外伝その132『連邦軍の残党狩り2』


――調は紆余曲折を経て、エクスカリバーを覚醒させたため、手刀では『因果を断ち切り、勝利に結んで!』の口上のルーティンを、剣の媒介の発動では、アルトリア同様のそれで放てる。そのため、数人いるエクスカリバー使いに数えられる。響たちは、調がその身にエクスカリバーを宿した事に驚き、問いただしてみる――

「おい!なんでお前がばーちゃんと同じ聖剣を撃てんだよ」

「私は聖域で聖闘士に内定してますし、アテナから聖剣も拝領してるんです。それと、私も師匠と同じ。『山羊座の以蔵』の魄を受け継いだのもあるかも」

「あ?誰だよ、それ」

「師匠の先々代の山羊座の黄金聖闘士で、300年近く前の人物です。私と師匠はその彼の技能を受け継いだんです」

「古代エジプトの魂の考えも、あながち迷信ではないという事ね」

「そういうことだよ、マリア」

「しかし、信じられんな。エクスカリバーは英国と言おうか、ケルト神話の聖剣だぞ?私達の元の世界では、実在の確認が確認されていないはず。平行世界でそれを言っても無意味だがな」

翼も言う。エクスカリバーは聖剣の中でも、その実在がシンフォギア世界では確認されていない代物の一つ。しかしながら、先程の一打は、剣というより『剣からビームを放って蹴散らす』ようにしか思えないものだ。切ると言うよりは『放つ』と言うのが正しい表現だ。

「剣から光速の衝撃波撃ってるんで、この世の殆どを斬れます。マジンガーZくらいなら一撃でまっ二つですね」

「マジかよぉ!?」

「マジンガーZは標準的な性能なんで、割と斬りやすいほうなんですよ。グレートだときつくなるし、カイザーやエンペラーだと因果を断ち切られるんで、完全に無理。グレンダイザーとグレートがギリで傷つけられるラインかな?」

「妙に現実的だな、おい」

クリスは呆れたコメントを発した。しかし、マジンガーZは意外と斬りやすいというのも驚きである。ストロンガーに聞いてみると。

「超合金Zも無敵じゃない。超合金ZやニューZの特性を知っていて、ある一定の以上の強度と斬れ味を持つ刃なら、斬れるんだな、これが」

「嘘だろ!?」

「マジだ。技がいるが。VFの銃剣やナイフでも斬れない金属じゃねぇ。だからもっと凄い合金を作ってたんだよ」

「つまり、兵器の改良で、装甲材の世代交代が促進されたのね?」

「そうだ。弾に強いのはいくらでもあるが、刃が通じるようになると、スーパーロボットの装甲としちゃ旧式になったって言わざるをいないからな」

「確か、マジンエンペラーに使われてるのは、ゲッターとのハイブリッド装甲でしたね?」

「ああ。『ゲッター合金』とかいう奴で、合成鋼Gの柔軟性とゴッドZの強度を兼ね備えた新種だな」

「なんか、子供が考えたみてぇな名前だな」

「まぁ、スーパーロボットの金属なんて、そんなもんだ。俺達、機械式改造の仮面ライダーの装甲も超合金製だが、一般怪人のは俺達のより脆いんだ」

「どうしてだよ」

「こいつらは多くの別個体製造も考慮されてる雑兵なんだ。幹部級と違って、材料もケチってるしな」

「んじゃ、あんたらは?」

「俺を含めた何人かは、次期幹部候補として設計されてたんでな。最高級改造人間なんだよ。元から出来がちげーんだよ、出来が」

ストロンガーも元は『奇械人スパーク』として設計されたボディを持つが、正確にはその改良型にあたる。親友であった沼田五郎が実はその『スパーク』の被検体にされた。五郎のアメフト選手としての体でも、スパークへの改造手術の負荷には耐えられずに死亡。その後に、スパークの改良型であるストロンガーのボディの被験者に志願したのが茂である。茂の体は元から並外れたタフさを誇っていたのが分かる。

「一号ライダーなんて、首領の後継者候補として設計されてて、試しに試作された個体もいたし、二号なんて、同時期に何人もいたとか言うしな。改造人間は兵器の一つでもあるんだよ。一文字さんも元々はショッカーライダーのPタイプだったらしーけど」

「なんか現実的だな」

「改造人間は同じ改造さえ施せば、別個体造れるからな」

「あんたら仮面ライダーって、一部は組織の脱走者だろ?ばーちゃんがいなくなった後、ウチの組織のおっさんに頼んで、映像ソフト見たぜ。それ不思議に思ってたんだよな」

「俗に言う偽ライダーになるんだよ。同じ改造の別個体は。脳みそ弄ってるから、基本的に俺達より弱くて、雑兵なんだが、あいつが出会って、俺が撃退したのは、平行世界で生み出された悪のライダーの一人だろう」

仮面ライダー三号は、三人目の仮面ライダーの一人だが、行動目的が俗に言う『邪悪』なため、黒江からは嫌われている。今回においても、黒江は彼を敵視している。本郷と一文字を倒し、バダンの幹部になっていたという経歴が原因だ。最も、『彼』はあくまで、どこかの世界のダブルライダーを倒しただけだが、黒江は仮面ライダーに『無敵のヒーロー』という偶像を抱いているため、三号の存在には露骨に不快感を示す。それは調も同じだ。

「私もですけど、三号はどうも」

「あいつは本郷さんと一文字さんから俺に至る可能性を大事にしてるからな。俺が現役の頃の映像ソフト、BOXで買ったとか自慢してたし、あいつ、そういうところはガキだからな」

ストロンガーは、黒江が自分を慕っている事を念頭に入れつつ、黒江の持つ純粋さを語った。そもそも、茂を慕うようになったのは、若返り直後の刷り込みと、数回のやり直しで持ち越した好意にその理由がある。映像ソフトをBOXで買い込んで、それを茂当人に自慢するなど、茂の前では子供っぽいところを多分に見せる。茂も悪い気はしないため、黒江にはバイクの分割払いの金額を下げてやったり、整備の要領を教えたり、ネオサイクロンの製造の部品調達に駆り出すなど、可愛がっている。

「って、何を長話してんだよ!来るぞ!」

「問題ねぇ。エレクトロサンダー!!」

ストロンガーは余裕だった。エレクトロサンダーで招雷し、その雷で敵を焼き払う。

「あんた、ばーちゃんと同じ電気の力を…」

「俺は改造超電子人間だぜ?あいつのアーク放電よりも強力な電気扱えるから、今のは軽いもんだ」

「なんだよそれぇ!?」

クリスは驚き役になっていた。ストロンガーは超電子ダイナモを持つので、電気エネルギーに関しては、現在の黒江の更に上の神域にいる。現時点で、黒江のアーク放電をサラリと受け流せるのは、RXとストロンガーくらいなものだ。アーク放電は、かのアイオリアでも到達しなかった領域であり、ストロンガーの力が『7人ライダー最強』とされる理由でもあった。(吸収できるからでもあるが)

「さて、こいつらは単に数合わせの雑兵だ。中央突破で崩すぞ!」

「はいっ!」

装者達と二人のライダーは各々が力で、バダンの怪人軍団を蹴散らしてゆく。ただし、調は剣技なので、翼とマリアに対抗心を持たれている。クライシスの怪人もも混じっているが、もはや区別はなく倒されるだけだ。だが、一同の突撃を阻むのは、やはりガテゾーンだった。

「ガテゾーン、貴様、バダンと手を結んだのか!」

「皇帝陛下直々のご達しだとよ。俺には知ったことではないが」

ガテゾーンは格闘戦は苦手だが、射撃戦では天性の才能(高性能)を発揮する。翼とマリアが斬りかかったその一瞬を突き、腕に持つレーザー弾のソードオフショットガンを直撃させた。シンフォギアの表面に命中痕がハッキリと残り、二人が苦痛に顔を顰めている事から、シンフォギアのバリアフィールドを突破し得る手段を講じたのが容易に分かった。

「翼さん、マリアさん!」

「なら、あたしが!」

「待て!ここは任せろ!」

反撃に出ようとしたクリスを制したRXはロボライダーへと二段変身した。ガテゾーンの銃に対抗できる防御力の形態へ。

『俺は炎の王子!!RX・ロボライダー!!』

バシッと決めポーズを決め、RXの生物的なフォルムから一転して、全身が機械で包まれていると感じさせる重厚な姿へと変身したRX。

「また変身しやがった!?」

「RXさんは二段変身できるんです。その内の防御力と火力を強化した姿がロボライダーなんですよ、先輩」

「でも、なにも武器持ってねぇけど?」

「まぁ、見ててください。理由がわかりますから」

調はRXの力を知るため、ロボライダーの力を解説する。切歌はそんな調の変化に寂しさを感じ、微妙な表情であった。

『ボルティックシューター!!』

ロボライダーの腕に光の結晶が出現し、銃の形に固定化して、銃が出現する。見かけはSFでよく見るような拳銃型のレーザーガンである。一言で言うなら、『物凄い貫通力のレーザーが一瞬にて、何体もの怪人を貫き、一発で爆死させる』光景が繰り広げられたので、当然のことながら、銃使いのクリスのお株を奪う活躍だ。クリスがガトリングガンを乱射し、ようやく与えられるダメージを一発で叩き出し、しかも複数の怪人を一発で仕留めるので、クリス形無しである。

「くそぉ、これじゃ、あたし達が逆に足を引っ張ってるみてぇじゃねーか!」

「クリスちゃん。めげてたら、そこで何かが終わっちゃうよ!」

「お前みたいに突撃馬鹿はいいよなぁ。ばーちゃん達にも突っ込むしよ」

「倒せなくても押し留めたり誘導出来るから少なくとも役立たずではないさ」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどよ、先輩達の傷は?」

「貫通は免れたが、軽度の火傷を負っている。応急処置は施したが、後で味方の野戦病院に運んで処置を受けた方がいいな」

「い、いつの間に!?」

「この姿でも光速に対応できるからね。そのくらいの事は軽いもんさ」

シンフォギアはあくまでノイズに対抗するための武装であり、本来は装者同士や他の遺失技術との正面対決は想定外である。ガテゾーンの放ったレーザーがバリアフィールドを破ったのも、『地球の兵器ではない』事が大きく関係している。つまり、異次元の勢力であるクライシス帝国の技術は、シンフォギアの防御を貫通できるという事になる。また、完全な宝具である聖衣を纏った聖闘士相手にも、白銀聖闘士までなら対抗可能だが、黄金聖闘士には最大出力のエクスドライブを以てしても対抗できない。また、ガンニグールに宿る神殺しの力も欠片が媒介であるために不完全であり、邪神エリスのゲイ・ボルグには当たり負けを喫している。(従って、調のエクスカリバーを響はガンニグールで弾けない事になる)

「でもよ、まともに戦えるのが数人だけじゃ……」

「大丈夫です。私とライダーたちでどうにかしますから」

剣技を見せる調。次の瞬間、エクスカリバーを振り下ろし、怪人『コブラ男』を一刀両断する。それだけの力を有するが故の自信だが、切歌、響、クリスの三人は戦力に数えられていない気がしてならなかった。この頃は切歌はまだ正気に戻って間もない頃であり、コスモに目覚めてはいないのもあり、三人は何とも言えない気持ちになる。休ませている翼とマリアも、自分達がお荷物になってしまった事に嘆息しつつ、調がエクスカリバーを持つことに驚く。

「エクスカリバー……アーサー王伝説の剣にして、約束された勝利の剣……。なぜそれを月詠が……?」

「綾香はそれを持っていた。それをあの子も覚醒めさせたというの?」

「うーん。もらったっていうべきかも。聖剣の霊格を。それにエクスカリバーのオリジナルはアーサー王ご本人が持ってるし」

「え!?ど、どういうことそれ!?」

「理由は後で教えるよ。それに、もう会ってると思うし」

「なッ!?」

「501のあの人だよ、マリア」

「ど、どの人!?……って、調!貴方、なんだか綾香に似てきたわよ!?」

マリアは調の物言いが黒江に似てきたのを突っ込む。ここでアルトリアの存在も示唆し、アルトリアを立てるのも忘れない。そういうところが黒江譲りの処世術の上手さである。

「さて、私も本気出して行くかなッ!」

「!?」

「燃え上がれ、私の小宇宙ぉぉぉぉッうあああああッ!!」

叫びと共に、黄金のオーラに包まれる調。それと同時に、シンフォギアのカラーリングが白主体のそれに変化し、各部も変形を始める。小宇宙の高鳴りで、気合と物理的意味で、シンフォギアのリミッターが外れるからだ。変形に伴い、背中に射手座を思わせる翼が生えるのは、調の心象の反映であり、その後の彼女の運命の暗示でもある。また、一気にコスモのパワーを黄金聖闘士のそれに引き揚げると、シンフォギアがリミッターの全解除でも持ちこたえられずに自壊するため、一気に引き上げられる限界は白銀聖闘士級である。黒江が常時展開を指示した理由の一つは、『ギアと小宇宙の両立』である。そのための修行であったのだ。

「まさか、これって……エクスドライブ!?」

「ばーちゃんが言ってたことってこの事だったのか!?でも、あれの発動には、膨大なフォニックゲインが必要なはずだろ!?」

「いや……女史が言っていた。聖闘士は私達がエクスドライブ発動に必要なエネルギーを最下級の聖闘士でも、自己で起こせると。その証明が、今ここに出現したのだ…!」

――小宇宙の高まりが鼓動をドラムに、血液の流れをストリングスに、呼吸をホーンに、こうして立っているだけで体が音楽に満たされてゆく!これこそが自発的にエクスドライブを起こす『ジェネレイト・エクスドライブ』。その『Ver.COSMO』とも言うべき現象である――

「嘘だろ!?歌も無しにエクスドライブを……」

「いや、歌なら流れているではないか、雪音。戦場に。私達のポテンシャルが下がらないのは、どうしてだと思わなかったのか」

「そ、そう言えば……。この歌、どこから?」

「全軍に向けて流されている。ある歌姫の逸話に肖って名付けられたという、この戦法。古来、唄が戦意高揚の手段に使われなかったわけではあるまい」

「歌で戦争を終わらせたっていう……伝説の……」

クリスは歌で戦争を終結させたリン・ミンメイに憧れている節を覗かせた。そして、歌が流れていることでシンフォギアの最大ポテンシャルが維持されている意味を翼が説明した。ミンメイアタック。地球連邦軍が戦意高揚を兼ねて大々的に行っている戦法である。歌を大々的に戦闘に使うのは、ミーナが眉を顰めたことだが、シンフォギア装者達はそれが当たり前であるため、特に違和感はなかった。だが、歌だけで戦争を終わらせたミンメイに憧れた装者がクリスなのも、出自を考えれば当然と言えた。

「小宇宙が覚醒すれば、身体全部、細胞一つに到るまですべてが歌うことが出来るようになるんだ!鼓動が!血潮が!弾む息が!全てが音楽に成るんだ!!」

「あ、お、おいっ!あんたら、あいつの援護頼むッ!くそ、変にばーちゃんに似やがって!」

「任せろ!」

突っ込んでいく調。それを援護する二人の仮面ライダー。クリスは最初に黒江と『会話』したため、今でも『ばーちゃん』と呼んでいる。自分から見れば、黒江は充分にそう呼んで差し支えない年齢だからだが、下手すると風鳴弦十郎の祖母と言っても問題ないくらいの年齢(2015年時点では、100に手が届く)であるので、その辺で響や未来達は黒江への読み方に窮した(見かけが若いので)。切歌は突っ込んでいく調との『距離感』を感じ、立ち尽くしていた。

(調は強くなってる。ワタシなんかよりもずっと。でも、ワタシは調と離れ離れになりたくないのデス!でも、どうすれば……)

切歌は『正気』を取り戻してからというものの、ずっと悩んでいる。自分の『弱さ』を。調は手を差し伸べてくれるが、自分にその手をつかむ資格はあるのか、と。この悩みは、切歌の課題として、小宇宙に目覚めるデザリアム戦役を待つ事になる。調は小宇宙に覚醒め、エクスカリバーも手中に収め、二人の仮面ライダーと共に戦場を駆ける。その際に流れていた歌は『約束の土地へ』という歌で、歌っているのは、ケイだった。レヴィから戻り、自分の番になると、この曲を歌った。それは自分達G/Fウィッチの厳しい『環境』と『未来への門出』の意味と、自分らに味方してくれた人々への感謝を込めてのセレクトであり、ケイなりに色々な意味を込めていた。それは調も感じ取っており、アルトリアを彷彿とさせる凛々しさを醸し出しながら、エクスカリバーを片手に、バダン/クライシスの連合怪人軍団相手に戦いを挑んでいく。







――こうした動きから、地球連邦軍はおおよそ、三つ以上の敵勢力と刃を交える事になった。スーパーロボット軍団も、マジンガーZEROの討伐に成功してからは、各戦線に散らばっていき、敵と戦っている。ドラえもんが鏡面世界に入れ替えたおかげで、どの勢力も破壊力のある兵器の投入を躊躇うことが無くなったため、地球連邦軍も陸上戦艦部隊(本来はZEROへの囮も兼ねていた)を動かし、モビルドール(この戦いで、マジンガーZEROを理由に廃棄予定)も投入され、戦果は鏡面世界の欧州全土に及んでいた。単なる滅んだ軍隊の残党勢力でありながら、連邦軍の討伐部隊、現地の連合軍と各地で正面決戦を行えるあたり、反連邦勢力の援助が凄いものであり、また、ティターンズが取り込んだリベリオン軍の兵力が当時、世界最大を誇っていたかの証明であった。そして、23世紀の各勢力、21世紀各国の思惑も入り混じった戦いは各地でヒートアップし始める。過去の英霊達、日本の誇った歴代のスーパーヒーロー達も参戦し始めたこの『ダイ・アナザー・デイ作戦』は始まったばかりである。この戦いがウィッチ世界を変えるのは間違いなかった。だが、それが何を意味するかは、誰にも分からない。誰にも。分かることは、二度目の生を得た英霊達の新たな未来、Gウィッチ達が『居場所』を得るための戦いであるだけであった――



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