド・ベルの艦艇編成が替えられる事が伺える。ミッドチルダ遠征のために配備艦艇の編成替えが行われるのだ。将来的な外宇宙遠征も視野に入れ、主力部隊の編成は全面的に恒星間航行艦へ切り替えられる。ロンド・ベルで一番前の矢面に立つのが、なのはやフェイト、のび太らが暮らしていたのはアムロやブライト直率の第一群(司令直率艦隊であるが、メカトピア戦後は艦艇数が増加され、正規空母機動艦隊と遜色ない数を持つ。毎度おなじみの実質的な主力部隊)。そこの艦艇に新規に艦艇を配備、ラー・カイラムなどを代換するのだ。ラー・カイラムは」第二群に転換配備され、引き続き治安維持任務につく。2201年度をもって、第5から6郡までの分艦隊の新設がなされたためだ。これに伴ってロンド・ベルの組織も外郭独立部隊から独立艦隊へ格上げ、改組された。13番目の独立艦隊としてである。そのため波動エンジン艦を配備可能になったのだ。(彼等の予算が2倍に増えたので)

「隠れティターンズ派の処理と、ロンド・ベルへの情報伝達と情勢分析をお願い致します。私達はこれで」

「お任せください」













この時の会合でプリベンターと軍との間に結ばれた密約は直ちに施行された。隠れティターンズ派偽装輸送艦は大方が一週間以内にプリベンターに接収されたが、既に最重要物資“G-X”と“スーパーキャビテーション魚雷(2201年式)はティターンズ残党へ送られた後だった。この事件はプリベンターの記者会見で公にされ、連邦軍やそのバックの議員で近年まれに見る大スキャンダルとして報じられ、国防族議員の一部と軍部の該当管理部署(輸送艦担当)のトップ幹部の首がまとめて飛ぶ顛末で終結を見た。人々には連邦軍が抱える闇を自覚したが、以前なら握り潰したであろう規模のスキャンダルをきちんと白日の下に晒したと言う点を評価。結果的に連邦軍の威信を回復させる手助けとなった。
























そして……ロンド・ベルへ新規に配属された航宙戦艦シナノ 格納庫


「ついに最終調整が終わったか……」

アムロは搬入される新たな愛機、HI-νガンダムが正式に配備されたのに感無量で、思わず嬉し泣きしている。シーブックがテストしたら不具合があったので、アナハイムへ戻されていた。それがようやく自分のもとに搬入されたので嬉しいらしい。火器も新規製造された専用の新型。装甲厚やフレームがロールアウト当初より増強された結果、スマートさとがっかりしたマッシブさが同居する力強い姿となっていた。総合性能もロールアウト当初より向上しており、MF並みのプロレスをしても関節可動に支障が出ないという。


「アストナージ、整備マニュアルに目を通しておくように。俺は操縦席に座って具合を見る」

「了解しました」

アムロは一年戦争後に身につけた癖として、新型などは自分で操縦席に座ってみて感覚を覚える事があった。自分の愛機の具合は自分でも具合を見ておけと士官教育期間中に改めてロイ・フォッカーから教わったのを守っているのである。

「ン……操縦系の反応はいいな。新型のシステムとサイコフレームのおかげだな」

操縦桿はグリプス戦役時までのスティック式に戻されていた。アームレイカー式は欠点が戦線で指摘されたのを期に廃止されたためだ。だが、操縦補助機能はグリプス戦役時より遥かに向上している。試しに動かしたが、動きを“想う”だけで腕部が思うがままに稼働した。それも俊敏に。

「…凄いな。これが最新技術の威力なのか」

アムロはモニター越しに映る自機の腕部の動きに唸った。アナハイムの技術者から“操縦系に別の新型ガンダムの技術をスピンオフして組み込んだ”と説明されてはいたが、予想以上の動きだからだ。

「まともな頃の親父が見たら泡吹いてぶっ倒れてるなこれは」






アムロはふと、16歳の時に死亡通知が届いた実父のテム・レイの事を思い出した。テム・レイはファーストガンダムの開発に関わったなどの優秀な技術将校だったが、サイド7から吸い出された際に酸素欠乏症を患った事で軍からお払い箱にされ、サイド6の安アパート暮らしに身を落としていた。アムロはそんあ父に耐えかねて父との交流を断ったが、一年戦争が終わった後に死亡通知が届けられた。死因は頭の強打による、くも膜下出血だった。
アムロは母親との交流を断ってはいたが、父の死亡を伝えるために一年戦争から二年後に再会した。母と冷えきった関係にあったアムロはその時を今生の別れとした。そのためかアムロの性格はララア・スンと出会う前と後ではところどころで別人のようであるという。ララア・スンとの出会いで愛を知ったアムロは青年期を迎えると、少年期の特徴は薄れ、シャアが『どこか若さを残したまま』であるのとは対照的に大人びた態度を見せることが多くなり、一人称も『俺』を使う事が多くなった。そうすることでアムロは大人になったのだ。そんな彼がRX-78の正統後継機種を設計するというのは健常者であった頃のテム・レイを知る古参の技術将校らは“血は争えない”と評する。

(親父とMSについて語り合ってみたかったな。生きてればもう50代後半なはずだし












――確かに在りし日のテム・レイがこの機敏な動きを見せるHI-νガンダムを目の当たりにしたら泡を吹きかねない。まるで人間のようだからだ。手動操作に加えてこの新型システムを加えて搬入された新生HI-νガンダムは同時期完成の次世代型ガンダムであるユニコーンガンダムに匹敵しうるポテンシャルを持つ。反応速度は一年戦争中の常識を超えた速さ。アムロは内心で“父に自分の設計が使われたνガンダムを自慢したかった”という追想を吐露する。これは最強のMSパイロットの異名を欲しいままにする彼の亡き父への心残りかも知れなかった。



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