in side
とりあえず、ネギま!の世界で使った道具の補充とか新しい武器とかを買うために道具兼武器屋に向かう――
前に生体マグネタイト協会で換金をしておく。いや、お金無いと買えないじゃん? で、換金を終えて、すぐさま道具兼武器屋に入った。
「これでいいの?」
「ああ、翔太さんのスタイルを考えるとその方がいい。確かに威力が高い銃もありだけど、慣れない内は反動に振り回されるだろうしね」
なんて、真名のアドバイスを受けながら銃を選んでいる。でもなぁ、真名が選んでくれたのって、俺が最初に使った銃なんだよな。
ちなみに理華は映画に出てきそうなマシンガンを選んでもらってたりするけど。
ん〜、今回はお金に余裕もあるし、真名が言ってた威力が大きい銃も買っておくか。
あ、ついでに言っておくと刹那達の防具も買っておいた。防具無しのままじゃ、色々とマズイと思ったしな。
で、刹那が選んだのは俺と似た感じの物を。真名は理華と一緒のを選んでた。で、買い物を終えて、向かうは業魔殿。
「や、メアリ」
「あ、翔太様。ようこそいらっしゃいました。そちらの方々は?」
「しばらく一緒に行動することになった人達だよ」
「そうでしたか。初めまして、この業魔殿オーナーヴィクトル様に仕えますメアリです」
「あ、どうも……」
業魔殿に入るとメアリがいたんで挨拶すると、そんなことをメアリに聞かれた。
で、答えるとメアリがスカートの両端を軽く上げつつ優雅に挨拶してたりする。
ミナトが頭を下げるけど、刹那と真名はなんか感心しているようにも見える。
「あっと、そうだ。俺達、正宗さんとラリーさんに用事があるから、そっちを済ませてから向かうって、ヴィクトルさんに言っておいてくれないかな?」
「わかりました」
「悪いな。じゃ、後で」
頭を下げて返事をしてくれるメアリに右手を振ってから向かうのは厨房である。
「あの……どうしてここに?」
「刹那の剣を直してくれる人がここにいるから」
「はい?」
答えると聞いてきた刹那は思わず目を見開いてるけど……まぁ、わからなくもない。
どう見ても厨房にしか見えない場所で、どうやって剣を直せるのか疑問に思ってもおかしくない。ていうか、普通だと思う。
でも、いるんだよね。色んな意味でツッコミ所満載だけど、直せる人が――
「おや、翔太さんではありませんか。今回はどのようなご用件で?」
「俺達の武器と防具を新しく合成して欲しいのと、刹那の剣を直して欲しいんだけど。出来るかな?」
「ふむ、その剣とは?」
「あ、これです……」
で、厨房に入ると村正さんが出迎えてくれたんで、そのことを話すと村正さんがあごに手をやりながら聞いてきた。
それで刹那が折れていた剣を手渡し、受け取った村正さんはその剣を見て、それから鞘から剣を抜いて更に見ていた。
「ふむ……この剣は元々あなたの物ではありませんね?」
「え? あ、はい……わかる……のですか?」
「ええ……この剣は長い間使い込まれていますね……それこそ十数年以上も。
あなたの若さを考えるならば、誰かが使っていた刀をあなたに譲ったと考える方が妥当でしょう」
村正さんの話に刹那は驚いたような顔をしていたけど……確かに刹那の剣って、このかのお父さんが使っていた剣をもらったんだよな?
それを剣を見ただけでわかるなんて、村正さんって実は凄い人?
「流石ですね……一目見ただけで、そこまでわかるとは……」
「ふふ……今でこそ、この業魔殿のシェフをしていますが、私は元々刀鍛冶として最高の剣を打つために世界中を旅して回ったことがありましてね。
そのおかげですよ。それでこの剣を直して欲しいとのことですが……いっそのこと、あなたの剣として打ち直してはどうでしょうか?」
「え?」
村正さんの話に感心していたらしい刹那が驚いたような顔をした。意味は良くわからないけど、刹那の為の剣にするということかな?
「で、ですが……その剣は――」
「確かに直すことは出来ます。ですが、それは新しく剣を打つのと変わりないのです。
ならば、あなたの剣として打ち直して方がよろしいかと思うのですが?」
戸惑う刹那だけど、正宗さんは刹那の剣にすることを勧めてくる。しっかし、話聞いてるだけだと俺には良くわからないんだが?
あれかな? 思い入れがあって中々捨てられないとか……なんか、違うような気がするけど、そんなもんなのかもしれない。刹那にとってはだけど。
「……わかり……ました……お願い……します……」
「ええ、任せてください。翔太さん、お手数ですがフォルマをお願い出来ますか?」
「ん? ああ、わかった」
結局は刹那が折れたらしい。うつむきながら、震える声を出す。なんか、色々と想う所があるんだろうなぁ〜。
村正さんはそれを聞いて満足そうにうなずいてから、俺にそんなことを言ってくる。
ちなみにだが、フォルマのことを知ってからはちゃんと集めるようにしてる。フォルマがないと、武器を強くすることも出来ないしな。
まぁ、集める時は刹那達に変な目で見られたけど……それはそれとして、俺はリュックから今まで集めたフォルマを取り出して、テーブルに置いていく。
村正さんはそれらを見てからフォルマを4つほど手に取ると、鞘から抜いた折れた刹那の剣と4つのフォルマを台の上に置いた。
そして、装置を操作し――
「へ?」
刹那からそんな声を聞いた気がした。見てみると呆然としている。まぁ、無理もない。いきなり剣がプレスされたんだしな。
で、プレスが終わるとそこには1本の剣があった。刹那が使っていた、折れる前の剣が……
形とかは前と変わってないような気がする。でも、なんというか……輝きが違うような気がした。
「さぁ、どうぞ」
「え? あ、はい……凄い……」
村正さんに差し出された剣を、最初は呆然としていた刹那が慌てて受け取る。
そして、剣を見るなり軽く驚いたような顔をしていた。でも、凄いと言われても……どこが凄いんだかわからないんだけど?
「そんなもんなのか?」
「ええ……夕凪も力を宿していましたが……この刀は夕凪以上の力を感じるんです……」
「それはそうでしょう。悪魔が持つ物質フォルマは、それ自体にも力を宿しています。
それにその刀は元々破魔の力を宿していましたので、それを高めるようにしたのです」
聞いてみたら、刹那は剣を見つめながらそう答えてくれて、村正さんもそう言うんだけど……
う〜ん、見てる限りじゃちっともわからん。理華も不思議そうに見てるだけだしな。
「それにしても……なんで、あれで剣が造れるんだ?」
「俺にもわからん……」
いきなり真名が疑問を漏らすけど、それは俺も疑問に思ってる。ていうか、明らかに刀鍛冶とか関係無さそうに思えるんだけど?
聞いちゃダメなんだろうか? すっごく気になるんだけど……
で、俺達の刃物と防具も合成してから、次に向かうのはラリーさんの所なんだが――
「こいつは……凄いな……これをあなたが?」
「ええ……それがわかるなんて、あなたも中々やりそうね?」
「仕事柄、銃を使うものでね。この手の目利きは出来るつもりだよ」
真名とラリーさんによって、わからない世界が展開されています。ごめん、俺にはどこがどう凄いのかわからないんですけど?
「さてと、あなた達の銃は出来てるけど……その前に……今使ってる銃を見せなさい」
「は、はぁ……」
ラリーさんに言われて、俺と理華は持ってた銃を出すんだけど――
「まったく……あなた達ね……銃をなんだと思ってるの?」
「まがりなりにも自分の命を預ける物なんだ。最低限のメンテナンスはするべきだろう?」
なんて、ラリーさんと真名に呆れられてます。いや、俺達一応一般人だからね?
最近、自信無くなってきたけど、それでも一応一般人なんだよ? そんな一般人が銃のメンテなんて出来るわけないじゃん。
「ねぇ……翔太達に銃のメンテナンスのやり方、教えておいてくれない?」
「ああ、その方が良さそうだね」
ラリーさんの話に真名がうなずいてるし。なんだろう? すっげぇ、嫌な予感がするんだけど……
後日、この勘は当たり……俺と理華は真名に銃のメンテの仕方を教えられる羽目になる。しかも、かなりスパルタ的に――
で、この後は合成してもらった銃を受け取ってから、新しく買った銃をフォルマと一緒に渡して合成を頼み――
「あなたなら、私の銃を任せてもいいだろう。お願い出来るかな?」
「へぇ……使い込んでるけど、ちゃんと手入れされてるのね……いいわ、やってあげる」
「ああ、頼む。代金は翔太さん持ちでね」
ついでにと真名は自分が使っている銃の合成もお願いした。しかも、代金俺持ちで……いや、なんでさ?
いや、俺にウインクしてもね。そりゃ、真名はボルテクス界で使えるお金は持ってないだろうけどさ……
あれ? もしかして、俺って大赤字? ネギま!の世界でも道返玉とか使ってたし……あ、なんでだろ。涙が出そうなのは……
「業魔殿へヨーソロー!」
色々と泣きたいことはあったが、ヴィクトルさんの所に行かなきゃならんので我慢して向かい――
で、ヴィクトルさんからいつもの出迎えを受けたんだが……あ、刹那達が呆然としてる。
「彼女達は?」
「ああ、わけあってしばらくの間、一緒に行動することになった人達です。で、お仕事って?」
「うむ……君はドリー・カドモンという物を知っているかな?」
答えてから仕事のことを聞くと、ヴィクトルさんからそんなことを聞かれるんだけど……
聞いた覚えはあるんだが……確か、ゲームに出てなかったっけ? でも、どんなのだったかが良く思い出せない。
「その様子では知らぬようだな。簡単に説明すると、ドリー・カドモンは造魔という悪魔を創る為の人形だ。
本来、ドリー・カドモンはこのボルテクス界に存在しないはずなのだが……」
「存在したと?」
いつの間にやら話し始めてるヴィクトルさん。で、その話で何かに気付いた真名が問い掛けると、ヴィクトルさんはうなずいていた。
「それらしい物を見たという情報があったのだ。君には情報が真実なのかを確かめてもらうと共に、もし本当にあったのなら確保して欲しい」
なんてことをヴィクトルさんは言うんだけど……ん〜、受けてもいいんだけど……ただなぁ……
「どうかしたのですか?」
「ちょっと気になることが……で、そのドリー・カドモンってどこにあるんですか?」
「このノーディスから北に行った所に洞窟がある。そこに何者かが住み込んだらしいのだが、その者がドリー・カドモンを持っているらしい」
ミナトに答えつつ気になる所を聞いたら、ヴィクトルさんはあっさりと答えてくれたけど……
ノーディスってこの町の名前だっけ? やっべ、忘れてたよ。それはそれとして、確かに洞窟はあったな。
でも、見つけた時に中に入ってみたけど、誰もいなかったはずだけどな? あの後に誰か来たのか?
しかし、その場所なら行くのにそれほど苦労はしないし……ヴィクトルさんには世話になってるし、受けてもいいか。
「わかりました。でも、流石に時間も遅いんで……明日からでいいっすか?」
「おいおい、今すぐにやらないのかい?」
「あ〜……夜になると悪魔達が強くなっちゃうから……出来るだけ避けたいのよ」
とりあえず、そのことを伝えると真名が呆れた様子でそんなことを言うが、理華がため息混じりにそのことを話してくれた。
ちなみにだが、夜になりかけた時間で悪魔の群れに遭遇したことがあったんだが……倒すのにすっげぇ苦労した。
本気で強くなってたしな。しかも、夜になりかけの時間でだ。夜になったらあんなもんじゃないってミュウも言ってたし……
なのでそれ以来、俺達は夜になる前に町に戻れるように余裕を持って行動するようになったんだけどな。
「構わんよ。それほど遅れないのならな」
「ありがとうございます。あ、そうだ。合体もお願いしたいんですけど」
「ふむ……では、合体する悪魔を出すがよい」
お礼を言ってから合体のことを思い出し、ヴィクトルさんの指示通りにアプサラスとカハクを喚び出した。
で、アプサラスとカハクは台に上がり――
「お願いします」
「うむ」
アプサラスが頭を下げるとヴィクトルさんが装置を操作する。
するとアプサラスとカハクの体は塵のようになり……それらが集まって……爆発した。
「は?」
爆風を感じながら思わず間抜けな声を出すけど……いや、爆発って――
ぎぎぃ〜という音が聞こえそうな感じで顔をヴィクトルさんに向ける。ヴィクトルさんはと言えば、あごに手をやっていて――
「ふむ、事故が起きたようだな」
「そんな落ち着くことじゃないでしょうが!? お〜い、大丈夫かぁぁぁぁぁ!?」
ヴィクトルさんのひと言に思わず大絶叫。いや、爆発がなんか凄かったよ!?
こっちは爆風程度で済んだけど、爆発の中心はやばすぎないか!?
なんて考えてたら、爆発の煙が晴れていって……そこには1人の女性がいた。
腰まで伸びるブロンドの髪にすっごく綺麗な顔立ちにとがった耳……うん、エルフみたいだね。
背中にもミュウみたいな羽根があるし……なんか、緑色の鎧を身に付けてるし……ていうか、あれって誰?
「精霊シルフ……呼びかけにより参上いたしました。以後、よろしくお願いいたします」
「精霊……シルフだと?」
謎の女性ことシルフの自己紹介に、なぜかヴィクトルさんが驚いていた。
「どうかしたの?」
「うむ……精霊シルフは本来、ピクシーと同じ大きさのはずだ。このように人間と同じ大きさの者はいないはず……
事故による突然変異か? いや、もしそうだとしても――」
聞いてみたら、ヴィクトルさんは答えると共になにやら考えに没頭してしまった。
ええと……大丈夫なの? それって……
「翔太……大丈夫なのかな?」
「さぁ、そう言われて、も?」
戸惑ってる理華に答えようとしたら、左腕になにやら感触が……顔を向けてみたら、シルフが俺の左腕に抱きついてました。なぜに?
「あの、なにしてんの?」
「いえ、なんとなくですわ……」
シルフは微笑みながら答えてくれるんだけど……なんか、艶っぽく見えるのは気のせい?
「むぅ〜……」
「うぅ〜……」
「翔太様……」
「む〜……」
で、シルフのせいで気付かなかったんだけど、理華とミュウとルカにアリスはこっちを睨んでいたらしい。
その様子に刹那と真名とミナトは苦笑してたらしいけどね。
この後、珍しい事例なので時々シルフのデータを取らせて欲しいとヴィクトルさんにお願いされることになりました。
まぁ、変なことが起きても嫌なのでOKしておいたけど……なんでこうなるのさ? あ、ついでだから、刹那達のベッド借りてこうかな?
out side
夕方過ぎとなり、翔太達は家に戻っていた。で、今は翔太と理華がラウルと共に刹那達の寝床の準備をしている。
ちなみに折りたたみベッドと布団はヴィクトルの所から借りている。シルフのデータ取りの謝礼代わりに借りることが出来たのだ。
そして、刹那と真名とミナトはリビングで暇をもてあましていた。
「私達も手伝った方が良いのではないか?」
「といっても、運ぶ手伝いはしたけどね」
落ち着かない様子の刹那に真名は肩をすくめながら答えた。
確かに真名の言うとおり、折りたたみベッドと布団を運ぶ際に彼女達は手伝っていた。
折りたたみベッドと布団を運ぶ台車……というか、リヤカーを引っ張ったのは翔太だけだったりするけど。
思わずため息が漏れる刹那。その時、ある物が視界に入る。それは数冊のコミックスであった。
それだけならば、刹那も大して気にはしなかっただろう。だが、刹那はそのコミックスに目を奪われる。
なぜなら、コミックスの表紙には知っている人物が描かれていたのだから……
「ネギ……先生?」
「刹那?」
「どうしたんですか?」
少しばかり震える手で刹那はそのコミックスを手に取る。そんな彼女の様子に真名とミナトは首を傾げるが――
コミックスのタイトルは『魔法先生ネギま!』。そのコミックスを広げて読んでみる。
この時になって真名とミナトも刹那の様子がおかしいのがコミックスにあると気付き、刹那の肩越しに覗き込んでみて――
刹那と真名は固まった。なぜなら、コミックスには自分達やクラスメートも描かれており、内容の方も自分達が経験したのとほぼ変わりなかった。
そのことに思わず思考が停止してしまう。
「刹那さん? 真名さん? どうしたんですか?」
一方のミナトは、2人がなぜ固まっているのかわからず声を掛けるが……刹那と真名はただ無言のままコミックスを読み進めている。
もっとも、読んでいる2人は混乱の極みにあった。まぁ、無理もない。
読んでいるマンガの登場人物として自分達やネギ先生にクラスメート達が描かれていて――
しかも、内容もまるで近くで見ていたかのように、自分達が経験したことをほぼ克明に描かれていたのだから。
なぜこんなことまで知っているんだと想うくらいに……それ故に2人は混乱の極みにあった。
「やれやれ……ようやく終わった〜……って、どったの?」
そこに理華と共に翔太が戻ってくるが、いきなりこっちを見る刹那と真名の様子に思わず冷や汗が浮かんでしまう。
「翔太さん……これはいったい……」
「これって? ああ、それね」
刹那に聞かれて最初は首を傾げる翔太であったが、刹那が持ってるコミックスに気付いてそこでようやく納得した。
しかしながら、なんと言えばいいか悩んでしまう。というのも、刹那と真名はどう見たって困惑していた。
下手な事を言うと、もっと困惑させそうな気がしてしまったのである。
「ええと……俺と理華はこのボルテクス界とは別の世界から来てるのは話したよな?」
「ええ……」
一旦考えてから話し始めた翔太に刹那はうなずく。確かにその話は聞いたが――
「俺達の世界じゃ、そのコミックスが売られてるのさ。ちなみにそのコミックスは俺が自分の世界から持ってきた物だけど」
話す翔太であるが、刹那と真名とミナトは理解出来ずにきょとんとしていた。
しかしながら、翔太としてはこう話すしかなかった。なにしろ、特別なことなんて何も無いのだ。説明しろと言われても困ってしまう。
話した事以外の事実は無いのだから――
「じゃあ……私達の世界は……漫画の世界ということかい?」
真名が問い掛けるが、その声は戸惑いの色が見えた。刹那も不安そうに翔太を見ている。
ミナトだけは未だ状況を理解出来ず、おろおろとしていたが。真名と刹那は自分達がおとぎ話の存在と思えてしまったのだ。
なにしろ、コミックスに描かれていた内容は自分達が経験したのとほぼ同じだったのだから――
「あ〜……どうなんだろ? たまたま、漫画と似た世界があったとかじゃないの?」
渇いた笑みを浮かべつつ、頬を指で掻きながら翔太は答える。実際の所、どうなのかは翔太にはわからない。
彼はただ巻き込まれただけなのだ。巻き込まれ、あちこち歩き回り……やがて、ネギま!の世界に来てしまった。
ただ、それだけなのだ。そんな彼に説明を求めるのは酷とも言える。
「で、ですが……」
「あ〜……漫画はどこまで読んだの?」
「え? あ、これだけだが?」
戸惑う刹那であったが、翔太はあることに気付いてそのことを聞いてみると、真名が刹那が持っていたコミックスを指さした。
ちなみに刹那が読んでいるのはネギま!1巻である。
「それじゃあ、3巻を読んでみなよ」
「え? あ、はい……」
翔太に言われて、刹那はネギま!3巻を手にとって読んでみる。真名とミナトも刹那の肩越しにコミックスを読んでみたが――
内容はやはり自分達が経験していたのと同じだった。少なくとも3分の1辺りまでは――
その辺りで刹那と真名は違和感を感じたが、それがなんなのかがわからずに読み進め……
半分辺りまで読んだ所でその違和感に気付く。コミックスに翔太達のことが描かれていないのだ。
それにコミックスにはネギと明日菜がカモにそそのかされて茶々丸を襲う所が描かれているが、実際にはそんなことは行われていない。
また、コミックスではネギとエヴァに対決が描かれているが、やはりこれも行われてはいなかった。
実際はネギは翔太のお願いでエヴァに鍛えられることになっているはずなのに――
「どういうことだ?」
「なんて言えばいいかな……漫画に描かれてるのは、起きたかもしれないこと……なのかな?」
真名が問い掛けるが、翔太も首を傾げながら答える。実際、翔太もなんと言えばいいのかわからずにいた。
翔太が言おうとしていたのは仮定の話である。コミックスに描かれていたのは刹那と真名が経験したかもしれない未来。
そう、したかもしれない。だから、しないかもしれない。今、ここにいる刹那と真名は後者の方となった。
なぜか? コミックスには翔太達は存在していない。その存在していないはずの者達がネギや刹那達と接触した。
それだけが理由ではないだろうが、それによって刹那達はコミックスとは違う道筋を歩むこととなったのだ。
「とりあえず、刹那達の世界はその漫画に似た世界ってことでいいんじゃないの?」
「それは……」
翔太がそう言うものの、刹那は納得し切れずに言いよどんでしまう。いや、どうすればいいかわからないと言った方がいいのかもしれない。
刹那だって、自分が漫画の存在だとは思いたくない。だけど、コミックスを読んでいると不安になってしまう。
真名も刹那と似た心境であった。それどころか、今までのことも夢か幻かと考え始めてしまう始末である。
唯一、ミナトだけは未だに状況を理解出来ずにおろおろとするばかりであったが。
「ええと……」
「あ、翔太。夕飯がもう少しで……って、どうしたの?」
「あ〜……ちょっとややこしいことになってね」
やってきた理華が刹那と真名の様子に首を傾げるものの、
2人の様子になんと言えばいいのか言葉が見つからない翔太は渇いた笑みでそう答えるしかなかった。
この出来事により、この日の夕食は微妙なものとなってしまったのだった。
あとがき
自分達の漫画のことを知ってしまった刹那と真名。それに悩んでしまいますが――
というわけで、今回の話はいかがだったでしょうか? 最近は感想とかもらえて嬉しいです。
で、拍手の質問ですが、まずエヴァならサマナーの意味知ってるのでは? という質問ですが――
すいません。完全に気付いていませんでした。いや、そうだよね……エヴァなら意味わかるよね。
で、もう1つの質問である、攻略本読めば悪魔対策出来るのでは? という質問ですが――
こちらは役に立たなかったとお答えしときます。詳しい理由は作品内にて書きますので。
で、次回はヴィクトルの依頼で洞窟へ向かうことになった翔太達。その洞窟の中にいたのはあの人だった。
デビルサマナーシリーズではお馴染みの人が登場します。わかる人にはわかるかもしれませんね。
ではでは、次回をお楽しみに〜
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