out side

「くそ……」
 あまりの状況の悪さに刹那は思わずそんなひと言を漏らしていた。
なにしろ、自分の目の前には無数もの式神や自分の世界の悪魔が自分やネギ、明日菜にさよを取り囲むようにいたのだから……
なぜ、そんな状態になってしまったのか? それは少々時間を遡って説明せねばならない。
修学旅行3日目。この日は修学旅行の中でも比較的自由に行動出来る日であった。
ネギはこの日を利用して関東魔法協会の特使として関東呪術協会の総本山へと明日菜と共に向かっていた。
一方で刹那はこのかと共に観光して周り、途中でネギ達と合流した。
最初から一緒にいては一気に狙われると考えたからだ。案の定、観光中に攻撃を仕掛けられてきた。
そのことはエヴァが一緒にいたおかげで事無きを得たが……
ともかく、この日を乗り切れば襲撃はもう無いと思い、その為に総本山にいようと刹那は考えたのである。
コミックスではフェイトに襲撃を許してしまったが、総本山の守りの強固さは確かだった。
だから、油断しなければ乗り切られると刹那は思ったのである。
それに旅館では一般人を巻き込む可能性があったというのも、刹那にそう考えさせた一因であった。
その考えが今という現状を作ってしまったが……といっても刹那だけが悪いというわけではない。
総本山に着いた後も刹那は警戒を怠らなかったし、関西呪術協会の長でありこのかの父でもある近衛 詠春にもそのことを伝えていた。
刹那にとって不幸は3つ。まず、総本山にいた者達が詠春から言われていたにも関わらず油断していたこと。
総本山の守りを知っていたため、それを破られるわけが無いと高を括っていたのである。
2つ目は詠春がフェイトによって早々に無力化されてしまったこと。隙を突かれたとはいえ、あっさりと石化させられたのだ。
3つ目は刹那とさよが襲われたことだろう。フェイトが直接襲いかかってきたのだ。最初の方こそ善戦した。
しかし、途中で悪魔に横やりを入れられたことでこのかと分断され、それを突かれてこのかは別の悪魔に連れ去られてしまう。
そのことに気を取られてしまった刹那はフェイトの石化魔法を受けてしまい、さよも突き飛ばされてしまった。
刹那の方はとっさに避けたおかげで受けたのは右足で済んだが。
それを見て無力化出来たとフェイトは思ったらしく、「そこで全てが終わるのを見ているがいい」と言い残して消えてしまった。
が、刹那はボルテクス界で購入したディストーンを持っていたことで石化から回復出来、さよもアイテムで回復させた。
 その後、刹那は急いでネギと明日菜と合流。すぐさま追い掛けたのだが――
そこで待ち受けていたのが先程の状況だったのである。
 フェイトは刹那が無事だったのには驚いていたが、すぐに余裕を見せるかのように無表情となった。
確かに式神や悪魔の1体1体は刹那には敵わない。だが、それが群れとなれば話が違ってくる。
刹那は多々一の戦いを心得てはいる。しかし、それもこれだけの数となればあまり意味を成さない。
それがわかってか千草は余裕の表情で「まぁ、殺さんように言っておきますわ〜」と言い残し、フェイトと共にどこかへと行ってしまう。
刹那はそれを追い掛けることが出来ない。無数の式神や悪魔の存在もあるのだが――
「せんぱ〜い、ここは通しまへんえ〜」
「ネギ! ワイと勝負しろや!」
 月詠にネギが総本山に入る時に戦った頭に獣耳がある少年の犬上 小太郎もいたのだ。
ちなみにその時の勝敗は刹那のアドバイスをもらったネギが勝っていたが――
「ど、どうするの? こんなに多くちゃ……」
 少し怯えた様子で明日菜が問い掛けてくる。確かにこの数は刹那にもどうにもならない。
誰かを先行させるというのも論外だ。なにしろ、フェイトは油断ならない。そんな相手に1人で戦うのは現段階では無謀しかない。
それにさせようにも月詠と小太郎がそれを許すはずがない。
真名達に連絡はしたので救援に来るだろうが、その時には手遅れになっている可能性もある。
どうしたらいいのか……刹那が悔しそうに悩んでいた時――
「ぶべ!?」
 1発の銃声と同時に式神の1体が頭を撃ち砕かれて倒れていく。
ありえないことに式神や悪魔達、月詠や小太郎までその光景を見て固まった。
普通、召喚などで喚び出された式神や悪魔などは倒されると還されてしまうのが普通である。
しかし、今のは完全に死んでいた。そう、殺されたのだ。これは普通ではありえない。
そのありえないことが起きたために戸惑い、固まってしまったのだ。
「え? なに?」
「なにが……」
「は!」
 明日菜とネギがいきなり起きたことに戸惑う中、刹那は気配を感じて振り返る。
「さて、とりあえず撃ってみたけど……助けた方がいいよな、あれ?」
「あ……ああ……」
 その声を聞いて、刹那は思わず嬉しそうな顔をしてしまう。
なぜなら、そこには翔太がいたのだから……知っている者や見知らぬ者達を引き連れて――


 in side

 さて、刹那が危なそうなのでとりあえず1発撃って1匹倒してみたのだが――
「で、どうしたらいいのさ……あれ」
 思わず指差してしまう。つ〜のも数がね……とんでもないって、あれは……
ちなみにあれって式神とか……だよな? なんか、ネギまに出てくる悪魔もいるようだけど。
「ま、地道に倒すしかあるまいな」
「やっぱりか……」
 スカアハの言葉に思わずうんざりとしそうになる。だってさぁ……明らかに数え切れない位にいるよ?
それをいちいち倒すなんて……うん、明らかに面倒臭いよね? 
「それで……あれはなんなのかしら?」
「式神と悪魔だ。悪魔の方はこの世界の方だがな」
 その疑問にスカアハは答えるんだが……問い掛けた凜はなぜかこめかみに指を当てていた。
というか、なんかうなってる? どうしたんだ?
「ふ〜ん、あんなの初めて見た……ということは、ここが異世界ってことなのかしらね?
でも、バーサーカーと比べたら大した事ないけど」
「それに関しては同意しましょう」
 逆にイリヤは興味深そうにしてるし、横で同意してたバゼットも似たようなもんである。
まぁ、確かに式神とバーサーカーを比べたらねぇ……
「あんたら……あれがなんだかわかって言ってるの?」
「当然よ? 凜だってそうでしょ?」
 なにやらジト目の凜だがイリヤに言われてか、顔を歪めていた。
後で聞いた話なんだが、なんか魔術的にはこの光景は色々とあり得ないそうな。
それで凜は悩んでたらしいけどな。それはそれとして――
「なんでお前らがいる?」
「ご、ごめんなさい……止めようとしたんですが……」
 俺の疑問に桜が頭を下げて謝ってきた。何があったかというと――
「うっわ〜……なんだあれ!?」
「こ、こわい……」
「魔物……という奴か?」
「ていうより、なによあの数!?」
 なにやら喜んでる蒔寺だが三枝は怯えており、氷室は興味深そうに見てるが、美綴は数の多さに驚いてる。
うん、なんでお前らがいるの? 確か、スカアハに待ってろって言われてたよね?
「なによ、あれ!?」
「す、すごい……」
「ネギ先生……」
「これは……」
 メガネに触覚みたいなハネ毛を持つ早乙女 ハルナが驚いており、パイナップルみたいな髪型の朝倉 和美呆然と見ていて――
なんか大人しそうな少女こと宮崎 のどかが心配そうにネギを見ており、なんかおっさんが驚いていた。
あ、このおっさんってこのかのお父さんじゃなかったっけ? 確か、詠春……ちょいと待て?
確かあんたら、マンガだと石化させられてたよな? ん? ここじゃ無事だったのか?
「こんな時に一般人が増えるとは……仕方あるまい。翔太、私達は遊撃に回る。
士郎達と美希達は一般人を守れ。刹那! ここは私達がなんとかする! このかが攫われたのだろう? ネギ達と共に追い掛けろ!」
「え? あ、はい! わかりました!」
 ハルナ達の登場にスカアハは顔を歪めたが、すぐに指示を出していた。
それに刹那は戸惑うものの、うなずいて――
「さぁ、ここは翔太さん達に任せて行きましょう!」
「え? でも――」
「早く! このままでは手遅れになるかもしれません!」
 戸惑ってるネギに刹那は叫ぶようにして言い聞かせていた。
「だ、だけどこの数じゃ――」
「誰が行かせるか!」
「逃しませんよ〜」
 明日菜も戸惑ってる中、なんか犬っぽい子供と少女趣味全開といった格好の少女が襲いかかる。
ああ、あれが小太郎と月詠か……なんでいるんだ? 小太郎はマンガじゃネギを待ち構えてたと思ったけど。
あ、月詠は最初からここにいたっけ? あれ、途中からだっけ? ま、そっちは後で確認するかね。
「な、なんや!?」
「悪いが行かせんよ」
 しかし、小太郎の前にはスカアハが立ち――
「なんですのぉ?」
「わりぃが、こっから先は通行止めだ。通りたきゃ、俺を倒していきな」
 月詠の前にはクー・フーリンが立ちふさがってたりする。
「メディア! 刹那達に道を作ってやれ!」
「了解。ガルダイン!」
「「「「「ぐぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」」」
 で、スカアハの指示にメディアがでっかい竜巻を出して、式神やら悪魔やらを吹き飛ばしていた。
お〜……見事に式神と悪魔の群れをかき分けるように道が出来てら。
「行け!」
「はい! さぁ、早く!」
「う、あ……ごめんなさい!?」
「すまねぇ!」
「すぐに戻ってくるから!」
 スカアハの掛け声に刹那は元気良く返事をして駆け出す。
ネギは一瞬悩んだものの謝りながら刹那の後を追い、明日菜もそう言ってネギに続いて駆け出した。
ちなみにネギの肩にいたのってカモだよな。あいつ、いたんだ……スッカリ忘れてたよ。
「まちぃや! くそ! ワイは女を殴る趣味なんてないで!」
「は、ふざけるなよ、小僧。殺す気でこい。戦いというものを教えてやる」
 ネギが行ってしまったことを悔しそうにしている小太郎にスカアハが睨みを効かせてそんなことを言うが……
あ〜、スカアハさん……やりすぎないようにね……
「も〜、邪魔せんでもらえますか〜?」
「言ったろ? 通りたきゃ俺を倒せってな」
「へぇ……」
 不満そうにしていた月詠だが、クー・フーリンの挑発に表情が変わる。
なんか、面白いものを見つけたって顔だね、あれって……
「で、私達はどうするの?」
「とりあえず、スカアハに言われた通りにこいつら倒しておくか……士郎、美綴達とあいつらを頼んだぞ」
「はい!」
 理華に聞かれたんでため息混じりに答えておく。で、士郎にそう言っておくと元気良く返事が返ってきた。
いいねぇ……そのやる気がちょっとでも欲しいよ……いや、あの数を前にしたらね……やる気が萎えるって……
ま、ともかく――
「なんや、あんたらは?」
「通りすがりのサマナーとその仲魔達だ。覚えとけ!」
 式神の1体に聞かれたんでそう言っておく。ちなみにパクリなセリフなのは無理矢理やる気を出すためである。
うん、数が多いって……1人じゃ絶対戦いたく無いよ、あれ……


 out side

 さて、刹那達はこのかを取り戻すべく千草達が向かった方向へと駆けていたのだが――
「ね、ねぇ……あいつら大丈夫なの?」
 翔太達によって式神や悪魔の群れから抜け出した刹那達だが、明日菜は思わずそんなことを聞いてしまう。
ネギも同じことを言いたいような顔をしていた。確かに翔太達の人数は多い。
だが、式神や悪魔の方が圧倒的に多かった。刹那から翔太は強いと聞いてるが、いくらなんでも無理だと思ったのだ。
「心配は無用でしょう。むしろ、あれを全て倒してからこちらに来るかもしれません」
「それはマジかい!?」
 しかし、刹那は微塵も心配した様子を見せずにそう言い切り、それを聞いたカモは驚きを隠せなかった。
式神や悪魔の数は確実に千単位は行っているとカモは考えていた。それを全て倒して追い掛けて来るなど、普通は考えられない。
「ですけど――」
「ネギ先生。前にも言いましたが、翔太さんは私なんかよりも強い。
それに見知らぬ人もいましたが……知っている限りでいれば、そのほとんどの人達も私よりも強いんですよ」
「嘘!?」
 それでも何かを言いたそうなネギであったが、次に出た刹那の言葉に明日菜は驚きを隠せない。
刹那の強さは1度見たことがあったが、それより強いとはどういうことなのか?
ネギと明日菜はそれが想像出来ずに困惑の表情を浮かべてしまうのだった。


「なんだ……あれは……」
 刹那の連絡を受け、真名、楓と茶々丸に褐色の肌を持つ左右で髪を結い上げている少女の古菲と共に総本山へと来たエヴァ。
最初は刹那達をからかってやろうと思ったのだが、その場で起きていたことに思わず目を見張ってしまう。
というのも――
「なんじゃこいつ!? めちゃつよ、ご!?」
「は、はや、がぁ!?」
「オラ! どけぇ!?」
 縦横無尽に動き回って式神や悪魔を斬り倒す翔太の姿があったために。
それを見たエヴァの感想は色々とありえないであった。確かに気や魔力を使わずに瞬動並に動けると聞いていた。
そちらの方は式神や悪魔の数の多さのせいか、そこまでの速さは見られなかったが……それでも十分に速い。
しかし、気や魔力を使わずにあの速度を出すのは普通はありえないというのがエヴァの考えだ。
それに動きは完全に素人のケンカに毛が生えた程度……戦いの才能も感じられない。
武術などをまったく習わずに戦ってきたのだろう……なのに、それが様に見えるのだから、ある意味凄いと言える。
たぶんだが、あのスタイルで気が遠くなるほどに戦い続けてきたのだろう。その結果が……などとエヴァは考えていた。
「のどか、ハルナ……朝倉も……みんな無事だったのですか?」
「ゆえ!」
「うん、私は確かにやられたと思ったんだけど――」
 一方、小柄で腰の辺りまで髪を伸ばしている少女である夕映が問い掛けていた。
夕映は総本山が襲われたときに朝倉の機転で逃げ出し、楓と連絡を取りつつ逃げ回っていた所をエヴァ達と合流したのだ。
その夕映が無事なことにのどかは喜ぶが、朝倉は首を傾げていた。
確かにハルナ、のどか、朝倉、詠春はフェイトによって石化させられたのだが……あの穏やかな顔をした男がハルナ達を回復させたのである。
「なんなんや、こいつらは、ってぶご!?」
「うおおぉぉぉぉぉ!?」
「やらせないよ!」
 式神の1体が戸惑っている間に翔太は切り倒し、そのまま次へと向かい駆けていく。
それはまさしく風。縦横無尽に駆け巡り、暴風のようになぎ払っていく。
その横で理華もアサルトライフルと剣鉈を振るいながら翔太に付いていく。
こちらの方は翔太ほどではないが、それでも次々と式神や悪魔を屠っていた。
「ふむ、連携が上手くなったのはいいが……少しは手加減を覚えさせた方がいいか?」
 その様子を見ていたスカアハは腕を組みつつそんなことを考えていた。
ふと、視線を横に向ける。その先には大の字になって気絶している小太郎の姿があった。
小太郎が気絶しているのはスカアハの仕業……ではない。では、何があったのか?
エヴァ達が来る少し前。スカアハは小太郎と戦っていた。もちろん、手加減をした上でだ。
スカアハとしてはそこから徐々に力を強めていき、実力の差を思い知らせるつもりだったのだが――
「うっがぁ〜!? やってられるか!? あのあんちゃんの方が楽しめそうや!」
 と言い出した小太郎は、あろうことか翔太へと向かっていったのである。
スカアハは止めようとしたのだが――
「あんちゃん、わいと勝負――」
「どけやぁ!?」
「おぶろ!?」
 翔太の前に出た途端、蹴り飛ばされたのだ。
その蹴りの威力は小太郎が持っていた障壁を張ることが出来る札を全て砕くほどであった。
結果、小太郎はピンボールのボールの如く蹴り飛ばされたのである。
 小太郎は翔太と自分の差がわからなかったのか?
これは作者の私的な意見だが、この頃の小太郎は見た目だけで相手を判断していたのではないかと思われる。
確かに翔太の動きには驚いていたが、感じられる気配は大した事は無かった。
もっとも、翔太は気や魔力を扱えるわけが無いし、殺気とかそういうのを出すことも出来ない。
今の状態も勢いでやってるようなものなので気迫も大した事もない。
その為、小太郎は翔太と戦えると思ってしまい……先程の結果となったのである。
 まぁ、そちらはそれとして、翔太の仲魔達も順調に式神や悪魔達を屠っていく。
今まで戦い続けたことで成長と進化しただけあって、誰もが危なげなく式神や悪魔を屠っていく。
それはミュウも同じであったが――
「マハラギオン!」
「「「「「ぐぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」」
「なんや、あのちびっこいのは!? 小さいのにとんでもないもん使いおる!」
 ミュウの火炎魔法に式神や悪魔達を焼き尽くす光景に式神達は戦慄するが……実を言えば戦慄してるのはミュウの方だった。
強くなっている……それ自体は嬉しいことだ。だが、そのなり方が異常だった。
今使った魔法だって、ピクシーという種族で考えれば使えるはずが無いのに……
このまま、自分はどうなってしまうのか……それを考えるとミュウは不安だった。
「あなた達なんかに翔太をやらせたりしないんだからぁ〜!!」
 それでもミュウは自らを奮い立たせる。怖い……でも、翔太はがんばっている。
自分の体がボロボロになるかもしれないのに……それでも戦っている。だから、怖がっているわけにはいかない。
翔太の負担を出来るだけ減らさなければならないから……その為にミュウは戦い続ける。


 この後に待つ自分の運命を知らずに……



 あとがき
そんなわけで中途半端な終わり方をしましたが……いや、本当は一気に終わらせたかったのですがね。
やはりというか時間が……仕事しながらですとどうしても取りにくいですね。
それはそれとして、総本山襲撃に駆け付けた翔太達。それによって刹那達はこのか奪還に向かいますが――
さて、どうなることやら? 次回はFate組の様子を書きます。そこで士郎は――
というお話です。もしかしたら、もう1つの決着も書ければ良いのですが……
そんなわけで次回をお楽しみに〜



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