「なるほどね……」
「なんていうか……すみません」
携帯電話越しに衛理華に謝る一夏。話しているのは一夏がISを起動させた経緯だ。
高校受験の会場となっている多目的ホールにたどり着いた一夏だが、多目的ホールの構造が複雑だった為に迷ってしまったそうなのだ。
それで同じ多目的ホールで行われていたIS学園の試験会場に入ってしまい、そこにあったISに興味本位で触れてしまい――
その結果、一夏の所にマスコミやらIS関連の企業の人達や政治の偉い人達が連日のように押し掛けることになったのだった
おかげで衛理華の元に行くことはおろか連絡も取れない状態に追い込まれてしまい、数日経った今日になってようやく連絡を取れたのである。
「それでこれからのことなんですけど――」
「そうね。しばらくはこっちに来ない方がいいわ。少なくとも騒ぎが落ち着くまでは」
すまなそうに問い掛ける一夏に衛理華はため息混じりに答えた。
もうしばらくはこの騒ぎが続くことになるだろう。
その状況でこちらに来れば、一夏を狙うマスコミなどによってコズミックエナジーのことが露見してしまう。
そして、コズミックエナジーのことが知られれば一夏を今以上の状況に落としかねない。
なぜなら、今現在一夏だけがコズミックエナジーを活性化出来る。そのことも知られれば、検査という名の牢獄が待っている可能性もあった。
それを避ける為にも、騒ぎが落ち着くまではこちらに来ない方がいいと衛理華は判断したのである。
「本当にすみません」
「確かに織斑君にも迂闊な所もあったけど、謝ることじゃないわ」
再び謝る一夏に衛理華はそう言い聞かせた。
一夏にも迂闊な所があったとはいえ、まさか自分がISを起動出来るとは思ってもいなかっただろう。
男性はISを起動出来ないのは半ば常識になっていただけに、そう思い込んでいても仕方がなかった。
かといって衛理華としては困ったことには違いなかった。なにしろ、一夏がいなければ出来ない実験もあったのだ。
それがしばらく出来ないというのはある意味痛手にもなってしまう。
「とりあえず、騒ぎが落ち着いた頃にまた連絡するから」
「はい、わかりました」
今話し合っても解決策が見つかるわけでも無い。
なので、落ち着いた日が来た時にでも話し合おうということを決め、この場での2人の話し合いは終わったのだった。
それから数週間後――
一夏は今の状況にひどく居心地が悪い思いでいた。それはもう表情に出るくらいに。
なぜか? 現在は
まぁ、男性でISを起動させるということをしたのだから、ある意味当然とも言えるかもしれない。
一夏もそれは自覚していた為、普通ならここまで居心地が悪くなることはなかった。
では、なぜそこまで居心地が悪くなっているか? 実は教室にいる生徒は自分を除き全員女生徒だったからである。
一夏は紆余曲折あってIS学園に入学することになったのだが、なぜそうなったのかは一夏には良くわからなかった。
というのも、あの騒ぎで色んな人達がひっきりなしで来てしまい――
その対応に追われていた一夏の知らない所で話が進んでいたようで、気が付けばIS学園に入学させられていたのだ。
そして、ISは基本的に女性にしか動かせない。なので、IS学園に入学するのは女生徒ばかりであり――
結果として、今のような状況になってしまったのである。
男性諸君の中には一夏の状況をひどく羨ましがる人もいるかもしれない。
しかしである。あなたがもし数十人の外国人しかいない部屋に押し込められ、更にはその外国人全員から見られていたらどう思うだろうか?
一夏としてはそんな心境に近かったのだ。
「――じゃ、じゃあ、自己紹介をお願いします」
しかも、女生徒全員が一夏を注目してるせいか、教室が重い雰囲気に包まれてしまっている。
現に一夏のクラスの副担任である
緑色のショートカットにメガネを掛けている可愛らしい顔立ちのせいか幼く見える真耶だが、この状況に表情を引きつらせていた。
一方、一夏は助けを求めるようにある女生徒へと視線を向ける。
その先にいたのは長い黒髪をポニーテールにした凛々しく整った顔立ちの少女がいた。
教室に入って一目見た時に一夏は気付いた。この女生徒は自分の知り合いだと。
しかし、その女生徒は一夏の視線に気付くと顔を背けてしまう。
(それが6年ぶりに再会した幼馴染に対する態度か!? 俺、嫌われてるんじゃ――)
その女生徒の態度に一夏は思わずそんなことを考え、どうしたものかと悩んでいたが――
「織斑 一夏君?」
「へ、は、はい!」
真耶に呼ばれていることに気付いて、慌てて立ち上がるはめになってしまった。
「あの、大声出しちゃってごめんなさい。でも、自己紹介は織斑君の番なんだけど――」
「え、あ、すいません」
すまなそうにしている真耶に謝りつつ、一夏は答えてから軽く咳払いをする。
このやりとりに教室内に笑いが起きるが、そのおかげか一夏の気分は幾分楽になっていた。
「え~と、織斑 一夏です。目標は宇宙に行くことです。よろしくお願いします」
まだ緊張していて堅い面もあったが、自分のもう1つの目標と共に自己紹介をすることが出来た。
その自己紹介を聞いてなにやら感心した声も聞こえてくるのでやり遂げたと思った一夏は座ろうとして――
「ほぉ、大層な目標だな」
そんな声が聞こえてきた。しかも、すっごく聞き覚えがある声が。
そのことに一夏は恐る恐る声がした方に顔を向け――
「千冬姉!? あだ!?」
黒い女性スーツを着込んだ凛々しい女性の姿に驚いたと思ったら、その女性に脳天にげんこつを落とされていた。
「学校では織斑先生だ」
女性としては高い身長に腰の辺りまで伸びる黒髪を途中で束ね、幼馴染みよりも凛々しく整った顔立ちをしている女性が幾分怒った顔を見せている。
なぜ、ここに姉がいるのか?と――
実を言うと一夏は姉が何をしているのか知らない。聞いてもなぜかはぐらかされてしまうからだ。
それに帰ってくるのが月に1度か2度。先の騒ぎで週一で戻ってくるようになったが、それでも騒ぎもあって聞くことは出来なかった。
そんな姉がなぜここにいるのかと一夏は疑問に思ったのだが――
「織斑先生、もう会議は終わられたのですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてしまってすまなかったな」
真耶とそんなやりとりをする千冬の言葉を聞いて一夏は顔を引きつらせる。
そういえば、さっきも自分のことを先生と言っていた。となると姉はIS学園の教師なのか?
まさかと思いつつも一夏は思わず顔を引きつらせていた。
確かに千冬は現役を引退したとはいえ、IS操縦者にして第1回モンド・グロッソの優勝者だ。
ある意味適材とも言えなくはないが、かといってこれは予想外すぎる。
教師はともかく、まさか自分のクラスの担任になるなんて――
「諸君、私が織斑 千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。
私の言う事はよく聞き、良く理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。
私の仕事は弱冠15才を16才までに鍛え抜く事だ。逆らってもいいが、私の言う事は聞け。いいな?」
凛とした態度で言い放つ千冬であったが、それに刺激されてかクラスメート達は騒がしくなった。
というのも、千冬はIS操縦者を目指す者の憧れの的だ。
先程も言ったが、第1回モンド・グロッソの優勝者の肩書きは伊達ではないのである。
「毎年、良くもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。
それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
そんなクラスメートの騒ぎに呆れる千冬だが、その仕草にクラスメート達は更に盛り上がる。
一方で一夏は一抹の不安を抱えていた。なにしろ、千冬には色々と頭が上がらないのだ。
(俺、無事に高校生活送れるんだろうか?)
などと、冷や汗を流しながら――そんなことを考えていたせいか気付かなかった。
一夏が幼馴染みと呼んでいた女生徒と姉である千冬に視線を向けられていたことに。
その後、最初の授業となったのだが、一夏はため息を漏らしていた。理由は2つ。まず、授業が難しすぎるという点だ。
ここはIS学園なので当然ISに関することも学ばなければならない。
が、一夏は今までISに関することに触れることが無かった為、その手の知識は皆無と言っていい程無かった。
一応、読んでおくようにとISに関する参考書はもらっている。
しかし、電話帳並にありそうなページ数と先の騒ぎなどで時間が無かった為、一通り読むしか出来ていない。
おかげでISの一般常識的な物は覚えたものの、その程度では授業にはなんの役にも立たなかったのである。
ちなみにその参考書は必要になるだろうと思って持ち込んではいるが。
もう1つが更に注目されているという点だ。
今は休憩時間なのだが、他のクラスどころか2年や3年の生徒まで一夏を見に来てるのである。
しかも、話し掛けるわけでもなく遠巻きに女生徒同士で話し合いながらだ。
おかげで一夏はとても居心地が悪く、今なら動物園のパンダの気持ちがわかりそうになっていた。
どうしたらいいのだろうか? と、一夏がそんなことを考えていた時である。
「ちょっといいか?」
「え?」
幼馴染の女生徒が声を掛けてきた。
「あ、ああ、いいよ」
一夏としてもこの状況から抜け出したかったので、渡りに船とばかりに話に乗ることにした。
そうして、幼馴染である女生徒の
箒はなぜか手すりに両手を置きつつ恥ずかしそうに顔を背けるばかりで、話し出す様子が見られない。
これには一夏も困った様子で後頭部を掻いてしまう。
「6年ぶりに会ったんだ。何か話があるんだろ? あ、そういえば去年の剣道の全国大会、優勝したんだよな?」
「え? あ、なんで知っている!?」
話し掛けてからそのことを思い出す一夏に、箒は驚いた様子で問い掛けてしまう。
そう、6年前。あることが切っ掛けで2人は離ればなれになってしまった。
箒はそのことを恨めしく思わなかったことはない。特にその原因を作った姉には――
だから、今日まで会えなかったのに、なぜ一夏がそんなことを知っていたのか気になってしまったのだ。
「え? ああ、新聞で偶然見かけてさ」
「なんで新聞なんか読んでるんだ!?」
「は? いや、俺だって新聞くらいは読むぞ? まぁ、じっくりとってわけでもないけどさ」
なぜか怒鳴る箒。しかし、その顔は真っ赤であったが。一方、答えた一夏は後頭部を掻きつつ答えた。
ちなみに本人は新聞を読むと言っても普段はテレビ欄以外は流して読むタイプだ。
箒のことはその時に偶然見かけたにすぎなかったりする。
「あ、いや、その……と、所でなんなんだ、そのバックは?」
しかし、箒は恥ずかしかった。一夏がそのようなことを知っていたことに。
それでその恥ずかしさを紛らわそうと一夏が持っていた小さなスポーツバックを指摘していた。
「ああ、これ? これは俺のもう1つの目標を叶えてくれた物さ」
それに対し、一夏はバックに顔を向けつつ答えていた。
ちなみに中身はフォーゼドライバーだ。衛理華に言われて肌身離さぬようにと、こうして持ち歩いていたのだ。
「もう1つ? そういえば、自己紹介で宇宙に行くとか言っていたが……もう1つとはなんなんだ?」
「あ~、それは……機会があったら話すよ」
気になって問い掛ける箒に一夏は苦笑混じりに答える。
フォーゼのことは秘密にと言われてるだけに、いくら幼馴染みでもここで話す訳にはいかなかったのだ。
それ以前に仮面ライダーになりましたと言えばどんな反応をされるか怖いのもあったが。
「それはそれとして6年ぶりに会ったけど、箒って会ってすぐにわかったぞ」
「あ、よ、良くも覚えているものだな?」
「ほら、髪型とか雰囲気とか一緒だし」
にこやかに話す一夏の言葉に箒は照れくさそうに、それでいて嬉しそうにしていた。
一方で、その光景を他の女生徒に見られているとも気付かずにいたが。
「お、チャイムか。ほら、行こうぜ」
「あ……」
チャイムが鳴り、一夏は箒の手を引いて歩き出す。
そのことに箒は軽く驚きながらも、顔を赤くしつつ嬉しそうにしていたのだった。
「はぁぁぁぁぁ……」
次の授業が終わった休憩時間。一夏は深いため息を吐いていた。
流石にマズイと感じた一夏はISの参考書も開いて授業を受けたのだが――
それでも授業を聞くので手一杯で頭に入ってこない。
真耶にこのことで慰められるが、その顔が引きつっていたのを一夏は見逃していなかった。
で、千冬に1週間で参考書の内容を覚えろと言われたことにどうしようかと悩んでしまう。
本音を言えば1週間では無理だ。せめて1ヶ月は欲しい所だが、授業に追い付くためにはそうしなければならないだろう。
そのことは一夏もわかっていたので、どうしたものかと思ってしまうのだ。
なお、このやりとりで千冬を名前で呼んでしまったことで出席簿によるチョップを受けてしまい、クラスメートに千冬との関係に気付かれてしまったりする。
「ちょっとよろしくて?」
「はい?」
そんな時、声を掛けられて振り返る一夏。その先にはクラスメートである女生徒が立っていた。
腰まで流れるように伸びるブロンドの髪に白のフリルが付いた青いカチューシャを付け、やや垂れめ気味な青い瞳を見つ綺礼に整った顔立ち。
しかし、今はなぜか眉がつり上がっていたが。ちなみに女性としては平均的な身長に健康的な体型をIS学園の制服で包んでいる。
「まぁ、なんですの、そのお返事?」
「え? あ、セシリア・オルコット……さんだったっけ?」
なぜか驚いた様子を見せる女生徒――セシリアに一夏が問い掛けた。
名前の方は
「ええ、そうですわ。入試主席にしてイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ」
「代表候補生? そいつは凄いな」
胸を張ってそんなことを自慢するセシリアに一夏は感心していた。
代表候補生とは国家を代表したIS操縦者となるべく選出された者を指す。
いわゆるエリートであり、ISの参考書を読みふけることでそのことを知っていた一夏は普通に感心していたのだ。
「ええ、本来なら私のような選ばれた人間とクラスを共にするだけでも奇跡。幸運なのよ!」
「いや、それはどうかな?」
で、なぜかポーズを付けつつ浸ってる様子のセシリアに一夏は苦笑混じりにツッコミを入れてしまう。
まぁ、セシリアの言葉も色々とどうかと思う点があるので、一夏の様子も無理もなかったかもしれないが。
「まぁ、私は寛大ですから、わからないことがありましたら教えてあげてもよろしくてよ。
あなたが泣いて頼むのでしたらね。なにしろ、私は入試で教官を倒したエリート中のエリートですから」
「そ、そいつは凄いな。俺、逃げてただけだし」
尊大な態度で話すセシリアに一夏は顔を引きつらせながら返事をする。
入試の際にISを使って教官と模擬戦を行うのだが、言葉通り一夏は逃げただけだった。突っ込んできた教官から逃れる為に――
そしたら、そのことに驚いたのかどうかは知らないが、その教官は一夏の横を素通りし――そのまま壁に激突して気絶してしまったのである。
なお、この時の教官が真耶だったのだが、その後の忙しさで一夏は教官が真耶であったことは忘れていた。
それはともかく、一夏としては倒したとは言えないので、そういう風な言い方になってしまったのだ。
余談となるが、この入試の際に一夏は初めてISを操縦したのだが、その感想は結構簡単だったとのこと。
というのも、フォーゼの方がコントロールが色々と難しかったからだ。
それに比べれば思考制御が出来るISは一夏にとっては楽だったのである。
「それはそれとして、これからよろしくな」
「え? あ、ええ……」
まぁ、セシリアの態度には色々と考えさせられるが、それでも波風立てるようなことをすることもない。
それ故に一夏は笑顔で挨拶するのだが、セシリアはなぜか顔を赤らめてしまう。
一夏の笑顔がとても眩しく感じられたから――
なお、その光景を箒はジト目で睨んでいた。
「ここか」
放課後となり、一夏は寮の自室へと来ていた。
帰宅最中に女生徒達が後を付いてきた時にはどうしようかと思ったのだが、その時に真耶と千冬が一夏の元へとやってくる。
IS学園は全寮制であるが、男性が入ることは想定されていなかったので一夏の為の部屋が無い。
なので、準備が出来るまでは一夏は自宅からの通学になるはずだった。
しかし、諸々の事情でやはり寮住まいの方がいいと判断されて、急遽相部屋を用意したのだという。
なお、荷物の方は千冬が着替えと携帯の充電器を用意してくれたが、そのせいで一夏は別の不安を感じてしまう。
というのも千冬は結構ズボラな面がある。自分の荷物を用意した際に自宅がどうなっているか不安だったのだ。
なお、このことを指摘すれば間違い無くげんこつを落とされると思ったので、あえて言葉に出さなかったが。
そんなわけで寮の自室となる部屋の前に来た一夏。
「失礼しま~す。あれ? いないのかな?」
ドアをノックするが返事が無い。
どうしたのかと思いつつもドアノブをひねってみると簡単に開いてしまった。
「留守なのかな? だとしたら不用心だとは思うけど」
「誰かいるのか?」
そんなことを思いながら部屋の中に入る一夏。
部屋の中は豪華な作りになっており、見回しながら軽く驚いていると背後から声が聞こえてきた。
「え? ええ!?」
「ああ、同室になった者か? これから1年よろしく頼む」
どうやら別室にいたらしい同居人の声に一夏は慌ててしまう。
やましいことは無いはずなのだが、女性ばかりの所にいたのといきなりのことに戸惑ったのだ。
「こんな格好ですまないな。シャワーを使っていた。私は篠ノ之 箒――」
「あ、ああ……」
別室から出てくる少女――箒の姿に一夏の視線が釘付けとなる。
シャワー上がりの体をバスタオルを巻いただけの姿。
それ故に健康的な体付きや同世代の女性としては平均以上の胸が見て取れる。
それに上気した頬に濡れた髪にまだ水滴が残る体と、一夏としては今の箒は非常に魅力的な姿となっていたのだ。
「え? あ、ああぁ……」
箒もそこで部屋にいるのが一夏だとわかって顔を赤くしながら固まる。
一方の一夏も動けない。箒の魅力に目が離せなかったのだ。
「あ、一夏……」
「あ……」
そして、アクシデントは重なる。箒の体に巻かれていたバスタオルがほどけ、落ちてしまったのだ。
予想外のことで固まっていて気付くのが遅れる箒だが、そのせいで一夏は見てしまった。
箒の全てを――
「あ、ああ……」
「あ! あ、いや、その!?」
このことに顔を真っ赤にして固まったまま動かない箒。
そこでようやく一夏も事態に気付いて顔を背けたが、全てが遅すぎた。
なにしろ、箒の全てをちゃんと記憶してしまったのだから。
「きゃああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!?」
慌ててバスタオルを拾い上げて体を隠しつつ、しゃがみ込んで悲鳴を上げる箒。
しかし、次の瞬間にはベッド横に置いてあった自分の荷物に飛び付き――
「どわあぁぁぁぁぁ!?」
取り出した物を一夏に振り落とした。
ちなみにそれは木刀であり、勢いから考えて怪我では済まない威力がある。
一夏は驚きながらも真剣白刃取りの要領で受け止めることが出来たが。
「な、なんで一夏がここにいる!?」
「い、いや、本当は自宅通いのはずだったんだけど、いきなり寮に行くことになったんだって!?
なんか、訳があったみたいで……山田先生にさっき言われたんだよ」
片手でバスタオルを押さえつつ、握る木刀に力を込めながら問い掛ける箒に一夏は顔を引きつらせながら答えた。
しかし、一夏としては非常にまずい状況にある。というのも、今の箒は扇情的すぎる。
男としての性か、視線がどうしてもそちらに向こうとしてしまう。
そのことに気付いたのだろう。箒は顔を赤らめながらも怒りの形相を強めていく。
しかし、そのままでいられなかったらしく、箒の方から離れていったが。
「後ろを向いていろ」
「あ、はい!?」
荷物の元へ行く箒に言われて一夏は慌てて振り向くが……実はその前に見えていた。露わとなった箒のお尻も――
そのことに真っ赤になりつつも冷静になろうとする一夏だが、聞こえてくる着ずれの音が逆に想像力をかき立てる結果になっていた。
「いいぞ」
「あ、ああ……」
箒に声を掛けられ、先程のことは悟られまいと考えつつも振り向く一夏。
箒は剣道着に着替えており、仁王立ちのような形で見据えていたが。
「と、ところで、この部屋を希望したのは……お前の意志なのか?」
「あ、いや、さっきも言ったけど、山田先生にいきなり言われたもんだから……その時に言われた部屋がここだっただけだし」
「そ、そうか……」
恐る恐るといった様子で答える一夏だが、問い掛けた箒は顔がほころんでいた。
偶然が重なったとはいえ一夏と同じクラスになれて、その上寮も同室に――
そこまで考えた所で先程のことを思い出し、恥ずかしさと怒りがまたこみ上げていたが。
「えっと、まぁ……色々とあったけどさ。これからよろしくな」
「あ、ああ……」
にこやかに右手を差し出す一夏に、箒は赤くなって戸惑いつつも右手で一夏の右手を握りしめた。
その後、夕食の後に一夏はトイレのことで悩むこととなる。
寮の部屋には基本的にトイレは無く、代わりに各階に共同トイレがある。
が、基本的に女子しかいない寮なので、その共同トイレもほぼ女子専用のような物だった。
なので、一夏としては利用しづらくて悩んでいたのだが、箒に覗きでもする気かと睨まれて慌てて釈明するはめとなった。
まぁ、問題はそれくらいで就寝時間ともなったので2人は寝ることにした。
一夏は初めての寮住まいや女性ばかりの所にいるという緊張の為に。箒は想い人が隣で寝ているという事実に中々寝付けずにいたのだが――
次の日、朝食の時にクラスメートと話し合ったことでなぜか箒に睨まれている一夏の姿があった。
その後に千冬が1年生の寮の寮長だと知って中々帰ってこない理由を知ったりした後、今日もIS学園での1日が始まったのだが――
「これより再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める。クラス代表者とはそのままの意味だ。
対抗戦だけでなく生徒会の会議や委員会などへの出席――まあ、クラス長みたいなものだな」
クラス代表に自分がなることは無いと思っていたからだが――
「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」
「はい、織斑君を推薦します」
「へ!?」
「私もそれがいいと思います」
「ええ!?」
クラスメートに指名されて慌てふためくはめになった。というのも、それは勘弁して欲しいというのが一夏の本音だ。
生徒会や委員会はともかく、IS初心者の自分にクラス対抗戦はいくらなんでも無茶すぎる。
なにしろ、ISは入試の時に一度しか乗っていない。
他のクラスはどうかはわからないが、そんな自分にクラス代表が務まるわけが無いと考えたのだ。
それに時間を取られるようなことをしたくないというのも理由だった。
ただでさえ、先の騒ぎのせいで今日まで衛理華の所に行けなかったのだ。
クラス代表がどのようなことをするかはわからないが、場合によっては衛理華の所へ行く時間が無くなる可能性がある。
それを避ける為にも、一夏としてはクラス代表を断りたかったのだ。
「他にいないのか?」
「ちょ、ちょっとま――」
「納得がいきませんわ!」
辺りを見回す千冬に断ろうと声を掛けようとする一夏だったが、それを遮る形で声を荒げる者が1人。
「そのような選出は認められません!」
その声へと一夏を含めたクラス全員が顔を向けると、セシリアが怒りの表情を見せながら立っていたのが見えた。
それはもう本気で不本意ですと言わんばかりの顔で。
「実力があるというのならともかく、物珍しさで男をクラス代表にするなど論外ですわ!
代表という物はそんなに安っぽい物ではありませんのよ! ならば、代表候補生の私がクラス代表になるのは当然ではなくて?」
「あ、ああ、そうだよな。俺、入試の時しかIS動かしたことないし……そんな奴がクラス代表ってのもおかしな話だしさ」
セシリアの怒りの理由もどうかとも思ったが、一夏は顔を引きつらせながらも渡りに船とばかりに話に乗ることにした。
そのおかげかクラスメート達も色々と話し合いだし、そんな様子にこれなら断れるかもと一夏は思っていたのだが――
「あれ? でも、織斑君は入試の時に私を倒してますよね?」
「「はい?」」
真耶の不意の一言に一夏はセシリアと共に首を傾げる。
なんのことだと思い悩み――そこで入試の時の教官が真耶であることを思い出した。
「ええ、本当ですか!?」
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺は逃げてただけですよ!?」
その一言にクラスメートの1人が驚く中、一夏は慌てて反論した。
一夏もあれは倒したとは思っていないのもあるが、こんな時にそんなことを言われるとは思ってもいなかったのもあったからだ。
「え、でも――」
「あの時は山田先生が自爆しただけでしょう!?」
なぜか首を傾げる真耶に一夏は慌てた様子でツッコミを入れる。
だが、真耶の発言にインパクトがあったらしく、クラスメート達は一夏に視線を向けていた。
そのことで流れがマズイ方向に来てると感じた一夏はなんとか反論しようとするのだが――
「決闘ですわ! 嘘を吐いて人を謀ろうとは許せません!」
「いや、嘘は言ってないんだけど!?」
「なんだ? 男が売られたケンカから逃げるのか?」
「いや、人の話を聞こうよ千冬姉、っあだ!?」
「織斑先生だ」
セシリアの言葉に反論する一夏だが、千冬の言葉に余計な一言を付けて反論した為に出席簿チョップを脳天に喰らうはめとなった。
「ま、このままでは話しは平行線だろう。だから、2人にはクラス代表を賭けて次の月曜に勝負をしてもらう」
腕を組みつつ話を進めてしまう千冬。このことに一夏は頭を抱えそうになった。
こうなると断るのは無理だろう。この状況で千冬がそのことを聞き入れるとは思えない。
本当にどうしようかと一夏が悩んでいた時――
「きゃあぁぁぁ!?」
「な、なに!?」
何かが近くに墜落したことで、激しい轟音と衝撃が教室を襲った。
そのことにクラスメート達は慌てながらも窓から外を覗き込む。
その先にあったのはISを纏った誰かが地面に大穴を空けて倒れている光景――そして、そのISを纏った者に近付こうとする者の姿が見えた。
ただ、土煙のせいで近付く者の姿は隠されてしまっていたが。
「え? なに? 事故?」
「なんだ、あれは?」
その光景にクラスメート達は騒がしくなり、千冬も睨むかのようにその光景を見つめている。
その時、一夏は見た。土煙の合間から見える、倒れている者に近付こうとする者の姿を。
「くそ!」
「織斑! どこに行く!」
「織斑君!?」
「一夏!?」
それを見た一夏は机の横に掛けてあったバックをひったくるように取ると千冬や真耶、箒の呼び止めも聞かずに教室を飛び出していた。
「なんであいつが……あの人がいるんだ!?」
そんなことを叫びつつ廊下を駆ける一夏。
そう、一夏は確かに見たのだ。フォーゼとなった自分と戦った怪人の姿を――
「く、うぅ……」
一方、ISを纏っている者は苦悶の表情で立ち上がろうとしていた。
水色のショートヘアに同色のドレスのような形をしたISを纏い、少女らしさを見せる綺麗に整った顔立ちをしている。
彼女の名は
その彼女がなぜこのようなことになっているのか? それは今を遡ること数分前――
楯無は自分専用のISを調整したので、学園に許可をもらってその試験運用をしていた。
その時にいきなり襲われたのである。衛理華を襲ったのと同じ怪人に。
いきなり怪人に襲われるというアクシデントに驚いたものの、楯無は最初の方こそ怪人と互角以上の戦いを繰り広げた。
ISの能力もあったが、自他共に認める学園最強の実力は伊達ではなかったのだ。
しかし、戦ってからしばらくして怪人から違和感を感じるようになる。
最初はそれがなんなのかわからなかった。だが、戦っている内にその違和感は強まり――
ある一撃を受けた時、違和感の正体に気付いて驚愕した。
その時、楯無が考えたのは否定。だって、あり得なかった。あの怪人の動きは――
そのことに動揺したことで隙が出来た楯無は手痛い一撃を受け、今のような状況になったのである。
楯無の今の状況は芳しくなかった。
ISの残りエネルギーは少ない。先程の一撃で発動した絶対防御というバリアの為だ。それ以前に怪人を攻撃するのが躊躇われてしまう。
ありえないと思うのにあの動きを見ると、ある人物と姿が重なって見えてしまうのだ。
「大丈夫ですか!?」
そんな時だった。一夏が楯無に駆け寄ったのは。
「あなたは……なんでここに?」
そのことに楯無は驚く。
ある意味有名人な為に一夏のことは知っていたが、その彼がなぜここに来るのかわからなかったのだ。
一方の一夏はその疑問には答えずに怪人を見据えていた。楯無が危ないと感じ、それをなんとかしたくてここへと来たのだが――
「お前は……お前のせいでぇ!!」
「おわっと!?」
いきなり怪人に襲われて慌てて避けるはめとなった。
(なんか恨まれてる? でも――)
怪人の様子が気になったが、バックからフォーゼドライバーを取り出しベルトとして装着して赤いスイッチを全て下ろし――
『スリー――ツー――』
始まるカウントダウン。
その間に一夏は握りしめた左手を胸の前で構え、右手はフォーゼドライバーのレバーを握り――
『ワン――』
「変身!!」
カウントダウンが終わると同時にかけ声を挙げながらレバーを入れた。
そして、軽快な音楽と共に現れた頭上のリングに触れるかのように右手を差し伸ばす。
これらの動作は一夏が考えた変身の動作である。あった方がかっこいいかもという理由で考えたのだ。
「うぐぅ!?」
「きゃあぁ!?」「な、なに!?」
それによって起きた衝撃に怪人や教室にいて窓を開けて見ていたクラスメート達は顔を背けるが、楯無や千冬に真耶、箒やセシリアは確かに見ていた。
一夏の姿が変わっていくところを――
やがて、全てが収まると共に一夏はフォーゼへと変身を完了させる。
「なに、あれ……IS、なの?」
その姿に楯無は困惑する。
見ようによってはISにも思えるが、ISは基本的に全身に纏うようなことはしない。
それ以前にフォーゼのデザインはIS的に無いとは思ったが――
「なにあれ?」
「い、一夏?」
「織斑、君?」
クラスメートも困惑する中、箒や真耶に声こそ出さなかったが千冬やセシリアはただ呆然と一夏を見つめていた。
まさか変身するとは思っていなかっただけに、思考が停止しそうになっていたのだ。
「なんだ、それは!?」
「仮面ライダーフォーゼだ!」
驚く怪人に一夏は握りしめた右手を向けつつ答えるが、それと共に楯無が感じた物とは違う違和感を感じる。
もしかして、この怪人は川岸では無いのではないのかと。川岸ならフォーゼのことを知らないはずが無いからだ。
そのことが気にはなったが、このままというわけにはいかなかった為に構えるしかなかったが。
「仮面ライダー? ふざけるな!」
「おっと! は!」
「くぅ!?」
その一夏の返事を聞いて怒りと共に襲いかかる怪人だったが、一夏はその振り回される腕をかいくぐって腹部を殴り――
「うおぉぉ!」
「ぐぅ!?」
「ん? なんだ?」
そのまま怪人を両手で殴ってから蹴り飛ばす一夏だったが、その直後に昔の電話のベル音が聞こえてくる。
そのことに疑問に思いながらも音のする方へ顔を向けてみると、フォーゼドライバーにある左端にあるスイッチが点滅しながら音を鳴らしていた。
『レーダー・オン』
なんだろうと思いつつそのスイッチのボタンを回すと、左腕に小さなパラボラアンテナが付いたモニターが装着される。
『一夏君、フォーゼになってるみたいだけど、何かあったの?』
「衛理華さん? ああ、あいつですよ!」
『あいつ? って、ええ!?』
そのモニターに衛理華が映し出されて状況を話す一夏。
その返事に衛理華は首を傾げるが、怪人の姿が見えたことで驚くはめとなった。
「織斑君、誰かと話してるのかな?」
「あ、織斑先生!」
その光景にクラスメートの1人が首を傾げるが、それを見ていた千冬が走り出していた。
そのことに気付いた真耶が追いかけ、見かけた箒とセシリアもその後を追いかけてしまう。
『なんで? 川岸君はここにいるのに……』
「え? って、本当だ!?」
衛理華の言葉に一夏は首を傾げるが、モニターに研究室で何かの作業をする川岸の姿を見て驚く。
薄々は感じてはいたが怪人が川岸では無いことにほっとした反面、それではいったい誰なのかという疑問からの驚きだった。
『あ、川岸君が言ってたスイッチ!? あれを別の誰かが使ったってことなの?』
「わかりませんけど……今はなんとかしてみます!」
そのことを思い出す衛理華に一夏は戸惑いながらもそう答える。
川岸が言っていたスイッチのことは気になるが、だからといって今目の前にいる怪人をどうにかしなければならないのは変わらなかったのだから。
『ともかく、レーダーであいつのデータを送って! こっちで調べてみるから!』
「はい!」
衛理華に言われて一夏はレーダーを向けて操作する。
するとレーダーのモニターに怪人の姿が映り、それを含めた情報が衛理華のパソコンに送られていった。
「OK。調べてる間、一夏君はそいつをお願い!」
『わかりました!』
「まさか、あのスイッチを使う人がいたなんて……」
十分なデータが集まった所で指示を出す衛理華。
一夏の返事が聞こえる中、川岸はいたたまれない表情でそんなことを漏らしていた。
なお、川岸がここにいるのは、前回の事でせめてもの罪滅ぼしにとマシンの組立を手伝っていたからである。
「今はあいつをなんとかしないと……あれ? そういえば、一夏君がいる場所って――」
そんな川岸に答えつつ、衛理華はあることを思い出す。確か、すでに小中高が始まる時期であり、それに一夏が通うことになったのは――
そこまで思い至ると、衛理華は凄く嫌な予感を感じていた。
「くぅぅ、はっ!」
「おわっと!?」
一方、一夏は怪人と取っ組み合いになっていたが、怪人の方から離れたと思うと光弾を乱射されていた。
それらは地面を転がることで避けたものの、怪人は光弾を乱射し続けていて迂闊に近付けなくなる。
「それならこっちも!」
『ランチャー・オン』
それに対抗しようと一夏はフォーゼドライバーの右から2番目のスイッチのレバーを動かした。
すると電子音と共に右足に青色をしたミサイルランチャーが装着される。
『一夏君、ランチャーを使う前にレーダーで捕捉して。その方が命中率が上がるから!』
「了解! ロックオン!」
衛理華の指示に一夏はレーダーを怪人に向け――
「いっけぇ!」
レーダーに怪人が表示されるのを確認してから右足のランチャーのミサイルを全弾発射する。
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
「あ……」
「よっしゃ、次はこれだ!」
『チェンソー』
そのミサイルを全弾受けて、爆発と共に吹き飛ぶ怪人。
その時に出た悲鳴に気付かない一夏はランチャーのスイッチを切ると別のスイッチに交換するが、聞いていた楯無は驚愕していた。
なぜなら、今の声には聞き覚えが――いや、間違えようの無い、あの人の声が聞こえたのだから。
『チェンソー・オン』
スイッチを切ったことでランチャーが消えた右足に、交換したスイッチのレバーを上げることで違う物が装着された。
それは青色をした……足首から斜め上に伸びるまんまチェンソーだったが。
「おおぉ!」
「せいやぁ!」
「がぁ!?」
立ち上がって襲いかかる怪人に一夏は右足を伸ばして高速回転するチェンソーで胸を切り裂き――
「でぇい!」
「きゃあ!?」
更に背中の噴射も使って跳び上がり、宙返りからのかかと落としの要領で怪人を縦に切り裂いた。
それによって怪人は斬られた所を押さえながら、悲鳴と共に倒れてしまう。
「なによ、これ……」
「どうした? ん? これは……」
一方、衛理華の所では怪人のデータを調べたことで驚愕するはめとなった。
川岸も衛理華の様子が気になってデータを見て、同じように驚愕してしまう。
なぜなら、怪人は――
「よっし、とどめ――」
「ちょっと待って!」
「え?」
その頃、チャンスとばかりに怪人にとどめを刺そうとする一夏だったが、楯無に呼び止められたことで顔を向けてしまう。
一方で楯無は必死の形相をしていた。先程の怪人の悲鳴で確信してしまったのだ。
あの怪人の正体は――
「くぅ……ああぁぁぁぁ!!」
「おわぁ!?」
「きゃあ!?」
その隙に怪人は立ち上がって光弾を乱射してきた。そのことに一夏と楯無は自分の身を守りつつ、思わず顔を背けてしまう。
しばらくして光弾が来なくなったことで2人は顔を向けるが――その時には怪人の姿はどこにも無かった。
『どうかしたの?』
「あ、すいません。逃げられちゃいました」
問い掛ける衛理華に一夏は頭を下げながら謝る。
その一方であの時呼び止めてきた楯無のことが気になって、彼女にも顔を向けていたが。
『そう……まぁ、しょうがないか。こっちはちょっと困ったことがわかったんだけど――」
「困ったこと?」
『後で話すわ。ところで織斑君。そこ、IS学園よね?』
「え? そうですけど?」
衛理華の話に首を傾げた一夏は問われたことに答えつつ更に首を傾げる。
一夏としては、それがどうかしたのかと思ったのだが――
『誰かに見られてないわよね?』
「……あ」
衛理華のその一言で思い出す。フォーゼのことは秘密にしなければならないことを。
しかし、楯無を助けようと必死になって、そのことをスッカリ忘れていたのだ。
「え?って、千冬姉!?」
「失礼。私はIS学園教員の織斑 千冬だ。これはどういうことなのか説明してもらえるか?」
『……織斑君?』
「ごめんなさい……」
左腕をつかまれたと思ったら、それをしてるのが千冬であることに気付いて驚く一夏。
そして、モニター越しに映る千冬を見てジト目になる衛理華に一夏は頭を下げるはめになったが。
「一夏……」
「織斑君……」
そんな一夏を心配そうに見守る箒と真耶。一方でセシリアは複雑そうな表情で一夏を見ていた。
なぜ、そう思うのかは、わからないままで――
「彼は……それにフォーゼ? あれっていったい……」
楯無もまた一夏を見つめていた。色々な疑問を交えながら――
あとがき
ついに始まったIS学園での高校生活。
しかし、学園の中で男子は自分1人という状況に、一夏は色々と悩むはめとなりましたが。
そんな中、倒したはずの怪人が再び現れたことに驚きながらも戦う一夏。
が、慌てたせいでいきなり正体がバレましたが――果たして、一夏はどうなってしまうのか?
次回は千冬達はフォーゼの説明を受けます。そこで怪人に関して新たな事実が――
それと共に楯無は怪人の正体に確信を持ち、その者を止めようとしますが――
そんなわけで次回またお会いしましょう。