????年??月

ファウンデーション級大型移民戦艦 六番艦『ウルティマ』

第一工廠付き 高級幹部監査室

 

 

 

建造者疑惑『星への道筋となりえる』といわれている船だが、そんな高い理想とは裏腹に改装によって戦艦としての能力を寄与されている…

というのは、人間って愚かよね〜〜と、未来の人類が言うにきっと違いない。

 

しかも、そんな兵器を民間の企業が所有しており、護衛艦艇100隻を従える大戦力だなんて…

それと同等のものが六番艦だけにほかにも多数あるなんて、ある種信じられないものがあった。

 

「会長。一番艦、二番艦共々『完全自立行動・艦統合統一管制人工思考AI』の搭載が完了し、現在は最終点検中です…

予定通り、点検終了しだい二番艦は所定のポイントに曳航をしますが……よろしいですか?」

 

監査室から見える第一工廠…大型戦艦用ドックには二隻の400mクラス大型戦艦が二隻停止していた。

奇妙なことに、それはネルガルが建造したわけでもないのに『ナデシコ級』の形を模していた。

 

「そう…セレネ・ディアナ計画が、これでようやくできるわけね……セレネ・ディアナ・システムの成功こそがこれからの

恒星間戦争においてのアドバンテージとなりえる……量産できる『ソフトのマシンチャイルド』があれば私たちは……

メノウ、およびヒスイ補佐官を二番艦および連合政府に回しておけばいいでしょう…」

 

 

この後、二つの戦艦は姉妹艦の同型艦にもかかわらず、まったく違った運命を辿ることなるとも知らずに

ひとつは『戦争の女神』、ひとつは『戦争の悪魔』とも例えられる運命になるとは、このとき、誰も思わなかったのは

仕方ないことなのかもしれない……

 

 

 

 

 

Story that NADESICO is new 

〜第一話 ハーリー君はお兄ちゃんなんですね〜

 

 

 

 

 

 

新地球連合 極東方面地区

第145区画(日本・名古屋第三区) 404区画 マキビ邸

 

 

『お兄ちゃん』とか、この言葉って意外と世間一般では使われないとボクは思う

そりゃ、確かに形式上の兄と妹はいても、普通『お兄ちゃん』と呼ぶのは小学校低学年ぐらいまでだと思うし

間違っても、中学生になってまで…そう言わせ続けるというか、その妹自身言うのが恥ずかしくなるのが普通なのだ。

 

ただ、あらゆることにも例外ということはあるようで…

『温室暮し』という言葉を知っていると助かるのですが…今、ボクの横にいる義妹がつまりは温室暮らしの子供なわけです…

えっと、まどろっこしく遠巻きに言っちゃいましたね…つまりはですね…

 

 

「ねえねえ、お兄ちゃん。何か飲み物ほしい?コーヒー、紅茶、それとも緑茶?」

 

 

ボクの真横で、異様に密着している…ううぅぅ…なんでここまで密着してくるんだろうぅ…

妹こと、アメトリア・クウォーツ…アメが、何が楽しいのか思いっきりくっついてきて離れない

離れてほしいな、うん要望ぐらいの感じだけど、離れてくれませんか、程度には言ったつもりなんだけど

なぜか、ボクのその要望はまったく聞こえていないのか、それとも聞こえていて無視しているのか、さっきからこの調子。

 

 

なんで、新地球連合中央政府のところにいたのに、今、一応ボクの…ボクの家族の家にいるかと言うと…

姉さん疑惑

『今、大統領暇無いらしくて、明日なら時間を存分に空けるっていうし、読んだ理由も含めて説明するのは明日ってことで。

今日は久しぶりなんだから、家に帰って色々としていてくれる?父さんと母さんは帰らないけど、私は多分帰れる…という希望があるから(汗)』

とのこと。

にしても、まさか話す相手が連合政府大統領だなんて、なんか無茶苦茶な事件に巻き込まれたような気がする。

のに、ボクの妹はそんなこともなんとやらで、さっきからずっとこの調子で…どうすればいいんだろう(汗

 

 

「ううぅぅ……烏龍茶でいいよ。多分この家にあるコーヒーは物凄く濃い奴しかないし。ほかの紅茶や緑茶はないだろうし。」

 

「あっ、本当だぁ…わかった。それじゃあ烏龍茶ね。」


 

やっと離れてくれたアメが、台所に向かっていった…ふぅ…

だけど、やっぱりこの見慣れた家…もう二年以上帰ってきてなかったけど、やっぱり帰る場所があるっていいことなんだよね…

艦長は……ルリさんに帰る場所はあるのかな…

 

でも、やっぱり久しぶり…昔、父さんも母さんも研究で出かけていたときは、いつもボクとアメ、後は時々姉さんもいたけど

その三人でいることも多かったっけ…マシンチャイルドとしての訓練は最小限のこと以外しなかったし…

だから、ナデシコBに乗ったときには色々戸惑っていたし、応用ができなかったんだよね。ボク。

 

「はい。お兄ちゃん。烏龍茶。」

 

「うん。ありがとう。アメ。それにしても久しぶりだね……ボクがナデシコBに行ってから一ヵ月後だって?」

 

父さんの話だと、アメはボクがナデシコBに行ってから一ヵ月後にはネルガル本社の方の研究所に『研究員兼研究対象』として移動した

もっとも、研究対象と言ったものだから父さんが怒って、『研究員兼ネルガル・ヒューマン・インターフェイス・プロジェクト検査員』となったらしい。

やることは変わらないらしいけど…でも、アメの顔を見る限り悪いところじゃないみたいだったから安心できた。

 

 

「うん。まあ……研究所の人たちは優しかったし、ネルガルが次世代のマシンチャイルド技術を担うところとして

大げさに公開しているだけはあると思うよ?後天的遺伝子改良技術の研究なら、本人の意思表示を確認した後で遺伝子操作ができるから

今までのマシンチャイルドのようにもともとそうなる運命だった、ってことがなくなるらしいし。」

 

 

後天的かぁ…ボクも後天的に遺伝子操作された人間。アメも後天的。

それに対して、ルリさんや残り一人いるマシンチャイルド、コード名『ラピス・ラズリ』は先天的な遺伝子操作。

それで、今回呼ばれたのは『ボクとアメ』…後天的なことに何か意味でもある…?

 

 

「お兄ちゃん。ねえねえ、夕ご飯作ってよ〜〜」

 

「…さっき、ボクにお茶を注いだのは、まさか…」

 

 

一応烏龍茶を飲み終えたボクが横を見ると…そこには、満面の笑みをしたアメがいた。

うん、妹だけあってどんな顔でも可愛い。しかも、そんな妹は美少女の部類だ…そんな女の子がそんな笑顔でいるんだ。うん…

だまされた!?

 

「お兄ちゃん、お願いね♪」

 

 

 

 


 

三人称

 

ネルガル・グループ 

極東方面第001区画(東京都中心区)

トウキョウ・シティ本社 会長室

 

 

良いのか悪いのか…

 

ネルガル・グループの統括者であり、その中心企業ネルガル重工会長のアカツキ・ナガレはとある会談をネットワークで結んで行っていた。

 

 

「というわけで。ナデシコ第二世代の量産型新造艦4隻の建造完了は約半月後となる予定です。

また、依頼のあったユーチャリス級と呼ばれるナデシコ・フリート使用候補戦艦ですが、設計中止にあわせてデータは消去されており

建造その他はすべて再設計をやり直さなければなりません。」

 

 

新地球連合の御用達企業の座を取り戻したネルガル・グループ月面支部長エリナ・キンジョウ・ウォン

ネルガルの三大トップが『会長』『社長』『月面支部長』と続くため、実質的な組織のナンバー3である彼女と話しているのは

新地球連合中央政府の重鎮。国防長官『アリス・リア・フィートレス』であった。

 

 

『だが、確かネルガルは試験運用としてユーチャリス型の一番艦だけは建造したと聞いているが…』


 

「戦艦は維持費だけでも膨大です。ネルガルのような企業でもそれは同じく。そのため、建造した戦艦は解体し

その部品はナデシコ級との相互互換がそもそもできるように設計されていたので、流用しております。結果、今はありません。」

 

 

互いに話で譲歩するつもりはなかった。

連合はネルガルがユーチャリスを建造し、しかも何度か使っていることは知っている。ただし、政府の面子からそれを表立っていえないだけである。

対するネルガルは逆で、テロリストに回していたこと等を公にされては困る。

だが、両方とも利益をできうるだけ得ようと雅策しているのは明らかであった。

 

 

『それは本当?エリナ・キンジョウ・ウォン?』


 

「はい。事実以外の何者でもありません。」

 

あくまでも、ネルガルはユーチャリス級戦艦に関しては白を切るつもりだったし、代わりにちゃんとナデシコ第二世代の量産を開始しているのだ。

わかりやすくいえば『ユーチャリスやその関係に凝っているより、連合軍再編のためにナデシコ第二世代級を回せばいいんでしょう?』である。

ただし、連合側もそんなに甘くはない。今回の話も、ユーチャリス級のような重武装戦艦がナデシコ第二世代級よりもほしいということである。

電子機能に特化しているため、ナデシコ第二世代級は能力の割にはお高くつくのである。

ただ、現在の主力艦である『リアトリス級戦艦』と比べると、その能力は上であることは事実である。

 

はっきりいえば、ユーチャリスから電子能力を取っ払った戦艦が連合はほしかった。

四連グラビティ・ブラストなんていう化け物を搭載した戦艦が量産できれば、今までの数優先から質を考えた構成にできるからだ。

そういう意味では、人件費が全軍事予算の6割を食べている状況をどうにかしたいという思惑があるのは事実であった。

 

 

『ふむ…そちらに通告してあるように、今回新地球連合中央政府は軍とは離れて、独自のプロジェクトを開始することとなり

君たちをある種のスポンサーと選んだ。だからこそ、君たちはできうる限りの情報提供をするべきではない?』

 

 

新地球連合はその下に、軍を二つ持っている…

『新地球連合宇宙軍』『新地球連合統合平和維持軍』の二つを持っているのだが、宇宙軍と統合軍は合併する予定なのに

ここでわざわざ政府の直接命令が出せる私兵組織を作っていた。

ネルガルも知っている事実である。

 

 

『…まあ、とりあえずいいでしょう。大統領閣下もできる限りネルガルの方針も尊重するように言っておりますし。』

 

 

「おおっ、あの可愛い大統領がかい?こりゃ、僕嬉しいなぁ…あっ」

 

口を洩らしたが終わり…であろうか。

アカツキは完全にエリナに睨まれて小さくなっていた。

……ネルガル・グループがそれでいいのか、と思われても仕方ないのかもしれない。

 

『とにかく、新地球連合中央政府の総意は、地球圏の主要国家の総意をお考えていただきたい。

その気になれば、主要国の経済からあなた達を追い出すことも可能なのですから…』


 

「そりゃ怖い。なんせ僕たちのいる極東を中心としたグループには、ライバルのアスカ・インダストリーもあるし。

まあ、連合中央政府は反クリムゾン派の皆さんのようだから、そこの方は安心しているんだけどね?」

 

 

反クリムゾン派、などではない。

新地球連合中央政府は、これに先立つこと3ヶ月前に『火星の後継者の乱に関する全記録』を公開。

火星の後継者の支持をしていたクリムゾン・グループに対して、新地球連合になってからはじめての…

そして、新旧両方を含めてですら初めての『一企業に対する経済制裁』を決定したのである。

議会には反対派(クリムゾン派)も多かったのだが、半数が金で買収された結果、議会も通過し、稀に見る一企業に対する制裁ははじまっていた。

ネルガルは、それに乗じて旧クリムゾンの得意分野を次々と自企業の子会社に投資して奪還を始めている。

 

『現大統領は、良くも悪くも政治家であり戦略家です。あなた達の態度によってはこちらも相応の行動をとりえることを考えていただきたい。

“テンカワ・アキト”然り、コードネーム“ラピス・ラズリ”然り…黙認しているのは、あなた達にとっての利益であろうと考えているからであり

われわれが、あなた達への利益を考えなくなれば、それなりの態度に出ることを覚えていることだ。』

 

 

「そうだね。僕達もそれぐらいは理解しているつもりさ。ネルガルと連合政府の密約…っていうやつをさ。」

 

両方とも互いに互いを利用している…それが政治の世界であり、この二つの組織も例外ではなかった。

そして、彼らは相互に利用することが、同時に相互の利益になっているのだ。それだけが事実だった。

 


 『なら、まあよい』


 

「でも、そういえば今日の通信は大統領自らって僕は聞いていたんだけど?」

 


そうじゃなかったら、あの世界初の20代で大統領になった美女、いや美少女かな、のために

わざわざ僕が会議に参加することなんてないからねっ♪(キラッ!

、などと心の中で思っておくアカツキ。もちろん、横で目線を強めてくる奴は無視である。


 

「なに歯を光らせているのよ。落ち目のバカ会長。」


 

「うっ、でも、この密約もあって落ち目じゃなくなっているじゃないか?」


 

「なら、バカ会長というのは認めるのね。自分でも自覚していたとは思わなかったわ。」

 

ひ、ひどいなぁ……

まあ、実際にアカツキは半分ぐらい認めていた(笑)

その上で、後から否定するのはちゃっかり忘れない。と、アリスは困ったような顔をしつつ返答をした。

 


 『大統領は…ちょっと外出中で代理なのです。』

 

「「外出中?」」

 

 

 


 

 

わざわざ買い物まで行くことになって…

父さん、母さん、そして姉さん…冷蔵庫にあるものの大半が賞味期限切れという事態だけは起こさないでください。

というか、なんかあんな家があるのにも無意味じゃないですか。まあ、三人とも忙しいのはわかるけど……

 

っと、キッチンにたつボク。

自分、なんで趣味が『料理』なのかという疑問の答えは、父さんはまだしも母さん、姉さん、傍はアメまで料理が苦手なせいだったり。

自分の実益にもなるから、今でもこうして定期的にボクは料理をしているし、ナデシコBやCでもしていた。

ちなみにナデシコで、自分が料理をすることは整備班の一部とオペレータのサクラさんしか知らない。

サブロウタさんに知られたら、笑われるに決まっている。きっと『木連男児、いや人類の男児として男が料理はなぁ…』と言われるのが

なんか目に見えていた。ルリさんには……何か知られたくなかった。ボクだって恥ずかしいですし(汗

 

 

で、作るのは四人前…というのも…

 

「うにゃ〜〜カナちゃん、ボクも食べていって良いの?迷惑じゃない?」

 

「うん。大丈夫ですよ〜〜なんていってもハーリーが拒むわけないですよ♪アメも拒まないよね?」

 

「うん。イリアスさん、でしたよね?始めまして、アメトリア・クウォーツって言います。」

 

 

帰ってきたらなぜか人数が二人増えていて、しかも予想外の人が一人当たり前のごとくいるとか

なしだよね?僕も思うんだ。それはなしじゃないかなって?

 

帰ってきたら、姉さんと姉さんの知り合いらしい『イリアス・セルシウスティ』さんがなぜか家にいた。

うん、それで驚きが姉さんは今年23歳。若くて決断力もあるから、連合の一組織の長をしているんだけど

それよりも先輩らしい25歳のイリアスさん、それなのに…それなのに…

 

「いいよぉ〜〜ボクはイリアス・ミ…ううん、セルシウスティだよ。よろしくね♪」

 

異常に小さいその姿…アメよりもいくらか大きい、というかほとんど差がない…

えっと、ボクやかんちょ……ルリさんよりも小さいのは20歳女性からすれば『異常』だと思うんですが(汗

それに、女性なのに『ボク』っていうのも見ているのも、すごく僕の調子を崩してくれたりします。

 

「それで、姉さん…帰れるかもあやふやだったのに、どうして帰ってきて一人増えているんですか?!」

 

「う〜ん。どうしても、このイリアちゃんが『会いたい〜〜』と言ったから♪」

 

健やかな顔で、美人の部類に入るといっても過言ではない姉さんは言った。健やかな笑みだった。

僕からすれば無性にイライラするけどさっ!

ただ、そういって文句をつける僕に対して『基本的に家族といるときと、外向けの性格が違う』とか姉さんはいうけどね……


 

「ハーリー君〜ボク、いちゃダメなの?」


 

横で甘えるように目線を刺してくるイリアスさん…

外見のせいか、すごく子供っぽく見えるます…いや、マジでですよっ!?


 

「い、いえっ!とんでもないっ!大丈夫ですっ!食材は姉さんがバカ食いしても大丈夫なように大量に買ってあるのでッ!」

 

「ありがと〜〜後、ボクのこと、親しい人は『イリアちゃん』とか『イリアさん』って呼ぶよ♪」

 

「なんか少し苛立つ言い方だけど、まあ教えなかった私が悪いから我慢しておくわ。」

 

とりあえず、姉さんからも承諾が出たから料理を作らないと…

まあ、これだけの人数だから、お鍋もので抑えてもいいかな?キムチ鍋は…アメがダメだろうから

ここはオーソドックスにすき焼きにしよう、そう決まったらとりあえず野菜を切ってっと…

 

トントントンッ

ザクッザクッザクッ

 

奥では姉さんとイリアスさんが『あはは〜!』『にゃはは〜〜!』と笑いあっている……

ボクだけなんでこんな台所で…まさか脇役?

そんなときに横からヒュッと黒髪のポニーテールの顔が突然現れ…現れたっ!?

 

「うわっ!?」

 

「お兄ちゃん、私も手伝おうっか?」

 

「なんだぁ、アメかぁ…ふぅ…それじゃあ、そこの白菜を適当なサイズで頼むよ」

 

「うん、分かったよ。それにしても…おにいちゃん、今でも料理できるんだ。」

 

まあね…癖なんだよぉ…と愚痴をいいながら、味も少しずつつけ始める

僕、もう嫌だぁ…姉さんといるといつもペースが崩れると言うか、いつもの僕らしくやれないというか…

とにかく横で白菜を切る……

ポニーテールで抑えていた髪とその独特の容姿、どことなくだけど、ルリさんに似ていて…

 

って、な、なに僕考えているんだっ!

 

とにかく、野菜を二人で切り終わり、鍋で煮始める。味付けは自分風だけど、多分大丈夫。

 

「凄いねぇ〜〜料理ができるなんて〜〜しかも、おいしそう♪あっ、後でレシピというか味付け教えてよ〜〜」

 

「これで、イリアちゃん。意外と料理好きで有名なのよ。まあ、今はいろいろと仕事もあってこっちのほうは後退気味…だったっけ?」

 

グツグツと音を立てて…同時に見ている全員もおいしそうに見ている光景…

うっ、僕は食べられるかなぁ…特に姉さん、何で獲物でも見るような目で肉を眺めているんですかっ!

でも、さっきまで『うにゃうにゃ』言っていたイリアさんが料理するんだ…なんか、僕には想像できないですね…

 

「そうそう。だってやろうとする時間がそもそも無いんだよ〜〜

あえて言えばあれだよ。『過ぎ去っただと!くだらない!』って感じかな?ボクのこくぼ…ううん、手伝いの人って

色々とうるさくてね、どうせ無意味なことなんだから、それならせめて多くの人の無意味を助けるために仕事しろっていうんだよ?」

 

「は、はぁ……」

 

話をしているうちに、全部完全に煮え渡り姉さんから味のついたすき焼きをとり始める。

にしても、多数でも少数でも『無意味なこと』は『無意味』なんじゃないのかな…?


 

「なるほどなるほど……あの人ならありそうだわ…」


 

って、なんであの意味不明な言葉で納得できるんですかっ!

横にいるアメと顔をあわせて…ああっ、やっぱりアメも意味は分からなかったみたいだ、良かったぁ…

とさすがに僕達の思いでも伝わったのか、『そっか』と手で相槌を打つと姉さんがこっちに顔を向けてきた。

 


「ああ、あれは比喩表現。『過ぎ去っただと!くだらない!』は、過去を意味して、無意味は過去のことに悩むこと。

助けるっていうのは、もちろん過去の束縛からの脱却。聖書でいえば『原罪』って言う感じかな?」

 

「ふにゃぁ…言葉遊びなんだけど、初めての人にはやっぱり分かりづらいのかなぁ…」


 

悩んでいるような…気がしたけど、二人揃ってお肉を大量に取っていくところは精神は太すぎですよ〜イリアさんと姉さん…


 

「ああ〜〜おねえちゃん、それ私が取っておいたのに…」

 

「あらら、すでに口に入っちゃった♪」

 

「意地っ張りだね〜〜カナちゃんも〜〜うんっ、お肉おいしいね〜〜」

 

「って、イリアさんも十分に意地っ張りじゃ…い、いえ、なんでもないですっ!」

 

とりあえず、お肉を確保しないと全部無くなるのも時間の問題だと思って

僕はとにかく、今は食べることに集中した…って、もう半分以上のお肉無いよ〜〜(涙

 

 

 

………

 

 

お兄ちゃん…

と言っても血縁は無い兄、マキビ・ハリお兄ちゃんだけど…

それでも、家族同然のように扱ってくれた父さん母さん、お姉ちゃんに同様に…ううん、それ以上に優しくしてくれたお兄ちゃん。

それで、今はすき焼き片付け後のお皿洗いをしているみたい。それでカナお姉ちゃんとイリアお姉ちゃんは…

 

「何?カナちゃん、まだまだ現代大戦略2202〜火星の後継者の乱再びっ!〜でボクに勝てるのはまだまだだよ〜〜♪」

 

「ううっ…だいたい、なんでイリアちゃん、私が火星の後継者軍を指揮するわけ?新地球連合軍だなんて反則じゃないっ!」

 

「カ、カナお姉ちゃん…それは逆ギレじゃ…」

 

なんでも、200年前からずっと存在する老舗のゲームで、あらゆる陣営の司令官となって戦略指示をするゲームみたい。

2202と呼ばれる最新版では、2201では裏技で出ていたボソンジャンプ戦略が再び禁止されて、変わりに火星の後継者には

裏の支援団体『Kグループ』というのがあるらしい。作っているのがネルガルのグループ企業だけはあるね、これ…

 

「ボクが火星の後継者だったら、だいたい火星占拠よりも木星占拠だよ?

あそこには多数の無人兵器が封印されているから、それを使えば戦略上優勢とはいわないけど五分には持ち込めるもんね〜

まあ、それが分かっているからボク、精鋭戦力を木星につけたんだけどね♪」

 

一応、私が戦艦運用のマシンチャイルドとして教えられたのは、戦艦の管制と、戦略シミュレーションだったから大体は分かる。

でも、まさか地球本土をがら空きにするなんて凄い戦略…イリアお姉ちゃん…

 

「でも、精鋭戦力を引き抜いたから地球が手薄になるかと思ったけど…地球圏三大ターミナル・コロニーと月が邪魔するし…」

 

「地球圏三大ターミナル・コロニー『ツキオミ』『スクナヒコ』『コトシロ』は新地球連合軍の最終防衛ラインと言ってもいいところなんだよ?

それぞれに大規模な艦隊が待機しているし、今の連合軍再編データはこのゲーム入っていないもんね〜〜♪」

 

「うううっっっ!ハーリーハーリー!ちょっと、これやってみなさいよっ!」

 

『何?というかそのイライラから来る逆ギレを僕に当てないでくださいよ』とお兄ちゃんが

なんか『いつものこと』と認識しているのかな?まるで予定していたような言葉を返した。

それにしても、私もこの前軍のコンピュータハッキングしたばっかりの世界には公開されていないデータだと思ったんだけどなぁ…

新地球連合宇宙軍および新地球連合統合平和維持軍艦隊再編及び防衛拠点移行第一計画…

なんでこのイリアお姉ちゃんは知っているのかな?

 

「はぁ…まあ、とりあえず火星の後継者ってテロ組織ですよね?姉さん、なに最初から艦隊決戦で勝利しようとしているんですか?」

 

戦略画面を見たお兄ちゃんは、何やっているんですか…という感じの顔でそうつぶやいた。

 

「はにゃにゃ〜〜!!そういえばそうだよね〜〜テロ組織にしてはすごい戦力、正規軍にしては少ない戦力だから勘違いしちゃうけど

火星の後継者ってテロ組織だったね。ハーリー君、頭良いね♪」

 

「あっ、ありがとうございます、イリアさん。それで姉さん、僕なら徹底的にゲリラ戦闘しますよ?

小規模の艦隊によるヒサゴプラン・ターミナル・コロニー周辺の輸送艦を襲撃、この場合は火星で主にするべきだと僕は思います。

それで、連合軍がその討伐のために主力艦隊を動かしたら、一部の戦力で地球のどこかに攻撃を行い、戦力的に機動戦力の

精鋭艦隊…ナ、ナデシコ艦隊ですか…を、連合軍は自分の保身にしても、派遣して迎撃しようとするでしょうから

その間に主力で木星を鎮圧。この場合、月と火星に向かった戦力は足止めをしたら撤退しちゃってもいいんですし。」

 

と、なぜかIFSまで採用しているこのゲームの戦略アルゴリズムまで変更して、カナお姉ちゃんの席を取って

言ったとおりに変更し始めた、イリアお姉ちゃんも『ありゃ?』って言ってるから、負けているのかも。

 

「そうきたかぁ…統合軍第一艦隊と第二艦隊を統合して討伐軍を組織、とりあえず火星宙域の治安強化っと。

…ふにゃぁッ!?連合議会分裂っ!?国内の治安が低下していて連合が分裂?!」

 

「火星の後継者には『Kグループ』がいるっていう設定から、グループを利用して内部分裂させてみましたけど

姉さん、このKグループってあからさまに…いや、いいんですけど…」

 

「ううん。別に私がこのゲーム作ったわけじゃないから。でも、政府の国防指針にも内部分裂に対する危惧ってあるし。

今、新地球連合は主流国と非主流国で議会が分裂。実質上、連合政府が行政・政治を統括していると言ってもいいじゃないかしら?

ねえ、アメもよくハッキングしているみたいだから、どう思う?」

 

「ううん………確かに今の連合は中央政府が…って、ハッキングっ!?…ばれていましたか、お姉ちゃん?」

 

「もちろんっ♪」

 

い、意地悪に笑みを浮かべるお姉ちゃん…ううぅ…教えてくれてもいいのにぃ…

お兄ちゃん、怒るかな…私がハッキングしていたこと…って、なんかお兄ちゃんも汗だらだらなんだけど…なんでだろう?

 

「ああ、ちなみに連合宇宙軍と統合軍の総司令部に定期的に攻撃をする最強のクラッカーさんについては

オーバー・テクノロジー管理・研究をしている私のソフトウェア部門に『対策技術』の開発要請が入っていたような…」

 

「…それで、姉さんはデザート何がいいですか…」

 

定期的に攻撃をする最強のクラッカーっていうすごく的を絞った言い方でお兄ちゃんは落ちたみたい…

でも、さすがにお兄ちゃんがしているとは思えないし…でもやっぱり、この落ち込みようは…??

そんなこともお構いなしにカナお姉ちゃんとイリアお姉ちゃんは注文し始めた…って私もしようっと

 

「ああ、ハーリー。私は手巻きのロールケーキね♪」

 

「ボクはぁ…苺大福♪ちゃんと甘いのだよ〜〜」

 

「お兄ちゃん、私はうう〜ん…イチゴ・ショートのすごいの♪」

 

とりあえず、よくわからないけどお兄ちゃんは再び、台所に向かっていった…なんかすごく悲しそうな背中だったけ どね…

 

 

 

 

 

・・・

 

「とりあえず、この戦略を火星の後継者が行ってきた場合の対抗策も練りなおす必要性がありますね…イリアちゃ…」

 

「そうだね…ボクたちからすれば、最悪のシナリオは踏みたくないよ。それ以外ならむしろ被害は大きくてもいいけど…

それにこのゲームとの違い…『最強の機動戦力』が二つあるのだから…」

 

・・・

 

 

 

 

 

睡眠時間というものは、なんか私は好きじゃない

布団に入って寝れば明日が来る、そう思えるのは平和だからとわかっているから。

実際に布団に入って寝たまま、明日が来なかった人ってどれぐらいいるのかな…

 

マシンチャイルドである私も、お兄ちゃんと会うまではそんな、明日が確実にあるなんて思えない環境の生活だったからかな…?

 

結局、お姉ちゃんたちを含めて、あの後ずっとテレビ見たりゲームしたり…

普通、そういえばよいのかな?普通の日々を過ごした…

 

そして、今、私は布団にいる…

やっぱり、私の家だった…しかも、ちゃんと成長していることも予想してか大きな布団が用意してあった。

こういうところ、多分不器用な優しさがあるカナお姉ちゃんが用意してくれたんだなぁ…と思う

 

「あったかい…」

 

実際に見たところ、最高級の布団だったけど、それ以上に気を配ってくれただろうお姉ちゃんの思いが…

変かな?昔はそんなこと思わなかったけど感じたってことは…

 

「ふぅ…姉さんたち、何『二次会だぁ!』って叫んでいるのやら……まあ、お祭り好きにはナデシコで慣れましたけどね…(汗)

あっ、アメ、もう寝る?僕はあの姉さんたちをどうにかしてから寝ようと思っているんだけど……?」

 

「うん。もう寝るよ。大変だね、お兄ちゃん…」

 

「当たり前なことだよ、あの姉さんと対等に渡っている知り合いがいるなんて……苦労4倍ですよ…トホホ……」

 

大変そうなおにいちゃん。でも、嫌な顔をしていない。

そういう人間なんだ、お兄ちゃんは。苦労性というか、お世話をするのが妙に板にあっているというか…

多分、そんな性格だから、基本的に損な役回りなんだろうけど。

 

「あはは…がんばってねお兄ちゃん。それと…」

 

「それと?」

 


なんでかな?あえて私は戻って、お姉ちゃんたちの手伝いをするお兄ちゃんを止めた。

元気づけ…というよりも、多分私が一番お兄ちゃんにしたかったこと…

 

 

「ふふっ、ただいま。お兄ちゃん♪」

 

 

「う、うん。おかえり、アメ。」

 

 

なんだからお兄ちゃんが照れているような、顔が赤いような気がした……

 

 


 

 

翌日

新地球連合 極東方面地区

第180区画(舞鶴地区) 新地球連合宇宙港第七特大型艦艇ドック

 

 

昨日、結局姉さんたちは1時までバカ騒ぎをして、そのまま10時まで寝てここに着いたのは2時…

はぁ…まったく、アメや僕が連合大統領に会うって言う割には時間にルーズすぎるような…

で、来たのはなぜか連合中央区であるトウキョウシティでもなく、連合軍の極東方面の中心基地である横須賀ドックでもなく

造船も大型艦艇ドックは一つぐらいの中規模(と言っても月面が主要な生産基地だから、大規模ドックは本当に少ないけど)の基地である

舞鶴の連合軍造船ドックに来ていた。

 

「こんなに遅れていいんですか?姉さん?」

 

「大丈夫、大丈夫♪連合中央政府大統領は気前が良いし、それに…」

 

「それに…?」

 

なぜか姉さん、すごく意味深しげに言うし……

僕とアメは結局、なぜ呼ばれたかも教えてもらえないままここにいるし…

ちょっとだけ不安ですよぉ……


 

「ふにゃ?ああぁ!カナちゃんカナちゃんっ!こっちこっち♪」

 

この声、確か昨日来ていたイリアさん?

そういえば『別用のため、早めに行くよ♪』といって早めに出たんでしたっけ…早めってことはここにくるとは思っていましたけど

と、声のほうを向いてみて…ちょっ!ええええ!!!!!

横にいたアメも同じような顔していた…あはは…姉さんめ……そう、目の前にいたのは…

 

「マキビ・カナ、フェアリー・ガーディアンズ局長。ここまでご足労をおかけしました。ヘリを回すのは大統領がやめた方が良いと言いましたので。」

 

「『アリス・リア・フィートレス』国防長官、やっぱりお忍びということでしたし、それ以前に

ハーリーやアメちゃんを騙そうという、本人からすれば嫌らしい計画をしていましたので、イリアちゃんと♪」

 

「そうそう〜〜ボクが全部手配したことだから、アリスちゃんもあんまり気にしないで♪」

 

この世界で一人しか得られない地位…

なんとも砕けたものの言い様をしていたイリアさんが…イリアさんが……そ、そんなぁ………



そんな僕の心境なんて知るはずもない、イリアさんは銀色のツインテールを靡かせて

しかも、子供並みに小さい体系で、こっちに満面の笑みを浮かべると言い放った。


 

「とりあえず、昨日は偽名だったので改めまして自己紹介だね♪

ここのドックの最高責任者でもあり、君たち、ひいては全人類の代表者ことイリアス・ミスティオール新地球連合中央政府大統領だよっ♪」

 

 

 


 

 

あとがき

 

この話のキャラ設定を引き継いでいた元々の話と、多分もっとも性格が変わっているのは

今回出てきた大統領かと思ったり…グリフォンです(ぁ

第一話を元に、ハーリー君らしくないハーリー君ですが…まあ、ある程度成長したと思って納得してください(汗

 

というか、主役なのに甘々なままのハーリーでは無理です。これだけはきっぱり言います(汗汗

とりあえず大統領以下、仕掛け役の登場、ネルガルと連合政府の悪巧みと、まあ無理やり詰め込んだ気がします。今回は。

 

マキビ家の日常…じゃないんですが、とりあえず話の雰囲気は暖かいものにしようとしてみました

ハーリー君の家族の日常編ということで勘弁してください。お願いします。

 

基本的にオリキャラ多々なので簡単な設定資料(名前と役職、キャラの相互関係だけ)のものでも作ったほうがいいですかね…

とりあえず、第一話『ハーリー君はお兄ちゃんなんですね〜』はアメちゃんがあまりでなかったので(笑)

第二話はハーリーの視点無しでアメちゃんだけにしようと思う自分でした…終わり(ぁ

 

後、三人称と混じっているのは『ハーリー君とアメちゃんが出てくるところだけ一人称』ということにしたからです。

まあ、プロローグは気にしない方針で(笑

 

追伸

連合大統領の性格には元キャラいますけど、とりあえず気にしないでください。

わかって、メールくれたりするとうれしいですが、まあ内緒です。追伸終わり。

 


やみねこさんのパソコンが故障中であるため、青い薔薇さんに感想を依頼しました。

青い薔薇さんは小説を持ち込みしている作家さんの卵です。


 この度、何故か感想を書く事になりました“青い薔薇”です。

 まず、一つ。この小説を読んで言える事は、“分かりにくい”とい
う事です。

 “エンターテインメント”は、例えば小説での例を挙げますと、自
分が書いた小説を読者に読んでもらい、面白いと感じてもらったり、
感動してもらったりするものですよね?
 筆者が何を言いたいのか、それが伝わらなければ意味がありません。
 この小説は、それがちゃんと伝わっていないと思います。

 まず第一に、ターゲット等、読者の事を考えて書くと良いと思いま
す。横文字や難しい言葉等の連続は極力控えるべきです。

 次に、タイトルの「Story that NADESICO is new」と言うのを直訳
すると「ナデシコが新しいという話」となるのですが、これは作者が
意図しているものなのでしょうか?

 また、必要のない箇所で強調文を使い過ぎだと思います。これでは、
重要な所の強調が活きなくなってしまいます。

 そして、主に地の文で多かったのですが、作者の感情を入れると嫌わ
れます。
「作者的には〜」や「作者の経験からすると〜」と言う風な文章や、
地の文で使われていました「(笑」や「(汗」と言ったものは読んで
いて見苦しいです。「えーと」なども地の文で使われていると明らか
に作者の言葉になるので、避けるべきです。

また、下手な擬音語は小説を安く見せます。基本的に使わない事をオ
ススメします。
@トントントンッ
A台所から野菜をきざむリズミカルな音が聞こえてくる
上記の2つを比べてみると後者の方が描写しやすいため、好ましいと
思います。

 プロローグで使われていた手紙の内容についてですが、普通、手紙
に「(涙)」や「笑」や「♪」と言ったものを使うでしょうか?
 メールでなら別ですが、手紙の際はほぼ書かないと思います。そう
いう点で、リアリティを下げていると思います。

 また、興ざめしたのが「物語はゆっくりと、だが超加速度的に始ま
りつつあった。」と言うのが、冒頭部分にありました。
 筆者は格好を付けてるつもりかもしれませんが、空回りしていると
思います。
 「超加速度的」っていったいどういう意味なのでしょうか?それを
読者が理解できると思っているのであれば、考え方を改善した方が良
いと思います。

 何が言いたいかと言うと「小説の形がきちっとなってない」と言う
事でしょうか。

そういう点で次回に期待と言う事で。

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


グ リフォンさんへの感想はこちらに

掲示板でも大歓迎です♪



戻 る

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.