外伝その214『勇壮』
――ダイ・アナザー・デイでドラえもんは〔太陽の使者・鉄人28号』(二代目)、鉄人28号FXの投入を考えてはいた。だが、ほんもの図鑑のスーパーロボット編には取り出すのに時間制限という制約があった。それに気づいたので、コピーした機体を作る方向になったドラえもん。のび太がモンタナ級とアイオワ級をクロ、美遊の働きもあって、奪取に成功すると、ドラえもんは青年スネ夫に連絡を入れ、ほんもの図鑑から『太陽の使者・鉄人28号』を彼に与えた。お馴染みのスネ髪は青年期にはアフロヘアーに変えており、周囲の爆笑を買っているスネ夫。また、パーマがかかりやすい髪質だったのか、高校と大学時代までアフロヘアを保っており、少年期の髪型に戻したのは25歳頃であるらしい。これは周囲に不評だったのもあるが、敬愛する従兄弟のスネ吉に『僕の真似をしないで、自分なりにアイデンティティを持て』と諭されたかららしい。アフロヘアーの名残りで、少年期よりサラサラになっているが、2011年の大地震で父が勇退したことでの気苦労もあってか、よく見ると、若白髪が見え隠れしている。大地震で支社に大損害を被った骨川家。父親が社長を勇退すると、会社を継いだが、支社の立て直しなどで社会に揉まれ、気苦労が多いのか、妻は気が強いタイプではあるが、内助の功タイプである。
――連合軍軍港――
「やあ、スネ夫。数年ぶりだな」
「のび太、ドラえもんからの頼みとは言え、スネ太郎が生まれたばかりの時に連絡入れるなよ。ワイフに怒られる」
「すまんすまん。君のワイフにはウチのカミさんに連絡入れてもらうさ」
「いいなぁ、お前は恋愛結婚で。僕は政略結婚に近いしな」
スネ夫は恋愛結婚が家の事情で許されず、半ば政略結婚に近い結婚を25歳頃にした。しかし妻が内助の功を実践するタイプであった幸運により、長男のスネ樹、次男のスネ太郎を設けている。また、アメリカで成功した実弟のスネツグの資金援助で家が持ち直した事もあり、28歳ごろには往年の精気を取り戻していた。
「二人も倅を持っといて、いうか?」
「お前んとこみたいに、お前から五代の繁栄が約束されているわけじゃないしな」
スネ夫達はセワシとノビスケを知っているため、野比家が自分の代の死後も長く繁栄する事を羨ましく思っている。のび太のみが知っているが、剛田家はノビスケの子からの三代もどこかで野比家と姻戚関係になる。そのために23世紀になっても健在であり、気質はジャイアンのものとは言い切れず、ジャイアンの子『ジャイチビ』の温厚な面が強まっている。
「それだって五代の子孫が居るってだけでそれが絶対じゃないって冒険で身に染みてるだろ?なんの拍子で崩れるか解んないんだぜ?」
「そりゃそうだが、僕らの子孫の誰かが独身に終わる可能性だってあるんだ。しずかちゃんの家もお前と結婚してしばらくして再興するだろう?」
「カミさんの会ったこと無い従兄弟が名跡継いだだけだよ」
源家はしずかが結婚した後、遠い従兄弟である『静子』が名跡を継ぎ、のび太たちが30歳になってから台頭する。セワシのクラスメートだったしずかそっくりの子は、のび太としずかの直接の子孫ではない。彼女の血筋であり、本家筋に当たる。そのため、結果的に野比家・源家・剛田家・骨川家の原始時代からの不動の関係は23世紀には形を取り戻している。再興源家は本家筋になるが、しずかの血筋ではない。
「で、コイツを僕に?」
「敵へのブラフも兼ねてる。太陽の使者・鉄人28号」
「二代目鉄人28号か。初代はどうした」
「アレは安定性がなくて使えないそうだ」
初代鉄人28号は試作兵器にすぎず、操縦性がダメダメであるため、兵器としての完成度は高いとは言えない。しかし、当時の水準からすれば超兵器には違いなく、ドラえもん世界でも、超人機との連携前提で試作されていた、とある。海底軍艦ラ號、戦艦まほろば、超人機、鉄人28号。この四本柱が旧大日本帝国起死回生の超兵器だったのだ。しかし、超人機のほうが遥かに完成度が高いため、超人機のバックアップ計画が戦局の切迫で継続したと言えるような状況だ。鉄人28号は操縦型ロボの始祖であるが、それ故、ドラえもんは『太陽の使者』と『鉄人28号FX』を実用に耐えるとし、初代の初期版は投入をしない方針にした。ただし、敵への威圧には使用する事になり、ドラえもんの操縦で敵艦隊を撹乱する任務に使用された。
――数時間前――
奪取したアイオワ級の甲板上で、ドラえもんは初代鉄人28号をほんもの図鑑から出し、撹乱に使用した。クロもこれには驚いた。
「ドラえもん、あなたが鉄人28号を操縦するわけぇ!?絵面的にどうなのよ」
「今は気ぐるみ脱いでる素の状態だから、傍たらすりゃシュールだろうね」
ドラえもんは甲板に鉄人28号を立たせる。俗に言う青いカラーリングで、如何にもといういで立ちだが、全長12m。ミドルモビルスーツよりは大きいが、小型MSよりは小さい。重量もそれなりで、当時の陸戦兵器と顕著な差はない。
「意外に小さいわね」
「原作版設定だし。アニメ版はガンダムと同じくらいだけど、装甲の問題で甲板踏み抜く危険あったしね」
「どうして?」
「この時代、軽量合金は殆ど無いから、鉄で造るだろ?戦車砲に耐えられる強度で20m級兵器を覆うとねぇ」
「で、原作版の鉄人28号って重さは?」
「アニメも含めて、明確じゃないけど、30トンくらい。この時代の四式中戦車と同じ。だから、アイオワ級の甲板なら、立たせて問題ないよ」
「丸っこいのねぇ。なんだか、MSに比べるとずんぐりむっくりだわ」
「この時代の最新理論だった『避弾経始』に忠実だよ。だから、M26やM46の90ミリ砲なら余裕で弾くね」
「さあて、♪〜」
「あ、主題歌」
「これ歌わないとねぇ」
初代鉄人28号はリモコンのスイッチが入ると、連動して動力が起動する仕組みであり、動力に火が入った瞬間に『ガオ!』と咆哮する。ノッシノッシと甲板を歩いていき、海へ踏み出した瞬間に背中のロケットが点火され、飛行する。
「さて、試運転だから、僕もついていかないと」
「あ、そっか。有視界操縦型だっけ」
「そそ。タケコプター出してっと」
「アタシも護衛で行くわ。目標は?」
「救援に向かったモンタナ級を鹵獲することさ。鉄人28号を飛ばして、両用砲でも潰せばブルるって」
ドラえもんの作戦第二段階。救援に来たモンタナ級に鉄人28号を立たせて、その威容で降伏させる事。
「スネ夫に太陽の使者板を渡すよう、のび太くんにはいいつけてあるし、のび太くんには最強の鉄人28号『鉄人28号FX』を渡した。ほんもの図鑑の時間制限はあるけど、コピーして作れば問題ないさ」
さらっと言うが、ドラえもんはタケコプターで飛んでいる自分の視界が及ぶ距離を保って、鉄人28号を操縦している。初代なので、リモコンはかなりかさばる大きさだ。
「何?その漫画チックで古めかしいリモコン」
「この時代の電子工学じゃ、これで目一杯小型さ。後続機たちは色々違うしね」
「うーん……」
「クロちゃん、ENIACなんて、8ビットもない性能でテニスコートなんだよ、大きさ」
当時、リベリオンで稼働準備中のENIACはテニスコート一面を専有する大きさで、8ビットも性能がなかった。これでも40年代の列強の中では群を抜く成果であったが、21世紀水準のコンピュータが日本連邦に備わると、当たり前だが、一瞬で陳腐化した。同機や人力計算とは比較にならない高度な計算などを一瞬でこなせるため、日本連邦の兵器設計速度は嘘のように進展した。また、風洞試験などの設備も更新されたため、航空機などの風洞試験の効率も飛躍的に良くなった。兵器開発面の恩恵は計り知れないものであるが、兵器開発で欠陥が生まれる事がある日本を揶揄する扶桑軍需産業だが、彼等も先鋭化した兵器を多く作っているため、お互い様だ。そのため、用兵思想を変えるため、自衛隊は地球連邦軍にデモンストレーションを依頼しており、鉄人28号はその一環だ。もちろん、23世紀の『神を超え、悪魔を倒すための』スーパーロボットに比すればおもちゃに近い性能だが、スーパーロボットの始祖である所以を見せつけんと、鉄腕アトムの系譜に連なるドラえもんが操縦する。このインパクトは計り知れない。
「主砲さえ食らわなきゃなんとかなるさ!」
「つか、鉄人28号だけなのね?突撃すんの」
「これじゃひらりマント持てないじゃん」
「あ、納得」
コミカルにやりとりを交わしつつ、ドラえもんは鉄人28号をモンタナ級とその護衛艦隊に突っ込ませる…。
――ドラえもんが鉄人28号で撹乱に打って出た数時間後、雪音クリスは黒江の太刀筋を受け継いだ調の姿に、あることを思い出していた。それは、黒江が明確に切歌たちへ敵対を宣言した時のこと。リディアンの学園祭に潜り込み、堂々と優勝を掻っ攫った直後であった――
「みんなありがと〜!愛してる〜!」
学園祭でシンフォギアのエクスドライブ姿で歌い終え、ご機嫌の黒江。当時、黒江は調の姿になっており、周囲からは調と思われていた。だが、黒江が聖闘士である事により、堂々とシンフォギア姿で生活し、更に善行を重ねていたために『日本の新たな装者か?』と裏では囁かれていたのも事実である。つまり調が『マリアと切歌と同じ一味にいた』事実は黒江の入れ代わりで上書きされたと言っていい。切歌は勘違いからの暴走が顕著に表れた時期であるので、その場に居合わせ、場の空気が読めない行動を取ろうとしたのは、『純粋な善意であった』。
「調、今度こそ、マリアやマムのところに戻るデ…」
「黙ってろ、坊主!人が余韻に浸ってんところにしゃしゃり出てくんじゃねぇ!」
黒江はこの時、切歌に初めて素を見せた。調当人が用いるはずのない荒々しい言葉づかい。そして、よく見れば容易に判別可能な立ち姿。しかしそれは、当時の切歌にとっては勘違いをますます深めるだけであった。ステージに立つ黒江。観客が騒然となる中、黒江は比較的簡単に切歌を脅すことにした。それは。
「やっぱり、フィーネに乗っ取られたんデスね!?」
「バーロー!フィーネが江戸弁使うかよ!」
黒江は素をすっかり出していたので、見かけにそぐわない江戸っ子的な言葉づかいである。元々は薩摩だが、東京暮らしが長いため、江戸っ子的気質を持つようになったらしい。そして、黒江の怒りを象徴するかのように、拳に紫電が飛び散っている。ライトニングプラズマの態勢だ。
「オレはフィーネでもねぇし、お前の言う月読調でもない!それを骨身に染みさせてやる!ライトニングプラズマ!!」
ライトニングプラズマは黒江の力量であれば、シンフォギアを纏った状態でも放つ事が可能である。当然、観客席にいた響達、歌の余波でシンフォギアを強制起動させられた翼でさえ、その瞬間に何が起こったかを理解はできなかった。一瞬の出来事であり、切歌は空中を舞った後、頭からステージの床に叩きつけられる。
「盛り上がってんとこに茶々いれるもんじゃねぇぜ、ボウズ」
加減はしてあるが、それでもしばらく動けないダメージは食らわせた。それでも、黒江は一応、自身のロッカーもかくやの進行ぶりでステージを終わらせた。その事もあり、後にリディアンで伝説めいて語られた。歌ったナンバーがハードロック主体だった事、ギターの引き方もプロ級(フロンティア船団滞在中にグレイス・オコナーに頼んで、シェリルのバックバンドなどに入れてもらったりした経験から)であった事による。ポップや演歌はリディアンの学園祭では珍しくないが、黒江はFireBomberのファンであるため、ハードロックやブルース、グラム・ロックを軽々とこなす。オズマ・リーの布教の餌食(?)になった人間であり、ランカからオズマは大目玉を食らっていたりする。しかしながら、風鳴翼すら唸るほどの歌唱力と、フォニックゲインの可視化と容易にそのエネルギーでエクスドライブとなったのは、当時の三人の装者を驚愕させるに値した。観客が立ち去ったのを見計らい、翼が挑んできたが、黒江は斬艦刀を出現させ、翼の袈裟懸け斬りをねじ伏せる。
「ふむ。意気込みや良し。だが、青い。オレと打ち合うには10年早い」
斬艦刀で天羽々斬のアームドギア(太刀状)をあっさりとはたき落とす。剣の試合は未経験であり、そもそもが長兄と次兄の稽古を見ていて、長兄に促されて竹刀を取ったのが原点である黒江だが、実戦では赤松と若松、ハルトマン以外には負けなしの剣客である。ハエたたきの要領で天羽々斬をはたき落とした。翼は衝撃を受け、ワナワナと震えている。実力差を改めて実感したのだ。これ見よがしに、翼に斬艦刀の切っ先を突きつけてみせる黒江。挑発ではない。戒めだ。
「えーと、風鳴翼、だったな?ガキンチョにしてはいい筋の剣だが、これ見よがしに袈裟懸け斬りのモーションするのは止めときな。達人には隙だらけだぜ」
実際、黒江やハルトマンほどの達人になると、いくらスラスターでスピードを高めようと、人間が剣を振るうタイミングはその人間の癖に依存する事を理解している。そして、日本の太刀はある程度は振るい方を守らないと、うまく斬れない。黒江は翼の必殺と確信するタイミングに合わせ、斬艦刀をハエたたきのように使い、はたき落としたというわけだ。
「今のは利き腕じゃないんだぜ?お嬢ちゃんよぉ」
黒江は利き腕が右であるため、左で斬艦刀を持つ。右はエクスカリバー用であるからだろう。それと左のエヌマ・エリシュを封印している証でもある。
「お前の力じゃ、押し切ることはできないな。上段から打ち込むのを必殺にするんなら、示現流でも習いな」
「九州の最強剣を何故、お前が…」
「示現流の免許皆伝だからだ、阿呆が」
黒江は他の次元では古流剣術を習っているが、この世界では薩摩武士の流行りともされる『示現流』と組手甲冑術であった。それを極めた状態で比古清十郎と斎藤一には子供扱いであったため、示現流には依存していない。斎藤一は『犬娘、お前ほどの使い手は幕末には腐るほどいた』と残酷なようで、意外に発奮を促す事実を述べている。使い魔が薩摩犬であったので、斎藤一は『犬娘』と呼んでおり、転生を重ねた黒江が未だに勝てない相手の一人である。
「他にも免許や師範持ってる流派も有るが、色々とな」
「色々と、だと……」
「オレは強くなりたいがために、色々な流派の門戸を叩いたんでな。クリスから話聞いたか?俺が実年齢ものすげぇって事」
「ごめん、ばーちゃん。まだ言ってねぇ」
「そ、そうか。オレは1921年生まれの後期高齢者なんだ」
「ま、待って!1921年って言ったら昭和……」
「馬鹿、昭和より前だ!」
クリスが響にツッコミを入れた。黒江は1921年生まれ。1944年当時で23歳前後。2015年では90歳を有に超える。つまり普通に生きていれば、後期高齢者にとっくのとうになっているのが普通だ。しかし、今の容貌は10代半ばと、実年齢より遥かに若々しい。
「そうだ。お前らのひいばあさんでいいくらいの年齢差あるぞ。45年で24歳くらいだしな」
「えぇ!?どうしてそんなに若い外見なの!?」
当時、錬金術で若さを保っている者の存在は知られていなかったため、黒江の実年齢と外見の乖離は充分に驚きの対象だった。最も、錬金術で1000年近く、20代の外見を保っていたサンジェルマンの例が後に出るものの、錬金術を使わずに素で肉体の若さを保っている点では及ばない。
「まあ、色々事情があってな。これでも旧日本軍の将校だ。戦争に行った世代だってこった」
「その割に、現代人っぽい…ですね」
「生まれた時代が大正ってだけだからな。それと、事情があってな。今はそこで伸びてるガキの友達の姿になってるだけで、本当の姿は別だ。それでも16歳くらいの外見だけどな」
この時に初めて、自分には真の姿がある事を示した黒江。この時は正真正銘の調そのものの姿であったが、本来の姿の片鱗を見せるかのように微笑んだ。
「秘密が良いかな、それともマ・ホ・ウ、とか?」
「はぁ!?」
当然、呆れた顔を見せたクリス。その時の事を思い出したようだ。
「――そう言えば、ばーちゃん。あの後、どうしたんだ?ほら、学園祭の後」
「あの後なら、そのままバイトに行ったよ」
「エクスドライブのままでバイトかよ」
「まー、力を加減しないと、すぐなるからな。ただ、翼のやつ、あの後どうしたんだ?」
「先輩なら、ギアがしばらく解除できなくなったってんで、二日くらいガッコ休んだぜ」
「あいつは変に開き直れんからな。まー、あれだけのサウンドエナジー食らったんだ。ギアの機能異常が起こって当然かもな」
「さらっと言うなって……。ん!?」
クリスたちの上空を『太陽の使者・鉄人28号』(二代目鉄人28号)が颯爽と通り過ぎていく。濃い青色のカラーリングと左腕部の『28』のマーキングが判別可能であり、また、初代よりメカメカしいデザインの頭部もあり、28号の正統な派生個体である事を誇示していた。
「ありゃ、鉄人28号ぉ!?」
「あれは太陽の使者版だ。要するに二代目だよ」
「そう言えば、前になんかで見た時よりメカメカしく見える…」
「三代目のFXなんて、原型残ってないぜ」
「……つーか、鉄人28号がなんであんだよ!」
「ドラえもんがほんもの図鑑から出したんだよ。ああ見えて、操縦型スーパーロボットの始祖だぜ」
「よーするに、ラジコンのデカイヤツだろ?あれ」
「日本軍の起死回生の秘密兵器だったんだぞ?あれを量産して、ワシントンだがニューヨークに送り込む計画だったそうだ」
「どうやって運ぶんだよ」
「富嶽って超重爆に乗せて空挺降下させる案が有力だったそうだ。日本軍はオーバーテクノロジーを44年から使用し始めたが、時すでに遅しだ」
初代鉄人28号は旧日本陸軍起死回生の超兵器とされていた。重機の代わりがせいぜいともされるが、本土決戦が起こった場合、M26パーシングを蹴散らしまくり、米軍を震撼せしめたのは確実視されている。それと別個体の太陽の使者はより進んだ技術で製造されているため、戦闘力は初代より格段に上だ。
「二代目は戦後しばらくたった後の時代で作られているから、初代より格段に強い。一般には太陽の使者で通じる」
「二代目?三代目もいるのか?」
「初代鉄人28号の操縦者の金田正太郎が息子を設けた後で製造した後継機『鉄人28号FX』。戦闘力で言えば、それが最強になる」
正確に言えば、初代とFXの間の関連性は薄いが、初代を設計した金田博士の子である金田正太郎が設計したという点では血統を受け継いでいる。ある意味、ドラえもんは新旧鉄人28号を一堂に会させたという功績を残したわけだ。
「だー!なんでもありじゃねぇかぁ!」
「そりゃ、ドラえもんはほんもの図鑑持ってるし、なんでも出るぞ。『お話図鑑』からウルトラ○ン出しそうだし」
「チートだろ、それ!」
「ドラえもんが図鑑もってりゃな。未来デパートからスーパーロボット図鑑は買ってたみたいなんだけどな」
ドラえもんがほんもの図鑑をどこまで買っていたかに依存するものの、だいたいは揃うらしい。
『黒江さん、そっちにほんもの図鑑『スーパーロボット編』から紅蓮聖天八極式を出して、そっちに送りました!シャーリーさんに受け取るように!』
「サンキュー、のび太!!シャーリー、紅蓮聖天八極式が送られてきた!空中で飛び乗れ!」
「了解!つか、あれはリアルロボットじゃね?」
「この際、その違いは気にすんな!」
シャーリーはISを展開し、そのまま飛行して機体に取り付き、のび太がインプットして送り込んだ紅蓮聖天八極式のコックピットハッチを開き、ISを解除して乗り込んだ。服装は普段の服のままだが、気分づけにバンダナを巻いている。この時が始めて、シャーリーがナイトメアフレームを動かした戦闘であった。この時に使用した紅蓮聖天八極式はほんもの図鑑から取り出した機体であるが、その戦闘力は作中最強クラスと評されたため、MSや機械獣に引けを取らなかった。
「やれる……この聖天八極式ならっ!」
どこかで聞いたような台詞回しで、カメラアイを点灯させ、シャーリーは機械獣に戦いを挑んだ。機械獣とナイトメアフレームはおおよそ、赤ん坊と大人ほどの差の体格差があったが、小型である故に小回りが効き、なおかつIS以上の攻撃力と防御力を持つため、そこは搭乗型人型機動兵器の利点と言えた。
「消えろ、機械獣!」
機械獣の超鋼鉄も、『輻射推進型自在可動有線式右腕部』からの輻射波動機構を使用されては為す術もなく弾け飛ぶ。コズミック・イラでいうサイクロプスや、一般家庭の電子レンジの原理を兵器として使用するのが輻射波動機構である。紅蓮聖天八極式の出力であれば、機械獣にも通用する。ただし、マイクロ波加熱の応用であるため、超合金Zやゲッター合金などの『通常の金属を超えた熱耐性のある金属には通じない』。その辺りは使用原理の限界もあるが、超合金の耐久性の証明である。
「でかけりゃ勝てるってもんじゃないぜ!おりゃあ!」
エナジーウイングの速度で勢いをつけ、機械獣の頭部を蹴り飛ばす。紅蓮系は輻射波動機構の関係で腕での格闘に難があるため、蹴りは有効な格闘戦術である。何気にモーションが回し蹴りであり、サイズの割に耐久性があるのもナイトメアフレームの利点である。小型なので、機械獣も捕獲しようと手を伸ばすが、呂号乙型特斬刀でたたっ斬られる。しかし、機械獣を制御する者もさるもので、ハリビューンV6の武器である銛の鎖を紅蓮聖天八極式に巻き付かせ、拘束する。シャーリーは振りほどそうとするが、何重にも巻き付けられ、エナジーウイングの推進力でも微動だにしない。同機はそのまま頭部からミサイルを食らわせようとするが、飛来したスピンソーサーがチェーンを切り裂く。
『そこまでだ、機械獣!シュゥートイン!ダイザーゴー!!』
飛来したUFOロボグレンダイザーがそのまま参陣し、ダブルハーケンでハリビューンを両断する。紅蓮聖天八極式を絡め取っていた鎖はグレンダイザーが外したり、引きちぎる。
『サンキュー、大介さん。助かったぁ』
『油断大敵だぞ、シャーリーちゃん。機械獣にはああいう拘束を行う奴が多いからな。相手の出方をよく見るんだ。甲児くんからの連絡で加勢しにきた。俺が前面に出よう。君は俺や甲児くんのサポートに回ってくれ』
『あんたらの敵だもんなー、連中』
『鉄也くんと號達はヒスパニアに向かったから、ここは俺と甲児君で支える。まずは敵の第一波を退けることを考えるんだ』
『了解!まさか、聖天八極式を拘束できる速度の銛撃てるのがいるなんて』
『連中は真ゲッターロボやマジンカイザーとまともに戦うために機械獣の改良に励んでいる。紅蓮聖天八極式の速度なら追従できんこともないはずだ』
『紅蓮可翔式なら、捕まえられてやられてたなぁ』
『何、甲児君もダブルスペイザーができるまでは雀の涙くらいの戦力のTFOで頑張ってたんだ。それを思えば、紅蓮可翔式も捨てたものではないさ』
グレンダイザーと紅蓮聖天八極式が並ぶ。サイズ差があるため、紅蓮聖天八極式は飛行した状態だ。
ちなみに、マジンエンペラーGと真ゲッターロボを組ませたのは、宇門大介にゲッターとの共同戦線の経験がなく、鉄也の方がバディに最適であり、デューク・フリード自らが判断した事だ。
『鉄也君、ゲッターとのコンビネーションはきみの方が経験が有る、號君達を頼めるか?』
『解った、甲児君、ダブルマジンガーと洒落込みたかったが、大介さんと近場を頼む、こっちはフルブーストで敵陣の裏へ回り込む、號!行くぞ!』
『応!任せろ!いそぐなら翔、お前の出番だ!」
『いくぞ!チェェンジ!ゲッター2!』
鉄也と二代目ゲッターチームはヒスパニアへ向かい、イタリア半島にはグレンダイザーとマジンカイザーがいる。なんとも豪華だが、ブリタニア本国ではゴッドマーズが無敵ぶりを見せ、地中海ではダンクーガとジーグが戦い、大西洋では超電磁兄弟と闘将ダイモスが戦いを繰り広げている。彼等の奮戦を以ても、敵の物量は凄まじく、ガイアの邪魔大王国、アースの百鬼帝国、ミケーネ帝国らがバダンと手を組んでいるらしく、ハニワ幻人、百鬼メカ、戦闘獣に機械獣の大盤振る舞いである。更にはメカザウルスまでも。そのため、ティターンズだけが敵とも言えない状況となり、のび太が緊急でシャーリーに紅蓮聖天八極式を送ったのだ。
『おいでなすったぜ、機械獣、メカザウルス、ハニワ幻人、百鬼メカ共の大盤振る舞いだ』
『わーお……機動兵器はあたしらの領分だけど、目が回るぜ』
「あたしもフォボスを取りに戻るわ。それまで時間稼ぎ頼むわ!」
『なるべく急いでくれ。俺たちも絶え間なく攻撃されると、不味い。機体が持ってもパイロットがな』
智子はすっかり烈将フォボス(闘将ダイモスの準同型機)に馴染んだようだ。取りに戻るといい、その場を駆け出す。
「15分で戻る!」
黒江と調、圭子はもっぱら怪人軍団相手なので、智子が行くのである。クリスの援護射撃を受けつつ、智子は烈将フォボスを取りに戻る。調はジーグさんとガイちゃん・ザ・グレートに背中を任せている。単独でも戦える英霊たちと違い、まだまだ若輩者であるので、二人が背中を守る必要がある。シュルシャガナを構え、刀身に炎を纏わせる。智子のそれより温度は低いので、赤い炎だ。(青い炎のほうが温度が高い)歴代仮面ライダーや宇宙刑事、何人かの戦隊レッドら、そして三人の英霊と、レイブンズを筆頭にするGウィッチ、ロボットガールズ。彼等が強大な敵に立ち向かっていく中、青年のび太も最強の鉄人28号『鉄人28号FX』を起動させる。あちらこちらでスーパーロボットの咆哮が響き渡り、ドラえもんとのび太、スネ夫が歴代鉄人28号を駆使する。いよいよ以て、敵味方ともに戦力のインフレが始まった感が否めないが、敵はラ級『ソビエツキー・ソユーズ』、『ガスコーニュ』を温存している。いずれも強力なラ級である。
『のび太から情報通信。敵はガスコーニュとソビエツキー・ソユーズを控えさせているようだぜ』
『ガスコーニュ?』
『確か、フランスがリシュリュー級の後継として考えていた後継艦だ。ラ級として完成しているなら、侮りがたい敵だ。ガリアが見たら血の涙流すぞ』
デューク・フリード(宇門大介)の言う通り、ガリアが完成させられずじまいのガスコーニュは元々、リシュリューの改良型として用意されていた。主砲のカタログスペックは長門型戦艦以前の日本艦を一撃で貫くとされる強力なものだ。しかし、ガリア/フランスの砲塔共通の悩みとして、故障が起これば、カタログスペック通りの発射速度は発揮できないという点はある。そのため、日本もフランス艦を戦力に数えていない節がある。ペリーヌは憤慨しているが、空母がベアルンのみのガリアはこの戦いでは戦力と見做されてすらいない。実際、ベアルンは日米空母より遥かに小さい上、古い。後継のジョッフルが間に合わなかった関係で、空母機動部隊の保有にガリアは失敗した。ジョッフルは革新的なアングルド・デッキを採用していたため、完成していれば各国の注目を集めたが、その技術はブリタニアに渡ってしまい、クイーン・エリザベスU改装空母『アルビオン』に使用される。日本連邦の空母はこの時期、未来からの購入も多いため、自前で造るアングルド・デッキ装備空母は竣工時ではキングス・ユニオンのアルビオンが初だ。ベアルンはあくまで旧式の空母であり、加速度的に大型化する空母で日本連邦、キングス・ユニオン、リベリオン合衆国の後塵を拝するガリア。フランスが国内治安の悪化でガリアに援助を差し伸べれる状況でもなかった事もあり、クレマンソー級航空母艦の装備が遅延する。クレマンソー級は国力が疲弊したガリアが持てる空母としては大型に入るが、既に超大型空母の時代が見えている中では中型だ。また、この時期のペリーヌが『軍備より国土復興を!』を叫び、軍備整備を結果として遅延させたので、クレマンソーの建造と整備はアルジェリア戦争には間に合わなかった。ペリーヌの最終階級が佐官止まりなのは、アルジェリア戦争などの敗北で重軍主義者の不興を買ったのも理由に入る。しかし、ペリーヌはモードレッドの好戦的な性格にしばらく難儀しており、アルジェリア戦争に参戦しなかったのは、モードレッドとなることで起こり得る戦争の泥沼化を避けたかったからだ。また、『対艦攻撃機の母艦だから、中型でいい』とこの時期からドクトリンを持っていたが、日本連邦やキングス・ユニオンが大型空母を揃えて、大海原を股にかける空母決戦を繰り広げる様への対抗意識もあるのは事実だ。カールスラントはこの時期には自国式艤装の鹵獲空母の運用に傾倒し、扶桑から購入したペーター・シュトラッサーを返還するに至るが、メッサーシュミットMe262のライセンス料やペーター・シュトラッサーの放置で扶桑の逆鱗に触れたため、多額の出費を余儀なくされた。更に新京条約で軍備に制限がかけられてしまうのをガリアはチェックしている。ガリア軍はこの期にカールスラントへの洋上戦力の優位を持とうとし、クレマンソー級航空母艦に傾倒した。だが、ペリーヌの反対により、数年以上起工が遅れ、結果的にアルジェリア戦争に間に合わず、ペリーヌは議会や軍部に敵を作ってしまう。ぺリーヌは基本的に、ガリアに非がある、もしくは大義名分がない戦争には信念を持って従軍しなかった。だが、レイブンズがアルジェリア戦争に従軍し、ガリア軍を震撼させる活躍を見せたので、ペリーヌはそれを阻止し得た実力者と目されたのもあり、国民にも不興を買う。それがペリーヌの軍歴を終わらせる要因とも言える。モードレッドとしての姿を持つ事がド・ゴールの意向で伏せられた事もあるが、ペリーヌは釈明のため、モードレッドとしての姿をカミングアウトし、『義も利無い戦に出向くのは阿呆だ』と批判を一蹴する。太平洋戦争に従軍した一方、アルジェリア戦争には従軍しなかったことはペリーヌに敵を作る事となったが、モードレッドとしてはアルジェリア戦争後も現役軍人であり、モードレッドとしては将官に登りつめたという。
『独立したいってんなら貸しを一杯付けてさせりゃ後の利権でウハウハなのにごうつくばって力で抑えたら負けりゃ今までの投資も含めてパーだぜ?頭悪りぃんじゃねーか?』
モードレッドはペリーヌの体を借り、ペリーヌを批判者から物理的に守る一方、こうした発言でペリーヌへの世間の批判を沈静化させるため、ガリアの騎士を自称したという。円卓を崩壊させたという批判もあるが、アーサー王と殺り会えたという点で羨望も浴びる存在であるため、ガリアの騎士に彼女がなることは賛否両論であったとか。また、ジャンヌ・ダルクは現住所が23世紀なため、ガリアに与する時もあるが、基本的に地球連邦軍の人間なので、基本的にモードレッドやアストルフォに任せてあるため、アストルフォのアホさにガリアの軍出身者は『なんでアホの子がウチ在留なのー!?』と嘆き、アストルフォを大いに憤慨させたという。
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