イオンの声をとあるナマモノを思い浮かべながらお読みください。
Tales Of The Abyss
- イオン異伝 -
状況は悪くなる一方であった。
「ちっ」
ジリッと後退りながら、敵との距離を取るルーク。
「これは、拙いですね……」
「すまない……」 「ごめんなさい……」 「……く」 「はぅ……」
傷つき、膝を付いて動けない味方をチラッと見ながらジェイドは呟く。
既に立ち上がって敵と相対しているのはルークとジェイド、それと戦闘には加わっていないイオンのみであった。
対して、敵の数は5。
「ジェイド、譜術は使えるか?」
「……この状態ではとても」
イオンの守りながら戦う体力も、二人には無くもはや絶望的であった。
そんな彼らに既に勝負が決まったと言わんばかりに、ジワリジワリと迫ってくる敵にルークは剣を構え、
ジェイドはスピアを持つ。
睨み合う両者。
もはやルーク達には敗北の道のみしか存在しなかった。
しかし、意外な人物が勝利の道へと導くのであった。
「……ルーク」
「イオン?」
いつの間にか傍に来て自分を呼びかけるイオンに疑問符を浮かべながら答えるルーク。
その視線はルークの眼を真っ直ぐ捕らえていた。
「ボクも戦います!」
「は、はぁ!?」
イオンの突然の言葉に呆気に取られるルーク。
よく見たらジェイドも呆れた表情を浮かべている。
「何言ってんだ! お前、戦えないだろうが!」
その言葉に自信満々な顔で答えるイオン。
「大丈夫です。 ボクはヴァンからボクしか使えない技を学んでいました。
それでしたらきっと、皆さんのお力になれる筈です!」
「(ヴァン師匠から?)」
ヴァンがイオンに技を教えていたことに驚きの表情を浮かべるルークは、少し考えた後頷く。
「わかった。 無理するなよ!」
「仕方ありませんね、状況が状況ですし……」
「はい!……では、ジェイド。ちょっと時間を稼いで貰えますか?」
「は、はぁ」
そのまま参戦するかと思っていたジェイドは肩透かしを食らったかの表情を一瞬浮かべるが、
イオンの願い通り、簡易譜術を展開し相手へ牽制を始める。
「イオン?」
自分の服の裾を掴んで、こちらを見上げるイオンにどうしたと尋ねる。
「あの、ルーク……お願いがあります」
「な、なんだ?」
頬を赤く染め、モジモジするイオンにルークは何故か照れる。
このヤバイ状況の中で。
「ボクの体術は特殊で、誰かと契約していないと使えないのです」
「契約? まだやってないのなら、早く済まそう!」
時折聞こえる剣打の音に、ルークは焦りながらそう答える。
「……いいんですね? ではルーク……」
そう言ったイオンは彼の顔に手を伸ばし、自分の顔の近くまで一気に引き寄せる。
「え? ……んっ!?」
「「「「 !!? 」」」」
瀕死の皆が声にならない驚愕の声をあげたイオンの行動は……
「ななななな何すんだよいきなり!?(///)」
「契約の為の口付けです。 これで契約は成りました」
口元を押さえて顔を真っ赤にし慌てふためるルークに対し、イオンは極めて冷静に答え、彼に一枚の紙を手渡す。
「これは?」
バッ
神衣を脱ぎ捨て、動きやすい格好になったイオンは彼に振り返って口を開く。
「それはコマンドです。 ルークが対象とそのコマンドを言う事でボクの技が発動します」
「はぁ?」
イオンが何を言っているのかイマイチ理解が出来なかったルークだが、そのイオンはやる気満々である。
それを見た彼は「……まぁ、導士だし、凄い技を使うんだろうな」と思うことにし、とりあえず一番上のコマンドを選び声をあげる!
「イオン! 一番近い敵に電気ショックだ!」
「ピィィィッッカッッ……チューーーッッ!!!」
バリバリバリバリバリバリ
ルークの言葉を聞いたイオンは体を小さく震わせた後、突き出した両手から電撃を放つ!
その電撃をもろに受けた敵は体中を焦がしながら倒れ伏す。
「す、すげぇ! イオン! どんどん行くぞ!」
「ぴっかぁ♪」
余程興奮しているのか、イオンが放った聞き慣れない言葉には気づかなかったルークは次のコマンドを選び、敵を指差してイオンに告げる。
「次は一番奥の敵にこうそくいどうで近づいて!」
「ちゅっちゅっちゅーーーー!!!」
前傾になり、その顔からは想像出来ない速さで駆けるイオン!
「メガトンキックとメガトンパンチだ!」
瞬時にして目の前に現れ、拳を腰に構えているイオンに驚愕する敵は回避しようと反応するがもはや既に遅し。
「ぴっっかちゅぅぅぅ!!!!」
ズムッ!
ドガッ!
突き出した拳は敵の腹部にめり込み相手は思わず屈み込む。
その次に勢い良く繰り出された蹴りが頭部に直撃し、敵を戦闘不能に追い込んだ。
「…………」
「もらった!」
「拙いっ! イオン、電光石火で蹴散らせ!」
そのイオンの動きに唖然として動きを止めていたジェイドに迫る敵に気づいたルークは、すかさずイオンに指示を飛ばす。
イオンの動きは電光石火の如く!
「ぐはっ!?」
瞬時にジェイドを狙う敵の前に移動したイオンは、その勢いを敵を足蹴にする事で殺す。
そして反動で浮き上がったイオンに、ルークは最後のコマンドを指示する。
「トドメだ!!! カミナリをお見舞いしてやれっ!」
空中を体勢を整えたイオンは、体を震わせバッと手を天に向ける。
「ピカァァァァァァァァァアァ!!」
ドッゴォォォォォォォン!!
天空から迸る雷撃が、敵が固まる場所に落ち轟音をたてながら光で埋めつす。
光が収まり、帯電していたプラズマが消失した後……消し炭を残し、敵は消滅していた。
「すげぇ……ピ、いやイオン!!」
「ルーク、やりましたね。ってわっ!?」
その有り得ない破壊力を呆然と見ていたルーク一行だったが、いち早く我に帰ったルークはイオンの元へ駆け寄り
イオンに抱きついて喜びを顕わにする。
絶望的だった状態を救われたのだ。
彼はそんなに他意はなく、ただただ助かった事に喜びイオンに感謝した。
「……あ、あのルーク(///)」
「ん、なんだ?」
モジモジとするイオンに疑問を浮かべるルーク。
「ん……ん?」
そして段々と気づいてゆく。
あれ、なんで胸元に柔らかい感触が。
「!?」
「あ」
バッとイオンの肩に手を置いて、その胸元を青筋を立てながら見るルーク。
そこには、控えめながらも女性を象徴する膨らみが
体にフィットしている全身タイツにクッキリと浮き上がっていた。
「……(え、なにこれ? 夢?)」
目の前の現実から逃れようとするルークとは相対的に、イオンは自分の体をじっと眺められているのに恥を覚えたのか
更に顔を高潮させるが、隠そうとはせずに彼の視線を受け止めていた。
「ルークったら……スケベなんですね(///)」
恥じらい+上目遣い。
しかしルークは現実から逃れているようだ。
「でもルークでしたらいいんですよ。 だって、ボクのマスターですもの♪」
そういって今度はイオンからルークに抱きついて、幸せそうな表情を浮かべ始める。
「(ああ、なんだか暖かいし柔らかいや……うふ)」
目の前の……少女の感触と、背中に突き刺さる視線を感じながら、目の前が真っ暗になるのを自覚しながら意識を閉じるのであった。
「はっ!?」
ガバッと起き上がるルークは、キョロキョロと辺りを見渡す。
「……夢、か」
ここが宿屋だという事を確認したルークは、ホッと胸を撫で下ろす。
「ったく、イオンが女だなんてありえねぇだろ」
自分で見た夢に苦々しく突っ込むルーク。
ふと窓の外を見ると、ジトジトと雨が降っていた。
部屋の中も湿気が高く、蒸し暑かったので自分が服を脱いでいる事に納得したルークは
いい加減起きて服を着ようとベッドから立ち上がろうと手をかける、と。
ふに♪
「……ま、まさか」
「う〜ん」
妙に柔らかい……人肌のような感触に、顔面蒼白させながらギリギリと音を立てながらその感触の元を見る。
「あ、ルーク……昨日の夜は酒が入っていたとはいえ、激しかったですねっ」
「……」
そこには裸体のイオンが。
ルークは思う。
あそこで昨日の出来事(自分は覚えてないが)を思い出してキャッと顔を赤らめているイオンは本当に女なんだ。
「はははははははは」
頬を抓ったら痛みが帰ってきた。
自然と笑みが込みあがってくる。
そうだ、これは現実なんだ。
「ルーク、これからボクのマスターとして……一緒に居てくれますか?」
「……ああ、約束する」
俺とイオンは、強い絆で繋がったのだ。
解けることの無い、強い強い絆で。
おわれ
酔いの勢いで書きました。
イオンの声優ネタです。
そして訳のわからないオチ。
作品のクオリティについては……何も言わないでください。