「キョウカちゃん、絶対帰ってくるから待っててくれるかい?」

「うん………わかった」

「はいはい!それじゃこの話はこれでおしまい!しばらく家を出るんだ、うちの味を忘れないように今日は豪勢にいくよ」

「あ、それじゃ俺も手伝います」

「私も」

「それじゃ俺も「あんたは邪魔だから出ていきな」」


立ち直ったセイヤに止めをさし、台所に行くのについていった。

この日に食べた夕食は特別なものは出なくても今までのどんなものよりも暖かく美味しかった。



機動戦艦ナデシコ〜異界より来し者〜

第3話  〜登場!!最新鋭艦ナデシコ〜




〜佐世保ドック〜

太陽が真南に射す頃、柵に囲まれている工場地のそばに佇む2人の人影があった。

1人は30代後半の縁なしメガネの男性、もう1人は銀髪紅眼の見た目20に届くかどうかという青年……。

わかる人はわかるだろうがウリバタケセイヤとアマツカヤシロである。


「ようやく……着きましたね……」

「ああ……長かったな……」


瞼の裏に写るはここに来るまでの苦しかった道程……。

何度もあきらめようと足を止めた。

無視して進んでいく人たちの冷たさに何度も挫けそうになった。

何度も何度も……しかしついにたどり着いた。

俺には仲間がいたから。

親と子ほども年齢は離れているが共に苦難を乗り越えてきた戦友である。

互いに叱咤し、励まし、肩を貸し、助け合った2人の絆はたとえ神であろうとも引き裂くことは不可能だろう。

閉じた瞼からは、決してこぼすまいと堪えていた水が一筋……流れていった。


「……って勝手に自己完結してる最中なんですがね……なんで俺らがこんな苦労をしているかわかってますか?」


感動に打ち震えていたセイヤが声の方に顔を向けると、そこにはヤシロの見惚れるような笑顔があった。

その笑顔は女性ならば誰もが見惚れてしまい、男性でも一部のものには絶大な威力があるだろう……微妙に見える青筋がなければ……。


「そうそう! つらかったよなぁ。人間成せば成るってのは本当のことなんだな! ほらお前も一緒に感動しようぜ」


興奮していて気づかなかったセイヤの発言にヤシロの顔に今度こそ青筋を浮かべた。


「というかね! ここまで苦労したのはセイヤさんのこの多すぎる荷物のせいでしょうが!!」


とヤシロが指差す方向には2つのスーツケースと5つの箱。

それぞれの箱の中身はセイヤのコレクションであるフィギュアやプラモデル、そして彼の発明品?である。


「たしかにこれからは家に戻れないんですから多少荷物が多くなるのは仕方ないですよ!?」

「じゃあいいじゃねぇか」

「よくないです!! 大体、職場にフィギュアとかプラモデルとかいらないでしょう!」

「おまえ! 俺のコレクションを馬鹿にすんのか!!」

「馬鹿になんかしてないでしょう!? そもそもなんで出発の時にガソリンの残量確認しとかないんですか!」

「うるせぇ!! お前だって気づかなかっただろうが!」


いつまでも止まない口論からこうなった経緯を推測してみると、

太陽が昇る早朝に家族との別れを済ませて荷物をトラックに載せて出発したがスムーズにトラックを走らせていたがガソリン切れによりエンジンストップ。

載せていた荷物を持ってここまで移動することになったがその時ネックになったのが荷物の量だ。

スーツケースはそれぞれに持つとして5つの箱に入っているウリバタケコレクション。

頑なに捨てることを拒否するのでどうにか持っていけないかと悪戦苦闘した結果

セイヤ:スーツケース×2 + コレクション箱×1

ヤシロ:コレクション箱×4

で佐世保ドックまで徒歩で3時間かけてたどり着いたのだ。

ちなみにヤシロの持っていた総重量は80kgを超えていた……彼の超人的な身体能力がなければたどり着くことは叶わなかっただろう。

それはそれとして、いくらまだ敷地に入っていないとはいえ目の前でこれだけ騒いでいれば当然目撃者もいるわけで……


「あんたたち、ここに何か用事でもあるのかね?」


当然警備員が呼ばれます。


「ん?なんだよ、あんた」

「どうみても警備員の人でしょうが! 騒がしくしましてすみません」


口論の途中に横から聞こえてきた声にセイヤは誰かと逆に尋ね返すが、ヤシロは服装から分かったのか警備員に対して頭を下げた。


「うむ、まぁこんなところで騒がれても大して中までは届かないだろうがね。それでここになにか用事でもあるのかね?」


ヤシロの行動に多少緊張を解いたのか、先程よりもやわらかい口調で再度尋ねてきた。


「ええっと、プロスペクターさんの紹介で今日からここで働かせていただくことになっていることになってるんですが……」

「プロスペクター?」

「はい。あ、名刺あります」


スカウトの時に渡された名刺を渡すと連絡をするといって警備員は待合所に戻っていった。

それから数分後、確認に来たのかヤシロたちをスカウトしたプロス本人がやってきた。


「これはこれは、ようこそおいでくださいました。予定より遅れていたのでどうしたのかと思いましたよ」

「まぁ、多少ハプニングがありまして」

「ほぉ、それはそれ「よぉ、プロスのだんな」なんですかウリバタケさん?」

「わりいけど歩き詰めで俺もヤシロも疲れてんだよ。とりあえず案内してくんねぇか?」

「おや、これは失礼しました。それではこちらへどうぞ」


セイヤの発言によりようやく佐世保ドック内部へ入ることができたヤシロとセイヤはプロスの案内で奥へと進んでいった。

ちなみに荷物はあとで警備員の人が運んでくれることになった。

・・・・・

・・・



地上から地下ドックへと降りていくと目の前に巨大な物体が見えた。


「さて! こちらが我々ネルガルの技術をすべて注ぎ込んだ最新鋭艦「ナデシコ」です!」

「え!?これ「おおー!! こ、これを分解していいのか!?」」

「ははは、分解は無理ですなぁ」


プロスの発言により今までの疲れた様子も吹き飛んだのかセイヤは少年のような澄んだキラキラした瞳でナデシコを見ている。

身体中から分解したいオーラが漏れ出しているので、もしプロスが同意した瞬間にナデシコはスクラップになっていたかもしれない。

隣のセイヤはプロスに任せることにして、ヤシロは眼前の最新鋭艦に目を向けた。


(何というか……航空力学とか色々無視した造りだなぁ。大体あの突き出しているのはなんだ?)

「あれはディストーション・フィールドの発生ブレードですよ」


背後からの声に振り向くとニコニコの笑顔のままのプロスがいた。

さらに後ろではセイヤがなにやら叫んでいるがこれは無視する。


「プロスさん……(あれ? 今声出してたっけ?)」

「いえいえ、声は出ていませんよ」

「!!」


二度も心の中を読まれたことにヤシロが驚いていると、


「別に心を読んだわけではありませんよ。貴方が発生プレードを見ていたから説明したのですよ」


と言われ、たしかにブレードを注視していたので納得することにした。

それとともに新たな疑問が浮き上がってきた。


「ディストーション・フィールド?」


初めて聞いたその言葉に、説明を求めるように質問をしたのだが


(あれ?)

「ディストーション・フィールドとはですね、 相転移エンジンから得られる膨大なエネルギーを用いて、自艦の周囲の空間を歪ませることができ、それにより相手の攻撃を逸らすという……まぁ、一種のバリ アですな」


プロスの説明を聞いていく内に何か違和感を感じたが、それが何かが分からないので今は置いておくことにする。


「それでは相転移エンジンとは?」

「相転移エンジンとは真空の相転移現象を人工的に起こしまして、そのときに発生するエネルギーを利用しているものです。この艦の目玉の最新技術の1つなん ですよ」

(まただ……俺は……これらを知っている?)


プロスの説明を聞くたびに、カギの閉まっていた箱が開いて出てくるようにこれらについての情報が頭に流れてくる。

突然の情報の奔流に眩暈を感じ、気が付くとプロスに支えられていた。

「大丈夫ですか?」

「あ、すみません。どうも疲れが出たようですね」

「そうですか、それではあとは着任の知らせとして本日のところはこれくら「おおおおおーー!! こ、こいつはぁ!!!!」」


ドックに響き渡る大声に何事かと顔を見合わせると大声の発生場所と思われる戦艦内に向かった。

そこには全高約6mの人型機動兵器と、工具を両手に持ち人型機動兵器に向かっているセイヤの姿が……

その様子にヤシロは溜息をこぼしつつも懐から縄を取り出した。


「こ、こんなにスリムなもんが機動戦をしたりすんのかぁぁぁ!! すっぐぇぇぇぇぇ!!!」


今にも解体をし始めそうな勢いで機動兵器に駆け寄るが、カエルを潰したような声とともに急停止した。

いや、正確にはされた……というほうが正しい。

セイヤの首には輪状の縄がかかり、元をたどっていくとそこにはヤシロの姿が。


「すみません。セイヤさんって気になるものは解体するクセがありまして……」

「わたしは気にしていませんが……ウリバタケさんは大丈夫なんですか?」

「ええ、このくらいで死んでたらこの3年間で100回は死んでます」


縄を引きながらも頭を下げてあやまるヤシロに、わずかに冷や汗を流しているプロスはセイヤの身を案じたが話を聞く限り日常の光景のようだ。


「ゲホゲホッてめ……俺を殺す気か!」

「いきなり解体し始めようとしたからですよ。オリエさんにも貴方のことをよろしくと言われてるんですから」

「チッ、オリエがか。だからっていきなり首絞めはないだろうが」

「まぁ、あれは偶然ですけど。でも頭の血は下がったでしょ?」

「そうだな、下がりすぎてもうすぐで坂を上りきるところだったよ」

「お帰りなさい」

「……もういいわ」


意識を取り戻した途端、猛然とヤシロに当たっていたが意味がないこととわかったのかその場に座り込む。

それにしても冷静に首に縄をかけるヤシロ……この3年間で染まってしまったようだ。


「んで? これから何すればいいんだ?」


若干話しについてこれず、ボーッとしているプロスに対してセイヤは憮然とした様子で尋ねた。

目の前に宝の山があるのに手が出せないことでいたく不機嫌のようだが……その言葉により戻ってきたプロスは微妙に引きつった笑顔で答えた。


「ウリバタケさんにはですね、このナデシコの整備班班長をしてもらいます」

「俺がか!?」

「ええ。それでアマツカさ「よぉっしゃぁぁぁ!! これで好きなだけ解体できるぅ!」……はぁ」


人選を間違えたかなぁと早くも後悔しているプロスをよそに上機嫌でスパナを振り回すセイヤ。

そしてヤシロは自分は何をすればいいのかなぁと思いつつも2人の対照的な様子を見ていた。



紆余曲折を経て「ナデシコ」へと乗船を果たしたヤシロとウリバタケ。

これから彼らは誰と出会い、何を経験し、そして何を思うのか……

この物語はようやく本流へと合流を果たす。

この流れの先に待つものは。




〜あとがき〜

どうもお久しぶりです、コヒルです。

久しぶりに書いたのですけど、結構書き方変わってしまっているかもしれませんね。

今回で何とかヤシロとウリバタケがナデシコに乗船しました。

何ていうか……しばらく執筆から離れていたのですが書き方を忘れてしまっていますね。

これからも続けて行こうとは思っているのですが今回のように更新に時間がかかると思われます。

それでもよろしいといわれる人は待っていていただけるとありがたいです。

それではまた次回でお会いできることを祈って。





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