短編『地球連邦の内部事情』
(ドラえもん×多重クロス)



――地球連邦の内部権力は日本と英国が牛耳っていた。アメリカ、ドイツ、フランス、ロシア、中国、イタリアなどのかつての列強諸国が長年の戦乱で荒廃し、零落していった中で連邦樹立直前まで国力温存に成功した日本とイギリスは地球連邦政府大統領の歴代内閣や政府機関の主要ポストを抑え、長年の間、イニシアチブを握っている。しかしそれに不満を持つ派閥も当然ながら存在した。


――西暦2200年 

メカトピアとの戦乱が佳境に入ったこの時期、戦後を見越した政府内派閥抗争は早くも発生していた。




――旧イタリアの某所

「我が国や貴国らが戦争で零落してからもう何年になる?」

「かれこれもう十年近くになりますな。スペースノイド共のせいでパリやナポリなどを失いましたからな。おかげで復興にどれだの年月を必要とするか……」

「我々がティターンズの結成や活動を容認したのは復讐のためだ。人類の財産や歴史を顧みないスペースノイド共に鉄槌を下すためだった」

「しかしそれもエゥーゴ共に挫かれ、今では我が国もあなた方もすっかり『外様』だ。打開は難しいぞ」


「ヤマトが活躍している。いずれその後継艦を我らが造り出してやればいいのだ。ヤマトはアンドロメダに代わり地球の象徴になりつつある。その系譜を作り出せば自ずと精神的に復興できよう」

「ヤマトをか?」

「そうだ。最高性能と精神性を兼ね備える艦なら日本人受けするだろうしな。アンドロメダが撃沈された後、サナダシロウ技師が機械力に頼りすぎだと酷評したのは知っているだろ?」

「うむ。あれで復権を目論んだヤンキー共が顔面蒼白になったものな。ではその時はよろしく」



旧イタリアとフランス地域行政区は(かつての両国と同義)はティターンズの活動を容認し、その暴走を食い止めなかったとしてグリプス戦役及び第一次ネオ・ジオン戦争後に主導権を奪い返した連邦改革派に追求され、懲罰的に確保していた政府機関や軍内のポストを追われた上に長年の戦争で主要都市のいくつかを失い、今や『旧列強諸国で最も没落した地域の一つ』の汚名をおっかぶってしまい、反スペースノイド思想が強くなった地域となってしまった。この思想の定着化は連邦政府の頭痛の種であった。解決にはこの時から更に数百年の月日を要し、両国が連邦政府の主要ポストを取り戻したのは、彼等が共同で造り出した波動エンジン搭載艦が第十代宇宙戦艦ヤマトとして採用、就役する2399年の際のことであった。2200年の時点で既に両国地域には度重なる戦乱で疲弊し、単独で超高性能な波動エンジンを搭載する戦艦を作れるほどの工業力がなかった故の密約だった。そして2399年。24世紀も末を迎えたこの時代に彼等の悲願は叶った。


















――24世紀末 旧フランス 

「ここにこの艦を『ヤマト』と命名する!」

この時代の地球連邦は23世紀から継続して大航海時代を謳歌しており、地球連邦政府は23世紀末に『地球連邦国』として植民惑星と連邦を組む形で組織再編。軍も大きく様変わりしていた。また、地球連邦軍の誇ったスーパーロボットも大半が代替わりしていた。ゲッターロボやマジンガーなどに始まり、超電磁ロボなどもその例外ではない。ロンド・ベルも『第13独立機動艦隊』として形を変えつつ存続し、マクロスシティの郊外にブライトが指揮を取った艦の内のいくつかが記念艦として保存されていた。

「まさかヤマトをおフランスから出すとは……統合戦争からの痛手からよく立ち直ったものだ」

初代ヤマトを建造した南部重工業公社の社長(初代ヤマト乗組員の南部康夫の子孫)はいつしか地球圏最新最強の波動エンジン艦級の内の一隻がかつて自らが造り出したヤマトの名を受け継ぐというのが慣例となった事に感嘆のため息をつく。ヤマトは代を重ねていく内に『日本が寡占でヤマトを造るのも良くない』という風潮が生まれ、数十年前の戦争で活躍した第6代ヤマト以降は、『国も場所も代替わりごとに出来るだけローテーションさせる』という方針に変わったこともあり、だんだんと初代の面影は薄れていったからだ。

「艦級名はフランス名だったな?」

「はい。確かアルザス級です」



この第10代ヤマトの艦級名はアルザス級という。かつてフランス海軍が計画していた最強の戦艦である故に艦級名に選定されたという経緯を持つ。退役した先代ヤマトがイタリアのヴィットリオ・ヴェネト級の名を継いだ艦級であったことを勘案すると23世紀に結ばれた密約はこの時を以って成就したのである



「ヤマトを輩出した事で両国の造船技術は先進水準に達した。これで政府内の重要ポストを取り戻すだろう。盟主たる日本へ意見が述べられる立場に、な」






この時代においても日本は英国とともに地球連邦を牛耳る盟主の地位を保持していた。日本人は協調性を重んじる故に、かつてのアメリカのように、他国に不満を抱かせる行為を避けたためもある。イギリスも20世紀後半時の衰退の再来を恐れている故か、日本と協調した動きを取る事で繁栄を維持していた。日本の寛容さは自らの象徴とされるヤマトをかつて列強諸国とされた他国でローテーション的に建造させる事で改めて示された。










――この時代の最新鋭艦である、第10代ヤマトはアルザス級という艦級の3番艦として建造された。だが、ヤマト襲名に伴って、士気高揚も兼ねて大まかな形こそ初代を想起させるように意図的に改設計されたが、艦首周りは初代の日本艦らしい形状とはかけ離れたSFチックな形状となっている。この第10代ヤマトが採用したこの形状は用兵側に好評だったようで、後を継ぐ次代以降のヤマトでスタンダードとなっていく。この第10代ヤマトは前世代艦と根本的に異なる、プラズマエネルギーをタキオン粒子へ加工した『プラズマ波動エネルギー』を採用した初の艦。プラズマ波動エンジンは根本的に次世代型の複合動力機関『波動モノポール機関』が25世紀のヤマトに搭載されるまでの間、プラズマ波動エンジンは第5世代の波動エンジンとして君臨する事になる。このように、いつしか『ヤマト』という名前は地球のシンボルとなったのだ。地球の精神的支柱として……。


――将来的にはこのように解決するものの、23世紀初頭時点では地球連邦は統合戦争で勝利した日英以外の国家地域が狙らい撃つように各勢力によって攻撃された事で経済的・政治的に格差が生じ、その結果、スペースノイドへの憎悪の念が根付いてしまった地域が複数生まれ、その地で行われる過激な弾圧が連邦を悩ましていた。










―― 西暦2200年4月 アデレード 臨時議会

この日の連邦議会は軍の戦況報告に始まり、主に議論されたのは『旧・フランスやアメリカ大陸地域で反スペースノイドの風潮が高まっていることだった。


「近頃、フランスやアメリカで反スペースノイドの政党や政治結社が相次いで結成され、人気を集め始めている。これは不味いことである。また軍閥時代に逆もどりしかねん」

「しかしながら市民の怒りも最もではある。パリやナポリなどの世界遺産とも言うべき都市を荒廃させたのは誰だ?ラサやダブリンを消滅させたのは?」


ジオンに限らず、歴代のスペースノイドの強硬派は自らの行いが逆に反スペースノイド風潮を広め、弾圧を招いている事実に気づいていない。だからこそその怨恨が『隠れティターンズ派』という、裏でティターンズ再興を目論む者達の暗躍に繋がっているのだ。ハマーン・カーンもシャア・アズナブルもマイッツァー・ロナもフォンセ・カガチもその点を見過ごしたからこそ、戦争に敗れたのである。

「うむ。そんなだからデラーズも、シャアも、ハマーンもカガチも、マイッツァーも戦争に負けたのだ。わかっていたのはギレンとジャミトフくらいなものだ」

「そうだな。スペースノイド共は先祖が遺した遺産を何とも思わん。だからアースノイドに弾圧されるのだ」



連邦議会議員達は口々にスペースノイドが起こした国家や組織を侮蔑する。それは20世紀末時点での各主要都市の半数が大打撃を受け、中には土地ごと海に沈んだという事例を多数起こしたことから、スペースノイドに反感を持っている。だからこそティターンズを産んでしまったのだが、そういう点はギレン・ザビ以来の各スペースノイド国家なり組織が引き起こした『自業自得』である。だからアースノイドによる弾圧を招くのだ。

「本当に碌でもなかったものなあいつらは。ところでジオン共和国の今の国防大臣……きな臭いという情報が仮面ライダーXからもたらされたんだが」

「何、あの若造めが……旧ジオン派に通じていたというのか?」

「そうだ。例の『G』を過去から呼び寄せて暗殺させようと思う」

「何、あの男をか!?」

「そうだ。暗殺はプリベンターの仕事ではないし、正規情報部は練度が落ちている。彼なら成功は間違いなしだ。真のプロだからな」

「しかし彼は過去の人間な上にコンタクト方も限られていたはずだ。どうするのか?」

「20世紀頃にいるウチの諜報部員を使い、ポピュラーな依頼方法でコンタクトを試みる。例のG型〜なんちゃらのあれだ」

「よし。実行しよう。赤い彗星の復活でネオ・ジオンが再興の兆しを見せていることだし、赤い彗星のクローンでも量産されたらたまらんからな」

連邦政府はこのGと呼ばれた『真のプロ』にコンタクトを試みる。かつて、国連時代に旧連合国諜報部をして真のプロと言わしめ、恐れられた男。その名も『ゴルゴ13』……。















――20世紀末頃


「会合場所というにはちょっと皮肉では無いのかね、Mr.デューク東郷?」

「要件を聞こうか……」

20世紀末頃のイギリスのとある著名人の葬式でそれは行われた。連邦政府の諜報機関高官が直接出向いてのコンタクトであった。彼の隣に立っている日系の男が、冷戦期から21世紀に至るまで、あの学園都市ですら畏れさせた『デューク東郷』、またの名をゴルゴ13である。外見的には筋肉質な長身の東洋系の男性で、冷戦の最盛期には既に活動が確認されていたので、この頃には推定でも50代は有に超えているはずだが、壮年に入りたての年代にしか見えない若々しさである。


「我々アメリカ人は単刀直入に本題に入るが、この男を消してもらいたい」

「……この男は?」

「君が知らんのも無理もないが、この男はこことは別の時代の人間で、ある国の国防大臣だが、23世紀の我々、地球連邦政府に取って危険な男なのだ。22世紀に戦争を経て地球連邦が樹立されたのだが、樹立から100年近く経つと宇宙移民らとのイザコザが起こってくるのだ」

「……国連もそうだが、巨大な組織は樹立から長い年月が経つと当初の理想を誰もが忘れてゆくものだが、この時代の人々が『理想』とする世界政府であろうと例外では無かったらしいな……」




デューク東郷、またの名をゴルゴ13は皮肉ともとれる言葉をかける。それは20世紀末の人々が理想として追い求めていたはずの『地球連邦政府』も当初の理想を忘れ去った世代の人間らに攻撃され、放置すれば組織の瓦解に繋がっていくであろう事をゴルゴは知っていたのだろう。かつての国際連盟が事実上瓦解し、国際連合も腐敗が進むこの時代の現状をズバリと言い当ててみせる。突拍子もないように思える事も普通に受け入れてみせるのは、彼自身がこの時代の日本人の大半から『突拍子がない』と見られているのを知っているからだろう。





「驚かないのかね?」」

「日本政府の役人からは俺自身が『突拍子もない』と言われているのでね……依頼人が未来人であろうが、宇宙人だろうが、俺は依頼をこなすだけだ」

ゴルゴはあくまでビジネスライクさを崩さない。あの東西冷戦期に東西のどちらの如何なる陣営や国にも属さずに一匹狼を貫いたというのはこのような姿勢から来るのだろうか。無表情なその顔からは彼の心は伺えない。

「それではよろしくお願いする、Mr.デューク東郷」





こうして意外なほどにすんなりと依頼を受けたゴルゴ13。どのような思惑があるのかは誰にもわからない。その気になればアメリカ大統領であろうと、デルザー軍団の改造魔人であろうとも殺せる彼の信頼を勝ち取るには、連邦政府や機関がゴルゴに尽くさなくてはならない。そのためゴルゴへは最高の状況を提供するように尽くした。












――連邦政府諜報機関はかつてゴルゴが最も多く依頼を受けたとされる、第二次大戦後しばらくの間、旧・連合国の諜報機関を支えた4人の男の遺した手記を手がかりに、ゴルゴとの対面に持ち込んだ。しかし連邦側はゴルゴの人物像をいまいち掴みきれないところがあり、23世紀で彼をモデルにした劇画を描いている日本の漫画家も『先祖が知っている情報を基に多少着色している』と述べていることなので、連邦側は神経過敏とも見られるほどにゴルゴのルールを崩さないように努めた。








――哀れにも、時を超えてゴルゴ13の標的とされた男はどんな人物なのか?ここで触れておこう。男の名はモナハン・バハロ。ジオン共和国の現・国防大臣である。父は一年戦争からグリプス戦役後まで長期政権を保っていたダルシア・バハロ元首相の長子にして、後継者である。彼は表向きは父と同じく親連邦路線の政治家であるように振る舞っているが、裏では極右思想全開で、ネオ・ジオン軍再興を手助けし、軍備を積極的にネオ・ジオンへ横流ししている。その行為が現地に潜入していた仮面ライダーX=神敬介によって暴かれ、今回の依頼と相成ったのである。ゴルゴが動いたのを後に全容を知らされた神敬介は『哀れだな』と呟き、ゴルゴの凄さを改めて回想したそうな。





――ジオン共和国内 とあるラボ

「生産計画はどうか?」

「順調です。肉体年齢は一年戦争中のシャアとほぼ同じ程度にまで成長しています」

スリープカプセルに寝かされているのは、若き日のシャア・アズナブル、即ちキャスバル・レム・ダイクンと瓜二つな男であった。シャアと瓜二つの肉体を持つこの男は、第二次ネオ・ジオン戦争当時やグリプス戦役時に『クワトロ・バジーナ』として行動していた時に残していった彼の毛髪や爪などから解析した遺伝子情報を基に、23世紀の最新クローン技術で造り出した『シャア・アズナブル』のクローン人間である。クローンなので、訓練すればオリジナルと同等のMS操縦技術を持つことは容易である。だが、クローンでもオリジナルと同じ能力を持つとは限らない。

「能力はどうなのだ?あのシャア・アズナブルに比肩しうる操縦技術が本当に持たせられるのかね?過去にグレミー・トトのロリコン野郎が作ったプルシリーズは二番目の個体以外は戦果を上げぬまま死んでいったと聞くが?」

「一応の操縦法は脳が寝ている間に学習させました。ニュータイプ能力は強化で身につけさせる予定です」

「しかしあまり強化しすぎると自我が崩れるぞ?過去のティターンズにそのような事例がある」

「元々、シャア・アズナブルはアムロ・レイやカミーユ・ビダンほどでないにしろ、サイコミュシステムを動かすのに十分な素養は持っております。それを多少強化するだけです」


彼、モナハン・バハロは倫理的に不味い領域へ踏み込んでいた。それ故に連邦政府の逆鱗に触れ、伝説の男『ゴルゴ13』に狙われるという哀れな境遇となっていた。そしてその魔手はすぐそこまで迫っていた……。














――ゴルゴ13はジオン共和国に到着するとすぐに仕事準備に取り掛かった。20世紀で信頼する銃職人に特注した大型銃を使用する。クローンごとターゲットを屠るのが依頼の内に入っていたからで、工事中のビルに隠れ、ジオン共和国復帰何周年かの記念式典の花火が打ち上げられている内にその銃を放った。その銃弾は二発。一発は超鋼スチール装甲板に覆われたラボの装甲板を貫いて、ババロの頭を破壊し、もう一発は瞬時に業火を引き起こし、クローンを起きる前に瞬時に、博士と共に焼殺する。この出来事は永遠に記録される事は無く、どこかの世界であれば『フル・フロンタル』として、『赤い彗星の再来として畏れられたであろうそのクローンも世にでる事無く闇に葬られていく。この出来事は後に『旧ティターンズ派のテロリストが起こした爆破事件』として処理された。この時、ネオ・ジオンに戻っていたシャア・アズナブル当人もまさか自分のクローンが勝手に作られていたなどとは露知らず、ババロの計画はゴルゴによってシャア・アズナブル当人にも知られぬまま、闇に葬り去られたのであった……。


















――ジオン共和国 港ブロック

(あ、あの男は……ゴ、ゴルゴ13……そうか、奴も来ていたのか……この時代に!)


Xライダー=神敬介はかつて共に仕事をした事があるゴルゴの姿を遠目に確認。敬介はこの瞬間を以って、ゴルゴ13、またの名をデューク東郷がこの時代で仕事を遂行していた事を察した。改めて身震いを感じる。改造人間であるライダーをして『恐るべし男』と言わしめるゴルゴ。依頼された仕事をほぼ100%こなし、1975年にはデルザー軍団改造魔人をも屠った真のプロフェッショナル。バダンでさえ畏れさせた唯一無二の生身の人間。彼が放った弾丸はこの時代で近い将来に起こったであろう出来事を一部換えてしまったのであった……



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


目次

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.