外伝その195『GET WILD2』
――ダイ・アナザー・デイの頃になると、真501の軍内での立場はむしろ安定した。Gウィッチが隊の過半を占め、一騎当千の戦闘力を示したからだ。そのため、Gウィッチを一気に6人(カールスラント軍にイリヤ、クロが属しているため)輩出したカールスラントは理事国としての面目を保った。実際に立案を実行したブリタニアはトレヴァー・マロニーの愚かなる行為への懲罰でホスト権を喪失しており、現在は日本連邦/カールスラントがホスト権を握っている。そのため、黎明期に主導権を握っていたはずのブリタニアは、リーネという未熟なウィッチを送り、本土に優秀な者を留め置いたことで、キングスユニオン体制移行後に大量に粛清人事が行われ、モントゴメリーもアフリカ戦線での敗戦の責任を取らされ、中将に一時降格となった。これは日本連邦よりは穏やかな処分であり、救いがある人事であった。日本連邦がクーデター後に戦艦の懲罰的予備役編入、不満分子の辺境送りを強行し、Gウィッチに負担をかける人事を行うのに比較して現実的であった。対する日本はというと、三つの事件のトラウマもあり、粛清は情け容赦ない無慈悲なもので、ウィッチであろうと銃殺に処された者も佐官・尉官に続出した。その結果、各地へのGウィッチの教官配属予定が潰れ(ウィッチ部隊が丸ごとMATへ移籍する例も続いたため)、64Fがウィッチ部隊で最大規模かつ前線部隊と正式に位置助けられる理由になった。また、日本が『343空みたいな精鋭部隊がいない』と怒り、日本マスコミにその事が叩かれ、国会でも与党が責められたため、64Fのかつての主要メンバー全員がそのまま呼び戻されての再結成になった。従って、本当に『凍結解除』という方が正しい。当時のメンバーのほぼ全員が呼び戻され、佐官当たり前、将官もいる部隊であり、当時の陸海軍で残った精鋭の7割が属するという、他部隊が可哀想そうになるほどの陣容である。これは当初の構想である新人のボトムアップが反対されたためと、軍に新人がそもそも大量に入ることが稀になってしまった事が原因だ。カールスラント義勇兵、元自衛官、元日本軍義勇兵も含めて、隊員のほぼ全員が最低で700時間を超える飛行時間を誇る。そのため、雁渕ひかりの入隊は極天隊の存在のアピールのためであった。
――結成前――
「親父さん、本当に雁渕ちゃんを引っ張るの?」
「アニメの主役であるのと、姉からの推薦状があるからな」
芳佳は電話で源田と話していた。芳佳は当時、既にエースであり、また、菅野の相棒であることから、前史でトラブルを起こした事のある孝美より上位の立場にいる。また、杏として、ひかりを『雁渕ちゃん』と呼ぶが、姉妹で入隊するため、珍しく、姉のほうを雁渕ねーちゃんと呼んでいる。
「まー、前史で問題起こしたしね、雁渕ねーちゃん」
本来は孝美のほうが先輩だが、Gウィッチとしての立場は芳佳のほうが上なので、雁渕ねーちゃんと孝美を呼んでいる。孝美もGとしての立場と、前史で芳佳に迷惑をかけたため、目下として振る舞っている。既に撃墜数でも追い抜かれているからだ。(孝美は覚醒しない事には、絶対魔眼のリスクを克服できず、昏睡状態になる事が複数回あり、菅野がそもそも孝美と同期である世界線であるため、ブレイブウィッチーズに招聘されず、508でも扱いあぐねていた節がある)覚醒後は鷹座の聖闘士である事もあり、501に移籍したため、マイティウィッチーズとしては損失となった
「マイティウィッチーズと進藤には悪いが、姉を501へ引き抜く。松田が負傷して退いてるから、進藤は反対しておるが、聖闘士であるのなら、508には置けない」
源田は坂本の一期先輩で、零式正式配備での初陣の指揮官『新藤美枝』が孝美を501へ移籍させるのに反対意見を出していると告げる。だが、聖闘士であると判明した以上、501で管理したほうがいいと判断した源田が軍令部を動かしている。
「どうせ、マイティウィッチーズはダイ・アナザー・デイでは出番がないからな」
太平洋にいるマイティウィッチーズはエンタープライズが亡命リベリオンに合流した事、翔鶴型が改装で第一機動艦隊に管理が一元化されたことで形骸化していた。その際に離脱したリベリオンメンバーがいた事もあり、同隊は形骸化し、孝美を置いておく意義は無くなっていた。そのため、進藤少佐は泣く泣く、孝美を手放す羽目となった。自由リベリオンに508のリベリオン側メンバーが合流するほうが少なく、連合軍から部隊としては存続だが、運用停止の通達が出された。それは孝美を正式に引き抜くための方便であった。
「いいの?進藤少佐、お冠だよ、たぶん」
「マイティウィッチーズは既に死に体だ。サッチ中佐が本国についたからな。レヴィにフィジカルトーキングで納得させた」
「レヴィさんがケイさんって事、わかりますかね」
「あいつもあの時の世代だから、イメチェンですかとかいったそうだぞ」
「事変の年少世代で?」
「ちょうど穴拭と坂本の間の世代で、当時は13くらいだったから、ケイがぶっ飛んでるのは見ていたはずだ」
「ケイさん、当時からぶっ飛んでたとか?」
「当時は同期にトチ狂っただの、銃撃フェチだの、散々に言われたそうだがな」
圭子は当時の時点からレヴィとしてのヤサグレモードであるため、今回の歴史では『扶桑陸軍の狂気』と渾名される問題児扱いであった。江藤も当時は『黒江と穴拭と一緒に馬鹿する歳か!』と怒鳴ることが常態であった。江藤へは怖い目つきで『馬鹿やんには歳なんて関係ないぜ?犯罪起こす訳じゃねーんだし大目に見て欲しいぜ』と言ってのけ、江藤を挑発してみせ、居合わせた武子を怯えさせているが、江藤は本能的に危険な匂いを感じ取り、なあなあで済ませてしまっている。その際に。
「一緒に?何処が?」
カワイコぶりながらラジカルレヴィちゃん姿で江藤と武子に迫り、武子が『似合わないからやーめてー!』と懇願し、偶然、やってきた赤松に『やっとるな、小僧』と笑われたという。また、501で反発されたのが『滾るぜ。なんてったって、血と硝煙の匂いだ』の一言で、若手から『可怪しい』と反発されている。
「――ケイは真美からは尊敬されてるから、素を出せるそうだ」
「知ってるし、同じGだしねぇ、マミさん」
「真美は子爵の後継ぎだから、極秘事項にも触れられるしな。蘭丸の末裔だし、軍では意外に口利き効くぞ」
「江藤さんが未確認にしたスコアを知ってたのも?」
「諸報の管理部署に叔父がいるからだそうな」
「江藤さんのアホぶりは……。若さんに半殺しにされるってことくらい」
「あの時点で階級が上だったから、いくら教官でも、強く言えないと思ったんだろうが、積尸気冥界波当てられるのは怖かったろう」
源田が言うように、江藤は積尸気冥界波を何回も当てられている。若松が怒り狂ったからで、江藤は『黄金聖闘士怖い怖い……』と、しばらくうわ言を繰り返し、半壊の自宅で茫然自失だった。
「これで、事の重大さが分かったってのも皮肉だねぇ」
「仕方あるまい。間接的にその後の黒江たちの征く道に多大な悪影響を与えたんだ。積尸気冥界波くらいは食らってもらう」
江藤は今回からは後でGウィッチ化したり、空軍中興の祖としての功績で、後世の評価は高い人物だが、同時代人からの評価は低い部類に入る。それは空軍中興の祖でありつつ、初期の混乱の元凶でもあるからだ。黒江たちのスコアを過少申告した事が結果として、レイブンズの復帰時の混乱の元凶と見なされ、ダイ・アナザー・デイの参謀への復帰当時は散々に叩かれていた。若松の制裁もそれが理由で、渡欧前に陸奥に酒に酔った勢いで『自分だけハブにされた!』という趣旨で愚痴ったのは本音である。ウィッチのクーデターの起こった理由が『摂理に反した』レイブンズがウィッチの代表者と看做されるのが気に入らないという子供じみたものであるため、江藤はダイ・アナザー・デイからクーデターを挟んでの戦争開戦までは参謀と言いつつ、前線で戦っており、肩書が偉いだけと自嘲していた。前線派遣は事実上の懲罰人事で、日本から『軍のエリート連中は兵隊の苦労を知らない』との批判を鎮めるため、ウィッチ出身参謀が必要とされたからだ。しかし、『兵隊の労苦を知るべき』という批判を躱すために、将官に至るまで前線で戦うのは、自衛隊にとって奇異な光景である。そのため、ダイ・アナザー・デイでの最前線は自衛隊や地球連邦軍の援助を受けないと、粗末な駐屯地であるのが普通であった(リベリオンの兵站能力が失われ、扶桑軍は前線に立派な司令部を立てられる余裕が殆ど無い)。501は潤沢な補給と、自給自足体制が確立しているために、最前線でも快適な環境であるが、扶桑陸軍の末端部隊は、まだ補給が行き届いていた史実戦争中期の日本軍とそれほど変わりない環境であった。落差が大きいのだ。M動乱で装備が新式になり、陸自に見劣りしない主力と、九九式小銃と九九式軽機、九〇式野砲が主力の末端(史実で言えば、これで有力と見なされた)部隊とで。
「末端まで四式自動小銃、行き渡らせられないの?」
「生産ラインの改変の限界で、主力部隊に行き届けるのが限界だそうだ。おまけに自衛隊が89式を大量に供与してきたから、輜重課はパニックだ」
当時、扶桑陸軍参謀本部は色々な組織再編が急に決まる、自衛隊が単価低下を狙い、火器の大量供与をしてきて、パニックになっていた。源田が同情するレベルの混乱である。この時にカールスラントもパニックにさせたのが、パンツァーファウスト3が供与品に含まれており、側面に撃ち込めば『ティーガーもパンターも平等にオーブン』という威力が知らされたからだ。当時、カールスラントはケーニッヒティーガーやパンターの後期型にラインを改変中であったが、パンツァーファウスト3は第二次大戦レベルの重戦車なら、みんなオーブンにできると誇大宣伝がマスコミに行われ、カールスラントを混乱させた。特に、日本マスコミへの説明でティーガーを標的に試射が行われ、その威力を示した事がパニックを誘発させた。そのため、前線に切望されていたはずの兵器が届けられない混乱が起き、前線の抗議もあり、現存生産分が送られた。ケーニッヒティーガーとパンターはその生産分だ。また、現地企業の雇用を守るためもあり、ケーニッヒティーガーやパンターは戦後世代で行われる追加対策が施され、足回りが改良された状態で場つなぎ的位置づけで生産される。元々、当時としては高性能であったからで、それがダイ・アナザー・デイでカールスラントの味わった大混乱である。扶桑とカールスラントは同位国が枢軸国なため、こうした混乱に巻き込まれたのである。21世紀日本の陸戦に詳しい軍事評論家は『第二次大戦に現代兵器を持ち込んでどうしろというのか』と呆れたという。実際、パンターもケーニッヒティーガーも45年時点では最高レベルであり、M46の姿があったからと、ドイツにレオパルト2を送るように煽るのはオーバーであるとする声があった。また、扶桑軍に『自衛隊の戦車以外は生産するな』とするのも傲慢である。この時に前線の要望と、実際に送られる兵器が違いすぎてパニックが起きる事が常態化しており、零式の補充を頼んだら烈風が、メッサーシュミットの補充を頼んだらF-86が送られたなどの混乱が航空部隊で起こっていた。これは零式の生産ラインが作戦中に縮小され、多くが烈風に改変されていたり、カールスラントはメッサーシュミットMe262がより高性能のF-86に押し込められつつあった事が関係している。その事もあり、前線から引き上げなくとも、あらゆる機種に対応できるGウィッチ(乗り換えなどが楽に行える)は重宝された。そのため、芳佳も紫電改のオーバーホール中の予備機に烈風ストライカー(採用中止されたものだが、一部エースの要請で200機前後は維持された)を受領している。前史で坂本が問題を起こしたように、多くの中堅・古参に山西航空機への偏見が強かったからだ。
「親父さん、いくらあたしが転生してるからって、烈風送られてもなぁ。吊るしじゃあたしの魔力に対応できないって。ダンナにカスタム頼んだけど、いいね?」
「烈風は採用中止されとるから、個人裁量ということで認められている。若本もカスタムしてるはずだし」
「でもさ、黒江さんが言ってたけど、ロールが遅くない、烈風」
「あくまで零式の機能拡大だし、原案はお前の親父さんが40年に書いた図面で、それを曽根技師が作っただけだ。曽根技師を慰めてやれ」
「1940年ん?ずいぶん古くない?」
「親父さんが本当は42年採用を見込んでいたから、それは仕方あるまい」
宮藤博士の死去で計画にズレが生じた烈風は充てがわれた誉エンジンの製造精度が最悪で、鋳造段階で型崩れを起こした不良品であった不幸や、マ43前提の機体に載せたマッチング不良により、一度は不採用になり、マ43の生産が軌道に乗って、再テストで当時の紫電改より高性能であったことで採用にこぎつけたが、今度は日本の横槍で紫電改にリソース集中の名目で調達取り消しと、不幸な生涯である。最終的な理由は『F8Fに対応できないだろ』との横槍だったが、本来はF6Fのカウンターパートなので、そこも烈風の不幸であった。そのため、紫電改をメーカー的に嫌う古参の声で、どうにか零式の代替機扱いで使用された(因みに実機のほうは戦闘爆撃機として有用なため、対照的に長く使用された)という。
「それともう一つ、事づけ。ペリーヌさんがさ、モードレッド卿と人格が共存しだしたけど、黒江さんのライトニング系にどっちも嫉妬してた」
「桁が違うからな。ペリーヌ中尉のトネールは所詮、扉が焼き切れる程度のエネルギーだが、黒江の技は地形を変えるついでに灼くからな。前にデューク東郷氏をその気になれば倒せると言ったのも、それだ、宮藤」
「光速で星も砕く一億のパンチだもんなー、しかも神に届くレベルの」
「いつ見せた?」
「えーと、今回はエア見せた後かな。ライトニングフレイムでローマ近くの地形変えたし。ペリーヌさん、目が飛び出てた」
「そうだろうな。あの放電と焔の総エネルギー量はガンバスターの縮退炉のパワーも凌駕する。あれで無傷のマジンカイザーはどれだけ頑丈だ」
「マジンカイザー、自己進化するし〜。たしか、ペタワット超えてるけど、マジンカイザーのニューZαは温まるだけだよ」
「エクサワット出せるんじゃないか、あいつ」
「たしかギガワットで超合金Zは融解するはずだから、αは人智超えてるよ」
マジンカイザーの装甲はZEROが因果律を弄ってようやく破壊の事象を起こせたが、それはゲッターの介入がない純粋なマジンガーとしてであり、ゲッターの介在がある場合のマジンカイザーは無敵である。黒江が試しにライトニングフレイムを当ててもピカピカのままで、黒江が『マジかよ!?』と腰を抜かすほどだ。そのため、真のマジンカイザーと言える、胸の装飾なしバージョンは宇宙を穿つナインセンシズすら寄せ付けない強度を持つと言える。
「しかし、モードレッド卿も、というのはどういう事だ?」
「ああ、必殺技の我が麗しき父への叛逆をねじ伏せられて、泣いちゃったんだよ」
「なるほど」
芳佳曰く、モードレッドはいいところを見せられない上、必殺技が黒江に容易くねじ伏せられて泣き出したとのことで、源田は頭に閑古鳥が鳴いた。それは『我が麗しき父への叛逆』を自信持って撃ったら、黒江が鼻歌交じりに『厳霊乃焔』でねじ伏せた模擬戦の光景であり、モードレッドは拗ねている。アルトリアが慰めたが、子供のように拗ねるので、アルトリアも手を焼いている。また、黒江が我が麗しき父への叛逆をねじ伏せ、直後に『エクスカリバー・サンダーボルト』を放ち、モードレッドを愕然とさせたのも関係しており、黒江も「やりすぎたかな…」とアルトリアにこぼし、アルトリアも『エクスカリバー・サンダーボルトぶっこむことないでしょ』と抗議している。因みに、モードレッド当人は震え声で『雷の力を持つ約束された勝利の剣なんてアリかよぉ…』と泣きそうな顔になり、この一言を震えながら言ったという。
『なんだよぉぉぉ、それ!!ずりぃぞ、ずりぃぞ!稲妻付きとか!!しかも全力じゃねーだろ?!オレなんかにそんな価値もねーってか?クソォォォォォッ!!』
モードレッドは黒江が加減している事に気がついており、こういう時がプライドが一番傷つくのか、思いっきり地団駄を踏んでいた。
「モードレッド卿の燦然と輝く王剣は武器庫から奪ったに過ぎん代物。それを憎悪や執着で増幅した邪剣など、アテナから賜った聖剣の敵ではないさ」
源田のいう通り、クラレントは本来のスペックを発揮していない上、モードレッドの力はアルトリアと剣技は互角だが、そもそもの威力で約束された勝利の剣を下回る。黒江は黄金聖闘士であり、約束された勝利の剣の威力を上げる事は容易にできる。そこも並の英霊をねじ伏せる黄金聖闘士の威力である。アルトリアは今回、良い親であろうとしているためと、自分が王でないことで心の余裕が生まれ、『あの状況で黒江さんの本気度合いまで気が付いてるとは流石ですね、私の子はちゃんと実力が有ることは誇らしいですよ、モートレッド』と慰め、モードレッドはあっさり立ち直った。そして、芳佳達にとっては厄介な宣戦布告が行われた。それに触れる。
「それと、つい数時間前、ウザーラが現れたよ」
「ああ、未来世界で海底国『アトランティス連邦』の遺産と言われる、あの聖竜」
「百鬼帝国も厄介な拾いものしたもんだ。あれは真ゲッターロボでも倒せないよ」
ウザーラ。ドラえもん達がかつて対峙した『ポセイドン』を生み出したアトランティス連邦の真なる最強の遺産にして、守護竜。アトランティス連邦は放射能汚染で滅亡したとされるが、放射能汚染では種族そのものを滅亡に追い込んだとは言えない。ポセイドンは自動報復措置であり、アトランティスの中では比較的簡単な作りの機械である。アトランティスの科学の粋を結集して作り出されたのが聖竜ウザーラだ。それを発掘した百鬼帝国が復元してみせた。姿が別世界のゲッター真ドラゴンに似ているという偶然もあるが、強大なパワーを誇る。
「あれは前史で何に倒された?」
「真ドラゴン。あれが復活しないと無理。ストナーサンシャインのエネルギーを吸収できるから、真シャインスパークじゃないと」
何気に恐ろしい会話である。ストナーサンシャインが効かない相手を更に強大な真シャインスパークで倒すという論法もスーパーロボットらしい。ただし、多くのメディアでお馴染みの真シャインスパークは真ゲッターロボの技ではなく、真ゲッタードラゴンの技であることが明言される。
「日本の連中が知ったら、足付いてるのか聞いてくるだろうな」
「ウザーラのカウンターパートだし、ついてるよ」
真ゲッターロボGというのが正式名称だが、その名よりも『真ゲッタードラゴン』というほうが通じる真ドラゴン。全長55m、体重250トンと原型より大型化し、機体外観が真ゲッターロボのデザインラインで再構築されている。ただし、復活はデザリアム侵攻時であるため、ダイ・アナザー・デイ時点では繭である。
「まっ、今は真ゲッターロボとマジンカイザーで充分さ。真ドラゴンなんて、全身モーフィング変形だから、物理法則ガン無視だし」
「頼むぞ、日本を納得させる戦果が必要だ」
「戦果か、戦禍に巻き込まない様には気を付けないとね。未来の彼等の作ったスーパーロボットを駆使して、ってのも皮肉だよ、親父さん」
芳佳の声色は角谷杏のものになっており、宮藤芳佳としての声色とは一線を画する大人びた声になっている。始めて披露した際には、バルクホルンがパニックになった事があり、バルクホルンがいる時は控えている。こうした事務作業が多くなったのも、角谷杏としての側面が出ている証である。対照的に、ミーナはこれまでの周りの苦労はどこへやらの勢いで陸戦でブイブイいわせている。元が空中勤務者であるのに、陸戦を好むのもそうはいない。
「あたしはアニメと違って、父さんや戦う事は割り切ってる。だから、別人として見られるけど、ロスマン先生は可哀想だと思うよ」
「ああ、少尉は色々と事情が違うし、雁渕の妹と面識がないからな」
アニメとは平行時空の関係であるため、芳佳は別人と言っていいが、ロスマンは基本が同様であるため、ひかりに冷淡に接した事が叩かれている。そのため、療養後は敢えて、矢島風子としてのスケバン口調を維持している節があるロスマン。この世界では父親との確執があるからか、アニメよりひかりのようなウィッチに同情的である。また、ひかりに冷淡に接したアニメの自分を『敢えて言うなら、前線にいるべきじゃないと判断したんじゃろ?』と割り切った。また、昇進辞退の回数が限界であったため、特務士官に任ぜられたという現実的な事情も彼女にはある。現実では、軍隊ではいつか昇進しなければならない。だが、ロスマンは『退役するおまけでいい』と考えていたため、士官学校入校を辞退していたが、退役軍人の父親に罵られ、殴打されたことで精神バランスが崩れかかり、同情した智子が『大尉』の口調でロスマン父を恫喝して救っている。ロスマンは智子が助けに入った際、泣きながら『私は自分の持つものを後輩に教えたかっただけなのに…』と茫然自失状態であり、智子は大尉の口調を公の場かつ、素の容姿で初使用し、『中佐、貴官が娘を壊すほど愚かではないと信じたいが?』とAK-47をロスマン父へ突きつけている。また、ロスマン当人にも『後進育成に階級が邪魔と思ってるのか?!偉くなればより大勢に教えを垂れる機会を得るのだぞ!』と説教し、その女傑ぶりにロスマンは心酔した。智子は軍用コートをある種のスイッチとし、コートを纏った状態であれば、冷徹な女性軍人を演じられる。そのため、遊撃隊の同志たちを統率できている。それを発見したのは圭子で、事変当時に江藤が戦果の申告でうるさいので、智子にコートと軍帽を着用させて口で圧倒させて、江藤を黙らせた事もある。智子自身も素の性格ではヘタレなので、コートか軍帽を使って態度を変えている事が第一次現役時代の封印解除後は多かった。そのため、第二次現役時代では、501をまとめるために使用しだした事になる。また、いつものマフラー巻きだと仮面ライダーの影響によるものか、『人の未来がお前達の手の中にあるのなら、あたしが、あたしが奪い返す!!』、『あたしにはもう夢はない。けれど、誰かの夢を守る事はできる!』と言った台詞を自然と言える様になる。智子はGウィッチとして、『コスチュームに合わせたキャラを演じられる』能力を得たと言えた。
「まー、智子さんは小説だけだし、黒江さんは漫画でしか出てないから、今の口調のほうが人気出てるよ。実際のあの人、見かけがクールなのに、アニメ声だしね」
黒江は素の容姿はクールビューティーと形容される大人びたものだが、声色については精神状態の反映で、転生前の幼少期と同じ、調と同一の声色で固定された。成り代わりの際、容姿が調になってもすぐには気づかなかったのは、声色に変化がなかったからだ。(背丈が変化した程度の変化であった事も、切歌の暴走を招いた原因ではある)芳佳はそれを聞いた時、黒江に同情しているが、調のシュルシャガナ姿で堂々とスターバッ○スでカフェラテを飲み、後で切歌に泣かれたというエピソードには苦笑いしている。黒江は成り代わり時に好き勝手したので、それが調当人に居場所は元の世界にはないと痛感させる原因であるため、切歌は黒江の行為自体はすべてを許してはいない。調が師と仰いているので、そのフラストレーションを表に出していないだけだ。
「黒江は見かけがクールだが、声は可愛いからな。その気になればテスタロッサ執務官の声色出せるとかいうから」
黒江は時代が40年ほど遅ければ、声優として食えていけるほど声色を素で変えられる特技がある。G化でそれは完全なものになったため、成り代わりの際には風鳴翼の見ている前で、フェイトの声色で『禁断のレジスタンス』を歌い、驚愕させたこともあるし、IS学園では、一夏すらわからないほど箒の声色をコピーしていた。つまり、その気になれば声優として食っていける特技を持つのだ。素でもアニメ声なのも効いており、調は最も楽な声色である(元の声を使えばいいので)。
「黒江さん、生まれる時代があと40年遅けりゃ、声優で食っていけたよ。今の時代じゃ、白蛇伝の遥か以前だよ」
日本アニメーションが花開くのは、50年代終わりに白蛇伝が公開されてからであり、この40年代はウォルト・ディ○ニー全盛期のころだ。扶桑アニメーションの勃興もその頃になるが、黒江は21世紀で某すきっ歯軍事評論家のつてでアニメ出演の機会を得、21世紀のオタクも興奮する声の演技を見せたという。
「うむ。軍でアニメ作りたいが、予算が降りんからな。ケイの著書を映画化する話を、黒江の兄がいる会社に持ちかけてくれ」
「OK〜。ケイさんに言うよ」
源田はこうして、黒江の特技を使い、新規志願ウィッチの数をなんとか戻そうと画策する。当時、ジュネーブ条約追加条項を批准した影響で、ウィッチ本来の志願適齢期の少女を雇用できなくなり、反軍思想の流入でMATに行くほうが多くなり、軍隊は新陳代謝の停滞を危惧していた。それ故、軍学校入学者をなんでもいいから増やすことに命をかけていた。自己批判につながる圭子の著書であろうと縋って。
「あ、いい手思いついた。この作戦をアニメにしたら?せっかくマジンガーとゲッター、ガンダムいるんだし」
「早速、統幕会議にかける!」
「あ、親父さん。アイデア料よっろしく〜」
「今月の給金に上乗せしてやる」
源田は張り切って電話を切った。芳佳は狸ぶりを発揮。後で留学がポシャる場合に備え、ガーデルマンを呼び寄せる費用をこの時のアイデア料で賄うことになる。(留学は今回、山口多聞肝いりだったため、独断で天城を呼び戻した参謀はアリューシャンに左遷され、島流し組のウィッチ共々、猛烈な艦砲射撃で戦死したという。海軍軍医学校に筆記試験だけで入れたのは、その償いの意図があってのことで、芳佳の空軍移籍後に山口多聞は参謀達に『お前らが天城を呼び戻さけりゃ、宮藤を軍医学校に筆記試験だけで入れることは無かっただろう?』と怒り心頭で返したという)だが、運良くガーデルマンは東京オリンピックのドクターとして、どの道来日する予定があり、それを早めにするいい機会とし、芳佳の要請に応えたのだ。そのため、ガーデルマンの来日はオリンピック目的と、芳佳の勉強を見る目的が半々であり、宮藤家に滞在したのもその兼ね合いだった。パラリンピックの特訓でルーデルも来日したため、宮藤家はレイブンズ、カールスラントエースのたまり場と化し、ミーナも覚醒後はイオナと連絡が取れるのを言い訳に来日してくるので、宮藤家は割と大変なのだった。(芳佳は理由を聞き、吹き出した。もっとも、これからいきなり美遊がやってきたり、イリヤが越して来たりと、宮藤家周辺は騒動の舞台となるのだった。)
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