2202年7月某日
ネルガル・グループ傘下
ネルガル・ファースト・インスティテュート〜アンソロポス〜
幾多もの…俗に言う『スーパーコンピュータ』が並び、白衣をきた人々が行き交い、また活気すら感じられる…
ネルガルが人間開発センターから生み出されたホシノ・ルリの報告書から、別種の研究所として
『披験体との感情の協和』を主題に、研究員の中でも、人道的な行動が取れる常識派を集めているのである。
どこかの陰険くさい研究所とは違い、開放的かつ機能的であり、子供の発育を考慮しているこの研究所…
そんなところのとある一室から、物語はゆっくりと、だが超加速度的に始まりつつあった。
その、とある一室。
なんとも言えない、なんか調子が狂ってしまうとネルガル関連の研究員は一度入ってしまう開放的なこの研究所。
この一室もそれに漏れずに開放的である。そして、それはその部屋にいる少女の印象も+しているのだろう。
彼女…アメトリア・クウォーツは、ある手紙を前に悩んでいた。
いや、別に手紙の形式はどうってこともない。単なる知り合い…しかも家族同然であった一家の姉さんからの手紙だった。
だが…問題は手紙の内容であったのだ。アメちゃんにとっての問題は。
『アメちゃん〜カナお姉ちゃんはあえなくて悲しいよ〜〜(涙)
って、こんな前置きはいいかっ?あはは〜〜〜まあ、とりあえず、これはあくまでも『要望』ってことなんだけど
私が、今新地球連合の技術開発・研究の『フェアリー・ガーディアンズ』に所属していることは知っているよね?
あっ、これ一応特務機関だから、早々名前を公表されちゃうとお姉ちゃんも困っちゃうかな〜〜(汗
まあ、一応誰にも言わないで内緒にしておいてね♪ で、そこから新地球連合中央政府の要望で『マシンチャイルドで有能な人を集めてほしい』
っていう、まあ何女の子をいきなり集めるとか、外道ちゃんだな♪みたいなことをいわれたのね(笑
それで無視しても良かったんだけど、連合中央政府も四大マシンチャイルドと呼ばれるマシンチャイルドの事実を知っちゃったみたいで
存在が確認されていない、コード名『ラピス・ラズリ』、今では危険人物にまで格上げされた『ホシノ・ルリ』は使えないっていうのよ〜〜
まったく、彼女軍人なんだから、連合の権限をバシバシ使えって言いたかったけど、まあそれもなんだからね〜〜(笑
とにかく、そういうわけでアメちゃんにやってくれないかな〜〜っと思ってね♪
アメちゃんのために、ちゃんと最後の一人も軍人だから強権発動して、中央政府の方に引っ張るわよ〜〜♪
で、7月20日、そっちに迎えが行くからよろしく〜〜承諾なら呼びに来た人の指示に従って。嫌ならそのまま拒否してくれればいいわ〜〜』
最初、あまりの女らしい文字の書き方で、しかも読みづらいので、こういう方面は(別の方面では女の子丸出しなのだが)
機能性優先を考えていたアメトリアは…本気とかいてマジで破った
さすがにまずいと思った、お付の研究員が回収・翻訳して、今読んだのがそれである。
で、ちなみに今日は7月20日…
「うう〜〜〜!!こんな重要な案件なら普通郵送手紙じゃなくて、電子メールにしてよ〜〜!」
極度にデジタル化が進んでいるこの世界。安全性・利便性・更には手書き電子送信技術もあるのだから、まったくもって手紙など
昔のアンティークな感じを好む人か、それこそ広告輸送、更には政府間協議と行った重要な案件や
本当に電子技術よりも手紙の方が良いという事態以外にはまったく使われない。
もちろん、今の手紙は電子メールの方が良い事例というのはいうまでもない
とりあえず、出発の用意をその翻訳(笑)をした研究員とともにはじめる。
とりあえずかなりノリノリで、行く気はありありのようだ
というか、その研究員の「所長に出発に関して言わなくていいんですか?」という問いも無視している
相当、行きたいようである…というのも、彼女の初恋の相手なのだ。
その『四人目のマシンチャイルド』とやらは…まあ、それ以外にも理由を多々含んでいたりするのだが
とりあえず行く気がバリバリと言えるほどに、彼女は用意をスムーズかつ円滑に進めていった。むしろ、神業と言えるスピードで。
「ふう……これぐらいで良いかな?あっと、研究員Aさん?」
「ちょっ!私は名前なし?というか、今まで約一年以上付き合って名前覚えられていない?!」
相当ヒステリックに叫ぶ研究員A
もとい、アメトリア・クウォーツ担当ウツミ・マドカ(27歳独身)さん
彼女が救われる日が来るのは、あるいは今日なのか永遠来ないのか(汗)とりあえず、彼女にとってアメトリアの担当は
いきなり今日が最後になってしまったわけである。
それなりにアメトリアも親しみがあったが、あえてそう返すことで気にしないように見せた。
それぐらいには大人だ。だが同時に寂しいと思うぐらいには少女である。
「嘘ですよ…ウツミさん。いままでありがとう…」
「今までですか…とりあえず、荷物の整理を続けて、私から所長に話はつけますから。
そうそう、それとこの写真立てに写っているなんか甘えん坊将軍っていう感じのアメちゃんたちの写真はもらってお きますね♪」
「ちょっ!それは、私の大切な写真っ!」
いきなり、ウツミが取り出した写真立て。どうやら家族で行った場所の写真のようである。
ちなみにいうと桁数一桁と見える女の子と男の子に、さっきの手紙の主らしい10代後半の女性、更には後ろに30 代?の男女が写っていた。
「大丈夫。すでにコピー済みだから♪」
「ううぅ…そういうところ、そつがないっていわれている理由ですよ…ウツミさん。
まあ、とにかく返してもらいますっ!」
スピッっ!
本当に一瞬で…アメトリアは恐ろしいスピードでウツミから写真立てを取り返した。
どうでもいいが初速度を出すためにベッドが少しゆがんでいるように見えるのは、今出て行く予定のアメトリアから すればどうでもいいのだろう(汗
もちろん、ウツミが後でその所長にベッドがゆがんでいる件で怒られたのはいうまでもない
「お迎えにあがりました。アメトリア・クウォーツ様。」
黒服なんて、なんかお決まり…とアメトリアも、またウツミも用意が完了し、外で待とうとしたときに突然現れた男にそんな印象を持つ
「黒服…お、お決まり?」
「ウツミさん、それは言ってはいけないで…あわわ〜〜わ、私はそんなこと思っていませんからね♪」
あからさまにわかるようなごまかしをするアメと、それをからかうウツミ。なんかコンビかと言いたくなるが、とにかく…
黒服さんとしては相当困るシチュエーションである
「あっ、さすがに困りますよね…あはは…それじゃあ、行ってきます。ウツミさん♪」
「うん。行ってらっしゃい♪」
それは、なんとも学校に行く子供を送る母親、またはピクニックに行く少女にすら見えた…
どちらにしても、まるですぐに帰ってくるかのような…だが、実際に帰ってくるのは相当後の話となる……
Story that NADESICO is new
〜プロローグ きょ、兄妹ですかっ!?〜
機動戦艦ナデシコC…最高の人材を用意した連合軍中最高の戦艦とも
ギャグコメ満載で、笑いで敵を陥れるとも言われている謎の多き戦艦…というのも
かつてのナデシコA時代、戦闘で機動兵器に乗っていた女性が放った寒すぎるギャグで木蓮一個師団が事 実上停止した騒動から
木蓮軍からは『南極のナデシコ』という変な異名が裏で流れているとまで言われている(笑
ちなみに、当時のナデシコAオペレータで現ナデシコC艦長のホシノ・ルリはそれを公式には認めていないものの
『イズミさんのギャグは、プロスさんが兵器にできないと言っていました』と言っているので、話されない事実として公認されている
現代では『漫才をするオペレータ』というあだ名が一部では流行しつつある
と、いうのも………
「あっ、ハーリー君。受けを狙ったサルみたいにウホウホとメール送信を……」
『その冗談と取りきれない言葉、やめてください(涙)しかも相手先連合軍総司令部ですし!』
心からの訴えであった。
彼、マキビ・ハリ。今年12歳。というかすでに12歳。ナデシコでルリに淡い恋心を抱いているのだが…
現在、なんか無性に泣きたくなったらしい
まあ、連合軍本部から『マキビ・ハリの人事異動命令』が来たのが一週間前。
それからというもの、ルリはさっきから『連合本部への嫌がらせ』を幾度となく試みているようである(笑
ちなみに、アキトが見つからないという理由でルリは同様のことを定期的に統合軍本部にもやってるのは秘密だ
もちろん、ルリのそんな『突っ込み度満載の裏事実』を知っているのは少なく、身内や付き合いの深い人に限られ る…
ハーリーもその一人だが、まさか地球連合に攻撃するウイルスの約半数が目の前の電子の妖精によって作られていると
知ったときの落胆振りには相当なものがあった(笑
「まったく、連合軍本部の左遷人事ですかっ!ハーリー君は漫才師としての素質がありますっ!」
「いや、それは無茶苦茶ですよ、艦長……というか……さすがのボクも怒りますよ?」
ハーリーは半分本気だった。というか本気と書いてマジと…
約一週間前、地球で同じようなことをしている少女がいるとはまったく知らないのだが
「じょ、冗談ですよ。ハーリー君。とりあえずサクラ准尉、着水してヨコスカ連合軍ドックにいれてください。」
さすがに、ハーリーが怒るが怖いのか、それともほかに何があるのだろうか…とりあえずほかの事に行動を変えることに
したようである。もっとも、ハーリーがそれで納得できるかは後として。
東京湾にあるヨコスカ地球連合軍ドックにつくように命令を受けていたナデシコCであった。
それもハーリーをルリ疑惑『左遷人事』と言われている人事異動のためと、某親バカがルリに会いたいと思っているからである。
汚水塗れる東京湾、というのも昔の話で完璧に近い処理施設によってある程度回復している海に着水をするナデシコ…
「艦長も、もう少しその危険な台詞等を抑えてくださいよ…」
「初代ナデシコにいれば、嫌でもこうなりますよ?」
ルリにしてそう言わせる初代ナデシコ〜ナデシコA〜……あのメンバーならありえると思うハーリー、そう思ってしまう辺りが
いいことなのか、はたまた悪いことなのか。
「なんか、その台詞に底知れぬ意味合いがこもっている感じがしてならないですが…」
「気にしたら負けです。というか惨敗です。それ以前に全滅です。」
「なにわけのわからないこと言い出すんですか、艦長…」
ちょっと、艦長の性格が無口→チラッと見せる女の子らしさ→ちょっとぴり大人のヒロイン質と変わってギャグ突っ込み質に なっているような
そんな気がしないでもないハーリー。というか、ナデシコ下部艦橋一同。
ただし、ちゃんと仕事を常人以上にこなすのは、凄いというか『才能の無駄遣い』…とルリは微妙に下で何かしら考えてる部下を見つつ思った。
別に好きでこんなことしているわけではなく、ただ『恥ずかしい』からだ。
そう、まさか冷静沈着で万人から『電子の妖精』なんて呼ばれているルリが『ハーリー君がいないと悲しい』とか
早々言えるものじゃないのだ。というか艦長として、一軍人である彼女は言ってはいけない言葉なのだ。
…もっとも、照れ隠しの方法が思いっきり間違っているのはご愛嬌である
「軽巡洋艦『キリアサ』本艦の護衛に入りました。艦長、ナデシコCは第14番ドックに入港せよ、との指示です。」
「ふう……やっぱり悲しいものはかなしいんです…」
上部艦橋のオペレータ席(艦長席)で小さく、まるでルリの恥ずかしさに反比例したかのような小声…
それは、下にいたハーリー…というか、一応副長補佐と言っても実質艦長補佐のハーリーの耳に聞き取れなかったが耳には入ってきた。
ある種、恐ろしい聞き耳だ。
「何か言いました?艦長?」
「いっ、いえっ!なにもっ!とりあえず、マキビ中尉。そのまま艦を接舷してくださいっ!」
慌てふためく様子に周りのクルーは半分笑い、半分艦長の真意を掴んだことを確信した。
慌てていて、ついハーリーを『マキビ中尉』と堅苦しい呼び方をした時点で七割がたのクルーには前後の事情から判別できた。
そうなると、理由はわかったし面倒ごとは拒否拒否と言いたいのか、クルーはゆっくりとだがちゃっかりと退避していった
「一応、海上ドックですから、ドックに固定するだけで良いんですけど…」
そんななか、意味がさっぱりわからなかったサクラ准尉の声が響くのだが、それはまたの話
時として、人には幸福な人もいれば不幸な人間もいる。
ちなみにハーリーは自ら後者だと思っている(笑)というのも、今までの人生のうち、確かにルリに会えた意味でナ デシコは幸福だったかもしれないが
同時に今までの家族と別れた、と言う意味では不幸になりえるからだ。
そこに甘い切ない恋物語があった、なんていうことはまったくない。というかそれでは、SFというよりも恋愛のカテゴリーに含まれるだろう(ぁ
もっとも、それを幸福な人間の自慢だと言われればそれまでである
ただ、そういう考えは個人の自由であるし、ハーリーを見る元ナデシコクルー大半の意見は『ジュン君二代目』的なものだった
(と言っても、ジュン君の数倍多感な少年だったので、支援者はいる 例ハルカ・ミナト)
ので、不幸といえば、確かに初恋の相手に振り向いてもらえなかったハーリーは不幸なのだろう。世間一般的には。
ハーリーは荷物等をそのままにしておくことにした。
というのも、別に持ち出すほどのものなんて、入れて見たらバックに収まってしまったのだ
なんでかなぁ、と考えてみること30分の結果は『生活必需品は移動先で買えばいいし、必要なものの大半が電子的なものだから』
と出たときには、あはは…と、意外と自分って機能性重視だよね…と思ってしまう始末だった。
彼の姉が機能性重視とは無縁の方であったためか、反対に彼は手間よりもスピード等の機能性を重視した結果であるのだから
まあ、仕方ないかぁ……と内心、幼年時代の性格構成期のよかったのか、悪かったのかと思う時期を思いつつ、自室を出た。
転任命令…人事異動の一種であり、その命令は命令が下された本人を必要とする場合に、必要とする側が
軍事司令部に要請する形のものだが、今回のは、ほぼ強制的なものを持っていた。
本来、転任というだけあって、軍内部の別部署に移動される場合が大半なのだが、今回の命令は少し違ったからだ。
そこが、ルリが一番心配していたところでもある。
「にしても『新地球連合中央政府』の要望っていうのは何なんだろう…というか、この要請書の署名から見て、姉さんなのは間違えないから
ルリさん…ううん、艦長の心配も『問題ありません』って言ったんだけど…」
姉が連合のとある組織に組している、その事実をハーリーは知っていたし
姉の恐ろしい可愛いもの主義からして、可愛い子ばかり集めているのも大体予測している。
ちなみにその姉がもっと大切にしている可愛いものが自分であるから、ある種の安心と別の不安があるのは内 緒である
既にあの冒頭の漫才(笑)の前に、艦のクルー全員に別れについて、きめ細かいハーリーらしく挨拶をしていたので
ナデシコCが入港し、停止した後の事務仕事も終えているため、問題なくナデシコCを降り始めるために出口に向かって歩き始めた。
ナデシコでの出来事を思い出しつつ歩いていると、目の前に美女…もとい、今でも現役の美少女であるホシノ・ルリ…艦長が現れた。
なんか嬉しいような、悲しいような…
初恋の相手ではあるものの、ハーリーはこの1年間でルリの思い人がテンカワ・アキトという人であることを十二分に理解していた。
ルリが好きな自分…だけど、その人には別の思い人がいる…
それを理解できたからこそ、この一年は憂鬱してゆっくりとだが、今までと違った時間をすごしてきたのだ…
……まあ、多少は、良い場面がなかったわけではない
もっと言えば、ルリのミニスカのポロリな場面は多数あったと記録しておこう
「…行ってきます、艦長。」
「もうあなたの艦長じゃないですよ。というよりも、あなたは私のことをほとんど名前で呼んでくれませんでしたね。
ちなみにそれとなく脅された覚えは数度ありますが。」
「なんか、一応全年齢対象ですから、そう言ったちょっと方向性のわからない発言するのやめましょうよ、かんちよ…いえルリさん。」
どことなく作者の意見を代弁するハーリーである。ある種、すごい子なのかもしれない。
突っ込みに大して余裕で笑っていられるルリも、ルリだが、こちらはわざとボケていたようである。温かみのある笑いであった。
「嘘ですよ。私が間違った判断をしようとしていたとき、あなたはいつも止めてくれましたね…と言おうと思ったんですけど
ちょっと、ウケの方に走ったようですね。私が。」
「まあ、いいんじゃないですか。そっちの方が場が盛り上がるかもしれませんよ。ただし、誤解されなければですけ ど。」
そうですね…、そうですよ…、とルリとハーリーは互いに同じ言葉を何度か言い争った。
数年前、どこかの誰かさんと誰かさんが同じようなことを戦艦内でしていたような気がしたルリではあったが
記憶は美化されていたほうが良いというのがルリの心境なので、あえて思い出す気など、全くなかった。
『ヘックシュンッッッ!!(地球のとあるアフレコ現場の女の子役を演じているカリスマ声優さんより)』
「とりあえず…帰ってくるのを待っていますよ、ハーリー君。」
ちょっぴり大人な少女(?)のルリだけに、子供のような態度で行ってほしくないとは言わない。ただ大人のように突き落とすつもりもない。
ただ、彼女は、かつての自分がそうだったように『帰る場所だけはある』ことを彼に教えた。
自分自身も、アキトとユリカと死別した(ちょっと!ユリカもアキトも死んでいませんっ!ルリちゃんプンプン!by軍令部の天才仕官さんより)
ときに始めて知ったその場所…ナデシコを。
「まあ……どことなく、連合政府に知り合いがいるので大丈夫だと思いますけど…」
再びあの姉を思い出しつつ、ハーリーはルリに心配させまいと再度釘を刺す…と言っては変だが押しておいた。
と、ルリはさらにハーリーに近づいてくると手に持っていた小さな箱…らしきものをハーリーの前に差し出した。
別に、さっきのノリで一瞬『C4?』なんてハーリーが思ったのは内緒だ。
だが、200年ほど前のアメリカのプラスチック爆弾を送るアンティーク・マニアでもルリはないのだが
というか、さすがに退艦するときに渡すものでは決してない。だが、ここ一年でハーリーはルリにそんな意識を持っているのだから
人の意識と言うものは本当に恐ろしいものである
「そうですか…、一応プレゼントです。ちなみにC3でもなければC4でもなく、単なるラピス・ラズリの宝石ですよ?」
完全にハーリーの思っていたことはバレバレであったようだ
うっ…と心の中で一瞬引いてしまうハーリーだったが、まあここは形式上引けない場面なので「ありがとうございます」と言うと
そのプレゼントを受け取っておく……ただし、ちゃんと空ける前に調査は必要だろうと思っていたが
「あっ、ボクも…っと…」
まあ、これをもらえたことに内心猛烈にうれしいハーリーではあったが、ここは落ち着いて自分が渡そうと思っていたものを
ポケットから取り出す。用意がルリにだけ周到なのは未だに好きな心は変わらずなのか…
「『ブルー・クリスタル』…本来『クリスタル(水晶)』の色つきは別名で呼ばれるんですが
これは人工的に青色をいれて作り出した宝石なので、あえてブルー・クリスタルと呼んでいるそうです…『破璃』っていうボクの名前は
そもそも『水晶・ガラス』を意味しているんです。だから…えっと……艦長、持っていてください。」
「ハーリー君………」
ゆっくりと二人はそれぞれのプレゼントを交換した。だが、近づいた二人の距離が縮まることはなく、むしろその距離は
少しずつ狭まっていく…二人はそれを意識しているのか、それともしていないのか…
甘い空気とともにまるで何かに酔うようなそんな感じの空気が周囲に充満していた…
そして二人は…
「私はルリであって、艦長じゃないっていっているんじゃないですか。」
「ううっっ…」
頭に一発ゴツン、とハーリーはされるのであった(笑)
「だけど、ありがとう、ハーリー君。行ってらっしゃい。さっきも言いましたが待ってますからね。」
「ええ。ちなみに『待っている』ぐらいなら、『舞っていて』ください。チラリズムがあったら帰りますから」
『性格がサブロウタさん化しつつありますよ』と突っ込まれ、最後ゴツンとされた、正直痛かった
そんなことで、ナデシコCから退艦し、そのまま待っていたのか知らないが、専用の車に乗って目的地へと向かった。
火星の後継者の乱は、新地球連合にとっても不愉快かつ心配事をピンポイントで突かれたような事件であった。
わかりやすく言えば、とある企業がちょっとした欠陥が良く見ないとわからないから大丈夫かな、と思っていた矢先に
ライバル企業が、自分たちの欠陥を大々的に発表してしまったような感じである。
ここでいう欠陥とは…まあ、言わずと知れたボソンジャンプである。
これは危険性を大々的に持っていた。時間移動という概念からすれば、未来において過去を変えようとする人間が生まれる可能性すら
それを示唆していたのだ。
それゆえに、新地球連合はその管理に万全を期す必要性があったのだが…そんな心配事の矢先に
ボソンジャンプの危険性を訴える火星の後継者の乱が発生。木連中将草壁春樹の言葉は確かに事実として存在し
その危険性は、鎮圧した新地球連合も反乱の元であるがゆえに解決しなければいけない問題だったのだ。
結果、新地球連合中央政府はその対策としてのオーバーテクノロジー調査機関たる特務機関『フェアリー・ガーディアンズ』を設立しなければならなかっ た。
特務であり、非公式なのは、その危険性のすべてを国民に公開するには早すぎると考えたからだ。
だが、草壁春樹にせよ、現連合中央政府大統領にせよ、全人類すべての責任を負うのは苦労の絶えない仕事である。
というわけで…
地球 トウキョウシティ
新地球連合中央政府極東方面中央ビル
ハーリーは、ナデシコCがとまったヨコスカから約一時間。黒服宜しくなおじさんが運転していた車にてやっと到着した。
ちなみに、車の中で『黒服さんと世間話で盛り上がっていた』とは秘密である。
意外と黒服さんも大変なんだなぁ…労働待遇悪そうだけど、組合作れない職種なのは厳しいよね…と親身に感じてしまったのは
ハーリーが単なるお人よしなのか、はたまた何なのか…と考えてしまう。
とにかく『ありがとうな、坊主!…俺は組合を作るぜっ!』と熱血漢な黒服さんが降りて去り際にそういい残すと
なんだか、話すことはよかったのか悪かったのかと思ってしまうハーリーである。
「ふぅ…とりあえずとうちゃ……」
プニュ♪
すごい擬音だ…というか、その音ともにきた絶妙な感触に、一瞬ハーリーは戸惑った。というか、何かに押されていた
だが、そのすぐ後にはいったい何が起きたかを理解した。その心地よい感触というのは……
「ハーリー〜〜おっかえり〜〜〜♪」
「……って、ここは本部ビル前で外ですっ!というか自分の家はここじゃないですっ!というか恥じるって言葉を知ってください姉さんっ!
いきなり抱きつかないでよっ!!」
…つまりは、だ。
現在、ハーリー疑惑心地よい感触というのは、実のところ彼の姉の胸部分に相当する
同時に抱きついているのは、その姉であり、しかもここはまだ本部ビル前の外である
…抱きつかれて辺りはまったく見えないが、絶対に周りの人間からすれば『何事』と思われること多し、といったところか。
「もう、失礼ね。単なる家族のスキンシップじゃない。ああ、ここ数年でハーリーは変わってしまいました、お母様…」
「なにボケたような物言いしているんですか。というか抱きしめるのやめてくださいっ!」
全力で姉の拘束から脱出しようともがくハーリー。まあ、仕方ない的に姉は手を離して自由にさせてあげることにした。
第一に可愛いから、それもそれで可愛いからいいや♪と思ったようだ。
「ったく、マキビ・カナ…姉さんの名前で手紙が送られてきたときには何事かと思いましたよ。
しかも、戦艦に通常郵便でまわすとか、尋常じゃないですよ?まあ、偶々ルリさんが見つけたから良いものを・・・」
ちなみに、見つけたルリ本人は手紙を見つけたことに対して全然良くないのだが、ハーリーとしては仕事熱心なのか
そういう言葉で表現した。
「ふむ。やっぱり連合中央政府風の国家機密通常郵便は、基本的にやっぱり郵便か…
なんか専用ヘリコプターや専用シャトルで運ぶとか想像していたんだけどね〜〜」
「それ、あからさまに重要機密だとバラしている行動だと思いません?」
「思うけどね♪」
思いっきり健やかな顔で返す姉ハーリーのことカナ。とても清々しい顔だった。
というか、ハーリーは姉にはめられたと思った。自分に突っ込ませたところがすごくはめられた気になった。
「まあ、こういったボケツッコミはいいんだけど……あら、来たようね。」
姉が見ていた方向へハーリーも視点を動かした。
黒服さんがしっかりと護衛している車が止まった。ほかにも呼ばれている人間がいたのかな?
ボク以外にも呼び出しているとしたら、いったい何が…とちょっと深く考えているも、束の間であった。
むしろ、それを考えている間だけ瞬間的な反応が鈍った。
車のドアが開いて、ものすごいスピードで一人の人間が走ってきたのにもかかわらず反応は致命的に遅れたのである。
走ってくる少女は、カナとハーリーめがけて走っていた…そう……
「ハリお兄ちゃん〜〜カナお姉さん〜見つけた〜〜♪」
「ア、アメっ!」
そのころ、ネルガル・ファースト・インスティテュート〜アンソロポス 〜
アメトリア・クウォーツが持っていた写真…
子供のころのハーリーとカナ、そしてアメが写っている写真を得ることに成功したアメトリア・クオゥーツ担当ウツミ・マドカは
ゆっくりと、その事実を知らずにただ、アメとの思い出としてそれのコピー印刷を開始し始めていたのであった…
あとがき
本来、これの基としている(現在は別作品扱いしていますが、時期に基の新たなるナデシコ物語は消失させます)小説はシリアスでした。
ただ、シリアスで設定に凝りすぎた内容に、さらに一度方向転進を加えたために無茶苦茶な話になってしまい
続きを書くことが難しくなったので、キャラクター設定だけを引き継いで再編しなおすことにしたわけです
すみません、どうでもよかったですね。グリフォンです。
ギャグ三人称をプロローグは重視していますが、それはルリとハーリーの別れとかをごまかすために使ったギミックです(笑
よって、数はこれから減りますし、一人称の予定です…もっともなくなることはないですが(ぁ
シリアス転じてギャグとなす…ただし、むしろ感じ的にはラブコメっぽいギャグにしておきたいものです…
今回、四大マシンチャイルドとしたのは、もちろん『ホシノ・ルリ』『ラピス・ラズリ』『マキビ・ハリ』『アメトリア・クウォーツ』の四人を指します
なんか、アキトやルリとか、当たり前なキャラを出す必要性無いな〜〜と思い
今回はハーリーとオリキャラのアメトリア・クウォーツが主人公クラスのキャラです。で、ナデシコらしさを出す予定です
次回予告だけするとすれば、次回はアメトリアのハーリー『お兄ちゃん』発言から話をまわさないと(汗)
まあ『お兄ちゃん』だったからこそ、プロローグは『きょっ、兄妹ですかっ!?』にしてみたわけです…
次回をご期待〜してくれるとうれしいです。