IS学園、学年別トーナメント

一学期の中でも一番のイベントであり、生徒達にとってはこれまでの成果を見せる場でもある為、気合の入り方も違う

観客席は各国政府関係者、研究所員、企業のエージェントなどで満員御礼の様子であり、一般大衆とは違った雰囲気が感じられる

地上最強の兵器と称されているISの搭乗者候補を見定めるともなれば各国のパワーバランスや威信にも関わる。またIS学園生徒会長である更識楯無は日本人の暗部の家系でありながらもロシアの国家代表にまでなっており、実力があれば他国の人間だろうと引き抜かれる事だってあり得る

IS学園に在学している代表候補生達は良くも悪くも看板であり、実力的には二番手や三番手であったりテストパイロットと国の試作機の性能公開なのだろうと思われる。本命の実力者や主力の人材は本国の方で最先端技術を集めたISを使っているのだろう

このイベントに来る人達の目的は一年生・二年生の場合は実力や今後の伸びしろを見極める為、三年生は卒業後や引き抜きの為。卒業してもIS関連の企業などに就職する事は確実である

第一回戦が始まろうとしている中、更衣室ではISスーツに着替えた白い少年が備え付けのモニターから宙に浮かぶ四つの機影を見ていた

一般の平均身長よりも小柄な体躯と童顔は実年齢以下の印象を受けるが、宝石の様に美しく輝く紅い瞳からは確固とした闘志が垣間見える

絶世の美貌の一つと称されるに相応しい中性的な魅力を持つ容姿ではあるが、凛々しく引き締まった表情は普段の可愛らしさとは違った美しさを醸し出している

「各国の注目の的である一夏さんが初戦で戦う事になるのは運が良いと言うべきか、悪いと言うべきか・・・」

隣で並んで立っているシャルルも少年と同じ様にモニターでアリーナの様子を見ながら答えた。時折、少年の普段とは違う凛々しい表情という割と貴重な一面をチラチラと横目で見ながら、こんな表情もするんだ・・・と頬を染めていた

「それよりも一夏の相手が問題じゃないかな。彼女、シュヴァンツが手助けした相手なんでしょ?」

「はい・・・こんなにも早く機会が巡って来るとは思いませんでしたけどね」

「一夏、負けるかも・・・いや、確実に負ける」

シャルルの言葉に少年は首を縦に振って同意する

少年の予想では彼女とは準決勝や決勝で当たると予想していただけに、一夏が初戦敗退をしてしまう可能性が高い

だが、これは良いチャンスでもあった

一年生でも屈指の強者である彼女との戦いは一夏にとって良い経験となるだろう・・・それに少年は一夏に期待していた

「ですが・・・僕は期待してます。一夏さんの可能性に」

「随分と一夏を評価してるんだね」

「はい・・・だって鍛えましたから」

意外そうな表情を浮かべる彼女に少年は笑顔で答えた。何か仕込んであるなと予想がつくであろう笑みに、これは予想外の展開もあるかな?とシャルルは面白そうに画面を見るのだった

「ところで・・・何でそんなにツヤツヤなの?」

「気にしないで下さい」

前日の訓練が終わった後、着替えている最中に乱入してきた鈴とセシリアに、試合に出られない鬱憤晴らしで搾り取られていた

一年でも上位の技量を持つ二人ではあったが、性に関しては初心者であり少年の前には“ち○ぽには勝てなかったよ”堕ちで終わったが・・・



「むむむ・・・・・・」

「なにがむむむ、なんですか?」

同じ頃、管制室で試合の用意をしていた千冬はいつぞやの如く、ニュータイプ的な直感を感じていた





“更識簪・・・日本の代表候補生”

織斑一夏はアリーナ上空で試合開始を待ちながら目の前の相手を見つめていた。その表情は真剣そのものであり、モニターに映し出された彼の表情に見惚れる女生徒も少なからずいた

一方の簪は一夏と視線を合わせようとせず、内気で気弱そうな雰囲気を醸し出していた

“本当に代表候補生なのか・・・?”

内心で目の前の少女の様子を訝しみながら一夏は精神を研ぎ澄ましていた

自分の知っている代表候補生はセシリアと鈴くらいしか知らないので国家代表候補生がどんな人物が多いのか知らないが、少なくとも二人は常に自信を持ち堂々とした態度でいた。代表候補であろうとも背負う看板に負けぬ様に胸を張り、自分は強者であると言う自尊心を持って美しく立っていた。代表候補生だからといって自信家で無ければいけないと言う訳では無いが、こうも弱気そうなものどうなんだ?と思わざるを得ないし、これでは大した事の無い奴と舐められてしまう気がしてならない
彼女の後ろではクラスメイトである布仏本音、通称『のほほんさん』がいつも通り、変わる事の無い微笑みを浮かべていた。常に変わる事の無いニコニコとした笑みが今だけは、本性を隠した仮面のようにも思えて不気味さを匂わせている。まるで獲物を前にした暗殺者の様な恐ろしさを感じた

“のほほんさん・・・この状況でもマイペースとは大物なのか、それとも・・・”

ここに来てセシリアや鈴の様な代表候補生や先輩や箒みたいな熟達者という影に隠れ、常にマイペースのままでいる本音に対しても油断は出来ないと、少年達との訓練で少なからず掘り起こされた察知力が警告しており、武器を握る力が一層強くなる

すると簪は一夏へと鋭い視線を向ける。先程まで浮かべていた気弱そうな表情とは違った冷たい様な瞳からは、はっきりとした意志を感じられる

「私は貴方が嫌い」

「えっ・・・?」

突然、嫌いと言われて困惑する一夏。学園でも一夏を嫌いという女尊男卑思考の女性はいるが、こうもストレートに嫌いという言葉を初対面の相手に言われるのは初めてだった

「な、なんでだよ・・・」

「正確には嫌いだった・・・別に貴方は悪く無い」

簪は目を細めて一夏を見据える。その瞳にあるのは静かな闘志であり、彼女が強いという事実が視覚情報と肌を通して伝わってくる

その闘気に当てられて腕が震えてきたのは恐怖か、それとも武者震いなのかと言われれば、多分その両方なのだろう

唐突な簪の発言に多少気勢が削がれそうになったが、彼女の陰鬱とも感じられる冷たい殺気に当てられて体が臨戦態勢に移っていた

強敵と戦ってゆく事で自分は強くなれる。護られるだけでなく自分も誰かを護れる事にまた一歩進める

それだけで充分だった

「ねぇ、かんちゃ〜ん。もっと気楽にやろ〜?」

「本音、ちょっと黙ってて・・・・ただ、自分の気持ちに区切りをつけさせて貰う」

簪は『打鉄・弐式』の武装から薙刀を呼び出して構える。その構えはブランクがあると一夏であっても十分に強い熟達者のしっかりとした型の構えである事が分かった。不用意に斬りかかろうとすれば、逆に返り討ちにされてしまうと感じる位には隙が見当たらない

一夏は自らのパートナーである相川清香に目を向けると

「大丈夫か?清香」

「う、うん・・・ちょっと緊張してるだけ」

「そうか・・・安心しろ。俺が守ってやる」

「あ・・・ありがとう」

緊張の所為か、体を震わせている清香に優しく声を掛ける一夏。テメェはこんな時でも口説いてフラグ建てるのか、と思うだろうが一夏にしてみれば言葉通りの意味なのだから質が悪い。これは彼なりに清香の気を楽にさせようとしているのと、自分なりの決意なのだろうと思える。ついでに清香に向けられる視線が何やら鋭い物に変わった様な気がするが、気のせいだろう。決してパートナーになれなかった幼馴染が嫉妬の視線を向けてなどいないのだ。

「俺達だって頑張って訓練したんだ。その成果を見せてやろうぜ!」

「うん。そうだね」

試合開始の合図が告げられた瞬間、一夏は最大出力で向かって行った






その頃、IS学園の地下特別区画では、黒い防弾仕様のコートとバイザーで身を包んだ黒い少年が通路を疾走していた。その肩には三角定規の様な装置が付けられており紫色の光を放っていた。

「限界まで残り三十分・・・」

長い様に思えて短い制限時間だが、早く終わらせれば良いだけだと判断して思って足を進めてゆく。IS学園の中でも機密が高い区画であり通路内に人気は無く。静寂に包まれた空間に駆ける足音のみが響いている。

ある保管庫の強化扉の前で立ち止まると扉の認証システムに手を翳す

するとロックが自然に解除されてゆき、強化扉が次々と開いてゆく。

“時間は無い”

ある程度、セキュリティーを誤魔化せるとはいえ、気付かれるのは時間の問題だろうと黒い少年は予測する。

全ての強化扉が開き切り、足早に保管庫へと侵入すると目標の前で立ち止まる

「目標確認」

その視線の先にあったのは石像・・・否、石像と化したIS『暮桜』であった

かつて第二回モンド・グロッソにて織斑千冬が駆っていた専用機であり、ある私闘に於いて彼女を護る為にシステム凍結した機体である

黒い少年はまるで聖母像を眺めるかの様な表情を浮かべながら、ゆっくりとした足取りで石像に近づいてゆく

「もう一度だけ目覚めてもらう」

そう告げて両手で石像に触れた途端、石像が光り輝くと一瞬の内にISコアとなって手の平にあった。代用品をその場に置いてゆくと学園から脱出すべく駆け出す

“入り口を過ぎたと同時にシステムを起動し撤退する”

だが、そう簡単に終わらないのが世の中であり、フラグである





「・・・強いですね」

「うん。まさかここまでとは思わなかったよ」

場所は戻り、少年とシャルルが試合の感想を漏らした。二人の視線の先にあるモニターに表示されているのは一夏が斬りかかった所を簪の駆る打鉄・弐式が薙刀の刃で受け流し、柄で脇腹に叩き込んでいる。大したダメージにはなっていないが衝撃で体勢が崩れた所に追撃を仕掛けられて防戦一方になっている。だが訓練の成果もあってかシールドエネルギーを削られはしても未だに粘り続けている

「射撃だけかと思えば近接戦闘もこなす万能。それも高い水準で」

「接近戦なら一夏に分があると思ったんだけど・・・これは勝ち目無しかな?」

一夏自身は射撃武装に慣れておらず、白式も一振りの剣しか武装が無い以上は近接戦闘しか無いのだが、それでさえも不利となると厳しい。距離を離せば大量のミサイルと荷電粒子砲の餌食となってしまう。故に一夏は距離を離せずに必死に食らいつくしかない。それを簪の方も理解しているらしいが、引き撃ちによる一方的なワンサイドゲームに徹する事は無く、敢えて一夏と同じ接近戦によって自分とISの強さを見せつけようとしている。

憧れと羨望を抱きながら己も同じ様になろうと、守って見せると自らに高い目標を課しているが力不足故に足掻き続ける弟

自分では敵わないと諦めて、殻の内側へ籠りながらも捨てられぬ意地とプライドで足掻いていた妹

「自分よりも優れた姉を持った者同士の戦い・・・ですね」

一夏のパートナーである清香も、簪のパートナーである本音の巧みな動きと射撃に苦戦しておりシールドエネルギーだけでなく気力や体力も削られている。急緩付けたマイペースな機動とフェイント誘導を混ぜ合わせた射撃によって戦いの主導権を握っていた。ついでに清香が手にしている武装はアサルトライフルだが、腰にワイヤーでパックバックなどを吊るしていた

「確かにこのままだと一夏さんと清香さんに勝ち目はないですね・・・ですが」

「何か秘策でもあるの?」

「何の為に二人にあの訓練させたと思っているんですか?そろそろ良い具合だと思いますよ」

少年は何かを待っている様な目でモニターに映る一夏を見ている。誰もがこのまま一夏が力尽きて負けてしまうだろうと予想している戦いである筈なのだが、彼だけは人間の可能性を信じているとでも言いたげな表情であった

“一体、シュヴァンツは何を待っているんだろう?”

思わせぶりな言葉を気にしながらシャルルはモニターに視線を戻しても、相変わらず苦戦している一夏達の姿が映し出されているだけであり、勝機など無いとしか思えなかった





“強い・・・・・流石は代表候補生って事か”

一夏もまた似たような感想だった

簪による薙刀の乱舞が防御を崩さんと様々な角度から叩き込まれる。手に持つ雪片弐型で何とか防いでいるが対応するだけで精一杯な状況であり、いずれ防御は崩されて必殺の一撃を受けるだろう

現在の織斑一夏では更識簪に勝てない。経験も実力も彼女の方が上回っている。

仮にも暗部の家系に生まれた彼女に、剣道優勝経験者とはいえブランク有りの一般人だった一夏に勝てる要素は無い。彼が千冬の様に人外染みた才能があれば別ではあるが・・・

余りにも実力が離れ過ぎているならば策など無意味になってしまうが、一夏には『零落白夜』がある

しかし一発逆転を可能としてしまう必殺の一撃は相手にも警戒されているだろう

逆を言えば相手は『零落白夜』しか警戒していないという事だ

それ以外は対応出来ると言う彼女の自信の表れであり、荷電粒子砲を当てる隙があったのに見逃した場面もあった事から事実だろう

改めて代表候補生の実力を思い知り、自分がまだまだ未熟であると思い知らされる

“それでも諦める理由にはならない!”

だからこそ彼女の様な強者と戦う事が自らの糧となる。そう断言できる。この程度の壁で諦める様では自分が目指している頂に届く事など夢のまた夢でしかない。この程度の苦難で立ち止まる訳にはいかないのだ

チラリと清香の方に意識を向けると、彼女の方も捉え所の無い様な本音の動きに苦戦していたるが、まだ撃破はされていない

「______おおおおおおおおおお!!!」

すると清香と視線が合った直後、『零落白夜』を発動させると『瞬時加速』で一気に簪へと斬りかかった。急激な加速による踏込みと共に放たれる居合いの一閃

「甘い」

だが御見通しと言わんばかりに簪も『瞬時加速』を行っていた

彼女の姿が一瞬ぶれた様に見えた直後、突き刺さった一撃に意識を刈り取られそうになる

「がっ・・・・・はっ!」

『瞬時加速』によって強化された薙刀の突きによる衝撃で圧迫され、肺から空気を吐き出しながら後ろへと飛ばされる一夏。体勢が崩れた状態では回避も防御する事すらままならず、箒やシャルルがこのまま負けてしまうと息を呑む

「これで・・・終わり」

そこへ簪が止めを刺すべく再び突撃する。スラスターが最大出力で彼女を加速させて急降下してゆく

まるで獲物を狩る猛禽類の様に迫る簪を何とか開いた瞳で視界に捉える一夏だが体勢を整える時間も無い

絶体絶命の状況

その光景を見ていた少年は笑っている。しかしそれは嘲りや諦めの感情からでは無い

どんな苦境でも決して勝利を諦めない意志を持った一夏の目はまだ死んではいない

「一夏さん・・・見せて下さい、貴方の可能性を」








「____だあああッ!!」




「なっ!?」

だからこそ一夏は『零落白夜』を展開したままの雪片弐型を簪へと投げつけた。

刀を投槍の如く投擲するという予想外の行いで更識簪は不意を突かれた

だが暗部の家系に生まれ、日本の国家代表候補生である彼女は思考するよりも早く、反射的に体を反らす事で迫り来る光刃を回避する

確かに意表をつくという作戦ではあったが、この策には重大な欠点があった

“もう彼には武器はない”

一つしかない武器を投擲すれば丸腰となる

つまり相手に必ず当たるという条件下で成立するのであり、回避されるという事を考えていない行動なのだ。それ故に丸腰となった織斑一夏に抵抗する術は無い

「私の勝ち」

今度こそ簪は自らの勝利を確信し宣言した






その直後





「きゃあああああああああああ!!?」

「本音ッ!?」

つい意識を向けて声の聞こえた方へ確認すると清香の手には雪片があり、本音は負けていた

投擲された雪片を受け取って本音を下したのか?と思った簪だが、零落白夜の無い雪片は他のISが使うブレードと大して変わりない

仮に零落白夜が展開された状態であったとしても簡単に斬られる程、布仏本音は弱くない

ならば、どうやって本音を下した?

そう考えた直後、更識簪は気がついた

「まさか、最初から本音を狙って!?」

「ご名答!」

彼女が振り向けば両手にハンドガンを持った一夏が至近距離で銃口を向けていた。どうやら一夏の投擲に合わせて清香も武器を一夏へと投擲していたらしい。かなり曲芸まがいの事をやってのけた二人の訓練がどれ程までに厳しかったが分かる

「気が付かれない様にタイミングと呼吸を合わせるのは苦労したよ。かなりの賭けだったし、な!!」

同時にドォン!ドォン!と放たれた銃弾が簪へと容赦無く叩きつけられ、シールドエネルギーが減らされてゆく。機動性を優先している打鉄・弐式は原型となった打鉄と比べて装甲が薄い。しかし至近弾を連続で叩き込まれても耐え切ったのは流石というべきか

「ぐっ!・・・ま、まだっ!!」

『瞬時加速』で即座に弾幕から逃れた簪はここからヒーローの様にピンチから逆転してみせると荷電粒子砲を展開するが・・・

「忘れてないか?これはタッグマッチだって事をさ」

ニヤリと笑みを浮かべる一夏を見た簪ははっと上を見る

そこにはトップスピードで頭上から雪片を振りかぶりながら突撃する清香の『ラファール』の姿があった

それを『瞬時加速』で逃れようとする簪だったが・・・

「甘いな!!」

「なっ!!?」

不敵な笑みを浮かべて一夏が指さした先、打鉄・弐式の装甲に彼の手にあるハンドガンから伸びたワイヤーが食い込んでいた。そしてハンドガンの下部に括りつけられているのはハンドグレネード

“まさか、さっきの弾幕に紛れさせて!?”

そして自分が瞬時加速による後退した事によってハンドガンのワイヤーが引っ張られ、一夏の手から飛び出したグレネードハンドガンが吸い込まれるように簪へと向かう

「ああああああっ!」

至近距離でグレネードが炸裂した事で大きく体勢を崩した簪。それでもシールドエネルギーは残っている

しかし、既に清香の打鉄が間近に迫っていた

「行け!清香!!」

「いっけええええええええええええええ!!!」

頭上からのトップスピードで迫る雪片弐型が簪にはスローモーションに見えていた

そして、この一撃が回避不可能だと言う事も理解していた

『相手が勝利を確信した時 すでにそいつは敗北している』

どこかで言われた台詞が簪の脳内を過った直後、急降下爆撃の様な一撃が切り裂いた






シャルルは試合終了のアナウンスと共に沸きあがる歓声を聞きながら、くすりと微笑んで少年に問う

「これが特訓の成果って奴かな?」

「そうですね・・・まぁ、かなりギリギリの賭けでしたけど」

「一夏が使ったあのハンドガン・・・シュヴァンツのだよね?」

「規定は守ってますよ」

あのジャグリング訓練は『武器の交換』又は『意表を突いた攻撃』という奇策の為の訓練である。発展系の技としては投擲したブレードに射撃して軌道を変えたり、弾丸同士を跳弾させると言う妙技である。これを行うには照準補正装置をインストールすれば良いのだが容量を結構消費する為に推奨は出来なかった。ちなみに装置は少年の世界の変態企業『トーラス』が跳弾攻撃って格好良くね?という意見から作られた物である

「でも、ワイヤーガンに加工したハンドガンにグレネード括りつけるなんて真似は教えてませんよ」

「あの二人も考えたんだね・・・」

「そうですね・・・・・まぁ、ハンドガンが犠牲となりましたが」

しょうがないなぁ・・・と溜め息を吐く少年だったが、その表情は優れない

「でも、これで一夏さんがラウラさんと当たった場合は警戒されるでしょうね」

「だよねぇ・・・」

ラウラなら“私にそんな小細工など通用するとでも思ったのか!”と対応されそうな気もする

その前に自分達が一夏かラウラのペアと対決する可能性が高い

もしも自分とラウラが戦う事になったのならば、千冬からの頼みもあって全力で戦うだけである

自分と似た境遇の持ち主であるラウラを放っておく事は個人的にも出来なかった

そんな事を考えていると次の試合が何時の間にか始まっていた





「・・・・・・・・」

一方、黒い少年は脱出地点近くで立ち止まっていた。別に時間ギリギリのスリルを味わいたい訳でも無ければ、尿意や便意を催している訳でも無い

「そこまでよ、泥棒さん?」

出口まであと少しと言う所で立ち塞がったのは水色の髪を持つ日本人の少女

手に持った扇子を仰ぎながら、不敵な笑みを浮かべている

何故、日本人なのに髪色が水色なのかとは聞いてはいけない

黒猫は無言で構える。硝子玉の様に無機質な瞳が立ち塞がっている少女を見据える

「お姉さん、貴方に色々と聞きたい事があるけど・・・その様子だと大人しくしてもらえ無さそうね?」

「______っ!!」

次の瞬間、常人には捉えきれない速度で黒猫が少女『更識楯無』へと飛びかかった

その両手には鉞が瞬時に展開されており、楯無を切り裂こうと振り下ろされる。しかし彼女はIS学園生徒会長であり暗部の家系であり当主である

「やっぱり、普通の侵入者な訳無いわよね」

ギィン!という甲高い金属音と共に双鉞が受け止められる

ISを展開した楯無の手には大型のランスが握られていた。初撃が防がれたと見るや黒猫は大きくバック宙を行って数メートル後ろへと後退する

「貴方、本当に人間?」

目の前で行われたトンデモな光景に楯無も目を丸くした

彼女は目の前で猛獣が唸り声を上げながら、自分に牙を突き立てる瞬間を待っている様な感覚に襲われながらも不用意に隙は見せていない。

「・・・・・・」

黒猫は考える。悠長に戦っている暇など無いが出口までホイホイと通してくれる程、簡単な敵でも無い。それに加えて、あるシステムを使用する為にISを展開する事が出来ない状態

だがやるしかない。双鉞をくるりとバトンの様に回すと再び楯無へと斬りかかる

トーナメントが行われている地上とは別の地下でも戦いは始まった





アリーナの観客席では例年以上の賑わいを見せていた。今年の一年生、それも織斑一夏とシュヴァンツ・ヘイズの所属する一年一組の生徒達が予想以上の結果を出していたからだ

己の持ち味を生かした戦いをする者、堅実な戦法を取る者、奇抜な戦法を取る者と様々な戦い方で観客を魅せてゆく学園対抗トーナメント

その第七回戦は一際賑わいを見せていた。世界中の注目を向けられていると言っても良い試合のもう一つが行われようとしているのだ。第一回戦では織斑一夏が奇策による一発逆転を為した事で観客は大いに沸いた。そして今、もう一人のIS操縦者へと期待と関心が寄せられていた。

『シュヴァンツ・ヘイズ&シャルル・デュノア』のペアと『ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒』のペアの試合

来賓、教師、生徒も皆この試合にも注目しており、熱い視線が浴びせられるのを少年は自覚していた。その容姿から元の世界でも注目される事はあったが、四桁クラスの人間から注目されるのは初めてであり、嫌でも緊張してしまう

“緊張するなぁ・・・”

どうにも居心地が悪そうに表情を顰めて、自分と同じ様に空中で試合開始の合図を待つラウラに目を向けると

「私は貴様を認めない」

「え・・・・・?」

突然、ラウラから放たれた言葉に少年は呆気にとられた。一夏に言った言葉を自分にも送られるとは思っていなかった。他者を見下す冷徹な少女、それが普段の彼女であったが

「貴様みたいな軟弱な存在が教官に認められるなど!私は認めない!認めてたまるか!」

ここまで感情的になった彼女を見るのは初めてであった。ストレートに感情をぶつけられて気圧されそうになりながらも、目の前に立つ少女が拠り所を失って泣いている子犬の様にも、大切な者を奪わないでと叫ぶ子供にも思えた

兵士として生まれ育てられた彼女は力でしか認められなかった。己の存在価値を力でしか証明できず、捨てられそうになったのを千冬によって救われて才能を開花させた。

本当に自分と似ている。少年はそう思った

「貴女の言う『織斑千冬』とはどんな存在なんですか?」

「世界最強であり、常に勝利の栄光で輝いている存在だ!」

「そうですか・・・・・・」

『ラウラ・ボーデヴィッヒ』にとっての『織斑千冬』は完璧な存在。汚される事の無い至高、無敵の英雄という存在なのだろう

それも彼女の存在の一つのなのだろうが、それが全てでは無い

少年はふぅ・・・と深く息をしてからバイザー越しにラウラを見据える。その表情は既に傭兵として、戦士としての表情であった。その気迫は普段の少年からは想像もつかない程に鋭い殺気であった。シャルル、箒、ラウラもそれを肌で感じていた

「それも千冬さんの一つの側面でしょうが、それだけが全てでは無いですよ」

直後、試合開始の合図が鳴り響く

それと同時に両手の武器を構え、クイックブーストでラウラへと突撃する

今回のストレイドは『Type-LANCEL』

騎士の様なデザインのフレームで特徴が無いのが特徴の万能型である

少年は左背部装備の散布型ミサイル『MP-O700』を展開し、ラウラへ向けて発射する

16発のミサイルが彼女へと向かうが、ワイヤーブレードによる迎撃と巧みな機動で躱されてしまう。ミサイルではあるのだが数で圧倒する散布型なので誘導性能はそれほど高くは無く、素早い対象には回避されやすいのが欠点である。

そのまま反撃とばかりにレールカノンが少年へと放たれるが、そう易々と直撃コースを許すほど少年の実力は低くない

向けられた砲口から射線を瞬時に判断して回避機動を行う。元の世界でもレールキャノン・レールガンは非常に厄介極まりない兵器であり、第一に直撃を喰らわない事を重点に置いていた

が、ラウラの方も軍人であり他の生徒達よりも地力が上である。音速の倍速で打ち出された砲弾はストレイドのプライマルアーマーを貫き、装甲に衝撃波が叩き付けられていた

「つぅ・・・流石は軍人ですね」

完全に回避し切れなかった砲弾は掠めた程度ではあるが、凄まじい貫通力と衝撃力を持つレールカノンはプライマルアーマーを容易く貫いていた

遠距離での砲撃戦闘は不味い判断した少年は右腕装備のライフル『LABIATA』を連射しながら、散布ミサイルを撃ち続ける

精度よりも数を優先したミサイルの弾幕がラウラの元へと殺到する

「ふん。この程度か」

ミサイルとライフルによる弾幕は実際の威力以上に威圧感を覚えるのだが、ラウラの放ったレールカノンの衝撃波によってミサイルが迎撃されてしまい、ダメージが大したものにはなっていない

戦況を突き崩すには接近戦を挑むのが一番なのだろうが、ラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』は装備されているレールカノンこそ派手だか、それ以外の装備は中近距離用ワイヤーブレード、近接用プラズマブレードと接近戦型武装である

そして一番厄介なのが___

「・・・ふ」

「ぐッ!?」

ラウラが手を翳した瞬間に発動するAICである。プライマルアーマーでも防げない拘束は視界内が射程である為に非常に厄介だった

見えない力によって強制的に引き留められた少年は動こうにも動けないまま棒立ちの状態へになってしまう。それは単なる的に成り下がった状態であり、ラウラは嘲笑しながら六つのワイヤブレードを放った

「うああああッ」

ワイヤーが突き刺さったストレイドの装甲が削られてゆき、苦悶の声を上げてしまう少年。AMSによって機体と神経接続している者にとっては己の肉を削ぎ落されているも同然なのだ

「所詮は貴様もその程度の雑魚でしかないな」

「_________まだですよ」

空気が歪む様にストレイドの周囲に光が収束してゆく

機体を包む様に展開されている球状の粒子膜が目に見える位にまで光り輝き、その現象に観客席の人々は興味と驚きの視線を向け、ラウラが本能的に不味いと察知した直後、まるで太陽が生まれたかのような強烈な閃光と共に響いた爆発音が炸裂した




その頃、地下区画に於ける戦いも始まっていた

IS学園生徒会長『更識楯無』

裏社会に関わる対暗部の家系に生まれ、ロシアの国家代表であり、あらゆる物事をそつなくこなす彼女は天才と称される程の人間である。IS学園の生徒会長という称号は生徒最強という意味でもある

そんな彼女と相対する黒い少年もまた異常な実力の持ち主であった

「_______ッ!!」

「おっとっと・・・中々のパワーね」

振り下ろされた鉞の一撃をランスで受け止めた楯無であったが、ISを纏った力と互角に渡り合う膂力に人外さを感じていた

仮面の様なバイザーを付けている為、素顔は分からないがコートに包まれた体格からして小柄ではあるが男だと言う事は分かった。しかし何処からともなく得物を出した所を見ると量子化の技術を持っている可能性が高い。つまり未だ見ぬ男のIS操縦者なのかもしれない

“まぁ、そこら辺は捕まえてから聞き出せばいいわよねッ!!”

彼女の纏うIS『ミステリアス・レイディ』は他のISと比べても装甲部分は小さいが、それをカバーする様に液状のフィールドが水のドレスの如く展開されている。

左右一体で浮いているクリスタルの様なパーツにも同じように液状フィールドがマントの様に展開されており、手にしているランスもまたドリルの様に水が螺旋状に流れていた

「・・・・・・・」

「そんな攻撃じゃ水は破れないわよ?」

黒い少年が両手に持った鉞を投擲する。ブーメランの様に回転する刃は常人では捉え切れない速度で迫ったが、水のフィールドによって力を失った様に受け止められていた。だが彼は驚く事も無く次の手を繰り出す

「_____バースト」

「ッ!!」

鉞が内側から弾ける。散った破片が楯無に襲い掛かるがこの程度ではISにシールドエネルギーを削りきる事など不可能である

それを分かっている黒い少年は右手に展開した巨大なレーザーブレード『07-MOONLIGHT』を振り下ろした

ネクストの搭載するレーザーブレードでも二振りしか存在しない最強のレーザーブレード。その青白く輝く巨大な光刃が楯無を切り裂き、じゅううと水分が蒸発する音が響く

「残念ね。水で作った分身よ」

背後からそんな台詞と共に楯無が高速回転する水の刃を纏ったランスを突き出す

大振りな攻撃を振り抜いた隙を狙った必中の一撃。回避などさせないとばかりに放たれた最速の突きは確実に獲物を仕留めるだろう。常人が相手ならば・・・

「_________」

黒の少年が何かを呟いた瞬間、緑色の爆発が炸裂した。奇しくもソレは地上で白い少年が同じ爆発をしたのと同じタイミングであった

その緑色に輝く重金属粒子の爆発に吹き飛ばされた楯無は、痛みに表情を歪ませながら思考する

“今のは・・・彼のISと同じ粒子・・・”

その事を理解した瞬間、目の前の相手が何者なのかを察知する。突き出された左腕に装備されている盾の様な武装から硝煙の様に漂う緑色の粒子が確証を強めた

「貴方が『黒鳥』ね・・・」

「・・・・・・・・・・・」

無言で答える黒い少年だが、良く見ればバイザー部分に罅が入っており楯無の攻撃が僅かにでも到達していた事が分かる。相手が分かれば全力で向かうべきだと彼女は判断した。相手は篠ノ之束が関係しているだろう相手。油断はできない

「おしゃべりは嫌いかしら?思っていたよりも随分とイメージも違うし・・・」

無言を貫く黒い少年を茶化す様に話しかける楯無だが、お互いに全く隙の無い状態だった

「所で・・・少し熱いと思わないかしら?」

「・・・・・・・・・」

黒の少年がバイザーの下に隠れた瞳を動かせば、自らに纏わりつく異様に濃い霧が有る事に気が付いた

「どうにも反応が薄くて面白くないわね・・・隠れている顔も鉄仮面っぽいし・・・」

む〜と不満げに表情を曇らせた楯無が指をパチンと鳴らす

直後、水分中に含まれる『ミステリアス・レイディ』のエネルギーを伝達するナノマシンが一気にエネルギーを急激に熱へと変換する『清き熱情』が発動した




「___________覇ァ!!!」


暴ッ!!と全身をバネの様に捻じって振り抜かれた両腕が生み出した圧力は、空気を瞬間的に圧縮して自らに纏わりついた霧を強引に吹き飛ばすッ!

「嘘ッ!?・・・・・・」

爆風を強引に力で無効化された光景に流石の楯無も目を剥いて驚き、余りの事態に脳が思考を停止してしまう。戦闘の最中に思考を停止する事は死に繋がると言っても良い。そして彼女はその愚を犯してしまい、隙を見せてしまった

すかさず飛びかかって来た少年への対処が一瞬遅れてしまい、自らの迂闊さを呪う楯無であったが、彼女へ攻撃を行わず肩を踏み台にして飛び越えた少年はそのまま出口へと走り去る

「まっ、待ちなさい!!」

逃がしてなるものかと楯無も全力でその背を追いかけるが、彼の体から謎の光が強く放たれた直後に消え去った

「ああ、もう・・・本当に何なのかしら・・・」

目の前で見せられた摩訶不思議な現象のオンパレードに楯無は思わず頭を掻きながら、溜息をつくしか無かった

だが、その中で一つだけ分かった事があった

「あの眼・・・・・・」

霧を吹き飛ばした瞬間に欠けたバイザーの隙間から見えた『黒鳥』の瞳

それはルビーの様に紅い輝きを誇る美しい瞳であったが、まるでガラス玉の様に感情を映していない人形の瞳だった

そしてその眼には見覚えがあった

「やはり彼が鍵を握っているのかしらね・・・」

楯無はその脳裏に今、戦っているだろう白き少年の事を思いながら歩き出すのだった





時は戻り、地上のアリーナでは・・・

「貴様・・・・・・」

ワイヤーブレードがアサルトアーマーにより纏めて破壊された事に怒りの視線を向けるラウラであったが、まるで瞬間移動の如く眼前にはストレイドが迫っていた。その左腕には装備されているのは『02-DRAGONSLAYER』

竜殺しの名を冠したショートレンジの高密度レーザーブレードがラウラを切り裂こうと迫る

「・・・・・・ッ!!?」

反射的にラウラは『瞬時加速』を使う事で回避行動を行ったが、灼熱の短刀は掠めただけでもシュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーを掻っ攫ってゆく

「おのれ!」

猛り狂う感情を表に出しながらも冷静に相手を確実に打倒さんとラウラはAICをストレイドへと向けて手を翳す

だが、既に彼女の視界からストレイドの姿は消えていた

「消え____ッ!!?」

目標を見失った事で一瞬戸惑ってしまったラウラの真横から迫る二本の杭

ストレイドの右腕に装備されていたのは『MUDAN』と呼ばれるパイルバンカー

元の世界では一撃で全長200mクラスの量産型アームズフォートやネクストACすらも破壊してしまう程の威力を持った兵装である。ただ威力は申し分ないのだが杭打機である為にゼロ距離から放つ必要があり、非情に扱いが難しい兵器でもある。特にアームズフォートの様な巨大な目標ならまだしも、高速戦闘を主とするネクストACに当てる事は非常に難しい。同じ様に高速三次元空中戦闘を行うISに命中させるのも同じことである

今、その一撃がラウラを横腹からストレートに炸裂する。過剰としか言いようの無い威力はラウラの華奢な体躯を折り曲げながら吹き飛ばし、アリーナの壁面に叩き付けた

たった十数秒程度の出来事

試合を観戦していた一夏や生徒達、それに教師陣や観客達ですら呆然としていた

その時間で苦戦していた様な状況から、学年上位クラスの実力を持つ国家代表候補生兼軍人のラウラをいとも容易く一蹴したのだ

更に目を見張るのは少年が行った挙動である

「あの機動マジかよ・・・」

「アニメみたいな動きだったね・・・」

一夏は少年が行った機動を見た呟きに、清香の方は三体合体のロボットを思い出していた

二年生の先輩が行っている『瞬時加速』の技術については聞いた事があるが、少年の場合は物理法則を慣性の法則を殆ど無視した様な大出力による直角機動であった。普通にそんな事をすれば内臓が潰れるだろうし、ISのG軽減機能があったとしても内臓にダメージを負いかねない機動だった

「あれがシュヴァンツの実力・・・」

明らかに自分が戦った簪以上の実力に、思わず武者震いしながら一夏は笑みを浮かべていた。クラス代表決定戦の時の実力は機体に慣れてなかったとはいえ、連戦しながら本気を出さなかった少年を相手にして敗北したのだ

もう一度、戦う機会があるのならば己が持つ力を全部叩き付けて戦いたいと思った。戦闘の師匠である少年を超えてこそ、世界最強の姉と同じ高みへと向かう事が出来ると思っているからだ

ちなみに総合的な実力で言えば少年の方が上だが、近接戦闘に持ち込まれると千冬に軍配が上がる。とはいえ相性の問題だけでなく運などの不確定要素なども深く関わってくるのが戦いである為、何が起こるか分からない

試合の方も終わりに近づいて来ていた。ダメージを負いながらも戦おうとするラウラだが、威力過剰のとっつきを受けたのだ。内臓などにも少なからずダメージがある筈であり、機体自体の装甲も見事に砕けておりISスーツには血が滲んでいた

「まだ戦うつもりですか・・・?」

「当たり前だ!教官を弱くしてしまう貴様を叩き潰すまでは!!」

「何、ほざいているんですか?」

「っ!?」

少年の表情は誰も見た事が無い程に冷たく、言葉も氷の様に冷え切っていた

この世界に来てから自分が変わってきている事を自覚していた。だが今ほど自分が自分で無い感覚を味わった事は無かった。まるで自分で無い誰かが憑依している様であり、思考する前に言葉が出てきてしまう

「貴女は千冬さんに自分の理想を押し付けているだけですよ・・・だから千冬さんの弱さを認められない。認めたくない・・・・・・あぁ、そうか。単に嫉妬してるだけか。なんだ簡単な事じゃないですか」

「黙れ!それ以上、戯言を言うな!!」

今まで気が付かない様にしていた本心を見透かされた様な言葉にラウラは荒れ狂う感情のままに否定しようとするが、少年は容赦無く彼女の心を覆っている壁を切開してゆく

「自分を導いてくれた千冬さんは貴女にとって親の様な存在だった。だから貴女は教官として慕っている以上に親密な関係になりたいと思った。寂しいから自分の居場所が欲しい。だから僕や一夏さんに嫉妬したんですよね?」

「黙れ黙れ黙れェ!!」

兵士としての仮面を被る事で隠していた心を剝き出しにされた事で、半狂乱の様相で叫ぶラウラ。何時の間にか瞳からは涙が溢れ出していた。そんな彼女の精神へ言葉のダンガンを少年は撃ちこんだ


「つまり独りぼっちは寂しくて嫌だ・・・と言う事ですね」


「あああああああああああああッ!!!!」

もうこれ以上聞きたくないと癇癪を起こした子供の様な表情で叫ぶラウラの同調する様にシュヴァルツェア・レーゲンから激しい電流が発せられたと同時に、装甲が溶け出して彼女を呑み込んでゆく

見た事も無い現象に少年が身を見開く。別の場所ではシャルルと箒もまた驚愕に固まっていた

「・・・・・・これは」

少年の前で姿を現したのは黒いヘドロを固めた粘度っぽいモノだった

ソレは心臓の様に表面を脈動させながら地面へと降りると、高速で人型を形作ってゆき完成させる。まるで薄気味悪い粘土細工を見ているかのような気分の少年はバイザーの奥で眉を顰めた

黒いISの手に持っているのは雪片

「いくら千冬さんを慕っているにしても、それはちょっと違うでしょう?」

雪片を中段に構えるソレはまさに過去のデータで見た千冬と同じ構えであった。それを見た少年はかつて束から聞かされたシステムを思い出していた。操縦者を消耗部品として扱うに等しくが故に禁止とされているシステム

少年は即座に千冬の元へと通信を入れる

「これは『ヴァルキリ−・トレース・システム』ですか?・・・千冬さん」

『だろうな・・・試合は中止する。後の事は教員達に任せてお前達は避難しろ』

「僕が倒しても良いですか?」

『確かにお前ならば勝てるかもな。しかし教師としては生徒に戦わせたくはない』

御尤もな言葉ではあるが、データとは言え世界最強のデータを使っている以上、教師であっても被害は少なくは無いだろう。少年の場合は入学試験の代わりにデータ上のモンドグロッソを制覇したのだ。この程度で負ける事は無い

「おっと!」

ガキィン!と金属同士がぶつかり合う音がアリーナに響き渡る。向こうが振り下ろしてきた雪片を即座に展開した破砕用装備のドーザーブレードで受け止める少年。データとは言え彼女の鋭い太刀筋を受けて弾かれないまま、激しい太刀筋を捌いている少年の技量もまた天才と呼ぶにふさわしい物だった

「千冬さんなら鉄塊と変わりないドーザーブレードごと切り裂いていたでしょう?」

『当たり前だ』

あはは・・・とにこやかに会話をしているが、その間にも激しく剣撃が叩き付けられ続けている。少年もさっさと倒してしまいましょうと本気になろうとした直後

「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」

黒いISに斬りかかったのは一夏であった。その表情は鬼気迫る物であり、かなり頭に来ている事が分かる。不意打ちに近い形で繰り出した全身全霊の一撃は迎撃行動に繰り出された雪片を弾いた

「おああああッ!!」

更に踏み込んだ弐の太刀が相手を捉えるかと思われたが・・・

「人の試合に乱入してくるとは、とんでもない人ですね」

やれやれと言わんばかりに少年が両者の刀をドーザーブレードで見事に受け止めていた。あのまま攻撃していたら相手を倒すことは出来ていても一夏が切り裂かれていただろう

「邪魔すんな!!ふざけやがって!!今すぐ、ぶっ飛ばしてやる!!」

血走った目で今すぐ斬りかかろうとしている一夏、かなり頭に血が上っており完全に切れている

「気持ちが分かりますが落ち着いて下さい」

「五月蝿い!!邪魔するならお前も一緒に_____」

「いい加減にしろ!!」

「ぬふぅ!?」

横から彼の頬を思い切り叩いたのは箒だった。予想外の一撃に無様に大地を転がる一夏だが、すぐに立ち上がった。一撃貰って少し頭が冷えたのか落ち着いた様子で口を開く

「あいつの・・・あれは、千冬姉のデータだ!それは千冬姉のものなんだ!千冬姉だけのものなんだよ!それを・・・くそっ!!」

自分が目指し憧れている姉を模倣される事は一夏にとっては絶対に許せない事だった。相変わらずのシスコン具合に少年と箒は思わず溜息をついた

「お前は相変わらず千冬さん千冬さんだな」

「それだけじゃねえよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されているラウラも気に入らねえ。ISとラウラ、どっちも一発ぶん殴らないと気が済まねえ」

力は、強さは攻撃力じゃない。そんなものは強いとは言わない。ただの暴力だ。というのが一夏の想いである。そんな彼を見て、少年は自分の世界ではソレが通用しない程に欲望が渦巻いているのだと思わざるを得なかった

「でも、今は僕の試合の最中ですので・・・僕がアレを倒します」

「は?何言ってんだよ、千冬姉のデータだからこそ俺が倒さないといけないんだ」

「乱入してきたのは一夏さんでしょう?本来なら僕の対戦相手なんですから僕が倒すべきなんです」

「ラウラがアレに取り込まれた時点で試合は中止になったんだから関係無いだろ!!」

「いいから僕に任せてて下さい」

「嫌だ!アイツは俺が倒すんだよ!!」

「一夏さんだと逆にやられるかもしれません」

「何だと!?このチビ!!」

「ひ、人が気にしてる事を言うなんて!この童貞ホモ野郎!!」

「誰がホモだ!」

どっちが黒いISを倒すかで揉める所か口喧嘩を始めた二人を見て、頭を抱える箒と苦笑するシャルル。敵の眼前に居るとは思えない様な光景である

「二人共、敵を前にしてよく喧嘩が出来るな・・・」

「あはは・・・仲が良いって思えば・・・」

『いい加減にしろ貴様等ァ!!さっさと避難しろと言ったのが聞こえなかったのか!!』

余りにも能天気すぎる光景にキレたのか千冬の怒鳴り声が四人の脳を揺らした

キーンと痛む耳を抑えながら少年と一夏は黒いISへと向き直る

「なら早い者勝ちという事で・・・」

「上等だ!」

直後に突撃を開始する二人。それを迎撃しようと黒いISが雪片を振り下ろすが、まるで鏡写しの様に二人同時に『瞬時加速』で回避すると共に横へと回り込んだ




“もっとだ!もっと早く!薄く!鋭く!!必要なのは速度と鋭さ!!”

目の前の敵を切り倒す事のみを考え、イメージし集中する一夏。その想いに応える様に雪片弐型もまた『零落白夜』の刀身が斬る事に特化した形状、日本刀の様な形へと変わった

そのまま切り捨てる様に『瞬時加速』による居合い切りを放つ



“必要なのは速度・・・なら!!”

少年の方も腕に展開したのは日本刀の様な形状のレーザーブレード『EB‐O700』

居合いの思想を取り入れたレーザーブレードであり、斬る瞬間のみ刀身が発生する珍しいブレードである

そして一気に切り捨てるべく、クリックブーストによる加速と同時にブレードを振り抜く


両者が交差する様に放たれた二つの一閃は黒いISを見事に切り裂いており、中から倒れる様に解放されたラウラを受け止めようとした一夏と少年は受け止めた。気絶する一瞬の間、眼帯が外れて露わになった彼女の金の左目と二人の視線が交差する。その瞳は一夏にとっては助けを求めている子犬の様に見え、少年には過去の自分が助けを求めている様に見えたのだった

「・・・まぁ、ぶっ飛ばすのは勘弁してやるよ」

「そうですね」

二人共、すっきりとした表情を浮かべながら、腕の中で眠る可愛らしい銀色の兎を見るのだった

「それと一夏さん」

「何だよ?」

「後で別のアリーナに逝きましょうか・・・久しぶりに・・・キレちゃいましたよ・・・(#^ω^)」

「俺オワタ\(^0^)/」

チビと言われたのが割と頭に来たのか、爽やかな笑みとは裏腹に言葉には殺気が籠っており、目が笑っていない。あ、俺死んだわ・・・と思った一夏だったが

「はぁ・・・ラウラさんを休ませるのが先なので勘弁してあげますよ」

よっこいせとラウラを背負うと少年は医務室へと歩き出してゆく。命拾いしたなと思いつつ一夏は彼の後を追うのだった






強さとは何なのか

それは人によって様々な答えが有り、どれもが正しいとも間違っているとも言えない

そんな中の一つに彼女は出会った

『強さとは心の在り処。己の拠り所。自分がどう在りたいかを常に思う事じゃないかと俺は思う』

織斑一夏はラウラ・ボーデヴィッヒの問いにそう答え、白き少年はまた別の答えを出す

『強さですか・・・自分の思いを貫く覚悟ですかね』

そうなのだろうかと首を傾げるラウラに二人は笑顔で答える

『自分がどうしたいかもわからねー奴が、強い弱い以前にだ。自分がどこに向かって、どうして向かうのか、その歩き方を知らないもんだろ』

『簡単に言ってしまえば自分の願いに素直になる事です。人は大人になってゆく中で素直になれなくなるんですよ。だからこそ自分のしたい事に素直になるのがいいんです』

少年の言葉にニッと一夏は笑いながら同調する。心底楽しそうに人生を楽しんでいるかのような笑みを浮かべる二人が羨ましいとラウラは思う

『そうだな。やりたいようにやるのが人生だ』

『誰かの言葉に従う人形では詰まらない。兵士だろうと突き詰めれば人ですしね』

どうしてそんなにも強い?とラウラは新たな問いを投げかける。その問いに二人は断言する

『俺は強くないよ。それでも強いって言うなら強くなりたいから、誰かを護りたいからだな』

『僕も強くないですよ。ただ愛する人の想いに応えたい。愛する人を護りたいって思っているだけです』

どれだけ強く純粋に願っているか、彼らの強さとは想いや信念の強さなのだと少年と一夏は言う

『物理的な強さは人によって差がある不公平なものです。でも誰もが平等に持っている物が心です。そこに善悪など関係無く自分を表すんだと思うんです』

成程、とラウラは納得する。自分もまた人間であり、兵士である事や自らを教え導いてくれた千冬を兵士の理想とする事で寂しさを誤魔化し逃げていた。強さだけでなく弱さを持った人間なのだと認めたくなかった。そんな自分と確固たる思いを持った少年や一夏に勝てる訳がなかった

『お前達は強いな・・・私にもお前達の様な強さが持てるだろうか?』

『それは貴女次第ですよ』

『だけど困った時は誰かを頼ればいい』

手を差し伸ばされた二人の手をラウラはおずおずと躊躇いがちに握り返す

____よろしくお願いします

誰が言ったのかは分からない。もしかしたら自分かも知れないし、二人かも知れない。そんな言葉と共に彼女の意識は夢から現実へと引き戻されてゆくのだった





「う、ぁ・・・・・・」

「気が付いたか」

天井からの光を感じて目を覚ましたベッドの近くでは千冬が椅子に座っていた

「私・・・は・・・・・・?」

「全身に無理な負荷がかかった事で打撲と筋肉疲労がある。しばらくは動けないだろう。無理はするな」

「何が・・・起きたのですか・・・?」

全身を走る痛みに顔を歪めながらも瞳だけはしっかりと千冬を見つめていた

普段は隠されている金色の瞳には真実を知ろうとする意志が有り、千冬は一息吐いて口を開いた

「VTシステムは知っているな?あれがお前のISに積まれていた」

「そんな・・・」

「巧妙に隠されてはいたがな。機体の蓄積ダメージ、何より操縦者の意志・・・いや、願望か。それらが揃うと発動する様になっているらしい。ドイツは近いうちに委員会による強制捜査が入るだろう」

ラウラはその報告を聞きながらも視線を虚空に彷徨わせていた

「私が・・・望んだからですね・・・」

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

「は、はいっ!」

突然名前を呼ばれたラウラが驚きながらも、顔を上げて背筋を伸ばす

「お前は誰だ?」

「わ、私は・・・」

千冬の言葉に自分が何者であるのか、はっきりと答える事が出来なかった

だが直前の問答を思い出した彼女が言える事だけあった

「分かりません・・・でも、見つけたい事が出来ました」

「そうか・・・・・・なら、頑張って見つけてみせろ。時間はたっぷりあるんだ。自由に悩めよ小娘」

そう言って去ろうとした千冬はああ、そうだ・・・と足を止めてからラウラの方へ振り向いた

「それとソイツに感謝しろよ?ずっと付き添っていたのだからな」

不思議そうに彼女の視線の先を辿れば、彼女が居た位置とは反対側のベッドの隅で眠りこけている少年の姿があった

「あ・・・・・・」

「それと眠ったふりを続けるのは止めろ」

その言葉にばれましたか・・・と目を開いて起きる白い少年。その表情は特に悪意も敵意も無く純粋なものだった

「千冬さんだって、ずっと付き添って・・・あう!」

「余計な事は言うな」

少年の呟きに反応して即座にデコピンする千冬。彼女なりの照れ隠しなのだろう

額を押さえてしょぼんとする少年はむぅ〜と拗ねたような視線を千冬に送っていた

そんな彼女の様子に素直になれないのは教官もかと思ったラウラは思わずくすっと笑みを浮かべた。素直に人らしく笑う事はこうも楽しい物だったのかと感じる

「随分と元気そうだなボーデヴィッヒ?その様子だとすぐに動けるだろう?ん?」

「ひぇっ!!?ちちち、違います!これは決して教官を笑ってなど!!」

思わぬとばちりを受けそうになり慌てるラウラであったが、千冬が浮かべている表情もどこか嬉しそうな雰囲気であった。そうして彼女は医務室を出て行き、部屋には少年とラウラだけが取り残される

「・・・・・・色々と感謝する」

「千冬さんからもお願いされてましたし、僕自身、ラウラさんの事が放っておけなかったんですよ」

少年の言葉に不思議そうに何故だと首を傾げるラウラ

「僕もまた貴女の同類なんです。ある研究機関で作られた人間。それも試験官に入った遺伝子を弄られて生まれました」

その言葉にラウラは驚く。自分達と同じ様に遺伝子操作した人間を生み出す様な真似をしている場所はあるだろうが、自分達の部隊以外での同類を見たのは初めてであった。

「僕は彼女に出会うまで言葉を発することは出来なかったですし、研究所の職員からは言葉を発せない欠陥品と呼ばれてました」

今、自分と話している少年はかつて言葉を発する事すら出来なかったという事実にラウラは驚いた。目の前にいる少年を見て、その様には見えなかったのだ。彼女と云うのは千冬だろうと思っているが、実際は別世界の千冬ともいうべき霞・スミカである

「だから僕はこう思ったんです。ラウラさんはもしかしたら有り得たかもしれない僕の姿なんだって・・・」

「・・・お前は私と自分を重ねていたという訳か」

「ラウラさん自身の事も見過ごせなかったのも有りますからね?」

「別に咎めている訳ではないぞ」

どこかしら慌てた様に言う少年にラウラはふふ・・・と笑いながら答えた

どうあれ救われたのは事実であり、こうして自分は人らしく笑う事が出来る。それが分かっただけでも充分であった

「それじゃあ・・・僕は行きますね?」

「ああ、改めて感謝している。ありがとう」

「どういたしまして・・・それとラウラさんの笑顔は凄く綺麗で可愛いかったですよ」

去り際に春風の如く爽やかな微笑を浮かべた少年の口から放たれた言葉を、ラウラが硬直しながらも脳内で理解した瞬間

「き、綺麗で・・・かっ、かわっ・・・ッ〜〜〜〜!!!」

蒸気を噴き出さんばかりの勢いで顔を紅く染め上げて、布団に顔を埋めながら悶える事になった。しかし目を閉じると脳内で少年の爽やかな笑みと言葉がリプレイされて更に悶えてしまい、痛みがぶり返して二重の意味でラウラは悶える事となったのだった






そして千冬から事情聴取を終えた少年が食堂へと向かうと、トーナメント中止の報せが学食のテレビで流れていた。食堂にはギリギリの時間帯にも関わらず多くの女生徒達が集まっていたが、トーナメント中止となるのを知った途端にショックを受けて皆走り去っていった

「ふむ。シャルルの言った通りになったな」

「そうだね・・・結構凹むなぁ」

「あ、シュヴァンツ。こっちだよ」

シャルルが手を挙げて少年を呼んだので、そちらの方へ向かうとシャルルと一夏、それに清香が一緒に食事をしていた。ついでに箒が一人でポツンと立ち尽くしているので声をかけた

「箒さん。大丈夫ですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

___へんじがない。ただのしかばねのようだ

「と、とりあえず一緒に座りましょう?ね?」

これは放っておけないと思った少年は箒を引っ張りながら、一夏達の座っている席へと座った。それぞれが食事をしているが少年は適当にジュースだけで済ませている

「シュヴァンツは食べなくていいのか?」

「すいません。ネクストはGを軽減するとは言っても内臓に来るものがあるので・・・」

「あんな直角機動なんて、それこそ織斑先生ぐらいしか出来なんじゃないかな?」

シャルルの言葉に一夏はうんうんと頷いていた

「他にも箒さんも十分強くなってましたよ。相性の悪いシャルルさん相手によく持ちこたえてました」

「そうだね。冷静に射線を判断してたし、瞬時加速も使える様になってたし凄い」

「そ、そうか・・・?」

少年とシャルルの二人に褒められた事で、照れくさそうに髪の毛を弄る箒。どうやら先程の呆然とした状態からは抜け出せた様である。更に援護射撃を要請する様に一夏に視線を向ける

「箒も強くなったんだな。だけど清香も俺とのコンビネーションも凄かっただろ?」

「へへ〜ん。息ばっちりだったよね!」

「Oh・・・・・・」

「ふ・・・ふふ・・・ふふふふふふ」

一夏の空気を読まない鈍感発言に箒の怒りゲージが溜まってゆく。体を震えさせて拳を力強く握り締める。乙女心を理解せずに堂々と踏み躙る鈍感男に制裁すべく拳が唸りを上げようとした直後

「あ、それと先日の約束の事だが何時にする?」

「__________なに?」

ピタリと拳を止めた箒が一夏の顔を凝視する

「だから先日の約束だよ。ほら、買い物に付き合うって約束しただろ?」

「あ、あぁ・・・そう、だった・・・な」

本当は男女交際のつもりで申し込んだのに鈍感男は買い物と勘違いしたまま突き進んでしまっていた。少年がデートだと考えるんだと耳打ちすると箒の瞳に輝きが戻るが、清香が不満げな声を上げた

「篠ノ之さんだけズルいなー。私も織斑君とデートしたいなー」

「それじゃあ三人で行こうか」

「お、おう・・・」

流石の清香も二度デートするのでは無くて三人で纏めて出かけると言う鈍感すぎる提案に若干引いていた。そして箒に小声で訊いてみた

「ねぇ、篠ノ之さん。あれってわざとやってるの?」

「残念ながら素でやっている」

「うわぁ・・・ペアになってから、そうは思っていたけど流石に酷過ぎるよね」

「分かってくれるか・・・」

「何を落ち込んでるんだ・・・?」

はぁ・・・と揃って溜息をつく二人を見ながら一夏は首を傾げるだけであった

相変わらずの鈍感振りに溜息をつきたくなるが、さっさと告白すれば一発だろうなと考えつつ少年はジュースを飲んでいた

「あ、あの・・・・・・」

すると背後から声をかけられて、振り向けば日本人離れした水色の髪色の持ち主。一夏と対戦した更識簪が立っていた。その背後では布仏本音が一緒に立っている

「こんばんは、簪さん」

「こ、こんばんは」

「こんばんは〜尻尾君、おりむ〜」

一夏はストレートに嫌いだと言われた相手と試合じゃない場で相対する事になったので、若干気まずそうにしていた

しかし簪は恥ずかしそうにもじもじしており言い出せない様なので、本音がフォローに入った

「かんちゃんがね〜尻尾君に言いたい事があるんだって〜」

「そうなんですか?」

不思議そうに視線をやれば簪は恥ずかしそうな表情を浮かべながらも口を開いた

「そ、その・・・打鉄・弐式の事とか、その、ありがとう・・・」

今日は色んな人から御礼を言われるなぁと思いながら、少年は笑顔で答える。その笑みには邪念など一切存在しない清らかと称しても良い程に柔和であった

「どういたしまして。打鉄・弐式の事に関しては区切りがつきましたか?」

「うん。後は・・・・・・」

「お姉さん・・・ですか・・・」

こちらの問題は人間関係の問題であり、少年からしても少々入り込みづらい事この上無い

少年の人間関係は常人とはかなり異なっているし、正直こういう家庭問題とかは素人である。問題事はセックスでばかり解決したり、スミカが担当していたりする

こういう時、他のリンクス達なら何とアドバイスするか

『坊や、お互いがすれ違っている時は我慢せずに言いたいことを素直に白状するのがいいのよ。二人共ひん剝いちゃって恥ずかしい姿を見せ合えば、素直になる事なんて簡単よぉ?』

____姉の方から釘を刺されているのに手を出せと?テレジアさん

何故だか何時も頼りになる様でなっていない気もするミセス・テレジア

性関係の事では非常に頼りになるのだが、複雑な人間関係となると難しい物である

すると一夏が声をかけてきた

「なぁ・・・色々と分からない事があるんだが説明してくれないか?」

とりあえず尻尾君は打鉄・弐式のチームが白式の為に放り出した事を教えた。一夏に対しては八つ当たりに近い感情だが、それでも割り切れなかったが今日の試合で全部綺麗に清算したのだ

「いや、そのゴメンな?」

「別に、貴方が悪い訳じゃない・・・それにもう、気にしてない・・・」

「そっか・・・じゃあ、これから仲良くしようぜ!」

「それは無理・・・」

「んなっ!?どうして・・・?」

「乙女心を踏みにじる・・・鈍感な人は、嫌い」

「ええええええええええ!?」

困惑する一夏を見て、少し楽しそうな表情を浮かべる簪。からかっているだけなのだろうが、少しばかり本心が混じっている気がしなくもない

そんな二人を少年は微笑ましく思うのだった

「あ、ここにいましたか」

すると真耶がその豊かな膨らみを揺らしながら少年達に声をかけてきた。相変わらず十代に見える童顔な容姿に反した爆乳の持ち主であるトランジスタグラマーだなと思わざるを得ない。いつも通り黄色のワンピース姿の恰好が幼い印象に拍車をかけている。日本人の癖に髪の毛が若葉を思わせる鮮やかな緑色なのは気にしてはいけないのだろうか?と首を傾げる尻尾君だが、それ以上に千冬がこの世界のスミカであるように彼女もまたこの世界のメイ・グリンフィールドではないか?と思うのだ。ちなみにセシリアが苗字や出身からリリウムだと確信している。性格は女帝であるメアリー・シェリーだろうが・・・

「先程はお疲れ様でした」

「いえ、山田先生の方こそお疲れ様です。それで何か御用ですか?」

「ええ!三人とも朗報ですよ!」

グッと拳を握る真耶。その動作でまた爆乳が揺れる。一夏がついつい見てしまい箒に睨まれるが彼女の巨乳も注視してしまい顔を逸らす。清香の方は平均並にはあるが目の前の揺れる山脈を前にして落ち込んでいた。シャルルはそんなに気にしていない様だった

「なんとですね!ついについに今日から男子の大浴場使用が解禁です!!」

「おお!そうなんですか!!」

やったぜ!ひゃっほーい!と喜ぶ一夏だが少年はちらりとシャルルに目を向ける。彼女が女である事は一夏にまだ言ってはいないし、彼の性格からして次の発言は・・・

「よっしゃ!二人共一緒に入ろうぜ!!」

やはり男同士の裸の付き合いをしたがる。同性だから気を使う必要も無いし、はっちゃける事が出来るからなのだろうがホモ疑惑が高まりそうである

「あ・・・僕はシュヴァンツと話したい事があるから一夏は先に入ってていいよ」

「そ、そうか?・・・じゃあ一番風呂は頂くぜ!!」

ずっと入浴はシャワーだった所為か、テンションがかなり高い一夏は嬉しそうな表情で大浴場へと駆けて行ったのだった

「嬉しそうで何よりです」

満足そうな表情を浮かべる真耶であったが、少年とシャルルは少々困り気味な表情を浮かべていた。別に少年の方は一夏と一緒に入浴しても構わないかったのだが、それだと皆の前に居る以上、シャルルだけが拒否するのは訝しまれる可能性があった。だからペアを組んでいた少年をダシにしたのだ。無理を通して使用させて貰う大浴場に別々に入るのは顰蹙を買いそうではある

「それじゃあ、僕達も行きましょうか」

「そうだね・・・」

お互いに着替えを取りに部屋へ戻ってから、どうしようかと悩んだけど仕方が無いのでちょっとだけ遅れて入浴する事にした。二人共、一日に色んな事が起こり過ぎた所為かもうなる様になれ・・・な心境であった

「その・・・見ないでね?」

「あ、はい・・・」

少年としては女の裸はかなり見た事はあるのだが、それでも背後で年頃の少女が服を脱いでいるとあれば、衣擦れの音や下着の金具が外れる音などにドキドキしない訳がない。だが想定しているならば余り狼狽えない。少しだけ顔が紅いが動揺して無く見えるのは年上の意地である。忘れがちであるが少年の年齢は十八歳。三年生と同年齢だ。

「それじゃあ、僕が前になって隠しますがタオルも用意しててください」

「う、うん」

ラウラと同じくらいの140代後半の身長で152cmのシャルルの体を隠し切れるかというと、割と何とかなるものだった。だが明らかに怪しい事この上ない

___メェリゴラアアアアン!!

大浴場では一夏が熱唱しているのか、反響している声が聞こえてきた。見事な歌声である。でも一夏が歌いそうなのは渋い演歌な気もするのが感想である。ちなみに声が誰なのか決まっていない少年の歌の実力は未知数である

「これって一夏が出ている映画のED曲だよね?」

「EP3ですね。正確には一夏さんの中の人ですけどね」

「僕は全部好きだよ」

「シャルルさんが歌うEP1の歌とか聞いてみたいですけどね」

メタい会話をしながらも一列に並びながら、大浴場へと入ってゆく

「ステイアゴオオオオオオオオゥ・・・・お、二人共来たか。って何でシャルルは・・・・・・女・・・えっ?」

一発でバレました。やはり漫画やエロゲみたいに上手くいくわけが無い。そんな二人を置いて一夏は一人で混乱していた。信じられない物を見たかのような表情を浮かべて、目を見開きながら固まっている

「え?ちょっ!?本当に女!?・・・えっ?ええっ!!?」

「あんまりじろじろ見ないでよ。一夏のえっち」

「す、すまん!!」

慌てて反対方向を向く一夏。煩悩退散と頑張っている様だ。童貞臭い

体を洗って三人で湯船に身を沈めている訳だが、一夏と少年はシャルルとは背中合わせになる様に入っている。だが見えずとも裸の異性が同じ湯船に入っている状況でシャルルの僅かに感じられる息遣いなどにドキドキしている一夏は顔がかなり紅い。対する少年はそこまで動じておらず、表情を緩ませて湯を堪能していた

「お、俺はもう上がろうか?もう堪能したし・・・」

「一夏さん、落ち着いて下さい。リラックスして湯船に身を任せるんです」

「出来ねえよ・・・にしてもシュヴァンツは全く動じてないな」

「まぁ・・・不意打ちで無ければ女性の裸には慣れてますから」

その言葉に一夏はギョッとした表情で少年に問いかける。その表情はとても童貞臭い

「慣れてるって・・・つまりはそういう事なのか?」

「・・・ご想像にお任せします」

「はぐらかすのは止めてくれよ。逆に気になるから」

「僕も気になるかな・・・」

え?マジで!?と言いたげな表情になった一夏は思わず振り向いてしまいそうになるのを寸での所で抑えこんだ。少年はただ体の力を抜いてリラックスしているだけである

「・・・・・・僕には恋人がいます」

「マジか!?」

「えっ!?」

意外な言葉に一夏とシャルルは衝撃を受けた。でも絶世の美少年である彼に恋人がいても不思議では無いと納得出来る。シャルルの言葉に少しだけ残念そうな響きが混じっていたのは気の所為では無い

「へぇ・・・シュヴァンツは美形だしモテそうだもんな。色んな女をとっかえひっかえしてたりするのか?」

何気ない冗談。何も知らない一夏にとっては美形だしモテるだろと思ったからこその冗談だったのだが・・・

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・え?」

湯船に入っている筈なのに空気が凍り付いたみたいに沈黙が広がる。無言のまま気まずそうに目を逸らす少年の態度に地雷を踏んだと頭を抱えたくなる一夏。背中合わせのシャルルはどんな表情を浮かべているのか分からなかった

「・・・最近、体だけなら許してくれる様になりました」

「・・・・マジで?」

まさかの浮気公認という事に驚く一夏。何か今日は驚いてばかりだな〜と思わずにはいられない

「ええ・・・詳しくは言えませんが僕の事を好きだって言ってくれる女性もいますし。でも最近、二人目の恋人にしてしまった人がいるんです」

「・・・・それって流石に不味いんじゃないか?」

それが自分が愛する姉であるとは思ってもみないであろう一夏。知らぬが仏である

「分かってますよ。いつか話を付けるつもりです・・・」

「そうか・・・俺からして見れば浮気とか二股とか良くないと思うんだが」

「紀元前五世紀の哲学者プラトンはこう言いました。狂気は四種類ある。『予言する狂気』『ディオニソス的秘儀の狂気』『詩人が詩を歌う時の狂気』・・・そして四つ目は『恋愛の狂気』です」

つまり恋する事とは狂っているのと何ら変わりの無い状態であるのだと少年は言った。何故ならば愛しているが故に殺意を抱いたり、全てを犠牲に出来たり、落ち着いていられなくなるという通常とはかけ離れた精神状態になる。これもまた狂っているのと同じである

「シュヴァンツって大人なんだね・・・」

「シャルルさんも結構大人だと思いますよ?セシリアさんと同じ様にそうならなければいけなかったのでしょうけど・・・」

「そう・・・だね」

幼い頃の辛い境遇という点ではセシリアやシャルルは似ている部分がある。違うのは立場と生き方である。片や傲慢に生きていかねば気丈さを維持できなかった少女、片や幼い希望を持つ事を諦めて辛い現実から目を逸らし利用されるしかない少女。どちらも過酷な生き方である

「シャルルもセシリアも辛い過去があるんだな・・・」

「ええ・・・一夏さんと同じ様に家族関係ですから。今のシャルルさんはフランス代表候補生ですけど自由国籍になっていますので解放はされてますよ」

「なら良いさ。でも俺に出来る事なら何でもやるよ」

「でも、一夏さんに出来る事なんてたかが知れてますよ・・・?」

「ぐっ!!最近のシュヴァンツ何か毒舌過ぎないか!?」

「いや、その、事実を素直に言っただけなんですけど・・・」

自分のキャラクターが徐々に変わりつつある様な感覚に少年は首を傾げる。それに違和感を感じる事が少ないのも疑問が強まる要因であった。まるで在るべき姿に戻ろうとしている様な感覚。過去の自分と比べて感じる違和感。自分は本当に白猫と呼ばれている少年だと断言できる気がしない

「所でその尻尾は・・・」

「あ・・・これですか?生まれた時からあるんですよ」

自分と初めて肌を重ねる女性が良く注目する場所。普通の人間にはない物が生えている事に驚愕・恐怖・好奇と様々な視線が向けられる事は理解していた。別段、もう慣れているのでそんなに気にはしない

「触ってもいいか?」

「駄目です。そこは敏感なのであんまり触られたくないんです」

「ちょっとだけでも?」

「駄目」

性感帯の弱点でもある尻尾を触らせるのは彼と肌を重ねた女性だけである。それ以外の人物に触らせたくはないのだ。彼にとっては性器にも近いのである。ついで毛が抜けて、湯船を汚してしまわないかが心配である

「ふふ・・・・・・」

少年と一夏のやりとりを聞いていたシャルルが楽しそうに笑う。彼女もまた素直に楽しいと感じられるのは久しぶりであった。素直に心からの感情を表せなかったという点ではラウラとも同類だったのだろう。だから彼女と同じ言葉を紡ぐ

「ありがとう、シュヴァンツ。それに一夏もね」

「・・・どういたしまして」

「お、おう・・・」

シャルルとラウラ、同じタイミングで転入してきた二人は少年にとって違う道を歩んだ自分自身の姿なのだと感じていた。一夏の方は何もしてないけど礼を言われて照れくさそうに掻く

「それと僕の事はシャルロットって呼んでくれると嬉しいな」

「それが本当の名前ですか?」

「そう、僕の本当の名前。お母さんがくれた、僕の本当の名前」

「分かりました。シャルロットさん」

「よろしくな、シャルロット」

「うん」

名乗る事の出来なかった本名で呼ばれて嬉しそうにするシャルロット。その表情は幼子の様に屈託の無い笑みであり、心から笑えている事を表していた。それは二人にも伝わった様で同じように笑うのだった



と、ここまでは良かったのだが・・・

三人はゆっくりと湯に浸かっている状態に突入したのだが、少しして一夏がそわそわし始めた。その顔には少し焦り気味の表情を浮かべている。そんな彼の様子に少年は苦笑いする

「一夏さん・・・・・・性欲あったんですね」

「し、仕方ないだろ!?っていうか失礼だな!?」

人の好意に対して異常なまでに鈍感な彼であっても性欲はある。

女性経験の無い童貞、思春期真っ只中、女学園に男子は二人だけ、発育の良い同年代の少女、ボディーライン丸分かりのISスーツ

それに最近色っぽくなってきたと感じる幼馴染やクラスメイトに姉と副担任

思春期の少年の性欲を刺激する機会は豊富である

ただ性を意識してしまえば邪な目線で女生徒達を見てしまいかねない。そうなれば社会的に学園生活が終わるだろうと思っている一夏にとっては苦行だった

性欲を抑えながら生活しているのに、同い年の女子と湯船に浸かっている現状では勃ってしまうのも仕方ないだろう

でも、そういう事する訳でも無いのに女子の前で勃起するのは恥ずかしくて死にたくなるのが思春期の男子である

「・・・・・・一夏のえっち」

「うおああああああああああああああああああッ!!!!」

「あ〜・・・・・・」

シャルロットの言葉に織斑一夏の精神はいとも容易く砕けた。よろよろと湯船から立ち上がると覚束無い足取りで大浴場から出て行ってしまった

「・・・・・・後で謝った方が良いかな?」

「大丈夫ですよ。一夏さんなら」

何とも適当過ぎる扱いではあるが、別に問題は無いだろうと思う少年

シャルロットのちょっとした意地悪でいたたまれずに撃沈して出て行った一夏には悪いが、もう少しだけ湯に浸かる事を堪能させて貰う事にする。日本人で無い少年にとって湯に入る事が余り無いので出来る限りは堪能しておきたいのだ

「二人きりになっちゃったね・・・」

「そうですね・・・」

先程の一夏と同じ様にそわそわし始めたシャルロット。男女が二人きりで恥ずかしげにもじもじすると言う状況。フラグ体質の少年は己の経験則から展開が読めた

「そ、それでね・・・」

「何で______ッ!?」

彼女の様子と声の調子から、この後の展開が予想出来る位に少年は鈍感でも無ければ恋愛に疎くも無い。だが腰に回り込んできた彼女の細い腕と、背に押し付けられた二つのふにゅりと柔らかい感触は予想できなかった

「わわっ!!シャルロットさん!?」

いくら裸を見る事などに慣れていたとしても、その感触を味わう事までは予想していないし、そうされては平然としている事など難しい。特に背中に当たっている柔らかでもちもちすべすべな柔らかさと、くにゅくにゅと押し当てられては硬くなってゆく突起の感触が、非常に気持ち良さと性欲を非常に刺激する。耳元の近くから聞こえる彼女の吐息が聴覚からも性欲を刺激していた

突然の事に戸惑いながらも、背中に押し当てられた女の柔らかさを実感させられては平静を保っていた男根も辛抱堪らんとばかりに力強くそそり勃ってゆく

「こ、こんなに大きいんだ・・・」

少年の背中越しに男根を見るシャルロットの声は驚きや恐怖、それに未知の事に対する興味が入り混じっていた。その男根は彼女の視線を受けた事で少年の興奮を煽り立てる事によって、もっと膨張してゆく

「う、あぁ・・・ッ!」

「凄く熱いし、堅いんだ・・・あ、びくびくしてる」

シャルロットの白く美しい手が壊れ物を優しく扱うかの様に男根を包み込む。グロテスクな男根を撫でる様に触れる手の感触が背筋にゾクリと奔る性感を生み出してゆくが、優しくゆっくりとした手つきなので、愛撫される時よりも刺激が足りないもどかしさに少年は悶えながらも疑問を問いかけた

「ど、どうして・・・こんな事を・・・?」

「シュヴァンツには感謝してるんだ。だから御礼がしたかったんだけど・・・今の僕にはこれ位しか出来ないから」

「僕は御礼が欲しくて助けた訳じゃないんですよ・・・それに無理にそんな事しなくても・・・・」

「僕じゃ嫌?そんなに僕は魅力が無い?」

「いや、そういう訳じゃ・・・ないです」

「なら良かった。僕がこうしたいだけなんだからシュヴァンツは気にしないで・・・ね?」

自分に似ていた彼女を助ける事で自分も救われた気になろうとしている偽善者だと思う所があるのに、御礼されるとか罪悪感に襲われそうなので拒否しようかと思ったが、それを読んだかの様な返答をされては優しい少年は拒否する事は出来なかった

拒絶される事は無いと分かったシャルロットは密着させていた体を離れさせる。背中に感じていた感触を確かめる様に少年が体を反転させて彼女の方へと振り向くと湯に浸かる彼女の裸体が映る

白人特有のミルク色のきめ細かな肌、滴り落ちる水滴を弾き返す若い肌は陶器の様に美しい。普段纏められている金髪は降ろされており、湯に濡れて何とも言えない色気を醸し出している。女性的な丸みを帯びた体付きは肌で感じた柔らかさが見ただけで分かるが、そこに無駄な肉や脂肪は無く、女性的な魅力とアスリートの様な引き締まりを両立させた肢体である。普段はコルセットで押さえつけられていた母性の塊や象徴とも言うべき乳房は程良い大きさで形よく整っており、巨乳とも美乳とも称して良いサイズと形であった。そして秘められるべき女陰は金色の縮れ毛が薄く覆っている。バランス良く整った女性的な肉体は男の情欲を煽り立てるには十分であった

「シャルロットさんの躰、とても綺麗です」

「あ、ありがとう・・・でも、やっぱり恥ずかしいね」

恥ずかしげに両手で胸と秘部を隠すシャルロットであったが、意識して隠されると何だかもっと見たくなる欲求に駆られてしまい、隠している部分を注視してしまう。意図してやっている訳では無いのだろうが男を惹きつける術を知っている様な動きである

「・・・シャルロットさんって母親に似ているとか言われた事は無いですか?特に見た目以外で」

「えっと見た目はそれなりに・・・見た目以外はどうだろう?ずっと一緒に暮らしてたから自然と似たんじゃないかなと思うけど」

「ああ・・・」

その言葉に少年は納得の表情を浮かべる。誰にでも気に入られる様な所作、男心を刺激する様なあざとさ・・・これ等は愛人という立場から男に捨てられない様に磨かれた母親の技術ではないかと予想する。今は亡き彼女の母親がどれだけの男を引き寄せる魅力を持っていたのかが気になる所である

「それじゃあお湯を汚す訳にも行きませんので・・・」

「そ、そうだね・・・」

少年はそのままシャワーの方へと向かう。シャルロットはちらちらと雄々しく力強さを象徴する様に勃起している男根に視線を向けては頬を赤らめていた

これから行う事に対しての緊張やときめきで、大浴場の中で反響してしまうのではと思う位に胸の高鳴りが止まらない

「安心してください・・・僕はシャルロットさんの嫌がる様な事はしませんから」

「うん・・・」

風呂椅子に座り緊張で体を硬くする彼女の心情を察する事が出来た少年は穏やかな笑みを浮かべながら、優しく頭を撫でる。可愛らしいと言われるほどに小さな体躯であっても、その表情や優しさは年上の男と言える程に頼もしく、その表情に目を奪われた

「あ・・・」

肩に回された手に押される様に少年の元へと体が引き寄せられてゆく。ゆっくりと近づく互いの顔に胸の高鳴りが大きくなり、夢見る乙女の様に瞳を閉じる。誰もが憧れるロマンティックなキス。自分は叶う事が無いと思われていた事が叶う瞬間が近づき

「ん・・・」

ちゅ・・・と濡れた柔らかさに包まれる唇の感触。ただ唇を合わせただけなのに、どうしてこうも至福の様な夢心地になれるのだろうと頭の片隅で思うシャルロット。そして恋するというのとても素敵で偉大な事だと実感せずにはいられない。一番では無いのが悔しいが、それを上回る程の悦びで満たされていた

「はふぅ・・・」

離れてゆく唇に切なさを覚えながらも、記憶に焼き付いたファーストキスの感触と感慨に酔い痴れた吐息は充足感と艶やかさが入り混じっていた。それを放った少女の表情は夢見る乙女から女の貌へと変わっていた。紫と紅の瞳が重なり合うと不思議と言葉など不要だった。自然に唇が再び重なり合う

「はぁ・・・ん・・・」

今度は唇を重ね合せるだけでは無く、舌先を絡めて擦り合わせるキスへと移行していた。経験豊富な少年が舌先を挿し込むと、彼女も恐る恐る口を開く。侵入を受け入れた口腔内を軟体が舐る様に蠢く

「はふぅ・・・んふぅ、んん・・・」

舌先が口腔を磨く様に歯を根元から一本一本擦り上げてゆく。頬肉を内側から擦られ、舌先を絡め取られると、吸い上げられた唾液を混ぜ合わせる様に互いの舌を擦り合わせる。口腔内を濃厚に愛撫されてゆくシャルロットはうっとりと蕩けた様な表情を浮かべ、鼻をふんふん鳴らしながら快楽を享受してゆく

初めての濃厚なキスに夢中になる少女の淫らな美しさを愛おしく感じている少年は、牝へと開花してゆく少女を溺れさせようと、媚薬を飲ませるかの如く自らの唾液を流し込んでゆく

「・・・ちゅ・・・んふぅ・・・」

流し込まれる唾液の味はよく分からなくても、喉を鳴らして飲み込んでゆくと淫らな興奮が内側から沸きあがる様に激しさを増してゆくシャルロットだが、更にちゅぷちゅぷくちゅくちゅと淫猥な粘り気を帯びた音が、大浴場に反響して聴覚を通して脳内へと沁み渡ってゆけば、体中が淫らに染まってゆく感覚に体中が震える

「んふ・・・は、あぁ・・・」

彼女も貪欲に快感を求めて自ら少年の背に腕を回して抱き着けば、唇だけで無く体も触れあう。すっかり充血して硬く勃起した乳首が小柄ながらも逞しい胸板に擦りつけられるのが気持ち良くて、体が小刻みに上下左右へと動けば乳頭が押し潰されながら引っ掻く様に擦れてゆく。体中が性感帯みたいに興奮し切った彼女の雌の部分、手付かずなのにも拘らず牝汁を垂れ流す淫裂へ不意打ちで人差し指と中指の二本を挿し込んで掻き回す。それに合わせて舌先を引っこ抜く様に吸い上げた

「ほふゅううううううううう!!?」

突然の急激な責めに目を見開き、声にならない声を上げるシャルロットだが不意打ちの快感にただ流されるしかなかった。処女である為に固く閉ざされていた淫裂は既に解れており、二本の指を容易く受け入れたばかりか、中の襞を掻きむしる様に擦り上げられる快楽に牝汁を更に噴き出してしまう

優しく灯った火の様な快感から一転して、激しく荒々しく燃え盛るような快楽へと変わった奔流がシャルロットの全身を駆け巡る様に広がってゆく。じゅるるると下品な音を立てて舌を吸い抜かれそうな感覚も、両手で胸を押し潰す様に揉まれ、乳首をぐりぐりと伸ばす様に潰される刺激も、淫裂の内部を抉る様に掻き回される快楽も、全てが強烈過ぎて体中が痙攣してゆくのが止められない

「おおおおおっ!?おっ、おおおおおおおおおおッ!!」

快楽に流されて混乱し切ったシャルロットは何かが込み上げてくる未知の感覚に様々な感情が入り混じった嗚咽を上げる。そこへ止めを刺さんとばかりに少年の中指と人差し指が媚肉を抉り、親指が陰核をきゅっと潰す

「_______はっ、あああああああああああああッ!!?」

強烈すぎる快感が脳を灼いた瞬間、思い切り開かれた瞳からは真っ白な光が弾けた様に感じた。弾かれた様に体を仰け反らせて虚空へと瞳を見開いたままシャルロットは初めて味わう絶頂に身を灼かれていた。淫裂が少しだけ広がり淫臭を放つ牝汁を水鉄砲の様に噴き出して、少年の掌へマーキングをする様に濡らしてゆく。そうして脱力した彼女は倒れ込む様に風呂のタイルに身を寝かせて絶頂の余韻を味わうのだった





「ん・・・シャルロットさんの、美味しいです」

「うぅ・・・シュヴァンツの意地悪・・・・・・」

自分の噴き出した牝汁を目の前で味わう様に舐めるのを見せられたシャルロットは恨めし気な視線を少年へと送るが、子供をあやす様な手つきで頭を撫でられる心地良さに目を細めてしまう

「シャルロットさんが可愛かったので、つい意地悪しちゃいました」

「もぅ・・・・・・」

屈託の無い笑みを浮かべて言われてしまうと、惚れた弱みで許してしまうそうになる自分はダメになってるなぁ・・・と実感してしまうシャルロットであった






「ほ、ほんとに入るの・・・?」

シャルロットは湯船の縁に手をつけ、形の良い白い臀部を少年に向けて差し出す様に向けており、力強く見せつける様に雄々しく反り勃っている男根は小さな子供の腕ほどの太さはある。ソレが自らの肉穴の中へと入るという事から呟かれた言葉には恐怖と緊張の入り混じっていたのだが、瞳には期待している感情も入り混じっている様にも思える。体の方も準備万端と言わんばかりに淫裂から牝汁が垂れていた

「えぇ・・・でも、その前にもう少しだけシャルロットさんの躰を味わわせて貰います」

「あっ、やぁん!」

少年の手が彼女の桃尻に触れると、感触や柔らかさを確認して楽しむ様に撫でまわしてゆく。白く柔らかい尻たぶを持ち上げる様に揉んで、尻肉が上下に歪んだりしながら揺れる様を楽しむ。セシリアの様にむっちりとした肉感的なのとは違うバランスの整った美尻もまた好しと尻の割れ目辺りに指を走らせた

「やぁっ!・・・・あぁん!」

シャルロットは敏感になっている臀部をこうも愛撫されるのは初めてであり、淫裂とは違うむずむずする様な感覚にもじもじと体を動かした。ふりふりと雄を誘う様な動きになっているのは無意識なのだろうが、尻肉を好きに嬲られじっくりと観察される事に羞恥と共に悦を感じてもいた。更に容赦無く少年の手がぱっくりと尻肉を押し開くと、隠された菊門にまで視線が突き刺さる

「シャルロットさんのお尻の穴・・・可愛いですよ」

「み、見ないでぇ・・・恥ずかしいよぉ・・・!」

排泄口を見られているという事実に凄まじい羞恥に襲われ、哀願の声を上げるシャルロットだがその淫裂から溢れる汁の量は増していた

それを理解している少年は男根で菊門を擦り上げる様にあてがい動かし始めた

「やぁっ・・・!あっ、あんん・・・」

尻肉に挟まれた男根に菊門を擦られる感覚に普通とは違った快感を感じてしまい甘い声を上げるシャルロット

そんな彼女の声をもっと聞きたいとばかりに少年は尻肉を掴んで男根を挟み込む

左右から包む尻肉の柔らかさと温かさが心地良く、擦れてゆく滑らかな肌も更に男根を刺激してゆく

グロテスクな肉棒が白い桃尻の間で上下に往復させながら、美少女が喘いでいる光景は征服欲を満たすには十分である

「はぁ・・・んああ・・・・っ」

ぬちゅぬちゅと擦られる菊門に彼女も確りと快感を享受しており、甘い声吐息を上げながらアナルの快感に身を沈めていく

誰にも触らせたことも見せた事すらない恥ずべき部分を擦られて、気持ち良くなっている自分の恥ずかしさに羞恥心が刺激されるが、彼女はその事に興奮して快感にもなっていた

「あ・・・!出る・・・出ちゃいます・・・っ!!」

そんな彼女の淫らな喘ぎ声と柔らかい桃尻で扱く気持ち良さに加えて、雁首が引っかかるのが心地良く、先程の愛撫から射精を我慢していた事も有って呆気無く限界を迎えてしまう

「あぁ・・・んっ・・・!」

尻の間で噴き出した精液が鈴口から菊門に向けて叩き付けられる感触と熱さをシャルロットは目を瞑り体を震わせながら感じていた。尻肉の間から溢れた白濁が垂れ落ちてゆき、陰毛や淫裂にも絡みついてぽたぽたと垂れ落ちてはタイルを汚していった





「じゃあ・・・いきますよ・・・」

「う、うん・・・や、優しくしてね?」

白濁に穢された尻を突き出しながら、妖しく細めた目で見上げてくるシャルロットの視線は言葉とは裏腹に男の本能を刺激する様な媚が混じっており、加虐心や庇護欲を刺激された少年は今すぐにでも肉棒を無理やり捻じ込んで本能の赴くままに滅茶苦茶にしてやりたいという暴力的な衝動を抑えながらゆっくりと淫裂に穂先を合わせる。

「んっ、くうぅ・・・・!!」

にちゃりと粘膜同士が接触した音と感触にごくりと息を呑み、目を瞑ると自らの内部を押し広げながらズブズブと侵入してくる肉傘の熱さと硬さがはっきりと分かる。まだ誰も受け入れた事の無い綺麗なピンク色の淫裂は柔らかく解れており処女的な締め付けをする膣口を通過すると、平均を遙かに上回るサイズの男根の亀頭を包み込む様に膣肉の襞が優しく絡みついて来た。

「く、はぁぁぁ・・・・・」

締まりが強い入り口に対し、引き込む様に亀頭へと絡みついて来る膣内の感触に苦悶の表情を浮かべながら、再度高まってゆく射精欲を抑え込んで腰を進める。処女の締まりを持ちながらも、優しく受け入れて奥へと引き込んでくる様な膣内の柔軟性は予想以上の快感を与えてくる魔性の躰と言っても良く、本当にあるのかと疑いそうになった処女の証である薄い膜に先端が触れた

「本当に、いいんですね・・・?」

「うん・・・僕の初めて、シュヴァンツにあげる」

「じゃあ行きますよ・・・・・・!」

最後の確認とばかりに問いかけられたシャルロットは心配させまいと笑顔を向けて答えた。その覚悟と思いやりをくみ取った少年も意を決して、二人が大きく息を吸い込んだ直後




「う・・・ああああああああ・・・ッ!?」




引き込む様に蠢く膣奥へと突入せんと押し出された男根の亀頭が膜を突き破る感覚、同時に襲ってくる初体験の痛みに声を上げながら天を仰ぐように体を反らして荒く息を吐くシャルロット。開通した膣から血が溢れ出して白い太腿を穢しながら垂れてゆく。しかし彼女の様子に対して溢れ出る血の量は少ない

「大丈夫ですか・・・?」

「う、うん・・・ごめんね。初めての痛みだったからびっくりしちゃって・・・・・」

自分に気を使っているのかと思った少年だったが、セシリア、鈴、千冬とIS操縦者は案外痛みに耐性があるのと、訓練による激しい運動で処女膜が少し裂けていたりする事も多いので初めてでも問題無かったりする

「痛みは・・・?」

「ちょっとだけ・・・でも、シュヴァンツが気持ち良くしてくれるんでしょ?」

そう言われてしまっては男として応えない訳にはいかない。男としてのプライドを刺激された少年はシャルロットへ快楽を叩き込んでみせるとばかりに腰を動かし始める

「あ・・・あぁぁ・・・・・」

密着していた下半身が離れてゆきシャルロットが寂しそうな喘ぎ声を上げる。それに合わせて男根も埋まっていた肉壺から引き抜かれてゆくが、優しく受け入れてくれた膣襞が行かないでと言っている様に絡みつく。雁首の返しとなっている部分が引っ掻く様にして強くなる摩擦に思わず腰が震えてしまう

「くっ・・・うう・・・っ!」

更に男根が無数の舌で舐めしゃぶられている様な快感に襲われるだけでなく、巾着の様になっている締まりの強い入り口が中身を絞り出そうとしてくる。まるで引き寄せられた得物を優しく受け入れると逃さない食虫植物である。下手に手を出せば嵌まって抜け出せなくなる様な快感であるが少年もまた性豪テレジア夫婦に一目置かれる程の逸材である

ぐっと両手で彼女の腰を掴んで固定すると、ずぶりと男根を再び膣奥へと突き入れる

「はぁんっ・・・」

今度は良い所を抉ったらしく満たされた様な声を上げてシャルロットは悦びを息を吐き出した。破瓜直後の処女ではあるが快感を感じ始めているのは天性なのだろう。そんな彼女の淫らな体を味わい尽くしてやろうと少年は腰を振る

「はうぅぅっ!んぁぁぁ・・・いい、気持ち良いよぉ・・・!!」

ぶちゅぶちゅと結合部から溢れ出す液体の血色は薄く、ひたすらに一突き毎に生まれる快楽がシャルロットを喜悦で満たしてゆく。自分の背中へ獣の様に圧し掛かり腰を振る少年の荒い息遣いを耳元で感じていた

「シャルロットさんのおま○こ・・・凄く気持ちいいです・・・っ!!」

「はあっ!あぁん!ぼ、僕も・・・シュヴァンツのおち○ぽ気持ち良いよぉ・・・!!」

獣へ戻ったみたいに腰を振り合って下半身をぶつけ続ける両者

最奥へと誘う膣内を押し開いた先にある子宮口へ鈴口がノックすれば、引き抜かれる際に膣襞が男根へ絡みついてしゃぶりつく。襞をひっくり返す様に男根を抉り抜けば、愛液が噴きこぼれる

元々の素質なのか小刻みに絶頂を続けているシャルロットは表情を蕩けさせながら、シャルルや道具としてでは無く、一人の女として求められている悦びに耽溺してゆく

「あっ、あっ・・・イ、イクっ!イッちゃう!またイクぅぅぅッ!!あ、あはぁぁぁ〜〜っ!?お、おっぱいまでぇぇっ!壊れちゃうよぉぉ・・・」

突かれる度にぷるんぷるんと揺れている美乳を少年の手が掴むと荒々しく揉みしだく。不意打ちで別の快楽が加えられた事によって彼女は絶頂を再び迎える

だが絶頂を迎えても執拗にねちっこく少年の指先が彼女の美乳から飛び出す様に勃起している乳首を嬲る。グミの様な感触の乳首をクリクリと圧し伸ばす様に転がしてから、潰す様に摘まんで乳房を引っ張る

「ひぎゅぅぅぅぅぅっ!?ち、乳首ちぎれちゃうよぉ!んああああ・・・っ!!」

少年が男根を子宮へと叩き付ける度に体が押し出され、引き留めようと乳首が引っ張られる。全体重では無くとも体重の数割が乳首へ集中して痛みか快楽かも分からない激烈な刺激が襲い掛かり翻弄されてゆく

だが、そんな刺激を受けた膣肉が放さないとばかりに強く締まり、襞を食い込む勢いで密着すると引き抜かれる男根から中身を絞り出される様な快感に全身が震える。とことん雄を悦ばせる為の躰であると感じながらも少年は必死に腰を振るい続ける

強烈な刺激によって半ば意識が朦朧としているシャルロットだが、臓物ごと子宮を叩きあげられる衝撃で意識を強制的に引き戻されてる。しかし体は快楽を貪ろうと貪欲に肉欲を煽る

「イクっ!イキます・・・っ!シャルロットさんの中で!一杯、出します・・・っ!!」

「あっ、あぁっ!あああん!・・・い、いいよ!来て、来てぇ!!」

お互いに体力的や精神的に限界が近い事を感じた少年は容赦無しのラストスパートに突入し全力で無我夢中で腰を振りたくって抽迭し続ける。削り取られるかの如く膣襞を擦り上げられて善がり声を上げる彼女の最奥に、叩き付けられた男根が破裂した様に白濁をぶち撒ける。


「くっ・・・ううううううううぅ!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ!!」


ドクドクと注がれる子種を吸い上げる様に膣内を収縮させながら、息を荒くして絶頂の悦に酔い痴れるシャルロット。その華奢な体躯を抱え込む様に支えている少年も全身が溶かされて吸い込まれるのではないかと思える快感に腰を震わせていた

「はぁ・・・あぁ・・・はあぁ・・・・・・うああっ!?」

白濁を吐き出して力を失った男根がゆっくりと結合部分から抜けてゆくが、絶頂の余韻で収縮している膣内によって残った子種を全て吐き出させられて声を上げてしまう少年

初めての性交と絶頂で腰が抜けたのかシャルロットは湯船の縁へうつ伏せになりながら床へ座り込んだ。その膣口からは子種や愛液が混じった液体がとろりと零れだしていた






「はぁ、はぁ・・・はぁぁ・・・セックスって、こんなに凄かったんだね・・・」

湯船の縁にうつ伏せのまま顔を横にしたシャルロットがうっとりと恍惚の表情で呟いた。色々と慌ただしい一日だった事も有ってか疲労もかなり積もっており、少年の方はまだ体力が残っていたが彼女の方は無理そうだった。しかし疲れを癒そうにも湯を汚す訳にはいかない。もし湯に精子が浮かんでいたら問題になるので湯には入らず、湯桶で体を清めるだけに留めておいた。

それにしてもこの世界に来てから奔放な生活送ってるなぁ・・・と自らの爛れた学園生活に苦笑してしまう少年だった

「ね、ねぇ・・・シュヴァンツ」

「何ですか・・・?」

「あ、あのね・・・もし良かったらでいいんだけど・・・」

身を起こしたシャルロットはもじもじと恥らいながら何かを言い出そうとして視線を彷徨わせている。正に恥らう乙女という様子であり、ちらちらと少年の方を見ては頬を紅く染めている

「ま、またしたくなったら・・・し、してもいいかな?」

「僕だったらいつでもいいですよ」

「良かった・・・ありがとうね」

幸福そうな笑顔を浮かべたシャルロットに少年も嬉しくなって笑顔を浮かべた。ゆったりとした時間が大浴場の中を流れる中に浸っていたくなるが余り長風呂をしていると、待っている真耶が心配するだろう

「それじゃ、僕は先に上がりますけどシャルロットさんはどうします?」

「じゃあ僕も上がろうと思うけど・・・腰が抜けちゃって」

「じゃあ、僕が抱えましょうか?」

「え・・・っと・・・・・じゃあ、お願いするね?」

はいと笑顔で返事した少年はシャルロットの体をお姫様抱っこの体勢で抱え上げた。平均よりも大きく下回る見た目からは想像も出来ない力強さに彼女は驚いた

「シュヴァンツって意外と力持ちなんだね」

「これでも男ですから・・・」

苦笑しながら出口の方へと向かい扉を開けると・・・





「・・・・・・・あ」

「・・・・・・・あ?」

「・・・・・・・え?」

其処に居た真耶と二人の声が重なった。二人が目を丸くしたのは彼女が脱衣所にいたという事では無い。扉の近くでへたり込む様に座っている足元にはおもらしをした様に汁が床へと垂れており、黄色のワンピースの胸元から零れる様に露出した爆乳からは母乳から出ており、片手は下着の中へと入ったままだった事である。ぼんやりとしていたのは先程の二人と同じ様に余韻に浸っていたからであろう。そこでナニをしていたかは一目瞭然であろう

「山田先生・・・?」

「・・・あ・・・あああああああああああ」

目があった瞬間、一気に彼女の顔が真っ赤に染まってゆき、その瞳からは涙が溢れ出す。見られた事や二人の行為を覗いていた事に対する羞恥と罪悪感に襲われているのだろうかと少年は思う

「ご、ごごごごごごめんなさい!!二人共ずっと出てこないからのぼせたりしちゃったんじゃないかって思って!そ、そうしたらヘイズ君に尻尾が生えてたり、デュノア君が女の子だったり、エッチな事してたりしてて、それで・・・その・・・あの、ごめんなさい!!」

自分達が迷惑かけたのに真耶が悪いみたいに平謝りされると、逆に少年達の方が罪悪感で一杯になってしまう

「いえ、先生は当然の事をしただけですから・・・謝るのは僕達の方です。ごめんなさい」

「ごめんなさい。山田先生」

「い、いえ・・・二人共無事で良かったです。けどエッチなのはいけないと思います!」

「・・・・・・僕達をオカズにしてたのにですか?」

「はうっ!!」

シャルロットの言葉でガチコーン!と真耶の頭に10tのマークがある錘が直撃した。その瞳からは同じ幅の涙がダバァと溢れており、どよ〜んと暗いオーラを出しながら落ち込み始めた

「ふふ・・・そうですよね。無理矢理されて喜んじゃうし、今度は不純異性交遊覗いてオカズにしちゃうなんて教師失格ですよね・・・はぁ・・・私ってホントに最低です。ふ・・・うふふ。おなかがくうくうなりました」

何やらネガティブ思考が暴走し始めている真耶を見て、流石に不味いと思った少年はシャルロットを降ろすと真耶を抱きしめる。突然の少年の行為に真耶は頬を染めながら混乱して慌てだす

「ヘ、ヘイズ君・・・!?」

「僕はエッチな女の人が大好きなんです。だから山田先生がエッチでも僕は気にしません」

「で、でも・・・むぐっ!?」

何か言おうとする真耶へと口づけで塞ぐ少年。その光景を見たシャルロットがムッとした表情になるが、構わず真耶の口腔内に舌を侵入させると唾液ごと彼女の舌を吸い上げる。すると瞳を潤ませながら彼女の筋肉が弛緩してゆく。唇を食まれ、舌で口腔内を隅々まで調べ尽くされ、貪られて弄ばれるような感覚。見透かす様な紅い瞳に射竦められて背筋にゾクリとしたものを感じながら、濃厚な口づけを受け入れていた

「んむぅ!?むふぅぅぅん・・・っ!!」

更にシャルロットに行ったのと同じ様に、彼女の特徴である不相応に大きく張り詰めた乳房を鷲掴みにして揉みくちゃにする少年

ぎゅむぎゅむと痛みを感じる辺りの力加減で、柔らかく手から溢れる程の乳房を揉みしだかれ、乳首を潰さんばかりに抓り上げられると痛みの後にじんじんとした甘い痺れに真耶は悶える。ぱっと手放された乳房には真っ赤な手の跡がついており、少年の掌の上でたぷたぷと弾んでゆく

「ふぁ・・・あぁ、ン・・・んひぃ!あっ、あぁん!!」

痛みによって快感を得るマゾヒスティックな悦びに戦慄く真耶。嬲られて弄ばれた乳房から飛び出る様に勃起した乳首からは、じんわりと母乳が溢れ出ていた。妊娠経験が無いのに母乳が出るのはホルモンバランスが異常だったりで体に悪いのだが、彼女はそういう体質であり問題では無いらしい。母乳が真耶から出て来る光景にシャルロットは目を丸くしていた

勿体ないとばかりに少年は真耶の乳首に吸い付く。舌先で乳頭を擦りながら、八重歯で乳首を齧る様に刺激してゆくと更に母乳が溢れ出して口内に甘さが広がってゆく。同時にどこか懐かしい様な感覚に浸っていた

「あんっ!そ、そんなに吸っちゃ・・・あぁっ!!」

真耶は乳首を強く吸われ母乳を飲まれる事に羞恥を覚えながらも、少年の手によって乳房を弄ばれるマゾヒスティックな刺激と、吸い上げられる刺激の二重奏に体を震わせるだけだった。

上半身だけでなく下半身もまた少年の手がワンピースの下から内側へと侵入して、ピンク色の可愛らしい下着の上から淫裂をなぞる様に指先が走ってゆく。しかし優しくじれったい様な刺激を与えながらも、敏感な陰核をなぞり上げるとビクンと体が跳ねる

「ひぁ・・・あぁん!!あっ・・・んんんんんうっ!!」

上半身では痛みを伴った激しく痛烈な刺激を、下半身では優しくゆっくりと慣らす様な刺激を。二つの刺激の差がより両方の感覚を高めてゆき真耶はいとも容易く絶頂を迎えていた。ガクガクと体を小刻みに震えさせながらじわりと下着が漏れ出した愛液によって再び濡らされ、母乳も性感の高まりに合わせて噴き出した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・わ、私、また・・・むううっ!!?」

荒く呼吸をしながら少年の手によって、シャルロットが見ている前で絶頂へ達せられた事に気絶したくなる程の羞恥に襲われる真耶であったが、再び唇を塞がれると口腔内を蹂躙してくる舌先の愛撫によって、瞳は蕩けて淫猥な光が宿ってゆく。流し込まれる唾液と自身の唾液がちゅぷちゅぷと音を立てて絡み合う舌同士によって混ぜ合わせられた粘液を飲み下すと、まるで媚薬を飲んだ様に興奮で体が熱くなってゆく

「はふ・・・んふぅ・・・」

熱に浮かされた様な表情で少年の瞳を見つめる真耶。その瞳には次の行為を期待する様な色に加え、支配されて嬲られたいという被虐心に満ちた感情を宿していた。魔性に魅入られた彼女は底なし沼へずぶずぶと沈んでゆくかの如く、与えられる淫らな感覚に抗う事など出来なかった

脱衣所の床に優しく寝かされると、細く美しい小さな腕が伸びて真耶の脚をゆっくりと押し開いた。ぱかりと花開く様に晒された桃色の下着は既に使い物にならない程に濡れており、待ち遠しくて堪らないとでも言いたげに張り付いた下着ごと淫裂が蠢いている。

先程からもっと犯らせろと猛っている男根を下着をずらして露わにした淫裂へと触れ合わせると、彼女の腰をがっちりと抱え込む様に固定して貫いた

「んあああああああああああっ!!」

一気に貫かれた真耶の体が弾かれた様に仰け反り、二つの巨大な乳房がぶるんと弾む。久しぶりに少年の逸物を受け入れる膣内は濡れ具合に反して狭く、きゅうっと収縮して狭まるが野太い肉杭によって容赦無く押し広げられて、捻じ込まれるような感覚に体の昂りが止まらない

ぐちゅぐちゅと男根の抽送される度に溢れ出す愛液が、少年と真耶の間を伝い床へと垂れてゆく。一突き毎にボールの様に弾む巨大な乳房の頂点はぴんと固く勃起させて、母乳を撒き散らしていた。目の前で行われている性の饗宴にシャルロットは気怠さを感じつつも凝視していた

「はぁっ!あっ!ああぁ!・・・あううううぅぅ!!」

少年と肌を重ねる所か、性交の経験が二回目である真耶だったが被虐体質の躰はしっかりと快感を享受していた。顔面を隅々まで紅潮させている彼女は既に快楽に蕩けており、同年代と間違えてもおかしくない童顔はどきりとする程に淫らになっていた。更に母乳を撒き散らす乳房を少年は容赦なく掴み上げた

「ひぎいいいいいいいいっ!!?あっ、あああああああああっ!?痛い、痛いよぉぉぉ・・・」

ぎゅむっと五指を喰いこませる様に乱暴で力任せにこねくり回す。爪が食い込む位の力で揉み潰される痛みに悲鳴を上げながらも膣肉は嬉しそうに男根を締め上げる。悲痛な声を上げて啼く真耶であったが、痛みと快楽で泣き笑いの表情を浮かべていた。その表情がもっと苦痛を与えて啼かせてみたいと少年の情欲と加虐心を煽る

「真耶さんはエッチでマゾの変態なんですから、痛いのが好きなんでしょう!!」

ギラリと豹変した様に雄の粗暴さを出した様な笑みを浮かべた少年は、潰さんとばかりに五指を喰いこませた乳房を引き千切る様に容赦無く引っ張る。突き上げる毎に母乳が掌を濡らし、乳首が手の内で踊る

「んぎいいいい!!あああああああああッ!!お、おっぱい千切れる!千切れちゃうううう!!んあああああああああっ!!またイグううううううう!!」

激痛と共に全身へ広がってゆく快感のスパークで既に真耶はよがり狂っていた。下品に歪んだ童顔からは涙や鼻水、涎を垂らしながら狂乱の声を上げる。変色する位に強く掴まれている乳房は少年の手によって歪に形を変えており、絶頂を繰り返し続けている淫裂はぷしゅぷしゅと汁を噴き出しながら痙攣し続けて男根を放さずにいる

そろそろ限界であった少年は歯を食いしばり、獣の様な嬌声を上げる真耶の膣内を滅茶苦茶に掻き回してゆく。

「おっ、おおおおおお!!おあっ、あっ、あああああああああああ!!」

快楽に歪んで狂う真耶の表情をしっかりと記憶に焼き付けながら、今にも射精してしまいそうな快楽に少年は耐えていた。痙攣しながら締め付けてくる膣肉を引きずり出さんとばかりの勢いで男根を引き抜くと、最奥の子宮口にまで叩き付けて先端を密着させる

同時に胸から放した手でそっちのけにしていた陰核を強く圧し潰した




「____________________________ッ!!!!!!!」

「い・・・・クゥ・・・・!!」



ぶわりと膨らんだ男根から密着した子宮へと流れ込んでゆく大量の白濁の熱さを感じながら、真耶はぐりんと白目を剥いて声にならない絶叫を上げながら絶頂を迎えた。その音量はIS学園全体に聞こえるのではないかと思える位であり、シャルロットも思わず耳を塞ぎ、間近で受けた少年は射精の快感と同時に耳がキーンとしたのだった

「えへ・・・へへ・・・あはぁぁぁぁ・・・・」

余りにも強烈な絶頂に彼女の意識は半分飛んで、余韻で弛緩した全身は電流を流されるカエルの様にがくがくと痙攣していた。男根が抜かれると緩んだ尿道から弧を描くほどの勢いで噴き出した黄金色の小水が少年の体を汚してゆく。そして真耶は恍惚としながら排泄の愉悦に浸っていたのだった



「うわぁ・・・・・・」

間近で少年に狂わされてゆく彼女を見つめていたシャルロットは、その様子に圧倒されながらも自分もこんな風に変えられてしまうのかと思わずにはいられなかった。だが、これ程までによがり狂う程の快楽を味わってみたいと思う所もあり、自分は思っていた以上に淫乱であったのかと感じていた

だが、そんな事より現状の問題である

「これ、どうするのさ・・・?」

脱衣所内に充満している淫臭、飛び散った少年と真耶の体液、挙句の果てに強烈なアンモニア臭を放つ黄金色の水溜り

明らかに放置できない状態で副担任は未だにアヘっており、少年も彼女の尿塗れ、自分は絶頂の余韻で腰が抜けている状態に頭を抱えたくなったシャルロットであった





“ふぅ・・・やっぱりお風呂は気持ち良い”

そう思いながら少年は大浴場の湯船に浸かっていた。力を抜くと溜まっている疲れも抜けていく様で気持ちが良かった。湯船に浸かるという日本の文化は良い物だとしみじみ感じながら、こちらでも旅行できたらいいなぁと思いを馳せていた

「ううぅ・・・教師なのに・・・あんな事・・・」

共に入浴しているのは少年に散々嬲られた真耶であった。湯に浮かぶ程にダイナミックな乳房は真っ赤な手形が付いており、ジンジンと痛むらしいが被虐体質なので大丈夫だろう

あの後、汚れた脱衣所の後始末を少年が一人で行い、目を覚まして平静に戻った真耶は自分の晒した痴態を思い出して凹んでいた

そしてシャルロットもまた匂いがついたと言う事で再び入浴していた

荒淫の疲れが湯に流れ出してゆくみたいで、非情に眠くなるが寝たら溺れるので誘惑に耐えながら、真耶の凹みっぷりが後を引きそうので少年はちょっと気取った言葉で慰めようと試みる

「ねぇ、真耶・・・」

「ふぁい・・・?」

まるで恋人に語り掛ける様な甘い響きの声で名前を呼ばれた真耶は、魅入られた様に少年の瞳から目を外せなくなる。普段の少年とは全く別人の様な大人びた雰囲気。神秘的とも感じられる蠱惑的な雰囲気に思わずシャルロットも魅入ってしまう

「凄くエッチで素敵だったよ・・・それと貴女には笑顔の方が似合う。だから僕に笑顔を見せて下さい。貴方だけの素敵な笑みを」

優しく甘い声で耳元に囁かれた少年の言葉に真耶は唇を半開きにして、恍惚とした表情を浮かべながら性的興奮とは別種の高揚感に体を震えさせている。横に居るシャルロットも顔を真っ赤にしながら何処か羨ましそうな表情をしていた

“カッコつけてみたけど・・・これは恥ずかしい。うん、凄く恥ずかしい”

二人の女性を魅了する雰囲気であったが、少年からして見れば単なる気障っぽい台詞をカッコつけて言っただけなので、言った後からじわじわと来る羞恥の感情に内心悶えていた。少年的には黒歴史になりそうである

「・・・シュヴァンツって本当に女誑しだよね」

「え・・・・・・?」

拗ねた様な口調で呟くシャルロットにジト目を向けられて、狼狽する少年だが女誑しは否定できない。真耶はいやんいやんと体を捩らせながら妄想に浸っていた

「山田先生を口説き落としてるし・・・それに僕の前で口説いてエッチした流れなんて手馴れてない?」

「う・・・ごめんなさい」

しゅんと小さくなって謝罪する少年にシャルロットはやれやれと思いながらも、割り込んだ様な物だから仕方ないと思う事にした。ついでに聞いた交友関係の爛れ具合や自分も母親と同じ様に愛人になったのには笑うしかない

「それにしても織斑先生と恋人なんて・・・それも二股とか言う以前に他の女の人ともエッチしちゃってるのは・・・」

「分かってます。それでも好きになっちゃったんですよ・・・」

「僕も人の事言えないけどね・・・」

恋に理屈とか関係無い。愛とは正気にして成らない狂気である。燃え上がったままに突き進む。

ちゃぷんと顔を湯に沈めた少年が蟹の様にぶくぶくと気泡を噴きながら考え込む

すると妄想から帰還した真耶がおずおずと声をかけてきた

「あの、そういえばデュノアさんの事なんだけど・・・」

「それは僕から伝えますから黙ってて貰えると嬉しいです」

「そうですか?何か困った事があるなら頼って下さいね?出来る限りの事はしますから!」

心配してくれる真耶にシャルロットは笑顔でありがとうございますと伝えた。童顔美女と中性的美少女が揃って湯に入っている光景は結構絵になっている。眼鏡を外した真耶というのも珍しくて良い。そんな光景を少年は優しそうに眺めていたのだった






「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めて宜しくお願いします」

翌日のホームルーム、あんぐりとクラスの女生徒達が呆けた表情で、クラスの教壇に立って自己紹介をするシャルロットを見つめていた。少年と一夏はこうなるんだろうなと予想していたので大して驚きはしなかったが、翌日に正体を晒したのは予想より早かった

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。という事です。はぁ・・・また寮の部屋割りが・・・」

仕事が増えた事に溜息をつく真耶に少年は内心で合掌するが、シャルロットは女だったという事態にクラスメイトは騒ぎ出し始める

「え?デュノア君って女・・・?」

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね!!」

「そういえば昨日って、確か男子が大浴場を使ったわよね!?」

どんどん喧噪が広がってゆく教室内に結局こうなるのかと思う少年

そして一夏へと向かっている箒の視線が怖い

「ねぇ、シュヴァンツ君!昨日はデュノア君・・・じゃなかったデュノアさんと一緒に入ったの!?」

隣の席の女生徒の質問に少年はなんて事の無い様な笑顔で答えた

「そうですよ。一夏さんは恥ずかしがって逃げちゃいました」

「ちょっ!?シュヴァンツ!!」

自分が恥ずかしがって逃げた事を公表されて一夏は思わず顔を紅くしながら慌ててしまう

「織斑君可愛い〜」

「おりむ〜へたれ〜」

「ぐふぉ!!?」

のほほんさんに無邪気な様子でへたれと言われた一夏のハートへ大ダメージである。小さな子供にどうして馬鹿なの?と純粋な顔で問われた時位にはダメージがデカい。ずぅぅんと暗い雰囲気を放ちながら机に突っ伏す一夏を見て、流石に箒も怒る気にはなれなかったらしく、少し憐れむ様な視線を向けている

「あれ?って事は尻尾君は最後まで一緒に入ったの!?」

「慣れてますから・・・」

少年の爆弾発言にきゃあああああああ!!とクラスメイト達が一斉に沸き立つ。耳年増な女子達は顔を真っ赤にしながら何やら話し合っている。こういうコイバナは何時の時代でも若者の好物である

「尻尾君って意外とプレイボーイ・・・?」

「・・・・・・・・・ご想像にお任せします」

曖昧な答えで更に沸き立つクラス。そして収拾がつかなくなった所為で半泣きの状態である真耶だったが、そこへ千冬がやって来た

「五月蝿いぞ!少しは静かにできないのか!」

千冬の一喝でしぃん・・・と静まり返る教室内に真耶が救いを見る様な目で彼女を見ていた

「色々と騒ぎたくなるのは分かるが他に迷惑だ。デュノアについては男だろうが女だろうがIS学園の生徒である事には変わりない。それとボーデヴィッヒ入れ」

「はい」

彼女の言葉と共に教室のドアが開き、ラウラが教室内へと入って来る。彼女が遅れたのは昨日の事件やラウラの元へ向かっていたからだろう。昨日の事件が後を引いている様子も無く至って健康で大丈夫そうなラウラの様子に、少年と一夏は目を見合わせて安心した

ラウラは一夏の元へ立ち止まると頭を下げた。突然の行為に困惑する一夏

「色々とすまなかった」

「お、おう・・・もう気にしてないぞ」

「そうか・・・」

一夏へビンタかまそうとした時よりも柔らかくなっているラウラの様子にクラスメイト達は驚いて呆けていた
少年も変わるものなんだなぁ・・・と彼女の変化を嬉しく思っていると自分の元へもやって来たので何かと首を傾げた直後

「むぐぅ!!?」

いきなり唇を奪われてしまった

突然の出来事に混乱しながらも少年は頭を片隅で彼女の唇の感触を味わいながら、何事かと考え込むが分からない

ピシリという音が色んな所で聞こえた様な気がするし、共に発せられる怒気が向けられているのを感じていた

そして唇を放したラウラが少年へ向かって宣言する

「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

「嫁・・・?」

何で男の自分が嫁と言われなければならんのだ?と少年は混乱していた

「日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を私の嫁にする」

「は、はぁ・・・」

日本にそんな文化があったかな?と首を傾げながらも少年は各所から向けられる怒気に冷や汗を流していた。セシリアやシャルロットの目が笑っていないし殺気が怖いのだが、それ以上に一番奥にいる魔王から発せられる闘気がヤバい

「あの・・・ラウラさん・・・」

「どうした嫁よ?」

「後ろを見た方が・・・・・・」

「一体何だと・・・い・・・・・・」

振り返ったラウラが見たのはニコニコと素敵な笑顔を浮かべる魔王様であった

「ボーデヴィッヒ・・・教師の目の前で不純異性交遊を行おうとは大した度胸じゃないか?ええ?」

キレたスミカを思い出させるようなオーラを放つ千冬に少年は懐かしくも恐ろしさを感じており、ラウラは恐怖で震えていた。他の生徒達も戦々恐々しながら縮こまっていた

「あ、あの、きょ、教官・・・あの・・・その・・・」

「そんなに元気が有り余っているのなら、私が特別指導してやろう・・・安心しろ。死なない程度には手加減はしてやろう」

「ぴぃぃぃ!!?申し訳ありません教官」

「織斑先生だ」

涙目で震えあがるラウラと割と私情丸出しの千冬を可愛いなぁと少年は思うのだった





ケーブルが樹海の様に広がり、機械の備品がちりばめられている奇怪な部屋

そこへ黒い少年が光と共にそこへ現れる。まるで瞬間移動の様に現れた彼は部屋の異様さを気にするでも無く、ただ部屋の主へ向かって報告をするだけであった

「暮桜のISコア回収任務完了。代用ISコアの差し替え完了。全ての任務は滞りなく完了」

「うん。お疲れ様〜黒猫君」

部屋の主、篠ノ之束は笑顔で黒い少年を出迎える。まるで父親の帰りを喜ぶ子供の様な笑顔を向ける彼女であるが、この様な表情を見せるのはこの世界では三人だけであったが、彼は特別だった。しかし束がいくら親愛の情を向けても彼の表情が変わる事は無い

「それじゃあ、み〜せ〜て」

「どうぞ」

黒猫と呼ばれた少年が『暮桜』のISコアを渡すと、束は気合を入れるかの様にディスプレイを起動して即座に作業へと取り掛かり始める

「お帰りなさいませ、シュヴァルツさま」

すると部屋の奥からやって来た銀髪を三つ編みにした少女が黒い少年を出迎える。しかし彼は返事をする事無く会釈だけして部屋から立ち去ってゆく。そんな彼を寂しそうに少女は見つめていた

「束さま」

「なにかな、くーちゃん」

「シュヴァルツさまは私の事が嫌いなのでしょうか?」

「どうしてそう思うのかな?」

少女の言葉にどこか寂しさが籠った質問で返す束。その表情は少女の方からは窺い知る事は出来ない

「何をしても表情一つ変えないばかりか、私の料理も気にしない様に食べてます・・・束さまの様に褒める訳でも無く、ただ作業の様に行うだけ」

余りにも異様な程に人間性を感じ取れない黒い少年に少女は困惑していた。初めて会った時から変わる事の無い姿と表情に不気味さを感じていたのだ

「黒猫君の心は壊れてるんだよ。死んだ時からね」

束の言葉の一部を理解できずに絶句する少女

「どういう事ですか・・・?」

「そのまんまの意味だよ・・・くーちゃん」

哀しげな声色で吐き出された天災の言葉はただ虚しく響くだけであった




あとがき

ぷげらしゃあああああああああああああ!!

ASTです。今回はというか今回も本当に申し訳ありません

留年にブチ切れた親による無線LANが取っ払われ、バイトのシフトが激減した事、定期切れで大学に気安く行けないという状況

更に文章ではエロス文章が似たり寄ったりでマンネリじゃね?と思ったりして思い悩む。いつになったらスカトロかけるだろーなー・・・書いた事すらないからどうなるかも分からん

艦これ始めて、蒼龍、榛名が来ないー、大型建造は司令部レベルが50クラスだから気安く出来ない

さて、内容については本文の文字数が46900文字という今までの記録を一気に変える記録

一夏と清香のコンビプレイ。ジョジョのジョセフをイメージしたワイヤー戦法。かなりご都合主義の様な戦いになってしまった

簪が調子乗って慢心してなきゃ一夏は負けてました。打鉄弐式が完成して白式を倒せる機会についつい調子に乗ってしまった簪でありました

ラウラと尻尾君の戦いは尻尾君は元の世界での経験や才能、機体の性能など様々な要素で勝ちました。ついでに尻尾君の個我がどこかおかしくなってゆく

黒猫君と楯無の戦いは意表をついた黒猫が逃げ切った形で勝利。尻尾君との関係はラストまで・・・

文章を修正して黒猫君の人形っぽさを上げる必要が出てきました

清香がヒロイン度が上がった気がするが、この先出番があるだろうか・・・デート位はあるかも?一夏のヒロインも増やすのもアリか

Hシーンについて

・シャル
今回のメインヒロイン的な相手でした。母親譲りのあざとさ、愛人体質の男を悦ばす為に出来た様な膣内にしてみた

・真耶
シャルだけで終わらせるつもりがそういえば出番少ないねー、じゃあ覗きで追加しようぜと急遽追加したヒロイン。投稿遅延の原因でもある
マゾという事で過激な痛みを味あわせたらアへった。巨乳キャラ必須のパイズリしてねーなと気が付く

次回について

多分、次の回あたりにセシリアが砂浜で産卵もどきの排便プレイが出来るかなぁ?
旅館辺りで束に酔わされた尻尾君がクラスメイトの目の前で乱交とかするとか、簪はオナニー見られたとか、楯無さんは簪が一緒になって引き込むとかイケるか・・・?
海だと皆開放的になるからセックスしまくりになるかもねー、
敵はオリジナルになるでしょう。やっと八号様の絵の機体が出せる。許可も貰ってある。ホーミングレーザーは弾速どうしようか、ガンダムだと簡単に回避してるけど実際はねぇ・・・
やっと一夏が童貞卒業するかも?



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