外伝その319『日本の禊』


――戦況はバダンや地下帝国、それと手を組むマジンガーZEROの動きで細かい部分は慌ただしく動く。21世紀国家群の軍縮への圧力は戦時状況のウィッチ世界を混乱に陥れるだけであった。連合軍を混乱に陥れたと非難された日本は防衛省制服組の提言を受け入れ、言い訳がましいが、廃棄を恐れて、防衛省が秘匿していた自衛隊の『超兵器』(核戦争や害獣駆除を名目に、80年代から脈々と開発していた、オーバーテクノロジーを部分的に導入した兵器)をウィッチ世界で使用することを始め、あまり増員がままならない通常部隊を埋める増援として続々と送り込まれた。そのため、量産されていたメカゴジラが敵艦隊を蹂躙するわ、スーパーXVが敵部隊を冷凍光線で凍結させるなどの戦果を挙げる形で、連合軍への禊を始めた。統合戦争で失われた技術が使用されている兵器も多かったため、それが自衛隊のセールスポイントとされた――



――ルシタニア攻略へ向けての政治的アピールの意味も込められた自衛隊の秘匿兵器の投入。23世紀(21世紀世界は『超文明』と呼んでいるが)へはラ號の承諾なしの運用を非難し、連合軍には軍縮へ圧力を一部がかけ続けている事への非難への回答代わりに投入されたそれらは、第二次世界大戦の水準を超越する技術による力を存分に発揮。第二次世界大戦とそれに毛が生えた程度の能力の兵器を蹂躙。運用部隊も特殊編成の部隊で、表向きの編成にはない部隊で占められている。黒江も、統括官に登りつめた後で存在を知らされたほどに完璧に隠匿されていたそれは自衛隊の長年の努力と、旧軍が秘匿していた技術が完成し、更に発展される形で存続していた証でもあった――


――日本自衛隊の秘密兵器『メーサー殺獣光線車』。表向きは害獣駆除用とされているが、実際は学園都市の反乱を逆に鎮圧するべく開発されていた。その学園都市が内部のゴタゴタで力を失ったため、目的が失われたまま死蔵されていたが、ついに投入された。秘匿されていた幸運で政治家にも非難されないためもあり、現有している全ての車両が投入された――


「なんだ、あの戦車は!」

「光線だ、光線を撃ってくる!!」

リベリオン軍にとって、メーサー殺獣光線車の系譜に位置する『92式メーサータンク』はどんな戦車の装甲も貫く光線を撃つバケモノに見えるだろう。『95式ツインメーサータンク』などもあり、自衛隊が景気の悪化する時代までに、陸自機甲戦力の強化にかなりの予算を費やしつつ、学園都市の技術をも超える水準の旧軍の秘匿技術を更に発展させた事がわかる。政治家の把握していない戦力を陸自が隠し持っていたのは問題だが、増援を出し渋って、連合軍に赤っ恥を晒した防衛省の尻拭いのため、黒江が松代の秘密格納庫でモスボール保存されていたこれらを復活させ、投入させた。陸自はこれで政治的失点を一挙に取り戻し、連合軍に攻勢を決議させる要因となった。自衛隊の超兵器は想定された相手が時代の変化で無くなったものの、ウィッチ世界でその真価を存分に発揮。プリキュアや仮面ライダー達がいなければ、戦線は崩壊する。そんな陰口が叩かれる要因を作った日本の左派政治家たちはまさか、アメリカ相当の国家を欠く状況に連合軍があり、それに次ぐ立場に扶桑がある事に驚いており、自衛隊を一方的に責めるだけであった。――





――この頃の扶桑は43年半ばに発令されていた『今次欧州大戦における扶桑海軍第三段作戦』で海軍の主力戦力を基地航空隊とする方針であったため、それが半ばに達した段階で、育成した空軍力を根こそぎ取られるとは夢にも思っておらず、施策の旗振り役の井上成美も史実の自分への批判に憤慨し、やけくそのように空軍へ移籍するなど、海軍航空は人的にも大打撃を被っていた。それを補うのが実戦経験のある義勇兵であり、義勇兵が生え抜きを扱くのが日常になりつつあった。この過程で、特務士官や下士官の出の実戦経験豊富な義勇兵が経験を積んでいない扶桑生え抜きの兵学校卒の士官を見下す光景も表れていたため、義勇兵達を尉官に任じる事でバランス取りが試みられていた。また、角田覚治や山口多聞などの闘将タイプが持て囃されるのに、栗田健男や宇垣纏のような保守的な思想タイプの提督が中央から遠ざけられているのに対する批判も扶桑の部内にある。(南雲忠一や木村昌福など、その操艦術を評価され、立場を得た人間もいるが)また、扶桑では功績があるはずが、同位体の行為を理由に、空軍の中枢への推薦枠から外された大西瀧治郎の例もある。そのパニックで海軍中枢は混乱しており、サボタージュへの統制すらままならない状態に堕ちていた。戦線の実働兵力は義勇兵部隊であり、64Fと一部の空母航空部隊のみが扶桑の意地を見せているのは、大いなる問題と見られた――






――日本は10式の代替に、メーサー殺獣光線車の系譜に位置するメーサータンクを投入した事で、リベリオン軍を恐怖のどん底に陥れた。某怪獣王には効果が無くとも、対人では無敵に等しく、数がない通常戦車よりも戦果を挙げることとなった。メーサー兵器は日本陸上自衛隊の切り札であり、対学園都市部隊用に用意されていた。だが、時代の変化で、松代の地下の旧軍時代のものを転用した格納庫で永久に死蔵されるかと思われた矢先に『正規部隊の装備でない』事から、黒江が引っ張り出させた。陸自としては大万歳だろう。バブル時代に、旧軍の研究を継承して発展させた事の成果が21世紀に実証されたからだ。(原理的には誘電加熱や冷凍で、加熱して装甲を融解させたり、冷凍する)装輪戦車の一種であるが、最新鋭のはずの16式機動戦闘車より活躍しており、メーサータンクが公にされた事で、機動戦闘車の調達に悪影響が生じる事態になったのだが。だが、93式メーサー攻撃機も投入され、陸自が一応の航空戦力を有する証明をしてみせた事は政治家との間で論争になり、『航空機だろ!』、『ヘリです!!』という論争が繰り広げられたという。(年式が93式なのに、やたらとハイテクなのは、バブル時代の産物であるからで、それが政治家に責められる事になったのだが…)――


「……ふう。見ろ、このメーサー兵器の山を!のび太のいる世界の自衛隊の秘密兵器だ!」

黒江が陸上幕僚監部などを脅して、松代の秘密格納庫から引っ張り出したメーサー兵器達。モスボール保存されていたのを再整備/近代化改修させて投入させたため、戦果は旧式の74式戦車や『コブラ』戦闘ヘリコプターを上回った。『コブラは退役が迫り、アパッチ・ロングボウはお話にならないくらいの数しかない陸自が引っ張り出した』のが、メーサー攻撃機であった。陸自所管であるため、ヘリコプターに正確には分類される。降着装置がスキットであるなど、ヘリコプター要素があるが、胴体は航空機の形状であるため、存在が公にされてからは『降着装置を車輪にして、空自に移すべき』という声が絶えない。この頃、F-35初の墜落事故が2019年で起こった事から、防衛予算のさらなる圧縮の声が上がっており、ダイ・アナザー・デイの状況が日本になかなか理解されない状況にあった。自衛隊の秘密兵器をフル動員させたのは、この機会に、防衛予算の削減を懲罰的に迫るであろう財務省に対し、先手を打ったと言っていい。秘匿されていたので、正規の自衛隊の一線部隊に配備されておらず(過去に制式化されていたので、遡って、部隊使用許可は出ているとされている)、自衛隊の一部しか本当に知らなかった兵器と言っても、製造から何十年も経っているはずなのに、2019年当時の最新鋭兵器が霞む性能を持つ事は官僚や政治家を驚愕せしめた。その事から、旧軍の超技術の存在が公に知られ、オーバーテクノロジーを戦争で追い詰められてから(マリアナ沖海戦敗北)、その使用を決断した東條英機へ非難が集まってしまった事は否めないが、東條英機としては『オーバーテクノロジーは一発逆転の切り札であるからして…』という彼なりの倫理観と技術育成を狙っていたという、至極もっともな理由があり、21世紀で既に死んでいる彼を責めるのは、筋違いであったのだが…。


「怪獣映画で見たみたいな奴ですね」

「つか、まんまだよ。いずれ、お前へのご祝儀は用意するよ」

のぞみは黒江と智子の勢いに押される形で婚約した。すぐに結婚とならなかったのは、準備期間を設けろと、55歳のしずかが二人にストップをかけたからだ。(挙式は芳佳が挙式を挙げた数ヶ月後に行われたという)

「ありがとうございます。でも、こんなの、いつ用意したんですかね」

「バブル直前からバブルの崩壊期にかけての10年くらいの間に、金にもの言わせて用意していたやつらしい。学園都市の反乱を鎮圧するのを想定していたらしいが、バブルが弾けた後に、大蔵省に『金食い虫』と言われる事を恐れたり、旧日本軍の秘密研究を継承して、黎明期から続けていた事の後ろめたさもあって、松代大本営の秘密格納庫で大量に保管されていたんだそうだ。俺がラ號の資料や超人機メタルダーとかの調査で松代に行った時に見つけて、統合幕僚監部を脅して、メーカーに近代化させて持ってこさせた。バブル時代は害獣駆除名目でメーサー殺獣光線造れたのか、と思うよ」

基地に配備されたメーサー兵器の山。基礎設計や製造は、日本がバブル時代を謳歌した1980年代後半期から1990年代前半期。21世紀の軍事常識からすれば、さほど古い設計ではない。当時の技術水準を超越した装備であるが、近代化の余地も残っており、タンクはベトロニクスが最新のものに交換されている。また、21世紀最新の技術水準の電装系に交換、エネルギー発生効率の改善で連射速度が向上しているなど、地味に能力向上がなされている。

「そのまんまなんですか?」

「近代化させてあるから、中身は変えてある。メーサーヘリもエンジンを取っ替えてある。ただ、ヘリの部品を使ってるから、陸自の装備なんだが、公にした後、ヘリじゃないから、空自にしろとうるさいんだよ」

メーサーヘリは途中で航空機に変更されたが、ヘリの開発という事であったので、ヘリ扱いである。ローターがジェットに変更されて固定翼機化しているため、降着装置を引き込み式の車輪にし、空自に管轄を移すように、陸自に圧力がかかっている。しかし、アパッチ・ロングボウの調達が実質的に失敗であった事から、陸自は激しく抵抗している。製造ラインは保守整備が中心であるが、辛うじて生きていたため、陸自はメーサーヘリのバリエーションをコブラとアパッチ・ロングボウのさらなる後継ぎにしようとしていたからだ。防衛省の背広組は多くが現場を知らず、当時の事情も知らない。学園都市の反乱が恐れられていた時期に揃えられた装備である事、元はヘリコプターとして開発された名残りで『ヘリ』を愛称にしている事も。結局、現場の反対もあり、発掘された基本設計を基に、引き込み式車輪に降着装置を変更した攻撃機を空自に新規製造で配備する事に黒江が決着させるのだ。

「揉めてるじゃないですか」

「そうなんだよ。内勤連中は現場を知らん。この時代の赤レンガや市ヶ谷台の連中を笑えないぜ?ったく。連中は混乱させる事しか能がねぇ」

「先輩も大変ですね…」

「内勤連中には、自衛隊に入ってからというものの、何かと振り回されてるしな。ほれ、コーラだ」

「好きですねぇ」

「事変ん時は百貨店に納入させてたからな。黒田から布教されてな」

「黒田先輩、最近は見かけませんね」

「あいつは侯爵の位を継ぐ事になった。俺達が吉田公に伝えて、そこからお上に話が言ってな。末端の分家の出のアイツが後継者になったんだ。その関係の手続きやらで、ここ四日はどこでもドアだ。本家の連中は戦功だけじゃ黙らんからな。俺の副官だって事を箔付けに使えと言っといた。俺も叙爵されたしな」

「扶桑じゃ、先輩達の名前出せば、一般層は黙りますからね。あじあ号も良い等級が取れるし」

「坂本の姉貴の婿さんが働いてるんだよ、鉄道会社で。それでその友人の俺達は奴さんが良い等級のコンパートメントにしてくれてるんだよ」

「坂本先輩、お姉さんが?」

「あいつ、私事はあまり話さないが、自由人な姉貴がいるんだよ。それであいつはガチガチの愛国教育されたわけだ。それが前史で裏目にでたがな」

「統括官、F-35が2019年で墜落しました。部隊の士気が下がっているそうでして」

「日程が立ち次第、現場を激励しにいく。なんなら、セイバーフィッシュをオジロワシに回してやると伝えろ」

「ハッ」

黒江の自衛隊での副官がやってきて、二言ほど報告して去っていく。黒江はF-35が墜落事故で飛行中止になった事で、日本本土の空自の士気が下がり、更に政治問題になることを避けるため、手を回す事を伝える。F-35の調達の中止にもなりかねないからだ。代替機として、セイバーフィッシュに言及する。この墜落事故がアクティブステルスの本格開発のきっかけになる出来事の一つとされる。パッシブステルスを考慮した航空機はF-35の引退後にアクティブステルスが勃興した事もあり、その後の時代のVF-17系の登場まで潰える事になる。

「まったく、メカゴジラまで持ち出させてるんだぞ。内勤の連中をボコしてやりてぇ」

「あるんですか」

「二種類な。自衛隊の趣味の範疇の代物だがな。スーパーロボットの技術の祖かもしれん」

「つーか、そんなのどうやって作ったんですかね…」

「俺も聞きかじりだが、バブル時代に移動シェルターの名目でスーパーXを造ってたのがきっかけに、景気の良かった時代に揃えてたそうなんだ。学園都市の反乱を抑えるために。だが、上条当麻が何らかの事をアレイスター・クロウリーにしたか、2010年代に学園都市の統制が突然に崩壊したんだ。それで用無しになってたのを、俺が引っ張りだした」

黒江は『自分も造られた理由は聞きかじり』としつつも、表舞台に引っ張り出したのは自分であるとアピールする。メーサー兵器の登場は日本連邦を一躍、世界最高水準の軍事力に押し上げたわけだが、自衛隊がそれらを革新政権から隠した理由が『パワードスーツ技術の学園都市への流出』である事で革新政党が問題視するなど、混乱は依然として続く。

「革新政党は問題視するだろうが、内局の連中が兵器を出し渋るから、こうなるんだよ」

「日本って、防衛に金をかけたくないんですかね」

「戦前戦中の反動で、金の力で世界を制覇しようとしたしな。それも、ベビーブーム世代の子供世代が成人する頃のバブル崩壊で潰えた。軍事は悪って事だろうな、戦後直後の世代には。だけど、湾岸戦争や景気の悪化で変わり始めてる。22世紀以降のようになるのに、世代交代の進展が必要する時代を待つしかないさ」

コーラを片手に休憩しつつ、二人は話し込む。21世紀前半期の日本は反戦や非戦思想により、軍人(自衛官)を冷遇する傾向がある。それで短期決戦を見込んだダイ・アナザー・デイ作戦の目測は狂い、長期化の様相を呈している。短期決戦は防衛省も容認していたが、政治的理由で先制攻撃が許可されなかった事は日本の身勝手と批判を浴びている。扶桑は攻撃に傾倒し、防衛を無視しているという批判も日本国内にあるため、扶桑は大きなパニックに見舞われ、兵器生産に大きな支障を来しており、それも東二号作戦の取り消しからのウィッチ部門の混乱に繋がっている。この混乱で生じた人的損害、物的損害はかなりのもので、黒江達があちらこちらに駆り出され、64Fの人員の補充や機材調達が非合法なものになった理由でもある。(南洋防空に残される人員もかなりに登ったため、前線の補充要員は問題の発覚後も潤沢とは言えないものであった)

「俺達は本来、陸の航空だ。だが、海軍の連中のサボタージュで洋上にも出向かなきゃならん。多分、次の戦いはそういう事が増えるだろう」

「空軍がなんで海軍航空の仕事まで?」

「日本が空自とウチの統合運用を考えて、航空の一元管理を目論んだからだよ。空自の反対で頓挫したが、601空の編入は強行したから、人数の定数維持もできない有様なんだよ。そこで天測航法ができる俺達が脚光を浴びたわけだ」

「先輩たちはスーパーロボットの技が撃てるからいいけど、わたし達は地形変える技は持ってないですよ」

「それを教えてやるっての。いきなり、ストナーサンシャインやシャインスパークを撃てって事じゃないぞ?」

「先輩たちはオカシイですって!そのまんなの撃てるなんて!」

「俺達はナインセンシズとかで光子力とゲッター線の力を制御した。だから撃てんだよ。聖闘士とも違うな。Z神とゲッターエンペラーの許可得てるし」

黒江達は光子力とゲッター線の使者の側面も得たため、二つのスーパーロボットの技を生身で再現できる。それに必要な才能が最低でエイトセンシズなのだ。逆に言えば、Z神とゲッターエンペラーに見出されれば、プリキュアでも同様の事が可能で、キュアフェリーチェは最初にその力を得ている。

「ま、俺達は一個軍団と正面からやりあえる。のび太やゴルゴとは比べるジャンルが違うよ、俺達の力はな」

「先輩、気にしてますね」

「そりゃ、友達の事で悪口を言われりゃな。ゴルゴはそもそも、『ゴルゴタの丘であの聖人を殺した裏切り者の番数を持ってる』んだぞ」

ゴルゴは『名は体を表す』の法則に従えば、素で神であろうと、必ず鎮魂歌を聞かせる男である。批判者はその第一条件すら失念しているのだ。

「存在自体がデウス・エクス・マキナなんだぞ、東郷は。そういう風に出来事が起こるし、デルザー軍団の魔人すら逃れられなかったんだぞ」

黒江が言うのは、米軍の依頼でゴルゴに抹殺されたデルザー軍団の魔人『ジェットコンドル』のことである。その時点で、大首領すら手出しを控えたという点で、東郷は神すら倒す男になったのだ。

「それは分かってますって。あ、カールスラントの連中だ。意気消沈してますよ」

「ドイツからはナチに誤解されて疎まれ、日本から『人種差別主義者』って攻撃されりゃな。ロシアからは記録の再精査を理由に、スコアを参考記録にされればな」

二人が話してるところに、負けてないのに意気消沈するカールスラント空軍の部隊が報告のために通り過ぎる。21世紀世界による政治的、物的圧迫で陸空で謳歌した軍事的繁栄に終止符が打たれたこの時期、カールスラント系部隊の士気は崩壊寸前であった。帝政ドイツが存続した世界であるため、ナチスと決めつける誹りは無くなった(ミーナ、バルクホルン、エーリカのカールスラント三羽烏はむしろ、そのナチスと戦っているのだが…)が、帝政である事自体に非難が出る始末である。カールスラント軍はドイツによる介入で、前線に残置する部隊は44年当時の3割に激減しており、非難される前線部隊は溜まったものではないだろう。その代替に日本連邦の軍事的負担へ圧力がかけられているのである。リベリオンは分裂で見る影も無く、最も近くにあるはずのキングス・ユニオンは財政難であり、自国部隊の今以上の大規模な派兵は困難だからだ。

「ま、不幸中の幸いはIS世界にキュアマーチがいる事だな。ラウラ・ボーデヴィッヒが緑川なおの転生体でな。今はキュアマーチの姿で、28歳ののび太んちを守ってる。俺達は日本の不手際で大変な荷物を背負わされたってわけだが、ここで戦果挙げりゃ、日本も俺達の存在を認めるし、誹謗中傷も無くなる」

「どのくらいの戦果ですかね」

「硫黄島の28686人の倍以上の人数を最低でもぶち殺して、沖縄戦の全戦力の548000人は戦傷で後送させんと、日本が納得せんだろうな…」

「オーバーじゃないんですか、それ。桁が…」

「日本は沖縄戦やサイパンを逆にした戦を、一部が望んでるんだよ。ここは欧州だぞ、まったく……」

「今の敵の損害は?」

「局地的に蹂躙してるが、陸の膠着状態は打破できてない。まるで史実の東部戦線だ。空は連戦連勝だが、陸は『機甲戦力と火力が足りん』と苦情が来てる」

「日本は何考えてるんですか?」

「兵器の能力差で量を打倒できると思ってるんだよ。昔、ドズル・ザビは『戦いは数だよ!』と嘆いたというが…。ギレン・ザビを笑えないな。日本的なドクトリンだしな、ジオン…」

黒江は地球連邦軍にも属しているため、日独の政治勢力が目論んだ『軍縮』により、自分達が尻拭いする羽目に陥った事を嘆き、一年戦争でドズル・ザビが嘆いた言葉の意味を噛みしめる黒江。日本とドイツは軍事予算の肥大化を異常に嫌い、ウィッチ世界にもそれを押し付けた。その害が生じた事で、現地への補償を慌てて行う羽目になっている。日本は松代に秘匿していた兵器を引っ張り出し、ドイツは兵器を廃棄した代わりに、『現地の友軍への人材派遣を物的支援の代わりにする』事でカールスラントの面子を潰さないように配慮した。その施策により、カールスラント三羽烏(ミーナ、バルクホルン、エーリカ)を中心にしたカールスラントトップレベルの撃墜王たちは、この時点で64Fに出向(後、義勇兵枠で正式に所属)扱いになっていた。結果、『人材の独占』と、他戦線から反感を買う事も少なくなかった。しかし、埋め合わせをしようにも、ドイツ連邦陸軍の機甲部隊は中隊規模に毛が生えた程度まで弱体化し、物的支援がままならないという切実な事情もあった。その代わりに、人材派遣で宥める事になり、統合戦闘航空団が『統合』された影響で、64に人材が集中しただけであった。統合戦闘航空団も陸上のものは一つになり、それが64の指揮下に合法的に収まっているため、他戦線はスーパーロボットとスーパーヒーローの働きで重要度が下がっているため、表立っては文句を言えないのも事実だった。

「他の戦線は今、スーパーロボットのおかげで小康状態だ。だから、最前線に人材を集めるのは当然だが、ウィッチは異質な存在として疎んじられている。練度が長期的には安定しないからな」

「どうします?」

「俺達(部隊全体)でウィッチ全体を守るしかない。連中もいずれ気づくよ。戦後の日本は一定の費用対効果があるって政治屋を納得させんと予算が降りないことに。日本の人工衛星が宇宙から帰ってきた時の政治屋の調子の良さを見ろ。連中はあんなもんだ。しかし、あいつらが俺たちの首輪を握ってる。それがシビリアンコントロールだ」

「先輩、政治屋を嫌ってますね」

「ま、連中は後から自分勝手に言うからな。TPOは弁えてるよ。自分もその世界を見てきてるしな。さて、行くか。『エンペラーオレオール』!!」

「あ!わ、わたしも…!『プリキュア・シャイニングメタモルフォーゼ』!!」

黒江は背中にミニサイズのスクランダー『エンペラーオレオール』を空中元素固定で造り、それを装着して飛翔する。のぞみもシャイニングドリームに再変身し、翼を広げて黒江の後を追う。二人の飛翔は目立つため、休憩に使った基地にいた、非番の自衛官たちは遠くや近くで写真撮影に勤しんでいる。のぞみが現役のプリキュアであった2007年前後からは、既に10年以上が経過した時代の自衛官達であるが、『オールスターズ』映画での活躍で、のぞみのことは知られており、ファンも多い。そのため、自衛官の間で、早くも人気が沸騰していたりする。

「なんか、恥ずかしいなぁ。写真撮られてるし…」

「ラブなんて、自分から撮影に応じてるんだぞ?ファンサービスくらい、連中に後でしてやれ」

「先輩、慣れてますね…」

「基地祭で、この姿で毎年恒例で歌ってりゃな。調と入れ替わってた時は流しの歌で金稼いでたこともあるし」

黒江は当人もすっかり慣れているように、調の容姿を使っている。声はほぼ地声で、調より明るめであるが、トーンは低い。容姿の区別は瞳の色と髪型で、黒江はポニーテールにしているのが最大の特徴である。

「あの子も大変そうですねぇ」

「行った先で無双やらかしたから、当分は帰れないとぼやいてた。ま、こっちは子供の切歌がボイコットしてるから、子供の切歌の奴にはいい薬になるだろう」

溜まっていた黒江への悪感情もあり、子供の切歌は反発している。別の時間軸の彼女自身曰く『青二才だったんデス』と釈明している。立花響が英霊化で大変な事になっているため、目下のシンフォギア関連の問題は子供切歌の反発であった。黒江に反発するための名分である立花響は『沖田総司』に覚醒してしまい、問題が有耶無耶になってしまった。また、大人(外見上はさほど変わりないが、聖闘士である)の自分自身が現れたため、反発を貫く理由が無くなってしまった。啖呵ををきってしまって、引っ込みがつかないために惰性で続けているに過ぎず、周囲からは白い目で見られ始めている。また、歴代のプリキュア戦士達の参戦も子供切歌の反発する理由を薄っぺらにしており、彼女を顔面蒼白にさせており、大人の自分自身が泣いていたりする。(大人の彼女自身は前線で戦っており、声質が艦娘・葛城と朝潮に似ている事がネタにされている)

「大人のあいつ自身に発破かけて、どうにかさせるか。この問題はあいつ自身にやらせたほうが適当だしな」

「ご苦労さまです」

「本当だぜ。…お、やってるやってる」


その基地から近い陸の戦場では、ガイちゃん・ザ・グレートが大暴れし、アルトリア・ペンドラゴン(表向きはハインリーケとして活動)がエクスカリバーを放ち、リベリオン軍を撃退していたりしている。

「すごぉ〜い」

「お前をあそこまで鍛えてやる。上手く行けば、俺みたいに、アテナから授かるかもな」

大地を抉るエクスカリバーとエア。ガイちゃんは黒江以外では、乖離剣エアを制御した始めての存在であり、エアを自在に奮って、地形を変えていく。

「これで逃げないなんて、敵はアホですか?」

「奴さんにとっちゃ、数千人くらいは補充が効く数字だ。捨て駒だろうよ」

黒江のいう通り、眼下で英霊とロボットガールズ相手に無謀な戦闘を挑む大隊規模の部隊。銃撃が効かず、銃剣とスコップでエクスカリバーとエアに挑むのは、哀れを通り越して、滑稽ですらある。ガイちゃんはミラクルドリルランスにエアの霊格を宿しており、発動させれば、世界を任意の範囲で切り裂ける。アルトリアは生前と違う戦いを見出しており、凛々しさ全開。映像は駐屯地と基地に中継されているので、自衛隊が沸いている。ただし、青い騎士服ではなく、リリィとしての姫騎士といった姿であり、腹ペコ王と言われるのが頭に来たのと、イリヤへの対抗らしい。

「アルトリアめ。腹ペコ王って言われるのがムカついたな。リリィの服装になるなんざ、酔狂な事を」

「でも、あれカッコいいですよ。」

「あれはあれで人気あるんだよ。イリヤが最近は使ってたから、対抗したか。いい年だろうに、騎士王」

「あ、メロディがエイラをどうにかしろって……」

「あのサーニャLOVE野郎…。んなに好きなら、結婚しちま…あ、クロと美遊がいるから無理か」

「美遊、私とも絡むんだけどねぇ」

「妖精さん繋がりだろ、それ。意外にモテるな、あいつ」

美遊・エーデルフェルトは芳佳(みゆき)、イリヤ、クロ、のぞみと親密な関係であり、特に、のぞみやイリヤはパートナーを自負している。(色んな意味で)そのため、イリヤに片思いのエイラは押され気味で、最近はそのイリヤが美遊と絡み、のぞみと絡むのを妬んでいた。

「どうせなら、エイラにサーフィンさせたり、あいつにクラスカードでも貸せよな…。籍なんて書類だけの話だから、纏めて内縁関係って事にしときゃ良いんだよ、パートナーなら性別関係ねーし」

「いいんですか、それ」

「お前は妖精さん繋がりで、イリヤは別の平行世界繋がりだぞ?このままじゃ、シャーリーがむぎのん状態になっちまう」

「いやあ、わたしはア○モネかと…」

「あれはファンいるからなぁ。カレンの激しさが時たま出てるし、その毛はないと思う」

「紅月カレン、ですよね」

「のび太にカレンとして愚痴ったっていうし。ありゃ、ゼロ・レクイエムの事を根に持ってるぜ」

のび太が伝えたらしく、キュアメロディの姿で紅月カレンとして愚痴った事は黒江にも知られていた。北条響というより、紅月カレンの色が濃いのは、直近の前世が紅月カレンだったからだろう。

「カレンだった時期はかなり近いぞ。ガサツだし、言葉づかいが荒いし、紅蓮聖天八極式に愛着がある」

「シャーリーがプッツンしたら」

「針が振り切れて、むぎのんになっちまうかもしれん。あれになったら殴って気絶させんと…」

黒江はシャーリーが麦野沈利化するのを警戒しているようだが、カレンの体裁が色濃いことで安堵するが、ルルーシュ・ランペルージが自分を共犯者にしなかった事をかなり根に持っているらしく、枢木スザクへもあまりいい感情は持っていない事を窺わせている。のび太に愚痴ったように、ルルーシュとスザクを思いっきり殴りたいと公言しており、ルルーシュが知ったら青ざめるだろう。前世の感情に決着をどこかでつけたいと考えているのは確かだ。のぞみだけではないのだ。『決着をつけたい感情』を抱えているのは…。


「ま、原子崩しが撃てるようになるのは、あるかもしれん。言動が振り切れるかもしれんが、お愛嬌だと思え」

「ラルさんが超電磁砲うったり?」

「そうだ。あいつ、意外に楽しんでてな。日本語しゃべる時は美琴に近いキャラしてるぜ」

「嘘ぉ」

ラルは悪童の評判に飽き飽きしていたため、一応はそれと正反対に生きる御坂美琴の性質を同調で手に入れた状態になってからは、日本語をしゃべる時は、普段の大人びた声質は出さず、御坂美琴の声質を使ったりする遊び心がある。また、御坂美琴と同調した影響でファンシーグッズにご執心で、エーリカが買ってやっているなど、役職に見合わず、かわいい。

「空軍総監になるけど、あいつはゲコ太グッズで釣ればいい。弾薬や燃料の一つや二つ、ちょろまかしてくれるよ」

黒江はその方法でラルをコントロールしていると示唆する。なんとも可愛いが、悪童で鳴らしたラルがゲコ太グッズにメロメロなのはなんだか笑えてくると思うドリームであった。



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