短編『グレートガンバスターの誕生』
(ドラえもん×多重クロス)
――旧トップ部隊のエースパイロットであったユング・フロイトは親友との約束を果たすために政界とのパイプづくりに奔走。ゴップ議長の後援を受ける形で、政界とのパイプを築いて土壌を整え、本来の仕事では、グレートガンバスターやアレクシオンなどの開発計画である第二次RX計画の責任者となっていた。
――第二次RX計画とは、バスターマシンの次世代型を作り出すためにレビル将軍が予算を確保し、遂行させているバスターマシン開発計画。その最終段階にして、かのガンバスターの正統後継機『グレートガンバスター』が完成し、稼動テストに至ったのは2201年に入ってからであった。これは縮退炉の出力増強型の開発が難航したこと、アレクシオンの竣工に間に合わせるためでもあった。地球連邦軍は未だに燻ぶる各組織残党への抑止力としての役割を得たアレクシオンはネームシップと異なって最初から『軍艦』として建造されたために戦闘力はヱルトリウムを上回る。これが第二次RX計画の母艦としての意味合いも含まれていた。
――西暦2201年の年末
「ユング君、これがグレートガンバスターかね?」
「そうです。グレートマジンガーを参考にしてガンバスターを強化発展させた正統後継機です」
「ガンバスターUプロトタイプはどうするつもりだね?」
「ロボット博物館で展示し、ゴーストファイターとして使うつもりです」
「ゴーストファイターか……」
「ええ。昔のハインケルやヅダみたいなものでよ」
そう。グレートガンバスター開発の当て馬とされた形の『ガンバスターUプロトタイプ』はユングにとっては『どうでもいい』機体なのだ。初代ガンバスターと別チームが作り、ただ初代を超えたいがために新技術をてんこ盛りにした。性能は予定に達したものの、ユングの強い意志もあって、意図的にコンペに脱落させ、正統なバスターマシンの系譜から『抹殺された』。だが、テストパイロットにしてみれば激昂そのもの。その後すぐに生起した戦争でガンバスターUプロトタイプは非公式に投入され、名誉挽回と汚名返上を望むかのような戦いぶりを見せたという……。その後はグレートガンバスターの存在を隠すために活用された記録が後世に残されたという。
――ともあれ、ヱルトリウム級は地球連邦軍の虎の子の超弩級戦艦である。何よりも如何な物理的手段を持ってしても破壊不可能な船殻を持つというのは、時空管理局右派には重大な脅威と見なされた。それが二隻も存在するのは我慢ならなかったらしく、ある年の公開意見陳述会の議題に上がった。
「第120観測指定世界で建造されたこの艦は我々の重大な脅威となり得る!」
「君たちは懲りんのだな。あの世界に関する決定はもうなされたはずだが」
「しかしだ、中将。この艦は本局と同等、あるいはそれ以上の大きさを誇り、我々の理解を超えた機関を持っている!これは重大な事である!」
右派は新暦70年代以後は内部での粛清、時勢的に次元世界との融和が主流派の間で固まっていったがために以前のような支持は得られなくなり、衰退の様相を呈していた。しかし、彼らはミッドチルダによる全世界の統治をお題に掲げているがため、一定の支持を得ていた。地上本部の長であるレジアス・ゲイズに取って、『厄介な敵』だった。
――奴らは本当に魔法だけで天文学的な数のSTMCに対抗できると思ってるのか?あの世界をして『ブラックホール爆弾』の建造やスーパーロボットの殲滅力アップを余儀なくされたというのに。
レジアスはフェイトが過去に記した報告書から、STMCと呼称される『宇宙怪獣』の存在を認知し、その脅威ぶりを恐れていた。あの科学力を以っても銀河中心をブラックホール爆弾でぶっ飛ばすという選択しか取らざるを得なかったという数、そのスケール。カルネアデス計画。レジアスは時空管理局の高官の中では珍しく、地球連邦の苦境を理解していたのだが、理解者に恵まれぬままに数年後、『死亡』してしまう。ただし、彼が遺した書類などから後任者らは地球連邦との友好関係の維持を受け継いでいった事から、後年に『ミッドチルダを間接的に右派の暴挙から守った』と再評価されるのであった。
――西暦2201年 12月の日本 沖縄
この時代の沖縄は戦乱での損害が比較的少ない事、軍事的にかつて程の必要性が無くなったなどの理由で軍事基地の幾つかは閉鎖され、跡地が商業施設になるなどの変化があった。だが、地球連邦軍の人材確保のための沖縄女子宇宙高校はかのタカヤ・ノリコらが在籍していた時代と変わらず存在していた。なのはは16歳から18歳までの三年間、未来世界の地球に足を運ぶ度に、ここで特別に特訓を受けていた。特訓が終わった18歳ごろには、沖女の伝統技である『イナズマキック』を身につけていた。
『イ・ナ・ズ・マァァァキィィィィック!』
なのはは18歳を迎え、身体能力に磨きをかけていた。なんとイナズマキックを生身で放てるようになっており、その威力はショッカーの初期の怪人であれば装甲をぶち抜けるほどであった。これは気の応用と努力と根性がなせる業であった。万に一つ、自分の火力を物ともしない防御力を持つ敵が現れる場合に備えての特訓であった。鉄下駄、鉄アレイなどの大昔のスポ根アニメ的アイテムが周囲に置かれているのは、沖女ではお馴染みの光景である。地球連邦軍の女性軍人の割合は人手不足も相なって増えており、この時代においては電脳イルカに人権が与えられた(アレクシオン建造時にヱルトリウム級の制御に必要な超能力を持つ人間を多数確保できなかった故の措置で、電脳化されたイルカは人間と変わらぬ知能であるので,人権が与えられた)のもあって、性別の差で軍内で配属を区別する事は無くなっており、タカヤ・ノリコやユング・フロイト、ミリア・ファリーナ・ジーナスに代表される女性のエースパイロットも多数表れている。
「イナズマキック……か。元はストロンガーさんの技なんだよなぁ。不思議だよね。技だけが伝わったなんて」
イナズマキックの起源は城茂=仮面ライダーストロンガーのチャージアップ状態最大最強の大技「超電稲妻キック」である。それが遥か後の時代になって、地球連邦軍のマシーン兵器の必殺技として伝わったという不思議な巡りあわせになのはは微笑を浮かべる。もっともそれが公になったのは彼らが公の場に姿を見せた先の戦争での事だ。
「さてと、今日はこの辺にして、コンビニでシークワーサージュースでも買ってこ」
この日のトレーニングを終え、沖女を後にする。泊まっているホテルに戻る。沖縄滞在はは観光も兼ねているためだ。
「あ、フェイトちゃん?そっちはどう?」
「こっちは大変だよ。仕事が押してさ、あと2ヶ月は帰れない」
「え?なんか不都合が?」
「なんかゴッドマーズとズール皇帝の戦いに巻き込まれて、帰るに帰れない……」
「えぇええええ!?あったのあの世界!?」
「うん……これでタケルさんとゴッドマーズはいつでも呼べるよ]
「いいのか悪いのか……これで80年代の有名どころは一つ押さえたね。と、言うことは次元世界のどこかにマ○ンロボやパ○レイバー、忍○戦士飛影の世界があるって事なのかなぁ」
「う〜ん……変にマニアックなんだから」
「ゴッドマーズだって再放送とかゲームとかコ○ケで生き残ってなきゃ『知る人ぞ知る』感じのロボアニメじゃない」
「それもそうか……。そう言えば、グレートガンバスターってスーパーロボットが完成したって聞いたけど、本当?」
「うん。ヱルトリウム級の二番目が完成するのに間に合わせたんだってさ。まぁ私達も科学が変じたようなところあるけど、さすがにヱルトリウム級みたいなSFチックなのは作れないしね」
ミッドチルダも科学が発達した末に魔法に変じたようなSFじみた発達の課程を辿ったが、さすがにエルトリウムのような、ニュートン力学に囚われない前提の思考主推進機関は開発されていない。地球連邦軍はこの機関による宇宙船を第5世代艦(アポロ世代やスペースシャトルを第1世代に分類すれば)に分類している。だが、製造コストや運用費などの問題で普及は程遠い状態である。それ故に波動エンジンを含めたニュートン物理学が前提の第4世代宇宙船が主流であり続けているのだ。
「ガンバスターって一機でも億単位の宇宙怪獣を一撃で倒せるようなスーパーロボットでしょ?その更に後継機を作る意義はあるの?」
「別の銀河に宇宙怪獣の生き残りがいる可能性と他勢力への抑止力を兼ねてるみたい。元から宇宙怪獣を億単位で倒せるスーパーロボットを更にパワーアップさせたのを持ってるってのは大きいよ?」
「ウチの上の連中がチビるのは間違いないなぁ。ブラックホールを動力源にしてるなんて言ったら」
「まぁ、『ここ』は戦争やり過ぎなせいでそれに関係する技術が異常なくらい発達しちまったからね。なんとか生きて帰ってきてね」
「うん。同僚には『君のように危険に自分から飛び込むのは珍しい』と言われたよ」
フェイトはメカトピア戦争から帰還してからは危険な任務を敢えて志願したり、調査を行ってきた。その中で師譲りの無鉄砲さも垣間見せており、危険に自分から飛び込むという『イン○ィ・ジョーンズ』張りの無茶もするようになった。携帯電話の受話器越しに笑いながら話すその姿は、幼少期の影のあった姿からは想像もつかないほどに歳相応の少女らしさであった。
「だろうね。ウチの執務官には危険を避けるのも多いから」
「官僚出身者も結構いるからね。まぁ今のままだとバランスが悪いのも事実だけど」
「クロノ君やフェイトちゃんみたいに現場に自分から飛び込んでいくのは少数派だからね。地球連邦軍もグリプス戦役とかで官僚出身者に嫌気さした連中が軍閥とか作ってたし、まぁ世の中そういうもんだよね。管理局もなんだかんだで続いてるし」
「大きくなった組織なんてそういうもんさ。まぁ逆に言えば、寛容な高級将校や政治家さえ味方に付けば、現場レベルは自由な行動ができるって奴さ。ロンド・ベルだって、ジョン・バウアー議員のバックアップがなきゃ自由行動権なんて与えられないし、ジェガンすら配備もされなかったって、前にブライト艦長から聞いたことがある」
「本当にねぇ。地球連邦とウチが仲いいのって『巨体で小回り効かない組織』のシンパシーがあるからかもね」
「冗談きついけどね」
なのはは『六神合体ゴッドマーズ』が実在した世界を見つけ、調査と戦いを並行させているフェイトの身を案じつつ、自身の喉を潤すための飲み物を買うため、コンビニに足を運んだ。
――のび太とドラえもんはメカトピア戦争の終結を見届けた後はいつも通りの日常へ戻ったが、ドラえもんが未来世界にVIP認定された影響もあって、全くの普段通りとは行かなくなった。地下格納庫に地球連邦軍の開発中の新兵器などを管理する立場になったためで、そのためか、未来世界の軍需産業関係者やのび太たちと親交を持った者達がちょくちょく訪れるようになっていた。
「ただいまぁ〜〜……」
「おかえり〜」
いつもどおりに沈んだ顔で麩を開けるのび太。普段ならドラえもんが漫画読みながら待っているのだが、この日は違った。
「あれ、加東少佐じゃないですか。どうしたんですか?」
「休暇よ。ローテションで黒江ちゃんが仕事に戻ったから私の番が来てね。月単位だから遊びに来たわ」
圭子はここ一年ほどアフリカ戦線を離れ、地球連邦軍に奉職している。これは上層部の命令で若返り作戦に選抜された事による地球連邦軍と連合軍の交換条件でもあり、エクスウィッチは少なからず未来世界に赴き、メカトピア戦争に従軍したりした。陸軍三羽烏と未来世界で呼ばれる三人はその中でも珍しい例で、メカトピア戦争後も未来世界に滞在している。後方に退いていた智子や黒江と違い、本来は前線指揮官である圭子が未来世界に滞在する理由は2つある。一つは『ハンナ・ユスティーナ・マルセイユの指揮官として鍛える事』、2つ目は『智子&黒江の面倒を見ること』である。
「それでどうしたの?またジャイアンとスネ夫君にいじめられたとか?」
「今日はもう一つあるんです……」
「もう一つ?」
「実はこの夏休みにスネ夫が『パパの友達の別荘借りたからみんなで行こう』ってなったんです」
「で、珍しく『のび太も来いよ』とか言われたと?」
「ええ。二人がぼくを誘う理由があるんです」
圭子はのび太の声色で事を察した。のび太は戦いでの勇ましさとは関係なしに、普段は全くの臆病で、ホラーものの映画でお○っこ漏らすほどのチキン・ハートの持ち主である。ジャイアンとスネ夫はそこをよく理解している。要するに肝試しでのび太の心胆を寒からしめようという腹だと。
「ふぅ……大変だった。あ、のび太君おかえり」
「ただいま。どぉらえもん〜!」
「ワァ!どうしたの!?」
「実は……カクカクシカジカ」
「要するに、ジャイアンとスネ夫がどういう事考えてるか分かりゃいいんでしょ?スパイ衛星で調べりゃいいじゃない」
「あ、それもそうか」
(さすがツーカーの仲。早いわね〜♪)
圭子もなんだかんだでのび太のこの状況を楽しんでいるようだった。ドラえもんがスパイ衛星を取り出し、骨川家の状況を確認する。すると子供らしい発想のお化けの被り物を自作する二人の姿があった。のび太はこれにさえビビる始末だが、二人は笑っている。
『これをのび太の顔の前にニュ〜と突き出してやろうよ♪』
『おれはこれを被って、ニュ〜と脅かす。のび太のやつ、気絶しておしっこ漏らすぜ♪』
「ほらぁ〜!やっぱりぼくはしずかちゃんの前で気絶しておしっこ漏らすんだぁ〜!」
という有り様ののび太だ。
「ん?ところで、さっきまで何してたの?」
「新兵器の受け入れ体勢を整えたんです。バスターマシンなんで大きいんで……」
「バスターマシンって、ガンバスターの親戚?」
「そうです。あれの後継機を頼まれちゃって」
「マジで?」
「マジです」
ドラえもんが先程まで行なっていたのは地下格納庫の拡充だ。それは全長300mのグレートガンバスターを収容するためで、増設してその最下層に置くという形で収容した。そのためにセキュリティは地球連邦の協力で更に堅固にされ、新たに超合金ZとニューZ、ガンダニュウム合金の三種類の合金をハニカム構造にした装甲材で更に410mmと610mmの厚さのドアを何重にも用意している。ドラえもんは圭子の質問に応える。
「グレートは後で見せます。ユング中佐に搬入を手伝ってもらってたんで」
「彼女、来てるの?」
「今は格納庫でバスターマシンに分離させる作業を指揮してるはずです。分離させて別々に格納する必要もあるんで」
「大変ねぇ」
バスターマシンは単体でも艦艇級の大きさを誇る。そのために合体した状態から分離状態にしてもスペースがかさばる。そのため、ドラえもんは格納庫の増設を余儀なくされた。計画責任者のユングも部下を連れてきて、マシーンの格納作業を行っているようだ。
「お、メールだ。終わったみたいなんで確認しに行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ドラえもんは委託された仕事に精を出すが、のび太は先ほどから怯えまくりである。お化けよりよっぽど恐ろしい相手と戦っていたと思うのだが……と圭子はため息をつく。それほど20分後経ってドラえもんが戻ると、のび太に一つの道具を渡した。「つめあわせオバケ」という道具だ。
「つめあわせオバケ?」
「それを振って『うらめし』って振ってみ」
「うらめし」
言われるままに振ってみると、そこからこの時にのび太の用事に足る目的のオバケが出てくる。それは座敷童子で、のび太の始まったばかりの夏休みの宿題を全てパッパと終わらせてくれた。
「うわぁ〜!す、すごぉーい!」
のび太は大喜びである。しかも筆跡は自分の筆跡で書いてくれているので、先生にも見破られない上に、ちゃんと全問正解ではないというおまけ付きだ。この年、のび太の学校は保護者の要望で夏休みの自由研究を試験的に廃止していたので、のび太はこれで宿題から開放されたのであった。
(いいのかこれ?)
ドラえもんと圭子は思わず心のなかで突っ込んだが、のび太が大喜びならいいだろうと苦笑いした。
――翌日、のび太はスネ夫の母親の運転する4WD車で別荘地に向かっていった。それを見送ったドラえもんと圭子はそれぞれの仕事をしつつ、のび太の様子を時々観察していた。
「ふぅ。ウチの上の連中に提出する新兵器の運用レポートを書き終えた……。」
「確かそちらではISの類の戦闘用パワードスーツの試験運用が始まったとか?」
「ええ。個人単位でISを注文したりして、輸入する者もいるし、地球連邦軍がどこからか得たテクノロジーをISの装甲製造技術と組み合わせて作った量産型の試験運用を行う部隊も出てきたわ。ジェットストライカーの問題点がまだ多いしね」
「黒江少佐が愚痴ってましたけど、ジェットって魔力を過剰に吸いとるとか、暴走しやすいとかって」
「カールスラント空軍がミッドにくる前に試験運用したら暴走とかが日常茶飯事だったようよ。なんとか改修したけど、行動時間が短いのよ。それはライセンス生産のウチは独自に改修して稼働時間を伸ばしたんだけど、魔導ジェットのタービンの耐久性とかの限界で頻繁にオーバーホールが必要で、とても制空戦闘を長時間やれる安定性がないのよ。せいぜい戦闘時間は16分が限界ってとこ」
「行って帰るだけの時間を入れると、長くて10分しかいられないじゃないですか」
「そーなのよ。単純飛行でも飛べる距離は1000キロ程度。そのくせ軽油バカ食いでね。だからミッドに持っていくのは少数とされたのよ」
「初期のジェット機の弱点そのままですね。だから未来世界のパワードスーツがバカ受けなんですね」
「ええ。んなだからうちの飛行戦隊にもISを個人注文したのいるのよ。だから軍需産業が焦っちゃってね。血眼になってるけど、どのうちライセンス生産機の製造に甘んじるでしょうね」
長島飛行機や山西航空機、宮菱重工業らウィッチ世界の扶桑の軍需産業はISなどの台頭でストライカーユニット市場が侵されることに怯えており、ジェットストライカーの試作に血眼になっていた。だが、カールスラントでさえ試行錯誤中のものを扶桑で造ろうとするので、困難が伴った。それが解決された時には、次世代型である亡命リベリオン軍が開発した『F-86』が採用され、空軍の主力機に採用されると、国内独自生産の系譜は海軍機で細々と行われるに留まることになり、ジェット時代における扶桑皇国軍の航空型ストライカーユニットは大半がリベリオン軍で成功した機種のノックダウン生産及びライセンス生産機で占められていくのであった。圭子はその未来を予見していたのだ。
「おっ、のび太くんがつめあわせオバケ使ってるわよ」
「お、どれどれ」
スパイ衛星のモニターを見てみると、のび太がつめあわせオバケを使って一つ目入道を呼び出し、山道の溝に落ちてスタックした4WD車を押し出す様子が映し出された。鎖から開放された4WDはアクセルを限界にまで踏み込んだ上にトップギアに入れていたためか、猛加速して矢のように消えていった。
「凄い運転〜あれで素人に制御できるの?」
4WD車は時速140キロは有に出ているであろうスピードで下り坂を降りていく。スネ夫の母は『頭○字D』張りのテクニックで操り、一直線の山道を突っ走る。
『ママ〜!ぶ、ぶつかる〜〜!』
『大丈夫ざますぅ〜!』
スネ夫の悲鳴と裏腹に、車は見事なドリフトで細くなった山道にある障害物を回避する。高回転のエンジン音が響き、4WDの走行性能をアピールするかのような動き。しずかは気絶し、ジャイアンは冷や汗タラタラ、のび太は気が遠くなる。場面越しに車内の様子を見る二人も思わず釘付けになってしまう。
『うわああああああああああああああ〜!』
スネ夫のこの世の終わりのような悲鳴とともに車がジャンプし、ショートカットで別荘地へ辿り着く。
『ど、どうざます?ママの運転の腕前は?」
『お、おばさん……す、すごいざます……』
なんだかんだで別荘に辿り着いたらしく、車内の一同は安堵する。観察する二人も安心し、ため息を漏らす。
「ほ、ついて良かったぁ……。」
「ドラちゃん〜おやつ買ってきたわよ〜!」
「お。んじゃ行きますか」
「そうね、腹が減っては戦はできぬ♪」
ドラえもんと圭子はおやつを取りに行く。のび太が珍しく連れて行ってもらった旅行の行方も気になったが、腹が減っては戦はできぬとばかりに一旦、場面を消して玄関に降りていった。
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