「面ェェ――――――――――――――――ンッ!!!」
スパ――――ン!!
サトリの鋭い一撃がミヤミヤに喰らわせられた。
「面あり!! 勝負あり!!」
互いに礼をし、面を取る。
「ミヤミヤ、お疲れ〜」
ダンがさっとタオルを差し出す。
「ありがと、ダンくん」
結果はいつもと同じ。私の負け。
だが、今回は有効打にはならなかったが、胴を2回も打ちつけた。
もう少し踏み込んでいれば、間違いなく入ってた。私の勝ちだった。
イライラする。
遊びじゃないから、誰が審判でもオマケしてはくれない。
自分の実力不足。それは誰が見てもそう。
わかってはいる。わかってはいるけれど。
「はぁ〜、やっぱさとりん強いねぇ〜」
「いやー、それほどでもないですよー」
ムカッ。
サトリは謙虚でいい子だが、だからこそ余計にその発言が頭にくる。
タマちゃんほど強ければ、諦めもつく。
圧倒的な、凛とした強さ。
だがサトリには、手が届きそうで届かない。肩を並べられそうで並べられない。
この、もどかしい感じが、嫌だ。
強くなりたい。
「惜しかったな〜、ミヤミヤ。だが、徐々に動きは良くなってきている。その調子だ」
コジローがフォローを入れる。
その一言が、ミヤミヤの心を軽くさせた。
「はい、頑張ります」
無意識に返事が口から出た。
この程度で心は折れない。
自分の成長を見てくれてる人がいる限り。
「それじゃ、ぼくたち飲み物買ってきますねー」
ユージとダンが道場を後にする。
「よし、それじゃ各自ペアで練習だ!!」
コジローの合図で、それぞれいつもの練習風景に戻る。
「タマちゃん」
「……はい」
「練習、付き合ってくれる?」
先に声をかけたのは、ミヤミヤだった。
KIYOSUGI×BLADE 第5話「竹刀と竹内」
髭猫 作
「やあッ!!」
バシィッッ!!
ミヤミヤの一撃がタマキの胴に衝撃を与える。
が、当然の如くタマキは微動だにしなかった。
「まだ甘いです。さっきと一緒で、有効打は難しいです」
こう、半歩踏み込むと同時に竹刀を繰り出して……。
タマキが熱心に指導する。
伸びが早い新人というものは、指導する側からすれば好ましいものだ。
家の道場で沢山の老若男女を相手にしてきたタマキが、指導する喜びを表に出す事はないが。
「ただいま〜」
ダンとユージが帰ってきた。
オマケを1人連れて。
「ん? あいつは……」
女子たちが練習に励んでいる中、気付いたのはコジローだけだった。
「おう、ご苦労。で、君は……?」
あからさまに、何の用だ、と顔に書いてコジローは尋ねた。
「昨日転校してきた、3年・杉小路隆千穂です。見学に来ました」
無駄に爽やかに杉小路は答えた。
む。この爽やか攻撃はミヤミヤのそれに似ている、そうコジローは感じた。
「サッカー部のユニフォームでか。悪いが冷やかしなら帰ってくれ」
「まさか。ぼくは本気ですよ」
コジローは杉小路の目を覗き込む。
顔は笑っているが目は笑っていなかった。真剣だった。
「ちょっと外で話そうか」
そう言ってコジローは杉小路と道場を後にした。
「なんかコジロー先生、若干ピリピリしてた〜」
「部活と言えど遊びじゃないからね。先生の気持ちはよくわかるよ。」
ダンとユージはコジローの帰りを待った。
きっと杉小路先輩は見学を許可されないだろう。
二人は顔を合わせ、仕方ない、と納得したのだった。
が。
数分後、二人とも帰ってきた。
相変わらず爽やかモードの杉小路と、平静を装うコジロー。
しかし、コジローの口元が嬉しそうに緩むのをユージは見逃さなかった。
「先生、杉小路先輩は……」
「ん? ああ、特別に許可した」
ええぇぇ――――――――――――――――っっ!?
いいのかそれで。
「彼の真剣さはよく伝わった。彼はユージ程じゃないが剣道経験者でもあるそうだ。女子じゃないのが残念だが」
ハッッ!?
まさか……、まさか……!!
杉小路先輩、あなたは一体、何で先生を買収したんですか!?
「たまに来て練習に参加してくれるそうだ。ユージの相手は難しいが、ダンの相手には丁度良いだろう」
汚い……!!
なんて汚い大人なんだ……!!
ユージは改めて、心の中でコジローに減点を加えた。ついでに杉小路にも減点1。
「じゃあ、次は小手です。試しに打ってみてください。」
ミヤミヤに言い、竹刀を構えるタマキ。
不意に、部室の道場に聞こえる筈のない声が聞こえた。
「タマちゃーん。頑張れー」
えっ?
ええっ??
ふと視線を向けると、防具を身に付けた杉小路が正座し、爽やかに微笑んでいる。
「……!?」
そう、それはまるでいつかの日のようだった。
フラッシュバックする過去の記憶の映像。
まだ幼い頃、杉小路が家の道場に遊びに来た時の、あの光景。
「やあっっ!!」
バシィィッ!!
ミヤミヤの小手がタマキに決まる。
ぱち――――ん。
弾かれて床に転がるタマキの竹刀。
「――――ッッ!!?」
余所見をしていた無防備なタマキに襲う、容赦ない痛み。
タンスの角に足の小指をぶつけたような、悶絶級。
「……あっ!! タマちゃん、大丈夫!?」
ミヤミヤが慌てて駆け寄る。
他のみんなも、床に転がったタマキの竹刀を見て、練習を中断してしまった。
あのタマちゃんが……!!
あのタマちゃんが…………!!!
竹 刀 を 落 と し た ! ! !
「………………………………」
コジローは思った。
ああ、なんかまたややこしい感じに、騒がしくなりそうだ、と。
「え、これって、ぼくのせい??」
杉小路がつぶやいた。
「遅ぇぞ杉小路!! てめぇ途中でコーチ抜けやがって!!」
とっくに制服に着替えて軽の前で待っていた清村は、ひょっこり現れた杉小路に怒鳴った。
「いやあ、ごめんごめん。ちょっと野暮用があってね」
部活中に何の野暮用があるのだろうか。清村は憤慨した。
「あちこち探しまわったんだぞ!! 校長室にも行ったしな!!」
「何故に」
「また問題起こして怒られてるに違いないと思ったんだよ!!」
「そんなまさか。それは清村の願望じゃなの?」
「ああ。そうだったかもしれん。校長室のドアを開けたら誰もいなくて、校長の机にねこが座ってた」
「ねこ見れてよかったね。ここのねこ、初対面だと結構人見知りするよ?」
「誰 も そ ん な の き い て ね え 」
かくして。
杉小路は、正式な剣道部見学初日から”タマちゃんの竹刀を落とさせた人物”として強烈なデビュー(?)を飾った。
まあ、当の本人はその重要性を全く理解しておらず、「竹内入れ」と書かれた貸し竹刀入れを喜んで写メってたりした。
少しずつ運命の歯車が交差し、新たな物語を育んでいく。
新たな剣道部の日々は、まだ始まったばかりなのだ。
第1部・完
……TO BE CONTINUDE
あとがき
どうも、髭猫です。
花粉症の人は大変そうですね。
ワタクシ花粉症ではないのですが、この季節に風邪っぽいです(笑)。
喉が痛くてたまりません。
のど飴が必需品になってます。喫煙者なんで、プラマイゼロな気がします。わわわ。
バンブーブレード、アニメ版の放送が終わってしまいました。
早くも新しいアニメに気になるものが沢山あります。
ソウルイーター。
連載当初から読んでます。コミックス全巻初版所有。
狂乱家族日記。
日日日氏のライトノベル原作。大好きです。これも全巻初版所有。
蟲と眼球シリーズの方がアニメとしては見てみたい気ガス。
主にはこの2つですかねー。
普段アニメあんまり見ないワタクシですが、自分の好きな作品が立て続けにアニメ化。
あれ、これ、くすぐられてる?
さて、本編について少し触れますと、まず杉小路から剣道部に馴染ませました。
清村が剣道部に馴染むのは、もう少し後です。
その方が色々と展開に無理がないし、書いてる方も楽だったりします。
次回。兎に角笑ってもらいます。乞うご期待!!
さて、それではまた次回でお会いしましょう!
読んで下さってありがとうございました! 次回もまた読んで下されば幸いです!
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
髭猫さんへの感想は掲示板で
お願いします♪