「無事に戻ってこれましたね」
「しかし、今は何日なのかな?」
「それが気掛かりですね」
さて、こちらはネギま!の世界に戻ってきた刹那、真名、ミナト。
刹那は辺りを見回しながらそんなことを漏らすが、気になることを漏らした真名にミナトがうなずく。
ボルテクス界では約3週間ほど過ごしたが、こちらの世界では何日経っているのか気になったのだ。
翔太の話で穴を通ると時間にズレが起きることは聞いているが、すでに修学旅行が終わったのでは……
なんて不安が刹那と真名にあったのだが――
「そこにいるのは誰……刹那さん? それに真名さんも……」
「刀子先生……お久しぶりです」
と、その場に女性が現われるが、その女性を見た刹那は頭を下げた。
白銀の腰まで伸びる髪に凛々しく整った顔立ちにメガネを掛け、女性用のスーツを纏うのは葛葉 刀子。
麻帆良学園の教員であるが魔法先生でもある。もっとも、刀子は魔法使いではなく、刹那と同じ神鳴流の剣士なのだが。
なんで、そんなややこしいことになってるかは……まぁ、あえて話さないでおこう。
余談であるが、刀子は麻帆良では刹那の剣の師匠をしていた時期がある。
その為、刹那のことは当然知っており、真名も仕事で時折会っていた。
「刀子先生は見回りですか?」
「ええ……けど、結構早かったわね?」
「早かった……とは?」
「だって、まだ4日しか経ってないもの。私達は修学旅行前日に戻ると思ってたから」
刹那にうなずくと共に刀子はそんなことを漏らすが、真名が首を傾げたのでそれにも答える。
それを聞いた刹那達は思わず呆然としてしまった。まぁ、当然だろう。自分達はボルテクス界で3週間も過ごした。
しかし、ネギま!の世界では4日しか経ってないと聞いて、少し戸惑ったのである。
「どうかしたの?」
「あ、ちょっと色々とありまして……」
「そう? まぁ、いいわ。学園長に会っておきなさい。首を長くして待ってたわよ」
聞かれて刹那は少し困り顔で両手を振って答え、そのことに問い掛けた刀子は首を傾げるものの、笑顔になってそんなことを告げた。
「そうですね。とりあえず、報告はしておきましょうか」
「そうだな。私も休みたいしね」
ミナトの言葉に真名がため息混じりにうなずいた。まぁ、戻ってくる際にも悪魔と戦ってきただけに、それなりに疲れているのだ。
そんなわけで刹那達は学園長室に向かい――
「ほっほっほ。待っておったぞ」
「お久しぶりです、学園長」
久しぶりに学園長に会った刹那は真名と共に頭を下げる。
その後、ミナトが一歩前に出て頭を下げてからボルテクス界で今まであったことや調べたことを報告した。
「3週間も……君達はそんなに長い期間いたのかい?」
「ええ……それでその……滞在費とか……身に付けてる防具とか……色々とお世話になっておりますから……
いずれ翔太さん達とまた会うことを約束しておりますので……どうにかお返し出来ないかと……」
学園長の隣にいた高畑のひと言に刹那は恥ずかしそうにしながら答えていた。
確かに3週間の間、刹那達は翔太に滞在費やら自分達の装備やらの代金をおごってもらっている。
そのたびに翔太の涙を見ており、お世話になりっぱなしも気が引けたのでなんとかしたいと思っていたのである。
確かに刹那と真名が着ている物が行く時と違ってるし、なにかしらの力を感じる。
それなりに上等な物なのだろうと見ていた学園長はそう感じていた。
「そういえば、助けてくれた時に使っていた道具は売っていた物と言っていたね?」
「ああ、確かに売り物だったよ。あんな物が普通に売っていたのは驚きだったけどね」
「そうか……確かに無理を言ったのはこちらじゃしの……しかし、どうやってお返ししたものか……」
それを聞いてそのことを思い出した高畑に真名がうなずく。一方の学園長はそのことに頭を悩ませた。
ミナトの報告でボルテクス界で使われてる通貨のことは聞いてる。同時にこちらの通貨が使えないことも。
まぁ、元から繋がりの無い場所なのだから、当然とも言えるが――
「だったら、金とか宝石とかではどうかな? あちらでも高値で取引されていたしね」
「なるほど……わかった。それはこちらの方で手配しておこう」
真名の言葉に学園長はうなずいた。なお、余談であるがミナトの報告で抜けていたのは4つ。まずは幻想郷の存在。
幻想郷のことを言いふらされては紫が良い顔をしないだろうし、危険と見る魔法先生などがいるかもしれないから。
次が宇宙の卵と世界の羅針盤のこと。やはりというか狙われないためにである。
まぁ、核兵器なんておもちゃに見えるようなとんでもない物なのだから、当然といえば当然ではあるが。
それと自分達の世界が翔太の世界では漫画になっていることだろう。こんなことを話せば混乱だけでは済まされない。
もしかしたら、反感を買って攻め込む……なんて、考えも出かねなかった。
最後が翔太の呪い。それを知られれば、翔太を消そうと考える者が出てもおかしくない。なので、語られなかった。
「これは改めて聞きたいのじゃが……君達から見て、翔太君はどう見えたかの?」
ふと、学園長はそんなことを聞いてきた。ミナトの報告でサマナーギルドと翔太達の世界の仲間の存在は聞いてはいる。
同時に刹那達の話し合いで今の所自分達と関わりになることは無いことも聞いている。
それはそれで気になる所もあるが、それは後で話し合いをすることになるだろう。
なので、学園長はもう1つ気になることを問うことにした。すなわち、翔太がどんな人物であるのかを。
以前にも話したが、組織としてはその辺りも気にしなければならない。故に問い掛けたのだった。
「私見で言わせてもらえると、翔太さんは悪人になれないタイプだね」
「ほう、どうしてかね?」
「まずは単純だという所かな? 感情が顔に出やすかったりするしね。後は考えが足りない所もそうかな?」
「それは……」
真名の返事に学園長は首を傾げるが、更に出てきた言葉に高畑は思わず顔が引きつってしまう。
しかしながら、真名の指摘は意外と的を得ていた。普段を見ると翔太はマイペースなように見えるが、感情的になりやすいのは戦闘で良く出ている。
考えが足りないというのは自分の状況に気付いてない所だろう。現に翔太は自分の状況が良くわかっていない。
真名でさえ、彼が危うい状況にいることに気付いているにも関わらずだ。
だが、真名はあえてこのことを指摘しなかった。なぜか、それが躊躇われてしまって……自分としては珍しいなと思っている。
本来なら、すでに翔太に伝えているはずなのに――
「ふむ……おぬし達も疲れたじゃろう。明日も学校があるし、今日はゆっくりと休みなさい」
「はい、ありがとうございます」
学園長としては真名の話で色々と思う所はあるが、嘘はないということだけ判断する。
真名の瞳はそう思えるだけの輝きがそこにあったから――
そんなことを思う学園長の言葉に刹那が頭を下げると真名とミナトと共に学園長室を出た。
それを見送る学園長と高畑――
「どうやら、刹那君はあちらの世界で色々と学んできたようじゃの」
「そうですね」
そんな学園長の言葉に高畑はうなずいた。
今の刹那を見ていると、以前あった陰のようなものが今は感じられない。
ボルテクス界に行ったことで刹那は何かを学んだのでは……ふと、高畑はそんなことを思った。
「ふむ、翔太君のことはわしらの気にしすぎなのかもしれんのぉ……」
学園長も高畑と似たようなことを考えつつ、そんなことを漏らした。
この時、2人は思いもしなかった。翔太が今後もこの世界に関わってくることに――
さて、ミナトと別れた刹那と真名は寮へと戻っていたのだが――
「あれ? 刹那さんと真名さん?」
「あ、明日菜さん。それにネギ先生も……お久しぶりです」
声を掛けてきた明日菜に刹那が頭を下げた。その横でネギも頭を下げる。
で、その様子をエヴァとこのか、アキラと裕奈に千鶴が見守っていた。
なんでこのメンバーかというと、前回の異界の一件から良く一緒に行動するようになったからである。
このことで怪しむクラスメートもいたが、今の所魔法の事がバレたりとかはしていない。
「せっちゃん……大丈夫やった?」
「うん、このちゃん。翔太さんのおかげでね」
「え?」
このかがおどおどしながら声を掛けると、刹那は満面の笑みを浮かべて答えた。
そのことにこのかは顔を上げる。呼んでくれた……自分のことをお嬢様とではなく、このちゃんと――
「せっちゃん……」
「ただいま、このちゃん」
「せっちゃん!」
笑顔の刹那の声に、不安そうなこのかはそれを聞くと一転して笑顔になって刹那に抱きついた。
帰ってきた。自分の幼馴染みが……その嬉しさで涙が止まらない。
「どういうことだ?」
「なに、あちらで色々とあった。そんなところさ」
睨むエヴァに真名は肩をすくめながら答えるが……エヴァは思わず不機嫌になる。
刹那にあった、ある種自分に似た陰が今は無くなったように見える。それがエヴァにとって、軽い不快感を感じさせていたのだ。
「話を聞かせてもらおうか? 私の家でな」
「休ませて欲しいんだけどね……しょうがないか……」
「その話、拙者もまぜてもらえないでござるか?」
睨みつけるエヴァに真名はため息を交えて答えると、そんな声が聞こえてくる。
振り向いてみるとそこにいたのは明日菜やこのか達が着ている麻帆良女子中学の制服を着た女性であった。
真名と同じくらいの背とスタイル。顔も整っているが、なぜか目は閉じてるかと思えるくらいに細目をしていた。
薄い黄緑の髪で、束ねた一房は腰の辺りまで伸びている。
長瀬 楓。ネギが受け持つクラスの生徒であり、自称忍者じゃ無いと言っている少女である。
「え? あ、その……」
「大丈夫だ、ネギ先生。彼女なら心配ないよ」
戸惑うネギに真名は安心させるために優しい声で答えた。
確かに楓は魔法の事は知らないものの、話せばわかってくれる者だと真名は半ば確信していた。
それに楓の実力もある程度だが知っているし、ネギま!のコミックスを読んでいて思ったが、楓は何かしらあれば手を出してくるだろう。
ならば、ある程度事情を知ってもらった方が後々やりやすくなる。真名はそう考えたのだ。
そんなわけで話をするためにエヴァのログハウスへと向かうことになった一行であったが――
「あれ?」
「ん? どうした、刹那? なにか――」
ふと、どこかに顔を向けて立ち止まる刹那に真名は訝しげな顔をし、自分も刹那が見ている方へと顔を向けて……固まった。
「何かあったの?」
「ん〜……何も見えないよ?」
アキラが気になって2人が見ている方に顔を向けるが、裕奈の言うとおり何も見えない。
そう、何も見えないのだ。ネギも明日菜もこのかも千鶴も楓も何も見えない。だが、エヴァだけはそれが見えていた。
「ほぉ……貴様らには見えているのか?」
「もしかして、知っておられるのですか?」
「ああ……だが、他の奴に見えていないし、めんどくさかったんで黙っていたがな」
その一言に振り返った刹那に、エヴァは腕を組みつつ答えた。
2人の話にネギ達は首を傾げる。なんの話をしているのか首を傾げていたが――
「あ、あの……もしかして、私が見えるんですか?」
「ああ……まぁ、見えてはいるし、聞こえてもいるな」
「あ……やったぁ……やっと……やっと、私が見える人に出会えた〜」
それに話しかけられて真名は困った顔をするが、逆にそれは嬉しそうな顔をしていた。刹那と真名とエヴァにしか見えないそれ。
薄い水色の髪を腰までまっすぐに伸ばした可愛らしい少女で、どことなく古い印象を受ける制服を着ていた。
そして、これが決定的なのだが……足が無い。いや、無いというよりは足の部分だけ透けているように見える。
この少女の名前は相坂 さよ。れっきとした幽霊だったりする。
「ここに女の子がねぇ……」
さて、エヴァのログハウスに到着すると、刹那達はボルテクス界であったことを話していた。
ちなみに先にさよのことを話してはあるが、やはりというか刹那と真名、エヴァ以外には見えてはいない。
現に裕奈がさよがいると言われている辺りに手をかざしても何も感じなかった。
「そういえば茶々丸の姿が見えないけど、どうしたんだい?」
「今日はメンテナンスでハカセの所だ。しかし……貴様らも中々に面白いことになっているな」
真名の疑問に答えつつ、エヴァはニヤリと笑みを浮かべる。ここで話したのは学園長に話したことよりも詳細なものであった。
もっとも、翔太の呪いや幻想郷などのことは伏せているのは同じだが、誰にも言いふらさないようにすることを前置きに話したのである。
「はい……ですが、色々と学べたことも事実です。私の翼のことも含めて……」
「翼? どういうことやの?」
うなずく刹那の言葉にこのかが首を傾げる。そのことに刹那は目を閉じるが、意を決したように見開き――
「え?」「な、なに!?」「うわぁ……」「こ、こりゃあ……」
刹那は自身の翼を出した。その光景にこのかは思わず呆然となり、明日菜は驚き、ネギは見惚れ、ネギの肩にいたカモは見入っていた。
「は、羽根が生えてる!?」「でも、綺麗……」「ええ、本当ね」「確かに……」「綺麗です〜」
裕奈はいきなりのことに驚いたが、アキラは刹那の翼に見惚れ、千鶴と楓はうなずきつつも同じように見入っていた。
さよも目をキラキラさせながら、刹那を見ているし。一方でエヴァは呆然としていた。
刹那がこうもあっさりと翼を出したことに驚いたと共に、その翼におかしな点に気付いたからである。
直接見たのはこれが初めてなので確かとは言えないが、刹那の翼の色は白だと聞いたことがあった。
しかし、今の刹那の翼は限り無く白に近い白銀に見えた。普通ではこの色はありえない。故に戸惑っていたのだ。
「私はこの翼を見られ、バケモノと罵られるのが怖くて隠し、人から遠ざかっていました。
ですが、スカアハさんは教えてくださいました。人には色々な者がいると。確かにこの翼を見てバケモノと罵り、襲ってくる者がいる。
だが、それを受け入れてくれたり、気にしない人達もいることを……確かにこの翼のことを知られるのは今でも怖いです。
でも、私は決めたのです。なんと言われようともこのちゃんを守ると」
刹那の話をネギ達はただ呆然と聞いていた。いや、見惚れていたと言ってもいいかもしれない。
今の刹那はどこか神秘的に思えて……だからだろうか? ネギ達は刹那の決意を理解していた。
「え、えと……なんて言えばいいかわからないけど……少なくとも私は桜咲さんをバカになんかしたりしないよ。
だって、こんなに綺麗なんだもん」
「そうですよ!」
頬を指で掻きつつ、照れくさそうに話す明日菜にネギが同意するようにうなずいた。
明日菜やネギには刹那が悪い人には見えない。姿だってバケモノには見えない。むしろ、天使……女神にも見えたような気がした。
「最初は驚いたけど……なんていうか、綺麗だよね?」
「うん、そうだね……」
「ホント。まるで星座のように輝いてるわね」
「はい、お星様のようです〜」
「拙者にはおとぎ話に出てくる天使に見えるでござるな」
裕奈も目を輝かせながら見ており、その横でアキラがその意見に同意するようにうなずいていた。
千鶴は頬に手を当てながらそんな感想を漏らし、さよも嬉しそうに同意している。楓はあごに手をやりながら、そんなことを言っていたりするが。
「せっちゃん……綺麗やわ……その翼、触ってもええかな?」
「え? あ〜……まぁ、いいですけど……」
「わ〜い! うわ〜、ふかふかや〜」
「あ! このちゃん……」
このかの期待の眼差しに刹那は戸惑いながらうなずくと、このかは布団に飛び込むかのように刹那の翼に触れる。
それに感じてしまったのか、刹那は少しばかり顔を赤らめていたが。
「あんな……うちにとって、せっちゃんはせっちゃんなんや……だから、これからも仲ようしような?」
「うん……このちゃん……」
そのまま背中から抱きしめるこのかに、刹那は右手でその腕に触れながらうなずく。
その光景をエヴァはどこか羨ましそうに見つめていた。光に生きてみろ……その昔、ネギの父であるナギに言われた言葉だ。
今の刹那を見ているとそのように生きているように見えて……それが自分には出来ないと思っている為に羨ましく思えた。
「ふん……そうやって見せびらかして、後で困ったことになっても知らんぞ?」
「わかっています。ここで見せたのはみなさんが信頼出来る方々だったからですし」
なので、いたずら混じりにエヴァはそんな忠告をするが、刹那はあっさりとうなずいていた。
確かに刹那の翼は時として敵を作る要因になりかねない。刹那はそれを理解していたため、安易に翼を見せる気は無かった。
ここで見せたのは言葉通りこの人達なら大丈夫だと思ったからである。
「ところで……彼女はどうするんだい?」
今までのことを静かに見守っていた真名であったが、ふとさよに視線を向ける。さよのことはログハウスに来るまでの間に話は聞いていた。
彼女は60年前に亡くなったが、成仏出来ずに幽霊として今までこうして存在していたこと。
この麻帆良から出られないこと。普段は3−Aの座らずの席にいるが、夜は暗いのが苦手なのでコンビニなどにいることなどを。
結局、刹那と真名がさよが見えるようになった理由はわからなかったが――
「どうすると言われても……」
「あいにくだが、私にはどうにも出来んぞ。その手の魔法や方法を知らんからな」
聞かれてあごに手をやりながら考える刹那であったが、エヴァはキッパリと断っていた。
確かに魔法の中には幽霊に対してなんらかの効果を出す魔法はあるにはある。だが、エヴァはその類の魔法は習得していなかった。
それに以前まではさよが見えるのは自分だけであり、他人に話してもさよが見えない為に下手をすれば変人扱いされかねない。
その為、今まで何もしなかったのだが――
「幽々子さんならどうにか出来るかもしれませんが……」
「ゆゆこ? 誰だそれは?」
「亡霊の姫で、冥界の管理をなさっている方です。その方ならどうにか出来ると――」
「ちょっと待て」
そのつぶやきにエヴァは首を傾げるが、呟いた刹那の説明を聞いて待ったをかけた。
というのも、今聞き捨てならないひと言を聞いた気がしたからである。
「冥界の管理って……なんでそんな奴と知り合いなんだ、貴様は!?」
「あ、その……紫さんのお友達でして……その時に……」
「あいつのだと……」
少し考えるような仕草をしながら話す刹那に怒るように問い掛けたエヴァはとたんに不機嫌な顔になった。
良く見れば、ネギが若干震えているようにも見える。まぁ、無理もない。
紫との出会いはある意味最悪とも言えるし、ネギもその時のせいで軽くトラウマになっていたのである。
なお、刹那が考えた仕草をしたのは幻想郷のことを内緒にするため、どうにか誤魔化そうとしてそう言ってしまったのだが……
どうやら逆効果だと気付いて、渇いた笑みを浮かべていた。
「話には聞いていたけど……大変な目にあったようだね」
「ふん!」
「あはは……そ、それはともかく……呼ぶ手段がありませんから、無理なんですけど――」
「あら、そうでもありませんわよ?」
真名の問い掛けに顔を背けるエヴァ。
それを見て苦笑しながらも、幽々子を呼ぶ手段が無いので無理だと刹那が言おうとして……その声が聞こえた。
エヴァやネギ、そして刹那と真名としてもある意味聞きたくなかった声が……
「ごきげんよう」
「え? な、なに!?」
「あれって……」
「こ、怖いです〜……」
「なんで……ござるか……」
全員がそこに顔を向けると、そこには空間の裂け目から上半身を出す紫の姿があった。
その姿に裕奈は驚き、アキラは戸惑い、さよは完全に怯えており、楓は思わず睨みつけるかのように見てしまう。
なぜか千鶴だけは「あらあら」と言いながら、平然と見ていたりするけど。
「あ、ああ……」
「あ、あんたは……」
「せっちゃん……この人誰なん?」
「八雲 紫さんと言いまして、こう見えても妖怪です。しかも、かなりの力を持った……」
紫の姿を見て怯えるネギを抱きしめながら明日菜は怒りの形相を向けていた。
以前、紫達がした事は理解は出来たが納得出来なかったが故に明日菜はこんな反応を向けてしまうのである。
まぁ、ネギがトラウマ作ったりと出会いが最悪なので当然ではあるが。
一方、きょとんとしながら問い掛けるこのかに刹那は呆れた様子で答えていた。
刹那とて紫の怖さを知っているが……同時に翔太にしてきたことなども聞いているため、なんとなくうさんくさいという印象が強かったりする。
「ただ者では無いとは思ってはいたが……よもや妖怪だったとは……いや、当然ではあるんだろうが……」
「それで、どうしてここに?」
忌々しい物を見るかのように視線を向けるエヴァだが、真名はといえば刹那と同じように呆れた様子で問い掛けた。
紫がただ目的も無くここに来るとは思えなかった為に。
「いや、私としてはちょっと覗き見するだけのつもりだったのよ。でも、ある人も一緒に見ちゃってね。連れていけって言われちゃったの」
「ある人……ですか?」
いつもの紫としては珍しく困った顔をしていることに刹那は不思議に思いつつも首を傾げた。
普段の紫から考えるとそそんなことが言える人はいないだろうし、紫も簡単に従うようには思えないのだが……
「まぁ、会わせた方が早いわね」
そう言って、紫は空間の裂け目を広げて出てくると、そこから更に4人の女性が現われ――
「藍さんに幽々子さんに妖夢さん……それに映姫様!?」
現われた女性達を見て刹那は驚いた。九つの尾を持つ八雲 藍。どことなく死に装束を思わせる薄い水色の着物を着た西行寺 幽々子。
二本の刀を腰に差す魂魄 妖夢。そして、懺悔の棒を持つ小柄な少女、四季映姫・ヤマザナドゥ。
藍や幽々子に妖夢はまだしも、閻魔たる映姫がここに現われるとは思ってもいなかった為に、刹那は驚きを隠せなかったのだった。
あとがき
そんなわけで幕間前編でした〜
本当は1話完結にしたかったのですが、思った以上に長くなったので前後編にいたしました。
3部作もありかなと思いましたが……そこまでひっぱちゃだめだよね^^;
まぁ、刹那とこのかの仲直りとかさよのこととかネギま!世界での出来事を書いてれば当然かな?
それはさておき、なぜかネギま!の世界に来た紫達。そこで行われたのは映姫の裁きであった。
裁かれるのはなんと、さよ。裁かれる彼女はどうなってしまうのか?
そして、紫がネギま!の世界を覗いていたのには理由があった?
そんなお話です。お楽しみに〜
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m