短編『のび太の夏休み騒動』
(ドラえもん×多重クロス)



――ドラえもんと圭子はスイカを食いながら、スパイ衛星でのび太の様子を確認する。のび太の普段のダメ少年ぶりは戦争中は『大長編ドラえもん』モードに入っていた事を圭子に改めて実感させた。のび太は概ね道具で切り抜けているが、海に入るときに海坊主を呼び出して立ち泳ぎのフリをさせるのはさすがにつっこんだ。

「ねえ……なんで誰も突っ込まないの?」

「ぼくがいないから、誰も気がつかないんでしょ」

「そういうもん?」

「ええ。あれは用が済んだら消えますしね」

「なるほど……でもなんでアフリカより暑いのよ……地球温暖化って奴?」

「ヒートアイランドですよ、ヒートアイランド。この頃にもなると東京なんてどんどん霞ヶ関とか新宿とかにビルが乱立してる上に、コンクリートのアスファルトは熱を吸収しない。だから夏の気温がどんどん上がっちゃって……。美琴さんの時代じゃ『赤道直下より暑い』なんて気温がザラになります」

「うへぇ……するとまだこの時期は過ごしやすいと?」

「そうです。未来じゃ常夏でしょ?それを思えば楽ですよ〜ハムハム…」

「四季がある分ね。懐かしくなったわ」

圭子は四季があるこの時代の日本に、故郷を思い出したようだ。扶桑の冬は2000年代日本と比べると寒冷であったため、雪もよく見たが、この時代では東京の雪など2月に降ればいい方である。それでも四季があるのは嬉しいらしい。未来ではコロニー落としなどの影響で気候は完全に狂い、東京でさえ最低気温が25度を下回ることは一年のうち、11、12月しかないなどになってしまっているという状況なので、余計に懐かしいらしい。

「コーラとかカルピスがまだあるのは地味に嬉しかったわ。自分達の時代との繋がりがあるって感じだったし。新宿とかなんて、ビルだらけで私達の時代の面影がないもの」

「しょうがないですよ。新宿は副都心なんですから。ヨドバシカ○ラ行きました?」

「昨日、午後に行ったわ。カメラとかが思い切りあって天国だった……私の戦友が見たら感激のあまりのびるかも」

「買いました?」

「この時代の規格の一眼レフをね。フィルムもたんまり♪。『写ル○です』じゃ満足出来ないもの」

「本格的ですね。この時代の人たちはたいていはあれで写真取ってますよ?」

「写りとかが違うわよ。それに現像は自分でしたいしね」

圭子はライカ党なため、この時代のライカR8を大枚はたいて購入。現像は自分でする本格派なため、ドラえもんに頼んで、暗室を壁紙ハウスに作ってもらったとの事。デジカメはこの時代の集積回路では誤作動起こすので、敢えて一眼レフカメラを買ったのだ。そのほうが圭子としても馴染み深いからだが、店員からはデジカメを当初勧められたと話す。

「店員さん、少佐の外見が10代だから薦めてたでしょ?」

「そりゃそうよ。今の外見は女子高生位だから、『デジカメはいかがでしょうか』なんて言われたわ。まあすぐにテキトーな理由言ってライカ探してもらったけど」

「プロ級ですからね少佐の腕」

「本書いて出版した経験もあるもの。望遠レンズとかは自分で探した。もう天国よ」

「カメラ小僧ですね」

「元は戦友にコンタックス党の奴がいてね、そいつから教わったわ。電話でそいつへのおみやげを送るって話になったらせがまれた。あの子は前線指揮で休暇どころじゃないから、色々注文がうるさくてね」

武子にコンタックスのカメラを送れとせがまれた圭子。注文がうるさい事には不満げらしい。武子は『好物おごってあげるから』となだめたが、割にあう仕事ではないと財布の中身に泣いているらしい。カメラの二個目は痛い出費なのが伺える。そのためにのび太の家に上がり込む日数を伸ばしたらしい。こづかいを稼ぎたいという切実な理由なのが現実的なので、ドラえもんも思わず涙する。

「どうするんですか少佐?」

「写真コンテストに何でもいいから応募するわ。模型でも飛行機の写真でもね」

「でも少佐、模型の取り方なんてわかるんですか?」

「私達の頃は子供が手に入れられるのが木製やブリキ製のおもちゃだからね。リアルに仕上がった模型は鉄道模型くらいしかない時代だったからなぁ」

「模型って言っても、この頃には実物と同じようなリアルさが求められてますよ?ちょうどあなたの時代で言うところの天皇陛下に献上する新造軍艦の完成予想模型みたいに」

「本当よねえ。軍艦の模型とかネットで見てもリアルなの出てくるし……どうしよう」

「とりあえずのび太くんの様子を見つつ、出木杉君でも呼びます」

ドラえもんは器用に携帯電話のボタンをプッシュする。しかもこの時代のモデルでなく、本来なら2005年以後に普及する『ガラケー』の最高機種である。なんともこの時代では無駄に豪華である。(ネット機能の殆どは使えないはずである)ドラえもんは出木杉の個人電話の番号を押し、電話する。それから約15分ほどで出木杉がやってきた。プラモのスケールモデルを飾ったジオラマを持っているようで、重たそうだ。

「件の物を持ってきたよ」

「ありがとう。で、何のジオラマ?」

「西部戦線のドイツ軍機甲部隊の戦闘の一コマさ。スネ夫君に手直しはしてもらったけど、いいかい?」

「OK、OK」

出木杉は部屋の机ににそのジオラマを置く。かなりリアルに出来ており、西部戦線でのドイツ軍の苦境をよく再現出来ていた。戦車は圭子の世界では『新鋭中戦車』として名を馳せている『X号戦車パンター』である。ウェザリングとエッチングパーツに力が入れられており、金属質感をよく出せている。実車を見慣れた圭子から見ても、合格点と言えた。

「野比君は旅行だって?」

「そそ、スネ夫くんが珍しく誘ってくれたんだ。それで僕は留守番だけど、後で合流するつもりさ」

「なるほど。お久しぶりです。どうですかこれ」

「実車を見てる身から見ても合格点よ。模型を移すのは初めてだけど、どうやったらいいのかしら?」

「模型を取るのにはコツが居るんですよ。広角レンズはあります?」

「あるわ」

「広さや大きさを大げさに写してくれますからね。意外に他の分野にも応用できるんですよ。これはスネ夫くんの従兄弟さんが使う手でもあるんです。ジオラマを作る者の心得ですよ」

出木杉は圭子に指示を出していく。情景模型を撮影するのは初めての圭子は、普通とは異なるテクニックを要求される撮影に難儀した。現像すると、いい写真が取れている。リアルなジオラマ写真だ。模型とは思えないと関心したりである。

「わ〜すごいわね。こんなリアルなのが取れるんだ」

この後日、圭子は意気揚々とプラモ雑誌の写真コンテストに、出木杉英才との共作という形で応募。初応募ながら銀賞に輝いた。金賞はやはりスネ夫の従兄弟のスネ吉の作であったという。銀賞の賞金でとりあえず当面食いはぐれる心配は無くなったのであった。








――のび太はつめあわせオバケのおかげもあって危機を乗り越えていた。だが、思わぬ魔手はそこまで迫っていた。のび太らが必死に隠し通してきた地下格納庫の存在が学園都市に掴まれてしまったのだ。地球連邦軍が野比家から最新兵器や試作兵器を持ちだして、各時代の学園都市に打撃を与えていれば、いくらなんでも所在位置がわからなくとも、それに関係すると思われる人物を狙うのは当然のことである。それがのび太であった。その行為を更に阻止せんと、動く者がいる。それは仮面ライダーX=神敬介、スカイライダー=筑波洋、おまけの美琴と箒であった。二人は久しぶりに2201年の世界で会っていたが、そこに任務に行く途中の二人に出会い、そのままくっついてきたのだ。

「学園都市の暗部が動いているとはな。まあ当然といえば当然だな」

「そりゃあたし達が戦ってる時にリゼルとかリ・ガズィ持ちだされたらそりゃ学園都市だって本腰入れますって」

美琴がいう。ある調査で暗部と戦闘していて、敵が戦闘ヘリを持ちだして自分を攻撃してきた時のこと。さすがに対応に困ったところ、なんとBWSを装着したリ・ガズィとウェイブライダー形態のリゼルが飛来し、戦闘ヘリをメガビームランチャーとキャノンで一蹴したのだ。学園都市暗部部隊と言えども、人型機動兵器の出現には大いに狼狽え、あっという間に空戦部隊は始末されたのだが、明らかに平均レベルで自らを超える技術で構成された機動兵器はあり得ないとし、学園都市は1999年ごろから散発的に襲撃してきた勢力と同一のものの動きであると察知、非合法手段を用いて調査、野比家に収容されるのを確認し、その秘密を握っているであろうのび太を拉致せんと動いたのだ。それを更に阻止せんとヒーロー達が動くというのが今回の図式だ。

「確かにな。いくら学園都市の最盛期が30年分の技術格差があると言っても、流石にMSのような高度な機動兵器は作れん。上層部の一部にはMSへの対抗心を燃やす者がいるから、のび太君が狙われるのも当然ではある」

「しかし敬介さん。のび太は普段は0点記録絶賛更新中のおバカ小学生なんですよ?いくらなんでも……」

「向こうはそう思ってないのかもしれん。美琴ちゃんの時代では、のび太君は成人し、環境省に就職して家庭も築いている。つまり中・高・大のどこかで公務員試験に合格出来るだけの頭脳に改善するのは確定している。学園都市には未来を予知できる能力を持つ能力者が居たとしても何ら不思議はない。それで捕まえようとしているかもしれん」

「学園都市というところはきな臭いところだな」

「あんたのIS学園もたいがいだけど」

「う、うぅ〜む」

IS学園にも学園都市同様のきな臭い側面がないわけではない。全世界のIS関係者の育成を一手に引き受けている以上、上層部の誰かどうかはあこぎな考えを持っていても不思議でない。外部への抑止力代わりに織斑千冬が教員を務めているが、敵は外部ばかりではないのだ。箒は美琴からの一言に考えさせられた。

「とりあえず、ドラえもん達には俺から一報を入れておく。洋、お前はセイリングジャンプで周囲の偵察をしておけ。どこに敵が潜んでいるかわからんからな」

「分かりました」

敬介は携帯電話を取り出し、ドラえもんの電話番号をプッシュする。その横で筑波洋が変身するというのは、なんともシュールな光景である。スカイライダーとなった洋がセイリングジャンプで周囲を見回りに行き、敬介はドラえもん達に事情を説明する。

「ドラえもん君か?神敬介だ。君たちの事で重大な話がある」

と、切り出してドラえもんに事情を説明する。学園都市暗部がのび太を狙っている事、その阻止に自分達が動いている事などを手短に説明する。ドラえもんはこの事態を予期していたらしく、「やっぱり」と一言だけ返す。

「君はいずれそうなると考えていたのかい?」

「ええ。地球連邦軍が学園都市で介入行動を起こした以上、その出先を血眼になって探すのは目に見えてましたから。敬介さんが一人で?」

「いや、洋や美琴ちゃんに、箒ちゃんと一緒だ。今回は面倒な事になりそうなんでね、あの子達にもついてきてもらった」

「そうですか。気をつけてください」

「また連絡する。もしかしたら君にも合流してもらうかもしれん」

「分かりました」

電話を終えると、敬介達は別荘が見える小高い丘に即興でログハウスを建築。そこを拠点とした。同時に学園都市暗部の装備について美琴が説明する。

「学園都市の上層部は非合法手段を講じるために、能力者や重武装した連中を手駒にしてる。私の時代では高位の能力者でも、何かかしらの目的で暗部へ身を投じたり、そうすることでしか上層部に抗えなかったとか、色々な理由で生きてる奴がいる。『第一位』や『第四位』がそれに当たる。この時代でも似たような組織があると十分に考えていいわ」

「君の時代が『能力者育成としてはもっとも多種多様さがあった』時代だそうだが、レベル5がいないわけじゃない。そこは注意しろ」

「はい」

美琴は学園都市の最盛期におけるレベル5能力者であるが、『電気を操る』という能力そのものは古くからあるオーソドックスなものだ。美琴が『最も強力な電気操作能力者』であろうと、彼女の発電量には及ばないまでも同種の能力を持つ者が別の時代に存在していてもおかしくはない。敬介はそこを指して、美琴に注意をうながす。ほかは武装について説明する。2000年当時は2010年代より前の世代の兵器が現役運用されているとはいえ、自衛隊や米軍よりは遥かに強力な装備を持つ事には変わりはない。

「この頃にはもう学園都市はパワードスーツを実用化してる。世代は一個か二個くらい古いだろうけど、米軍や自衛隊のそれよりは遥かに先進的なモデルよ。箒、あんたのISには及ばない側面が多いけど、部分的には超えてるところもあるわよ」

「うむ……装着者の脳を破壊しようが、パワードスーツ側が補うことで戦闘継続できるというのだろう?恐ろしいな」

「まあ攻撃手段そのものは時代時代の標準的なものだから、その点は安心よ。」

「それを持ち出すこともあり得る。みんなは十分注意してくれ」

「はいっ」

――こうして、行動を開始する敬介達だったが、学園都市側では『テロ』に使われた兵器の映像解析に躍起になっていた。

「これを見ろ。全長19m前後のこの機体、戦闘機と思われるが、機首部分を離脱させ、ロボットになる機構がある。陸戦能力も高い。そのロボットが残したこの機首部分の解析を進めたが、純度の高いチタン合金で作られている事が判明した」

「チタン合金を?偉く贅沢ですな」

「それも相当に純度の高いものだ。しかも現在の如何な方法での精錬でもこの純度は実現出来ん。敵は相当に技術が高いと見るべきだ」

――ルナ・チタニウムは20世紀の如何な精錬法でも作れない。学園都市であれば辛うじて可能かも知れないという希望的観測がつくほどに精錬難易度は高い。23世紀地球連邦でさえ、ルナツーやフォン・ブラウンなどの月面都市でしか精錬できないのだからそれが伺い知れる。学園都市が恐れたのは、その脅威的な耐弾性だ。残骸相手に120ミリ戦車砲で射撃したところ、弾き返された。これは学園都市にとっても重大な脅威であった。2000年当時、学園都市といえども、超電磁砲などの実用化は未了状態であったからだ(実用化は2004年から2006年ごろとの事)。学園都市の戦車は外に出回っている戦車を凌ぐ性能を持つ高性能車で、自衛隊や米軍などにプロトタイプ提供がなされている(これが2010年制式化の10式戦車の素になったとの情報あり)。その主砲をいとも簡単に弾くというのは重大な問題であった。問題とされているのは、昨年の99年頃から度々行われているテロ行為であった。







――地球連邦軍は99年から2014年までの最盛期学園都市の航空宇宙地区の第二三学区などを定期的に強襲しては、未来機器でハッキングして技術を獲得するという非合法手段で各種技術を再習得していた。統合戦争以来の戦乱で失われた技術は多数であり、それを取り戻そうとする『レコンキスタ計画』を実行に移していた。手順は通常兵器に強い耐久性を
持つガンダリウム合金製MSを機種問わず投入、技術を得たら撤収するという強引な手段であったが、能力者を投入される前に撤収するという条件なので、ハッキング能力が高い端末と高い能力のMSなどが投入されていた。その内の一例がリ・ガズィであった。では、ある日の事例を見てみよう。


『重そうな機体だな。行けるのか?』

『ジェガンより遥かに高性能ですから安心してください』

『よし。グスタフ・カール、出るぞ』

地球連邦軍はこの日、治安部隊や特務部隊用に生産が開始された『グスタフ・カール』を実験した。サブフライトシステムに乗せてガルダ級から空挺降下させたそれは学園都市のある空港施設に降下。強行着陸し、周囲の兵器を蹴散らしていく。学園都市の警備員による銃撃を意に介せず、戦車は踏み潰し、軽装甲機動車はバルカンで蹴散らす。そして特殊部隊である「エコーズ」が23世紀現在の最新装備で空港を制圧し、ハッキングを行う。23世紀の最高レベルの端末はすぐに学園都市の技術データシステムの中枢にたどり着く。

『23世紀最新の端末だ。学園都市のシステムと言えど、おもちゃみたいなもんだ……よし。ダウンロードが終わった。ブラフデータは排除してある』

『よし、撤収!!』

用事を済ませたらさっさと撤収するこの鮮やかさは学園都市の暗部部隊を翻弄するほどのもので、HsAFH-10(後のHsAFH-11の前世代機)やHsF-00をものともしない制圧力で示された。MSは2201年時点の最新テクノロジーで作られている故、総合的に一万年分(オーバーテクノロジーで技術レベルが飛躍的に上がっているため)の技術格差がある。後にHsB-02が作られたのは、MSに対抗するためであったという。しかし地球連邦軍もさるもの、それを出せば、更に強力なスーパーロボットで落とすという、正に学園都市を翻弄する手を用意していた。そんな学園都市もこうなればと非合法手段で以って調査を開始。野比家がその兵器の出処である事を掴んだのだ。その徴候を更に仮面ライダー達が察知し、行動を起こしたのが、この事件の真相である。学園都市暗部部隊は野比のび太が将来的に自分達に害を及ぼすやもしれぬという予知に従い、野比のび太の拉致、殺害を目的に動いていた。


「いいか?今回はガキ相手とは言え油断するな。敵がどこに潜んでいるかもわからん」

「日本警察には上が圧力をかけてんでしょ?なら安心じゃないですか」

「いや、それ以外の敵だ。最近は散発的に俺たちの行動を妨害するのが現れている。気をつけろ」

「へい」

彼らはこの当時としては重装備を纏い、パワードスーツで行動する精鋭であった。だが、彼らを待ち受けるのがそれよりも遥かに強大な敵であるなど思いもよらなかった。彼らはこの日の夜に第一の行動を開始。のび太がしずかと二人きりになった時を狙って行動を起こした。

「こわ〜い。しずかちゃん、怖くないの?」

「のび太さんったら」

のび太は肝試しで墓場に向かった。その足取りはビクビクしている情けないもので、それを遠目から見ている箒は呆れていた。

(全く……あれでも男か?非常時と平常時のギャップがでかすぎるぞ……)

未来世界で第三改修を受けたISを身にまといながら双眼鏡でのび太の様子を確認する。オバケにビクビクするその足取りに、非常時の時の勇ましい様子は少しも見られない。箒は戦時中におけるのび太の勇ましさを先に見ているために、違和感があるのだろう。その時、ISの高度なレーダーが僅かな反射を捉えた。学園都市暗部の隊員の装備によるレーダー反射である。彼女はISで忍び足を行い、その男のもとヘ接近。空裂の柄で頭を思い切りぶん殴って気絶させた。

(子供に躊躇なく手をかけようとは……男の、いや人間の風上にもおけん輩めが……美琴が嫌悪するのが分かるな)

学園都市の暗部は子供であろうと実験動物同然の扱いで平然と利用する非人道的側面がある。ナチス・ドイツ以上に悪どいと言わざるを得ない行為に、箒も美琴も憤っている。なので、箒は美琴の事情を知ってからは、なのはと合せてのトリオで学園都市の暗部を調べたり、時には交戦している。箒は武器を回収し、この時代としては先進的なアサルトライフルに近接用のショットガンなど、殺戮を行うのに適した装備を持っているのを確認する。

『美琴、敵はかなりの重装備を持っている。まともな戦闘訓練を受けていないお前では……』

『大丈夫、私もそれなりに修羅場くぐってきたから。それよりあんたこそ装備を過信しないでよ?』

『わかっている』

美琴も箒もお互いに修羅場をくぐってきた自負がある。それ故にこのような言葉を交わせるのだ。箒はのび太を極秘に守護しつつ、敵の動きを探ることにした。すると、あちらこちらに息を潜める敵がいるのが確認できた。のび太は肝試しに必死で、怯えているため周囲の敵には気づいていない。戦いの時には、敵が撃鉄を起こす音に敏感に反応していたのとは大違いだとため息をつく。

「そうだ。うらめし!」

そんな事も露知らぬのび太はつめあわせオバケを使い、火の玉を召喚する。のび太当人は目的地までの明かりを灯すために使ったのだが、箒としてはやめてくれと言いたかかった。箒もオバケの類は苦手なほうであり、幼少期は束の背中に隠れたりしていた。今でも内心では震えたいが、IS使用者という手前、そういう訳にも行かない。

「わ〜こりゃ明るいや〜楽チン♪」

のび太は明かりを得た事で鼻歌交じりに歩き出す。足取りが一気に軽くなった。のび太の普段の性格を垣間見た箒は呆れと同時に、何も取り繕う必要がない子供としての彼の姿に眩しさを感じ、のび太を羨ましく思った。

(そうだ。肝試しと言うなら、のび太の行く先にあいつらがいるはず。急がなくては!)

嫌な予感がした箒は徒歩で(改良され、歩行機能が追加されたので出来る芸当。ステルス性との兼ね合いもある)のび太の向かう先に先回りした。




――神敬介は別荘から数キロほど行った市街地で学園都市の能力者の集団と交戦に入った。この時代にも後にレベル5能力者の多くが属したそれと似たようなグループは存在しており、その時代ごとに行動がなされていた。彼を襲ったグループの能力平均レベルは3から4。能力的にもそこそこ裏の世界で通用する。だが、敬介にとっては大したものではない。すでに数多くの修羅場をくぐって来た彼にとって、この程度は幼稚園児のお遊戯会程度だ。人間体のままでも黙らせることは可能だが、レベル4能力者の能力は『神敬介』としての姿では防御しきれないので、Xライダーへ変身を敢行した。

『久しぶりにやるか……セタップ!!』

マーキュリー回路を埋め込まれた後のXライダーは『大変身』で専ら変身しているが、別にセタップ変身する機能が失われたわけではない。マーキュリー回路が損傷し、大変身が不能になったり、自己修復の最中であるなどの場合のバックアップとして、セタップ機能は残された。これは敬介の任意で選択可能なので、この日はセタップで変身した。右腕で掲げたレッドアイザーがマスクに変化し、装着される。スーツはこの時に体を自動で覆う。マスクの口部分の接続部にパーフェクターを取り付ける。(実はここが重要で、パーフェクターがエネルギー回路を兼ねているのだ。パーフェクターをつけないとすぐに行動不能に陥る故、装着は迅速に行う必要がある。幸いにもGODはそこには気づかなかったが、それを憂慮した結城丈二=ライダーマンが風見志郎=仮面ライダーV3に自身が製作したマーキュリー回路を託し、大変身による変身がメインとなるように再改造を施したのだ。所要時間が一秒というのも、RXやZXなどの後発の仮面ライダー達にとっては隙であるのも、セタップを常用しなくなった要因である)

『Xライダー!』

おなじみの名乗りを上げると、ベルトからライドルを引き抜いてスティックでの棒術を披露する。ライドルを縦横無尽に操り、能力を除けば普通の学生である能力者たちを倒していく。

『ライドルロングポール!』

ライドルスティックが延伸し、その動きを利用して能力を使用中の能力者をぶっ飛ばす。ぶっ飛ばされた能力者はコンクリートの塀を突き破りながらビルの壁に叩きつけられ、気絶する。すぐに別の能力者からおよそ数千度の炎を放たれるが、これはライドル風車火炎返しで逸らす。それと同時に跳躍する。そこから脳天にライドルを振り下ろす。

『ライドル脳天割りぃ!』

Xライダー随一のエグい必殺技『ライドル脳天割り』が炸裂した。これは本気でやると改造人間の超合金製の頭蓋をも粉砕する。なので、威力は加減した。それでもやられた方を一ヶ月昏倒させるほどであるが。

『さぁ、これでもやるか?』

Xライダーの力は並半端な能力では通じないレベルである。それは超能力を持つ神話怪人を打ち破っている実績からしても明らかである。これで残りの能力者達は戦意を喪失したようだ。先ほどの炎関係の能力者がこのグループの最高実力者であったらしい。

(とりあえずグループの無傷な連中を連れて行って尋問するか)

尋問のため、数人を連行するXライダー。彼等ヒーローの尋問術は結構荒々しい。果たして彼等の内の何人が吐かずにいられるのであろうか?











――箒は途中、刀の柄で脳天をぶっ叩く、踵落としをISのパワーでぶちかますなどの方法で敵を昏倒させたりして、のび太が行くであろう墓場の最深部にたどり着く。そこではオバケの格好をしたジャイアンとスネ夫が一番奥の墓の裏で待ち構えていた。

(どうせのび太をビビらせようという魂胆だろうが、子供らしいと言えば子供らしいな)

裏で戦闘が起こっていることなど露知らぬのび太達の等身大の姿は彼女に感慨を与えた。「戦闘時は自分以上に大人びているあの4人にも歳相応の側面がある」というのは、前大戦以来、のび太達の事を見定めかねていたのだが、これでのび太達との付き合い方に工夫を出せると、感慨と同時に安心もした。近くの草むらに隠れ、様子を見守る。数分後、のび太が人魂と共に現れた

「お、きたみたいだぞ」

「ね、ね、ね、ねぇジャイアン……あれ人魂じゃない?」

「バ、バ、バーロー!脅かすなよ!」

「で、で、でもあれ!ん!?ろ、ろ、ろくろ首だぁぁ!?☆※」

のび太が呼び出したろくろ首にすっかり肝をつぶしたジャイアンとスネ夫の二人は持ち場(?)を放棄して逃げ出す。箒はこれにすっかり呆れた。墓に置いてあるスネ夫特製カードを取って帰ろうとするのび太に声をかける事にした。

「おーい、のび太」

「あれ、箒さん?来てたんですか?」

「理由は後で話す。人魂にあいつらすっかり肝を潰したぞ?逃げていった」

「あいつららしいや」

この付近の敵は倒しておいたため、ジャイアンとスネ夫が敵に拉致られる可能性はない。とりあえず偵察中のスカイライダーに二人が迷子にならないように声をかけておく箒。墓場を出て、しずかと合流すると、ドラえもんと圭子もいた。Xライダーに召集がかけられたようだ。しずかとのび太に事情を説明すると、ジャイアンとスネ夫を探そうとするが、ドラえもんがつめあわせオバケに探させようと提案する。箒はこれに内心ではビクビクであったが、ドラえもんのひみつ道具であるので、オバケの見かけは意外にデフォルメされていた。

「悪いんだけど、みんなでジャイアンとスネ夫を探してくれない?」

お化け達が周囲に散らばっていったのだが、これでもジャイアン達は逃げ出すのではないかと心配するが、ドラえもんに言われて流される。

(大丈夫か……?)

箒はお化け達の背中に、そう感想をもらす。学園都市の魔手が迫っている中での日常風景に違和感を感じつつも、その日の夜は更けていった……。









――その日の朝三時頃であった。一同が別荘の寝室で寝ていると、窓を突き破って敵が侵入してきた。これに神敬介、筑波洋に加東圭子は直ちに応戦。空手や柔道の有段者である(しかもかなりの高位)敬介や、実戦慣れした洋、正規軍で訓練をばっちり受けている圭子の敵ではなかった。元々、重武装でさっさと殺す事を目的に訓練された彼等では、想定外の要素であるデリケートな任務は不慣れであった上に、対人格闘術も訓練で時より行う程度でしかない。しかし相手は実戦をくぐり抜けてきた猛者であるのも彼等の不運であった。

「トウ!」

敬介の蹴りがド派手に相手の脇腹を思い切り蹴飛ばし、吹っ飛ばす。すぐに別のメンバーがナイフで突き刺そうとするが、敬介の腕に刃が立たずに、へし折れる。

「そんなナイフじゃ俺には傷もつけられんぞ。日本刀でも持ってこい!」

と、小気味いい啖呵を切る。敬介は深海開発用改造人間として改造された都合上、骨格や人工皮膚の強度がそれまでの仮面ライダーより上である。これは一万m以上の深海の水圧に耐えるためでもあり、必然的に改造人間としての高性能を備えた。本来は目的外である戦闘でも、デストロン怪人以上のスペックを持つGOD神話怪人相手に優位に戦えたのは、その仮面ライダー型改造人間である故の基礎性能の高さに由来するのだ。

「よっこらせい!」

敬介は敵の特殊部隊用スーツについているパワーアシスト機能のアクチュエータをそれ以上のパワーで押し返し、過負荷をかけてオーバーロードさせて爆発させる。改造人間として全機能を発揮しない人間体の姿でこのパワーである。洋は全面的に救命目的で改造された故、敬介ほど人間体での身体能力は高くはないが、実戦で培った動きで敵と渡り合う。

「どうします神さん」

「とりあえずこいつらを制圧して吐かせよう。どんな手を使っても構わん」

「了解です」

この後、この部屋に侵入した班は二人によって骨折数カ所、歯を数本折られるという重傷を負わせられ、制圧された。そしてすぐに部隊構成を吐かせられ、外にぶん投げられたという哀れな顛末を迎えた。




――圭子は普通に格闘術で特殊部隊を制圧していった。自身がロンド・ベルという治安維持と有事即応部隊に属し、更に元々は統合戦闘隊の長である故、高度な対応力を発揮してみせた。銃を蹴りで払うと、即座に手刀を打って鼻を折る。

「フッ!!」

頭を踵落としでごついて一人を気絶させ、もう一人の腕をナイフで斬り落とす。魔力をまとった刃で切ったので、傷口は綺麗だ。

「やれやれ。こちとらプロの軍人だ。ド素人が勝てるとでも思ってんの?そもそもお前たちとは鍛え方が違うんだッ!」

そう。圭子はプロの職業軍人である。それも月月火水木金金の地獄のような訓練を受けた戦前世代だ。自衛隊や米軍が20世紀末以降に確立させた人間工学やカリキュラムと無縁の精神論至上主義の風土で育ってきた故、白兵戦では無敵の強さを見せた。圭子は新兵時代、『空の神兵』を謳われた挺進連隊で空挺降下のと戦闘の講習を受けた(これは陸軍が空戦ウィッチでも、ある程度の陸戦力を持つことを志向していた時期の教育課程で、智子と武子の世代の時には廃止されていた。黒江の一期後の世代が最後である)世代であった事も大きく、カメラ小僧な普段と打って変わった強さを見せた。

「何ぃ!?お、大外狩り!?」

さしもの彼らも室内の隠密戦は分が悪く、柔道技や空手を駆使しつつ、乱戦にする事で、銃火器を使えない状況へ追い込む圭子の戦略に嵌った。途中、サイレンサー付きのアサルトライフルを無理やり撃つ輩がいたが、これは気配に飛び起きたのび太がコルト・ピースメーカーで肩を撃ちぬいたりして援護する。

「少佐、銃はぼくが引き受けます!」

「頼む!ドラえもんは?」

「箒さんや美琴さんと一緒に、しずかちゃんの護衛についてます。ぼくは遊撃役を引き受けました。こいつらはド素人です。すぐに黙らせましょう」

「おう!」


二人は持ち味を活かし、室内戦を戦い抜いた。のび太は銃を持てば普段が嘘のように、その潜在能力を発揮する。のび太はクリックリロード術を駆使し、敵を2セットほどの弾丸消費で完全に制圧した。この後、敬介と洋が全員を自分たちのログハウスへ連行していき、ひとまず難を逃れた形になった。しかしながら今回の件は地球連邦軍の軍事行動が発端である以上、今回で諦めるはずはない。ヘタすれば機動兵器を投入してくる。今回、美琴を前線に出さなかったのは、『経験不足』が大きい。美琴は過去にレベル5第4位の麦野沈利率いる『アイテム』相手に戦闘を行った経験はあるものの、暗部との戦闘経験値は絶対的に低い。そこを指して、ドラえもんや仮面ライダーたちが美琴を今回、護衛に回した理由なのだ。


「美琴を出さなかったのはやっぱり戦闘経験値?」

「ドラえもん曰く、美琴さんはまだ暗部とやるには青いそうです。美琴さん、相当ぶーたれてましたよ」

「『青い』か……あなた達がいう台詞とも思えないけどね」

「ええ。僕たちは修羅場くぐって来たんで、そんじょそこらの子供じゃありませんよ」

のび太の言う事は確かだ。白亜紀後期、コーヤコーヤ星、バウワンコ王国、ムー連邦、旧アトランティス連邦の遺跡、ピリカ星など、数多の修羅場をくぐり抜けたという実績は他にない強さの証である。危うく処刑されかけたことさえ一度ではない。美琴が青二才扱いされるのも無理かしらぬ事だ。





――しずかのいる寝室

「……〜…」

美琴は自身の戦闘経験値の不足を理由に、前面に出してもらえなかった事が不満であった。のび太やドラえもんからさえ戦力外通告されたのは地味にショックらしい。それを箒としずかがなだめていた。

「まあまあ、美琴さん。次がありますよ」

「これでも訓練は積んできたんだけど……まさか戦力外通告なんて」

「仕方がないが、ドラえもんとのび太は修羅場をくぐって来た場数が桁違いだし、圭子さんはプロの職業軍人、仮面ライダーの皆さんは言うまでもない。お前の経験量では不足だと言うことだ。私とて、経験はお前と似たようなものだ。修練をして、次に活かせばいい。いつまでも落ち込んでたら機会が来た時に100%の力を出せんぞ?」

「そうよね。箒、剣の打ち込み、付き合ってくれない?」


「お安い御用だ」

箒が最後にうまくなだめ、特訓に付き合う。美琴はここの所、上条当麻と共に戦いたい一心であちらこちらのツテを頼っており、その内に砂鉄の剣を普段から使っていたのと、身のこなしなどからニンジャレッド=サスケなどの忍者系ヒーローから手ほどきを受けた事があり、そこから更に、主に1988年頃に活躍していたヒーローであり、のちの記録によれば『戸隠流第三十五代宗家・山地闘破=磁雷矢』と記録される忍者を紹介され、剣技を鍛えられた。彼曰く、『実戦にはまだ出せない練度である』とサスケに伝えられ、ドラえもんにも通達されたドラえもんが美琴を前線に出さなかったのは彼から『並半端な技を身につけた状態で前線に出れば死あるのみだ』と美琴について注意を受けていたからだ。箒も絶対的な戦闘経験値は低い部位である以上、まだまだ訓練が必要であるのがドラえもんの見解だった。






――こうして、美琴は箒と共に浜辺で剣技を鍛えるための鍛錬を始めた。ライダー達の手ほどきを受けつつ、自らを鍛えた。

(一方通行……あいつからは妹達を地獄に落とす要因を作った張本人として侮蔑されている。知らなかったとは言え、アイツの精神を少なからず歪めたのは私だ。罪滅ぼしにはならないだろうけど……!)

美琴はXライダーから自らが遭遇する未来を知らされている。それ故に魔術師との関わりを持ち、独自に動いている。第一位の一方通行からは侮蔑に近い感情を持たれているのは仕方がないと割り切っている。しかし自分が学園都市の中枢に気に入られているのと、扱いやすいと見られていた事には腹の虫が収まらないのが現状だった。以前より能力に頼らない戦闘法を身につけたとは言え、能力がなければ『普通より元気な中学生の女の子』の粋に収まっている自分への苛立ちも多分にあった。そして自分よりも遥かに過酷な立場にいる仮面ライダー達の存在が美琴の心を更に変容させていた。人間、誰でも醜い部分はある。あののび太でさえも『嫉妬深く、臆病者』の側面がある事を考えれば当然なのだが、美琴は上条当麻への恋心を自覚した事で、自分の醜い側面を恥じ、『上条当麻の背中を守りたい』という、箒の織斑一夏への想い同様の境地に達した。それ故に、最近は箒と会う機会が増加したのだ。ちなみに見かけが年上の箒とタメ口なのは、生年月日が美琴のほうが先であるという実際の年齢差によるものだ。

「えやぁ!!」

竹刀を持って、まるで剣道部の打ち込み練習の如く、素振りする美琴と箒。美琴は常盤台中学では帰宅部であったが、ドラえもんと出合って以後は自主的に鍛えている。それは英国でHELLSING機関を目撃し、更に第13課のキ○ガイ振りを目の当たりにしたおかげだ。美琴にとって、彼らを言葉で表すのは難しい。最初は『闘争狂』としか言い表せられなかったという。だが、やがてそれぞれを知ることで、自らを見つめなおした彼女は鍛錬に力を入れるようになったという。


「よし、今日はあと100回素振りして、この辺りを一周だ」

「はいっ」

神敬介の鍛え方は体育会系仕込みの厳しいものだが、今の二人はそれにもへこたれない基礎体力となっている。見かけは変わらないが、地味に筋肉量が増え、ぜい肉が消えている。(元々、二人は運動神経が良いため、同年代の少年少女より引き締まった体である。それがさらにシェイプアップされつつも筋肉量は増えたので、体重はむしろ数キロ増加している)。基礎体力その他は以前より向上はしている。あとは経験である。敬介は数日以内に学園都市が次なる刺客を送り込むであろう事を予測しており、美琴と箒を第一線に出すことを検討していた。二人共、訓練量は十分と言えるほどであるし、以前より不測の事態に対応できるようになっている。訓練と実戦は違うが、対応力の向上という意味で練習は推奨されている。敬介は二人に課題をかしつつ、自身も次の戦への対応策を練る。

(セタップではマーキュリー回路作動時ほどの攻撃力は出せん。やはり大変身で対応するしかないだろう。真空地獄車を久しぶりに使わざるを得ないか?)

Xライダーはセタップ時においては『X必殺キック』が最強技であるが、大変身時には真空地獄車という大技が最強技となる。これはなのはや箒の世界の特撮番組では、放映時の技術の限界で『仮面ライダー史上最大にカッコ悪い』とさえ評されたのを伝え聞いた敬介は地味に落ち込んでおり、なのはを始めとした子供達の前では披露していない。(実際はかっこいい技なのだとの事。)真空地獄車を最後に披露したのはいつだったか……。


――こうして、学園都市暗部が次なる動きを見せるまでの束の間、彼らは休息と鍛錬を交互に行った。

「よし、大漁大漁」

敬介は水産大学出である。現在の稼業は海洋冒険家&海洋博士である。なのはが高校以後の年代の頃に公開され、見に行った映画では『バダンを倒した後は医者になっていた』と描かれていたが、本人曰く『薬学は学生時代にかじってるが、医者を稼業にするつもりはない』と苦笑交じりに告白している。ネオショッカーの時代に筑波洋を救った事が拡大解釈されたのだろうとは本人の談。この辺りでよく釣れる魚を釣り上げ、クーラーボックスに入れる。その数はスネ夫の母を入れてちょうど刺し身にするにはちょうどいいほどだ。

『洋、魚は確保できたぞ』

『そうですか。こっちは子供達にハンググライダーを教えてるところです』

『分かった。夕方には戻るから、それまでには切り上げてくれ』

『OKです』

この時代の日本はまだ1970年代以前と生態系・気候共にそんなに差異がないが、2010年代にもなれば、関東は9月でも25度以下にはならない年が増加していき、コロニー落とし以後は常夏状態だ。生態系もその環境に適応させた人工種が増えているので、天然の在来種の多くは気候変動についていけずに姿を消した。そのためにアースノイドの多くはサイド3のスペースノイドを憎んでいるし、スペースノイドには地球から人間を排除すべきという風潮がある。しかしそれが却って地球に負担をかけている事実に気づいていない。ティターンズ敗北後の旧フランス・北米地域への、日本による、それまでに輪をかけた冷遇はティターンズに不利益を強いられた者の報復であった。フランス地域や北米出身者はティターンズを利用して復権を目論んだだけだが、ティターンズの行いが極悪非道に過ぎたために彼らがエゥーゴに倒された結果、以前よりも立場を落とし、日本に意見を述べられる立場ではなくなってしまったように、アースノイド間ですら差別はあった。敬介はそれを想い、2200年代におけるスペースノイドの行いに呆れていた。アースノイド全てを悪と断ずる前に環境改善技術の一つでも開発しろと言いたかった。それが1970年代の『世界政府が理想』と信じられていた頃に人間であった彼ら7人ライダーの思いだった。かつて、資源を食いつくすだけの大衆とギレン・ザビは言ったが、人間の営みがある以上、地球で生きていく者をある程度許容しなくてはならない。それができなかったシャア・アズナブル、マイッツァー・ロナ、フォンセ・カガチは敗れていったのだ。ジャミトフ・ハイマンに同情的な評価が出てきたのは、バスク・オムという絶望的に政治的無能な者を現場責任者に添えた事、エゥーゴを率いる立場であったシャア・アズナブルがエゥーゴを捨て、ハマーン・カーン亡き後にネオ・ジオンを自分色に染め上げて、隕石落としをしたからである。その点でシャア・アズナブルの政治的指導者としての評価は低い。仮面ライダー達からすれば、彼らの争いはバカバカしかったのだ。



――その日の夜、敬介が腕を振るった刺し身は子供達に好評であった。筑波洋が捌くのを手伝い、見事に人数分確保に成功したそれはスネ夫の母も喜び、食事を終え、無事に就寝時刻を迎えた。その内の一室で寝ることになった箒と美琴はふと、この一年の事を思い出していた。

「なあ美琴」

「何?」

「思えばこの一年は色々あったな。別の世界で過ごすなんて思ってもみなかったし、戦争に参加するなど……」

「私だって似たようなもんよ。数百年でテラフォーミングや宇宙移民が当たり前になるなんて、学園都市にいても考えつかなかったもの。しかも世界政府が理想だって唱えられていたのが、現実は派閥争いが常、軍閥政治さえまかり通ったなんて、幻滅モンよ」

「どんな組織でも、当初の理想が変容して行くというのはままあるのだな。日本が武装を捨てることを諦めたのもそれだろうし、国際連合も戦勝国クラブと揶揄されていた。それらのしがらみを忘れ去ったはずの世代が別の形で争い合う……。人間というのは数百年程度では変わらんのだな……」

「仮面ライダー達は、スペースノイドの過激派が言うような方法は無駄だし、却って反発を招くだけって呆れてるわよ。隕石落としやコロニー落とし、タイヤ戦艦……奴らは地球の人間を大昔の恐竜同然の『野蛮な存在』としか見てない。学園都市暗部のほうがやってることが可愛いわよ」

美琴は未来世界でスペースノイドの過激派達が試みたあらゆる手段での大量破壊を揶揄した。サイド3やサイド2出身者がアースノイドから嫌われるのも無理かしらぬ事で、かつて地球連邦に挑んだコロニーの多くは逆に地球連邦に尽くす事で生計を立てている。これは白色彗星帝国戦時に自分たち独自の軍事力では白色彗星帝国の前には無力であり、連邦に助けを乞うことで生き延びたという事実を鑑みてのものだが、敵対しておいて、いざとなったら助けを乞うなど、虫が良すぎると言うことだ。

「アースノイドはアースノイドでティターンズを作るし……嫌なものだ……軍人なら政治をするのが仕事ではないだろうに」

「平和が長く続くと官僚型軍人が組織を支配するって言うけど、その年代に軍に政治を志して入る輩が多かったらしいのよ。それでその世代が一年戦争の軍事ネットワーク崩壊で実務型軍人から嫌われ始めて、結果的に軍閥政治を招いた。本来は政府からの統制を受けるべきなんだけどね」

「シビリアン・コントロールという奴か?あれ自体、ここ数百年で確立された概念だろう?今の政府に軍隊を抑えられはせんぞ」

「そう。一年戦争後の地球連邦は政府の統治能力が馬鹿みたいに下がって、軍の力がないと政権維持も覚束ないくらいに落ち込んだ。それでリリーナ・ピースクラフト大統領の平和主義政策が頓挫してからは、軍隊を一部の有力な政治家が手綱引いてる状態。だけど、政軍関係を一年戦争前の状態に戻さないと、財政破綻まっしぐらになるって考える政治家もいることにはいるってさ」

地球連邦政府は一年戦争以後の電子ネットワークの崩壊に伴う統治能力の減退と、数代の大統領の失策が重なった結果、軍隊が政策を間接的にコントロールする軍閥政治が横行してしまい、エゥーゴとティターンズの内戦後も混乱を産んでしまった。政府内には一年戦争以前の政軍関係の復活を財政健全化のためにも志向する勢力はいるが、軍の後援が無ければ政権の座は愚か、議会で勢力の確保すら覚束ないので、少数派である。これは左派が『平和主義を人道主義と同義に考え、安全保障分野を軽視した』事で、国民を多数死なせたという致命的な政治的選択ミスを犯した事で、白色彗星帝国戦で国民が政府より軍隊を信望するという状況が生まれてしまい、軍閥政治が収まった2201年でも、軍の意向で政府予算の概算が決まるという本末転倒な状態である。これはジオン系勢力がプロパガンダで『腐敗した連邦政府』という語句を長年に渡って使用している事で、一般人に『政府は保身しか考えていない』というマイナスイメージが根付いてしまった事、平和主義が度重なる宇宙戦争で事なかれ主義のレッテルを貼られた事で、未来世界には軍隊の予算が第一であるとする『新・軍国主義』とも言うべき主義が主流であった。かつての軍国主義がファシズムの亜種であったのに対し、これは民主主義を保ちつつ、軍隊が政治を裏で手綱を握っている状態を、ある政治評論家が揶揄したものが広まったものだ。美琴が言ったのはそれだ。この後も二人の未来世界の政治の話題は続き、お互いに地球連邦の官僚主義にうんざりしていると一致したとの事。









――ドラえもんとのび太の寝室

「ねえドラえもん。学園都市はどう動くかな?」

「能力者を送り込むというのは失敗したし、並半端な武装は逆に返り討ちにされるから、機動兵器も出してくるかもね」

「仮面ライダー達は対策を練ってるの?」

「太陽戦隊サンバルカンや光戦隊マスクマンに連絡をとったらしいよ。彼らのメカを投入するってさ」

「仮面ライダー達は巨大戦は不得手だし、まあしょうがないね」

そう。仮面ライダー達は巨大戦を不得手としている。巨大な敵には内部に入り込む事で倒しているので、真っ向からは戦えない。この問題が解決されるのは、仮面ライダーJの加入を待たねばならない。彼らにも意外な苦労があるのだ。

「まあ学園都市のこの時点での技術力じゃMSの装甲も打ち抜けないからね。スーパーロボットじゃ尚更安心だよ」

「んじゃおやすみ」

呑気なようだが、学園都市に彼らに対抗できる力がない故の事だ。それぞれ人外の敵を討滅してきたヒーロー達に彼らでは役者不足なのだ。ドラえもんとのび太は寝ることにし、次の日を迎えた。





――次の日、のび太はつめあわせオバケに見張りをさせ、別荘の外にいた。学園都市暗部の動きが気になったためだ。そして、一反木綿が空の彼方から飛来する何かを知らせた。それは学園都市の誇った爆撃機『HsB-01』(HsB-02の一世代前のもの)であった。美琴の知るそれよりは幾分未完成な印象を受ける機体だが、それでもB-2よりも圧倒的に高性能であった。爆撃態勢に入るが、それよりも早く美琴が動いていた。

「あんたら……この時代でも好き勝手振る舞ってるようね。すべての時代の能力者を弄んだ罪は償ってもらう!!」

美琴は初っ端からフルスロットルである。100億ボルト(未来世界での特訓で基礎火力がこれまでのカタログスペックの10倍に成長した。ストロンガーのチャージアップ形態には及ばないまでも、マシーン兵器であるシズラーに近い電気発生量を持つようになった)の電撃を浴びせ、破壊する。(彼女は元々、限定的条件下では空を飛べる。今回はそれである。電気の応用で、電気でスクランブルダッシュとほぼ同形状を取り、それをブースターにして飛翔していた。以前より能力の精度が向上した故の出来事である。)

「はぁっ!!」

電気エネルギーをサンダーブレイクの要領で放ち、編隊の列機を絡めとる。これはグレートマジンガーやグレンダイザー、ゴッドマジンガーなどの『雷を武器として使用するスーパーロボット』に着想を得てのもので、今までの戦術と違うのは、炸裂する瞬間に威力を発揮するように調整を取っている事だ。『創られた能力、定められた限界』を自らの精神力で越える事に成功した彼女は、学園都市の思惑とは別の方向性の成長を遂げたのである。

『美琴、隙見せすぎ。狙われてたわよ?』

圭子がジェットストライカー『旭光』(F-86)で神業的狙撃を見せる。使用火器は五式30ミリ機銃の狙撃仕様だ。高性能スコープをつけて、銃身をより長銃身のものに独自改造している。重量は未来世界製の部材を多用する事でできる限りのい軽量化をしている。(この改造はのび太監修で、狙撃経験者である彼のアドバイスで、かなり軽量化に腐心したのが伺える)

「ケイさんこそ、なんですかそれ?」

「こう見えても若い頃は『扶桑海の電光』って異名で呼ばれてたのよ?現役に戻ったからには、まず格好からよ」

「って、ケイさん。アラサーじゃ」

「に、肉体年齢は10代だし……」

圭子は思わず涙声になる。彼女の実年齢は1946年次は26歳。1950年には三十路突入なアラサー女子だ。そこが圭子としては辛いとこで、肉体的には10代へ戻っているとは言え、戸籍上の年齢は変えようがない故に、親戚からは1945年ごろから『早くいい婿さんを』との手紙とお見合い写真が送られるようになってしまった。圭子としてはありがた迷惑(リンカーコアが生じた事で、魔力を生涯維持可能になっているので、結婚した後に『やることやって』も別段問題は無い)である。彼女の時代の倫理観や常識では、『20代半ば以降に未婚だと行き遅れ』と近所に揶揄されてしまうので、圭子の親戚はそれを心配しているのだろうが、結婚などへの倫理観が未来世界のそれに染まった圭子としては、その心配はありがた迷惑なのだ。

「そりゃ26になるから、最近は親戚からお見合い写真やらが送られてくるけどさ……未来じゃまだ結婚適齢期だってーの」

「ケイさんの時代は16、7歳の結婚もありふれてたしねぇ。ほれっ!」

会話をしつつも敵と渡りあう二人。直進で敵を爆撃することが目的な機体では、捕まえられれば意外に脆く、数分で全機が無力化され、不時着してゆく。ドラえもんから『スパイセット』で第二陣を補足したと連絡が入る。戦闘機型が護衛についている本陣だ。これには二人も苦戦させられる。

「なっ!?嘘でしょ!?」

80メートル近い巨体でありながらも、真ゲッターロボやマジンカイザー張りの動きを見せる戦闘機。学園都市主力を2010年代に担っている『HsF-00』の初期生産型であるらしく、速度はマッハ17、8ほどと後のモデルよりは『大人しめ』だが、武装は同じ。有線式レーザーユニットなどで美琴と圭子を猛襲する。

「クソッ、ちょこまかと!」

圭子はレーザー攻撃をシールドとマニューバーを駆使してどうにか逸らすが、動きが幾何学的にすら思える敵機に攻撃を当てられない。ジャンボジェット機を有に凌ぐ巨体であるのに関わらずだ。しかも圭子を驚かせたのがこれ。

「何ぃ!?独楽かよ!?」

独楽のように高速回転しながらレーザーやらミサイルを撃ちまくる敵に圭子はうんざりしながらも応戦するが、完全に足止めされてしまう。美琴をかばいつつなので、狙撃どころではなくなる。

「美琴、超電磁砲は!?」

「この速度差じゃ当てられません!なんとかして速度を落とさないと……」

「なんてこったッ!」

二人は完全に足止めされ、爆撃機を阻止不能に陥る。その隙に爆撃機の内の一機がブレードを展開し、衝撃波などの原理で大地ごと敵を両断する、通称『地殻破断(アースブレード)』の体勢に入る。これをやられたらこの一帯はマグマが吹き出す地殻をむき出しにされる。美琴達の顔が青ざめる。パイロットは意気揚々とトリガーを押そうとしたが、次の瞬間、上空からの機銃掃射で火達磨になり、撃墜される。雲を切り裂くように颯爽と現れた機影は――!

「コズモバルカン!?」

「と、言うことは飛羽さん!?」

現れたのは太陽戦隊サンバルカンは、バルイーグルの駆るコズモバルカンであった。SFじみたその機体設計は、地球外の技術が一部使われている事を示している。30mと大型でありながらも余剰推力が高く、高G旋回で学園都市製戦闘機と互角の旋回半径を見せ、その火力と防御力で押し切るかのように、ドックファイトを展開する。それを追うかのように、光戦隊マスクマンのマスキーファイターとマスキージェットが飛来し、味方であることを示すためにそれぞれの機体が二人に翼を振る。カタログスペックでの速度差はこの3つのスーパーマシンをしても抗しがたいはずだが、それを感じさせない空中戦を魅せる。

「残りのメカは地上で対空配置についている。君たちには俺達の指揮下に入ってもらうが、いいね?」

「はいッ」

バルイーグルが二人に通信で伝える。空中戦では一秒の隙が死に直結する。格闘戦に持ち込むために彼は愛機を横滑りさせながら、レーザーを回避しつつ、相手の横合いからバルカン砲を撃つ。相手は80m近いので、逆に当てやすかった。胴体部にブラックマグマの戦闘機を一撃で叩き落とす徹甲弾を食らっては、さしものHsF-00も炎上し、根本から翼が折れて爆砕する。


「イーグルさん、上に敵です!」

「おっと!」

イーグルは圭子の警告に、とっさにバレルロールで機体を回転させ、敵の機銃掃射を回避する。次いで、地面スレスレまで急降下する。彼がやろうとしているのはマニューバーキルと呼ばれる方法で、かつて『F-111』が湾岸戦争で行った方法としても知られる。これ自体は第一次世界大戦当時からある古典的な撃墜方法であるが、本格的な戦闘機時代に入ってからはあまり見なくなった手法である。コズモバルカンは上昇力については学園都市の戦闘機よりも優れている。学園都市の戦闘機の80m近い巨体ではいくら最大速度に優れているカタログスペックを持とうが、その重量故に上昇率は低高度からでは低い部位に入る。そこを突いたのだ。そしてあまりに巨体であると、低空飛行には向いていないのであった。


「うわあああ!?」

一機がコズモバルカンを追うのに夢中になっている内に、木に主翼をぶつけ、そのままもんどり打って激突、森の一角が炎上する。マニューバーキルは大成功した。

「低空飛行するときは障害物や地形に気を配れというのを知らないのか?カタログスペック便りというのは恐ろしい」

バルイーグルは学園都市の飛行部隊が実戦経験が少ない、カタログスペック便りの連中と看破した。動きを見ていると、機体スペックに物を言わせて、相手をねじ伏せる戦法しかできない者達というのが、国連内の地球平和守備隊及び、原隊の航空自衛隊で戦闘機パイロットの教職についていた彼ならばの慧眼によって判明したのだ。戦闘機乗りとして初歩的な注意もしていないあたり、プロの軍人ではない故の注意緩慢さを感じ、呆れたのだ。

「レッドマスクにイエローマスクは爆撃機を落とせ!戦闘機は俺が引き受ける」

「了解!」

腕が自分より落ちる二人を比較的容易な爆撃機迎撃に回し、自身は戦闘機を引き受ける。圭子と美琴に揺動を担当させ、自分がとどめを刺すというチームプレイで戦闘機編隊に挑んだ。その結果、戦闘機はなんとか離脱に成功した数機以外は撃墜し、制空権を確保に成功した。爆撃機もマスキーファイターとマスキージェットの攻撃に加え、地上からの対空砲火で撃墜、もしくは不時着に追い込み、航空部隊は壊滅させた。

「地上部隊は?」

「レーダーに補足しました。二重にパワードスーツを着込んでいる連中です。外装はおおよそ12,3m級はあるかと」

「よし、合体して奴らの戦意を挫く。合体、グランドクロス!!」

「俺達も行くぞ、合体、ファイブクロス!」

二つの戦隊メカが合体する。合計7機(マスクマンはサンバルカンより活動年代が後年なため、五機合体である。ちなみに五機合体ロボはマスクマンのグレートファイブが初であったりする。これは数年間でロボットの基礎設計能力と建造能力が向上した表れである)のスーパーメカが合体し、二機のスーパーロボットとなる。



『完成!サンバルカンロボ!』

『完成!グレートファイブ!』

グレートファイブは最終決戦においては損傷の蓄積で、ギャラクシーロボに出番を譲ったため(最終決戦までに合体機構の修理が間に合わなかったためと、ギャラクシーロボのほうが使い勝手が良かったため)に、これが非公式ながらも久方ぶりの実戦であった。

「何だあれは!?」

襲撃部隊隊長はこれに思わず驚いた声を出す。特撮ものやアニメよろしく、まんまそれなスーパーロボットが現れたのだから当然のことであった。無論、これをこけおどしと取った彼らは構わず突撃を敢行するが、スーパー戦隊は情け容赦なく、必殺技を繰り出す。


『太陽剣!!』

『光電子ライザー!!』

身の丈に合う巨大な剣がそれぞれ召喚&盾から取り出される。そして、サンバルカンロボに太陽エネルギーが、グレートファイブにはオーラパワーが迸り、光を発する。オーバーキルであるが、この『全力で敵を倒す』というのは、昭和期に活動していたヒーローならばの古き良き光景と言えた。

『オーロラプラズマ返し!!』

『ファイナルオーラバースト!!』

それぞれの必殺技が彼らを一刀両断する。着膨れする形で着込んでいたパワードスーツのおかげで死は免れた彼らだが、脱出したら脱出したで、彼らをスカイライダー、Xライダーらが取り囲む。

「武器を捨てて降伏しろ。もうお前らに逃げ場はないぞ」

Xライダーがライドルホイップを構えながら宣告する。念の為に二大戦隊を呼び寄せておいたおかげで最悪の事態は免れ、真空地獄車の披露(?)は成らなかった。こうして、学園都市暗部の一部隊は小学生とヒーロー達によって制圧され、厳しい尋問が行われた。尋問は大人達の役目であった。







――数時間後 ヒーロー達のロッジ

「カツ丼だ、食え」

「は、はあ」

ヒーロー達の尋問は大昔の刑事ドラマ然とした雰囲気で始まった。この後、『ネタは上がってるんだ』、『ゲロって楽になれよ』という昭和然としたセリフが飛び出していき、される側は『昭和の刑事ドラマかよ……』と心の中で突っ込んだという。尋問では彼らは末端の一中隊であること、これで学園都市が更なる兵器を作るだろうと吐き捨てられたが、未来にいた彼らからすれば『規定通り』でしかない。彼らは学園都市の暗部が巨大であるかを改めて実感し、ため息をついた。








――スネ夫の別荘

「結局、私の出番無かったな……」

「まぁ泳ぎに来たと思えば」

「のび太、お前という奴は大長編モードになると途端にポジティブになるな」

「慣れましたから」

「そういう問題か?」

箒はのび太に突っ込みを入れつつ、スーパー戦隊女性陣に誘われ、水着に着替えて海に入る。のび太は浮き輪付きだ。箒は以前よりも自分がアクティブになっている事に内心で驚きつつも、のび太の面倒を見つつ、ストレス解消も兼ねて泳ぎまくった。ドラえもんと圭子と美琴はビーチに陣取って、優雅にトロピカルドリンクを飲んでいる。

「学園都市の連中はこれでひとまず大人しくなるだろうが、美琴、お前の時代の兵器の開発を急かせるかもしれん」

「その時になったら、また粉砕すればいいだけですよ。あたしは書庫のスペックなんて超えましたから」

――美琴の能力は従来より威力を増し、100億ボルトに発電量を増していた。しかしこれでもまだ一方通行には抗えないエネルギー量でしかないのだから、彼の強大さが伺える。美琴はそれもあって、自身の能力が超電子エネルギーの次元へ進化する事を望んでいた。超電子エネルギーであればベクトル操作も効きづらい。これは核兵器でもベクトル操作で無効化する一方通行であろうと、ある水準より上のエネルギーには(例外として、エネルギー自体に意思がある、それか神の次元の力であると、ベクトル操作は通常の効用が無い。ゲッター線がそれだ)能力が効きづらいというのが『第三次世界大戦』の記録で確認されている。既に書庫(バンク)に記されたカタログスペックを凌駕した美琴だが、仮面ライダーストロンガーに出会ってからと言うもの、『電気のその先』を追い求めているのが分かる。

「能力にキレが増したのはいいけど、突っ走らないようにね」

「分かってます」

圭子にそう返すと、トロピカルドリンクを飲み干す。以前よりも強大な力は得たが、もっと強くなりたいと願うその様は、学園都市上層部に利用された自分の『妹達』の死が彼女に一種の罪悪感と十字架を背負わせているのだとドラえもんは直感した。

(美琴さんはシスターズの事や上条当麻さんの事で気に病んでるところがある。黒子さんが悩むはずだ)

ドラえもんは黒子から美琴のことで相談を受けていた。勿論、ドラえもんは全ては話してはいないが、美琴が重大な何かを背負っている事は、黒子自身、察していた。それ故に、美琴の力になれないことを悔しがっている。




――そもそも、美琴は幼少期には母親の美鈴になんでも悩み事を解決してもらったことから、シスターズの一件の時に「なんでも解決してくれるママはここにはいない」と独白し、母親を強く慕っている様子を垣間見せている。美琴はそれを記憶している故、かつての母親のように、シスターズの事を自身の手で解決しようとしたが、結局は上条当麻に全てを託さなければならなかった事への無力感と、上条当麻に起こった、あるいはこれから起こるであろう出来事を知らされてしまった故、今まで蚊帳の外に置かれていた事に、怒りと同時に虚しさをも感じていた。ちびっ子シスターの名が『インデックス』である事、彼女の存在が上条当麻を突き動かしていた事も知ったがために、複雑であった。美琴の行動は少しづつ史実からはかけ離れ始めていた。時に西暦201X年のことである。


――その日の夜、二大戦隊までも合流した矢先に、今度は彼らを嗅ぎつけたバダンが行動を起こし、全員で殲滅に向かうことになった。

「今度はバダンか。なんかもうやになるぜ。折角俺の歌を披露しようと思ったのによ」

「まぁまぁジャイアン。ほら乗って。」

「チェ!」

拗ねるジャイアン。それをなだめるスネ夫。ジャイアンリサイタルだけは全員が避けたかったので、この時ばかりは全員が攻撃をかけてきた暗闇大使に感謝した。美琴と箒を含めての子どもたちは女子用の設備がある、光戦隊マスクマンの母艦『ターボランジャー』に乗り込む。ジャガーバルカンを先頭に飛び立つ。子どもたちを連れ出す名目は『国連軍が行っているチャリティーの遊覧飛行』と、サンバルカンの身分を活用したお題であったりする。こうして、のび太達は戦隊+仮面ライダー達の戦線に帯同する事がメカトピア戦争後は多くなり、サンバルカンのはからいで、国連は、地球平和守備隊(当時)からそれぞれの家庭宛てに、適当な理由をつけての賞状などが送られたという(国連及び、付属機関公認。さすがに戦争に参加して戦功立てましたというのはまずいので)。



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