外伝その364『連合軍の悲哀7』


――ウィッチ世界で巻き起こった狂想曲は結果的にウィッチそのものの存在意義に疑問符をつけることになり、同位国の人件費削減の圧力に屈する形で新規志願定数を減らす国が相次いだ。扶桑は日本が新兵器への更新に精力を注がせた煽りもあり、MATへの若手ウィッチの完全な管理移管が本気で検討されたが、クーデターの発生によって白紙撤回。以後の時代は『ダイ・アナザー・デイ当時に15歳以上になっていて、既に実戦経験を持つ世代』が事実上の軍ウィッチの屋台骨となっていく。扶桑においては特に顕著になり、坂本と竹井ほどのベテランでも、日本の政治家や一般人からは常識を知らぬ『子供』扱いされている。その兼ね合いでウィッチ世界での年齢も20代前半から半ばに達していたレイブンズが模範とされている。(三人であれば『大人扱いされる』ため)ウィッチ界隈では『なるべく若いほうが周囲に持て囃される』傾向があったため、それを覆す社会的変革を受け入れられない者はウィッチ世界では数多く存在する。黒田の両親も『娘の嫁入り』のために仕送りを密かに貯めていたが、本家の当主が本家次期当主に指名してしまった事、本人が『七勇士に貰い手があると思う?』とキャリアウーマンとして生きる決意を示したなどの出来事で割り切り、愛娘を本家へ送り出したが、これがもっとも穏便に事が運んだケースであった。軍隊に娘を取られることを危惧した農家の親世代が納屋に監禁する事件も複数発生し、社会問題となっていく。それら事件がウィッチ志願年齢と正規任官年齢の高齢化を促進するきっかけであった――







――浮きドックに設けられた臨時のヘリポートにオスプレイを駐機し、ドック内部の大和の見学に訪れた一行。まずは外からである。

「動乱の時は覚醒してなかったけど、大和っておおきいなぁ」

「改装が重ねられましたから。長さも原型より30mは伸ばされて、幅も大きくなってます」

ドックで修理を受ける戦艦大和。近代化改修で艦橋からマスト周りが宇宙戦艦ヤマトと同デザインのモノに変わっている。戦艦大和に宇宙戦艦ヤマトの上部構造物を添えつけた感が強いが、正統な進化と言える。(波動砲はもちろんない)。

「宇宙戦艦ヤマトの上部構造物をつけたんですね、先輩」

「最終的にああなった。将来的にヤマトと同規格の宇宙戦艦にできるようにな。ま、日本側もあれなら納得した。煙突は煙突ミサイルにしてるし、砲塔はショックカノンだ」

「ヤマトの部品を流用したんですか?」

「一部は新造だ。火砲や電子装備、エンジンの関連の自動化を進めたから、乗組員も半分以下に減らせたが、ダメコンの関係で1200人くらいは乗せてる。その分、戦艦を多く動かせる。紀伊型戦艦もドレッドノートタイプの部品でパワーアップする計画が動乱の時にあったんだが、お流れになった。連中は大和型戦艦以外は役に立たんと思っとるからな」

「日本の?」

「そうだ。連中は大和型戦艦以外の戦艦は大正期の長門に毛が生えた程度にしか思わんらしい。紀伊は昭和に食い込んでるんだがな」

「長門は古いだけなんですけどね。陸奥が動乱で廃艦になっているのが痛かったのでは?」

「紀伊型までは八八艦隊計画の名残りだから、パーツ規格は統一されてるはずなのだけどね。大正時代の計画だからってんで、日本は『古い』って頭越しに考えてるのよね」

「軍艦は平時には40年以上使うもんだからな。日本だって、こんごう型護衛艦を30年もアップデートでやりくりしてるんだ。それはお互い様だろうに」

日本側は扶桑の金で海軍の軍艦を新鋭艦に切り替えたい意向であったが、いくら扶桑が日本防衛省が夢見るほどに軍事予算を潤沢に得られるお国柄でも、それを短時間に実現できる23世紀世界のような大量の建艦は不可能である。それはプリキュア達や黒江に揶揄されるほどのお粗末ぶりであった。黒江はシュルシャガナのギアを調から借りており、プリキュア達は変身後の姿である。身分証を首から下げており、一同はなんともシュールではあるが、黒江に随行した『護衛』ということで共に案内され、入渠している大和の甲板に立った。

「これが有名な大和坂…」

「構造物と装甲は取っ替えたが、基本レイアウトは同じままだからな。水上を走る宇宙戦艦ヤマトも同然だ。日本もここまでの改造でやっと折れた。戦艦が普通にポンポンある上、怪異との対峙に必要だからって理由で生きながらえてるんだ。戦艦の必要性は怪異がいるかぎりは無くならないと言える」


ドリームは錦を素体に転生したため、典型的な陸軍航空出身者らしいコメントである。黒江は陸軍航空兵出身ながら、海自幹部学校に研修に行き、護衛艦乗艦勤務も経験している上、23世紀以降の『海軍』と言える宇宙軍将校でもあるので、戦艦についても詳しい。

「先輩、どこで覚えたんです?」

「地球連邦宇宙軍の士官学校と海自の幹部学校で覚えた。舐められないように、海軍の規律も叩き込んだ」

「綾香は物好きと言われてるけど、扶桑は日本軍の同位体だから、陸海軍は仲が悪いのよ。実際問題、陰口は聞いたことあるわ」

「ビートの言う通り、おりゃ陸軍航空兵の出だからな。海軍のガキどもや参謀に陰口を叩かれてる。表立って言えないのは、事変ん時、俺が嶋田繁太郎大将と堀井大将の陰謀を暴いて、聖上に奏上して連中の作戦を合法的に処断するついでに、紀伊を一撃で航行不能にしたのが尾ひれがついて伝えられてるからだ」

「ああ、小鷹お姉ちゃんから聞いたような…」

「紀伊が呉で撃沈された原因の一つは俺だよ。サンダーボルトブレーカーで炎上させたんだが、その時に船体に強い磁性を帯びせちまってな。電子装備の作動に支障が出るようになった。おまけに、敵の砲弾が俺が過去に攻撃して、強度が低下していた箇所に命中して、弾薬庫までぶち抜いて轟沈させた。尾張以降は帯磁対策が施されたんだが、紀伊は消磁が追いつかなかったみたいでな。おまけに敵の重量砲弾が強度が低下してた箇所に当たる不運が重なって、あのザマだ。まあ、紀伊型の想定された砲弾より強力な砲弾がバカスカ撃たれちゃな。305ミリ厚くらいの舷側装甲じゃ、今頃の最新型砲弾は防げん」

「イタリアだか、リットリオはカタログスペック値で356mm、KVJ級で381mm、アルザスで320mm。舷側装甲のスペック値では顕著な差はありません。ですが、紀伊は大正年間の八八艦隊計画の設計を引きずっています。装甲材の変更や防御甲板の追加などの小手先の変更はされたらしいのですが、基本設計が大正年間であるが故に、完成時には防御性能面では陳腐化したと言えますね。そのための大和型戦艦といえます」

「そもそも、大和型は艦隊決戦用の重戦艦なんだぜ?航空戦力の護衛は超甲巡と従来型で分担しつつ、紀伊型を使い回す。そういう想定だった。大和型戦艦は移動司令部の想定だったから、初期は武蔵で打ち止めのはずだった」

「ところが、仮想敵国のリベリオンが両洋艦隊計画で戦艦の量産を始め、他の列強も続々と新鋭艦を作り出し始め、更に40年代初頭では『38cm砲までの艦砲では、大型怪異はそうそう参らなくなった』ことから、40cmを超える大口径砲の研究に血眼になった。表向き、『将来に渡る怪異への優位性確保』を大義名分にして、大和型戦艦の46cm砲は完成しました。しかし、それでもM動乱では通じにくくなり、50口径に換装しましたが、小手先の長砲身化よりも根本的な大口径化に至り、それを地球連邦軍の手を借りて実現させたのです」

「むやみな初速向上で砲身の頻繁な交換を前提にするより、射撃精度を向上させるのが日本と扶桑海軍の結論だ。だが、貫通力を上げるための長砲身化は次世代艦砲と目されてた51cm砲を載せるには、大和型戦艦は小さすぎる事が分かってから妥協的に決まった事だ。それに日本は連射速度にこだわるから、ヤマトやアンドロメダの自動化された砲塔をつけた。21世紀の速射砲の速度で戦艦の主砲が撃たれるんだ。21世紀の海軍はみんな腰抜かしてるよ」

改装された大和型戦艦、それ以降の新型戦艦は史上最大規模の艦砲を速射砲と同等の速度で連射してくるため、21世紀の海軍は皆、驚愕した。戦艦主砲を実質の速射砲化したと捉えたからであるが、ウィッチ世界の海軍はそれ以上に『自国戦艦の攻撃力の陳腐化』を恐れた。戦艦の主砲発射速度は最速値での運用は実戦ではなされていないためと、常軌を逸した大口径化を進めつつ、それが機関銃並に連射してくるという事実。自国戦艦の陳腐化を否応なしに突きつける事になるからだ。(元々、技術限界と補給の利便性確保も兼ねての軍縮条約がある世界なので、攻撃性能はある程度の画一化がされていたため、日本連邦の常軌を逸した大口径砲は脅威そのものである)。51cm砲以降になると、カールスラントしか実験実績がなく、非実用的と見做された記録があるが、日本連邦は重防御のリベリオン戦艦に対抗するため、大和型戦艦の後の戦艦達は51cmと56cm砲を積んだ。『艦隊決戦に特化した進化は戦艦にあるまじき進化である』とする声もあったが、近代戦艦がかつての戦列艦の子孫である以上は当然の進化である。ウィッチ世界での運用法は戦列艦時代から大して変わっていないところも残っており、史実第二次大戦当時時点での陣形や戦術(第二次大戦で艦隊戦術は完成した)を得ているキングス・ユニオンと日本連邦の優位性は確立している。

「それに、自由リベリオンは人以外の戦力をあまり出せない立場にあるから、海軍力は日本連邦が最大になってる。キングス・ユニオンは軍縮に向かうから、たぶん、次の戦争までが『キングス・ユニオンが華々しく戦える』最後の時代になるだろうな」

「財政状況を考えると、それが必然よね」

「イギリスってお金ないんですか」

「植民地経営が限界に達してるし、本国の求心力も落ちてるからな。これからは日本連邦の時代だ。あ、お前ら。そこらじゅうに資材置いてあるから気ぃつけろよ」

大和の甲板上にはそこらじゅうに資材が置かれており、後部甲板には工事事務所代わりのバラック小屋が立っている。艦内も手が入れられているように、殆ど作り変えに近い。元々、予算の都合で妥協した点が改善され、核兵器にも耐えるほどに改造された。艦の運動性能もスラスターなどの設置で改善されたため、殆ど宇宙戦艦を水上で使うようなものだ。

「先輩、ドックで何を直してるんですか、大和は」

「細かい艤装品だよ。装甲そのものは核にも耐えるが、細かい艤装品はそうはいかんしな。それと改善だよ。戦艦同士の砲撃戦ともなれば主要部は無事でも、細かいところはダメージが入る。設置箇所とかの改善だよ。大和型戦艦はむしろ防御力重視タイプなんだがな」

「三連装三基は超弩級戦艦じゃオーソドックスよ。超大和は連装三基六門が有力だったけど、インフラの配慮の枷が外れたから、三連装四基や五基の配置が可能になったのよ。その代わりに水上艦としては大型化したけど、宇宙戦艦と見るなら小さい方よ」

「ヱルトリウムは70キロ、ゲッターエンペラーは太陽系くらいだしな。ラー・カイラムも内惑星用としては大型だが、外宇宙用としちゃ小さい方だ」

キロ単位の大きさがチラホラいる宇宙艦艇。マクロス級で1200〜1681m前後である。地球連邦軍の軍事力の象徴の一つともいえ、30世紀でも遠い後継が使用されている。ゲッターエンペラーの合体形態では太陽系と同程度である。インフレもいいところだ。

「インフレしてません?」

「ゲッターエンペラーに至っちゃ、空間支配能力まで持つから、更にすごい。戦闘力はZEROの抑止力と言っても過言じゃねぇ。大きけりゃ勝つってのがゲッターの論理らしい。因果の果てってのは、ゲームでしか、ゲッターエンペラーを知らねえガキの言うことだ」

ゲッターエンペラーは実際に生まれる個体は理性を備え、地球に友好的であれば庇護下に加える。敵に回れば情け容赦なく蹂躙する。ウィンダミアの現国王が恐れるのは、プロトカルチャーの技術すら無効化するであろう、ゲッターエンペラーの機械神じみた能力である。

「ゲッターエンペラーは真ゲッタードラゴンが聖ドラゴンになった後、真ゲッターと融合進化した末に生まれるゲッター。そこまで行くと、創造神だよ。下手すれば、世界すら創造できる。ZEROが自分に太刀打ちできる存在と素直に認める存在だ。インフレの極致だよ」

ゲッターエンペラーは創造神だろうか。それはまだわからないが、時間軸を無視して干渉し、ZEROをも恐れさせているのだけは確実である。

「なんかピンと来ませんよ」

「俺だってそうだ。だが、お前らも普通のウィッチと、平均的なシンフォギア装者からすれば、そういう存在だ」

プリキュア達は歌無しでノイズと戦える、物理法則を完全に無視できる存在であるため、シンフォギア世界出身者からの嫉妬を買っている面もある。立花響は、まったくの他世界では『ガングニールの絶対性は発揮されない』ことを頑なに否定しようとした。それが精神の不安定さを助長した感は否めない。模擬戦で自身の拳がドリームのシューティングスターに相殺された事が沖田総司に自我を侵食される結果を引き起こすきっかけの一つとなった。表面上は友好的かつ社交的に振る舞っていても、『自分の居場所を守るための破壊衝動が強まった』事が沖田総司による侵食を起こすきっかけであり、基本的に自分の得た力と立場に大きく依存する傾向が強いため、それ自体が不幸を招いたと言える。

「あいつらは基本的に出身世界の法に縛られるから、俺と調、箒みたいな真似はできん。それに、お前らみたいに、プライベートの時に変身できるわけじゃないからな。それも嫉妬の原因なんだろう。下手すると、個々の戦闘力レベルはバラバラだから、平均はかなり下がるな。あいつが沖田総司の魂と折り合いをつけん事には、こちらから手出しできん。時間をかけるしかないだろう」

シンフォギア装者は基本的に立花響の爆発力で状況を切り開いてきたため、それ以外の戦闘技量は個々を見るとバラバラである。翼とマリア、クリスは基本的に高い技術を持ち、プリキュア達と充分に渡り合えるが、子供切歌は得物に頼るところが大きく、それを封じられると脆さを見せる。この戦いで子供切歌は調は自分を見捨てたわけではないと知った事で徐々にポジティブ思考になっていくが、響はなのはによって助長された防衛衝動、頑なさ、自身に宿っていた沖田総司の魂との折り合いをつけさせないとならないため、問題の解決には時間をかけるしかないだろうという見解を示した黒江。ペリーヌ・クロステルマンのように、自身の体を貸し出す決断は立花響には難しいだろうという考えもあった。沖田総司は悪く言えば、日本刀での『殺人マシン』。立花響は『その手に何を持たないからこそ、他人と手を取り合える』とする信念を持っている。親和性が高いペリーヌ・クロステルマンと紅城トワ、モードレッドとは異なり、考えが真っ向から反するため、沖田総司に人格が『食われる』可能性も出ている。小日向未来の助言を乞うしかないと考える黒江であった。






――のび太は熱海、箱根で温泉に使った後、ガルダ級の定期便で欧州に戻った。64Fへの手みやげとなる機材と共に。ガルダ級は30世紀になっても同規模の後継機種が飛んでいる『空中艦艇』で、21世紀からすれば想像だもしない規模の飛行機である。ウィッチ世界においても、『同時代の輸送艦が霞む』輸送量で羨望されている。戦闘機や戦車も複数運べるし、MSも数十機積める。そんなガルダ級は欧州への物資、機材輸送に重宝されており、64が弾薬と燃料を潤沢に扱えるのはガルダ級の定期便によるものである。黒江達が視察に出ていた日のその二日後には欧州に到着した。ジャイアンの経営するスーパーマーケット『スーパージャイアンズ』からの差し入れ、骨川一族の経営する貿易会社からの差し入れもある。のび太は青年に成長後は戦いに備え、フェリーチェ/ことはに乗り物の操縦訓練をさせていた。ことはの学生時代、のび太はスネ夫のツテを頼り、アメリカで航空ベンチャー企業を起業し、成功を収めていたスネ夫の実弟(子がいないが、家族を欲しがった叔父の養子に出された弟)『骨川スネツグ』の経営する航空スクールに通わせ、操縦免許を取得させている。フェリーチェが問題なくオスプレイなどを操縦できるのは、スネツグに頼み込み、一通りのライセンスを取得させたためである。(のび太もセスナなどのライセンスはアメリカで取っている)飛行機の操縦は言語力などの都合もあり、21世紀の日本人には免許取得難度が高い。のび太は大学の夏休み、子供時代のメカトピア戦争の功で得ていた資金でアメリカに一時滞在し、その際に操縦ライセンスを取得している。ダイ・アナザー・デイが長引いていた当時、地球連邦軍はコズミック・イラ世界の混沌とした状況に自らの軍事力で決着をつけ、ミネルバ隊を事前に失っていたプラントは地球連邦軍の介入でまたも大損害を被り、人的損害以上に物的損害が絶望的なレベルに達して心を折られ、実質的な降伏となった。地球連合軍も地球連邦軍の電撃戦の前に地球連合首都を占領され、あっさりと戦闘行動を停止した。漁夫の利を得たオーブ首長国連邦だが、地球連邦政府の大使館が日本列島に置かれ、かつての日本国の領域を事実上の直轄領としたため、地球連邦政府の中枢を、かつて日本と呼ばれた国が何かしら担っている事を悟ったという。結局、コズミック・イラ世界は地球連合内部の大国『大西洋連邦』が没落し、プラントも物的大損害から、今後の軍事行動に枷をはめられたも同然、地球連邦軍に恭順したオーブと東アジア共和国が唯一の勝ち組になり、コズミック・イラ世界は地球連邦政府の事実上の自治領扱いになったという――


――のび太はコズミック・イラ世界から戦時賠償として、23世紀世界に渡った機体を自宅に保管させつつ、黒江の要請でコスモタイガーUを運んでいる。Gフォースの戦闘機部隊に複座型のサンプルを見せるためと、訓練に使用するためだ。仮想敵機として使用したり、偵察機として使うためで、ダイ・アナザー・デイでは複数の機体が出自を問わずに使用されているのが分かる。――









――日本連邦が加速度的に兵器を近代化させたことでの弊害も現れ、運用人員の育成が追いつかない問題が生じた。それを補い、戦線を支える要として、Gウィッチ(プリキュア含む)が期待されていた。この問題は自らの人的損害を許容しない上、失敗を犯した者への挽回のチャンスすら与えず、社会的抹殺にも躊躇しない日本国民の器量の小ささが扶桑に糾弾され、双方の社会的問題となっていた時勢であった事から、一騎当千の強者であるGウィッチ達は重宝された。更に言えば、連合軍最高機密であったはずの人型怪異の事が日本の『子供でも買える書籍』で明るみになり、同位国から『糾弾された』事で当時の関係者を魔女狩り的に処罰せねばならなくなる異例の事態に陥ったのも関係している。最終的にはマンネルヘイム大統領の罷免すら俎上に乗った。少しでも混乱を小さくするため、人種差別の意図はないと示すため、経済制裁を避けるため、智子にはスオムス白薔薇勲章の最高位のものが授与され、その功績が改めて公表された。『義勇独立飛行中隊の運用に制限を課していた』事はモントゴメリーが『前線の士気阻喪を防ぐための措置だった。いまさら鬼の首を取ったように騒いで、その人物の功績の全てを否定するのは中世的だ。私の中将への降格と給与数ヶ月分の返納、智子君への勲章授与で釣り合いは取れているはずだ!』との内容の声明を発信したが、智子への冷遇を助長させ、人種差別を煽ったとの非難は一向に止まず、懲罰人事を示唆された事は連合軍を震え上がらせた。政治的に窮した司令部は連合軍名義で、智子に莫大な慰労金を支払う事、扶桑が建造し始めた超大型空母二隻の建造費をスオムスとブリタニアが負担する事(見返りに富嶽と連山の提供がなされる)で決着をつけた。それしか問題を解決する方法がなかったからだ。ただし、それに関連して、江藤敏子が当時の関係者を代表する形で処罰を受けたのは言うまでもなく、日本的な解決として反発され、ウィッチクーデターへのきっかけの一つとなった――










――その問題に関連して、ミーナも『大尉』として黒江たちに仕えることを禊とし、階級章の星の数にこだわる事を止め、自然体で過ごすと言い、『西住まほらしい』実直なところを出している。また、クラン・クランも転生前の記憶が覚醒し、黒川エレン名義でプリキュア活動を再開し、戦列に加わった事で、プリキュア達の序列に変化が生じた。軍隊階級が比較的に高い北郷がキュアマカロン/琴爪ゆかりの転生体だったため、そこも事の複雑化を招いたが、基本的にプリキュア達は昭和ライダーと違い、縦社会的な序列意識が低かったので、のぞみが戦闘面での切り込み隊長という点は維持され、ゆかり(北郷)が作戦実行の責任者という事で落ち着いた。ライダーと違う意味での社会意識を持つが、基本的に古参のプリキュアほど戦闘向けの能力を持つため、基本的に殴り合いに適性がある古参が正面戦闘を担うのがプリキュア勢の特徴と言える。また、プリキュアとしてのスペックは敵味方ともに把握されているため、現役時代の極め技は通じないことも常態化しており、特訓として、火の玉ノックをやらされた事もある。そんな地獄の猛特訓が最初に身を結んだのはフェリーチェで、ガイアのスーパーロボット乗り『竜崎一矢』から空手を習っていた事、智子が闘将ダイモスの準同型機『烈将フォボス』のテストパイロットをアースとガイアの交流の一環で務めた際の動きを見て、やり方を覚えたなどの理由で『烈風正拳突き』を自然と会得。のび太の部屋に飾られている一枚の写真はノビスケが幼稚園バスごと襲われた際にマーチとルージュを驚愕させたシーンの一つを写したものだ。


――野比家――

「おーちつーくモフー!!」

モフルンが咄嗟にみらいの顔に覆いかぶさった事で酸欠になったみらいはその場に倒れ伏す。

「た、助かった。恩に着るぞ、モフルン」

「お安い御用モフ」

「マーチ、何これー!」

「今度はお前か〜?リコ」

「こ、こ、こ、これ!」

「ああ、それは野比氏ののご子息が誘拐されそうになった時にフェリーチェが新必殺技を決めた時のスナップだよ。フェリーチェがドラえもん氏に頼んで、道具で写真を撮ってもらった」

「で、で、で、でも、こ、これ、ろ、ロボットよね!?」

「これは大型のパワードスーツに入るもので、辛うじてロボットではない。この世界の日本のある都市で使われていたものだ。それをアッパーカットに近い正拳突きでまっ二つにしたのだ。これはその瞬間だ」

リコが持ってきた写真の解説を行うキュアマーチ。フェリーチェがノビスケの乗る幼稚園バスを守るため、パワードスーツを持ち出した犯罪者達に烈風正拳突きをぶちかました瞬間のものだ。

「えぇー!?ど、どういうことなの!?」

「話せば長い。はーちゃんの20年の努力を話さなければならないからな、これは。その時は私もルージュも、ぽか〜んと固まったよ。その時は二度も固まる羽目になったが…」

リコも驚くその写真の光景。元々、地力がミラクルとマジカルを上回るフェリーチェが更に特訓を受けたのと『覚えの良さ』が重なり合い、『烈風正拳突き』を使用した。かなり基礎を鍛え、更に名だたる講師に教えを乞いた事もあって実現したが、ルージュとマーチは驚愕のあまりに固まってしまった。ローリングサンダーと並び、『いつ覚えた!?』と言わんばかりの必殺技だが、キュアドリームと並び、プリキュア勢の重点育成枠に位置づけられているのと、フェリーチェ当人がマジンガーZEROへのリベンジを誓っている事から、貪欲に技を覚えていっているのである。ドリームとフェリーチェは『出身世界で何かしらの失敗などから、現役時代には折れなかったはずの心が折れる出来事に遭遇した』共通点を持ち、それぞれの出来事に由来して『不死鳥のように蘇る』事を望んでいる。のぞみ/ドリームはその傾向が強く、『プリキュアに託された願いが輝く限り、私は蘇る!』という信念を持つに至っているのだ。フェリーチェの拳は発光していおり、わずかながら、魔法つかいプリキュアの先代のプリキュアである『GO!プリンセスプリキュア』のキュアスカーレットを思わせる、鳳凰の形をしたオーラを身に纏っている事が判別可能であった。

「この鳳凰みたいなオーラは?」

「フェリーチェとドリームが共通して抱いている深層心理の表れだ。不死鳥。そう言えば分かるな?」

「まさか」

「それも長くなる。前に話した話の続きだ」

十六夜リコの知るところになったキュアドリームとキュアフェリーチェの共通点。キュアスカーレットのお鉢を奪うようだが、二人は不死鳥を再起を誓う自分たちのイメージビジョンとしている事が知らされ、フェリーチェとドリームがなぜ、そこに至ったのか。マーチの話は長くなりそうであり、小さくため息をつくリコだった。



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