外伝その383『P・プロジェクトの完遂』


――歴代プリキュアはのび太が実質的に仲介役となる形で続々登場していった。当時はプロジェクトが最終段階に入り、ローテーションを組める数まで確保されていた。特にピンクは歴代でも指折りの猛者であるドリーム、ピーチ、ハート、ラブリーの四名を擁し、それをメロディやルージュ達が支える構図となった――


「着任早々に通常装備の点検かぁ。戦車なら専門だけどなぁ」

「それ、充分に凄いよ…」

「あたしがいた世界じゃ、戦車使う競技が当たり前にあったしね。衰退気味だったけど」」

キュアハートは戦車道世界の逸見エリカが素体になっているため、戦車に関する知識はある。エリカの短気で癇癪持ちな点は相田マナとしての目覚めで『血気盛ん』という形に変質したものの、思考は受け継がれた。短期決戦を基本的に好み、重戦車を好む。とはいうものの、ドイツ系の足回りの複雑さは整備講習で散々に苦労したためか、嫌であるらしい。その割にティーガー系列は好きと公言しているため、ロゼッタの笑いを誘っていたりする。

「あ、地球連邦軍の61だ!」


喜ぶキュアハート。戦車は22世紀までは敢えて自動化を抑えた傾向の戦車もあったが、2161年の61式戦車の登場で淘汰された。(MSの登場で二線級兵器に格下げされたが、戦車の使用自体は継続されている)その61式のマイナーチェンジ型が開発され、再配備されているのは、戦車の価値が見直されたからだ。

「これが61式かぁ。本当は自動化が進められてたっていうけど…」

と、率直な感想のキュアラブリー。一年戦争後は機能せずに不要となった電子装備が取り外され、戦後第2世代相当に近いレベルにベトロニクスが退化した61式戦車。最近は対応型の装備があるマイナーチェンジ型の開発も進んでいるが、戦線には一年戦争の残存車両を再整備して配備したものしかなく、博物館で眠っていた車両すら動員している。これは軍縮時代に『一年戦争時に生産されていた予備車が廃棄された』関係で、再配備の決定は余剰兵器の廃棄を進めていたプリベンターも寝水に耳であり、同部署の勇み足が混乱を引き起こした結果に終わった。軍はドラえもんズにレストアしてもらい、博物館行きの車両すら動員した。それが新規開発再開の真相だ。

「戦車としては、自衛隊のとは雲泥のもんなんでしょ?」

「モノが違うよ。でも、兵器はスペックだけで強さは決まんないよ、ラブリー」

ジオンはマゼラ・アタックをMBT代わりにしていたが、実質は自走砲であるため、地上では鹵獲した相当数の61式を使用していた。当然だが、同士討ちも起こったため、グフやドムの配備を急いだ節がある。対して連邦は、MSを万能兵器とは考えていない。MSの運用思想は戦闘車両の発達であるデストロイドと違い、ヒーロー然としたスーパーロボットとは違う歩兵としての『一兵器』として見る風潮が出来上がった。歴代ガンダムの活躍は多くが戦術単位であり、戦略を左右するほどのスーパーロボットの神がかり的活躍には見劣りしがちだからだ。

「でも、マジンガーとかはヒーローだから、単純な兵器と考えない方がいいよ」

逸見エリカの嗜好が反映されたらしく、キュアハートはスーパーロボットの強さに惚れたらしき発言をする。逸見エリカはティーガーの足回りの整備性の劣悪さを詰りつつも、その伝説的強さには惚れていたため、好みはキュアハート/相田マナにもきちんと引き継がれたらしい。

「世界線によってはZとグレートは改修されつつ現役を続けるけど、ジャパニウム鉱石の採掘のために富士山を切り開くんだよぇ」

「ああ、どっかの漫画でも似たようなのあったね」

「のび太くんの世界だと、富士の切り開きが否決されて、平和利用研究に行き詰まってたところに『魔神皇帝』が発見されて、戦いに使うエネルギーとして使われる事で落ち着いたそうだけど、平和利用に行き詰まって、軍事利用で活路ってのも皮肉なものだよ」

光子力は富士山を切り開くという選択が環境保護の観点からタブーとされた影響で新エネルギーの座につく事が叶わず、マジンガー系列機体の動力として使われるに留まった。しかし、ZEROの出現でその可能性すら危うくなり、主動力の座も陽子エネルギーと光量子エネルギーに明け渡した。ZEROは自分の根幹の技術研究を図らずも自分の存在そのものが下火にさせてしまったのである。(光子力単独ではZEROに完全に対抗出来るマジンガーが存在し得ない事から)。

「でも、マジンガーZEROが強すぎて、光子力が単独じゃ、皇帝でも危うい事が分かって、ゴッドマジンガーとマジンエンペラーGが作られた。どれも光子力が主動力じゃない(マジンエンペラーGは設計を詰める段階で陽子炉とゲッター炉、光子力反応炉の複合に変更され、ゲッター線増幅炉を副動力、バックアップとスターターが光子力反応炉の三重構造である)マジンガー。だから、ZEROに対抗できるんだ。おまけに、ゴッドマジンガーはZの修復を改造に変更して作られたから、自分殺しに繋がる。それがZEROに対抗するための手段だよ。究極の、ね」

「その魔神はあの龍以上のバケモノなの?」

「現状じゃね。因果律にも介入できる存在だよ。あたし達じゃ勝てる可能性があるかどうか」

「そんな!」

「あたし達は所謂、『ブラックとホワイト』の存在から生まれた『初代プリキュアを後継するための』存在だからね。ブラックとホワイト、それとルミナスしか真っ向からは対抗できないよ、ソイツには」

ハートは逸見エリカとしての立場に置かれた事で、ZEROに自分達が対抗できる可能性を、戦車道の合間を縫う形で調査した。頭脳が歴代のピンクでは最高レベルの明晰であるが故に、ZEROが『グレートマジンガー』などの『偉大な初代の後継となる存在』へ異様に敵愾心を燃やす理由を悟り、ラブリーへそう明言する。自分達が対抗できるとすれば、ZEROの予測を上回るものを見せつける他はないと。

「神レベルの予測を上回るもの、か…」

「例えば、日本軍が本当に海底軍艦や鉄人28号を作れたのか。それなんて普通は予測出来ない。ZEROは穴があるんだよ。あそこまでマジンガーの神を気取ると、逆に光子力とは違う力が想像できなくなる。ゲッター線ですらね」

ハートは『ZEROの高次予測を超えるには、既存のすべての形態を超える必要がある』事を示唆した。それはスプラッシュスター以降の全プリキュアに当てはまり、その中では比較的に力が強く、ある意味ではプリキュアの戦闘面のリーダーといえるドリームは重要な存在なのだ。

「ハート。聞いていい?なんで、ドリームがシゴカれてるの」

「ドリームは中興の祖ってことだよ。私達の。咲さんと舞さんは人気があまり、ね」

ブルームとイーグレットはあまり後世に顧みられる事がないが、ドリームは度々、客演をしている事から、後代のプリキュアにも名を知られている。ブルームとイーグレットはのぞみの記憶によれば、2010年代の後半に入ると、顔合わせも滅多になかったとの事なので、ドリームとピーチに力が託された理由もそこにあると思われる。ハートはピンクとしての傾向はピーチの系譜に入るため、生前はメロディの妹分的扱いであったのもあり、ドリームとピーチには『触媒』としての力が備わっていると分析した。

「そう言えば、ミラクルは呼ばないの?」

「まだ戸籍も用意できてないから見送りだって。それに体系が違うしね、ミラクルの魔法」

「ホイップは?」

「キュアホイップって名前が英語圏だと、なんか危ない意味になるみたいで」

「…え?」

「伝え聞いただけなんだけどね。それで本業に専念…」

「もったいなーい」

「うん。支援要員にできると思うんだけど」

「あ、ハート。私、午後から別口で歌唱訓練だって」

「あー!声、ランカ・リーちゃんにそっくりだもんね、ラブリー」

「うーん。ハニーの仕事なんだよなぁ、歌。」

「大丈夫、音痴の私よりリズム取れてるよ!」

「喜ぶとこかな、それ…」

ラブリーは目立ちたがり屋な面もあるが、歌に自信がないらしい。ハートは励ますが、ハートの音痴ぶりはジャイアン並の壊滅的レベルなので、喜べない。黒江の命で歌唱訓練を受ける事になったラブリーであるが、メロディのような音楽のサラブレッドではない事、声がランカ・リーに似ているからという理由なので、ドキドキであった。

「大丈夫だって。メロディだって歌唱力をプロで通用するレベルに出来たんだし、ラブリーも」

「あれはするべきかな…?『キラッ★』」

「当然っしょ」

この後、キュアラブリーはキュアハートに促される形で歌唱訓練とダンス訓練を受け、『キラッ★』も完璧にこなせるまでになり、星間飛行と放課後オーバーフロウを歌う事になる。また、キュアビートがバックバンドのギターを引き受けているため、ある種の豪華さを感じさせた。同日、ルージュの後継者と言えるキュアソレイユの存在もコスモから正式に伝えられたが、コスモが『にゃん』という事に『あざとすぎ!!』とルージュがツッコんだという。







――秘密ドック――

「あ、キュアコスモ」

「え!?」

「や、ルージュ。そっちの世界線だと会うことがなかったって言うから、始めてかにゃ?」

「あんたが…2019年の?」

「そそ。キュアコスモ。5人目の『スター☆トゥインクルプリキュア』になるね」

「スター☆トゥインクルプリキュア……」

「元・猫型宇宙人としてお約束こなしてくれてるだけだから、キツイ事言いっこなしで頼むよ、ルージュ」

「わ、分かった…」

のび太に連絡を入れてきたキュアコスモ。現状の最新のプリキュアたる『スター☆トゥインクルプリキュア』の一人である。素体はプラウダ高校の幹部『ノンナ』であり、ノンナの冷静沈着さとキュアコスモ/ユニとしての奔放さを併せ持つ人格に再構築された。

「本題に入るけど、カチューシャ…、キュアピースだけど、ロシア留学が決まって、そっちにいけなくなったんだ」

「急な話だね」

「先方の関係者が気に入ったらしくて、クラーラのツテが」

「あの子、ロシア軍にツテがあるっていうけど、旧ソ連時代からの軍人の家?」

「帝政ロシアからだって」

「筋金入りだ」

「親戚にアフガン帰りが多いみたいだよ」

「おっそろしー…」

プラウダ高校はロシア軍の影響下にもあるため、戦車部隊の将校が臨時講師に招かれる事があるが、カチューシャの時代からは当たり前となり、カチューシャの代は史上最強とされる。現在、普段はユニ(人間体)の姿を取っているが、ノンナとしてのネイティブなロシア語、あらゆることへの高い技能を引き継いでおり、現状で現れているプリキュアでは最も軍人適性がある。

「クラーラも筋金入りの教育だしねぇ。ピースは相当に策士に育てておいたよ」

「ご苦労さま。君は?」

「直にそっちに行けそう。冬の大会が終われば暇ができるから」

「タイムマシンがあるんだし、カチューシャが出発する日でも構わないんだけど」

「ロシアでの日程がタイトらしくてね。それで」

「なるほど」

「とりあえず君たちの確約が取れた事で、第一次『プリキュア・プロジェクト』は完遂できそうだ」

「第一次?」

「ああ。60人以上いるからってんで、プロジェクトを何回かに分ける事になってね」

「ウルトラマンや仮面ライダーより人数多いからねぇ。わたし達」

「ライダーとウルトラマンは年に最大でも数人だが、スーパー戦隊並にポンポン増えるんだよなぁ、君たち」

『あ、アハハ……』

ルージュとコスモは同時に苦笑いする。自分達は3人から6人までの割合で毎年増えてきたからだ。ルージュはアラモードまでで歯止めがかかった世界の出身だが、コスモが出現する世界こそが本流であることを認識した。ドリームが本流に比較的近い世界の出身であり、自分はその更に支流の世界の出身だと悟った。

「平行世界の可能性、か…。」

「調ちゃんが自分に関係がある世界の調査に出かけてるように、いずれ君たちもそういう日が来るさ。ただ、今のあの子はみんなが魔改造したから、本流に近い世界の子たちは同位体も含めて腰抜かすことになるよ」

「内面から戦闘力に至るまで別人だもの。本来のあの子とは。迎えに行った時、あの子の同位体から質問されたわ。なんで、あそこまで別人になっているのかって。双子みたいなものって答えておいたけど、良かったのかな」

「的を射てる答えだよ。平行世界ごとに可能性はあるからね。基本世界に近ければ、余計に支流の世界で取られた選択には驚かれるもんさ」

「だね。そもそも、ドリームの世界も基本世界に近めだけど、支流世界の一つなわけだし、基本世界では幸せな一生のはずだよ」

コスモものび太の言葉を肯定する。のび太との交流で次元世界の仕組みを知ったためだろう。調は黒江達の教育のおかげか、調査のたびに『一暴れ』してしまう癖がついたものの、結果としては良い方向に物事が進む事が分かった。C世界では、歴代プリキュアと調が暴れた事が結果としては『抑止力』となり、以後の騒乱は起きることがなくなった。だが、A世界では、老師・童虎が錬金術師などの争いの根源を根底から断ったために立花響の精神不安定さが結果として増し、厄介な事となった。

「のび太くんが困ってる問題だけど、こっちでも調べたよ。その子は結果としては、敵だった女の子との戦いで蚊帳の外になった上、自分達以外の強大な力が結果的に敵を倒した事で救えなかった事が暴走の理由だね」

「ああ、ガングニールってギアを纏ってるあの子のことね。敵に回すと厄介な感じだけど」

「まさにそれさ。多分、ラ號やグレートマジンカイザー、黄金聖闘士っていう強大な存在がラスボスの子の精神的な救いを無視して倒したって考えてたんだろうね。救おうにも、邪神エリスに魂そのものが食われたんじゃ、オリンポス十二神でも打つ手がない。だから、エリスを全力で倒した。自分の力なら、エリスだけを殺せたのにって考えたんだろうけど、平行世界の神にその法則は通じないんだけどね」

キュアコスモの言う通り、シンフォギアA世界の立花響はガングニールの力を以てすれば、エリスだけを倒せたと考えているが、実際は世界の法則も違う、『本当に存在の位が神である』者にはガングニールの力は通じない。グングニル本来の必中性は保証されるが、理不尽なほどの神殺しの力の因果からは切り離される。元になったグングニルの純粋な宝具としての位もエクスカリバーよりは落ちるため、真に宝具がぶつかりあう戦いでは、必ずしも通常通りに力を発揮できるとはかぎらない。

「本当の神になると、自分の権能でどうにかしてくるしね。そうなると、純粋な打撃でどうにかするしかない。彼女達の世界の神というのは、『先史文明の生き残り』であって、本当の意味での神じゃない。それがあの子が納得できない真実だよ」

キュアコスモはずばりと言い当てる。シンフォギアは超古代文明が『宝具を模して作った』兵器の残骸を媒介に発現する力であり、媒介が”模造品”である以上は(ただし、ある意味では本物ではあるが)『真の宝具』やその霊格には及ばない。黒江の聖剣(エクスカリバー)のエネルギーをシンフォギアの特性で制御し、発散させる事が出来なかったり、低出力のエアにも為す術がなかった理由はそこにある。

「神に近い力を持っていようと、真の神の前には赤子同然、か…」

「君たちプリキュアは本当の意味で奇跡が許された存在だけど、シンフォギア装者はそうじゃない。それを変えるのも僕の仕事かもしれない」

のび太は真の意味で『奇跡』を知る男である。自身が奇跡的な出来事で自身の願うことを叶えた(ウソ800での一言など)経験から、シンフォギア装者は『血反吐を吐いて良い結果を勝ち取ったが、それは厳密に言うなら、それまでの努力が実ったという事であり、厳密に言う奇跡ではない』とした。奇跡とは、人間が通常、起こせる力や自然法則を超えて起こる出来事のこと。例えば、かつてのトップ部隊の指揮官だったオオタ・コウイチロウが想定された余命より長く生存できた(一年ほどであったが)ことなどを差す。

「どういう事?」

「奇跡は何も、シンフォギアを介して起こすだけじゃないって事だよ。ちょっと昔、地球連邦軍のある中佐が宇宙放射線病で余命宣告されたけど、それより一年近く長く生きれたっていう話があるけど、そういう事も奇跡なんだよ。それにマリアちゃんには嬉しい事もある」

「?」

「彼女には妹さんがいてね。彼女が10代の頃に亡くなったんだが、その転生がキュアマジカル、つまりはリコちゃんなんだよ」

『なぬぅ!?』

シンフォギア装者の一人『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』に起った奇跡。それは亡き妹『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』がキュアマジカル/十六夜リコに転生を遂げており、セレナとしての記憶が蘇った事だった。そのため、リコは事を荒立てないため、マリアの個人回線に連絡を入れ、自分がセレナ・カデンツァヴナ・イヴの転生である事を極秘に告げた。それは調も知っている。その場にいたからだ。

「マリアちゃん、凄く喜んだよ。輪廻転生の最たるものだし、何より最愛の妹が姿と名が変わっても、確かに存在してるからね。ただし、記憶は蘇ったけど、その意思はあくまでリコちゃんだから、装者じゃなくて、プリキュアチームで参戦することになるね」


「まぁ、それが妥当でしょうね」

魂の記憶が覚醒めたため、理論上、十六夜リコはシンフォギア装者にもなれるが、『姉さんにギアが受け継がれたのなら、(リコとしても次女であるため、現在の立場での実姉との区別のため、セレナとしての呼び方を通したいとの事)私が装者に戻るわけにはいかないし、それに、今の私はプリキュアだから』と固辞している。切歌の態度が軟化し始めたのは、実はダイ・アナザー・デイでの装者の様子を聞いたリコが記憶の覚醒後に裏で融和のために動いたためである。リコも『不思議な感じだけど、マリア姉さんと一緒に生きれなかった償いをしたい』と語っており、彼女なりにセレナ・カデンツァヴナ・イヴとしての記憶と向き合う事をのび太へ伝えている。リコは切歌の頑なになった心を解す役目を引き受け、ダイ・アナザー・デイに直接的でないにしろ、貢献したのである。マリアが嬉しがったのは『妹が転生し、幸せに暮らしている』事だが、生前と違い、プリキュアとなって戦っていた点は割り切った(当然だが、生まれ変わった後の人生までは口出しする権利は自分にはないとした。)。この事は今のところ、調、切歌、マリアの三人の秘密である。立場上、リコには『十六夜リコ』として(本来は魔法界の住人であるが、家族は辛うじて無事であったものの、ミッドチルダに移住していたが、自分は地球人として生きるので、便宜的に現役時に使っていた名字をそのまま戸籍に記載)の人生があるからだ。(また、黒江が結果的に調の人生を変えた事で、立花響の反発を招いた教訓から、当面はリコがセレナの転生である事は伏せる事にした)

「綾香さんが結果的に調ちゃんの人生を変えた事で、あの子の反発を招いた教訓でもあるよ。あの子は綾香さんの行った全てを引き継がせたかったようだけど、別人の代役のいいところまで引き続ぐのは無理だよ。小日向未来ちゃんも困ってたよ」

立花響はある種の頑固さを持つが、それが結果的に彼女の負の側面を表面化させてしまい、調との折り合いが悪くなる、小日向未来にさえ引かれてしまった。そのショックが今回の精神侵食という事態を招いた。もっとも、本来は明朗快活な人物であるため、イレギュラーな出来事である『入れ替わり』さえ受け入れられれば、また違った結果となったのだが…。

「それって、あの子のわがままじゃん」

「そうなんだよ。桜セイバーをあの子の体から分離させるにしても、小日向未来ちゃんに説得してもらわないとね」

のび太も小日向未来とは調の出奔の際の手引きをしてもらって以来、親交がある。のび太に時間軸は意味を成さない事も彼女は知っている。キュアコスモ(通信越し)とキュアルージュはのび太が小日向未来に望みをかけている事を知ったのだった。















――のび太たちが打倒を目指す存在の一つ『マジンガーZERO』。その実態はZと兜甲児が抱いていた負の念がZの体を支配し、変容させてしまった末に誕生した存在で、全てを0に還す破界神というべき存在だが、明確な弱点も存在した――

『神とか偉そうな事を言っても、付喪神の類のZEROは自分の知る因果にしか導くことが出来ない、異界の神や創世の神、事象の化身たる神々とは格が違う、そして生まれたばかりの魂に等しい根源しか持たないものが確固たる“オリジン”たる存在に打ち勝てるか?って事なんだ』

兜甲児はZ神の言葉を借りる形で、ZEROに隠された弱点を語っている。ZEROは付喪神であり、創世神や事象の化身の神々より格が落ちる存在であると。彼以前に『最強の魔神』という存在意義を負って生まれた可能性の結晶である『魔神皇帝や魔神の神』には敗れ去るのみであるとも語り、歪んだ力を振りかざすZEROは正統な魔神の系譜たる魔神皇帝や魔神の神を恐れる事を明示した。Z神が弓教授や兜剣造にマジンエンペラーGとゴッドマジンガーを造らせたのはそれを実現させるためである。のび太達は『ZEROという神であり、悪魔でもある存在を超える』事を目指し、自らにその使命を課している。ZEROは自らを脅かせる存在の出現を恐れ、グレートマジンガーなどを憎悪している。それは歴代プリキュアにも及んでいるためプリキュア達も当事者である。真っ向から素でZEROと戦えるのは『全てのプリキュアの根源』たるなぎさとほのか、ひかりのみという予測は既に伝えられており、他の歴代プリキュア達は『戦いで戦いの答えを見つける』という趣旨でダイ・アナザー・デイに従軍している。そして、かつての自分達を超えた領域に達するために。既にかつての最強形態と素で戦える超人達と戦っているプリキュア達。その中でも、ドリームはリーダーシップを執る事が期待されているため、重点育成枠に入れられたわけだ。神を超え、悪魔を倒す。その言葉通り、のび太達は邪神と言える、マジンガーZが変容した一柱の魔神との戦いへ邁進していく…。――








――一方、扶桑皇国は長門以前の旧型戦艦を海援隊へ譲渡したりした代価として、新世代戦艦の用意を進めた。退役させられた旧型戦艦の中には、多額の金をかけて近代化したばかりの船も含まれていたからだ。また、日本側の認識と違い、超大国になりつつある扶桑に取っては、どうしても二桁の戦艦が必要だったため、予定を覆しても大和型戦艦以降の重戦艦は『移動砲台』としても必要だったために量産された。扶桑で改大和型戦艦最後の一隻として整備された『三河』は予備艦も兼ねていたが、日本への駐留の必要が生じたため、播磨型をもう一隻ほど用意する事になっていた。そのため、建艦計画はラ級に切り替わるまでに大和型戦艦からもう二個ほど生じたと言える。――



――扶桑 艦政本部――


「元々、大和型戦艦は移動砲台としてウィッチからは認識されていた時期もあるが、本来は『敵艦を屠るために設計された』のです。単に移動砲台と言うなら、速度と引き換えに、防御性能を妥協しております」

日本のミリタリー系雑誌の取材に答える艦政本部の技官。大和型戦艦はその時点の扶桑(日本)が取れる最善の設計の戦艦であり、空母の護衛艦としての汎用性は求められなかったとし、元来は日本側同様の姿を持っていた事、『M動乱で格上のドイツ戦艦と渡り合うため、近代化を施した』として、高性能化を進めた事情を説明する。

「貴方方はアニメの戦艦のイメージに毒されている。戦艦というものは元来、同型艦と護衛艦を伴って運用される兵器であり、単艦で艦隊と戦うような運用はどの海軍も想定しておりません。それと、旧日本軍が取った運用はイレギュラーなものであって…」


艦政本部としても、大和型戦艦は『制空権下での艦隊決戦を想定したモノであり、坊ノ岬沖海戦のような事例は極めてイレギュラー的なものというのが本音であった。近代化は日本側を黙らすために行われたのが半分で、1940年代の水準ではオーバースペックな力を持たされた。特に、ショックカノン砲塔を用いた実体弾射撃は1940年代水準で造られる50cm砲の破壊力を超える。その証明は数度の海戦でのアイオワ級以前の戦艦らのあっけない最期で示されている。50口径46cm砲自体、本来は如何な敵戦艦を貫ける。だが、ドイツの別世界の防御装甲がそれを上回ったため、扶桑は50cm砲時代に舵を切り、実現させた。要するに、バダンとの建艦競争が扶桑を40年代の技術では『砲身命数の面から現実的でない』とされる50cm砲の開発に踏み切らせたのである。自力では無理がやはり生じたため、地球連邦軍の技術で製造(アンドロメダ用の製造ラインを使用)し、どうにかした。その兼ね合いで近代化されたが、船体上部構造物の基本レイアウトは大和型戦艦のそれと同様で、大和型戦艦の設計の完成度の高さが窺える。また、21世紀基準では要らないと揶揄される重装甲も23世紀以降の時代の基準により、構成材を超合金や硬化テクタイト板にすることで備え、21世紀で存在する如何な武器にも耐える。速力も核融合炉で30ノット以上をキープしており、単純なハードウェアで言うなら、現時点の世界最高峰であると語る技官。実際、改良された大和型戦艦は対艦戦闘では大変な働きを見せ、他国の戦艦がリベリオンの物量に屈してゆく中、戦線の屋台骨となっている。敵の戦艦はそれを除けば、世界最高レベルの性能を持つものが季節ごとに現れる始末なため、日本連邦、とりわけ扶桑としても、二桁台の戦艦の保有数は必須だった。核兵器が栄えなければ、戦艦は存在し続けられた証明で、空母航空団の維持費の高額化が皮肉な事にその助けとなった。また、攻撃型潜水艦の研究が遅れていた上、対地攻撃に役に立たないとされた事もあり、ウィッチ世界では日英独以外に研究に熱心な国は現れなかった。空母航空団も空母航空団で、史実戦後型空母で戦中型空母の群れと対峙する羽目になり、大規模海戦を想定していない時代のドクトリンでは戦艦も参加する大規模海戦には適応できないという事が露呈し、空母機動部隊は複数艦の集中運用という大戦型の運用に回帰しつつある。その過程で戦艦の存在が見直されたのは歴史の皮肉であった。(ウィッチ世界では、大規模海戦が定期的に起こるため、各国海軍に取っては体の良い兵器の実験場扱いもされている)のは確かであり、それを差して『ショー扱いされている』と憤慨する海軍軍人も多い)

「この世界はあなた方の世界と異なる軍事的発達を辿るでしょう。一次的に怪異という存在を考える必要がありますし、戦艦が滅ぶこともない。ただし、大国のみでしょうな」

その言葉どおり、海軍大国、あるいはかつてはそうだった国々しか戦艦を保有する国々は現れず、潜水艦が史実ほどの地位にのし上がれない世界である事もあり、空母と戦艦はウィッチ世界では『花形』であり続ける。『海底軍艦』が潜水艦と戦艦を兼任可能な性能を備えていたのも要因だろう。元々、潜水艦を攻撃に転用する事にウィッチ閥が強く反対をしていたため、それを回避するための海底軍艦であった。(潜水機能がある戦艦と言い訳ができるため)もっとも、元来の轟天計画でラ號が計画されたのは『既存の戦艦や潜水艦では対抗しきれない』とレイテ沖海戦で日本海軍が遅まきながら悟り、当時最高性能の大和型戦艦に潜水機能をつける発想からであったが…。




――技官のインタビューはダイ・アナザー・デイ中でありつつも、扶桑皇国の余裕のある国力を示すため、通常通りに行われた。扶桑皇国はアジア唯一無二の近代工業国である一方、古くからブリタニアの同盟国である。その点ではカールスラントの仮想敵国であった。カールスラントは仮想敵国と認識するゲーリングの意向もあり、最新技術の輸出を渋ったが、国際問題化を嫌うドイツにより、外貨獲得手段であるライセンス契約を格安にされ、アメリカが扶桑に軍事先進技術を有償提供したことで軍事技術での優位性と外貨獲得手段を一晩にして喪失。軍縮も重なって軍事的に衰退し始める。ドイツはカールスラントの抗議にユーロファイター・タイフーンの投入を以て応え、それに慌てた日本側が現有戦闘機の投入を検討するが、野党の反対で政治的に却下された。だが、F-4EJ改はまともな稼働が困難なほどに老朽化した個体が大半であったため、アメリカから機体を借りる事も取り沙汰された。だが、今度は防衛装備庁で喧々諤々の議論になってしまい、業を煮やした黒江は結局、地球連邦軍から戦闘機を供与してもらい、現地で運用する最終手段を取った。――


「閣下、よろしいので?セイバーフィッシュを我々が使用して」

「ファントムを点検させたが、老朽化がひどい。あれでは事故が必ず起こって、マスコミのいい標的にされる。綾香が貴様らにセイバーフィッシュを与えたのは、それを避けるためだ」

圭子は黒江の代理で、Gフォースの視察を行った。廃棄処分代わりに送ったと疑われるファントムに代わり、彼らにはセイバーフィッシュが与えられた。実態は恒星間航行艦用の艦上機であるコスモタイガーの配備で余剰になった旧式機体の『払い下げ』に近いが、21世紀基準で言えば、F-35も霞む高性能機であるため、評判は上々であった。

「第四世代以前に近い機体形状だが、アクティブステルスでF-35以上にステルス性があり、機動力もある。下手にF-35を使うより、あれを使ったほうがいいぞ」

「あれで旧式ですか」

「コアブースターやコスモタイガーが出てきたからな。コスモタイガーだろうと、VFだろうと、大気圏では耐熱限界に縛られる。大気圏の戦闘じゃ、空戦性能は大して差がない。空戦戦術は飽和状態に近いんだよ、23世紀の時点で」

地球連邦軍は空戦では、30世紀に至るまで精強とされ続ける。取りうるあらゆる空戦戦術が23世紀までに出尽くすからだ。ダイ・アナザー・デイでもその精強さを発揮しており、イサム・ダイソン一人で米空軍・自衛隊の平均的パイロット20人分に相当する働きとされる。(その戦果が彼が呼び戻された最大の理由である)。民間軍事会社に転職したパイロットを当時の連邦空軍司令がむりやり再招集したからで、当時の民間軍事会社とで問題になっていた。(軍は高額な違約金を企業に支払う羽目になったが、結果的には民間軍事会社に転職したパイロットを軍の意向で動員できるようになった)だが、民間軍事会社は21世紀日本などでは『金儲けの傭兵』同然に見られ、毒蛇のごとく嫌われ者であるため、軍隊の階級を持っている事が彼らにとっては良い隠れ蓑であるのも事実である。(一方で、クラン・クランのように、プリキュア化した事で必要が生じ、正規軍に移籍した者もいる)民間軍事会社は正規軍が軍縮した時代に栄えたが、『正規軍の有望な人材を引き抜いている』と反発。手当り次第に再招集をかけ、民間軍事会社を混乱させてしまった。政治的に手打ちにするため、レビル将軍とゴップ議長は『有事の際に、民間軍事会社のトップの部隊を予備役部隊として動員できる』という協定を結んだ。S.M.Sのマクロスクォーターとスカル隊、ケイオスのマクロス・エリシオンとワルキューレはダイ・アナザー・デイを以て、実質的にロンド・ベルに組み込まれた。23世紀でも有事であるのを名目に、だ。民間軍事会社の際限ない巨大化を懸念した政府が空軍の動きを黙認したのも事実であった。

「地球連邦軍のいる時代じゃ、民間軍事会社も相当に台頭してるが、21世紀の日本じゃ嫌われ者だからな。伏せてる」

「海保のせいですね」

「ああ。連中のせいで海援隊に迷惑がかかったからな。最も、民間軍事会社があまり巨大化するのも考えもんだがな。仕方ないから、地球連邦軍は有事に独立部隊の指揮下に入れる事で妥協点を見出した。そうでないと、先方もショーバイ上がったりだしな」

「確かに」

「連邦もせっかく育てた人材を引き抜かれるのは面白くないし、民間軍事会社には名誉の戦死はないから、遺族にも転職した当人への遺恨が残る。だから、お互いに揉めると色々と不味いから、『有事に徴用して、予備役扱いする』事にした。これで名誉の戦死扱いに出来るし、民間軍事会社は政府に潰されないで済む。それで予備役の多くを賄う事になったそうだ」


オズマ・リーなども籍は便宜上、ロンド・ベルに移っている事になっているため、結果としては空軍の暴走は地球連邦軍の人材流出に歯止めをかけられたが、一般人を中心に根強い民間軍事会社への反感を背景に、民間軍事会社が政治に振り回されたことには変わりはない。だが、アウトソーシングの行き過ぎも問題ではあり、有事の危険が迫っているのを知っているユング・フロイト次期大統領の意向もあり、次なる戦乱に備えての軍事面の人的資源の集中が図られたとも言える。ダイ・アナザー・デイはウィッチ世界の海援隊、地球連邦にとってのケイオスとS.M.Sの実務部門の岐路になり、以後、二者は地球連邦軍の予備役部隊として、海援隊は日本連邦の実質的な第二海軍として組織の生き残りを図っていく事になる。

「いいんですか?」

「金さえ保証すれば、傭兵は裏切らない。なんてよく言われるが、政府の紐付きになるのを嫌う連中も多い。これからどうなることやら」

圭子のいう通り、地球連邦と日本連邦。2つの時代の『連邦』が取った施策はどう出るか。吉か、凶か。圭子も初めて『体験する』出来事だった。



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