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 さて、着替えも終えた俺達は、早速なのはの両親が経営する喫茶店『翠屋』に向かうのだが――
「どうしたのかしら?」
「いや、良く考えたらさ……お前も十分チートなんだよな」
 くすくすと笑うスキマに俺は顔に手を当てつつ呆れたように答えた。
なんで呆れてるかというと、スキマはいつも着ているドレスのままなのだ。
しかも、あの変わった形の日傘まで差してるし、藍さんもいつもの服の上にしっぽを出したままだ。
なのに、町の人達はそんな2人を気にした様子を見せなかった。たぶん、スキマが認識とかを弄ったんだろう。
逆になのは達が不思議がってるくらいだしな。
 それとリエルははやて並の大きさになって、はやてが乗る車いすを押している。
これは後で聞いた話なんだが、リエルは自由に体格を設定出来るらしい。
その気になればリインフォースと双子なんてことも出来るそうな。
 そうそう、流石に全員で行くわけにはいかないので、スカアハ、クー・フーリン、ミュウ、メディア以外の仲魔達はGUMPの中である。
その時になのは達驚いてたけど……良く考えたら、あの時はこうしたら良かったじゃん。
まぁ、それでも十分に多いけどな……なのはにアリサとすずかに忍、フェイトとアルフ、はやてにリインフォースとリエルに守護騎士達。
更にはタカハシさんとフィオさんにシンジと……23人か……多すぎるって……
 そうこうしてる内に翠屋に到着。なのはの両親の士郎さんと桃子さん……そういや、この人も士郎なんだっけ。
で、更には好青年な恭也さんにメガネを掛けた可愛らしい女性こと美由希さんもいる。あれ? そういえば……
アニメだと、なのはとフェイトが初めて出会った時に恭也さんも忍さんの家にいたような覚えがあるんだが……
こっちじゃそうじゃなかったのかね? なんか、喫茶店手伝ってるっぽいし。
 それは後で考えるとして、なのは達はともかく俺達まで来たことに士郎さん達は流石に驚いていた。
そこをシンジがとりなし、事情を話すことになった。なのはが魔砲少女になったいきさつも含めて――
「翔太さん、なにか失礼なこと考えなかった?」
「激しく気のせいだ」
 なぜか、なのはに睨まれたが……だから、なんでこいつらって人の考えてることがわかるんだよ?
それはそれとして、話を聞いた士郎さん達は戸惑うばかりである。
まぁ、当然だわな。娘が魔砲少女になった挙句、ジュエルシードという危険な物に関わってるって聞けば。
「それは……なのはがしなければならないのですか?」
「先程も言いましたが、私は仕事の関係上いつまでもこの町にいるわけにはいきません。
タカハシさん達も何かあればこの町を離れなければなりませんので……
それに現状では対策出来る術を持つなのはちゃんとフェイトちゃんに頼るしかないのです」
 士郎さんの問い掛けにシンジは答えるのだが……言い忘れてたが、士郎さん達には俺達が異世界から来たということは言っていない。
なんで言わなかったのか後でシンジに聞いてみたんだが――
この時に言ってしまうと更に混乱してまともに話し合えなくなる可能性があるから……なんだそうな。
「それは無責任じゃないか!?」
「お気持ちはわかりますが……私もタカハシさん達もこの町で起きていることと同等な案件をいくつも抱えています。
ですので、掛かり切りになるということは出来ないのです。かといって、何もしないというわけではありません。
リインフォースさん達の協力を得ておりますし、明日か明後日には私が呼びました応援が来ることになっております」
「ちょっと、それって初耳なんだけど?」
 怒る恭也さんにシンジは説明をするのだが、そこでアリサが気になったひと言に関して問い掛けた。
確かに応援に関しては俺達も初耳なんだけど?
「申し訳ありません。応援の方は確実というわけではなかったので……
来れることがわかったのもこの喫茶店に着く直前ですから、言う暇が無かったのですよ。申し訳ありません」
 なんて、シンジは頭を下げながら話すのだが……その応援って大丈夫なんだろうか?
だって、今までシンジが寄越した応援と言えば……実は異世界の神だったスカアハことヴォルフィード。
それと本当はドラゴンなラシェーナ……ああ、元々はオニだったクー・フーリンもそうだったよな。
これを考えると応援もやばそうな気がするんですけど……
「わかった……ただし、そのジュエルシードとやらの回収には俺も行かせてもらう!」
「お兄ちゃん!?」
 拳を握りしめつつ、そんなことを言い出す恭也さん。
そのことになのはは驚いてるが……いや、この人もいきなり何を言い出すかね?
美由希さんと士郎さんに忍さんは呆れた様子を見せてたけど。
「当たり前だ! なのはだけにそんな危険なことをさせるわけにはいかない!」
「いや、人の話聞いてますか? それに腕が立つはのわかりますが……その考えでは返って危険ですよ?」
 なんか盛り上がってる恭也さんにシンジは苦笑気味に答えるんだが……流石に俺としても頭痛を感じる。
恭也さんは純粋になのはが心配なのだろうが……そのせいで周りが見えなくなってるようである。
それはそれとして……その考えでは危険って、どういうこと?
「さっきのは言葉のあやだ……だが、先程の言葉はどういう意味だ!?」
「あなたはなのはさん達のために矢面に立とうとしているようですが……それでは逆になのはさん達を危険にさらすことにもなるんですよ。
翔太さんなら、この意味はわかると思いますがね?」
「ああ、痛いほどにな……」
 一瞬戸惑うものの、すぐさま睨みつける恭也さんにシンジは呆れたように答えた。
そんなシンジに問われた俺もため息混じりにうなずくけど。
「どういうことだ?」
「ええと……俺は戦い方の関係上、前に出るんですけど……そういうのって、孤立しやすいんです。
それで悪魔に囲まれてボコられたことが何度かありまして……それを助けようとした仲間を危険にさらしたこともあったんですよ」
「お前の場合は何度もだがな」
「悪魔?」
 訝しげな顔をする恭也さんに説明するんだが、なぜかスカアハに突っ込まれました。
いや、確かに何度もそういう状態になったのは事実だけど……で、話を聞いていた美由希さんは首を傾げていた。
まぁ、こっちは悪魔のことも話して無いからしょうがないんだけど。
「しかし!」
「落ち着くんだ恭也。確かにあなた方の言いたいこともわかる。ですが、私達も娘をただ黙って危険な所に行かせたくはありません」
「当然でしょうね。では、どうするので?」
「悪いが、あなた方を試させてもらいたい」
 それでも言い寄る恭也を士郎さんがなだめると、シンジの問い掛けに真っ直ぐ見据えながら答えるのだが……試すって、何を?


 所変わって、高町家……の道場……なんであるの?
そんな疑問を感じつつ、ここへと士郎さんに連れられてきた。あ、もちろん恭也も来てるぞ。
桃子さんはお店がまだ営業時間なので居残り。美由希さんも手伝いで一緒に残ったけど。
「いきなりで申し訳ないが……あなた方の実力を見せて欲しい」
「なるほど……どのような形で行いますか?」
「まずは俺からだ。相手をしてもらうぞ!」
「私が……ですか?」
 士郎の問い掛けにシンジは問い掛けるんだが、短めの木刀を2本持つ恭也さんの言葉に首を傾げた。
いや、恭也さん……なんて無茶を……それって、無理ゲーですよ?
「なにやってんのよ?」
「いや、恭也さんの冥福を祈ろうかと……」
 十字を切ってから両手を合わせて頭を下げる俺に、アリサが訝しげな顔で聞いてくる。
そういや、シンジが戦う所なんて見たこと無いけど……強いだろうとは思ってる。
それらしい所は何度か見てるしな。もっとも、理華達やスキマや藍さん以外は訝しげな顔をしてたけど。
 ちなみに恭也さんがなぜシンジを相手にしたのか? 本人曰く、女々しそうだからだそうだが……
開始と同時にその言葉を後悔する羽目になる。というのも――
「く、なんでだ!?」
 二刀の木刀を振るう恭也さんだが、それがまったくシンジに当らない。
しかし、素人目にも2人の差は歴然だった。恭也さんは激しく動き回っている。わかりやすく言えばダンスかな?
そんな動きなんだよ。流石に無駄があるか無いかまではわかんないけど……
逆にシンジはゆっくりとした動き……日本舞踊みたいな舞いをしている感じだ。
普通に考えれば恭也さんの動きならシンジに追いつけるはずだ。けど、追いつけない。
恭也さんの木刀をまるですり抜けるかのように避けていくんだよ。
 そのせいか、恭也さんに苛ついてるような怒ったような顔になってきた。
まぁ、シンジがなぜか笑みを向けてたりするからなんだろうけどな。
「まるで川の中の魚だな」
「はい?」
「金魚すくいぐらいはやったことはあるだろう? すくおうと思っても金魚はポイから逃げてしまう。
あれは金魚がポイの動きを感じ取っているからだが、それと似たようなことをシンジがしていると思えばいい」
 士郎さんのつぶやきに首を傾げるが、スカアハが呆れた様子で解説してくれましたが……
それって何気に凄くないか? ほら、タカハシさんや忍さんは士郎さんと同じように注意深く見てるし――
シグナムやヴィータ、ザフィーラにリインフォースも食い入るように見てるしね。
 なんてことを考えてたら動きがあった。明らかに焦ってる恭也さんが木刀を振り抜いたんだが……その先にシンジはいなかった。
そのことに俺や理華達、スキマや藍さん以外は驚いていた。俺達は慣れたというか……まぁ、シンジだしと思ってたしね。
で、そのシンジはといえば――
「はい、終わり」
 恭也さんの背後で首筋に人差し指を当てていた。
「え? あ……な!?」
 一瞬、何が起きたのかわからなかったらしく呆然としていたが……一瞬後に起きたことに驚く恭也さん。
まぁ、無理もない。目の前の人間が消えたりしたらな……ちなみに今のシンジの動きは俺にも見えなかった。
「さて、これで納得してくれましたか?」
「うむ……確かに……」
「待ってくれ! 俺はまだやられたわけじゃない!?」
 シンジの問い掛けに士郎さんは戸惑いながらもうなずいたが、恭也さんは納得出来ないようで叫んでいる。
ここで俺は首を傾げた。確かに恭也さんはやられたわけじゃない。けど、その言葉に納得出来なかった。
なんだろ? 何かを見落としてるような……
「そう思ってるから、ダメなんですけどね」
「なんだと!?」
「待て! 今回ばかりはシンジさんの言うとおりだ」
 で、シンジの言葉に恭也さんは怒るんだが、それを士郎さんがなだめた。
けど、なんでか今回はシンジの言葉に納得出来る。理由はわからないんだけど……
「だ、だけど……」
「ま、それに関しては後ほど話すとしまして……どうします? まだ、続けますか?」
「それなんだけど……あの子達がやりたそうにしてるわよ」
 士郎さんに言われてか戸惑う恭也さんをよそにシンジが問い掛けると、スキマが閉じた扇子をどこかに向けていた。
向ける先は……守護騎士達。うん、特にシグナムがすっごくうずうずしてるね。
「なるほど」
「そういうことだから、がんばってね」
「はい?」
 うなずくシンジだが、スキマの言葉に俺は思わず疑問の声を漏らした。
いや、待て……今、なんつった?
「いや、待て。なんで俺? なんで今の流れで俺なの?」
「シンジの実力は示したわ。となれば他の人の実力も見せるのは当たり前よ。
ま、それ以前にあの子達はあなたとやりたいみたいね」
 口調がおかしくなってる気がするがそれでも一応聞いてみると、スキマはくすくすと笑いながらそんなことを言い出しやがった。
いや、確かに良く見るとシグナムとヴィータがこっちを見てるけどね……でも、なんで俺なのよ? 俺、なんかしたっけ?
「あ〜……あれは相手しないと絶対に納得しないと思いますよ」
「俺としては勘弁して欲しいんだけど……」
 呆れた様子のシンジの言葉に俺はうなだれそうになる。
いや、本当にどうしてこうなったんだか……なんだか、頭痛を感じてしまうんですけど。
「愚痴らないの。それにあちらは元からそのつもりみたいだし。着替えてらっしゃい」
「ああ……」
 いつの間にか俺のアーマーを差し出すスキマにうなだれるように返事をしつつ受け取り、俺は着替えるために一旦道場を出た。
本当に……なんでこうなるかね? そんなことを思いつつ着替えを終え、道場に戻ってみると――
「ええと……まぁ、騎士甲冑を使ってるのは別にいいよ。俺も自分のアーマー着てるし。
でもね、なんでデバイス構えてんのさ!? しかも、2人掛かり!?」
 思わず絶叫してしまう。いや、だってシグナムとヴィータが騎士甲冑とデバイスの完全装備でいたんだし。
騎士甲冑はいいよ。俺のアーマーだって、ある意味特殊なもんだから。でもね、なんでデバイスまで持ってんのさ!?
しかも、2人掛かり!? いや、いくらなんでも無茶だって!?
「ああ、1対1でちまちまやるよりはいいでしょ?って、私が言っておいたのよ」
「スキマぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 スキマのひと言に思わず絶叫。いや、なに余計なこと言ってんのさ!? 見ろ、藍さんも呆れたようにため息漏らしてるぞ!
「あ、翔太さんはこれでお願いします」
「て、木刀ぉ!?」
 シンジから渡されたのが木刀だと知って、またもや絶叫。だって、こんなのでデバイスに勝てるわけ無いじゃん!?
あっさりと斬られるか折れるよ!? 絶対に!?
「大丈夫です。私が細工をしておきましたので、簡単には折れることはありませんよ。
それと道場や見ている方にも結界を張っておりますので安心してください」
「俺への安心出来る要素が一個も無いわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 シンジの言葉に三度絶叫。いや、それは俺に対する安心要素は皆無だよね!?
「ふん、随分と余裕だな?」
「いや、この状況をどう見たらそう思うのさ!?」
 シグナムが睨むようにこっちを見ながらそんなことを言ってくるけど……すいません、こっちは余裕ありません。
スキマめ……余計なことをしよってからに……終わったらぜってぇに殴る……ことが出来たらいいな。無理だろうけど……
「では、始めようか?」
「俺としては全力でやりたくないんだけど」
 レヴァンティンを構えるシグナムの言葉にため息を吐くが……それでどうにかなるわけでもないので、こちらも木刀を構えた。
まったく、本当にどうしてこうなった?
「じゃあ、行くぜぇ!!」
 叫びと共に飛び出してきたヴィータ。俺はそれをどこか達観したかのように見ていたのだった。



 あとがき
新年あけましておめでとうございます。今年も本作品をよろしくお願いいたします。
ちなみに前回書き忘れてましたが、守護騎士達のバーストモードには名付け親がいまして……
許可もらってないので名前は言えませんが、この場でありがとうを言わせていただきます。

さて、ひょんなことから始まった翔太VSシグナム&ヴィータ。
この決着はどのような形となるのか? 次回はそんなお話です。
みなさん、お楽しみに〜。



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