これは、復讐に走った一人の男の終末。
全てを終わらせたアキトは、ユーチャリスの艦長席に座ると血を吐いて咽る。
なんてことはない。
体を弄くられ、削られた命が尽きようとしているだけであった。
『マスター?!』
「そろそろ、ホントにやばいみたいだ。ダッシュ、ランダムジャンプ開始」
今まで助けてくれた友人の為にも、己自身又ユーチャリスもこの世界から消さなくてはならない。
それがわかっているからこそ、
ユーチャリス搭載AI、ダッシュは反論せず、命令を実行していく。
『……ボソンジャンプシーケンス立ち上げ。……ジャンプフィールド発生します。
遺跡への強制介入……成功、ジャンプフィールド暴走を確認。
ランダムジャンプまで残りおよそ30秒』
淡々と。しかしどこか悲しみの混じった声で報告するダッシュ。
「………だったな」
『マスター?』
「俺の、小さい頃の、夢を思い出したよ……」
意識が混濁しているのだろうか、その瞳はもはや何も映し出してはいない。
「旅がしたかった。冒険者になりたかったんだ……ははっ」
「誰も見た事無い場所へと……いつも夢見てた。 父さんと母さんは無理って言ってたけど、
俺は、なりたかった……行きたかった」
― なら、連れて行ってあげよう…… ―
「本当、か?」
『マスター?』
ダッシュの目からは、アキトが誰かと話すかのように見えていた。
― 我等の贖罪のため。そして、汝の…… ―
「行けるなら、どうでもいい」
― わかった ―
ユーチャリス本体が光り輝き、周りの空間が歪み始める。
『ランダム・ジャンプ開始』
全ての始まりの言葉を。
「……ジャンプ」
― さぁ、旅立て。テンカワ アキト。 お前の進む道を見せてみろ ―
次の瞬間、アキトを乗せたユーチャリスは世界から消えたのであった。
そして、これは旅立った男の始まりの話。
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