外伝その202『大空中戦13』
――ジェガンは他世界では晩節を汚したが、未来世界では、デナン・ゾンやベルガ・ギロスにもなんとか対抗できる程度の格差はあった。これは百戦錬磨のパイロットが連邦に多かった事、ジェガンを構成する技術レベルが小型MSに対抗可能な水準であった事から、デナン・ゾンなどとのキルレシオは3対1程度に収まっていた(他世界では10対1であったとのこと)。ただし、運用経費削減の観点から、小型機そのものは開発されている。しかし、アナハイム・エレクトロニクス社が乗り気でなかった事もあり、RGM-109『ヘビーガン』、RGM-119『ジェムズガン』は失敗作であった。次のRGM-122『ジャベリン』は成功作と言えるが、今度は小さすぎて問題になったため、結局、大型化に回帰する。これは小型MSのシェアそのものが可変戦闘機に食われた事も関係しており、外宇宙時代になると、今度は過度の小型化の弊害が生じ、結局は16m以上の全高が必要だと判断され、連邦軍はミドルサイズMSの開発に傾倒していった。それがRGM-153『ジェイブス』だが、これも度重なる戦争での既存機の需要増、ジェイブスは素体での運用はほぼ考慮されておらず、ミッションパックとセットで揃えなくてはならない不都合で議会に不評である。(外観は16mになったジェムズガンだが、ウェスバーパックを運用する事から、廉価版F91の呼び声もあった)ジェイブスはロンド・ベルなどの特務部隊に先行配備が見込まれたが、ミッションパックの分も格納庫を専有する事から、嫌われている。そのため、ジェスタが『ユニコーンの護衛』を名目に造られた経緯がある。――
――陸自の派遣部隊の駐屯地――
「口外できないが、こりゃ壮観だな。ジェガンの最終型が歩哨というのも」
「これで型落ちモデルなんだから、凄いよな」
陸自隊員は歩哨に立つジェガンR型に感想を言い合う。ジェガンはダイ・アナザー・デイ時点ではR型のみが現役モデルであり、退役間近とされていたので、こうした警備目的にも使用され、陸自の駐屯地にも連邦軍が歩哨代わりに立たせている。ジェガンはヘビーガンやジェムズガンのフェイスデザインがダサいと言われるのに対し、スタイリッシュで見栄えもいいため、第一線から退きつつあっても、見せ場はある。また、大型機であるため、陸軍が持つ旧式機用実体弾兵器を流用できるのも強みだ。大気圏の作戦であるためか、動員されたジェガンは信頼性がある実体弾兵器の携行が多めであり、多数がジム・ライフルを携行している。これはジム・カスタムが使用していたモデルであり、ティターンズ製のガンダリウム製MS相手でも一定の効果が見込める。90ミリ砲は第二次世界大戦の重戦車の主砲クラスであり、これを乱射できる事はウィッチ世界の陸軍には脅威だ。特に主力が75ミリ砲級戦車のリベリオン陸軍には薄い天蓋装甲をその口径で撃たれる危険が大きいからか、恐れられた。ジオン軍が緒戦で勝ち戦を重ねたのも、戦車の天蓋装甲を好きに狙える事も作用している。
「あのさ、持ってるのがなんでビーム・ライフルじゃないんだ?」
「大気圏だとビームの照準のズレや、減衰とか問題があるから、実体弾が廃れないんだとさ」
「バルカン・ポッドでも60ミリだぞ?B29どころか52でも粉砕しちまうよ」
自衛隊も第二次世界大戦の日本軍に比して圧倒的火力を持つものの、地球連邦軍の火力には当然及ばない。地球連邦軍は180ミリ砲をMSに持たせて曲射する芸当が陸軍の伝統芸で、ウィッチ世界の陸軍から恐れられている。最も、カノン砲であるので、陸上から停泊中の駆逐艦から軽巡洋艦なら撃沈は容易である。そこも何でも屋とも戦線では言われている。宇宙軍がジャベリンやジェイブスに機種変更した事での余剰も多かったが、地球圏で一番多く出回ったMSの利点から、陸軍では重宝がられている。そのため、ビーム・ライフル使用機種は宇宙軍や空軍部隊であるというわかりやすい識別方法が取れる。そのために別時代の軍隊である自衛隊や米軍も容易に識別できた。
「陸軍がジェガンって事は?」
「宇宙軍は三世代進んでるらしい。ヘビガンどころの話じゃない」
「ジャベリンか?」
「その後継機だよ」
地球連邦軍時代、基本的に『海軍』である宇宙軍が優先的に新型機を保有する傾向があり、陸軍はジェガンへの転換がようやく終わったところであるので、陸軍は軽んじられていると巷では専らの評判だ。これは陸軍の地位が宇宙移民時代では警察とそれほど大差なく見られていることでもあり、ガトランティス戦役でも、宇宙軍艦隊の壊滅的打撃で人々が降伏に傾いた事が裏付けともされるが、実際はジムV導入が宇宙軍より早く、その配備が終わらない内に、ジェガン以降の新型機が続々開発されて予算が取れないままピースクラフト軍縮に遭い、結果的に旧型機を引っ張りだした事もあり、ジェガンを宇宙軍のお下がりで配備する状況が数年続いただけだ。最新改修型の新規生産機の納入が受けられるようになったのは、百鬼帝国の策謀、ベガ星連合軍の玉砕前提の本土攻撃が想定されてのことなのは事実だが。そのため、地上仕様ジェガンは脚部フレームの増強と、各地域専用カラーや迷彩が施されているため、緑色の塗装で有名な宇宙軍仕様と差異がある。欧州専用カラーは市街戦仕様や森林迷彩があり、味があるとモデラーの自衛官に好評である。概ね、21世紀当時の各地域軍隊の伝統を引き継いでいるからで、それは61式戦車などでも同じだ。
「で、彼等は隠れてるティターンズの掃討だろ?手練を送って来てるのか?」
「一年戦争以来のベテラン/エース揃いだよ。だってお前、ティターンズはアニメでも『連邦軍最右翼の特殊部隊』の設定だぞ?相応の人員送るに決まってる」
ティターンズは地球連邦軍の最右翼と結成時の触れ込みが有名な部隊で、元はジオン残党狩りを目的にしていた。その彼等がネオ・ジオンに与するというのは、大いなる皮肉な光景である。また、旧エゥーゴには元公国軍パイロットが相当数おり、ハマーン・カーンの専横への反感から第一次ネオ・ジオン戦争末期にエゥーゴに転ずる者も多かった事もあり、ロンド・ベルにも元ジオン軍パイロットの経歴を持つパイロットは大勢いる。ティターンズは元々が国家憲兵のような権限も有していた部隊であるので、末期志願の若年兵以外はエリート層が多く、エゥーゴが実権を握った連邦軍がロンド・ベルを含めた手練を送り込むのも当然である。この辺りの事情は陸自にも共通する。陸自の場合は政治的に師団規模の派遣が国民から忌避されており、アイゼンハワーが自ら『連合国の要請なのだ』と国連で演説しなければ、与党政治家でさえも自衛隊の派遣を渋っていたほどなので、必然的に教導部隊や実働部隊の高練度者が装備ごと引き抜かれて旅団を構成した経緯がある。日本連邦になっても、長年根付いた『反戦』の風潮は日本連邦の足を引っ張っていると言えた。任務として戦死の危険度は最高潮であるが、金鵄勲章や武功章の授与により、現役時に栄典を得れる格好の機会であるため、志願数は多かった。話が決まるタイミングで金鵄勲章の廃止がまたも槍玉に挙げられたのも、左翼勢力のロビー活動だ。(これは60年代の一時金授与の際の国会でも言われていたが、まだ高官級軍人が生きていた頃に叙勲経験者がつけること自体は認める発言がされていた)しかし、金鵄勲章は名誉そのものの回復は自身が従軍者であった中曽根総理の時代(彼は元・海軍少佐)にされている。また、扶桑海軍は基本的に個人武功を表彰する文化が無く、金鵄勲章に頼っている現状である。これが攻撃され、武功章と功労賞の創設が場当たり的に行われる。海軍としては金鵄勲章を廃止されると、空軍に人気を取られるという危機感を持っていたからだ。布告された人事は海軍実働部隊の七割を空軍に吸収するというもので、空母航空団の母体予定の601航空隊すら入っていたので、顔面蒼白の軍令部関係者。当然、これに猛抗議が入ったが、『陸にいるのは空軍!』と門前払いであった。元々、井上成美提督が海軍の空軍化を目論んでの配置だったのが仇になった。これは扶桑海軍が艦隊を二次的なものにし、航空戦力を主力にしようとしていた昭和17年度の軍備整備計画の名残りであった。これは怪異との戦闘では航空部隊が主力であったがための政策だが、日本連邦時代を迎えると、『空母航空団に無理解だ』と攻撃される要因になった。熟練者が陸に上がった時期である不幸もあり、この決定は空母航空団の形骸化を意味する。井上成美が開き直って空軍に移籍したのは『自分の同位体が言った言葉で、鬼の首を取ったように叩かれるのは御免だ』と比叡にぼやいたのも関係しているが、それ以前に『海軍は海戦で勝てなかったら張子の虎』であると、敗北者である大日本帝国海軍の影が彼等を振り回したといえる。
――日本側主導のこの人事布告は海軍航空の形骸化を意味する。海軍は最低限度でいいので、陸上基地の維持を希望した。訓練用基地の一つは必要だし、輸送機の訓練なども必須だからだ。しかし、海軍基地の多くは民間空港への転用予定があり、そこでも揉めた。(厚木、小松、岩国、三沢基地は空軍の本拠を内定されていた。百里基地なども空軍の基地として再整備開始。この時の協議で岩国と厚木は日本同様の共用基地にされた。343空の西方進出の暁には基地が内定されていた松山基地は民間航空へ譲渡され、343空の後身の64Fは厚木を本土での指定基地にしていく)山本五十六は日本で評議会に参加中、武子の進言を受け入れ、空軍を有事に空母航空団で運用できるように体制作りを始める。これが空母航空団再建に必要な時間を稼ぐための急場凌ぎの案であった。新64Fに343空から転じた者が多いのもそれが理由で、志賀の代わりに坂本が飛行長に就く(出向)以外は九割方、64にそのまま移った。幹部人事は旧時代の隊員が幹部に昇格しているので、旧64と343空のハイブリッドというのが防衛省の評価だ。幹部は旧当時の分隊長級であった者中心でありつつ、厚木航空隊出身の赤松はいるので、珍しい他部隊出身者であると言える。幹部は序列は武子を戦隊長、先任中隊長がレイブンズ、飛行長が坂本と、順当な布陣である。赤松は階級で縛られない地位であるので、実質的に特別待遇である。これは元が特務士官出身であるのと、軍ウィッチ最長老の一角である彼女を使いっ走りにできる勇気はレイブンズにもないためだ。扶桑では兵卒上がりの特務士官は神様と崇められるので、それはウィッチでも同じだ。海軍の要望で『64Fに限り、海軍に籍を残したまま所属可能にする』という事項が決まったが、64Fの結成時には空軍へ343空の主だった者は移籍しており、遅きに失した感は否めなかった)これは海軍がいざという時に部隊長や教官として呼び戻すつもりがあったからだが、64Fが意図的に最前線に投入され通しであったため、この事項はほぼ64Fを空母運用するためのの言い訳と揶揄される事になる。また、飛行機のジェット化も再建が遅れた要因だ。また、芳佳や孝美などの有力者も『空軍所属の方が気が楽』ということで、空軍所属を選んだ事も海軍航空隊の改革に繋がる。これは個人戦功を部内で誇れないしきたりを芳佳が『時代遅れ』として嫌ったのも関係している。海軍はこの後、芳佳を海軍に留ませたいがため、海軍軍医学校に筆記試験だけで合格させる措置を取るが、ある参謀が留学を潰したのが海軍への不信のもとになった。そのため、黒江たちにも留学が取り消された際、怒りと呆れが入り混じった顔で『空軍所属になります』と表明している。これは留学して、欧州について間もなく、ティターンズに天城が襲撃され、ティターンズにトラウマを持つ参謀が独断で帰還指令を出してしまった(しかも山口多聞の命令を偽装)事、欧州の学校との国際的約束を参謀が独断で破ったに等しい事が関係している。宮藤一郎の遺児であるため、芳佳は海軍があの手この手で保持に努めていたが、参謀の独断でそれら努力の一切が水泡に帰す事になった。芳佳は海軍に席を残して所属することを恩師の一人である坂本の頼みもあり、留学をするのと引き換えにその願いを承諾していた。留学の取り消しは参謀が留学者が宮藤芳佳である詳細を調べないで起こした不祥事であり、これが海軍の不祥事として報道された事で、『彼の運命』は最悪の方向へ決した。彼は『天城の安全のためであって、けして宮藤芳佳中尉の夢を潰すつもりは…』と弁明したが、『一人の少女の夢を潰した』と非難され、彼はその責任を問われ、けじめとして懲罰がなされる。(命令書の偽造なので、禁固20年の刑が科せられたという)海軍大学校出のエリート参謀が罷免されて、禁固刑の後に軍籍抹消というのは『海軍の安易な見せしめの懲罰だ』という声も直後の左派の批判、後世の批判もあるが、当事者にとっては『宮藤一郎博士の遺児を有する』という点で、宮藤家の遺児というネームバリューは軍にとって重要な意味を持っていたからだ。芳佳は海軍の堅苦しい雰囲気を角谷杏としての記憶から敬遠していたので、空軍移籍は元から考えていたが、坂本の頼みで思い留まっていただけである。そのため、坂本が一時、そのショックで荒れたのはいうまでも無く、山口多聞(小沢治三郎の辞任後に司令長官へ就任)のしばしの頭痛の種であったという――
――黒江は転生前は声が低めで、外見相応のハスキーボイスであったが、現在は高めの声(調と同質)である。そのため、その前の落ち着いた声を覚えている坂本は違和感を覚えていたりする。これは転生前の時点でも友人だった故だが、長寿アニメなどでは年月と共に声優の交代は必然であることと似ており、坂本の助言で特技を活かすことにした黒江は、扶桑軍公認で、副業として知り合いの軍事評論家のツテを頼り、声優業+女優業を始める。戦間期は基本的にそれを主な収入源とする。黒江は元々、英才教育を施されたためもあり、10代から30代(本人の気が若い事もある)の少女から女性の役を主にこなしていく。軍人の片手間であるものの、元々の英才教育の名残りと転生で得た特技を活かし、演技力に定評を得ていくのである。
――ミーナ達の集まっている駐屯地の部屋―
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「そう言えば、少佐。黒江さんに声優業を薦めたって?」
「ああ。あいつの特技は軍以外でも活かせるからな。日本はちょうど大御所声優諸氏からの世代交代に差し掛かる頃だし、あいつはいろいろな声を出せる。それは戦闘以外にも活かせるから、薦めたんだ」
「黒江さん、のび太の影響でアニメや映画好きになってるから、丁度いいかもね」
「ああ。あいつは元々、声真似が上手くてな。転生したらそれが完璧になったから、戦間期はそれで食うつもりだったとは言っているが」
「まー、いいんじゃない?あの人、前史の戦間期は軍隊でやること無くて、持て余されてたし、黒江さんの精神状態があれなことは、今は軍の中枢にいる連中には周知の事実だし」
「副業は認められないんじゃ?」
「おそらく、黒江の場合は特例で認められるさ。扶桑出身で、勲功華族で、貴族院議員の資格がある。この時点で日本は持て余すよ」
日本は扶桑軍人の少なからずが勲功華族になる資格があるし、既にそうであるため、日本にいる場合の扱いで困っていた。華族という身分が既に存在しない時代になっていたので、新規にそうなった黒江は自衛隊で持て余され始めていた。(華族になったという事は、欧州での例を参考にするか、戦前の記録を参考にせねばならないこともあって)扶桑軍人は勲功で華族になる事がある。黒江は英雄であるため、若くして叙爵されたが、流石に反対論があったのも事実だ。そのために戦間期は持て余される人物の筆頭である。それは黒江自身、『平時には閑職にされそう』と自覚があるので、副業を考えている。その際の芸名は考え中とのことだ。(姿も変えるため)
「黒江には、戦争終わったら副業をしろと言ってある。三輪の台頭は江藤さんが空軍を立て直すに必要なプロセスだ。数年は副業に専念してもらう」
「少佐は海軍に?」
「その間は大人しくしてるさ。あいつはいちゃもん得意だったからな」
三輪守人。扶桑空軍の勃興期が終わった後に台頭するタカ派将校で、隠れ軍国主義者と揶揄されし過激な言動で悪名を後世に残す軍人である。トレヴァー・マロニーより世渡り上手であり、前史ではベトナム戦争で罷免されるまで君臨していた。今回の歴史では早期に排除するプランはあるが、三輪が専横をしなければ大義名分が得られない難点がある。少なくとも数年は様子見をせねばならないのも、三輪が用心深い事の証明だ。三輪は愛国心が軍国主義の方向へ暴走した軍人であり、大火力と誘導兵器に酔うのがお約束であり、Y委員会が早期に活動開始したのも、彼の動きを抑えるためだ。Y委員会が早期にその姿を見せる予定であるのも、彼を念頭に置いている。(Gウィッチの特権もそのためであり、全員がY委員会の議員である)
「そうだ。気になってたけど、黒田の奴、どうやってノーブルを取り込んだの?」
「それはな。B部隊のジーナ・プレディ中佐を味方に入れ、マリアン大尉を助けたそうだぞ。アルトリア王と一緒に。あいつ、王党派の黒幕に『戦ってやるさ……『人間』として、Gウィッチとして!』と啖呵切ったとかドヤ顔だった」
「何、その『555』がいいそうな啖呵」
「あいつに言ってくれよ。で、マリアン大尉が人を殺す事を咎めたら、『もう迷わない…迷っているうちに仲間を死なせるのは御免です。人相手に戦う事が罪なら、あたしが背負ってやる!!』と返したらしい」
「なんだよ、巧さんみたいつーか、まんまな台詞回し!」
「私に言うな、黒田に言え!」
坂本も苦笑いだが、仮面ライダー555/乾巧が発した名言を黒田が思いっきり引用していた。坂本の伝え聞いたところによると、黒江達は経緯上、昭和ライダー推しであるが、黒田は平成ライダーに共感するところが多いらしい。立場上、華族の義務などに疑念を持つため、平成ライダーに近いメンタルを持つらしい。黒田は風子の一件で自身が華族である事に失望したと前史から語っており、昭和ライダーとはある種異なる悲壮感も持つようになったと言える。黒田は黒江に仕えつつも、黒江達と異なる心理で行動を起こしており、ガリア王党派にスカーレットニードルを撃つなど、情け容赦ないドSな所業も行っている。そのため、お気楽極楽を装いつつも、前史の晩年に持っていた仲間想いで直情的に性格が変化しており、『教授』がロザリーを侮辱する一言をいった途端に3発もスカーレットニードルを打ち込んで苦しみ悶えさせているなど、マリアン、イザベルがキャラの変化に一番驚き、戸惑っている。口調も聖闘士らしいものになり、『受けろ、スコーピオンの牙を!』(ツッコまれたが)、『無駄だと言ったはずだ!』という往年のミロを想起させる口調を見せている。また、『屑が!人の事どうこう言える立場だと思ってるのか!!人を貶す前に自分を磨いて無いからそんな有り様なんでしょう!』と黒さを匂わせる笑みを見せつつ言い放つなど、アルトリア以外の全員が腰を抜かすほどの熱さを見せた事から、B部隊の面々からはヒーロー扱いされ、A部隊では恐れられた。マリアンはその時に、黒田を覆う黄金のオーラが甲冑を象る光を発している事に気づき、畏怖したという。また、その際にアルトリアがカリバーンで逃走用のUボートを一刀両断せしめ、黒田が臣下の礼を取った(形のみだが礼儀として)瞬間に、昏睡から目覚め、ジーナから事を知らされたロザリーが駆けつけたので、二人はその場の説明に苦労したという。
「むしろ、事後、どう言い繕うかに苦労したそうだ。アルトリア王のことは言えんし、かと言ってスカーレットニードル撃ちまくって、苦しみ悶える連中が転がってるんだぞ?それにマリアン大尉やイザベル中尉に見られている」
「あいつもドSだよなぁ」
「まだ王に斬られたほうが幸せだよ。スカーレットニードルで中枢神経系をやられて、苦しみ悶え続けるなど、怖いぞ」
「だから、マリアン大尉とイザベル中尉にしばらく避けられたって?」
「あいつ、『軽く殴った、当たりどころ、悪かった、なんか、のたうち回ってる』なんて、片言で誤魔化そうとして、マリアン大尉に「なんで片言風なんだよ!」ってツッコまれたそうな。それと。王の意識が顕現して、凛とした性格になったから、アドリアーナ大尉が不審に思ったから、彼女には黒田が移籍するタイミングで明かしたそうな」
「そうでないと、彼女は納得せんだろう。たしか、大尉は先祖がミラノを支配した経験がある一族だ。雰囲気がハインリーケ大尉と違う事に気づいたんだろう」
「しかし、ミーナ。分かるものなのか?」
「お前が彼女達の転生を雰囲気で察するのと同じさ」
ミーナは微笑むが、片膝上げて壁を踏む、まほとしての癖がでているといえる。覚醒前より格段に中性的な雰囲気を見せている。まほとしての凛とした中性的な雰囲気が出ているために、ミーナの姿でも、以前より落ち着いた大人の雰囲気の片鱗を見せる。パンツァージャケットなのもあるだろう。ミーナ自身が『以前のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケではない』と言ったのは、こうした変化が顕著に現れたからであろう。
「それにだ。王はカリバーンやエクスカリバーを持つ。伝説に詳しければ、それくらいは分かるし、以前の子供っぽさが消え、王としての威厳と風格を備えていれば否応なしに気づく。ノーブルウィッチにガリアが求めた全てを兼備する者が自分の過去を自虐的に見るのはド・ゴールの誤算だったのさ」
アルトリアは円卓を束められず、実子と相打ちになった過去を自虐的に見ており、それはド・ゴール、ひいてはガリアの誤算であった。日本の横槍もあり、部隊は結成されなかったのと同義に扱われ、黒田が501に招かれたのと同時にリベリオンの分裂が起こったため、全員を501に移籍させたので、経歴上存在しない部隊とされてしまった。ロザリーは嘆き悲しみ、それを知ったペリーヌは罪悪感に苛まれ、モードレッドの覚醒を促される。この混乱は『統合戦闘航空団の死産』とされるガリアの恥部となり、第二次ノーブルウィッチーズの理事国権が扶桑に渡る理由となる。その頃には大規模化した戦場には、部隊を大規模化しなければ立ち行かないという事情があり、ノーブル、アルダー、ブレイブの生き残り統合戦闘航空団をストライクウィッチ―ズへ一本化するのは自然な流れで、マイティウィッチーズも統合する案があったが、反対により、孝美の移籍と部隊運用凍結でバーターが取られた。また、サイレントウィッチーズは現役者のハルカを派遣すること、初代司令の智子がいることで人員派遣はなされた。(ビューリングは退役を取りやめているため、その頃には別部隊へ移籍済みだった)実質的にサイレントウィッチーズはその前身時代の人員で『送った』と判断されたため、智子の後任であるハンナ・ウィンド(ハッセ)はバツの悪い思いをしたという。後身となるサイレントウィッチーズのオリジナル・メンバーが一切派遣メンバーに選ばれず、前身時代の面々が引っ張り出されたのはハッセの本意ではなかった。だが、死亡率の高い戦場へ新生サイレントウィッチーズを送り込み、タイフーンウィッチーズやミラージュウィッチーズの二の舞となるのを恐れたマンネンヘイムが手を回し、智子の動きを見ているハルカのみを送り込むことにしたという政治的経緯がある。そのため、智子は書類上、初代司令だったため、同隊のエンブレムの使用が特別に許可されており、黒江もミラージュウィッチーズのエンブレムの使用が許可されていたが、二人は使用せず、旧64時代の塗装のみを使用し続けた。智子は離任した後に改変されたのを知り、黒江はそもそも上官がバダンの内通者であり、冷遇された思い出しかない、と言った理由で使用せず、その代わりに、本来は太平洋戦争時代で使用される新生64Fで制定される隼を象ったエンブレムをメタ情報でパーソナルエンブレムとして使用し、それが実質的にレイブンズや赤松のパーソナルエンブレムとされた。また、『扶桑空軍・第64特別編成航空師団』という、本来は戦中に使用するフレーズをデカデカとエンブレムに英語で記しているので、連合軍への扶桑の空軍編成の先行プロパガンダとして機能し、その責任者となる予定の源田をほくそ笑ませたという。
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