衛理華がIS学園に来て更に数日後――
「そういや、あったんだよなぁ……」
とある場所でうなだれている一夏の姿があった。
さて、まずは一夏がどこにいるかだが、IS学園内にある第3アリーナ――
まぁ、ISの競技が行われる施設の中にあるAピットというIS発着場所にいた。
で、なんでそんな場所にいたのか? それは先週の
その時に一夏はセシリアに決闘を申し込まれ、千冬の判断でセシリアとクラス代表を決める模擬戦を行うことになったのだ。
まぁ、その時に起きた怪人騒ぎやら衛理華がIS学園に来る作業やらで一夏とセシリアは今日千冬に話を聞くまでスッカリ忘れていたのだが。
「決まったことだ。仕方があるまい」
そんな一夏に箒は腕を組みながら声を掛けた。
その後ろには簪や本音もいて同意するようにうなずいており、そのことに一夏は顔を引きつらせる。
一夏としてはクラス代表に興味は無いし、セシリアと争いたくも無いのだ。
しかし、忘れていた自分も悪いとはいえ、断ることが出来ない状況に頭が痛い思いだったのだ。
「それよりも〜、おりむーのISはまだなのかな?」
ふと、本音はそんな疑問を漏らした。そう、一夏のISがまだ来ないのである。
一夏専用のISが造られているのは以前も話したが、模擬戦の話は急遽出た故に間に合わない可能性があったのだ。
そのことは千冬に告げられていたので、場合によっては学園で使われているISで行うことも考えてはいたが。
まぁ、どちらにしろISを装着しなければならないので、今の一夏は体にフィットしたセパレートタイプの紺色半袖と半ズボンタイプのISスーツを纏っている。
ISスーツとはISの下に着る、いわゆる下着のような物と思ってくれると良い。
なお、ISスーツの中には特殊な物もあるのだが、そちらは機会があったら説明しよう。
余談だが、本音の言葉に簪はわずかに動揺していたが、表情には出なかった。
どうやら自分なりに決着を着けたらしく、どちらかというと気にするような視線を一夏に向けている。
『織斑君――織斑君!』
そんな中、ピット内に設置されてるスピーカーから真耶の声が響き、誰もがそちらへと顔を向けた。
『来ましたよ、織斑君の専用IS!』
『織斑、アリーナの使用時間は限られている。つまり時間が無い。
「む、無茶な――」
嬉しそうな真耶とは対照的に厳しい口調の千冬の言葉に簪は顔を引きつらせていた。
通常は専用端末と繋ぐなどして行われる物であり、実戦で行われるような物ではなかった。
また、
簪が顔を引きつらせたのはそういった理由があったからである。
その間にピット内の奥にあるハッチが開き、そこから白く鈍い輝きを放つ待機状態のISが姿を見せる。
余談となるが、ISは両手足とスラスター以外は装甲は部分的な物しかない。
これはISにバリアー機構があるおかげで必要以上に装甲を施す必要が無い為である。
そのISに一夏は触れ、そこで違和感を感じる。違ったのだ。入試試験会場で触れたISとは感覚が。
でも、馴染んでいく。このISがなんなのか、なんの為に存在しているのか、それが理解出来ていくのだ。
『織斑君?』
「あ、大丈夫です」
『そうか。早く装着を済ませろ』
様子が気になった真耶が声を掛けるが、一夏は返事をしてから千冬の指示通りにISを装着していく。
ISを装着していくことでISと一体になったという感じを受けた。フォーゼも似たような感じを受けたが、ISの方が一体感はより強かった。
でも、フォーゼと同じ感覚もある。それは力強さ。その力強さが一夏に安心感を与えていた。
「
目の前に浮かぶ空間投影の映像から装着しているISの情報を読み取る一夏。それと共に真耶から模擬戦のルール等が説明された。
模擬戦は相手のシールドエネルギー残量を0にした時点で勝ちとなる方式となる。
シールドエネルギーとはISのバリアーに使われるエネルギーを指す。
当然ながら攻撃を受け続けたりすれば、それだけシールドエネルギーが早く無くなるのだ。
また、例えバリアーを破られても絶対防御というもう1つのバリアーによって操縦者を守る機構が存在する。
ただ、この機構はシールドエネルギーを大量に消費するという欠点もあったが。
『織斑、どうだ? 行けそうか?』
「ああ、大丈夫」
「行ってこい、一夏」
「がんばってねぇ〜」
「行ってくる!」
千冬の問い掛けにうなずき箒や本音に答えると、一夏はアリーナへと向かい飛び去っていく。
その後ろ姿を見送る箒と本音。簪も声こそ掛けなかったが静かに見送っていた。
「来ましたか」
その一夏が飛んでいった先で待ち構えるように青いISを装着したセシリアがいた。
ただ、その表情はどこか険しさを感じさせる。
「まずは良く来ましたと言っておきますわ」
「俺としては勘弁して欲しかったんだけどね」
両手で自身の身長よりも長いライフルを構えながら声を掛けるセシリアに一夏は苦笑しながら答える。
先程も言っていたが、一夏としてはクラス代表に興味は無い。それ以前にISの実力不足を実感しているのも理由であったが。
それでも今は集中しようと表情を引き締める一夏だったが、それを見たセシリアは頬にわずかに赤く染まってしまう。
「ふざけてますわね。でも、わたくしは確かめねばなりませんの!」
「へ? 確かめるって、おわぁ!?」
それでもすぐさま表情を引き締めてライフルからレーザーを撃つセシリア。
彼女の言葉に疑問を感じつつも、一夏は飛んできたレーザーから逃れる為に横に滑るような形で飛び去ろうとした。
そのおかげか1発はまともに当たってバリアーが発動したが、続けざまに撃たれたレーザーは避けることが出来た。
「まだですわ!」
「く、くそぉ!」
かといってそれでセシリアは攻撃を止めるわけでもなく、続けざまにレーザーを連射してくる。
一夏は飛び回りながら回避をしようとするが、ISの動きが自分の意志よりも一歩遅れた感じで動く為か避け切ることが出来ない。
直撃こそ最初の1発以外に無いものの、どうしてもかすってしまってバリヤーが発動してしまうのだ。
「やりますわね」
そのことにセシリアは険しい顔付きをしながらも、内心は一夏がここまで出来るとは思わなかった故に少しばかり感心もしていた。
ISが登場する前の男尊女卑の頃から貴族であった実家の発展に尽力してきた母親。
そんな母親に対し、女尊男卑という世論と婿養子という負い目からか父親は卑屈な態度を取っていた。
そのことでセシリアは父親に憤りを覚え――他にも理由はあるが、それがセシリアにとって男性への印象となってしまう。
だが、一夏はそんな男性の印象とはまるで違った。故にセシリアは一夏がどんな男性なのかを確かめたかったのだ。
だからこそ、油断するつもりは無い。なまじ、フォーゼとして戦っている姿を見ているだけに。今だって一気に落とすつもりで攻撃している。
しかし、一夏は直撃を受けてはいない。そのことは感心せざるおえなかったが――
「では、これはどうですか!」
かといって手をゆるめる理由にもならない。
それを実行する為、セシリアは左右に浮いているサイドバインダーから伸びる4枚の青い羽根を切り離し、それらを一夏に向けて飛ばしていく。
「踊りなさい! ブルー・ティアーズが奏でるワルツに!」
「おわっと!?」
その4枚の羽根の先端からそれぞれレーザーが撃たれ、一夏は慌てて回避した。
ブルー・ティアーズ。セシリアのISの名前ともなっている遠隔誘導型射撃兵器である。
その4枚の羽根――ビットから放たれるレーザーに一夏は抑え込まれそうになっていた。
何しろ多方向から攻撃が来るのだ。かろうじて直撃は無いものの、このままでは避けきれなくなるのは目に見えている。
それ以前に直撃が無いだけでかすめる数は増えており、シールドエネルギーはすでに700を切る寸前まで減っていた。
この調子で受け続ければ、シールドエネルギー0となって負けとなってしまう
「くそ! 何か武器はないのか!」
セシリアの攻撃を避け続ける一夏は白式のデータを目の前に投影する。
それでわかったのは白式の装備は名称未設定の近接ブレード1本のみということだった。
「無いよりはマシか!」
思わずぼやいてしまうが、それでもと一夏は近接ブレードを実体化させ手に持ち――
「おおぉ!」
「な!?」
当たりそうな物は近接ブレードで防ぎながら回避を続ける。このことにセシリアは思わず驚きを漏らしていた。
近接ブレードは日本刀に似た形をしていて一夏の身長程の長さはあるが、その幅は一夏の腕が隠れる程でしかない。
そんな物でレーザーに当てるのは不可能では無いが、やれと言われて出来るような事でもなかった。
だからこそ、セシリアは驚いてしまったのだが。
「凄いですね、織斑君。これが2回目とは思えませんね」
その様子をアリーナの管制室からモニター越しに見ていた真耶が感心した様子を見せている。
真耶にしてみれば一夏の動きがISの初心者には見えない。どうすればあんな動きが出来るのかと思ってしまうほどだ。
「たぶん、経験が生きてるんだろうな」
「経験ですか? ですが、織斑君のIS搭乗時間は――」
「そっちではない。フォーゼとしての経験だ」
話を聞いて首を傾げる真耶に同じく管制室にいた千冬はそう答える。
だが、真耶は更に首を傾げるはめとなった。というのも――
「ISとフォーゼは別物だと思うんですけど?」
「確かにそうだ。だが、私が言ってる経験は操作のことではなく戦いのことだ。
あの戦いを経験したことで一夏は冷静に対処することが出来ているんだろう」
疑問に思っている真耶に千冬は腕を組みながら答えた。
一夏は自覚していないが千冬の指摘通り一夏は冷静に戦う事が出来ている。
なまじ、フォーゼでぶっ飛んだ戦いをしているだけに、今の模擬戦で早々驚くことが無かったのだ。
が、それで勝てるかと言えば話は別だが、千冬の見立てでは今の段階で一夏が落とされると考えていた。
しかし、シールドエネルギーは大きく減らしてはいるものの、未だに落とされてはいない。
これがどのような結果になるか、千冬としては内心楽しみにせずにいられなかった。
「一夏……」
「おりむー……」
一方、ピット内でモニター越しに試合を見守る箒、本音、簪。箒と本音は心配そうな様子で見守っていたが、簪は真剣な眼差しで見ている。
そんな中、試合で新たな動きが起きる。
「ん?」
回避を続ける一夏はセシリアがサイドバインダーにビットを戻し、代わりにライフルで攻撃する光景を見たことであることに気付いた。
「そういえばあいつ、小さいのを出してる時は自分で攻撃しないよな?」
思わず声に出てしまうが、今までのセシリアの行動を思い出すとそうなのだ。
セシリアはビットを使っている間、ライフルで攻撃してこない。
それどころかろくに動かないような――
「やってみるか」
セシリアが戻したビットを再び射出したのを見て、疑問を確かめるべく一夏は飛び出していく。
「無駄ですわ!」
セシリアもさせじとビットを操作し、一夏の行く手を阻もうとするが――
「おりゃあぁぁ!」
「な!?」
何発かのレーザーをかすめながらも一夏はビットの1つを切り裂いた事実にセシリアは思わず驚く。
だが、すぐさま正気に戻って攻撃を続けようとするが――
「やっぱり! あの小さいのを出してる時は動けないのか!」
「く!」
ライフルを構えずにビットの操作に集中するセシリアを見て、一夏は自分の考えが当たっていたことを確信する。
セシリアが使っているビットは彼女の思考制御によって多角複数攻撃を可能としていた。
並のIS操縦者なら何も出来ないまま落とされてもおかしくない攻撃方法である。
一見すると敵無しように思えるが、一方で4つのビットをそれぞれ別の動きをさせる為に制御が非常に難しいという欠点もあった。
みなさまには両手で別々の文字を書く以上に難しいと言えば、ある程度理解出来るかもしれない。
それ故にビットの制御中はセシリア自身ほとんど動けなくなり、無防備状態になる。
一夏はセシリアからの攻撃が来ないことを見越してビットを破壊したのだ。
そのことに気付かれたと理解したセシリアは更にビットを操作して攻撃を続けるのだが――
「はぁ!」
「そんな!? でも!」
「うお!?」
攻撃はかすめるだけで直撃が出来ず、一夏にもう1つのビットを破壊された上に接近されてしまった。
その為、セシリアはビットの制御を中断してサイドバインダーに戻しながら後退しつつライフルによる射撃を行う。
その攻撃に驚きつつも一夏はなんとかブレードで受け止め、一端離れることとなったが。
距離を取りつつらみ合う両者。セシリアは一夏がここまで出来るとは思っていなかったために軽い戸惑いを起こしていた為。
一夏は先程のセシリアの攻撃で自分の迂闊さを反省し、どのように攻めるかを考え直す為。
それ故に軽い降着状態に陥った……と思った時、息を整えたセシリアが再度ビットを切り離した。
「来る……なら!」
それを見た一夏が再び動き出す。この時、一夏が考えたのは残りのビットの破壊だった。
そうすればセシリアはライフルのみの攻撃となり、遙かに攻めやすくなると考えたのだ。
シールドエネルギーの残量は400を切ろうとしてるが、今ならやれると判断し――
「おおぉ!」
ビットの1つを切り裂き――
「掛かりましたわね! ブルーティアーズは4機だけではありませんのよ!」
そこでセシリアは腰の後ろにあった2機の円筒状のカノン砲を前方に稼働させ、そこからミサイルを2機発射する。
「いぃ!?」
このことに一夏は慌てて飛び去るが、ミサイルは後を追いかけるように追尾してきた。
そう、セシリアはビットの1つを犠牲にすることで一夏に隙を作り、今まで出さなかった誘導ミサイルで攻撃しようと考えたのだ。
そして、それは成功して一夏を追い詰めていく。
「なろぉ!」
白式の今の動きでは逃げ切れない。そう判断した一夏は止まりながら反転する。
自分を追尾するミサイルを切り裂く為に――
「だあぁ!」
そして、それは成功した。見事に2発のミサイルを一気に切り裂いて――直後に爆発に包まれてしまう。
「一夏!?」
「おりむー!?」
この様子を見ていた箒と本音は思わず叫んでしまい、簪は眼を細めた。
「織斑君……」
真耶もその様子に息を呑むが――
「ふん、機体に助けられたな、馬鹿者め」
千冬はそのことに気付き、思わず笑みを漏らしてしまう。
一方、セシリアはただ静かに、でも油断せずに見守っていた。
今ので終わったか、そうでなくてもその寸前までダメージを与えたはず。そう思って――
「え?」
だが、爆発の煙が晴れたことで見えてきた物にセシリアは自分の目を疑った。
そこには先程とは違うISを纏った一夏の姿があった。いや、基本的な形は先程のISとは変わりない。
代わりに鈍い光沢を放っていた装甲は名の通り白く輝く物へと変わり、背中の2機のウイングバインダーも翼を広げたような形へと変わっていたのだ。
「これって……」
呆然とする一夏の目の前で
「まさか、
セシリアも目の前に投影されるデータを見ながら、その事実に驚愕している。
専用機とはいえ、
それ以前にセオリーから外れた一夏のやり方にセシリアは驚愕したのである。
一方で一夏は白式を改めて見回していた。それと共に白式が自分に良く馴染んでいることに気付く。
それで理解した。今、この時をもって白式は本当の意味で自分のISになったのだと。
同時に武装の表示にも変化が起きる。名称未設定だった近接ブレードが
「雪片? 確か、千冬姉が使っていた武器の名前じゃ――」
その表示を見ていた一夏は思わず首を傾げそうになる。そう、雪片とは千冬がISを使う際に使っていた武器の名前だ。
それが自分のISに搭載されている。そのことがどこか嬉しくて――
「なら、がんばらなきゃな。今まで守ってくれた千冬姉の為にも――俺は、俺が目指す仮面ライダーになる!」
「え? あ、何を言って――」
決意を口にする一夏の姿にセシリアはその言葉の意味が理解出来ずに戸惑いを見せる。
一夏は
今まで守ってくれた千冬に感謝しつつも、自分は本当の意味で仮面ライダーになってはいないと。
なぜ、そう思ったのかはわからない。それに自分がどんな仮面ライダーを目指そうとしているのかもわからない。
でも、だからこそ目指そうとしたのだ。今まで守ってくれた千冬に応える為に自分がこれだと思う仮面ライダーになろうと。
「ふ、あの馬鹿者は……」
そんな一夏の姿をモニター越しに見ていた千冬は思わず笑みを漏らす。それは箒や本音も同じであったが。
「ああもう! 面倒ですわ!」
一方でそんな一夏を見て困惑を強めたセシリアはすぐに終わらせようと4機の誘導ミサイルを発射した。
しかし、一夏はすでに気付いて顔を向けると呼応するかのように雪片の刀身が割れるように変形し、代わりに青白いレーザー光の刀身が生まれる。
「はぁ!!」
そして、一気に飛び出したかと思うと誘導ミサイルを瞬く間に全て切り落とした。
それと共に実感する。先程までとは違い自分の動きにISが合わせてくれることに。それに動きも確実に速くなっていた。
「でりゃあ!!」
「あ、きゃああぁぁぁ!!?」
先程とは違う速さに戸惑ったセシリアが一夏に一気に距離を詰められた挙句、斬られたことに思わず悲鳴を上げた。
幸いにも絶対防御が発動した為セシリア自身にダメージは無いものの、そのせいでセシリアのISのシールドエネルギーは大幅に奪われてしまう。
「おおぉぉぉぉ!!」
そのことでセシリアがひるんでいる隙に一夏は宙返りの要領でUターンして再びセシリアに迫り――
「でえぇい!!」
「ああぁぁぁぁぁ!!?」
更にもう一太刀によってバリアーが切り裂かれ、そのことにセシリアは更に悲鳴を上げた。
それと共にアリーナ内にブザーが鳴り響き――
《試合終了。両者ドロー》
『へ?』
アナウンスの言葉に一夏やセシリアだけでなく、見ていた誰もが呆然とする。どう見たって一夏の勝ちなのに、なぜドローなのか?
誰もがわけがわからず呆然とする中、理由がわかった千冬はかすかに笑みを漏らしていた。
「なんで引き分けになったんだ?」
試合が終わり、ピットに戻りISを解除した一夏とセシリア。
そこで思わず疑問を口にした一夏であったが――
「バリア無効化攻撃を使ったからだ」
「バリア無効化攻撃?」
千冬の返事に一夏は首を傾げる。その言葉の意味が理解出来なかったからだが――
「相手のバリアを無力化し、本体を直接攻撃することで絶対防御を発動させる。
それが雪片の特殊能力であり、私が第1回のモンド・グロッソで優勝出来たのもこの能力による物が大きい。
ただし、使用には自分のシールドエネルギーを転化しなければならない諸刃の剣でもある。
お前が引き分けで終わったのも、その特性も考えずに無闇に使ってシールドエネルギーを失ったからだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
千冬の説明を聞いて思わず待ったを掛ける一夏。
説明がわからなかったからでは無い。あることが気になり、そのことを考える為であった。
「なんだ? 何か言い訳でもあるのか?」
「いや、言い訳というか……俺、使った覚えが無いんだけど」
「なに?」
睨み付ける千冬だが、一夏の返事に思わず眼を細めた。
一方で一夏はそんな千冬に気付かず、その時のことを思い出そうと額に人差し指を当てていたが。
「うん、データはちゃんと見なかったけど……でも、使うように操作した覚えは無いんだ」
しかし、いくら思い出しても雪片の特殊能力を使うような操作をした覚えが無い。
確かに雪片二型のデータをちゃんと見なかったり試合に集中していたのもあるが、どう考えても特殊能力を使うような操作はしていなかった。
そのことに一夏は訝しげな顔をしてしまっていたが。
「大方、無意識に使ったのだろ。まったく、お前という奴は――」
「それは流石にひどすぎると思うけど?」
そうしたのだろうと判断した千冬は戒めの言葉を掛けようとした所で聞こえてきた声に阻まれてしまう。
その声に誰もが顔を向けると――
「衛理華さん? なんでここに?」
「データ取りを兼ねた観戦、のつもりだったんだけどね。仕事が長引いちゃって、今来たばかりなの。
にしても、手放しに褒めろとは言わないけど、言い方が少しきつすぎないかしら?
初めて使うISに武装がどんなのかもわからなかったんでしょ? それで引き分けたんなら、それなりにやった方じゃないの?」
「それに
「む……」
一夏の疑問に答えつつそう言い放つ衛理華。簪も同意するようにうなずくと千冬は思わず軽く呻いてしまう。
一夏のIS搭乗時間は1時間も満たない初心者。その上、ISは
その状態で代表候補生として訓練を重ねたセシリア相手にケアレスミスが無ければ勝利出来たかもしれない引き分けなのだ。
それだけでも大した物なのだが、千冬としてはそれを言うと一夏が図に乗りそうな気がして厳しい言葉になってしまったのである。
「ともかく、お前のISは欠陥機……いや、言い方が悪いな。お前の機体は他よりも攻撃に特化しているということだ」
「は、はぁ……」
「でも、それも調整次第で変わってくると思うよ」
「え? そうなの?」
「うん」
千冬の言葉に顔をしかめてしまった一夏だが、簪の言葉に思わず顔を向けてしまう。
この時の一夏は知らなかったのだが、専用機となったISは調整が必要となる。
そうすることでISをより自分に適した物にすることが出来るからだ。
「今の内に言っておきますけど、今ISは待機状態になっています。
織斑君が呼び出せばすぐに展開出来ますけど規則がありますので、その辺りはちゃんと確認しておいてくださいね」
「あ、わかりました」
真耶の指摘に一夏は右の手首に白く大きい腕輪のようになっている待機状態の白式を見てから思わず頭を下げる。
それと共にまた参考書を読まなければならないという事実にため息を漏らしていたが。
そんな一夏を見てか微笑む箒と本音。一方で少し離れた所で様子をうかがっていたセシリアは真剣な眼差しを向ける。
そして、簪もまた含みがある視線を一夏に向けていた。
そんな一夏を見ていた千冬だが、この時は一夏の言っていたことをさほど重要視していなかった。
気になることもあったが、一夏が無意識に使ったのだろうと決めつけて――それが違うことに気付くのはまだ先の話である。
「ん〜……疲れたなぁ〜」
模擬戦が終わり、一夏は箒と本音と共に寮へと戻ろうとしていた。
クラス代表は両者が引き分けた為、改めて選考を行うこととなったが。
そのことをどうしようかと考えていた一夏だが、そこで箒が自分を見ている事に気付く。
「どうか、したのか?」
「いや、その……引き分けて、悔しいとか思わないのか?」
「悔しい、のかな?」
どこか恥ずかしそうにしながら問い掛ける箒だが、一夏はというと首を傾げる。
別に悔しいとは思わない。今回の模擬戦に乗り気では無かったのもあるが、やはりあの決意があったからだと考える。
自分が目指す仮面ライダーになるという決意に。
「あ、いや、だ、だが、訓練は必要になると思うぞ!」
「確かにな」
なぜかどもる箒であったが、その言葉を聞いて一夏は思わず考え込んでしまう。ISにしろフォーゼにしろ、これからは訓練は必要になるとは感じていた。
ただ、フォーゼは衛理華の指示の元となるが、ISはどうやって行うかが問題だった。千冬や真耶は教師の仕事がある為、頼むのは難しそうだったし。
「な、なら、私と一緒に訓練をしないか?」
「箒と? うん、なるほど。それはいいかもな」
顔を赤らめながら言い出す箒だが、一夏はそれを聞いて思わずうなずいてしまう。
箒となら幼馴染みなので他の女子よりも気安く話せるし、箒の姉はISを開発した人でもある。
ならば、それなりに詳しいと考えて――
「じゃあ、これからよろしく頼むな」
「あ、ああ……」
「私も私も〜」
「あ、こら!?」
微笑む一夏に箒は赤面しながらうつむいてしまうが、そこに割って入ってきた本音に思わず戸惑うはめとなってしまった。
ただ、本音は自分がなぜそんなことをしてしまったのか、気付かずにやっていたが。
そんな彼女達を見て思わず微笑む一夏。その時、待機状態の白式が鈍い輝きを放っていたことに気付くことは無かったが。
「姉さん、模擬戦のデータを持ってきました」
「ありがとう、簪ちゃん」
IS学園生徒会室。なぜか、薄暗い広い室内で簪は楯無にメモリーチップを渡す。
今、ここにいるのは2人のみ。だからこそ、簪は疑問に思っていた。
別にデータを渡さなくても模擬戦自体はここにいても見れるはずなのに。
「気になってるようね。まぁ、私も気に掛かってるだけで、何かあると確信してる訳じゃないんだけどね」
「そうなのですか?」
「そうよ。あなたも知ってるとおり、織斑君は様々なことに関わっている。
男性で唯一のIS操縦者であり、同時に唯一コズミックエナジーの高い活性化も出来る人物。
それがどのようなことになるのかが私は気に掛かってるのよ」
首を傾げる簪に楯無は苦笑混じりに応えた。確かに一夏はISやフォーゼといった事に関わっている。
特にフォーゼ――正確にはコズミックエナジーだが、かなり特異なことに関わっていると言ってもいい。
それなら楯無が気にするのもわかるかも思いつつ、簪はそんなことを考える自分に苦笑しそうになった。
前の自分だったらこんなことを考えなかったかもしれない。
だからこそ直接的では無いとはいえ、楯無との仲を取り戻してくれた一夏には感謝していたが。
「さてと……これからある人と通信をするのだけど、このことは誰にも言っちゃダメよ」
「え、なぜです?」
「そうね。更識家の裏に関わるから……とだけ、今は言っておくわ」
「え?」
首を傾げながら問い掛ける簪だったが、話し出した楯無の返事に思わず訝しげな顔をした。
詳しく話すと長くなるが、更識家は日本の裏に関わってきた一族である。
その話は簪も知ってはいたが、それをなぜここでという疑問が出ていた。
実を言えば、楯無としては簪をこのようなことに関わらせたくはなかったのだ。
それが自分のわがままだとはわかっている。でも、簪には普通の女性として過ごして欲しいと思っていた。
しかし、自分と関わってしまってはそうはいかなくなるだろう。
だからこそ、楯無は覚悟を決めて簪にそういったことを少しずつ伝える事にしたのだ。
そんなことを考えながら楯無は端末を操作すると、少し離れた空間に映像が投影される。
『ん? 更識のお姫様か。何かご用かな?』
その映像にはこちらに気付いて振り返る男性の姿が映し出される。
少しばかり皺が刻まれた厳しくも整った顔立ちにオールバックの黒髪。背は高く、スラリとした体型を背広で包んでいた。
「はい、実はあなた方に後輩が出来るかもしれないとお伝えしようと思いまして」
『後輩? どういうことかな?』
話を聞いて訝しげな顔をする男性に楯無は端末を操作してあるデータを送った。
それはコズミックエナジーを含めたフォーゼのデータと一夏のデータである。その送られたデータを見た男性の目が開かれた。
『これは――』
「まだ何もわかってはいませんが、何かが起ころうとしています。そして、織斑君はその事態の中心人物になる。私はそう予測しておりますの」
『ふむ……』
楯無の話を聞いて、送られたデータを見ていた男性はあごに手をやりながら考え込んでいた。
確かに一夏が遭遇した事態の数こそ少ないが、それで終わりとならないのは男性も経験から感じている。
それはわかるのだが――
『それでは君は私達に何をして欲しいのかな?』
「協力をお願いしたいのもありますが、彼の……織斑君の道しるべになって欲しいのです」
男性の問い掛けに楯無は真剣な顔で答えた。
一夏が言っていた自分が目指す仮面ライダーになる。それが簡単なことでは無いのは楯無も感じていた。
もしかしたら、一夏はそのことで迷走するかもしれない。そうなってもいいようにと彼らにお願いしていたのだ。
『なるほど。私達もいくつかの案件を抱えているから、すぐに協力は出来ないが――いずれ誰かを送ろう』
「ありがとうございます」
男性の返事に楯無は微笑みつつも内心はほっとしていた。
彼女としては万全な態勢を整えたかったが、彼らにもやらなければならないことがある。
だから、この返事をもらえただけでも御の字だと思うことにした。
『こちらでも出来るだけ調べておこう。何かわかったら連絡する』
「はい、お願いいたします」
男性の言葉に楯無が頭を下げると映像が消えた。
それを感じて、楯無は頭を上げるとほっと一息吐いてしまっていたが。
「あの、あの人はいったい……」
「そうねぇ……誰も知らない所で日本を――いえ、世界を守っている人達よ」
「はい?」
微笑みながら答える楯無であったが、問い掛けた簪はそれを聞いて思わず首を傾げてしまうのだった。
「ふぅ……仮面ライダーフォーゼ……か……」
一方、楯無と通信を終えた男性はため息混じりにそんなことを漏らす。
仮面ライダーは男性にとって特別な意味を持っている。なぜなら、仮面ライダーは様々な苦悩と戦わねばならないからだ。
一夏はその苦悩の1つが無いことは幸いだが、それでもこれからのことを考えると心配になる。
「何かあったのか?」
「ん? 本郷か。戻ってきたんだな」
「ああ、なんとか片付いてな。ん? これは――」
そんな時、やってきた青年に男性は気付いた。その本郷と呼ばれた青年は一緒にいた青年と共に男性が見ていた映像に気付く。
それは一夏がフォーゼに変身する物と怪人を倒した際の映像であった。
「これは……まさか、彼も――」
「安心したまえ。彼の変身はベルトの力による物だそうだ」
「そうか……」
男性の返事にしかめた顔で問い掛けた本郷は安堵する。仮面ライダーはその姿とは裏腹にある非業を抱えている。
本郷もそうなのだが、一夏がそれを抱えていないことに本郷は安堵したのだ。
「彼は……」
「ん? そうか、沖君は彼に会っているのだったな」
映像を見つめるもう1人の沖と呼ばれた青年を見て男性はそのことに気付いた。
そう、その青年の名は沖 一也。かつて誘拐された一夏は助けた人物である。
「彼に何があったかは後ほど話すが、彼は仮面ライダーフォーゼと名乗って新たに現れた謎の集団と戦う事を決意したらしい。
その際に自分が目指す仮面ライダーになるとも言っていたそうだ」
「そうか。ということは俺達は彼に協力を?」
「いや、君達も知っているかもしれないが、彼は世界で初めて男性でISを動かした人物でもある。
そのせいで不穏な動きを見せる所がいくつか出ているからな。君達にはそちらの対処をしてもらいたい。
いずれ彼に会わなければならないが、今は彼への負担を減らすことが先決になる」
「わかりました」
本郷の問い掛けに男性が笑顔を交えながら答えると、それを聞いた一也がうなずいていた。
男性の言うとおり一夏は初の男性でISを動かした人物だ。一夏自身はその自覚は薄いが、それ故に様々な方面で注目されている。
中にはそのことで良からぬことを考えている所もあるくらいだ。
彼らは以前からその対処に回っていたが、一夏の今後の為に対処の強化をすることにしたのだ。
「一夏君……」
そんな中、一也は心配そうに一夏が映される映像を見つめる。
まさか、彼が仮面ライダーになるとは……もしや、自分のせいなのかと一也は考えてしまう。
だが、悩んでばかりはいられないこともわかっていた。
だからこそ、一也は自分がすべきことをして、改めて一夏に会おうと決意するのだった。
とある場所。様々な装置に囲まれた中にその女性はいた。
可愛らしく整った顔立ちに垂れ目気味の穏やかな表情をしていて、童話『不思議の国のアリス』に出てくるアリスの衣装に似たワンピースドレスを纏い――
そのせいか女性としては高い身長にモデル並のスタイルと豊満な胸が強調されているが。
そして、腰まで伸びる紫の髪に頭には機械仕掛けのウサ耳が乗っている。
その女性の顔だが、どことなく箒に似ている印象があったったのも述べておこう。
「ん〜……」
その女性は目の前の空間に投影されたモニターに映るデータに首を傾げていた。
そのデータとは白式だったりする。なんでこの女性がそんなデータを見ているかと言えば、彼女は白式の開発に関わっているからだ。
正確には違うのだがその辺りの話は機会があった時にするとして、その関係で白式のデータを見ていたのだ。
「なんか、おっかしいなぁ〜」
なのだが、その女性はそのデータとにらめっこしながら首を傾げるばかり。
データ上で白式におかしな所は無い。想定よりも若干高い能力を出しているが、それも許容範囲内だ。
そう、おかしな所は無い、はずなのだが――
「やっぱり、いっくんが命令してないのに
白式の操作ログを見てると彼女がいっくんと呼ぶ一夏が操作していないのに動いている箇所があることがわかる。
女性の言う『
千冬は一夏が無意識の内に操作したのではと思っていたが、一夏に関してはそれはありえなかった。
熟練のIS操縦者ならまだしも初心者の一夏はそれは出来ないし、それ以前に一夏は千冬に教えられるまで『
女性はそのことには気付いていないが、知らない物を使えるはずが無いのである。
「勝手に動いてる? あはははは、まさかぁ〜」
そのことに思い当たるものの、女性はありえないと笑い飛ばす。そう、この時はそうだと思っていた。
しかし、彼女は知らない。自分すらも及ばない事態が起きようとしていることに――
ある薄暗い場所にその人物はいた。整えた黒髪の髪型に皺が刻まれた顔で背広を着た初老の男性。
卵の形をしている大きなイスに座り、手には簪が使ったあのスイッチが握られている。
そんな男性の前にマントとフードを纏った者が現れ、フードを脱いでから跪いてしまう。
しかし、フードの下にあったのは人の顔ではなく、どこかサソリを思わせる仮面のような顔であったが。
「そうか、フォーゼか……」
そのサソリの仮面の者が話しているわけでもないのに、初老の男性は話を聞いているかのようにうなずく。
良く見ればサソリの仮面の者以外にも数名の人影が見えるが、薄暗くて姿が良く見えない。
しかし、そのシルエットは明らかに普通の人には見えなかったのだが。
「ふむ、『亡霊』が我らに気付いたか。そちらは邪魔になるようなら潰せ」
一方で初老の男性は忌々しそうな顔でそんなことを言い出す。
実際、男性にしてみれば『亡霊』と呼ぶ存在は邪魔でしかなかったのだが。
「フォーゼ……確かめねばなるまいな……私達の今後の為にも――」
先程とは違って不敵な笑みを浮かべながら呟く初老の男性。その瞳はなぜか赤く不気味に輝くのだった。
その日の夜。セシリアはシャワーを浴びながらあることを考えていた。それは一夏のこと。というか、一夏のことばかり考えてしまう。
フォーゼとIS。一夏の戦いを見て思うのは、やはり今まで見てきた男性とは違うということ。
それに今日の模擬戦で、途中まで
それでも一夏は弱音を吐くこともなく戦い抜いたのだ。故に感じるのは一夏が自分の理想の男性像に近いということか――
「織斑、一夏……やはり、わたくしは――」
呟くセシリア。その名を呟くと自覚してしまう。一夏のことがもっと知りたいと。
それに模擬戦で見た一夏の強い意志を宿す眼差しを思い出すと胸が熱く嬉しくなるから。
そんな彼女の表情は恋する乙女の物であった。
次の日――
「まず始めに、クラス代表は織斑 一夏君に決定しました」
「へ?」
朝の
確か改めてクラス代表を決めることになっていたのに、なぜに自分がなっていたのか理解が出来なかったからだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! なんで俺がクラス代表になってるんだ!?」
「それはわたくしが辞退したからですわ」
戸惑いながらも怒鳴るような形で問い掛ける一夏に答えたのはセシリアであった。そのことにクラス中がセシリアに注目するが――
「先日の模擬戦で私は思ったのです。一夏様は私以上の才能を持っていると」
「は? 一夏、様?」
で、両手を組みつつ乙女な仕草で事情を話すセシリアだが、その一言に一夏は更に顔を引きつらせる。
同時に箒と千冬、本音は一夏を睨んでいたが。一方で一夏は混乱している。
確かに最初こそ傲慢な態度を取っていたが、それもクラス代表を決める模擬戦までは不機嫌そうながらも普通の態度で接していた。
なのに、なんでいきなり様付けで呼ばれるのかがわからない。更になんで憧れの人を見るような目で見られるのかもわからない。
模擬戦の方は引き分けだし、それ以降も何かをした覚えも無い。なので、一夏としては訳がわからず困惑するばかりだったのである。
「それにクラス代表になれば対抗戦などを行えますから、ISの技術向上に役立つと考えましたの。
ですから、一夏様にクラス代表をお譲りすることにしたのです。これからがんばってくださいね」
「は、はは……」
満面の笑みで答えるセシリアだが、一夏は顔を引きつらせるしかなかった。
何をどうすればそんな憧れの人を見る目で、更に嬉しそうに言えるかがわからない。
かといって理由を聞こうとすると怖い返事が返ってきそうで聞けなかった。故に顔を引きつらせるしかなかったのである。
一方でクラスメイト達はそんなセシリアを見て騒がしくなっていたりする。
箒、本音、千冬の一夏を見る目は鋭くなるばかりであったが。
こうして、一夏の学園生活は本格的に始まる。だが、この時は誰も考えることはなかった。
ISとコズミックエナジー――この2つが出会った時にどうなるのかを――
この時はまだ、誰もその事に気付く者はいなかった。
あとがき
紆余曲折あってクラス代表になった一夏。そして、乙女となったセシリア。
え? なんか違う? まぁ、なんだ……タグに偽り無しって事で(おい)
ともかく、学園生活編はこれにて終了。次回は幼馴染編の始まりです。
怪人との戦いに準備を進めていく一夏達。一方、転校生としてやってきた少女は一夏の状況を見て、ある行動を起こす。
それがある事態を引き起こすとも知らずに――といったお話です。
次回からは新章突入。さて、どんなことになるのか……次回をお楽しみに〜