しかし、男は何故か自分の行動に戸惑った様子を見せ・・・
「ん?!」
自分が宙を横っ飛びになっている事に気づき、落ちていった。
ぱしゃっぱしゃっどぼん!
「ごほっ・・・な、何だ一体」
長い滞空時間の後、水面を跳ねながら池?に落ちた男は、何とか近くの陸地に上がり息を吐いた。
「ここは一体・・・ってか、どうして俺は?!」
驚きの声をあげた男は、すぐさま近くの草を掴み取り
「・・・草の匂いだ」
匂いをかぎ、そのまま口に運んだ。
「苦い」
そりゃそうだ。
「五感が、治ってる・・・!」
そう言うと、男は涙を流し喜びを表したが
「・・・今さら治っても・・・」
さっきまで死ぬ気だった男だ。
その思考はネガティブに沈んでいく。
「死のう・・・・俺は死ぬ運命だ・・・」
腰に差してあった刀を抜き取り、自分の首に押し当て力を込めようとするが、
首の皮一枚切れた所で刀を止める。
「運命・・・? 運命なら、何故俺は今生きていてココにいるんだ?」
男は困惑の表情を浮かべ、ゆっくりと刀を下ろす。
「俺が、こうして生きているのもまた運命だと言うのか・・・?」
そう呟くと、男は冷たく笑い、
「アレだけの罪を犯した・・・アレだけの人を殺した俺を・・・まだ生かすというのか!」
「なら生きてやる! 運命と言う物がどのようなものか分からないが、俺を生かした意味、それを知るために!」
とりあえず、男は生きる事にしたようだ。
刀を納め、近くにあった石の椅子に腰掛け、バイザーを着けたまま、水を吸ったマントを一生懸命絞る。
なんとも不気味な光景だ。
絞り終えるとマントを日当たりのいい場所に干し、何を思ったか急に顔を赤らめる。
「さっきの台詞、妙に熱血入っていたなぁ・・・俺も変わってないって事か」
どうやらさっきの台詞に恥ずかしさを覚えたらしい。
で、自分もその横で寝転がる。
男の目に映るのは澄みきった青空で、とても陽気の良い日だった。
全身黒の服装なのだから、脱ぐより丸ごと干す方が早いと思ったのだろう。
が、水も滴る上から下まで真っ黒な男が寝転がる様子は、もの凄い不気味な光景だ
数分が経ち、
がさがさがさ・・・
「・・・ぁ・・・です!せ・・・」
「ん?!」
何者かが近づいてくる気配に、男はバッと起き上がり警戒する。
「くそっ・・・」
足音や声の数から大人数だろうか、男は焦ったように声をあげた。
「まだ服は乾いてないって言うのに!」
・・・焦るポイントはそこなのか?!
第一話
『やって来た黒いの』
〜 Who are you? 〜
林の中を駆け抜ける集団がいる。
「本当に召喚術の光だったの?!」
「「はいっ」」
その中の赤い髪の女性が、二人の金髪の少女に聞いた。
「・・・見間違いとかじゃないのか?」
筋肉男が尋ねるが、
「そんな筈ありませんっ」
「しかも、あの光は異常だったわ!」
「異常、ですか?」
今度は忍者スタイルの男が問う。
「そう。 召喚術使用時に現れる光、普通なら近くにいる人が眩しいと感じるぐらいだけど」
「私達が見たのは、それを遥かに上回る光量でした!」
走りながらなので、少々必死になりながら互い互いに答える少女達。
「あぁ、その光ならラトリクスからも見えたわ。 確かにあれは異常だったわ」
メガネを掛けた女性も同意しながら、最後に「喚起の門からね」と付け加える。
「う〜、見た人が3人もいるんだから・・・とりあえず見に行ってさっさと帰りましょう」
最初に話し掛けられた女性が、どこか間の抜けた声で皆に言い一人突っ走っていった。
「「あぁ待ってくださいっ、先生っ」」
それを追いかけ、少女らもダッシュする。
他の仲間達はいつもの事だと、ため息をついた後速度を上げていくのであった。
「特に変わった事は、無いですね」
喚起の門の前にたどり着いた一同は、周辺を捜索するが召喚されたらしき物は見当たらなかった。
が、代わりに居たのは、
「お前らも来たか」 「・・・・」
全身鎧の人と、獣人。
「ヤッファさん。 それにファルゼンさんも!」
「一体何が起こったんだ? 突然、喚起の門が動き出した様だが・・・」
「それが、我々にもわかっていないのです。
ただ喚起の門が普段とは違い、遠方から確認できるほどの光を放ったので、何か異変が起きているのではと・・」
ヤッファの質問に、角の生えた忍者・キュウマが答える。
「・・・タシカニ、ナニカ召喚サレタヨウダガ」
「一体何が・・・?」
喚起の門からは得体の知れない何かが出てくることは、可能性としてはある。
というか、よくある。
一同はそれらからの襲撃に気をつけながら、辺りを調べるが・・・
「・・・駄目だ、何もねぇ」
筋肉質の男が、ダルそうに告げる。
「う〜ん・・・結局、何も出てないのかな?」
赤い髪の女が頭を捻りながら呟くが、
「それは無い。 アレが動いた以上、絶対に何かが来ている筈だ」
ヤッファがそれを強く否定する。
「でも、ここにはいないみたいです・・・ね。 ん?」
「どうしたアティ?」
「いえちょっと聞きたいんですけど、
喚起の門から召喚された時って召喚されたものはどこに現れるんですか?」
「大抵はそこの台座にだが、ごく稀に空に撃ちだされる・・・! そうか!」
アティの疑問に答えていたヤッファは、ある事に気づく。
「ど、どういうことですの?」
急に声を上げたヤッファに驚きの声を上げるベルフラウ。
「ここで見つからないって事は、召喚されたナニかはどこか遠くに飛ばされた可能性がある!」
「・・・集落にとかですか!?」
「可能性はある・・・っ」
苦虫を噛み潰した様に言うヤッファ。
「ここにいても仕方ありません、急ぎましょう!」
「どこにですか?!」
「きゅむっ!」
走り出そうとするアティの首筋を掴んで止めるヤード。
「ごほっ、どこにって・・・とにかく急がないと」
「ここはみんな分散していくしかねぇ、さっさと「待ってください!」 ぁ?」
ヤッファの言葉を遮り、キュウマは付いて来てくださいと告げると一人走り出す。
「おい!」
急な行動に、皆が戸惑うが仕方なく後を付いて行きながら問う。
「何か当てがあるのか!?」
「ええ、先ほど子供達が湖の方で何かデカイ音がなったから見に行くと言っていたことを思い出したんです!」
「・・・まさかそこに?!」
「一番可能性が高いです」
キュウマの言葉に、確信を覚えた皆は速度を上げようとするが、
ざざざざ
「大変だよ! 集会場に変なのが!!」
草むらを掻き分けるように現れた集落の子供達が、怯えた様子で伝えてくる。
「やはり・・・君達は集落に戻っていなさい」
「う、うん」
ざざ
再び草むらの中に消えていった子供達を背に、アティ達は立ち止まり
この先にある筈の泉の集会場の方を見つめる。
子供達をあそこまで怯えさせるものとは何かと、心中に思いながら。
「そろそろです。皆さん、気をつけてください」
キュウマが辺りを窺いながら皆に告げる。
「作戦は?」
「一斉に飛び出し、散開し包囲ね」
「いきなり攻撃とかしないでくださいよ〜。 特にソノラとカイルさん」
作戦の内容をスカーレルが簡単に伝えると、アティは後ろの二人に釘をさす。
「わ、わかってるわよ」 「お、おぅ」
「せ、先生」 「・・・私達はどうするんですの?」
アティのマントの裾を掴んでいた二人は、不安そうに彼女の顔を見る。
「そう・・・ね。 アリーゼ・ベルは後方でいつでも逃げ出せるように」
「!!・・・・イクゾ」
言葉が終わると同時に・・・
ババババッ
林から飛び出し、泉の集会場を取り囲んだ。
「・・・・・」
「・・・え?」
「うわっ」
誰かが思わず声を上げてしまう。
予想していたモノと大分形状は違うが、物凄い変な黒いのがいたからである。
そこにいたのは全身真っ黒な服、変な物で目を隠している男であった。
・・・どことなく集団を威嚇しているように見える。
時折荒い息を吐いたり、身震いするなど謎の動きを見せる男に
思わず一歩引いてしまった集団の思考は一つに纏め上げられていた。
「「「 (か、関わりたくねぇ!! 逃げたい!) 」」」
そういう訳にもいかないので、アティ率いる集団は謎の黒いのに対し、違う意味で緊張するのであった。
――集いの泉――
島の中央に位置するこの泉。
そのほとりに立てられた、岩で出来た休憩場らしき建物。
そこは、島の住民――主に護人(もりびと)――の、集会場として使われており、
そして今、アティ一団と黒衣の男が対峙していた。
微妙な空気が流れ、シンとするこの場で先に口を開いたのは黒衣の男だった。
「っくし!何者だ・・・貴様ら(風邪引いたか?)」
クシャミを堪え、時折自分の後ろを気にする素振を見せながら男は集団に対し、威嚇しながら言った。
「あ、私達――「おいおい、人の名を聞く前に自分を名を名乗れって教えられなかったのか?」
赤い髪の女性―アティが答えようとすると、筋肉質の男が問う。
「そうよそうよ、兄貴の言う通りよ!」
西部劇に出てきそうなテンガロンハットを背中に掛けた少女が、男に続く。
が、
「何故俺から名乗らなければならない?」
少し怒った様子で、黒男は答えた。
「なっ?! 野郎!」 「むっか〜!」
その台詞にカチンと来た二人はそろって声を上げ、
「こっちが優しく出てたらいい気になりやがって!」
単細胞(黒服からの感想)筋肉男が黒男に向かって突っ込んでいき、拳を振り上げる。
「あっ止めなさい! カイル!」
カマっぽい男が止めようとするが、聞く耳もたないカイルの拳は黒男の顔面を捉えた!・・・かの様に見えた。
「なっ?!」
カイルの拳は寸前でかわされ、
すり抜けていった腕を掴んだ黒男は相手の動きを利用し、背負い投げに似た投げでカイルを後方に投げ飛ばす。
「うおぉぉ?!」
ボッチャ〜ン!
投げられたカイルの体は、物凄い勢いで宙を飛び、カイルは湖に落ちていった。
「兄貴っ!」
少女の悲痛な言葉が飛ぶ中、黒男は集団の方に向き直り、さらに威嚇する様に視線を厳しくする。
もっとも、バイザーに隠れてそんなことは相手には分からないんだが。
「貴様ら、何故俺の(服を乾かしを)邪魔する!」
「「「「「「じゃ、邪魔って・・・一体何を」」」」」」」
恨めしい視線を飛ばす少女を除く集団全員が口を揃えて言った。
「そんなに邪魔がしたいのか!(服濡れてると気持ち悪いんだよ!!)」
「「「え〜っと〜」」」
何故か必死な黒男に、返す言葉が見つからない集団。(いや、何か言い返せよ)
「やっぱり! アンタ、帝国の奴らね! 今度は何を企んでいるって言うの?!」
何も言い返さない仲間達を無視・・・ってか、自分の考えで突っ走り中の少女は、彼女の武器であろうクナイを構える。
「むっ! 何の事を言っている?」
それを警戒し、黒男も構える。
「むむ〜、吐かないつもりね! いいわ、ぐちぐち口で言うのもメンドクサイからトットとケリつけちゃう!
兄貴の仇〜!」
「俺はまだ死んでないぞぉ」
少女の台詞に、湖から這い上がってきた男がボソッと言うが、
少女はそれを無視してクナイを投擲する。
「ソノラ止めっ・・・!」
ハッとして今の現状に気づいたメガネの女性が止めようとするが、
既にクナイは彼女の手を離れて黒男へと向かっていた。
「甘い!」
ざくっ びり
「・・・びり?」
クナイを避けた黒男は、すぐさま反撃にでようとするが背後から聞こえた嫌〜な音に、
恐る恐る振り向く。
「あぁぁぁぁぁ!!?」
「な、何なのよ・・・」
後ろを振り向き急に声を上げた男に、引くソノラ。
「何て事を・・・・」
彼は、その場にうずくまると何かを拾い上げ、集団のほうを振り向き
「よくも・・・よくも俺の大切なマントを!!」
そう言って振り向いた男の手には、クナイによって破けたマントが!!
それを見て唖然とする集団。
「あんた達なんなんだ一体?! 人が服乾かそうとしてるのを邪魔しやがって」
一旦言葉を止めるが、マントの破れた箇所を見せながら言葉を続ける。
「終いには、マントを破きやがって!!」
ちょっと涙目になっているのかもしれない。
「この罪、幾ら女の子だからって許さん・・・」
黒男はそういきり立つと、一歩前進。
それに合わせ集団は一歩後退。
「ま まぁ、待つでござるよっ」
「そ そうだぜ、誰にでも間違いってのが・・・」
「間違いで許されるんだったら、警察はいらん!!!」
さらに一歩前進。
「マント位でそんなに怒らなくても・・・ねぇ?(汗」
「フゥゥゥゥ・・・」
「あんた等の装飾品・・・いや着ているお気に入りの服、全部引っぺがして棄ててやろうか?」
彼の言葉にフルフルと首を横に振る一同。
またまた一歩、いや2歩前進。
「あわわわ・・・・」
身の危険を感じたソノラは、アティの背後に廻りマントにしがみ付いて震える。
盾にされたアティは少しビビリながらも、迫り来る黒男を睨みつける。
「ソノラに、何をするつもりですか!」
「(ユリカ?!・・・いや、違う)」
アティの出現に、一瞬過去の幻影を見る黒男。
だが、すぐにそれを振り払う。
「なに、その子の帽子を俺のマントと同じ目に合わせてやるだけだ」
そう言い、悲しそうにマントを見ると次にソノラの背中に掛けられたテンガロンハットを見てニヤッとする。
彼自身気づいていないだろうが、その笑みは自分を苦しめた仇敵に近い笑みであった。
「ひぃっ! こ、これだけは勘弁して!」
サッと帽子を胸の位置に抱きかかえ、プルプル震え出すソノラ。
「くくくっ、さぁ味わってもら――」
「ゆ、許してあげてください。 真っ黒さん!!」
異様なオーラを放ちながら手を伸ばす黒男の行く手を遮るアティ。
「ソノラにも悪気は無かったんです・・・」
「・・・・」
「最近、この島で不審な集団がいて・・・」
「そそうです。 みんなその人達に迷惑がかかってるんです」
「それで、ちょっと警戒してた時にあなたがここにいたの」
アティの言葉に続き、二人の少女が黒男に懇願する様に言う。
「・・・つまり、勘違いだったと?」
少女達の言葉を聞いた黒男は、顔をソノラに向けて問うとソノラは凄い勢いで首を縦に振る。
何時も強気な彼女が涙を目に浮かべり様子に、アティは表情を崩さずただ手を握ってあげた。
「・・・わかった」
少し考えた男は伸ばした手を戻しそう答え、今度は破けたマントを持った手を、ソノラに向ける。
「え?」
一瞬ビクッとして目を閉じたものの、恐る恐る目を開けてそのマントを見た後、
彼の顔を見上げるソノラ。
「君の帽子をどうにかするってのはよそう。
だが、代わりにこれを直してくれ。 それで帳消しだ」
「・・・うん」
それを受け取ったソノラは帽子を元の位置に戻し、マントを落としたりしないようにしっかりと胸に抱いて頷く。
「で、君たちは一体何者なんだ?」
さっきまでの覇気は何処にか、明るい声で問う黒男にびっくりする一同。
「・・・どうした?」
「い、いえ」
不思議そうに首を傾げる黒男だが、数秒後何かを思いついたかの様にポンっと手を叩くと、
その目元を隠す物――バイザーを外すと、
「そっか、名乗るときはこちらからかって言ってたな。
俺の名前は・・・アキト。 テンカワ アキトだ」
表れたのは人の良さそうな笑顔を浮かべる青年。
「「「・・・・・・」」」
先程までのギャップに、思わず口をあんぐり開けたまま静まり返る一同であった。
どうも、エフィンです。
これ書いている内に思ったことがあるんですよ。
「ストーリー覚えてねぇ(つ*`)」
プレイしたのが1年以上前ですから・・・orz
アキトがやって来たタイミングは自分にも不明です(え
とりあえず、9〜11話の間くらいでしょうかね・・・たぶん。
俺がストーリーを覚えていないので、ちとオリジナル要素が混じったりストーリーの順番が違う事が多々ありますが、
そこんとこ勘弁くださいませ。
では。