〜前回までのあらすじ〜


逆行によってアキトとラピスとユーリがやって来たのは過去の地球。
時代はテレビ本編の第一話より少し前の時期。逆行もので言うところの下準備の段階。
千差万別な様でやっている事は大体どこも同じだが、
アカツキとコネを作ってみたりブラックサレナの後継機を作ってみたり、
ハーレムを作ってみたり、まぁより快適なナデシコライフの設計。
憑依ものでない限り逆行先にはテレビ版の主人公であるところのパッとしなかった頃の天河アキト君がいたりするのでその場合は兄貴だったり他人のそら似だとすっとぼけだったりとしながら劇場版アキトが師匠になって木連式だか天河流だかの剣術やら柔術やら房中術やらを仕込んでテレビ版のスペックを底上げに入ったりと、
まぁ時間はとにかく有限ですよやれる事は全部やって悲劇はもう二度と繰り返したりするMONOKA!!とばかりに東奔西走するのであり、ご他聞に洩れずアキトもそんな無難な事をしようとしていた矢先の事であった。
所詮根本的に独創性に富んだ人間でもなければ天才的な先見の明に秀でいている訳でもなく、ましてや意識が取り分け高いかって言われたら痛い目見てケツ叩かれないと走り出せない一般市民であるところの天河アキトはふと冷静になって気付いた。
ラピスの柔肌に溺れて、肉欲の時間を過ごして、ピンク色の艶やかな髪を撫でながら気付いた。
賢者タイムになって気付いたのだ。
自分自身であろうとなかろうと、所詮は他所の人間。
過去の自分を助けてそれで一体どれ程の慰みになるのだろうかと思ってしまったのだ。
恋愛SLGの美少女を一心不乱に攻略していき、処女の癖に感度良好な愛のあるエッチを行い、
「この子…今日私を堕とす気だわ…私の子宮を自分のモノにするつもりなのね…このガンギマリセックスで…」等と月野イズム満載のエロCGコンプまでして、
エンディングで幸せなハグをかましている瞬間に初めて明らかになった主人公が涼しげなイケメンで決して自分の分身などではなく単なる他人のイチャラブの手伝いをしていたに過ぎなかったと気付いた時くらいの虚しさがアキトの胸を過ぎったのだ。

要約すればどうでも良くなった。

もっと有体に言ってしまえば、メンドくなったのだ。

ある意味で相思相愛だった北辰を文字通り叩き潰し、火星の後継者達を殺したりHDDの中身を個人情報付で晒し社会的に殺したりとワクワク復讐ライフを終えたアキトは限りなく本来のメンタルに近付いていた。


前回までのあらすじ終わり。












〜アキトとラピスと時々ユーリ〜


第4話 「ナデシコ、火星行ったってよ」











「ラピス…これからどうする?」

獣欲の赴くままにラピスの桃尻を貪っていた男とは思えぬアンニュイな表情を浮かべながらアキトは自分の胸に顔を寄せるラピスに囁きかける。
ラピスの自由にさせてやりたい親心で自分で決断するのがダルい本心を隠したアキトの問いに、汗ばんだ肌を冷ましていたラピスが疲労と充足感の滲んだ表情でアキトを見つめる。

『料理屋なんてどうでしょうか』

アキトの脱ぎ散らかした下着を鼻に当てながらユーリ(CV:花○香菜)はうっとりと呟いた。

『マスターは、ムッホッホッホホォー、元々、スンスン、料理人でいらっしゃいますし、クンクンクン、

昔取った杵柄とは言いませんが、レロレロレロ、復讐も終わった事ですし、ペロペロペロ、戦いから離れて

穏やかな暮らしを、オウフゥ、されるのも宜しいかと思います。

チュッパチュッパ、それに、んほぉぉぉーーー……うっ……………ふぅ………

……………………ふぅ……………壊し続けるより作り続ける人生の方が素晴らしいですよ?』



ところどころアキトの下着を嗅いだり吸ったり舐めたり吸って吐いたり口に含んだりしゃぶったり滾ったり食べたり賢者になったりしながらのユーリのとても建設的且つ前向きな言葉はアキトの胸を打った。
アキトはベッドの脇のテーブルに置いておいた拳銃手に取り迷うことなく全弾撃つと納得したように頷く。




「料理か……それも良いかもな…ラピス、君はどう思う?」

「アキトがそれで良いなら私もそれで良い。アキトと快適なセックスライフが送れるならどうでもいい。
大丈夫、店の売り上げが赤字でも株で十分な貯蓄はあるから」

「うん、ありがとうラピス。でもそれはちょっと俺がヒモみたいだから言葉を選んでくれると嬉しい」

「でも事実でしょう?」

「はい、刺さった。俺の柔らかなところに無垢な言葉が深々と突き刺さったよ今」


ユーチャリスを隠して、現在アキト達が暮らしているマンションの家賃も寝そべっているベッド等の家具の購入費も、ついでにアキトの服代も全てはラピスが株とアカツキの税金逃れの為の隠し口座から得たお金で賄われている。
この世界において現在のアキトは甲斐性のある女子中学生の美少女(変な日本語)のヒモという一つの理想形態、アルティメットフォーム、英霊なのである。
非常に羨ましい事この上ない立場であるが所詮人は己の手の中に握られたものの価値を正確に理解する事は出来ない悲しく哀れな存在。
どちらかというと働き者の部類であるアキトはラピスとの肉欲の日々に溺れはしても、働いたら負けという境地には到達していなかった。
ゆるやかにぬるま湯の中で腐っていく自分を見つめる時の背徳感の入り混じった快感の味をアキトは決して理解することが無いのだ。
未成熟な少女の桃の様な甘さは熟知していても!


「やっぱりアキトはラーメン屋にするの?」

「何だかんだで和洋中と作れるからな、定食屋で良いさ」

「アキトのチキンライス好き。きっと人気出るよ」

「そんなに繁盛しなくても良いけどな。気ままに穏やかにやっていければ」

「アキト…」

遠くを見つめるようなアキトの瞳に浮かぶ寂しげな影の理由をラピスはようく知っている。
知っているからこそ、ラピスは言葉ではなく態度で示す。
分厚い、鍛えられたアキトの胸板に頬を摺り寄せ、己の温もりを分け与える。
余りにも多くのものを無くしてきたアキト、しかし自分だけは決して離れない。
この温もりは確かに此処にあるのだと、雄弁な無言をもって伝える。
ラピスの意図がわかっているからこそ、アキトは柔らかく微笑むと頭を優しく撫でる。







『いいですね〜主人と看板娘二人だけで切り盛りする小さな町の定食屋。若いけれど腕の良い主人と世間ズレしていない看板娘達にお客は胃袋と心を掴れる訳ですね。

そして閉店後、食器の片づけをしている看板娘たる私にマスターが近付いてきてうなじに顔を埋めながら

「さぁ、今度はこっちを料理してやる番だ。何だ、こっちの春雨はすっかりトロトロの麻婆春雨じゃないか…」

と言って3次元殺法も真っ青に縦横無尽に調理する訳ですね』



弾痕を顔中に付けながらユーリが夢見るように頬を染める。

台無しだった。



『ダンコンってときめく響きですよね?』
「うるさいよ」


台無しだった。






やることを決めてからのアキトの行動は早かった。

ラピスが立地条件の良い場所を幾つかピックアップすると、現地に赴き自分自身の目で確認をする。

近隣の様子、商店街は活気があるか、ライバルになりそうな店の味の研究、大型チェーン店の移転の妨害、目の保養となるべき小中学校および高校の確認等である。
時間はいくらあっても足りないとは冒頭で述べた言葉であるが、まさに時間はいくらあっても瞬く間に過ぎて行く。
いわく付き物件を更に黒の王子時代の威圧感とラピスの収集した情報、ユーリの捏造した事実をもって殆どタダ同然、というよりも不動産業者から泣きながら粗品と共に譲渡された。


また、飲食店を経営するに当たってショバ代の要求があったが熱心な話し合いの末、ショバ代を取らないという懐の深いところを相手方が見せてくれたのはアキトにとってもラピスにとっても幸運な事であっただろう本当にブラックサレナって便利だ。
アキトの感覚機能についてはラピスの房中術とユーリが●mazonでポチッた漢方薬を色々と調合したものを服用する内に悪玉ナノマシンは全て排出され至って健康体に戻った。
デトックスって凄い。


余談ではあるが、草壁、北辰、山崎といった面々が偶然サウナで居合わせたところをナデシコの相転移砲の誤射によって消滅してしまったという木星と地球の今後の運命を分ける歴史的事件が生じ、それがアキト達が逆行したバタフライ効果によるものであったのだが、そんな事は遠い地球のアキト達にはまったく知ったこっちゃない事であった。


そうして、アキトとラピスとユーリの汗と涙と形容しがたい色々な汁の果てに念願の店が完成した。
嘗ての屋台ではない、完全な独立したお店である。


「いよいよ明日がオープンだね、アキト」

「ああ、やっと此処まで来れたよ」

『何を終わりのような事を仰っているんですか、マスター。やっと始まるんですよ』

「ふ…そうだったなユーリ」

「私も頑張るからね。注文覚える自信はあるし、お料理だってちゃんと運べるんだから」

「ああ、頼りにしてるよ看板娘」



――― 天河食堂 ―――

自分の正体を隠す気が全く無いその面白みもクソも無いネーミングが新たなるアキトの城の名。
時代に、世界に、運命に翻弄され続けてきた一人の男はようやく羽を休める場所を得た。
遺跡とかそういったややこしい伏線など一市民の知った話ではない。
冷たい鋼鉄の揺り篭を寝床に深く暗い星々の海を揺蕩い続けていた闇の王子は既にいない。
此処にいるのは、少しフレッシュ好きな性癖の好青年と桃色少女と股間に余分な装備のある美少女?に過ぎない。
何処にでもいる当たり前の小市民だ。
平凡で退屈で当たり前過ぎる幸福な人生を歩む一市民。
そして、それこそが彼の求め続けたもの。

本当の天河アキトの“普通の人生”は、今ようやく時を進める事が出来るのだ。







『私も頑張ってドジっ子メイドやりますからね。お客さんの股間に生クリーム零して、「はわわわッ!?ご主人様のとっても濃厚で甘いですぅ」って言ってやりますから』

「何がはわわわだ」










〜打ち切り風おわり的な気の向いた時に続けられる感じのアレ〜






〜キャラクター紹介〜


・天河アキト(25歳)

和洋中華幼女と幅広く料理のレパートリーをもつ最近町で評判の「天河食堂」の店主。
好きな事は料理を作ること。趣味はラピスを料理すること。
つけ麺ブームってどうかと思うと言う人をどうかと思っている。
座右の銘:「来いよアグネス、法なんて捨てて掛かって来い」



・天河ラピス(16歳)

天河食堂の看板娘。技の一号。スイーツ作りと情報操作、房中術を得意とする幼な妻。
年齢は+2歳サバを読んでいる。
最近の趣味は「最近来ないの」と言ってはアキトを焦らせる事。
最近の懸念は三ヶ月遅れている事。



・天河ユーリ(16歳)

天河食堂の看板娘。力の二号。情報捏造とマゾプレイを得意とする男の娘型AI。
趣味はアキトの下着の匂いを嗅ぐ事。
特技は匂いでアキトの下着の経過日数をあてる事。
外見的にはラピスと双璧をなす程の美少女。どれくらい美少女かというと、凄い美少女。



・逆行先のナデシコの面々の一部

ミナトさんは白鳥さんと結婚。
ジュン君はユキナといい感じに。
アキトはイネスさんとくんずほぐれつな仲に。これもバタフライ効果。



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