その日は織斑 一夏(おりむら いちか)にとって運命的な日となった。
幼い頃に両親はいなくなり、同じく幼かった姉と2人暮らし。
その姉や幼馴染の家族などの周りの人に支えられながら暮らしていき――
幼馴染との出会いと別れを何度か経験するという、ある意味濃密な日々を過ごしていた。
しかし、その日は今までの中で一夏に一番の影響を与えたと言ってもいいだろう。
 その日、一夏は誘拐されてしまう。なぜ、自分が誘拐されたのかはわからない。
でも、誘拐犯達から聞こえる話から姉が関係しているのはわかった。
この頃、姉はISの操縦者として、第2回モンド・グロッソ出場していた。
 IS(インフィニット・ストラトス)――本来は宇宙開発の作業用マルチフォーム・スーツ。
しかし、ある事件を切っ掛けにISは本来の目的を外れ、軍事目的の開発が進むこととなる。
そして、モンド・グロッソは各国が開発したIS同士を戦わせる競技であり、一夏の姉である千冬(ちふゆ)は日本代表として出場していた。
 それはともかくとして、この時の一夏は誘拐による恐怖で怯えていた。
なぜ、姉の名前が出てくるのか、それすらもわからなくなるくらいに。
自分はこのままどうなってしまうのか? 押し込められたワンボックスカーの中で不安に襲われた時だった。
ワンボックスカーが急停車したかと思うと途端に騒がしくなる。
それどころか、外でなにやら争っているらしい音まで聞こえてくる。
爆発音まで聞こえた時には怯えていた一夏でも何事かと思ったほどだ。
しかし、それも聞こえなくなったことで再び不安が強くなった所でワンボックスカーのドアが開かれる。
その先にいたのは奇妙な姿をした人だった。なにしろ、銀色の体に蜂を思わせる目をしたマスクを被っていたからだ。
「大丈夫かい?」
 しばし、呆然と見ていた一夏だったが、その人に声を掛けられたことで正気に戻る。
それでその姿がスーツのような物だと気付くと同時にあることにも気付いた。
「もしかして、一也さん?」
 つい最近知り合った男性の声に似ていたことに。
沖 一也(おき かずや)。数週間前に一夏が住む町にやってきた男性である。
食堂をやっている友達の家で偶然出会い、話をしたことで時折話すようになった。
ちなみに仕事でこの町に来たらしいという話は聞いている。
かといって、なぜこのような格好をしているのかはわからなかったのだが。
「む、あれは――すまない、詳しい話は後でする。ただ、俺のことは秘密にして欲しい」
「え、なんで――」
「色々とある。今はそうとしか言えない。では、後で会おう」
 何かに気付いてどこかに顔を向ける一也はそう言い残すと、状況がつかめない一夏を残してバイクで走り去ってしまう。
いきなりのことに呆然とする一夏だったが、その後すぐに姉である千冬が文字通り飛んできた。
一夏が誘拐されたことを知り、モンド・グロッソの最中であるにも関わらず駆け付けたのだ。
そして、一夏が無事なことに喜んだ千冬はISを装着したままで思わず抱きしめてしまう。
しばらくして、何があったのか千冬に聞かれた一夏はこれまでのことを話した。
一也のことは見知らぬ人と言うことにしておいて――
 それからしばらくして、一也と再会した一夏は話を聞くことになったのだが、その話が凄かった。
秘密にしなければならないこともあって全てを話してもらえたわけではないのだが、一也はある組織に属しているということ。
この町に来たのは犯罪組織と思われる者達が動いているという情報を得たので、その目的等を調べるために一也が来たという。
また、あの姿は凶悪犯などと戦うための姿であり――
「仮面、ライダー?」
「ああ、その中で俺はスーパー1と呼ばれている」
 あの姿が仮面ライダーと呼ばれていることを聞いた一夏は目を輝かせた。
仮面ライダー――人知れず何かと戦う存在がいて、そう呼ばれているという都市伝説があるのは一夏も知っていた。
しかし、実際にいるとは思っていなかったのが本音だ。
けど、実在した。そして、その人が目の前にいる。そのことに一夏は感動すら覚えてしまう。
その後も一夏はあれこれと一也に話を聞き、元々は宇宙開発に関わっていたことなどを聞くのだった。
 それからしばらくした後、一也は一夏に別れを告げて町を去っていった。
一夏を誘拐した者達がやはり犯罪組織の一員であり、その犯罪組織に対処する為に行かなければならないということで。
その一也を見送った一夏はその時に2つの目標を抱くようになった。
1つは宇宙に行くこと。一也の話を聞いて、宇宙へ行ってみたいという想いを抱くようになったのだ。
もう1つは一也のように仮面ライダーになって、あの時の自分のように誰かを助けられるようになること。
格好良かったという思いもある。だが、一夏としてはあのような人になりたいという想いを抱くようになっていた。
その2つの目標を目指すために一夏は自分の出来る範囲で体を鍛えたりするようになる。


 それから更に時は経ち――一夏は1人町を歩きながら高校受験のことを考えていた。
なにしろ、明日が受験日なのだ。そのせいであれこれと考えてしまうのである。
その一方で悩みもあった。最初の方こそ有名進学校を受験しようと思っていた。だが、その学校は学費が高かった。
目が飛び出る程では無いのだが、今の学費と生活費を姉に頼っている状態ではとても言いづらい。
アルバイトをしながらとも考えたが、その学校のカリキュラムを見てみるとそれも難しい。
悩んだ結果、私立でありながら学費が安く、就職率が高い藍越(あいえつ)学園を受験することにした。
しかし、一夏にとっては苦渋の決断でもあった。何しろ2つの目標のことを考えると、道が遠のいたように思えたからだ。
でも、諦めたわけでもない。道が遠のいたかもしれないが、なれないと決まったわけでも無い。
だからがんばろうと改めて決意し、家路につこうとしたのだった。
これから待つ、自分の運命のスイッチに気付くことも無く――


 その頃、1人の女性がアタッシュケースを抱きしめながら人気の無い公園を走っていた。
女性の名は星野 衛理華(ほしの えりか)。肩まで伸びる黒髪に黒縁メガネを掛けた凛々しく整った顔立ち。
平均的な身長にスレンダーな体を女性用スーツで包んでいる。そんな彼女は慌てた様子で走り続けていた。
そして、時折後ろを振り返ってあるものを見る。その先には異様な光景があった。
赤く重厚そうな鎧を着込んだような姿の者が衛理華を追いかけていたのだ。
何者かはわからない。しかし、衛理華は間違い無くこの異様な人物――怪人に襲われた為に逃げ回っていたのである。
そんな衛理華を怪人はどこまでも追いかけていた。胸や腰、膝にオリオン座の様に並ぶ青いレンズなような物を輝かせながら――
「本当になんなのよ、あれ――」
 怯えた様子で衛理華は逃げ続けた。少なくとも怪人に追われるような覚えは無い。
なのに、怪人はまるで目の敵のように追いかけ続ける。それだけでも厄介なのに――
「があぁぁぁあぁぁぁぁ!?」
「嘘でしょ!?」
 ベンチが怪人の腕の一振りで粉々に砕け散ったことに衛理華は驚愕した。
そう、怪人の力が異常すぎる。ベンチに使われている金属部品もひしゃげ、ちぎれているのを見れば嫌でもわかってしまうのだ。
もし、捕まったらどうなるか……そんな考えたくもない未来を思い浮かべてしまい、それから逃れようと衛理華は必死になって逃げた。
運悪く公園には人気が無いが、それでも助けを呼べないわけでもない。
その為に衛理華は慌てながらも携帯を取り出し、操作して警察に連絡しようとした。
「きゃ!?」「うわ!?」
 しかし、その時に誰かにぶつかってしまい、アタッシュケースを落としながら倒れてしまう。
「あ、すいません。大丈夫ですか?」
 そんな衛理華に謝る青年――こと一夏。
彼がなぜここにいるかといえば、気分転換に公園を歩いていたのだ。
その一夏は謝りながら衛理華が落としたアタッシュケースを拾おうとして――
「なんだ、これ?」
 それを見た。アタッシュケースの中にあるのは奇妙な形をした何か。
一見すると何かの装置に見えた。黒いパネルを中心に4つの様々な形のスイッチがある。
そのスイッチの前にはそれぞれに赤いスイッチがあり、更に装置の右端にはレバーがあった。
なんだろうと思いながらも拾おうとして――
「あつつ、て、まずい!?」
「え? って、なんだありゃ!?」
 立ち上がろうとする衛理華の声を聞いた一夏は思わず顔を向け、それを見て驚愕した。
その先にいたのは衛理華を追いかけていた怪人が睨むかのように立っていたのだ。
そんな光景に一夏は思わず装置を抱きしめてしまう。
「私にもわかんないけど、明らかにやばそうだから逃げないと!」
「え、逃げる? え? え?」
 衛理華の言葉に一夏は戸惑う。
いきなり怪人が現れたかと思うと衛理華が逃げようと言い出す。
突然すぎる展開に理解が追い付かないのだ。その間に怪人が近付こうとしていた、その時だった。
「なんだ?」「え?」
 何かが唸るような音が聞こえ、一夏と衛理華は思わず顔を向けた。
その先にあったのは一夏が抱きかかえる装置。その装置が高鳴るかのような音を出していたのだ。
「コズミックエナジーが活性化した!? 嘘!? 今まで何をしてもダメだったのに!?」
「え?」
 驚く衛理華に一夏は不安そうな顔をする。
もしかして、自分は何かとんでもないことをしてしまったのではと思ったのだ。
しかし、一方で衛理華は驚きながらも内心は興奮が抑えられない。
一夏が抱きかかえる装置。それはある理由から今まで動かなかった。
衛理華は動かそうと試行錯誤したが、それでも装置が動くことは無かった。
そのことにくじけそうになりながらも衛理華は諦めずに続け、大事に装置を持ち歩いていたのだが――
理由はわからないとはいえ装置が動いた。その事実に興奮してしまったのである。
「ごめん!」
「え? な、なんだぁ!?」
 しかし、今は喜んでもいられない。ゆっくりとではあるが、怪人が近付いてきてるのだ。
不安もあるが、今はこれに賭けるしかない。そう思いながら衛理華は装置をひったくると一夏の腹部に押しつけてしまう。
一夏がそのことに戸惑ってると装置から何かが伸び――いつの間にかベルトになって一夏に装着されていた。
「え? なんですか、これ!?」
「詳しいことは後で話すから!」
 そのことに驚く一夏だが、衛理華はそれだけ答えると赤いスイッチを全て下ろしてしまう。
それと共に黒いパネルになにやら人の形をした映像が浮かび上がった。
「て、どこ行くんですか!?」
「話は後! カウントダウンが終わったらレバーを入れて!」
「は? カウントダウン?」
『スリー――』「うお!?」
 その後、慌てる一夏からいきなり離れて木の陰に隠れる衛理華が叫ぶ形で答えた。
まったく訳がわからず戸惑う一夏だが、電子音で響く本当に始まったカウントダウンに驚いてしまう。
『ツー――』
「な、なんだかわからないけど――」
『ワン――』
「ええい!」
 それでも続くカウントダウンに戸惑いながらも、一夏は言われたとおりにレバーを動かした。
するとリング状の装置みたい物が現れたかと思うと一夏の頭上で回転し、彼を光で包んでしまう。
「ぐお!?」
それに伴って風が巻き起こり、それが凄まじい風圧となって辺りを吹き飛ばそうとする。
そのことに怪人は思わず顔を背けてしまうが、衛理華はそれに耐えながらしっかりと見つめていた。
そう、見守らねばならなかった。自分とあの人の想いが詰まったあれの行く末を――
やがて、風圧と光が収まってリング状の装置が消えると、そこには一夏はいなかった。
その代わりにいたのは奇妙な姿をした者――
白い宇宙服にも見えそうなスーツを纏い、両手足に白く別々にマークが入ったプロテクターが装着されていた。
なお、マークは右足に青いバツのマーク、左足に黄色い三角のマーク、右腕に赤い丸のマーク、左腕に黒い四角のマークである。
そして、顔はなぜかロケットに見える……というか、ロケットにしか見えないオレンジの目を持つマスクが装着されていた。
「んん!?」
「え? なに!? 何が起きた!? 俺、どうなっちゃったんだ!?」
 その姿に怪人は驚いた様子を見せるが、一方で奇妙な姿をした者は慌てた様子で自分の顔や体を触れながら驚いていた。
そして、その奇妙な姿をする者からは明らかに一夏の声が発せられている。
「落ち着いて! それはフォーゼ! とにかく、そいつをなんとかして!」
「は? フォーゼ? え? なにが!?」
「うおおぉぉぉぉ!」
「え? おわあぁぁぁぁ!?」
 叫ぶ衛理華だが、何が起きたのか理解出来ていない一夏は混乱するばかり。
その間に興奮したらしい怪人に文字通り殴り飛ばされてしまう。
「え? って、おわっと!?」
 が、背中から強い風圧が噴射されたかと思うと落下速度が落ち、一夏はふらつきながらもなんとか着地することが出来た。
「凄い……あいつに殴られたのに……」
 その光景に衛理華は目を見開いて見つめる。
確かにあれは――『フォーゼ』はそのつもりで造ってはいるが、鉄を簡単に引き千切る力を持つ怪人に殴られても平気でいられるとは思ってもいなかった。
自分の想定以上のことに衛理華の興奮は高まっていく。
「うおぉぉぉ!?」
「ちょ、ちょっと!? うわ!?」
 が、一夏はそうもいかない。なにしろ、何が起きてるのか全くわからないままなのだ。
そのため、両腕で殴り続ける怪人から身を守るしか出来なかった、その時である。
『ロケット・オン』
「へ?」
 怪人に殴られた拍子で右端のスイッチを押してしまい、軽快な電子音が響いた。
それで押したスイッチに思わず顔を向けてしまう一夏であったが――
「な、なんだぁ!?」
 右腕に何かが現れ、包み込むように装着されていく。
その光景に一夏は戸惑いながらも目が離せずにいた。
「ロケット? って、おわぁ!?」
 やがて、その現象が収まると一夏の右腕にはオレンジ色のロケットが装着される。
そのことに首を傾げそうになる一夏だが、そのロケットがいきなり炎を噴射して飛ばされそうになり――
「ぐわぁ!?」
 殴りかかろうとしていた怪人を右腕のロケットで突き飛ばしてしまうのだが――
「おわあぁぁぁぁぁぁ!!?」
 一夏はというとロケットによって文字通り飛ばされていた。
しかも、驚いているせいかコントロール出来ずにあちこち飛び回ってしまう。
「えっと、あのスイッチのコントロール方法は……ああもう! ベルトの右端のスイッチを戻して! それで解除されるから!」
「うわあぁぁぁぁ!? み、右端? これか!?」
 それを見た衛理華は何かを伝えようとするが、伝えたいことを思い出せずに別の方法を伝えてしまう。
驚きながらもそれをかろうじて聞いていた一夏は右端のスイッチを引き戻し――
「うわあぁぁ!?」
 それと共に右腕のロケットが消えるが、そのせいで一夏は落下してしまう。
「おわ!?」
 それも背中から強い風圧で噴射されて落下速度が落ち、尻餅を付く形で下りることが出来たが。
「なんかわからないけど……凄い」
 そして、自分の両手を見つめながら一夏はゆっくりと立ち上がる。
このスーツやスイッチがなんなのかまったくわからないが、それでもなんだか凄いことだけはわかった。
「うおおぉおぉぉぉぉ!!」
「くそ! やられてばかりでいられるか!」
 しかし、そんなのは関係無いとばかりに襲いかかる怪人。そのことに気付いた一夏は自分を奮い立たせた。
何がどうなってるかわからないが、それでもやられっぱなしではいられなかったからだ。
「うおおぉぉぉ!!」
「ぐおお!?」
 だからこそ、やられてたまるかと一夏は怪人に殴りかかる。
それにひるみ、両腕で守りながら動きを止めた怪人を一夏は何度も殴り続けた。
「おおぉ!!」
「うわぁ!? く!」
 しかし、怪人も叫んだかと思うと両腕を広げ、オリオン座に並ぶレンズからいくつもの光弾を撃ち出してきた。
一夏はそのいくつかを受け吹き飛ぶが、背中の噴射を使ってなんとか着地する。
「おおぉぉぉぉ!!」
「そう何度も受けてられるか!」
『ロケット・オン』
 逃すまいと怪人は更に光弾を撃ち出してくるが、一夏は当たるまいと右端のスイッチを押して右腕にロケットを再び装着し、飛び上がって光弾から逃れていた。
「アストロスイッチの力を……使いこなしてるの?」
 先程とは打って変わって自由に飛び回る一夏の姿を衛理華は驚きの顔で見つめていた。
なにしろ、あのスイッチの使い方をほとんど教えていない。なのに、一夏は完全とは行かないものの使いこなしていたのだから。
「他に何か無いのか? これは?」
『ドリル・オン』
 しかし、逃げ回るばかりではどうにもならず、一夏はなんとかしようと左から2番目のスイッチをひねった。
すると一夏の左足にドリルが装着される。
「ドリル!? でも、これなら――」
「レバーをもう一度入れて!」
 そのことに軽く驚きながらも一夏はあることを思いついて実行しようとして、それとほぼ同時に衛理華の叫びが聞こえてきた。
「レバーを? なんかわかんないけど!」
『ロケット・ドリル・リミットブレイク!』
 そのことに首を傾げながらも、一夏は言われたとおりにレバーを動かす。
すると電子音と共にドリルが高速回転を始め、ロケットが更なる唸りを上げる。
「凄い! これなら!」
 このことに驚きながらも一夏はロケットの推力でドリルを突き出しながら怪人へと飛び込み――
「ロケットドリルキーック!!」
「ぐおわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 思わず出たかけ声と共に怪人を貫いてドリルが地面に突き刺さり――
「おわわわわわわわ、っと!」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 ドリルの回転で自分も回転しながらもなんとか止まって無事に着地することが出来た一夏。
その間に怪人は断末魔と共に爆発の中へと消えていく。
その時、怪人から何かが飛び出すが、一夏も衛理華もそのことには気付かずにいたのだった。
「よっと。しっかし、これってなんなんだ?」
「く、う……」
「て、まだ生きてるのか!?」
 入れたスイッチを戻し、ロケットとドリルを消してから改めて自分の体を見る一夏。
その時、うめき声が聞こえて慌てて構えてしまうのだが――
「う、うぅ……」
「へ? 人?」
 そこにいたのは怪人ではなく、背広を着た男性だったことに軽く戸惑ってしまう。
「か、川岸君!?」
「え? 知り合いですか?」
「大学の同期よ……でも、どうしてあなたがそこに……まさか、さっきのって――」
 顔を向ける一夏の問い掛けに驚いていた衛理華は答えながらそのことに気付く。
そう、川岸と呼ばれた男性がいた場所は、怪人が爆発した場所でもあったのだ。
「ああ、そうだ……さっきのは俺の仕業だ……」
「そんな……なんで、こんなことを――」
「君には才能があった! なのに、君はその才能を無駄な研究にばかり費やして……俺はそれを止めたかったんだ!
そうしていたら、変な奴がこれを使って脅かしてやれって……そうすれば、研究をやめるって言われて……」
「これ?」
 どこか怒りをあらわにしながら話す川岸に麗華は首を傾げた。
というのも、気になる一言を聞いたからだ。
「変な形をしたスイッチだ。それを押したら俺はあんな姿に……そういえば、スイッチはどこに行ったんだ?」
「スイッチ? それってどんな――」
「おおぉ!?」
 そのことに答える川岸であったが、そのスイッチを持っていないことに気付いて辺りを見回していた。
衛理華は詳しく聞こうとするのだが、そこで一夏が叫んだために川岸と共に顔を向けてしまう。
一方、一夏は驚いていた。池に映る自分の姿を見て。なぜなら――
「これって、仮面ライダーじゃないか!」
 そう、フォーゼの姿は仮面ライダーに似ていた。完全に似ているというわけではない。
けど、マスクにスーツ、それにベルトと特徴的な物が似ていたことが一夏をそう思わせたのである。
「仮面ライダー? いや、それはフォーゼって言うんだけど――」
「フォーゼ? そっか、仮面ライダーフォーゼか……やったぁ〜!」
 訂正させようとする衛理華。ちなみに彼女は仮面ライダーの都市伝説は知らなかったりする。
しかし、思い込んでる一夏は両手を挙げて喜ぶ。なにしろ、自分でも叶わないと思っていた目標が思いがけないことで叶ったのだから。
「あれが……君の研究の成果なのか?」
「まぁ、一環……かな?」
 そのことに呆れながらも問い掛ける川岸に、衛理華は苦笑しながら答えた。
そのせいか、衛理華は川岸が持っていたというスイッチのことを忘れてしまう。
そんな3人を離れた場所で見ている者がいた。
どこかサソリを思わせる顔をした者が奇妙な形をした黒いスイッチを持ちながら――



 あとがき
そんなわけで移転第二弾となるISと仮面ライダーフォーゼのクロスSSでした。
ちなみにフォーゼのメインキャラを使わないのはキャラが濃すぎて、ISのキャラを喰ってしまう為です。
一夏を主人公にするというのもありますが、こういったクロスでは元キャラが目立たなくなるということもありますので。
まぁ、まったく使ってないわけでもありませんがね。敵側で怪人以外にも出しますし。

次回は衛理華から話を聞くことになった一夏。
しかし、一夏には別の運命が待っていた――というようなお話です。
次回でお会いしましょう。



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