外伝その197『GET WILD3』


――クロ達が些か無茶な指令を出されたように、自由リベリオンは戦艦が不足しており、アイオワ級二隻、モンタナ級一隻の陣容は貧弱であり、ローテーションも組めない有様であるため、ドラえもんと少年のび太が南洋島周辺のマグマを刺激し、関東地方ほどの大きさの新島を作り、自由リベリオンに土地と資源を提供したが、当然ながら艦艇そのものはコピーで増やせるが、人員はどうにもならないため、鹵獲を提言してきたのである。海戦そのものはブリタニア最新鋭戦艦『クイーンエリザベスU』級が満を持して合流し、ブリタニア残存艦隊の再編が終わり、第二ラウンドを待ち構える状況であった。扶桑は大和型戦艦ファミリーの整備を終え、結果的にダイ・アナザー・デイで最も奮戦した海軍の名誉を得た。地球連邦軍が派遣している艦艇が宇宙軍極東管区所属の艦艇である事もあり、日英同盟対米独同盟の体裁が強かった――



――ラー・カイラム――

「ご苦労さま。貴方達にはそのまま戦線に参加してもらうわ」

東二号作戦が中止されても、自主的にやってきた古参兵(レイブンズの後輩世代だが)達に指令を出す武子。当時は既に64Fの活動が非公式に始められており、古参兵らは編入予定の部隊が立ち消えになった事もあり、そのまま64Fに配属され、事変当時の立ち位置に戻った。そのため、古参についてきた新人を除いてはみんな最低でも大尉の階級にある。合流した者は最終的に13人。新人一人を除いては、皆が元々、レイブンズや武子に仕えていた経験を持つ。武子はついてきた新人の個人情報を見てみる。

「1944年度志願。訓練校繰り上げ卒業、訓練成績は中の中。家柄は元士族で、里見家重臣の出……。未来世界にいる正木俊介元・警視総監の縁筋の同位体かの知れない、か」

正木俊介。80年代終わりから2000年代前期にかけて、日本警察に君臨した俊英で、特警ウインスペクターから特捜エクシードラフトを設立し、その維持を行っていた人物である。元々、機動刑事ジバンが行方を眩ませた後、凶悪犯罪に対抗するために、頓挫したジバンのサポートドロイド制作計画を転用して、ウインスペクターを作り上げた経緯がある。ウインスペクターにジバンと共通の意匠があるのは、元々の計画がジバン計画の関連プロジェクトだった名残りだ。ソルブレインからは完全新規設計のパワードスーツだが、ウインスペクターの頃はサポートドロイドとしての外装を流用し、一体だけパワードスーツの外装にした。『ファイヤー』がそれに当たる。彼はエクシードラフトの設立にも関わったが、それ以後は現場を離れ、警察を退官後は銀河連邦警察にスカウトされている。その正木俊介の縁筋は未来世界には、のび太の家の近所に住んでいる(2000年当時)ので、その祖先の同位体であろう。どうやら彼の家系は何かかしら、悪と戦う宿命があるのだろう。

「やれやれ。芳佳の後輩世代を使う事になるとは。貴方達、面倒をきっちり見なさい?」

「分かってますよ、分隊長……今は隊長ですね」

「まぁ、江藤隊長が参謀になったから、その代替で充てがわれただけだけどね。今は個人スコアもそこそこにしてあるわ。体面上、ね」

「相変わらずですね」

「個人スコアは全てじゃないって言えない時代だもの。江藤隊長を見たとおり、ね。だから、ケイの忠告で60程度にまでは引き上げておいたわ」

「今は50機落としてないと、他国に舐められますからね」

「やれやれ。カールスラントの文化が広まったおかげで、江藤隊長は肩身が狭い想いをしてる。私はエースの必要性は認めるけど、極端に持ち上げるのはやめてほしいだけなんだけどね」

武子は元々、部隊戦果を重視する江藤の後継を担っていたので、本質としては、ジャーナリズムの宣伝嫌いである。しかしながら、国民の戦意高揚のためのエースを祭り上げる風潮そのものは江藤と違って理解があり、他国との均衡の意味からも多量撃墜者の表彰は行うべきと考えている。Gウィッチ化した現在では、その関連計画に深く関わっており、大佐になっている。元々は宣伝嫌いであるが、黒江と智子が宣伝嫌いになってしまったために、上層部の指令もあり、圭子と共にレイブンズの宣伝部長でもある。

「だから、江藤隊長を時代が変わったことがわからなかったと責めるのは可哀想よ。綾香にも、智子にもそれは言ったわ。あの子達は持ち上げられてるから、苦い顔したけど」

「分隊長達は苦難を味わいましたからね。責めるべきは若い連中だと思いますよ、昔の戦闘詳報を見ない、ね」

武子は若松などの行った江藤を責める行為は好ましく思っていないが、黒江と智子が味わった苦難そのものには理解を示している。そのため、黒江と智子の現役時の功績を顧みようとしなかった後の世代の後輩達こそ責めるべきだという古参ウィッチの指摘に同意する。実際、黒江と智子がかつての英雄『レイブンズ』のメンバーであった事が分かった途端に、自己保身を図ろうとする者がウィッチ、非ウィッチを問わず出現しまくっている。武子はその状況を苦々しく見ている。レイブンズが天皇陛下のお気に入りであった事は1938年前後の新聞や雑誌を漁れば、いくらでも出てくるからだ。また、当時史上初の階級以上の金鵄勲章叙勲をされているため、一般人のほうが覚えている。(芳佳の従姉妹のみっちゃんは芳佳がレイブンズの部下になった事に大喜びであり、黒江たちも悪い気はしないので、みっちゃんを可愛がっている)つまり、部外者のほうが誰であるかを覚えていて、黒江へのいじめが一般に発覚した際に大事になったのも、扶桑ではそれが理由である。(黒江をいじめていた元ウィッチたちの父親がそれを知り、娘を国家の恥とし、勘当を言い渡す、座敷牢で飼い殺しなどの社会的混乱が生じた)黒江がダイ・アナザー・デイ中に勲功華族となっていたこともあり、ウィッチ社会は大きく揺らいだ。そのことへの反発はダイ・アナザー・デイ中には暴発寸前であり、小沢治三郎などは連合艦隊司令長官の辞表を予め用意しておくほど、規定事項化していた。既に黒江達はプロパガンダに再び使われだしていたが、現役時代から年月が経過していたため、反発が部内から生じていた。レイブンズの神通力を知る世代は既に、殆ど現役を退いており、撃墜スコア200超えという訂正発表も、他国向けのハッタリと見るのが、暴発寸前のウィッチ閥の見方だった。当時、カールスラントの撃墜王たちの撃墜スコアが200超えが複数おり、(後にドイツ領邦連邦化した後、粉飾疑惑と批判でマイナス補正が入り、ハルトマン達の認定スコアは50前後引かれたが、勲章そのものは取り消しとはならなかった)、1938年前後の時代にそれだけのスコアは夢物語と見たからだ。この先入観に凝り固まった認識こそが下原〜菅野と同世代のウィッチ達のおおよそ半数近くが後に、『上と下に睨まれた愚かな世代』と謗られる原因となる。彼女らは本来、45年に16から18歳と、軍ウィッチの屋台骨となるべき年代に成長していたのにも関わらず、G化して復帰した前世代のウィッチに反発し、軍ウィッチ組織を半ば死に体に追い込む。その事実が彼女らの世代の評価を落としてしまった。下原や菅野などは大戦後に高級将校になっていくが、それでも世代全体の評価が低めなのは、菅野や下原、孝美の燦然と輝く功績でも相殺できないほど、太平洋戦争に与えた混乱の影響が大きかった表れであった。

「まったく、最近の子は戦闘詳報を見ないの?前歴チェックもしないのかしら?そんなだからパニクるのよ。事の重大さがわかったあと」

「えーと、分隊長達の三期か四期下になると、そういう事はしなくなったんですよ。統合戦闘航空団が直接スカウトすることも増えましたから」

武子達の時代が終わり、坂本達がウィッチ部隊の幹部になる頃には、統合戦闘航空団が直接スカウトすることも多くなっていたため、国内の人事管理はかなりおざなりにされていた。ラルはその隙を突き、下原を芳佳を軍に入れるためのフラグとして、坂本との裏取引で502に引っ張り、その代わりが芳佳になる。ラルは芳佳を確実に軍へ招くには、坂本と裏取引して、下原を引っ張る必要がある事を知っていたのだ。こうした裏取引でフラグを無理矢理成立させ、坂本は芳佳を軍に入れたのだ。(今回は自分もスカウトしに行った。前史で下原を盗った事をラルは坂本に詫び、今回は引っ張らないことも示唆したが、ケイが『芳佳を軍に引きずり込むには、定子をお前が引っ張る必要がある』と説いた。流石に今回は罪悪感があったが、芳佳を入れるための必要イベントなので、諦めがついたとの事。坂本は『ハハハ、ついでに他の新人の仕込みもしてくるさ。雁渕の妹もチェックしてくる』とし、芳佳を竹井と共にスカウトしたその日に佐世保に行き、覚醒したての孝美と接触していた)

「坂本が苦労してたわけがやっと分かったわ……。西沢も引き込むわよ」

「若本は?」

「辞退されたわ。海軍航空に誰かいないといけねぇでしょ?とかで」

若本は武子との再会時にオファーをかけられたが、『海軍航空に誰かいないといけねぇでしょ』で断っている。彼女はG化しても64に属さなかった珍しい例だ。また、前史の記憶があるため、撃墜スコアを増やすことに執着を見せなくなったのもその理由だった。そのため、海軍残留ウィッチは事実上、若本と坂本が一番の大物となる。(ただし、現役者は若本のみになる。功労賞や武功章の創設の際に混乱が生じた理由は坂本の引退があったからだ)

「坂本はこの作戦が終わったら現役引退だから、海軍は苦労するわね」

「あー、海軍が慌てて作ろうとしてる武功章の…」

「綾香が戻った時に、対抗で検討されたらしいけど、没ってね。これが二度目か三度目のはず」

海軍は日本連邦化で急速に独自文化の多くが切り捨てられていく中、ウィッチ隊が最後の拠り所にしていたのが『個人スコアを誇らない』文化であった。その拠り所としたのがリバウ時代は部隊戦果を尊ぶ言動だった坂本であった。坂本は今回は黒江の味方である事を行動原理にしている上、501引退で歴史上必要とされる役目の演技をする必要も無くなったため、『馬鹿者共が!勳功報償に目でも眩んだか!意見上申もせずに力で何かしようと言うなら御上の意思によって伐られるはヤツらだ!!』とクーデター事件時にインタビューにこう答えたことで、クーデターの頓挫を決定づけた。坂本は前史から『部隊戦果を尊ぶが、個人スコアも蔑ろにはしない事』を学び、未覚醒であった若き日の武子を諭している。

「そう言えば、あの時……」

「あの頃は若かったから…」

誤魔化す武子だが、実際、未覚醒だった当時、大暴れする黒江達の行動を咎めた事がある。今は若気の至りと誤魔化しているように、かなり恥ずかしい思い出らしい。覚醒後は笑い話だが、当時の時点では真面目に話していたので、遊ばれていたと悔しい想いも残っている。覚醒後、それに気がついた後、無性に腹が立ち、智子が買ってきたたこ焼きにハバネロソースを仕込んだりする、意外にせせこましい仕返しをしており、それを圭子に呆れられている。もちろん、智子は火を噴く勢いで『ぎゃあああああ!!』と絶叫して悶絶し、とばっちりを受けた黒江も『バーロー!殺す気か!!』と猛抗議している。智子は本来、耐性があるものの、不意打ちであったために悶絶。巻き込まれ、甘党だった黒江が一番のたうち回っており、黒田が持ってきた水を何杯も飲んでいる。圭子はその場に居合わせたが、アフリカでの経験で辛いものは大丈夫であり、結果的に黒江が一番悲惨であった。武子は黒江が一番ものすごくのたうち回った事が予想外だったようで、一応の謝罪をしている。運悪く、ソースを一番入れたたこ焼きを黒江が食ってしまったのだ。甘党の黒江には拷問に近かったため、『辛くて目の前が真っ暗になった』と、後でぼやいている。これは奇しくも、長門と同じ反応であったので、山口多聞と源田の爆笑を誘っている。


「あ、話は変わるけれど、海援隊から調停の依頼が来たわ。海保が問題起こしたそうよ。まったく、あそこは派閥抗争にしか興味ないのかしら」

「ああ。あそこ、商船学校の連中が作ったからか、海軍目の敵にしてるっていう…」

「ええ。おかげで海援隊を第二海軍にするそうよ、上は」

「なんで空軍のうちらが海軍と海保の喧嘩の調停するんス?」

「それがね、幹部連中が口論から殴り合いになったらしいのよ」

「で、どうするんすか」

「で、調停ってことで、今度の金曜日に日本に行く事に…ああ、頭痛いわ」

「そもそも、なんで依頼が空軍(この時は予定だが…)に?」

「それが、向こうの会議で海保がヒス起こして、司令が止めたのよ、殴り合いを」

武子は源田が海軍と海保の殴り合いを止め、『調停しろってんなら、俺は元々海軍出だから肩を持ったとか言われても困るから元陸軍で海軍に理解の有るヤツ連れてくるから、それまでに言いたいこと纏めとけ』と言い、レイブンズに派遣命令が下ったが、三人は当然ながら作戦行動で離れられないため、自分が日本に行くことになった事を愚痴る。急な話だったらしい。

「分隊長、宇宙戦艦の艦長してるし、うってつけじゃないですか」

「好きで引き受けたんじゃないけどね。まぁ、今となっては慣れたわ。向こうで何か買い物してから帰るわ…。前、綾香に新宿連れて行かれて『お上りさんまるだしだぞ』って大笑いされたし…」

「向こうの新宿、浄水場じゃなくて、副都心でしたね」

扶桑では浄水場がある新宿だが、浄水場閉鎖から数十年で繁華街が出来上がっており、前史でそれに腰を抜かし、黒江に大笑いされた事を思い出す。今回はその心配はないが、悔しいことには変わりはない。

「未来じゃコンタックスのブランド死に絶えてるし……一番堪えたわ。圭子のライカは生きてるのにぃ!」

武子が気に入っているカメラブランド『コンタックス』は未来ではブランド自体が終焉しており、圭子からそれを告げられ、目の前が真っ暗になったほど落ち込んだこともある。最もライカも似たような状況だが、ブランドは生きているため、青年のび太が買ってくれる事がある。

「あ、本音が出た」

「デジカメとかスマホとか……んもー!写真ってのはねー!」

武子は趣味がカメラなので、智子や黒江が21世紀で気軽に写真を取るのにモヤモヤ感があるらしい。黒江は『…といっても、人間の眼なんていい加減だから、写真の写り具合なんて高品質なフィルムから焼いた写真と600dpiのプリンタ出力もパット見の差なんか理解して無いんだから趣味として突き詰めてるもの同士で語り合ってくれ…』と武子に諦め半分で語っており、そこが武子のモヤモヤ感の理由だったりする。

「でも、分隊長。21世紀の地理分かります?」

「再開発進んでる以外は分かるわよ。場所は変わってないんだし…」

「気をつけてくださいよ、向こうのラッシュ時の電車…」

「一回目にあって、野比のおとうさんにコツを教わったわ」

「そりゃ良かった」

なんとも切実かつ、しょうもない会話だが、野比家に行くのは未来の生活をマスターする意味もあるGウィッチ達。生活基盤が2000年代にある黒江達は普通に適応できるが、武子については2000年代に生活基盤がないため、そこが悩みどころである。言うなれば、『たまに遊びに来る田舎のお姉さん』ポジションなので、おのぼりさんまるだしのところを見せてしまい、黒江に爆笑されるのがお約束になっている。

「綾香の奴ぅ〜…」

武子は黒江を見返そうと意外に必死になっており、それが後輩たちからの人気の要因の一つである。武子は生活基盤を元の時代に置いたままにしては頑張っているほうだ。黒江達は21世紀に生活基盤を移しているため、こうして、元の時代にいることが逆に珍しい。

「でも、宇宙戦艦の艦長できてるんですから、分隊長は凄いですよ」

「そ、そうかしら」

武子も未来兵器に対応できているので、軍内部での評価そのものはうなぎのぼりである。

「乗組員が経験者なら艦長はトーシロでも決断力さえ有ればなんとかなるもんさ、大型艦ならな」

「あら、號。来てたの」

「ブライト艦長からの言付けを届けに来たんだよ」

一文字號が姿を見せた。闇プロレスや陸上で鍛えられた肉体や、竜馬に次ぐ高いゲッターへの親和性から、竜馬の二代目と言われている青年で、二代目ゲッターチームの筆頭格である。

「ほれ、言付けの手紙」

「ありがとう。でも、真ゲッターよく乗り込なせたわね」

「んなもん、気合だぜ、き・あ・い」

號は気合で、竜馬でなければ制御が無理とされてきた真ゲッター1の制御に成功したため、神隼人も一目置いている。

「…脚、震えてるわよ?」

「なに言ってやがる!帰りもアレに乗ることを考えたらワクワクして武者震いが止まらねぇんだよ!」

「はいはい」

「お前なー!」

號は17歳。ゲッター1に始めて乗り込んだ際の竜馬より一歳若い年齢でゲッターと関わり合いを持った。號は人には弱みを見せないタイプであるが、年相応の若さを持つので、そこが茶目っ気でもある。信じられない

「手紙は受け取ったわ。せっかくだから休んでいく?」

「そうするぜ。ここ三時間はコックピットに缶詰めだしよ」



號はそう言って食堂へ向かっていった。

「翔、凱、しばらく休憩すっぞー」

「解った、凱、此処の基地なら任せても大丈夫だ、休むぞ」

「先に行っててくれ、外見目査と申し送りだけしていくよ!」

と、他の二人も武子に敬礼して、その場を去る。


「分隊長、あの人は?」

「一文字號。未来世界のスーパーロボット『真ゲッターロボ』のパイロットの一人よ。ああ見えて、まだ17歳よ」

「ちょうど私達くらいっすね」

「…バラン星にあるワープゲートの調査に行ってたのね。デザリアムがそこまで進出してきているのね…。貴方達、上が想定してる『D状況』は近いわ。今のうちに未来世界に家を買うか下宿先を探すように」

「ああ、未来世界に新しい宇宙人が来るとかいう?分かりました。今のうちに不動産屋に駆け込んでおきます」

デザリアムの侵略は地球連邦軍自体は予見していたが、政府が政権の交代期(ユング・フロイトが大統領選に立候補した段階であった)を迎えていたためと、デザリアムが重核子爆弾などをワープさせての奇襲に打って出たこともあり、地球占領の屈辱を味わう事になる。このワープ奇襲で地球を占領したのは、デザリアムが史上初だが、彼等は波動エネルギーを最も恐れていたために思いついたと、後世、彼等に次ぐ形で地球占領に成功したイルミダスに称される。この後、デザリアムは重核子爆弾の力で地球の占領には成功したものの、母星を銀河ごと宇宙戦艦ヤマトに滅ぼされるという民族存続そのものに関わる出来事で戦意を喪失し、逆に降伏する羽目になる。結果、地球占領軍は逆にゲリラと見なされ、その後の数年ほど残党狩りが行われる。残存していた宇宙艦隊はベガ星連合軍に拾われ、ベガ星連合軍が息を吹返してしまう最大の要因となる。多数派はその後、ガルマン・ガミラスに雇われる傭兵として生きてゆく事になったが、ヤマト憎しでボラー連邦につく元方面軍もおり、それが銀河大戦の泥沼化に繋がってしまうのである。そして、疲弊した地球を狙い、その次の脅威であり、ある世界で宇宙戦艦ヤマトが最後に戦ったディンギル帝国が地球を狙う事になるのだ。宇宙戦艦ヤマトの運命はそこで大きく平行世界と分岐することになる。



――武子もレイブンズも前史で見た光景である、その未来。宇宙戦艦ヤマトは前史ではその戦役で戦没している。島大介も『テレサ……君のもとに……やっと…』と遺言を残し、戦死してしまう。その光景はヤマトクルーのみならず、レイブンズも涙した哀しいものであった。レイブンズは平行世界巡りで何度も見ることになり、島はディンギルとの戦闘で戦死することが定められた宿命であった事を知ってしまう。島はテレサという触れ合う事のできぬ存在に恋い焦がれた。その事を吐露して亡くなってしまう。ちなみに、テレサへの恋心を未だに持っていた事を吐露して亡くなる世界はむしろ希少であったが、ある意味、島が持っていた純朴さの発露であり、誰もが涙した。島はテレサに命を救われ、それ以来、死に場所を探していた節があり、テレサのもとへ逝きたい旨の遺言は古代を号泣させた。テレサを愛した一人の男の死に様は、レイブンズに多大な影響を与えた。島大介の死は避けられないとしても、ヤマトの自沈は避けられないか。レイブンズはその可能性を探った。ガイアヤマトの存在は渡りに船と言えた。つまり、ガイアヤマトをアースヤマトを生き延びさせるための生贄とする。ある意味では傲慢ではあるが、アースヤマトはガルマン・ガミラスに宇宙の良心と評価されし英雄艦。いずれやってくる水惑星アクエリアスを避けるため、ヤマトは何かかしらを犠牲にせねばならない。それは偶然、今回においてはガイアから『BBY-1 ヤマト』を借りる事になる事がそれになった。運命を司る三柱神『クロートー』、『ラケシス』、『アトロポス』の三姉妹はガイアヤマトが事実上身代わりになることでアースヤマトが生き延びた事を『次元の波に運命がさらわれていった』と表現したが、ガイアヤマトがその身を犠牲にして、『兄弟』を救ったとも取れる。また、ガイアも任務の困難さから、ヤマトの喪失は薄々と予期しており、発進と同日に二代目ヤマトを発注していたりする。様々な要素が絡み合った結果、『ヤマト自沈』の出来事はなんだかんだで顕現することになる。それらを経て『甦ったアースヤマト』は年月を経て、『大ヤマト』のコアシップとなり、グレートヤマトとなってゆく。アースヤマトは兄弟の犠牲を払いつつ、年月と共に強化改装が途方も無いほど繰り返され、遂にはショックカノンを超えるパルサーカノンの装備に至る。そして波動エンジンがモノポールとの複合機関になり、『超波動砲』の装備に至った姿が、30世紀のグレートヤマトだ――



――転生している以上、レイブンズは30世紀までの艦艇の進化を知っており、ヤマトはグレートヤマトとなり、アンドロメダは『凌駕』という艦名の末裔が存在する。なんだかんだでアンドロメダは地球連邦軍の旗艦級戦艦のタイプシップとなったのが分かる。(主力戦艦もドレッドノートの名を受け継いでいる)そのため、どの道、ガイアがアンドロメダ級を一線から外せという声をガイアヤマトのクルーの誰かが出すだろう事は見抜いていた。そのため、ブルーノア級戦闘空母を早めるように根回しし、自分達がアンドロメダ級を使えるように仕向けている。従って、デザリアム戦役を経ての『ガイア』受領は偶然を装った事実上の譲渡に近い。また、ガイアが空母型アンドロメダを考案し、アースが3隻揃えていたミッドウェイ級戦闘空母の計画が見直しになった(普通の空母の作り方をしていたので、ガイアからは『なんで洋上空母と同じ作りに?』と突っ込まれていた)。これはアースは高度な重力制御技術を有していた事、ガミラスなどが洋上空母同様の駐機を空母で行っていたので、自然と地球連邦軍も伝統ある形式に落ち着いたからである。また、VLS式発進は反統合同盟軍が主要していた方法なので、地球連邦軍では嫌われていたという背景もある。パレット方式は船体電源喪失時に射出困難という実用上の難点があり、地球連邦軍は伝統的な洋上空母方式にしていた。もちろん、一部では試行されているが、主流ではない。そのため、ガイアとアースは異なった艦艇発達史を持つ。似た艦艇は多いが、機動兵器優位の時代であるアースは伝統的に艦艇の電源保持に熱心であり、ガイアは艦艇優位の軍事史になっていたので、艦載機の長距離攻撃にあまり関心がない。それとアースは伝統的に倍寸かつ、空間圧縮技術の存在で、ヤマトがコスモハウンドを積み込んで、コスモタイガーなどの艦載数を圧迫しない利点を持つ。そのため、アースヤマトがコスモハウンドという大型機を積み込んでいる事に、ガイアの関係者は腰を抜かしている。デザリアム戦役前の段階で駆け込み乗車的に承認された開発プランは多く、シャーリーが要請した『紅蓮聖天八極式』の制作、コスモハウンドの量産、コスモパルサーの試作などが予算承認されていた。シャーリーがISの使用を防御力の観点から積極的に運用できないことを愚痴り、『いっその事、実機を作ってくれ』と言ったので実現した。それだけの技術があるので実現したと言っていい。なお、ランスロット・アルビオンなども予算的に造れるらしいが、誰が乗るのかという問題があるため、紅蓮聖天八極式のみがとりあえず特注された。(後に、ランスロット・フロンティアは箒とラウラの思いつきでセシリア・オルコット用に作られたという)――


――前線――

「クソッ!戦闘員はゴミみてぇに動員しやがって。多すぎなんだよ!雷光爆縮(ライトニングインプロージョン)!」

黒江は秘技が一つ『雷光爆縮』を使い、戦闘員を消し飛ばす。雷光を文字通りに爆縮する恐るべき技で、アイオリアが習得していない闘技の一つであった。宇宙すら穿つ能力である『ナインセンシズ』の賜物だった。黒江は転生により、雷を操る固有魔法を持つようになり、聖闘士としても、山羊座ながら、射手座に高い適性を有していた。この特性がマリアに成り代わりを直感された理由である。

「へぇ。中々おもしれぇ技覚えたな」

「雷光を爆縮する技。ライトニングボルトの応用っすよ。これを極限まで爆縮して敵の体内で炸裂させんのがライトニングテリオス。たぶんエクサボルトくらいの電圧いくかも」

ストロンガーに感想を述べられ、自慢げの黒江。通常時のストロンガーの能力なら遥かに超えているが、超電子は根本的に電気エネルギーを超えるエネルギーなので、それでも及ばない。

「超電子には及ばねぇな。あれは根本的に電気を超えるエネルギーだしな」

「なにそれぇ〜!」

「伊達にチャージアップできるわけじゃねぇよ」

ストロンガーは歴代で最も電気を扱うことに長け、そう設計されたボディを持つ。超電子ダイナモは後付故、時間制限があるが、ナインセンシズで起こすエネルギー以上の電子エネルギーを起こせるため、余裕である。ある意味、それはものすごい事である。

「お前、ラー・カイラム持ってきたんだろ?どうせならマクロス・エリシオンとか持ってきたらどうだ」

「ツーサード級は今だと無理っすよ。割に新しいンスよ、あれ」

マクロス・ツーサード級はサイズが中途半端でどっちつかずという声もあるが、搭載機数はクォーター級よりは増えている。よく言われているのが『クォーター以下の機動力しかないのに、クォーターから搭載能力に劇的向上が見られない』だが、五機同時発艦が可能、相対的な搭載能力の向上などから、クォーターほどの機動性は過剰とも言える。そのため、識者の中には、バトル級とクォーターで規格統一すべきという声もある。軍当局としては『クォーター複数を統括した分艦隊の旗艦として運用できる手頃サイズ、機動性を必要としない空母、波動機関搭載戦艦と同等の火力を持つダウンサイジング版マクロス』。言うなれば、クォーターと異なる進化を辿り、第一世代型の持つ戦闘能力に進化を絞り、第一世代型を戦闘面に機能を特化させ、ダウンサイジングを図った艦だ。そのため、最高機密に位置づけられており、エリシオン級(またはツーサード級)は貸与許可が出にくい艦であり、許可が出やすくなったのは、自身が元軍人であるユング・フロイトが組閣をした後の事だ。

「そうか、あれ、ケイオスが使用し始めてる段階だっけ?」

「軍にもそんなに出回ってないんす。だから、内惑星用を改良したラー・カイラムを借りるのが今だと限界なんす」

「前史だと、アンドロメダ借りれただろ?」

「あれは暗黒星団帝国が来てから」

「ああ、なるほどな〜」

64Fがマクロス・ツーサードを得れるのは、数年後の次元震パニックと、ユングの大統領就任のタイミングが重なる幸運で貸与が認められた後の事である。その追加で行われた改アンドロメダの貸与は政治的要因が絡むため、実質は譲渡に近い。数年後、迷い込んだ平行世界の501にその軍事力を誇示するのに大いに役に立つ大艦巨砲であるのは事実だ。

「あ、数年後にあのパニック起きんだろ?その時に見せんのか?」

「見せねーと向こうを精神的にノックアウトできないし。前史じゃ向こうの宮藤に手を焼いたし、私は馬鹿やったし…」

「あー、ケイが愚痴ったな、あん時」

黒江は前史でホテルを半壊させる事件を起こしたが、事の発端が『別の自分が智子をぞんざいに扱うのを見て、頭に血が登った事』なので、今回の転生では予め、釘を刺されている。『今回はホテルで馬鹿するんじゃねぇぞ』。圭子が口を酸っぱくして言う戒めである。

「ケイに散々釘刺されてるよ。頭に血が登っちまったんだっつーの」

「だからって、ホテル半壊させるかー?」

「手が滑って、廬山昇龍覇撃っちまったんだよー!」

「滑るってレベルじゃねぇぞ」

仮面ライダー達は前史の記憶をRXとJの力で持つため、このような軽妙なトークを行う。ストロンガーは特に黒江に慕われているため、黒江の兄代わりという自覚があるのか、こういう時はツッコミ役だ。

「師匠、入れ替わってた時の事を切ちゃんが通信で説明求めてきたんですけど」

「お前、ベルカにいたろ?終わったらシグナムを呼んできて、助けてもらえ。たぶん一番お前に近い立場だし」

調がベルカ時代のことを切歌に説明を求められてきた事を報告する。調は最前線にいる上、このような時に話す内容でないため、黒江に似た『はぁ!?』と返事を返してしまい、泣かれてしまったという。

「ふつー、こんな時に聞く内容じゃないでしょう?だから、つい……」

「あー、それ分かる」

まったく関係ない話を戦闘中にされると、カチンとしてイライラしてしまう。調は騎士としての気質により、そういう反応を返してしまった事を『ドジった』と黒江に報告する。

「はやてに頼んで、聖王協会から動画借りられるか聞いてみろ。名前が残ってる可能性大だしな、お前の立場的に」

「そうですよねぇ。まったく、こんな時に…」

「切歌はお前だからって、軽い気持ちで返したんだろう。後で私が説明してやる。あいつがこじらせると面倒なんだよ…」

「今から考えると、ペアルックはねぇ…」

黒江も成り代わり時、散々苦労したのがペアルックの処理であった。切歌は調を引っ張ってきた自覚があるからか、黒江がいつの間にか成り代わっていた事にも気づかず、事が明らかになっても認めようとしなかった事があり、黒江が嫌がるのはその点である。調も黒江との同調と感応で切歌への長年の愛に冷や水が浴びせられた(正確に言えば、相互依存的な愛が消えたと言える)ため、切歌に冷淡と取れる反応を返すことがこの時期は一番多かった。

「今だから言うが、切歌の奴、私がリディアンの学園祭で気持ちよく歌った後に『連れ戻しに来たデス!!』とかズカズカやってきてさ……カチーンって来たから超電磁砲を食らわせて気絶させた事ある」

「ああ、クリス先輩から聞きました。師匠、切ちゃんが舞台に近づいた時、紫電をちらつかせてたそうですね」

「余韻に浸ってたんだぞ、こちとら!気分ぶち壊しだったんだぞ。だからムカついて超電磁砲をコインであいつのおでこに当ててやった」

「10億ボルトのマッハ4で?」

「美琴と同じくらいのパワーで撃ったから、そんくらいかな」

「その後は?」

「ハ○ヒのゴッドノウズを気分直しに歌ったような…禁断のレジスタンスだったっけ…」

黒江の記憶は曖昧だが、ともかく、黒江としては『相方の入れ換わりに気が付かないとかどんだけ鈍いんだ』ということである。黒江はサウンドエナジーがシェリル・ノームとランカ・リーに比肩するレベルである事もあり、シンフォギアを任意でリミッター解除可能であり、歌い終えた時にはエクスドライブ形態であった。そのため、翼たちも安易な手出しを控えたほどである。また、視認可能なほどのサウンドエナジーをオーラとして纏い、口からビームのような形で打ち出したのは、ファイヤーボンバーに比肩する所業である。これはシンフォギア世界では驚きの現象で、後にエルフナインも驚愕している。黒江は魔法少女事変までを調として戦い、その後は老師・童虎が未然に鎮圧したため、黒江が接触したシンフォギア世界の歴史はだいぶ変化が激しい。そのため、後の次元震パニックで一致する事項は魔法少女事変までだが、魔法少女事変もグレートマジンカイザーの介入で様相が変わり、シンフォギアの有効性に疑問が抱かれてしまったため、疑念の払拭のため、黒江の要請にシンフォギア世界側が応えたのである。(ラ號がGカイザーを運んできたため、余計に有効性に疑問が抱かれた。Gカイザーとラ號が邪神エリスを黄金神聖衣を纏った黒江や智子と共に倒した事が知れ渡ったため、シンフォギアに多額の予算を出すことに疑念が生じた)

「智子の奴、ちゃんと説明したかな?調、お前の世界、たぶん神々も事を起こそうとしても無理だって事わかったから、戦を起こそうなんてのはよほどの馬鹿しかいねぇから、別世界に行かねぇと有効性証明できねぇし」

「たぶん、元の世界は遅かれ早かれ、予算止まるでしょうね。存在意義の証明ができなくなるし」

「どうするんだろうな、あのおっちゃん」

「必要最小限の規模で組織は存続すると思いますけど、国連のいい駒でしょうね、たぶん。」

「お前、それを見抜いてのび太んちに?」

「国連の都合のいい駒なんて、まっぴらごめんですよ。のび太君の家で暮らしながら、23世紀で軍人やるほうがまだ有意義ですよ」

調は組織が仮想敵に備えるという存在意義を失った以上、遅かれ早かれ規模を縮小される事を見抜いており、『都合のいい駒』として使い倒される事に嫌気が指したことも、野比家に身を寄せた理由の一つだと述べた。童虎はその神殺しすら達成できた能力で以て、シンフォギア世界の騒乱を収めたが、それはSONGの存在意義を奪うことでもある。童虎の導きに従い、調が姿を消したのは国連の都合のいいように使い倒される未来を予見し、嫌気が指した事、黒江との感応でのび太に会わなくてはならないと使命感を抱いた事が複雑に絡み合って起こった。23世紀のサウンドエナジーの権威『Dr.チバ』がシンフォギアを再調整したことで、恒常的な展開で負担がかからなくなったりしたことも、調が野比家で恒常的に展開している理由の一つである。黒江がコピーをサンプルとして、Dr.チバに解析と再調整を依頼、調が持ち込んだシュルシャガナのオリジナルも彼の手で解析され、再調整された。細かい組み立ては大山トチロー(大山敏郎)であり、錬金術も含めた遺失技術も彼等の手にかかればお茶の子さいさいであり、現在、調が展開しているものは再調整されたもので、負担がかからない仕様になっている。エルフナインもびっくりの改造で、黒江はエルフナインを真田志郎のもとで勉強させようと考えていたりする。

「あ、後で写真送れって……」

「あんだと?端末貸せ、メールで叱ってやる」

「それが、私がのび太くんの家でどんな生活してるか写真かムービーでみたいって」

「ドラえもんに言えと返してやる。あーもうTPO考えろよ!」

切歌がそのメールを送ったのは、アイオワ級に突入する前だが、回線の混雑でタイミングが悪いところに届いてしまい、切歌は黒江に怒られることになるのである。目的は達成されるが、なんともほろ苦い事になる切歌だった。

「つか、作戦中は電源切れよ、あのガキィィィ―!」

思わず叫んだ黒江であった。タイミングの悪さによる不幸だが、黒江は『やっぱあいつ苦手…』と認識するのだった。



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