「なぁ、フェレスト」
「なに?」
イギリスから日本行きのジャンボジェット機。そのジェネラルクラスのゆったりとしたシートに収まりながらネギは溜息を吐いた。
「私達は仮契約をしたよな」
ふぇっ、と短くあがる声。それを無視してネギは淡々と続けた。
「私達は別れるのではなかったのか」
なぁ、フェレスト? 笑みを浮かべるその表情に、しかしフェレストは冷や汗を流し、顔を背けた。
「それは、そのあれよ。ネギは私の観察対象で」
「その任はとっくの昔、高等魔法学校入学の頃に解かれていた様な記憶があるが?」
そっぽを向くフェレストの肩に、ネギはそっと手を置きつげた。
「何を…したんだ?」
その数秒後、フェレストは堰を切ったかの様に暴露した。曰く自身の修行内容を確認していなかった、と。
第八話 麻帆良に降臨せし××
誰が仕組んだのだろうか。修行の地とされた麻帆良学園女子中学部。そこに設置された学園長室に向かいながらネギは溜息を吐いた。
アリアドネーはもとより、全世界の魔法学校に言えることなのだが、同じ年度の同門の卒業生、その修行の地が被ることはまずありえない。
当然人が管理する範囲内ならば被らないように配慮している。自動システムを含んだ修行内容の優先順位は人が決定した修行の地が先であり、自動システムはその後、つまり被らないように変更が可能なのだ。
だからこそ、今回フェレストが自身と同じ修行内容を告げられたのは、誰がしかの意志が働いていることになる。
それが一体誰なのか。どういった目的があるのか。多くの疑惑を持っているものの、それでもネギに否やはなかった。
フェレスト、もっと言うと好きな異性と離れることがないというのは精神的に楽だった。それが異性としての付き合いを始めて間もないのならばなおさら。
先導するタカミチ・T・高畑という人物が、樫の木なのか何なのかとにかく艶光りし頑丈そうな印象を受ける目の前のドアをノックした。
「高畑です」
失礼しますと入っていった高畑に続き、ネギとフェレストは扉をくぐった。
「おお良くぞ来られた。修行に学校の先生とは、これまた難儀な課題をもろうたのう」
「貴方が近衛近右衛門さんですか。お噂はかねがね」
ネギは目の前の後頭部が少々どころではなく突き出た老人に、これが噂の麻帆良宇宙人コノエモンか、と納得していた。
「こちらも二人の噂はきいておる。だがまだ子供なのも確か。正直に言うがこの修行は厳しいぞ。それでもやるかね」
「勿論やらせていただきます」
「私もですわ」
近衛の確認に二人は即答し、ならば今日から三月まで教育実習生として、と二年A組へと案内される事となった。
授業前の騒がしい廊下。その騒がしさは嫌な物ではなく、むしろ微笑ましいと呼べる物だった。
ネギにしてみれば、程度の差こそあれ数年前までこの中に存在したのだから。それはネギの横を付き添う様に歩くフェレストにしても同じ事だった。
「さて、私達が受け持つクラスはどうやら私達に宣戦布告をする様だ」
そんなほほえましさをたたえ、笑顔で見る目の前の教室。どことなく気品を感じさせる板が二中等部二年A組と彫られ白く塗られていた。
だがそんな事は二人に関係なかった。ネギ、フェレスト共に目に映るのは引き戸の天辺に挟まれた黒板消し。そうかの有名な黒板消しとラップが目の前にあったのだ。
「どうするのネギ。このままやっちゃう?」
くすくすと笑うフェレストに、気のせいだろうか教室内部の温度が下がった様に感じられた。
「そうだね。此処は一度、思い知らせてあげないといけないだろうね」
ふっふっふ、と笑うネギに、更に二度教室内の気温が下がった。
それを察しながらネギはゆっくりと一歩、態とブーツが音を立てる様に踏みだし、右腕を振った。
「「ひぎゃぁぁぁぁあ!」」
瞬間、吹きすさぶ衝撃波。それに巻き込まれた引き戸は音を立てて倒れ、その先にあったワイヤートラップを破壊し、犯人たる生徒達に襲いかからせた。
「また、つまらぬ物を斬ってしまった」
「「あんたは石川五右衛門か!!」」
どことなく寂しげに呟いた言葉は、ドアが無くなった教室内に響き、これでもかという突っ込みがネギを襲う。
だが、見る者は見ていた。ネギの右手その中に白銀に光る日本刀が収まっていた事を。
ただ一人それらをすべてみていたフェレストだけが、大きく溜息を吐いた。
このクラス、大丈夫かしら? 二−A。その存在が魔法学校ほどでなくともそれなりに理不尽な集まりである事を、早々に察した故の感想だった。
「今日からこの学校で理科教える事になりました、ネギ・スプリングフィールドです」
愛情を込めてネギ先生と呼んで下さいね? 瞬間ノリの良いクラスは爆笑に包まれたが、彼女だけは笑う事はできなかった。
いったい…
「今日…はもうないけれど、明日から英語を教える事になったフェスト・ミレシアムよ。よろしくね」
いきなりウィンクをかますフェレストと名乗る女性教論に、クラスはまたまた美人だと沸いたが、それもどうでもいい事だった。
な、なんで、
「奴らが此処にいるんスか」
彼女は知っていた。今年度行われた全魔法学校対抗試合、その結果と過程を。優勝したのは一組の美男美女。高等魔法学校所属ながらにして、大学部の連中をも打ち負かした豪傑。
幾らあのアリアドネー所属とは言え、その実力が尋常でない事は、無理矢理見せられた立体映像から彼女にしても容易に伺えた。
冗談じゃないっスよ。
彼女、春日美空は思わず身を震わせた。そう冗談じゃないのだ。
魔法使いの家に生まれ、日本では屈指の修行地、麻帆良学園に魔法使いという裏口入学を果たした美空は、それでも両親の意思とは正反対に、立派な魔法使い何それ美味しいの? と魔法を便利な道具扱いしているだけで、真剣に修行に打ち込んだ事がない。
だからといって魔法の威力を知らないわけではなく、美空の師に、戦い方の手本や、強者の魔法行使を何度も見せられている。だからこそ解った。悪戯に仕掛けたトラップの事如くを破壊した衝撃波は、魔法による物ではないと。ただ単に、今も教壇に突き刺さっている刀の剣圧によるものにすぎないのだと。
美空にはネギがたった一つ年が違うだけと言う事や、フェレストが高校三年生ほどの年齢しかない事など愚にも付かない事で、いつなんどきバトルが勃発するかと言う不安しかなかった。
それもその筈で、このクラス戦いに目がない物が一人二人いるのだ。
「あっはー、今日も空が青いっスねー」
だから美空はただ問題の先送りにしかならないと解っていても、現実から目をそらした。
美空にはまだ解っていなかった。幾ら若い、否幼いと言っても彼らは教師なのであり、現代の法律に則って生徒に牙をむくはずがないという事を。
そして、彼らの事を知った美空の師、シスターという敬虔なる神の使徒、シャークティーが彼らに触発され、美空に厳しく修行を下すことなど、神ならぬ彼女に解るはずがなかった。
「フェレスト」
ん? とフェレストはつい先日はれて恋人になった想い人、ネギに視線を向けるとことなくそれでも甘い声で、何と訪ねた。
「何故、私たちの部屋は同じなんだ」
瞬間、フェレストの顔から火が出る。フェレストの部屋はログハウスの二階、階段を上って突き当たりの部屋だ。
そしてネギの部屋はその隣。一見壁一つ隔てた別室のように思うだろうが、壁の代わりに二つの部屋を別ける物がふすま一枚だと分かればそうも言ってられないだろう。
「が、学園長が言ったんだから、しょうがないじゃない」
何処となく早口に言い募るフェレストの声は、何処となく苛立っているように聞こえたが、親しい者が聞けば照れ隠しだということは火を見るより明らかで、当然初級魔法学校から付き合いのあるネギには丸分かりだった。
「ふーん。それでフェレストはどっちがいい?」
「はい、カレーライス。どっちって何が?」
何の悪戯か着任一日目にして即授業を任されたネギとフェレストには引継ぎなどもろもろの手続きも相まって時間がなく、初めてきた地であったので地理にも疎い。そうなってくると当然簡単な物で済まそうと考えが一致し、それでも初任給はそれほど貰っていないのでパーッと外食し内祝いをしたかったのをぐっと我慢し、空きのない宿舎として太っ腹にも与えられた一軒家でカレーパーティーをすることになったのだ。
フェレストは種族的あるいは家系的、体質的に気にする必要は無いのだが、太ってネギに嫌われることを考え、ヘルシーなチキンカレーを、ネギは具材が完全にとろけたビーフカレーをそれぞれ口に含んだ。
ネギはさりげなくフェレストがカレーを飲み込んだのを見て取り、
「うん、男の子と女の子。始めに産むのはどっちがいい?」
瞬間フェレストは息を詰まらせ顔を紅くしそして青くした。
「ま、まさか襲おうってんじゃ」
それならそれでいいんだけど。などなど呟くのも面白いとネギは見つめ、そうだよね。酷いよね。などと某風の少女の台詞を吐き、
「それはそうと、このカレー隠し味に何入れたの?」
「そりゃ、始めは男の子で、その後…でも結婚二年間は二人で居たいって言うか、ってカレーね。そうカレーよ。えーと」
なにやらテンパッていたフェレストをネギは華麗にスルーし、フェレストがあげていく蜂蜜とコーヒーに始まる数々の隠し味に、ずいぶん気合を入れているもんだと、内心、同居どころか一室で同棲という自体を嫌っていないことにホッと安堵の息を吐いた。
ネギはフェレストに子供のことを話したが、実際問題フェレストとそういう関係になるつもりはまだなかった。
ネギの主観としては、そういった行為は愛の最終形態であり、まだ恋という愛ですらない段階でするには早すぎ、愛に至っていたとしても子供を育てる力量がないのに、子供を作るという意味がある行為をすることは命に対しての冒涜だと思っていたからだ。
フェレストには悪いけど結婚してからになるな。それが古い考えだということはネギも知っていた。だがだからと言って最愛の少女とただ性欲を満足させる為だけにそういった行為に及ぶのは、フェレストにしても嫌だろうと思っている。
ただ、フェレストも同じ気持ちとは限らないことは、村でのすれ違いから学習しており、いずれ時が来れば話し合う必要があると思っていた。
ただまあ、
「フェレスト一口貰うよ」
あっちょっと、と声を上げるフェレストに間接キスだとからかうくらいはいいだろうと実行し、その後調子に乗った報いか、なら口移しもいいわよね? という言葉と共に実行されたそれに、今度はネギの顔が紅く染まったのは余談だろう。
教育実習生。本来ならば給料がもらえないそれは、名目上でしかなく、多少の試験はあるだろうが、職員として本採用されるのもそう遠くない。少なくともネギはそう思っていた。
だからそれは偶然ではなく必然だったのだろう。
「あの、これ」
「何ネギ君」
魔法関係者であり、名目上フェレストとネギの指導教員に任命されたメガネをかけた美人、しずなは、今気付いたといわんばかりのフェレストをからかうかのように、さりげなくネギに体を密着させほんわりと声に色気を乗せ尋ね返した。
しずなは二日目にしてネギとフェレストの関係を見抜いていた。そしてしずなの目から見ても年が少しばかり幼いがネギは魅力的な男性だった。とはいえフェレストからネギを奪う気は毛頭なく、今後現れるだろうネギを誘惑する女性にフェレストが対抗できるように、あるいはネギがその場の雰囲気に流されないようにという親切心から態と誘惑しているのだ。
同僚であるタカミチ・T・高畑から魔法使いで知らぬ者は居ないと断言できる赤き翼のリーダー、ナギ・スプリングフィールドの写真は見せてもらっていた。何処か悪がきを彷彿とさせる少年で、アイドルを愛する者達から見たらこれ以上無い英雄像だっただろう事は想像に難くなかった。事実成長しいっぱしの男の顔となったナギの公開写真は、戦争中に発足したナギのファンクラブ会員を圧倒的に増加させた。
そしてネギはその血を引き、まるで瓜二つといわんばかりの容姿。あるいはファッションンに気を使っている分、ネギのほうがアイドルとしての需要は高いかもしれない。
今からある意味ナギに追いつき追い越しているネギだ。成長したとき吸い寄せられる女性はさぞ多いことだろう。ただそんな事で二人の仲に終止符が打たれることの無いようにというしずなの配慮は残念ながらフェレストには分からなかったようで、今も殺気にも似た視線がしずなに集中している。
「昨日担任の高畑先生から渡されたのですが」
その声にしずなは我に返り、顔一つ赤くしていないネギに、これは難関だと落としたフェレストに賞賛の念を送った。
「それがどうかしましたか?」
ただそれを悟らせないように、何事も無い風にネギに聞き返す。当然体の密着度はアップしていた。
「あら、折れたわね」
何処からともなく、ボキッという音が聞こえ、それがボールペンだということを知っていたしずなはもう少しネギの様子を見ればいいのにと思った。重要なのは敵の態度ではない。砦が動揺しているかいないかが重要なのだ。
だがネギは気が付かなかったようで、まるで捨てられた子犬のような目で思わずしずなが動揺していることを無視し、呟いた。
「二―Aが万年成績最下位というのは、本当ですか?」
嘘だといってくれ。そんなネギの様子に、しかししずなは焦っていたのだろう、オブラートも何もなくど真ん中直球ストレートでネギの心を抉った。
「その通りよ」
瞬間ネギはうなだれ、呪詛をはいた。コノエモンのアホ、と。
昼休み、学園の芝生の生えた庭にも似た場所で大河内アキラは友人とバレーを楽しんでいた。
「ねえねえ、皆はネギ先生のことどう思う」
ボールを受け取った佐々木まき絵がふと思い出したかのように言った言葉は彼女たちに波紋を呼んだ。
「噂やと、フェレストセンセとできてるらしいよ。実際仲ええもんあの二人」
「でも、フリーだったらどうする? 私だったら言っちゃうよ。せんせーカッコいいもん」
青い髪から色素が抜けたかのようなショートヘアをした和泉亜子がおかしそうに返すと、髪を右に縛った明石裕奈は面白そうに笑った。
それを見ながらアキラは思う。実際そうなったらフェレストが黙っていないだろう、と。
恋愛事は良く分からなかったが、それでもアキラにはネギとフェレストがただならぬ関係にあることをなんとなくではあったが察していた。ただそれを表に出して言わないのは、どこぞの同人女と同類に見られることを無意識に嫌っていたからだったがアキラにとっても、それは知らないほうがいいことだろう。だれでもラブ臭なるものを感知する不思議生物と同類と思われたくはないだろうし、人付き合いの良いアキラには無意味に他人を嫌っている自分を発見することは辛いだろう。
だからアキラは変わりこういった。今年私たち受験生だけど、と。
あえて大丈夫なのか、と聞かないところがアキラから見たネギたちの印象を語っていた。
「そうだね〜。でもネギ先生はともかく、フェレスト先生は乙女の悩みが解決出来そうじゃない?」
「そうやな。フェレスト先生大人っぽいし、ホントに十八歳なのか怪しいで? うちらは勿論、普通の高校生やったら太刀打ちできへんよ」
ぽんっととんだバレーボールは、
「誰が太刀打ちできないのかしら?」
一人の女子高校生の下へ転がり、アキラはあからさまに目を覆った。
一波乱あるんじゃないかな。
きっとそれは真実で、事実呼ばれて飛び出たネギが巧みに話題を摩り替えることでその場は収まった。
ただそれを見たアキラは密かに思った。ネギ先生、詐欺師でも通用しそう、と。
勿論何かを感じ取ったかのようにキョロキョロとあちらこちらを見渡し始めたネギの前に撤退を開始したが、きっとそれはあっていたのだろう。
何でこうなったんだろう。ネギは一人屋上のコートで溜息を吐いた。
「必殺! 太陽拳!!」
「はぅッ」
いやそれ天津飯の技だから。思わず突っ込みそうになったネギはそれでもなんだか自分のしていることがどうしようもなく馬鹿馬鹿しく感じられ、自然また一つ溜息が量産された。
事の発端は体育教師の本田正成、四十五歳が季節はずれのインフルエンザウィルスにかかり自宅で臥せったことからだった。
朝の職員会議で本田先生の授業は基本授業を行うクラスの担任が勤めることになった。鳴ったのだが、二年A組は何故そう簡単に居なくなる!! というようなタカミチ・T・高畑の担当で、当然のように今日もまた謎の出張で不在だった。
そこでお鉢が回ってきたのがネギだったというだけだ。
「なんて不幸なんだろう」
やり直しを要求する! と喧嘩を売り始めた二―Aの生徒たちにネギは黄昏ながら言い含めた。確かに年甲斐もなく中坊に言いがかりをつけてきた女子高生のほうが悪い、と。
「だが、君たちはいいのか! こんな、こんな意味のない争いをして、本当にそれで君達は納得できるのか!!」
見たまえ! ネギは叫ぶ。どうしようもない現実に。
「アスナ君のあの顔を。実に無残じゃないか」
「センセー。それは先生がアスナがやられたときの写真を撮ったからだと思います」
誰からともなく野次が飛ぶがネギは屈さない。拳を握りそんな事はない、と言い張った。
「何を言うんだ。私はただ、アスナ君の恋が上手く行くようにと」
「センセー。写真で脅すのはよくないと思います」
その言葉にネギは何を言っているのかね、と実にすがすがしく笑った。
「私はただ、高畑先生が写真を見たら、何時も突っ張っているアスナ君が痛みに耐えるその瞬間に、言い知れない何を感じるかもしれないと」
「それって…ただの変態じゃ」
「何を言うんだね。君達もこれを見たらそうは言ってられないんじゃないかな」
さらり。そんな擬音が聞こえてきそうなほど何気なく取り出した一枚の写真。最前列に居たアキラとユウナはそれを見つめ、
「意外と可愛いところあるんやな。うち知らんかったで」
のほほんとした学院長の孫、近衛このかの声にアスナは瞬間甲高い悲鳴をあげた。
「見るなーーーー!!」
一瞬で飛んできて写真をひったくるアスナがぐすぐすと音を立て、瞬間ネギの目が光った。
「アスナ君。この写真を良く見たまえ」
「あの…先生」
何処からか声が聞こえてくるがネギはそれを無視した。
「これが修正後の写真だ」
ばん、と出されるもう一枚の写真。そこには何時撮ったのか、アスナを斜め後から撮影した今は珍しいブルマ姿。真剣な表情はアスナの整った容姿と相まって十分すぎるほど輝いていたが、ネギがとったのだそれだけのはずがない。
「こ、これは!!」
おぉ! とこのかが食いついた。
「アスナ、アスナ。アスナ、今日ピンクの」
ぎゃーーーー、とまたもや声が上がった。見るんじゃねぇー。咆哮するアスナが暴れ終業の鐘が鳴った。
「まあアスナ君。好みは人それぞれだからもしかしたら高畑先生も」
「そんな訳ないでしょこのボケー!!」
「あかん!! アスナ、フルスロットルや!!」
思わず振るった拳は、ネギを捕らえされどネギは煙と共に消え去った。
「あ、先生…」
残されたのは二年A組と、女子高生たち。この勝負いったいなんだったの、とボーっとする高校生陣と、
「アスナ、元気だしや」
ぽん、とこのかに肩を叩かれるアスナの姿があった。彼女は語る。パンちらなんて、パンちらなんて、と。真実はアスナとこのかの心の中だけにあるかもしれない。
夜、
「で?」
一見のログハウスで、
「アスナさんの写真を撮ったのは」
どうしてかしら? 一人の阿修羅が光臨していた。
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