外伝その200『GET WILD6』


――黒江は実機で出るのを好んでいるため、耐Gスーツ代わりにシンフォギアを使用する事がダイ・アナザー・デイでは常態化していた。そのため、調は同時にシンフォギアを使用するのは避けており、黒江がシンフォギアを使用した場合は、聖衣に切り替えるなどの対応を取っていた。それはそれとして、ハルトマンはミーナがまほの自我に目覚めている一方で、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとしての前世の記憶がある事を突き止め、本人に質問していた――


――真501 前線駐屯地――

「えーと、つまり?」

「まぁ、その、なんだ。私は西住まほであり、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとして生きた記憶も持つ状態なんだ、エーリカ」

「つまり、西住ちゃんのお姉ちゃんが直近の前世で、その前が連邦の介入がない場合の世界のミーナってこと?」

「そういう事になる。直近の転生の要素が強く出るから、今の私はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケそのものではないがな」

姿はミーナだが、口調はまほのハイブリッド状態であり、性格はまほの方が近い。まほの記憶が直近である分、その前より強いため、性格はまほ寄りである。それを指して、今までのミーナそのものではないと言うのは正しい。それを表すように、目つきもミーナの温和そうな目つきではなく、まほとしての凛とした目つきに変化している。

「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケそのものでは無くなったけど、自分はミーナだって自覚はあるってわけだね」

「当たり前だ。だが、みほには姉として会ってきた。記憶はあるから、別人とも言い切れんだろう?」

「そりゃそうか」

「ソウルシスターが増えたと思えと言ってきた。ハハハ…」

「だみだこりゃ」

呆れて、額を抑えるハルトマン。ミーナはまほとしての要素のほうが強い事を示すように、笑い方はまほのそれだ。シスコン要素があるのもまほの因子が強い証である。

「みほと喋ってる内に、今の素が出そうになって、口調の維持で苦労したよ。それと逸見エリカ、知ってるだろう?あいつに鉢合わせしてしまってな。とっさに黒森峰女学園OGである西住家の縁筋のドイツ人とハッタリかますしか無かった。本当に焦ったぞ」

「だろーね」

みほに会いに行った際、偶然にも、逸見エリカは『まほ』の留学が決まり、隊長職を受け継ぐ事になった関係で西住家に挨拶しに来たが、鉢合わせしてしまったのだ。ミーナはとっさにハッタリをかました。時には嘘も方便である。

「あの子、まほを慕ってるかんなー。とは言え、今の状況はややこすぎて、まほ本人も理解できないだろうしな。妥当だね」

ハルトマンも同意するように、みほは転生の事を理解しているが、エリカには明かす必要はない。言っても理解できないだろうからだ。みほは『妹』であるから言ったのだ。

「あ、話は変わるけど、まほになる前の記憶は残ってる?」

「残っている。ただ、多くの平行世界と同じような道筋だから、話すには値しないと思うぞ。黒江さん達は知ってるだろうし、日本でアニメになってる。その通りに進んだからな」

「今回の歴史が変わるに変わってる事も?」

「前の時は、黒江さん達の事は美緒が昔話で話す程度しか知らなかったし、調べる必要もなかったからな。今回は迷惑をかけたと思う。禊はするよ、これからの時間で」

「やれやれ。これもウィッチの世代交代スパンが早い事の弊害だよなー」

「10代のうちしか力を奮えんというのも近代軍にはネックでしかないからな、ウィッチの力は」

ミーナはウィッチの力のネックである『10代の内に使う力』を指して、近代軍隊には本来は不向きの力だと断じる。それも経験から得た知見だろう。

「美緒がそうだったように、18歳をすぎると、ウィッチの力は下降線に入る。あいつはそれを気にしすぎて烈風丸を作り、扶桑の伝説をその身を以て、示してしまった。前の時の美緒は痛々しいくらいだったぞ」

「アニメより?」

「実際はもっと思いつめていたぞ。たしか、『私はもう、11人の中にいられないのか!?』と誰も見てないようなところで叫ぶくらいに」

「少佐は魔力数値自体はそれほどでもないし、事変の時に酷使したツケもあるから、19歳から急速に衰え始めたんだろうな」

ハルトマンの推測は当たっている。坂本は芳佳を一人前にしてから退きたい願望が強く、たいていの世界では、自分の衰えが芳佳の成長に比例するように急速に訪れていった。それでいて、ウィッチの力を絶対視する考えがあるのが、ウィッチとしての最晩年に評価を落とした感がある。『前史』でも、『反則的な奇跡』で現役に復帰した黒江の事を『ずるい』と言っていたように、坂本は近代の軍人ではなく、『武士』であろうとしたのが分かる。その黒江との物の見方の相違が結果としては自身の後半生を暗転させ、黒江を追い込んだ。それを悔やむ事になったので、坂本は良くも悪くも一本筋が通った性格なのだろう。

「美緒はああ見えて、頑固だが、宮藤の起こした奇跡は許容しているから、自分が襷を引き継いだ世代が戻るのは認めたくなかったんだろうな。それがお前のいう前史の結果になったのは残念に思う」

「後の世代が奇跡を起こすのはOKで、自分の前の代はダメって思うのは偏見だと思うよ?ルーデルやガランドはどうなのさって話になるしさ」

坂本が前史で評価を下げたのは、芳佳の奇跡は許す一方で、自分の先輩の黒江の起こした奇跡を『ずるい』とする考えであり、そこも後輩たちにダブルスタンダードと白い目で見られた要因である。坂本は転生後、『黒江達が前線に戻った事自体は個人の自由意志だから、否定はしなかったぞ。ただ、先輩に頼るのが恥ずかしくてな…』と述懐している。坂本は変に頑固なところがあり、傍から見れば、出戻りの黒江達を疎んじてるようにしか見えなかったのも悲劇に繋がった。

「まぁ、そう言うな。美緒は一本筋の通った性格だ。自分の先輩を、また戦わせることが忍びなく、それが空回りした挙句の果てが『前史』での最期になったのだろうな。だから、今回は一貫して黒江さんを気遣ってるだろう?」

ミーナは坂本に同情的であった。もっとも坂本の気持ちを理解できると自負しているのもあるが、黒江にも配慮した一言を言う。しかし、ハルトマンは知っている。前史で坂本が『上がったウィッチより現役の方が強い』という思い込みで、黒江を格下扱いしていた事があることを。黒江は実際には、前史でその時点の自らより遥かに格上の相手にぶつかる事が度々あった。仮面ライダー三号しかり、斎藤一しかり、比古清十郎しかり…。黒江は仮面ライダー三号に半死半生に追い込まれたショックから、聖闘士の力を求めるようになり、それを血の滲むような努力で得た。その事を配慮しない一言を坂本が言った時には、ハルトマンも流石に激怒し、刀を突きつけた事もある。

「でもなー、ミーナは知らないだろうけど、前史でさ、黒江さんが聖闘士の力を身につけた直後の頃にさ、こんな事ぬかしたんだ。『まだ、昔のつもりでいるのか』って。流石にあたしも怒髪天をついたよ。牙突零式で胴体泣き別れにしたくなったね」

「ハッハッハ、これは手厳しいな」

「少佐」

「美緒、来ていたのか」

「報告もあるからな。黒江のことを考える余裕があの時はなかったんだ。あの時は復活した黒江への嫉妬、自分の不甲斐なさとかが入り混じっていたからな。お前に目にも留まらぬ速さで剣を突きつけられた時は、流石に背筋が凍ったが」

坂本は自嘲気味に語る。前史での失敗は山程ある。特に前史では、出戻りであった黒江へ内心で嫉妬を抱いていたと告白した通り、黒江が出戻った事に疑念があると同時に、激しい嫉妬を抱いた。それ故、自分の青さで黒江に苦労を背負わせたと、現時点では思っている。

「あの時はお前もその場にいたな?」

「うん。修行に付き合ってたし」

それは『前史』での1945年のこと。ダイ・アナザー・デイに相当する戦いが起こっていた頃、当時、衰えが顕著に現れていた坂本の黒江への嫉妬が爆発してしまった出来事。

「上がりを迎えたウィッチが力を維持とか出来るわけ…」

「維持じゃねえ、それ以上だ、良く聞け!」

「冗談にしても、もう少し上手いこと言え!」

「わかんねーヤツだなー、私の今の力はウィッチ以外の力で、ウィッチとして現役当時の戦闘力を今は超えているんだよ!信じられんなら新人三人相手に模擬戦でもやってみせるか?それとも自分で私の強さを感じてみるか?」

「良いだろう、御相手する!」

「ペア連れて来いよ?」

「私一人で十分!!」

坂本は粋がったが、当時の時点で黒江は聖闘士候補生ながら、山羊座の黄金聖闘士の次期継承者と目されていた上、未来世界で存分に戦い、カンを取り戻した後であった。その差は空中で顕著に現れた。ハルトマンをレフェリー役にして、模擬戦が行われたのだが、一戦目は黒江がセブンセンシズ全開でアトミックサンダーボルトを開幕からぶっ放して瞬殺であった。

――一戦目の直後――

「なんだ……光が広かって……気がついたら回収されていた……?」

「これが私の闘技が一つ『アトミックサンダーボルト』。一秒間に10億の拳をかます技だ。言ったろう?桁違いに上がったって」

黒江は候補生の内にセブンセンシズに覚醒し、既に聖剣も与えられていた。戦闘力の差は歴然としていたのである。坂本は『不意打ちは卑怯だ!』とまくし立てたが、ハルトマンが『一秒の隙をついただけじゃん。なーにムキになってるのさ』と冷ややかであったのに驚きつつ、めげずに第二ラウンドを敢行する。キ100と紫電改。後者の方がスペックは優れていたが、黒江は未来世界で培った空中戦術を駆使し、同じく成長していた坂本を徹底的にぶちのめした。坂本はリバウ三羽烏として鳴らしていた頃に剣術を完熟させたが、この頃には、黒江が飽きなき向上心でその実力を上回っていた。元々、事変当時に模擬戦で黒江に『見どころあるガキ』と見られた時より、坂本は才能を開花させていたが、元々の実力で黒江が上回っていたのを、血の滲むような努力を重ねたため、実力差が再び生じていたのである。

「馬鹿な……飛燕のエンジンを変えただけのもので、紫電改をこうも翻弄できる!?」

「マシンが良くても、ウィッチが性能を引き出せなければ!」

黒江は『蝶のように舞い、鉢のように刺す』を具現化した動きを見せ、スペックでは上回る紫電改の坂本の攻撃を尽く避ける。黒江は坂本が零式の感覚で紫電改を動かしており、ストライカーでもついている空戦フラップを使用していない事を見抜き、黒江は五式のフラップを空戦でフル活用した上、VFの動きを応用した機動をストライカーでも見せるのもあり、当時の坂本は性能差を活かせず、翻弄されるがままだった。無論、自動空戦フラップも使用したのだが、五式のロール速度は紫電改を上回っていた事、黒江が定石無視の機動をしまくる事もあり、空戦フラップものその真価を出せなかった。後に、実機でも行った模擬戦でも黒江が圧勝しているが、これはパイロットとしての経験差がものを言ったため、ストライカーでの模擬戦が互角に戦えるチャンスであった。しかし、そのストライカーでの模擬戦でも、坂本はものの見事に圧倒された。黒江は元々、陸軍で十指に入る手練とされていたが、45年では過去の栄光。今は自分も成長しているのだと自分を奮い立たせてのストライカーでの模擬戦であるが……。

「な、なんだ!?お、踊っているのか!?」

当時の坂本には驚きそのもののマニューバ『インメルマン・ダンス』である。踊るような動きから『ダンス』と呼ばれており、名付け親は美雲・ギンヌメールである。黒江はそのマニューバの存在をこの時点で知っており、模擬戦で使ったのである。(この機動は今回の歴史でも使用しており、今回の歴史では『事変の頃からの十八番』と認識されている)

「ハ、そんな弾が当たるってんだ!」

「お前、口調が砕けたな…」

「良く言われる、最近な」

黒江の口調はその頃には現在の砕けた若者言葉かつ江戸弁を用いる口調になっていたので、かつてとの違いを指摘される事が多かった。今回の歴史でその説明をしなくていいように、事変の頃からその口調であるとした。これは今回の歴史でキャラをお母さんから『トゥーハンド&ガンスリンガー』へ変えた圭子にも言える事だ。

「――インメルマン・ダンス使われたもんだから、こっちの弾はかすりもしないし、向こうは鼻歌交じりに避けていく。あの時は愕然としたものだ」

「で、それで実力差を?」

「ああ。嫌というほどな。黒江は転生前は硬い口調だったから、今の若者言葉+江戸弁には違和感感じたものだ。今のほうが受けがいいのはわかるが…」

「わかるが?」

「口調が見かけに合わない気がしてな、当時は」

黒江は元は堅苦しい口調だったため、坂本は今の黒江のキャラを『軽い』と思っている節がある。しかし、元のキャラはストイックだと人物像の誤解を招きやすく、坂本はそのとおりに、黒江をストイックなウィッチと見ていたのが分かる。

「黒江さん、『重々しいのも時と場合だし、飽きた!』とかで今のキャラなんだよ?今のほうが素だよ?だから、少佐さー」

「その事は今回の転生で穴拭と大先輩に言われたから、勘弁してくれー!」

坂本は今回の転生したての事変当時、赤松や智子にこっぴどく怒られたからか、ハルトマンにも咎められるのに参ったようだ。坂本は今の自我に戻った12歳当時、赤松と智子にこっぴどく怒られているが、黒江を前史で泣かせたことを二人は腹に据えかねていたのがよくわかる。

「本当に悪かったと思ってるって!菅野にもそれは言った!」

「菅野に20発殴られたって?」

「10発だ。あの時はこっちがパニックになってたんだけどな」

坂本は当時の心境を率直に述べる。黒江の泣き崩れは予想外過ぎてパニックになり、そのうちに菅野に10発も殴打された際の率直な感想を。

「菅野の奴、申し開きをする機会を与えてくれなくてな。機会さえ与えてくれればなぁ」

菅野のパンチの内の五発は急所に命中していたため、それが退役後の急激な老化に繋がったのは否めないと考えている坂本。菅野のパンチの威力はリンカーコアの機能低下に繋がるほどで、その機能低下がそれまで20代の容姿を概ね保っていたはずの坂本を徐々に老化させ、退役から7年後には同年代と同程度にまで老化が進み、病気にかかるようになった。晩年には寝たきりに近い状態であったため、菅野もその事を葬儀の際に黒江に告白している。坂本は最晩年には寝たきりに近い状態であり、60代の大病の後遺症が尾を引いたとは、当人の談。そして、黒江たちと再会した死に際の時の『老いた自分と往時のままの三人』との落差に落胆したとも言う。

「死に際の時、三人は今のままだから、自分の不甲斐なさに落胆したんだ。ただ、あいつらが今のままだから、娘が腰抜かしたのは痛快だった。不肖の娘だからな」

「坂本少佐、育児失敗してる自覚あるんだね」


「ああ。あいつは不肖の子だよ。まぁ、黒江たちを見て、まさか自分が子供の時に遊んでくれた『おばちゃん』と同一人物と思わなかったらしく、腰を抜かしてたのは実に痛快だった」

容姿の老化が起きないため、2000年代以降は子孫に間違えられる事が多かった黒江たち。坂本の子が子供時代に遊んでもらった時から容姿の老化が無いことから、孫だと思い、邪険に扱おうとしたら、坂本当人が戦友と言ったことで腰を抜かしたのはGウィッチの界隈では有名だ。坂本当人も娘を晩年は疎んじていたような発言だが、娘自体は愛していたともいう。

「アイツのことは愛していたさ。だが、私のミスはあいつが軍隊嫌いになったことだろうな。軍人一族にいながら、あいつは弁護士になったからな。百合香が後を継いでくれたのは嬉しかったよ」

坂本は職業差別の意図はないが、軍人の一家の子は軍人になるのが一番とする考えを持っている。坂本は『ウィッチの素養を持った者の最大の幸福は国家に奉仕することだ』という滅私奉公教育を自身の姉が自由人だった反動で施された。その美緒の子が伯母に似てしまったというのも遺伝子の皮肉である。坂本はその反省で今回はどうにかしようとしており、MATにぶちこもうかとも考えている。MATは日本自衛隊の管理下にあるので、戦後の扶桑では軍役に準じた扱いを受ける。太平洋戦争でMATと軍の住み分けが決まるのだ。最も、前史で幹部でありながら、芳佳との友情を選び、美遊・エーデルフェルトとしての人生を選んだリーネの例もあるが。(表向き、リーネとしては退役扱いだが、美遊としては現役軍人であり続ける。坂本は当人に『リネット・ビショップとしての生は充分にしました。だから、MI5に元の名前の使用承諾出しました。息子はいずれ設けますよ』といい、美遊として生きることを告げられている。リーネとしては大胆な選択だが、名前の使用については、実母のミニー・ビショップが影響力を行使して、MI5に使用を許さなかったので、G機関が用いる事になったが。(娘がビショップの名を捨てる事を選んだ事に戸惑ったのは、両親とリーネの長姉のウィルマである)リーネは元々、前史で少尉任官から数週間もしないうちに『お嫁さんになりたいから退役する』という意思を表明し、周囲に迷惑をかけた事に強い負い目を持っていたし、長姉に軍人としてのビショップ家の誇りなどを押し付けた事に後ろめたい気持ちがあった。それは芳佳の勧めでMATに再就職しても変わらなかった。芳佳が軍で名を成したことがリーネには『自分は使命から逃げた』という十字架となったのだ。それに、自分は8人兄弟姉妹の真ん中で、『いてもいなくても、ビショップ家には影響はない』と考えたのも、魂魄の記憶に身を委ねた理由だ。その為、ダイ・アナザー・デイを終えた後のリネットの公式記録は『1950年代に退役。最終階級:大尉』で途切れる。当人は美遊として軍に在籍し続けており、家族のもとには元の姿で帰省はするようになる。ただし、長姉のウィルマは美遊が妹と同一人物であることは気づいており、『お姉ちゃんに一言言ってほしかった』と言われる事になる。ウィッチとしてのリネット・ビショップの立場は1950年代に妹のキャサリン・ビショップ(ケイト・ビショップ)がその衣鉢を受け継いだため、図らずもその通りにはなっている。

「リーネだが、いいのか?ビショップ家になんと説明する気だ、お前ら」

「菓子折りでも持っていくしかないさ。美緒、その時は付き合え」

「うわー…気が重い」

ミーナはその後、本当にガランドと坂本を連れて行って、リネットが美遊・エーデルフェルトとして生きることを報告しにビショップ家を訪れる。リネットはウィルマに続いて生まれし第二の女児だったため、溺愛気味の父親はショックで卒倒し、母親のミニーは激怒して『連合軍参謀本部に事実確認をする』と言い出す。ガランドはそれを予期し、ミニーを静めるため、アイゼンハワーとチャーチルを呼びよせる。ミニーは一次大戦のブリタリアの英雄であるからだが、ガランドは『その影響力をなぜ、もっと有効活用をしてくれなかった』のかと言い、遠回しにミニーを批判していたりする。ミニーは『自分のことは自分でする』というビショップ家の家訓に縛られていた節があるため、その批判には言い返すことはしなかった。ウィルマの才能が『ファラウェイランドで合格する程度』である事から、リネットとキャサリンも期待されていなかった節があるからだろうか。ダイ・アナザー・デイで叙勲された英雄が実子の変身体である事を知らされると、戸惑いつつも哀しげな顔を見せた。それがビショップ家の悲劇でもある。それは子のことを愛しつつも、どの子もウィッチとして大成すると思っていなかったことを明示してもいたため、ガラント、ミーナを内心で引かせたという。ミニーは後輩らに暴走したブリタリア空軍の制御をしなかったことを暗に責められたと感じたか、知己であった『ヒューゴ・ダウディング』大将の名誉回復に動き、結果的に軍部に舞い戻るのだ。

「リーネのお母さんはたしか、前の時の英雄っしょ?影響力を行使さえしてくりゃ、マロニーのクソ野郎の跳梁跋扈なんか」

マロニーは近接支援の権威ではあったが、ウィッチ運用には素人であったし、兄のジョージへのコンプレックスがにじみ出ていた。また、あの時に兄が死んでくれていれば、ともこぼしており、マロニー家からも『面汚し』とまで陰口を叩かれていた。その辺りは未来世界にいたヘルシング家の前党首の弟と同じ小物である。その事はミニーも『いや、娘の将来のためと、あいつはウォーロック推進派になる確率が高いから考え物だったんだ。リネットに手を出したら手を下すつもりではあったわ』と言及していたが、ガランドがハルトマンのその一言を伝えると、苦笑交じりに『ダウディングの名誉回復をすることを禊として欲しい。そう伝えて』と言ったという。(ダウディング男爵は1939年には退役を控えていたはずであり、失脚させられたとは言え、予定通りではあった。ミーナにしてみれば、自分の覚醒が遅れたために『ダウディング大将を救えなかった』と悔やんでおり、ミニーに釘を強く刺した。その事がミニーを再就職に向かわせたのだろう。そのため、ブリタニアは太平洋戦争に扶桑が向かう1945年以後、ミニー・ビショップの再就職を斡旋するなどの行為で連合軍への軍事的影響力の維持に躍起になっていく。

「――これからキングス・ユニオンはどうなる?」

「太平洋戦争ではあまり影響力を行使できんだろうが、スエズ運河を手放す事は起きんさ。スエズ運河をどこが管理するかという問題になるし、この世界では、小国としての独立はありえない選択肢だ。イギリスのような事にはならんさ。アトリーが政権を取る事もな」

戦時が1945年以降も続く事は、チャーチルの流れを汲む保守党が政権を担い続ける事を意味する。ダイ・アナザー・デイ中、キングス・ユニオン内部ではチャーチル続投で意思が固められており、史実で結果として、アメリカの後塵を拝する要因を作ったクレメント・アトリーに政権は絶対に渡さないという密約をイギリスとブリタニアは結んでいた。(正確に言えば、1957年の保守党政権のダンカン・サンディーズ国防大臣のせいでイギリスは戦闘機の国産開発が途絶えたので、彼が国防大臣になることも無くなる。チャーチルは国産機開発力が衰退しきったイギリスにお冠であり、サンディーズの『粛清』すら考えたという。だが、その彼にしてみれば、理不尽極まりないので、チャーチルと口論になったという。結果、イギリスの仲介が入り、トーネードの自主開発機としての開発などでチャーチルをなだめたという。

「しかし、保守党が悪名高い国防白書出した気が」

「それなんだよ、卿が怒ったの。だから、トーネードの要撃型を作るそうだ。そのうち」

「トーネードを?ブリタニア単独で?」

「この時点の開発力なら要撃型は可能らしいよ。ライトニングの後継機にするつもりだって」

「あの人、長生きだから見られる公算大だよな、恐ろしい」

「うん。青写真は渡ってるはずだし、後はライトニングとジャベリンを繋ぎに使うそうだ」

「でもさ、その間に扶桑はトムキャットかも」

「リベリオンの国力を日本が異常に恐れてる証だよ。しかし、試行錯誤してる時代にトム猫持ち出してもなぁ。戦闘どころか虐殺になるぞ」

「まぁ、怪異のこともあるし、ミサイルでアウトレンジしたいんでしょ。トム猫ならある程度の格闘戦にも対応できるし」

「まぁ、いざとなれば私達が出張ればいいしな」

「ミーナ、覚醒していなかった時は怖がってた癖に」

「今となっては馬鹿らしいといったろう?前の時の心境は今となれば理解できない事も多いがな」

三人の話は続く。Gウィッチ化はそれ以前とは自らの思考も変化が起きるのがよく分かる。それを経ても友人関係をいつでも保つのび太の人徳、そして、Gウィッチすらも早撃ちで寄せ付けない戦闘力を持つ事の暗示でもある。黒江達は逆に言うと、転生して戦い続けて、ようやくのび太と並び立てると言えるので、のび太が如何に英霊に値する人物であるという。(孫悟空や桃太郎の真のモデル、ムー連邦を救った、バウワンコ王国の危機を救ったなど…)

「のび太と戦った事ある?」

「私はあるが、早撃ちに負けた」

「あたしも近寄れなかったね。あれはもう神業だよ」

「お前で無理なら、黒江達でも無理だな。批判的な連中にのび太と戦わないのを批判されるが、あいつの早撃ちに対抗できるのは、Mr.デューク東郷だけだよ」

のび太の早撃ちはデューク東郷をして『俺を凌ぐ』と言わしめるレベルであり、技を撃たせなければいいので、その点でのび太は青年期以降にスイーパーとして名を馳せるのだ。また、のび太やデューク東郷になると、技を撃たせなければいいという思考のもとに行動する事もあり、のび太(青年期)との模擬戦では千日戦争に陥りがちである。その事もあり、のび太は青年期になるに至り、スイーパーとしてゴルゴ13に並び称される凄腕と認知されたのだ。その青年のび太は戦艦をシージャックをしようとしているので、少年のび太が授業参観&南洋開発で戦線を離れた後を受けて活躍しているため、ダイ・アナザー・デイでのび太の功績の半分は青年のび太の打ち立てる功績である。少年のび太はドラえもんが南洋開発を終え、戦場に戻るタイミングで、自身は元の世界に戻り、授業参観の父兄役をタカオに頼み込んでいる。のび太は2000年代に入る頃、父母の兄弟達の子、つまりいとこやはとこ達の内、成人を迎える年代の者が次々と結婚していったので、1999年からはそれで親が不在になる事が多くなったのだ。タカオは元の高雄としては妹達にキャラが食われ気味なため、メンタルモデル姿のほうが常態化した艦娘であり、『蒼樹タカオ』として野比家で生活することも多い。タカオは青髪のスレンダーなレディ(10代後半の外見だが)であるので、父母会でも注目を浴びる。のび太の成績は大学で完全に改善されるが、高校までは地を這うような状況(赤点はギリギリセーフでないらしい)であるので、それを指摘されるのが授業参観での常であり、タカオや黒江、智子、調、菅野、下原などの常連は気苦労もしているが、意外に楽しんでいる節があり、試しに孝美を行かせようかという案も出ている。これはのび太が小6になって初の保護者会で具現化し、孝美が21世紀のセンスに合う私服をまったく持ち合わせていなかったのもあり、時間の都合と、任地から直接来たためか、純白の扶桑海軍第二種海軍軍装で(史実日本海軍第二種軍装夏服)に相当する姿を見せたので、周囲の注目を浴びる事になったのであった。



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