外伝その342『扶桑の苦しみ3』


――扶桑皇国は長門以前の戦艦を書類上だけでも在籍させていたもの(呉で着底していた比叡、撃沈された霧島含め)を含め、除籍させられた。廃艦の陸奥を除く、全ての長門以前の艦が有無を言わさずに除籍になったので、15000人近くの人員が宙に浮いてしまった。新戦艦は自動化が進んだため、見かけほどに人員を必要としなくなったのもあり、状態の有無に関わらず、旧型戦艦は廃棄(年式が大正という問題もあり、日本側は廃棄を推奨したが、長門はともかく、金剛型戦艦の一部は海援隊が欲していた)の方向だったが、太平洋共和国のハワイ真珠湾はリベリオン本国の手にあった以上、同国は戦艦を抑止力として欲しがった。同国に譲渡し、運用に必要な人員を出向として、海援隊に行かせる事の是非が議論されていた。扱いが宙に浮いていた金剛型戦艦の残存艦は議論の末、扶桑の保護国かつ、日系国家でもある太平洋共和国に譲渡される事になった。同国が日本連邦の影響圏に入っていたため、安全保障条約の一環という事になった。(後に、紀伊型戦艦『近江』も加わることになる。)日本連邦としては、空母重視の方針だったが、空母がウィッチよ共用だったため、艦載機のジェット化を大義名分にして、ウィッチを空母から外し、雲龍型改造の強襲揚陸艦に移すことを始めた。だが、ダイ・アナザー・デイがそのやり始めで起こってしまったため、未改造の艦も結局は艦上機の数合わせで動員され、太平洋、紅海、インド洋から空母がいなくなる事態になった。この決定を以て、文字通りの決戦の様相を呈し始めたと言える。また、当時はカールスラントで、独の介入による人員整理が強引に行われ、史実東ドイツの要職についた、もしくはシュタージの非公式協力者とされた者は公職追放されたが、最終的な人数が東ドイツの人口の一割以上に及んでいたため、カールスラントにいた軍人、官僚、政治家に少なからずの追放者が生じ、カールスラントはますます混乱に陥り、軍縮の歯止めのかけどころを見失ってしまう。かつての欧州列強の衰退は扶桑の超大国化を促進させたわけで、扶桑軍は21世紀諸国の妨害工作を跳ね除け、ウィッチ世界のリーダーシップを取っていく。それらはプリキュア達がシンフォギアC世界滞在中に起こっていた。――









――ウィッチ世界の様子を尻目に、プリキュアとシンフォギアC世界の模擬戦は歴代のプリキュア達が優位であった。戦闘経験もだが、ドリーム、ピーチ、ルージュの三名は特訓で特に鍛えられていたため、マリアとクリスの両者を圧倒した。クリスはサニーファイヤーで更にダメージを負う羽目に陥ったため、マリアはルージュとピーチ相手に孤軍奮闘する事になった。二人の実力はマリアの予想を超越しており、アガートラームの防御を上回る攻撃力を発揮していた。特にピーチのパンチ力はアガートラームの装甲に罅を入れるほどであり、マリアでは『器用貧乏』の感が否めなかった。ケイロンズライトインパルスを会得し、風の力を併用するピーチ。さらなる攻撃を見せる。

「プリキュア・ラブサンシャイィィン!」

手でハートの形を作り、そこから高エネルギー波を放つ。これは自前の能力だ。モロに直撃したマリア。ピーチ/ラブの実力は黒江の課した特訓もあり、現役時代を既に凌駕していた。

「貴方達、その実力……、どこで身につけたの…!?」

「ある世界を守るために、だよ。悪いねー。ある時間軸で平和になる貴方達と違って、こっちは世界のために戦い続ける宿命背負ってるんだよ」

シンフォギア世界はフロンティア事変からそう遠くない未来の時間軸に入れば、全ての騒乱が終結し、平和になる。だが、プリキュア達は邪に対抗するための存在として戦い続ける宿命を背負っている。その事はなのはとフェイトの調査で明らかになったことだ。ピーチは得物がロッドなため、接近戦では用いない。クリスがサニーファイヤーで行動不能なため、マリアは実質、一人で二人を相手にする事になった。

「…自惚れなの、それは?」

「別に、自惚れちゃいないよ。事実を言ってるだけさ。あたし達はプリキュアになった時から、そういう宿命を背負わされたからね。たとえ、生まれ変わっても。それに大人になった状態で転生してるからね。一度、本当に死んでるって事さ。」

ラブ/ピーチは成人後は『邪と戦うための存在である』宿命をドリーム/のぞみと違う方向で悟っていたようで、マリアにそう返すと、Gウィッチとしての空中元素固定を発動させる。

「マスキーブレード!」

光戦隊マスクマンのレッドマスクの個人武器を生成するピーチ。剣には剣ということだろう。マリアも剣を再び抜刀し、打ち合う。オーラパワーを纏った剣であるため、アガートラームの剣『ヌアザ』に当たり負けしなかった。ピーチは自己鍛錬で覚えた剣技を見せる。光戦隊マスクマンから教わったと明言し、圭子の仲介があったことが窺えた。二人はしばし鍔迫り合いを行う。マリアが当初は有利であったが、オーラパワーが加わる関係上のハイパワーで完全に押し負けており、次第に捌ききれなくなる。それを確認したルージュがとどめを刺す前段階として、キュアフォーチュンから技を借り、その上でアレンジした技をぶちかます。

「フォーチュン、技を借りるわよっ!」

『星の光を聖なる力に!!プリキュアスターダストシュート!!』

星形のエネルギー弾を生成し、パンチで相手に叩き込むこの技、本来はキュアフォーチュンの技である。

『星よ、天に還れ!!』

そのキメ台詞と共に大爆発が起きる。ダメージを与えるための攻撃なので、マリアは耐えきる。

「この程度で……!」

『マスキークラァァッシュ!』

技を決める前、ピーチは九字護身法の日輪印を結び、新たに身に着けたオーラパワーを見せた。剣の刀身が光に包まれる。それを確認したマリアがロケットブースターを起動させて斬りかかる一瞬、マリアの攻撃の軸線をずらして直撃を逸らすと、マスキーブレードのオーラを使い、オーラパワーで『斬り』、マリアを昏倒させる。

「マリア!」

クリスが悲鳴を上げる。着地したピーチは肩口を斬られるが、マリアはオーラパワーで叩き斬られ、地面に叩きつけられて昏倒する。一矢は報いたが、クリスが戦闘不能状態なため、模擬戦の全体的な戦局はこれで決した。響が一勝して、なんとか一矢を報いることが期待され、その点で言えば、響Cは期待通りで、メロディを圧していた。『プリキュア・ミュージックロンド』の直撃を物ともせず、ラッシュで滅多打ちにし、最後のトドメというところにまで追い詰めた。

「もらったッ!」

「あたしだけ負けちゃ、先輩と後輩に会わせる顔がねぇんだぁぁ――ッ!」

滅多打ちにされ、グロッキー状態のキュアメロディだが、咆哮と共に最強形態のクレッシェンドプリキュア状態にパワーアップする。コスチュームの色が白系に変わり、背中に翼が出現するのだが、その時に発生した衝撃波はスラスターで突進してきていた響を遠くに吹き飛ばすほどの威力であった。

「あたしをこの姿にさせるまでボコした事は褒めてやるぜ。たっぷりとお返しをしてやる!」

「!?」

響Cは攻防速が飛躍したキュアメロディの動きを見失い、今度は逆に滅多打ちにされる。響Cは、模擬戦で使用が推奨されていないイグナイトモジュール(C世界では、イグナイトモジュールは介入タイミングもあって、機能として残存している)の使用が頭によぎる。それほどにクレッシェンドキュアメロディの猛攻は凄まじかった。

「はぁっ!!」

空を自在に飛べるクレッシェンドキュアメロディに対し、スラスターで滞空する事が精一杯の響Cは一転して不利に陥った。スラスターで直線的な動きしか出来ないからだ。(インパクトパイクでの空中姿勢制御はできるが)

「くぅっ……姿が変わっただけで、いきなり逆転されるなんて…!」

「お前らのエクスドライブやイグナイトモジュールみたいなもんだ!悪いが、勝ちはもらったぁ!」

メロディは最強形態にパワーアップし、お返しと言わんばかりの猛攻を見せる。響Cの蹴りが空を切り、逆に顔面にヒールでのドロップキックを食らわす。響Cのジャッキアップパンチにも堪えず、イグナイトは模擬戦では使用禁止である事を教えた後、ドリームのスターライトフルーレを借りる。

「のぞみ、わりぃけど、お前の技を借りるぜー!あたしには専用の大技ねぇしな!」

『え、まさか響、わたしのソリューションを!?』

「黒江さんには、行く前に言っといてあるぜー!もう世代間での区切りは取っ払われてると思えー!」

『ちょ、響、待ってよー!?』

思わずツッコミを入れるドリームだが、メロディを呼び捨てするあたり、りんとは違う形での関係ができた事がわかる。

『プリキュア・スターライトォォォ…ソリューション!!』

メロディはドリームにツッコまれつつ、プリキュア・スターライトソリューションを放つ。空に飛び立ち、フルーレから分離した5色の光から放つ無数の光弾、さらには自分も光となって相手に突撃する事から、シューティングスターの発展系とも取れる技。本来はシャイニングドリームの技だが、プリキュアの世代の隔たりによる『壁』が転生で消えた事で、こうした技の貸し借りは当たり前だった。この技は相手を瞬時に蜂の巣にするので、流石の響Cも防ぎようがなかった。

『ひびきぃ〜〜!それ、わたしの技だよぉ〜!あ〜ん!』

と、素が出るドリーム。

「後でなんか、おごってやる。だけどな。ガキがいるんだ、本名で呼ぶなっての」

『ひ〜ん!ツッコミはりんちゃんのキャラだよ、わたしのキャラじゃない〜!』

泣き言を漏らすドリーム。しかし、響Cはキュアメロディを追い込み、スーパー形態にならせた時点で大金星であった。また、シンフォギア装者達は所々の能力では、通常形態の各プリキュアを上回るところも多く、キュアメロディが滅多打ちにされたのがその証明であった。ドリーム、ピーチ、ルージュが圧倒したのは、『特訓』と『経験』によるところが大きい。

「でも、こいつのラッシュはマジで効いたぜ。クレッシェンドに変身しなけりゃ、マジでヤバかった」

『先輩も爆発力のある子だって言ってたけど、侮れないね』

「それと、おっさんに相談する事ができたから、お前はりんたちと一緒に戻って食事でもしてろ」

『わかった』

――メロディはクレッシェンド状態を解除し、そのまま風鳴弦十郎に相談しに行き、ドリーム達は負けた装者の回収をSONGに任せ、食事に入る。エルフナインはAがCにそれまでのデータを渡し、A世界の彼女が突き止めたプリキュアや宝具などのデータがC世界の彼女に渡った。それにより、A世界が『ある種のモルモット的なモノ』として得た知識がC世界にも伝播した。また、プリキュアは平行世界に跨る『少女の守護願望や男性戦士への羨望、人々の意志が星々の意志と結びつく事で生まれゆく戦士』という解釈がなされており、世界で差異はあれど、基本的に、最初のプリキュア戦士であるキュアブラックとホワイトを一種の基本にして生み出される存在とエルフナインは結論付けている。女性に力を与える点ではシンフォギアと似通っているが、プリキュアは選ばれたと同時に、『平行世界を守るための宿命を背負う』運命となるため、エルフナインは一種の『願いと言う名の呪詛』としている。のぞみやラブ達はその宿命を悟っており、生前いた世界を去って尚も、プリキュアとして戦う運命を受け入れている。プリキュア達にも『力に酔っている』という誹謗中傷が一部にあるため、何にしろ、日本人の『嫌らしい卑屈そのものな大衆心理』はのび太やプリキュア達の激怒を買っている――



のび太達は世界や宇宙、異次元などを渡り歩いたため、21世紀世界での白人至上主義、23世紀のスペースノイドのジオニズム、21世紀日本人の抱く『勝者の粗を探し、敗者の弱点を突いて、ささやかなる優越感を得る』大衆心理は馬鹿らしいものでしかない。普段は温厚なはーちゃん、アホの子という表現が見合うのぞみでさえも激怒するようになったのは、のび太と黒江達が一戦を交えないことへの誹謗中傷がとうとう歴代のプリキュア達にも及んできた(不思議と仮面ライダー達には無い)からで、のび太を兄のように慕うはーちゃん(ことは)、壮年期のび太が義父になる予定(のび太の養子と結婚)ののぞみが瞬間湯沸かし器の如く怒り狂っている。特に誹謗中傷を煽っていた事が判明した週刊誌の週刊『金曜日』は某超大物芸人(21世紀では映画監督としても高名)の如く、怒り狂ったドリームとフェリーチェの率いる歴代のプリキュアのカチコミに危うく遭いそうになる(黒江がストップをかけ、代わりに編集部を合法的に脅した)、扶桑陸軍の日本制圧シミュレーションの想定目標の一つにされていたという。21世紀世界でのGウィッチ達への誹謗中傷は、かの『エスパー魔美』こと、佐倉魔美に画家である彼女の父『十郎』が言ったという『人間は毛色の違う存在を嫌い、時として弾圧、迫害する気質がある』という言葉は的を射ていた事の証明であり、それがウィッチ世界に伝播した事で、ウィッチ達が各地で迫害、虐殺されるという緊急事態を招いた。ウィッチ世界でGウィッチが優遇される事が許された背景の一つはこれ。『21世紀世界が煽ったとは言え、自分で各地のウィッチの頭数を減らしてしまった』事での人手不足の深刻化、ウィッチ組織の二極化に伴う人材の食い合いが、通常ウィッチからさえ迫害された経験がある『突然変異』で生まれしGウィッチをウィッチ内部での支配層/特権階級にまで押し上げるのだ。のび太が転生を選んだ理由もそこにある。のび太はプリキュアにまで累が及ぶ事態に事を重く見、スネ夫の力を借りて、野比のび太公式の声明と称し、大々的に発表する事にした。

『光と闇の交錯する彼女たちの道に灯火を照らし、彼女たちを導くのが私とドラえもんが彼女へできることであり、現地での自分達のの役目と認識しております。自分は自分という人間のストーリーの主役であります。もちろん他人には、その人の『その人が主役のストーリー』がある、だから機会を捉えて必要な役をこなすのも自分の人生というストーリーでは大切な事で、誰かの成功に助けを出すのも、自分の中の輝きを見せる事になる。私はそう確信しております』

これがのび太公式の声明であった。表世界でも『東京五輪射撃競技の金メダル候補である強化選手かつ、政府の官僚』という高い名声を2019年時点で得ていたがための声明であった。(公には、のび太は若き日に『凄腕の射撃競技選手』として、またある時は『環境省のエリート官僚』として名を馳せたという事になっている)のび太の公式見解と声明は骨川一族の経営する広告代理店や各メディア、2019年には『新進気鋭の豪腕スーパーマーケット経営者』として成功したジャイアン(剛田武)のSNSなどを通して拡散していく。また、2019年時には、宇宙飛行士を目指してJAXAに入っていた出木杉英才も拡散に協力したため、のび太への誹謗中傷は次第に勢いが弱まり始める。のび太に相談を持ちかけられた出木杉は困り果てたのび太にこう助言する。

『どうせなら、マスメディアの前で大々的に戦ってみせるべきだよ。模擬戦でもなんでもいいんだ。全力で。要はね、彼女たちの全力でも『君は殺せない事』、超人である彼女たちがなぜ、君に『一目置いているか』を証明すればいいんだ。所謂、悪魔の証明だよ。悪魔の証明というのは、証明することが不可能か非常に困難な事の比喩的な表現だが、この場合、超人であるGウィッチやプリキュアがなぜ、君に勝てないのか?身体のスペックだけ見れば、結果は火を見るよりも明らかなはずだ。だが、君に勝てた試しがない。どんな技を使っても。それを連中の前で証明するんだ。君は異能生存体だ。エクスカリバーやエアでも死なないだろう?その証明を見せればいい。マスメディア連中は現地を混乱させるだけだが、その事を逆に利用するんだよ、野比君』

青年出木杉は当時、ノビスケの友達でもある一人息子『英世』(容姿は子供時代の英才そっくり)を儲けていた関係で、のび太の家族と家族ぐるみの付き合いであった。多忙な中、扶桑への宇宙開発技術の教導という名目で、ウィッチ世界にやってきた彼はのび太にこう助言した。のび太は自身の発言でも誹謗中傷が絶えない現状を鑑み、黒江のツテでドモン・カッシュを頼り、ドモンも公の場で実力を見せる必要を認める。『シャッフル同盟』も公には『コロニー格闘技五天王』として知られるからで、デモンストレーション代わりの模擬戦を開けと、のび太に示唆する。Gウィッチとのび太の実力は並べられるべきか。など、なんとも言えない『悪魔の証明』である。21世紀日本の一部に存在する『妬み』、『嘲り』、『プリキュアのストーカー的ファン』などの要因で生じている誹謗中傷。のび太は協議を重ねた末、ダイ・アナザー・デイが終わり次第、スネ夫の経営する広告代理店などを使ってのネット中継や全国TV中継での模擬戦を開く事を決め、TV局に一族のツテのあるスネ夫やジャイアンに協力を仰ぐ事になる。なんとも言えないが、日本の一部世論が求めるものが如何に『悪魔の証明』であるかの表れだった。








――歴代プリキュア達にも降りかかり始めた誹謗中傷であるが、彼女達は多くが『人生が終わった後に生まれ変わった』存在。現役時代から連れて来られたのは、フェリーチェ/ことは(正確には戦いを終えた後だが、キラキラプリキュアアラモードへのバトンタッチは、みらいが大学生になった年に起こっていたので、魔法つかいプリキュアの現役期間は意外に長く扱われる)のみだ。元々、歴代プリキュア達は『運で勝った』り、『新しい武器や形態で勝った』事もSplash Star以降の歴代の通例である。歴代のプリキュアのピンクチームでも『ダメ人間』の典型例とされる、のび太の少年期に最も近い傾向であったのがドリーム/夢原のぞみで、プリキュアになるまでは学業成績も思わしくなく、『部活追い出され王』と周囲から揶揄されるほどであった。そのため、『昔の自分に似ている』と青年期のび太は目をかけている。壮年期以降はのぞみに『義父』として接する事になる。のぞみも、のび太を青年期の時点で慕うようになっている。まさか、壮年期になったのび太が義父になるとは思ってもみなかったが。のぞみは想い人であったココの転生体『コージ』との結婚をした後はのび太と縁戚関係になるのだ。(つまり、のび太は時間軸を考慮しない場合、時間軸の違いによらず、のぞみの義父になる)――








――日本が持ち込んだ『反戦』、『非戦』の風潮は扶桑の軍隊を太平洋戦争までを通して悩ます事になり、前線でのサボタージュも問題であった。また、日本に『新規志願ウィッチの採用縮小』の思惑があり、ウィッチの宿命が判明するまで『少女ウィッチの採用縮小、将来的解消』を目指していたため、既存ウィッチの雇用継続を『特例措置』として認めたとしていたが、ウィッチの宿命たる『力を発揮できるのは10代の内』が日本に知れ渡ると、色々な観点からの議論が巻き起こったが、現地で『魔女狩り』が起こった事を鑑み、私刑の防止とウィッチの人口的意味での淘汰を現地が望まない事を鑑み、地球連邦軍による『Rウィッチ化』を日本連邦の政策とする事になる。扶桑が実質、ウィッチの政治的意味での受け皿になっていく事は良識派は読んでいた。ウィッチ部隊はMATの出現で『儀礼的、儀仗的意味』での維持以外の興味を大国は無くし始め、世界秩序を担う立場の大国か、国の立地条件等が、思い切り怪異の出現頻発地帯な小国以外は実戦的なウィッチ部隊を廃止し始める。そのため、各国のウィッチは扶桑軍(公には義勇兵枠の自由リベリオン軍)、ブリタニア連邦軍、カールスラント軍、ガリア軍がダイ・アナザー・デイ以後の時代における大まかな受け皿になっていく――







――地球連邦軍は過去の時代の各国には『超文明の軍隊』として存在を明らかにしているが、保有機にある『E.F.S.F』などの文字から、地球連邦軍がその正体である事は軍関係者には半ば見抜かれていたが、暗黙の了解でマスメディアには伏せられていた。ジェガンやジャベリン、ジェイブスなどの地球連邦軍第二世代RGMシリーズはその技術力の象徴であった。既に敵対するジオンとはこの時点で大きな技術格差があった。ジェガンでさえ、ギラ・ズールをも上回る性能にアップデートされ、そのアップデートが普及し始めたため、エースパイロットの多いジオンと言えども、次第に苦戦率が上がってきていた。ジオンの職人芸じみたMS戦はショットランサーやビームシールドなどの『ジオンが開発していない』兵器に苦戦する事も多くなり、彼らは『サイコマシン』に傾倒仕出す。スーパーロボットが量産されてきたからだが、逆にその行為が地下勢力の『ウザーラ』の投入を促し、新早乙女研究所の地下で進化していたゲッタードラゴンの目覚めを促進させる事となる。宇宙大航海時代を迎えた時代にあっては、ジオンという存在の輝きは薄れ始めていた。シャア自身も数十年もあれば『消滅する』とジオンの寿命を悟っており、ジオンの終焉を華々しいものにしたいため、強硬派の行為に多少は目溢しをしていた。だが、中止させたはずのネオジオング計画が再始動され、試作機は既に順調に建造されていることはシャアさえも把握していない。新早乙女研究所の地下で岩のように固まり、繭に包まれて進化しているゲッタードラゴンは静かに目覚めの時を待つ。大まかに従来の外装の上半身の形を取っている繭は卵の殻であり、中で着実に変化を起こしているのだ。その過程で、ライガーとポセイドンの機能がドラゴン状態でも使用可能なように変わっていく。また、ドラゴンの髭と口にあたる部分が変化を起こし始める。ゲッタードラゴンから発しられるゲッター線が低下し始めたのは、この変化が起こってからだ。


――目覚めの時は早まっている……弁慶よ、リョウ達を頼むぞ……――

巴武蔵の意志はゲッタードラゴンを急激に進化させる。ゲッターエネルギーの塊と化した機体は少しづつ実体化していく。その体躯はゲッタードラゴン本来の身長である50mよりも大型化しており、60mに達するものになっていく。また、本来は面識がないはずの車弁慶の名を口にし、廃墟になった新早乙女研究所内部で眠っているプロトゲッターの数々を呼び覚まし、それらに残量するゲッターエネルギーをドラゴンに捧げさせていた。中にはゲッタードラゴンの試作機も複数が含まれており、胸部アーマーのデザインが異なり、頭部の内部構造がむき出しである個体、肩の装甲にある突起の有無以外は完成機と同じ外観の個体もいた。放棄された格納庫に眠っていたプロトゲッターが目覚め、武蔵の導きで地獄のカマとなっていた元・ゲッタードラゴンの増幅炉室があった付近へ向かっていき……。

――目覚めよ、真ドラゴン……――

武蔵は真ゲッタードラゴンを目覚めさせるための供物として、一度は死したはずの身でありながら、プロトゲッターのゲッターエネルギーをゲッタードラゴンに集める。その目的は月面都市『グラナダ』で建造の進む怪物の破壊。ネオジオングと呼ばれるそれは『シャアすらも把握していない』。だが、ジオンという概念が生み出す怪物を上回るバケモノ、サイコフレームの力も及ばぬ機神と言うべき代物が日本は浅間山付近に眠っていることなど、ネオ・ジオンは知る由も無い。幸運なのは、そのゲッターでさえ、ゲッター究極の進化の前段階の一つである事実を知らぬ事だろう……。ガンダムに自らを否定され続けた事への集団ヒステリーが怪物を生み出すが、皮肉な事に、一年戦争後期にジオンに生み出された強化人間であるテロリスト『タウ・リン』にネオ・ジオン強硬派は利用されており、彼の言う『ウジ虫』に『自らが一年戦争で属していたはずのジオン』も含まれる事に気づいていない。タウ・リンこそ、シャアも想定外のネオ・ジオン強硬派の暴走の黒幕である。そして、彼の起こす事件がデザリアム戦役と同時に起こった結果、なんとか存続していたジオン共和国の命運を危うくし、結果的に共和国(サイド3)主要コロニーの移民船化を促進させ、その移民船化を以て、ジオン・ダイクン以来の『ジオニズム』思想は事実上の終焉を迎え、サイド3主要コロニーの移民船化がジオンが直接的に絡む『内乱』に実質的な終止符を打つことになる…。



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