短編『扶桑皇国の航空行政事情』
(ドラえもん×多重クロス)
――1944年 初冬
ウィッチ世界の航空戦体制は史実でいうところの開戦時と大差ない状況であったが、ティターンズ残党が史実で彼らが招来生産するはずの次世代機を以って各国陸海空軍航空隊の行動をほぼ封殺した事で急激な進歩を見た。扶桑皇国は各国に先立って連邦軍の援助を受けられたため、史実大戦後期の機体を各国に先立って装備する事に成功していた。これは開発スピードが連邦軍の手で早まったためだが、用兵側の一部からは運動性不足を挙げ足に取って、『こんなの役に立つのか!?軽戦闘機でいいやん!』と文句が出ていた。これは陸海軍のベテランパイロットの共通事項であった。
――海軍 横須賀航空隊
「このバッキャロー!!」
「あうっ……!」
横須賀航空隊に転属した坂本は同基地に顔を出していた黒江に『修正』を受けていた。内容は配備機種に文句を言った事。一士官にすぎない坂本が文句を言う権限はないが、メーカーの整備士を大いに憤慨させた。その行為を見かねて黒江が修正したのだ。
「烈風が来ないからって文句言うんじゃねー!紫電改で十分だろうがボケェ!ウチの疾風よりエンジン稼働率がいいじゃねーかぁ!ゼータク言ってんじゃない!」
「水上機メーカーがいきなり作ったストライカーに素直に『ハイ』と乗れるかぁ!」
「それがゼータクなんだ!お前のその宮菱偏重をどーにかしろぉ!」
黒江はテストパイロット歴が長い。それ故にあらゆるメーカーの機種を乗りこなしてきた。彼女から見れば、宮菱重工業製のストライカーなり戦闘機にこだわる坂本の暴言に我慢ならなかったのだ。戦線でそのようなゼータク言ってたら死ぬし、一メーカーをひたすら愚亭するのでは、実用試験の役割も背負う横須賀航空隊にいる意味が無いからだ。北郷が黒江に電話で言っていた『悩み』をここに至って理解した。因みにこの時に彼女が坂本に見舞ったのはストレートパンチと回し蹴り。坂本もお返しに右ストレートとアッパーを食らわしており、二人共、流血沙汰もいい所であった。坂本は鼻血を出し、黒江は拳が当たって口を切っていた。
「長島製のには九五にしか乗ったことないし、山西のはしょせん水上機の強風の手直し版じゃないか!」
「紫電改は再設計されて殆ど別物だ!そりゃ紫電の初期型だけだってってんだろ!!」
「あんなメーカーの言いぶんなど信用できん!飛行艇や水上機しか能がないのに!」
「んだとぉ!?テメェ、それでも横空の一員かぁ!!」」
女子でありながらやってる事はプロの格闘家顔負けの凄まじい取っ組み合いと殴り合い。坂本の従卒である土方圭助兵曹は止めようとしたものの、二人は頭に血が上っていて、とても手がつけられない。そこで機転を利かせ、航空隊司令に報告した。
――二人の口論と殴り合いはますますヒートアップしていったが、最終的には土方の報告を受けた横須賀航空隊司令の加藤唯雄大佐が『貴様ら何しとる!!』と一喝して仲裁に入り、彼の一存で双方とも喧嘩両成敗で、数週間の自宅謹慎処分と始末書を書くこととされた。黒江は住居を未来世界に移していたので、当面は芳佳の家に居候することになった。
――宮藤家
「あー〜イテテ……もっと優しくしてくれよ宮藤ぃ」
「ゼータク言わないでください、黒江さん。はいっ」
「おおおわああ……未来世界のしみない奴ないのかよ〜」
「あれ高いんですよ〜扱いは始めてますけど、数がないんです」
「そ、そうか……あいつめいいパンチしてやがる……」
芳佳は殴り合いで傷を負った黒江に消毒薬をぬる。この時代では一般的な『赤チン』だ。未来世界の医療薬はこの時期には進出した企業によって出回り始めたが、この時代の医療品に比して高価な価格設定がされていた。なので、宮藤家のような小さな診療所は普通は手に入れる事は難しいが、宮藤家は芳佳の軍の将校待遇での恩給(1945年以降は復帰したので給金と危険手当も含む)が入るのと、地球連邦軍のルートで手に入れられるのだ。それでも値が張るらしい。
「大変ですね黒江さん。坂本さんとやり合ってくるなんて」
「不本意だったんだが、あいつがガンコなもんでなぁ。それでやり合っちまったんだ」
「坂本さん、お父さんがいた会社のストライカーの虜になってますからねぇ」
芳佳は坂本が零式の開発の際に父に恩義を感じているのは聞いていたが、自身の魔法力の拡大に栄発動機がついていけなくなったため、紫電シリーズへ機種転換していた。紫電一一型は不具合も多く、坂本が芳佳に『機種転換をやめろ』と公言するほどだったが、紫電二一型、つまり紫電改は予備役編入直前に宛てがわれ、一回だけ動かしたが、欠陥が直っていて、安心して使えると感触を得た。三四三空配属として復帰すれば乗機は紫電改になるだろうと源田実大佐から電話で言われている。
「あそこのストライカーなり戦闘機は信頼性いいからなぁ。ウチで使ってるストライカーと違って扱いやすいのもあるんだ。海軍のストライカーは九六式以来、宮菱がほぼ独占して制作してきたからな。あそこは業界二位のシェアだが、信頼性に関しては長島飛行機の上を行く。長島は兵器の稼働率考えない設計をしちまう事が多くてな。特にエンジンが一発でかかんない事もしばしばで、油漏れ起こすわ、電装系がイカれるわ、評判よくねーんだ。特に最近の誉はひどい。精鋭整備員がいないとまともに整備できないとかの欠陥が多いんだ。だから連邦の提言で誉の生産差止めとハ(マ)43の生産増強が通ったのさ」
そう。ハ43は誉の保険として、この世界では既にある一定数の生産数が確保されていた。そして実際に誉が不良を頻発し、地球連邦軍が強引にハ43を生産増強させた事で、なし崩し的に主力発動機になった。これで烈風の性能も要求値を達成したのだが……。
「そういうことだったんですね」
「ああ。それであいつご執心の烈風もあの地震がなけりゃ本格生産が行われる手はずだったんだ。零式の正統発展型だから、運動性を好む坂本みたいなベテラン受けも良くて、海軍主力の座を約束されていた。だが……時勢が切迫したのと、敵がF6Fなりテンペストなりの高性能機体を大量配備していることが分かったから、早急に体制が整っていた新鋭機を一日も早く配備する必要があった。製造工程、時間、手っ取り早い高性能機が欲しかった。だから海軍は紫電改を選んだ。もうジェット機の研究も進んでるから、レシプロ機としては大型化しすぎた烈風の大量配備を行う意義は見いだせない。多分、戦闘機としては老朽化した99式と21型の代替での少数配備、ストライカーとしてはジェットまでの繋ぎに終わるだろうな」
黒江はこの時には烈風の不幸の星を見抜いていた。烈風は『海軍期待の次期戦闘機』筆頭格として1942年から期待を一心に集めていた。だが、誉発動機の不調で当初、1943年夏の配備予定が遅延し、1944年で試作に留まっていた。ハ43に換装することで真価を発揮したもの、紫電改が大量生産に移されていた状況下では既に大量配備を行うほどの魅力はなく、ジェット機という新たなる『甘い果実』の前には繋ぎ程度の価値でしかないのだと。
「うちらはジェットのテスト段階にこぎつけたから、疾風のエンジン換装と、鍾馗の代替になるキ94で打ち止めと決まった。多分、50年代後半まではジェット機がハイ、レシプロがローの運用法が取られるだろうな」
当たらずも遠からずと言ったところの推測ではあったが、通常兵器分野でこの世界でジェット機がレシプロ機を押しのけて、完全に主力の座を置き換えるのは数十年後の話のこと。それより先行しているストライカー分野も小国に至るまで完全にジェット化されるのは1960年代末頃を待つ事になる。この時代に急速に実用化された2000から2500馬力級レシプロ戦闘機なり爆撃機は大国でその任を終えた後も、小国で末永く何らかの用途で活躍していく事になる……。
「それは置いといて……何とかして坂本の奴を紫電シリーズに乗り換えさせねーといかん。あの頑固さはまいるぜ……でも小さい頃みたいなところも残ってるんだよなぁ」
坂本の頑固さに参っている黒江。北郷のようになりたいのか、坂本は少女時代とは別人のように振舞っている。しかし所々で少女時代同様の泣き虫なところを垣間見せる。性格タイプとしては北郷に芳佳を混ぜたようなものだ。それに坂本生来の頑固さが混じった故か、長年の間に巴戦好みの性質となっており、坂本は少なからず一撃離脱戦法を好む若手エースらから陰口を叩かれている。343空から転属になったのも『厄介払い』であると横須賀航空隊ではもっぱらの噂だ。
「坂本さんの同期の人達に言いました?」
「ああ、あいつのリバウ時代の戦友や菅野達とかの後輩たちに根こそぎ連絡した。菅野から話を聞くに、裏で相当に煙たがられてたぽいな。アイツは最近の負け戦経験してないとかで。若手時代くらいだしな、負け戦したのは」
「みっちゃんから聞きました。扶桑海事変ですね?」
「そうだ。あの時は本当にギリギリだったからなぁ。大陸側領土を喪失して、一歩間違えりゃ本土空襲だったんだ」
扶桑海事変の経緯はその後、黒江達が体験する『奇跡』で幾分かは改善されたが、大まかな道筋には変化はない。坂本はこの時に負け戦を体験した後はリバウ時代〜501に至るまで勝ち戦しか経験していない。それが最近の負け戦を経験した者に『厄介な古参』と煙たがれる原因なのだ。それと零式の開発に深く関わった後はその性能を以って戦果を挙げてきた。その戦術や性能が新型ネウロイや敵機には通用しなくなった事をわかっていても『認めよう』としないのかは分からない。考えても考えがまとまらない黒江だった。坂本自身もそれはどこかで分かってるはずだと考えつつも不安を感じずにはいられなかった。
――この時期、地球連邦軍は『陛下』直々の要請に従って扶桑軍全体の行政改革を始めていた。長島飛行機の2000馬力発動機『誉』に駄目だしが出され、正式に新規生産打ち切りが通知されたのもこの月。陸軍向けに流通しているハ45の保守点検の役目こそ確保したもの、新規生産契約がオジャンにされた事で発動機部門は打撃を被った。ハ43は宮菱が持つリベリオン製工作機械や国内最高性能のものでしか制作不能な代物だとして反発した長島飛行機であったが、地球連邦と時空管理局(ミッドチルダ行政府)が輸出した工作機械類が各地の発動機工場に提供されたことでそれも潰えた。それらによって増産されたハ43及びマ43が12月頃には急速に流通した。
――海軍航空本部
「どうするのだ?今から宮菱にハ43及びマ43の増産指令を出しても名古屋工場は地震で壊滅している!」
「長島の工作機械ではハ43は生産できん。宮菱の工作機械のほうが精度がいいからできた事だというのに……先方は何を考えているのだ?」
「『誉に固執したからボロ負けしたんだ、このノータリン共めが!』だそうで……。誉の設計そのものにまで言及し、更に現地部隊のレポ出されたんじゃ擁護しようが……」
軍は誉発動機を『夢の発動機』とし、大増産指令を出し、次世代機に搭載させた。だが、繊細な誉は武人の蛮用に耐えるエンジンではなく、不具合が頻発した。リベリオンのような高オクタン値燃料を必ずしも使用できない前線において頻発したという事実は長島飛行機を震撼させ、彼らは小手先の対策を講じた。しかし現実は非情だった。地球連邦へ反論しようにも、『その結果、更に悪くなった』史実を提示されたのだ。扶桑軍も長島飛行機もぐうの音も出ないほどに論破され、長島飛行機の誉発動機は完全に息の根を止められた。
「長島のハ44計画は中止されたのか?」
「ジェットエンジンに起死回生をかけるようです。なのでプロジェクト中止で……試作エンジンは宮菱が引き取って開発を継続させるようです」
彼等が誉後継として進行させていた2500馬力発動機『ハ44』計画はジェットエンジンに注力する形でプロジェクトは中止されたが、宮菱が開発資産を受け継ぐ形で、ハ43の改良型として作り、雷電後継の局地戦闘機『烈風改』に搭載されて敵艦載機との空戦で活躍を見せる事になる。しかし、宮菱も決して前途洋々ではなかった。艦上戦闘機としての烈風が紫電改の補助戦闘機扱いの地位に退役の日まで甘んじたことを後々まで技師たちは悔やんだという……。
――山本五十六の邸宅
「山本大臣、航空機の試作整理と管理の件は強引に取りまとめさせましたが、よろしいですな?」
「ええ。ウチの航空機試作管理はグダグダですからな。助かりますよ。第三者であるあなたらのおかげでスムーズになりましたよ」
「陸軍は空軍設立と同時に、戦闘機はキ87とキ94とキ201の開発に専念させ、爆撃機は海軍の富嶽を採用させ、91を中止させました。海軍は震電、陣風、菊花の三機種に戦闘機を絞り、爆撃機は流星改で一本化しました。かなりメーカーから文句が出ましたが、なんとか承認させました」
山本五十六はエイパー・シナプスと会談していた。山本五十六は軍の航空行政のグダグダぶりを憂い、地球連邦へ第三者としての取りまとめを公式に依頼した。その結果、癒着関係にあった長島飛行機の発動機を没にする、ムダに多い試作機の整理を地球連邦が選定することになった。震電はジェット化による艦戦化も視野に入れての開発再開が地球連邦を通して認可され、『レシプロ後の時代』を睨んだ海軍独自の開発として、会社側が私的に組んでいたプロジェクト(開発中止が通達されても独自に進めていた)が公式化した。天雷や電光、極光などの『史実で失敗作認定された』機体は設計段階で中止させたとの事。これは結果的に分散していた各社の技術力の集積に繋がり、開発中の機体が史実を超えた性能で生まれていく事になる。
「ありがとうございます。目玉の空軍設立ですが、来年の9月20日に組織を立ち上げます。士官の移籍も来年を迎えた段階で内定させる予定です。指導のほどはよろしく」
「空軍に教導部隊一式の派遣を要請しておきました。直に到着するでしょう。陸軍と海軍内の反対勢力の抑えこみは頼みましたぞ、大臣」
「ええ。陛下には空軍設立の裁可を得ております。ですが、右派の若手将校が何するか分かったものではありませんから、陛下や皇族の方々には海軍陸戦隊の護衛をつけさせております」
昭和期の右派軍人らは大帝の異名で崇拝された明治天皇や、国家を近代化させた武士時代からの実力者『明治の元老』らが軒並み亡くなったのを期に先鋭化した軍国思想を持つようになった。それが史実では2.26事件であり、5.15事件として暴発した。幸いにもこの世界においてはそれはまだ起こってないが、追放された東条英機や昭和維新を信仰する一派はくすぶり続けており、山本五十六はそれを警戒しているのだ。
「それがいいでしょう。それとあなたご自身が右翼に暗殺される危険も大きいですぞ。警護をつけさせてもらいますぞ」
「それは構いませんよ」
山本五十六は空軍設立の際に憎まれ役を一心に引き受けるつもりだ。空軍設立で立場を失う者らの手で雇われた右翼青年に暗殺される危険も多分にある。そこが戦前の日本人を戦後日本人が「キチ○イ戦闘民族」と称する理由でもある。そのため山本五十六の邸宅には360度しっかりと連邦軍憲兵が完全武装で警護につけられているが、移動の時まではつけられていないが、完全警護に切り替えたいとシナプスは言う。山本が警護の増強を反対しなかったのは、この世界においては起きていない海軍甲事件の反省によるものだ。
この会談からおよそ半年後。空軍設立が勅諭で下令され、1946年に正式に発足させる事となった。移行期間として、陸海軍から航空に明るい士官を選抜し、兵は移籍組の他、新規募集を行うこととなった。黒江達は『若手時代』から空軍設立に積極的だったため、真っ先に中核将校とされた。新三羽烏&武子は1946年度を以って最低でも中佐に処され、以後は空軍上級将校として活躍していく事になる。
――呉 龍鶴型航空母艦
扶桑皇国に提供されたこの航空母艦は戦後空母に必要な要素をすべて持つ。問題は艦載機搭乗員である。艦載機はティターンズに対抗可能な第4世代ジェット戦闘機であるが、それらを扱う搭乗員が育成されてなければ張子の虎である。
「では、諸君が扱う機体の訓練シミュレータの説明に入る。ジェット機は諸君らの知るレシプロ機とは全く違う。その特性に慣れてもらうための訓練シミュレータを用意した。実機と全く同じ感覚での操縦が可能だ」
連邦海軍から派遣された教官の説明を受ける扶桑海軍の航空兵ら。彼等はレシプロ機では飛行時間800時間を超えたばかりの中堅どころから200時間の若手。ベテランクラスは一部の適応力が高いエースが選抜されているだけだ。適応力のないベテランではジェット機の特性を生かせないからだ。
「では早速、訓練に入る」
教官の号令に従って、搭乗員達はシミュレータに乗り込む。プログラムは亜音速機相当のものだが、それでもレシプロ機より絶対的に速い。機種転換訓連の完了は数年を必要とする。彼等が扶桑皇国初のジェット機搭乗員世代となるのだ。ウィッチの中にはジェット機に難なく慣れていく強者もいるが、それらは才覚に溢れた少数派の特権だ。中にはジェットストライカーに機種転換するために、ジェット機の訓練を受けるウィッチもおり、今期訓練生にも四分の一ほどが存在する。彼らが実戦に出るのはここから数年後の1947年。その頃にはこの艦の姉妹艦が旧式化した初代天城、加賀などの代替として提供されており、大戦後期から末期に於ける、大戦初期の『第一航空戦隊』的な地位として実戦に参加していく。なお、その他にも扶桑軍は1949年3月からは飛躍的に航空技術が向上した証として、『F8Uクルセイダー』を旧米国の権利を引き継ぐ地球連邦から承諾を得て、ノックダウン及びライセンス生産を開始。レシプロ機に代わる主力制空艦上機として、大鳳や翔鶴などの新鋭空母に優先配備された。同機はおおよそ30000トン以上の排水量を持つ空母であれば改装さえすれば運用可であった事、格闘戦ができる機体であったのが受けたのだ。以後はこれまでと逆に『ストライカーに戦闘機の技術を反映させる』方向でストライカーの発展が行なわれる事になる。
――1945年にウィッチの若返り作戦は一定数の元エースを現役復帰させた段階でひとまず一段落ついた。坂本のように、信念から『若返り』を拒む者達、若返りという現象に抵抗感がある者も少なからずいるためであった。地球連邦軍がISをベースに独自のアプローチで試作しているパワードスーツがミッドチルダでの実用試験を終えたと同時に増加試作が各国の要請で100機ほど行われた後、実験運用を名目に各地に配備された。それらは配備先のウィッチに最適化された兵装を施された。各部隊割り当ては通常は二機。太平洋方面には508統合戦闘航空団の戦闘隊長の新藤美枝少佐と小村定恵大尉へ。激戦区であるアフリカにはハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉とライーサ・ペットゲン少尉へ。欧州方面は新生501へは四機、503及び506は各部隊へ二機、旧いらん子中隊の507へ二機が送られた。
実用例として、智子がミッドチルダで試験し、そのまま彼女用に配備された試作1号機の確定武装を挙げる。
・『日本刀』×2。(これは黒江がテストしているISの武装の准同型)
・『ビームマグナム』(ユニコーンガンダムが装備している新型ビーム・ライフルのダウンサイジング版)
・『天空剣』(ボルテスVの必殺武器の小型版。ボルテスの修復に目処が立ったために製作可能になった)
・『超小型超電磁加重砲』(天空剣とセット。ボルテスがかつて使用した超電磁ボールVの字斬りを再現するための装備。イスカンダルやガミラスや白色彗星帝国などの遺したテクノロジーで小型化および安定使用が可能になった)
・『37ミリ対戦車ライフル』(これは英国がヘルシング機関用に開発したという装備の別プロジェクトをパワードスーツ関連プログラムに統合させて生み出したモノ。はっきり言ってMDE機能ありの超高速弾頭を使用した場合はゲッター合金(初代ゲッターの装甲)をも撃ちぬく)
501では残りの三機は状況に応じて各員が使用するという方向が取られ、智子機以外は固定武装は装備されていないとか。
――このスーツは各部隊での帳簿上はストライカーとほぼ同列に扱われた。高価な運用費に見合う働きを見せるか、誰もが不安がったという。そのため、100機の内の大半はそれぞれの本土防空を名目に戦線には送られず、ウィッチとの親和性確認を兼ねた現地軍による試験運用にもっぱら用いられた。だが、幸運にも前線配備された機体は連邦軍の概算スペック値以上の働きを見せ、各国軍に制式採用され、扶桑皇国においては『特種装備』として、リベリオンでは『P装備』と、それぞれの隠語で呼ばれた。ストライカーの衰退を憂いる軍需産業への配慮もあって、両装備は共存の道をたどったとの記録が残された。また、更に少数であるが、ISの存在を知り、特注して装備する者も生じた。1946年以降はこの3つが彼女たちウィッチの戦う力として掲示され、それぞれの役割を演ずる事になる。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m