ふと現れた幻想は、あまりにも強く、あまりにも儚いものでした。
復讐に彩られた瞳は虚無を映し、わたしは透き通る光。
煌めいていた幻想は地に堕ち、儚い希望は血に塗れる。
けれども、あなたは立ち止まりはしませんでした。
もう自分の血か誰かの血か、それも分からない身体を引きずって、
呼吸をすることさえ苦痛でしかないはずのあなたの、
それでも を追い求める姿は、
わたしにどれほどの世界を与えてくれたでしょうか。
そして――
足を踏み入れたら逃れられない、時の牢獄。
わたしは、永遠に広がりゆく情景の中、ただ彷徨う。
遠い未来に、一度だけ思い出してください。
永遠の箱庭で、あなたの声を待っています。
「……まいった。本当に降るなんて」
音は静かに、勢いは穏やかに、気温はやや肌寒く。霧の街に真夏の雨が降りしきる。
「……ロンドンの天気は変わりやすい、か」
骨董品店の軒先で雨宿りさせてもらいながら、一人ごちる。
迂闊といえば迂闊だった。ロンドンの天候はここ1年で十分身に沁みていたはずなのに、今朝に限って綺麗な青空だったものだから、天気予報も見ずに今日は大
丈夫だなんて早計をした。――否、せっかく譲ってもらった中古のテレビを機械音痴の誰かさんが盛大にぶち壊したから、見ようにも見れなかったんだけれど。
とにかく、気づけばあれだけ綺麗だった青空は曇り空に変わり、降るかなぁなんてのん気に思っていると本当に降りだしてしまった。慌ててここに駆け込んだ
からずぶ濡れとまではいかなかったものの、服は濡れて肌に張り付いてしまっている。
「先人の言うことは聞いておくものかな」
家に帰れば、ほら降ったでしょうシロウ、まったく私が何年ブリテンにいたと思っているのです、とご機嫌斜めな騎士王殿が待ち構えているに違いない。
「くくっ」
思わず苦笑する。先人というにはあんまりだ。見た目でいえば、遠坂の方が年上に見えるくらいなのに。
「――君も雨宿りかい?」
唐突に、横から声がした。振り向くと、いつの間にか若い男が立っていた。黒のYシャツにパンツ、こげ茶色の髪に目深に被ったバイザー。肌の色からしてア
ジア系だろう彼が喋りかけてきた言葉は、日本語だった。
「はい。今朝の空があんまり綺麗だったから、降るとは思わなくって」
生粋の日本人か、単に日本語が達者なのか。それは分からなかったけど、こっちも日本語で答えた。
彼はどうやら俺と違って、かなり雨に降られてしまったらしい。びしょ濡れの髪は頬に貼りついて、ぽたぽたと雫を垂らしている。
――この薄暗い雨空の下でバイザーを目深に被っているが、もしかして
盲
な
のだろうか。
「そうか。奇遇だね、俺も今朝同じことを考えたよ」
彼は笑って言った。――妙な感覚。笑顔のはずなのに、親近感と不快感が入り混じっている。
「今朝方、ロンドンの天気は変わりやすいから、晴れてても傘は持っていった方がいいと言われたんだけどね」
穏やかで人当たりの好い人なのに、不快感だなんておかしな話だ。頭から振り払って笑顔を努めることにした。
「はは、俺も同じことを言われましたよ。帰ったら何を言われることか」
彼は眺めるようにこっちを見てきた。微笑を浮かべたその顔には、やはり親近感と不快感が付き纏っている。
「その人は、君の大切な人かい?」
つと、彼はそんな質問をした。ストレートに困る質問に戸惑っていると、彼は笑って言った。
「いや、すまない。聞けば、一人雨に降られても笑っていられる人間というのは意外と少ないものらしくてね。でも、君は笑っていた。だからかな、なんとなく
そういう人がいるんじゃないかって思ったんだよ」
声をかけたのはそれが気になったからなんだけど、と彼は言った。
俺は少し逡巡した後、質問の答えとしては間違ってはいないだろう答えを、気恥ずかしいながらも言った。
「大切な人です」
「そうか」
彼は満足そうにうなずいた。
「そう言うそっちにはいるんですか? そういう人」
どうにも気恥ずかしくて、なんとなしに聞いてみた。
彼の表情が翳った。
「……そう、だね。……いるよ」
彼は、俺にはよく分からない表情で雨空を見上げる。
「今は遠いけど……とても大切な人だ。誰よりも、何よりも」
――バイザーから覗く彼の瞳が、光って見える。目の錯覚か……否、空を見上げればもう、気づけば雨は止んでいて。
「ロンドンの天気は変わりやすい、か」
雲の隙間から陽光が差し込んでいて、スポットライトのようにここを照らしている。
「君、名前は?」
彼は振り向いて尋ねてきた。
「衛宮士郎です」
「エミヤ、シロウ君か」
彼は名前を反芻すると、一歩、光の外へと歩みだした。
「俺は天河アキト。また会えるといいね」
そうですね、とうなずくと、彼は笑みを浮かべ、それじゃと手を振って歩き出した。
光の中から歩み出し、暗がりの中を歩んで行くその背中。俺はなぜか、見えなくなるまでずっとその背中を追っていた。
「…………」
店の軒先から、空を見上げる。やはり、ロンドンの天気は変わりやすい。まだ曇り空ではあるけれど、その間隙からもう太陽が覗いている。
その陽光は街を照らし、今さっきまで暗がりに包まれていた道は明るく照らされている。
「不思議な感じだな……」
俺は彼が歩んで行った道を、追うように歩き出した。
Light/Night
和装の少女と黒衣の青年
「ほら降ったでしょうシロウ。まったく私が何年ブリテンにいたと思っているのです」
時計塔への推薦入学に当たって遠坂に宛がわれた部屋にただいまーと帰って早々、バスタオルを手にしたセイバーに予想通りの言葉を一言一句たがわず言われ
た。
「む。いや、でもさ」
「でもも何もありません」
有無を言わさず、セイバーは俺を座らせてがしがしと濡れた頭を拭き始めた。
「まったく、どうしてシロウはいつもいつも私の言うことを聞かないのですか?」
セイバーは小さく頬を膨らませる。その表情に思わず苦笑してしまうと、それがさらにセイバーのご機嫌を損ねたらしい。頭を拭く手に力がこもってしまい、
ちょっと痛い。
――聖杯戦争から早2年あまり。俺は時計塔への入学推薦を受けた遠坂の弟子兼世話係として、セイバーは遠坂との契約を継続して使い魔として、学校を卒業
と同時に遠坂に付いて渡英した。
遠坂は今もしっかりと時計塔で勉強中で、入学自体は実力を認められてではなかったものの、今は多くの魔術師に一目置かれているようだ。遠坂の弟子というだ
けで優遇されたこともあった。つまり、どうやらあかいあくまはしっかりと模範的優等生という猫を被っている模様で、2年前とあまり変わっていない。
だが、セイバーはそんな遠坂とは対称的だった。やはり、王として生き、国の平和を願いながらもそれを果たせず。聖杯を望んで自分自身を無かったことにま
でしようとした
セイバー
に
は、1500年も経って大きく様変わりしているとはいえ、ブリテンに思うところがあったのだろう。渡英してしばらくはしんみりとしていて食まで細くなって
しまってかなり心配だったけれど、最近は元の快活さを取り戻している。否、元というには正しくない。出会った頃に比べればセイバーは随分と変わったのだか
ら。
そう、
あの選定の剣
を抜いた時から止まっていた歯車
が、今ようやく動き始めているのだから。
「むー。なにを笑っているのですか、シロウは」
上目遣いに睨みつけてくるセイバー。でも、にやついてしまうのは仕方ない。俺がその歯車の動力となった要因の一翼でも担っているのならと考えると、嬉し
くてどうしようもないんだから。
「いや、単なる思い出し笑い。ていうか、セイバーの言うことはちゃんと聞いてるぞ。実際いつもは傘を持っていってるし。ただ、今日は降らないような気がし
たんだ」
「まったく……。そんな濡れて、風邪を引いても知りませんよ」
「それは勘弁してほしいなぁ……」
セイバーはわずか1分足らずで3回も、まったく、を繰り返した。相当呆れているのか、怒っているのか。いずれにせよ、今日の晩ご飯はちょっと豪勢に行く
べきっぽい。
「あ、士郎帰ったの?」
奥の部屋から、遠坂が出て来た。今の今まで研究でもしてたのか、白衣を着ていて髪はポニーテールにしている。
「ただいま」
「おかえり。それにしても、ずいぶんと濡れちゃってるじゃない」
遠坂に言われて、改めて自分の姿を確認してみる。うむ、確かにどうみても濡れまくってるな。
「ちょっと雨に降られてさ。セイバーに傘持ってけとは言われてたんだけど、今日の空見てたら降ると思わなくて」
「日本じゃないんだから、空模様じゃ分かんないわよ。もうちょっとしたら講義あるんだから、早く着替えな――い、と」
急に、なぜか遠坂が急にとてつもなくキレイな笑みを浮かべだした。
「な、なんだよ?」
「んーん? べっつにー? ただ残念なことにちょっと洗濯物溜まってて、着替えなきゃいけないのに着替える服がないってだけよ?」
そう言いつつ、なんだかやけに楽しそうにクローゼットの方へ移動する遠坂。……なにか激しく嫌な予感がする。
「はは、そうかそれは困ったな。でも前に着たのを着れば問題ないと思うんだが」
「ば・か♪ シワでよれよれの服着て時計塔をうろついていいわけないじゃないの」
遠坂は銃に見立てた人差し指をこちらに向ける。
「ねぇ。どうせ着替えなきゃ風邪引くんだもの。強制的に風邪引かせても変わりない、って思わない?」
それは、ガンド撃ちという名の絶対暴力。
「凛……部屋の中でそれは」
セイバーさん。部屋じゃなくて俺の心配をしてください。
「大丈夫よ、セイバー。これだけの至近距離よ、外さないわ」
そう言って遠坂は、最後通牒を提示してきた。
「どうするの、士郎。風邪引きたい? それとも着替えたい?」
――――俺は。
1.着替えさせていただきます。
2.断固拒否。どうせ遠坂のガンドなんて当たらないし。
3.凛。愛してる。
時計塔は魔術師の総本山だ。そのせいか遠坂は、時計塔の中ではちゃんとした服を着ないと文句を言う。ちゃんとした、というのは別にタキシードやスーツまで
とはいかないが、というかスーツなんてのを真夏でも着るのは日本くらいだけど、やはりTシャツやジーパンはよろしくないらしい。わたしの弟子なんだから、
ということでそこそこ見栄えのする服装を迫られる。
まぁ、もっとも。今回着替えたのは服が濡れてたからなんだけれど。うむ、決してガンドが怖かったからではない。あと不意討ちは後で色々と万倍返しな事態
に陥るからよろしくない。
「……ふーん?」
遠坂は笑みを浮かべながら、着替え終わった俺の格好を観察する。
「ふんふん、やっぱり似合うじゃない。そこそこ貫禄がついてきたってことかしら?」
遠坂は満足そうにうなずく。――ちなみに、今の俺は赤い外套を羽織らされている。
しかし、これがまた心底辛い。なにせ、言うまでもなくこれはアイツをイメージしたものだ。個人的には死ぬほど似合っていないとしか思えないし、1年前に遠
坂が大爆笑してくれたのもあって、本当は絶対に着たくない。けど、いくらタンスの奥底に封印してもいつの間にやら引っ張りだしてきて、嫌がらせのようにク
ローゼットに吊り下げてくるのだ。絶対楽しんでやっているに違いない。
「誰だよ、俺をアイツみたいには絶対にしないのが野望とか言ってたのは……」
「それはもちろん、わたしよ。でもソレはソレ。アイツはひねくれてたけど、実力はホンモノだったもの。士郎もここ2年で想像以上に伸びたけど、あと何年か
でアイツの域までっていうのはちょっとムリでしょ?」
だ・か・ら、と遠坂は意地悪げに笑う。
「形から入ろうかな、って。実際、士郎が聖杯戦争で急成長したのってアイツに関わったからでしょ?」
「……む」
そこは否定できない。強化や投影の精度がやたら上昇したことに関して、アイツの影響は無視できない。特に二刀流と固有結界に関しては、癪だけど間違いな
くアイツのおかげだ。文字通り自分自身の一つの到達点をこの目で見たから。
「ね? 固いこと言わないの。似合うようになってきたってことは、それだけ近づいてきたってことじゃない。ね、セイバー?」
「ええ。少なくとも、強くなっているのは事実です。最近は手合わせしても、なかなか隙がない。それに、その格好は確かによく似合っていますよ、シロウ」
セイバーはにこやかに微笑んで言った。
……
これだ。これが困る。最近は背が伸びたせいか、遠坂もセイバーも似合うと言ってくれるようになった。1年前には貶されまくってた剣技や魔術の技量も上がっ
てきたことも相まって――それに、アイツは嫌なヤツだったけど、やはり衛宮士郎の1つの理想のカタチでもあるわけで――絶対嫌だと思う反面、ちょっとその
気になってしまう。
「……似合ってる、かなぁ」
照れ隠しに姿見の方に視線を向ける。映るのは、2年前とはまるで違う自分。よくもこれだけ背が伸びたものだ。この2年で、今までの人生の中で一番伸びた
気がする。
「…………」
脳裏に過るのは、あの背中――――この姿はいつか、あの赤い外套の騎士になれるんだろうか。
「士郎。そろそろ行かないと遅刻するわよ」
遠坂の声。振り返ると目が合った。
「大丈夫だよ遠坂。俺――」
遠坂は目を見開いていた。
「――遠坂?」
遠坂の目の前で数度手を振ると、遠坂はハッとしたようにまばたきをした。
「どうかしたのか?」
「あ………ううん、別に……背が、伸びたなぁって改めて驚いただけよ」
「そうか?」
「そうよ」
「そうか」
セイバーと遠坂に背を向け、玄関に向かう。
「それじゃ、そろそろ行ってくるよ」
「……うん、行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい、シロウ」
一度振り返って言葉を受けてから、扉を開け、出て行く。
「…………」
「…………」
残った2人は玄関前で立ったまま、動かない。
「やっぱり、軽薄だったのかな……」
遠坂凛は誰にともなく、ぽつっとつぶやいた。
「さっき、士郎とアイツがダブっちゃった。なんだかんだでわたしも、心のどこかでアイツの背中を追いかけてる……」
赤い外套の騎士が最後に、微笑みと共に告げた言葉。それはエミヤシロウとしての言葉であったが故に。
「凛。あれは多少の魔術的加護があるだけの、ただの赤い外套です。ですがアーチャーのそれは、一級品の概念武装。まるで格が違う、全くの別物です」
「それは、そうだけど……」
セイバーは微笑みかける。
「シロウはシロウと時を超えて出逢った。本来なら有り得ない現象です。だからもう、シロウはシロウであって、シロウではありません。
それは……シロウの傍に貴女がいることが、何よりの証明だと思います」
遠坂凛は目を丸くして、ややあってから、頬をかいて言った。
「そうだと、いいわね」
古めかしく重厚な趣の時計塔の回廊を歩いて行く。窓から射し込むやわらかな陽射しは回廊を照らし、雲の白と空の青が広がる窓の外からは、穏やかな風がそよ
吹いている。緯度の割には、イギリスの中では温暖湿潤で過ごしやすいが、決して快適とはいえない霧の街倫敦の真夏の昼。
「倫敦には気候はないが、天候はある」という古い格言がある。倫敦の変わりやすい大気の状態を言い表す言葉だ。
真夏の倫敦の気候は、極端に言えば、一日の中に四季が存在するようなもので、30℃を超えるほど暑いときもあれば、10℃ほどまで冷え込むこともある。雨
が降ったと思えば、急に晴れて陽射しが強くなるときもなる。例えば、公園でピクニックをしようと午前中に思っても、正午には雨が降り始めるかもしれず、雨
降りの午後に映画を見に行き、映画館から出てくれば、外は青空とまぶしい太陽ということもある。季節がハッキリしている日本とは、まるで違う気候なのだ。
「まぁ、だからと言って、日本が絶対に暮らしやすいというわけでもないんだけど」
倫敦は霧が出るから、日本に似て湿気ムンムンで蒸し暑いけれど、霧もないのにつねに蒸し暑い日本とは違う。それに倫敦の冬は、日本と違って氷点下になる
事は滅多にない。
「でも、やっぱり日本の方がいいな……」
なんてぼやいていると、回廊の先で、誰かが窓の外を眺めているのが見えた。
それは、桜色の単衣を纏い、黒髪を後頭部で結い上げてうなじまで垂らしていて、茶色がかった黒い瞳に光を映した和装の少女。窓際からやや乗り出した腕に
は鳥、肩には猫、足元には犬と、その他いっぱい。
「おはよう、沙夜」
声をかけると、少女は振り向いた。少女は俺の顔を見ると、にこっと笑って会釈し、また窓の外に視線を戻した。
「最近は暑いな」
沙夜はうなずく。
「あ。そういえば、さっき雨に降られてさ。傘持ってかなかったらびしょ濡れになったよ」
沙夜は振り返り、小首をかしげた。
「いや、大丈夫。それぐらいじゃ風邪引かないから」
そう言うと、沙夜は微笑んで、また窓の外へと視線を移した。
――沙夜は
唖
だ。発声器官に異常があるのか、耳は聞こえる
が、言葉を発することが出来ないらしい。
だが、口が利けないということは、呪文が詠唱出来ないということで、それは魔術師にとって致命的だ。聖杯戦争で召喚された英霊であるあのキャスターでさ
え、何かしらの呪文詠唱を行っていたのだから、それは間違いないだろう。
けれど、沙夜は魔術師として時計塔にいる。なぜかは分からないし、知らない。
「なにが見えるんだ?」
沙夜の小さな肩越しに外を覗く。街並みと青空が見えた。
けれど、沙夜は俺の手を取り、指でこう書いた。
【宇宙】
「――宇宙?」
沙夜は微笑みながらうなずいた。俺はもう一度外を見たけど――やっぱり、青空しか見得ない。
「そっか、宇宙か」
沙夜は外を見ながらうなずく。うなずく度に、結った黒髪が揺れている。
「そろそろ行こう、沙夜。遅刻するぞ」
そう言うと、沙夜はうなずき、動物達を一通り見た。すると、今まで動物園化していた沙夜の周りの動物達が、一斉に飛び立ち、歩き出し、駆け出し、どこか
へと去っていった。
「…………」
すこしあっけに取られていると、沙夜に袖をくいっと引っ張られた。行きましょう、という意味だろう。
「ああ、行こうか」
笑って返し、横に並んで歩いて行く。
沙夜と知りあったのは、つい最近だ。初めて出逢った時も和装で、さっきのように動物に囲まれて窓の外を眺めていた。あんまり不思議な光景だったからつい
見とれていたら、沙夜がこっちに気づいて微笑みかけてきた。それがきっかけ。
でも、沙夜は話すことが出来なかった。だから今も、沙夜のことはまだよく知らない。知っているのは、名前が沙夜で、この春から時計塔に在籍していて、年が
14〜15歳ということ。誰のかは本人も知らないらしいが時計塔の魔術師の使い魔や野生の動物にいつも囲まれていて、よく風景を眺めていること。
――そして、魔法に最も近い魔術師の一人であること。
お昼前の講義はまったりと過ぎていく。今受けているのは”修復”に関する講義だ。強化や投影にも影響する”構造把握”から派生する魔術、それも今受けて
いるのはその初歩だから、衛宮士郎にはそうそう難しいものじゃない。
「…………」
だが逆に、沙夜はこういったことは苦手らしい。困り顔で粉砕された水晶球を元に戻そうと四苦八苦している。魔法に最も近い魔術師の一人というのは風の噂み
たいな感じで聞いた話だが、だからと言って何でも出来るというわけでもないらしい。器用貧乏という言葉からは程遠い、万能型の遠坂とは違うみたいだ。
「…………」
パリン、と水晶が割れる音。見ると、沙夜は困り顔でこちらを見上げていた。
「んー……上手く、いかないな」
沙夜はこっちの机の上にある、完璧に修復された真球の水晶をちらりと見て、俺の顔をじっと見つめてきた。
「えーと……なんて言うのか」
こういうのは感覚的なもので、口で説明するのは難しい。これまで何度か思いつきで言ってはみたものの、そのたびに沙夜は素直にうなずいては試し、失敗
し、また困り顔で見上げてくるの繰り返し。
先生に聞けば、とも思ったけれど。俺の水晶を見て目を見開き、俺を睨み、沙夜を見て眉をひそめ、衛宮君に教えてもらいなさいと言い残して後は放置状態。
……まぁ、思い当たる理由が無いでもない――特に投影は、遠坂をして、わたし以外の魔術師にこれを見られたら絶対に殺される、と言わしめた――が、やっ
ぱり俺は魔術に関しては素人だ。強化や投影だって半ば独学、それで他人にモノを教えるなんてこと、できるはずもない。
「つまり、……うーん」
説明しようと思ったら、たぶん擬音のオンパレードになる。とてもじゃないが理解は得られないだろう。
「…………」
俺が悩んでる中、沙夜はもう一度修復を開始する。いい線を行っている気はするのだが、どうにも今一歩足りない感じだ。呪文を唱えられないせいだろうか。
それにしても、なんでまた修復なんて魔術を習ってるんだろうか。便利と言えば便利だけど、こんなに必死になって覚えなくても、誰かに頼むなりしても良い
だろうし。
そう思って俺は、水晶が音を立てて壊れたのを見届けてから、声をかけた。
「なぁ沙夜」
沙夜は小首をかしげる。
「修復。どうしても覚えなきゃいけないのか?」
沙夜は一瞬の間も無く、うなずいた。
「そうか。……でも、諦めろってわけじゃないけど、人には向き不向きあるしさ。逆に俺はこういうのしか出来ないくらいだし」
沙夜はほんの少しだけ口を開いたが、それを留めて口を閉じた。
――何かを言おうとしたのか。でも沙夜は、言葉を発することが出来ない。
「…………」
沙夜は胸元に両手を重ねて当てながら、頭を振った。
「出来ないと、ダメなのか?」
沙夜はうなずいた。
「でも、俺は教えるのヘタだしな……」
先生は放置だし。
「うーん……沙夜自身じゃなくて、別に俺が直すなら良いんだろうけど、そういうわけにも――」
――え、という言葉が聞こえた気がした。
見ると、沙夜は小さいながらも口をぽかんと開けていて、こっちを見ていた。
「……!」
けれど目が合った瞬間、沙夜は勢いよく口に手を当ててうつむいてしまい、慌てて何度も頭を下げだした。
「いや、ちょっ……沙夜?」
声をかけると、ぴたっと沙夜は止まり、おずおずと上目遣いに見上げてきた。その茶色がかった黒い瞳には、涙が浮かんでいた。
でも、どうしたの、とは聞けない。なぜなら沙夜は喋れないから、YesかNoでしか答えられない。簡単な意思疎通なら筆記で間に合うが、あまり面倒な事
態の説明まで求めるのは酷だ。
「あー。やっぱりマズいのか? 俺が直すのは」
とりあえず思い付くことを聞いてみる。沙夜はぶんぶんと勢いよく首を振った。それから察するに、肯定的な否定な模様。質問自体は的外れじゃないみたい
だ。たぶん。
「沙夜じゃなくて、俺が直してもいいのか?」
沙夜はうなずこうとして、はたと止まった。そして少し考えるような素振りをして、俺を見上げ、また考えるといった行動を何度か繰り返す。
「やっぱり、マズい?」
沙夜は首を振る。
むぅ。困った。……と、魔術使いの俺にはないから失念していた、あることを思い出した。それは、魔術師には秘匿とするべきものがあるということだ。
「……大丈夫、別に他言したりしない。何を見せられても変な風に思ったりしないし。口約束だけど、絶対に守るから」
沙夜の耳元で、小声でささやく。
沙夜はそれで安心したのか、ようやく微笑みを浮かべて深々と頭を下げた。
「ん……そっか、残念。やっぱりダメか。力になれればと思ったんだけど」
「……?」
急に逆のことを言った俺に沙夜は一瞬迷ったようだったけど、意図を掴んだのか、くすくすと笑ってうなずいた。
「まぁ仕方ないな。というか、魔術師なのにちょっと軽薄だった」
沙夜は楽しそうにこくこくとうなずく。しかも、修復を覚える必要がなくなかったからか、修復作業の方は既にお留守タイム。……お沙夜さん、もちょっと演
技してほしいのですが。
そんなこんなで、講義は終了。完璧に修復された水晶と、ほとんど粉々のままの水晶を提出し、俺と沙夜は教室を出た。
「さて、どうしようか」
教室を出て人気のないところにまで行き、さらに周囲を確認してから俺はつぶやいた。
「修復。早い方がいい?」
首をかしげている沙夜にそう言うと、沙夜は俺の手を取って指で何か書き始めた。
【士郎さまのご都合に】
ちなみに、沙夜はさま付けて人の名前を呼ぶ。むず痒いことこの上ないが、”ダメですか?”と笑顔で聞かれて”ダメです”とはとてもじゃないけど言えなく
て、そのまま押し切られてしまった。
「そうだな。とりあえず、今日の午後は一応空いてるけど。沙夜は?」
沙夜はうなずく、かと思ったら途中で止まり、唇に指を当ててなにかを考えだした。
何か都合が悪いのかと思っていると、沙夜は俺の腕を取った。
【昼食はどうされますか?】
本人は気づいていないのか、書く指は、唇に当てていた指で。不覚にも少しどきっとした。
「いや、部屋で食べるつもりだけど」
沙夜はまた、唇に指を当てて考える。おそらくクセなのだろう、どうも無意識的にやってるみたいだ。
【よろしければ、作りましょうか?】
「え?」
何を作るのか、一瞬分からなかった。
【お礼に、と言うほどのものではありませんけど】
「いや、でも……」
沙夜は小首をかしげる。それ自体には何の問題もないが、遠坂とセイバーもいるし、自分の部屋ってわけでもないし。あまり勝手に人を招くのはまずい気がす
る。
「ごめん、今すぐには返事できそうにない。一度部屋に戻ってからでもいい?」
沙夜はうなずく。
「でも、そうすると連絡取れないな……」
沙夜も一度、部屋に戻らないといけないだろうし。
なんて考えていると、沙夜は帯の中から紙切れを取り出し、俺に差し出した。
書いてあるのは数字の羅列、そして所々に入れられているハイフン。
「電話番号? 沙夜の?」
沙夜は微笑みながらうなずく。
でも、沙夜は喋れない。電話したって意思疎通が出来ないと思うんだが。
なんて思っていると、沙夜はよく分からない言葉を腕に書いた。
【識神】
「シキ、カミ?」
沙夜はうなずく。でも、俺がよく分かっていないのを察したらしく、唇に指を当て、また何かを書いた。
【式 使い魔】
「ああ、使い魔か」
沙夜はうなずく。
「分かった。じゃあ、部屋に帰ったらなるべく早く電話するよ」
沙夜は笑顔でうなずいた。そして、それじゃと手を振って、お互い別方向に歩き始めた。
「シロウお帰りなさい昼食のメニューは何でしょう」
部屋に戻ってすぐ、これっぽっちも心の中を隠そうとしないセイバーに出迎えられた。どうやら昼食が待ちきれない様子。
「ただいま。昼食は……ちょっと待ってくれ。遠坂ー!」
「んー?」
奥の部屋からひょこっと遠坂が顔を出す。
「あ、士郎。おかえりー」
「ただいま。あのさ遠坂、この部屋に人呼んだらマズいか?」
遠坂の表情が、魔術師遠坂凛の表情へと一変する。
「当たり前じゃない。魔術師の工房に他人を入れるなんて――まぁ、士郎の家は例外なんだろうけど」
ああ、そういえば俺の家には守るものがないせいか、四方の門が開けっぱなしで出入りが自由になってるって言ってたっけ。
「普通はね、魔術師は色々と守るものがあるから、自分の工房においそれと他人を入れたりなんてしないのよ。
それに、ただでさえ宝石剣の研究が佳境で色々と面倒なのよ? わざわざ招き入れるなんて、盗んでくれって言ってるようなものじゃない」
「む……」
畳み掛けるように言う遠坂。でも、それが魔術師なんだろうし、実際最近は色々と面倒らしい。何でも、師匠筋が同じ家あたりから色々と狙われているとか何
とか。
「だいたい…………ううん、ちょっと待って」
ふと、遠坂は何かを考え出した。
「……遠坂?」
声をかけると、遠坂は綺麗な笑顔を顔に貼り付けてこっちを向き、言った。
「いいわ。呼んでも」
「……え?」
「呼んでもいいって言ったの」
「いや……なんでさ。今の今――」
「ちょっと考え直したの。士郎が呼んだのは魔術師としてじゃなく、お客としてでしょう? だからまぁ、いいかなって」
「……本当か?」
「本当よ」
なにか釈然としないが、あまり疑うのも問題か。
「分かった。じゃあちょっと電話してくる」
「凛。いいのですか?」
「ん?」
士郎が電話をかけている姿を眺めていると、セイバーが小声でそう言ってきた。
「ついこの間も盗視しようとしてきた者がいたばかりではないですか。シロウの客人というのもおそらくは魔術師。たとえ本当に底意が無いとしても、あまり内
に入れるのは得策ではないと思いますが」
セイバーのそれは正論だ。魔術師が自分の工房に見ず知らずの他人を入れるなんて、馬鹿げている。でも。
「大丈夫よ。部屋に入れたりなんかしないから」
「? どういうことです?」
「ここは時計塔で、お互い魔術師よ?
魔術師がのこのこと他人の城にやって来るなんてありえない。十中八九、中に入ってしまえば何とかなるような策でも講じて、盗むつもりなんでしょうね。実
際、結界やトラップなんて侵入対策が前提だから、内側は手薄なのは事実だし。
でも生憎と、こっちには内側にこそ最強の障害がいるわ」
そう、魔術師泣かせのとんでもない対魔力を誇る、セイバーが。
「ふふっ。うちのシロウを騙してなんのつもりか知らないけど。顔見せた瞬間ぶっ飛ばしてやるんだから」
何やら不穏な空気をひしひしと感じる中、俺は電話をかけていた。まだ沙夜が部屋に帰ってない可能性もあったけど、それならそれで伝言を残せばいいし。
帰ってるなら帰ってるで、待たせるのもなんだし。
それに、背中に感じるセイバーらしき視線が痛い。腹を空かせた虎も危険だったが、腹を空かせた獅子も危険なのだ。早急に昼食を願わねばならない。
『はい、ミカナギですが』
何度目かのコールの後、繋がった。声は英語で、おそらく若い男。ミカナギというのは沙夜の名字だろうか。
「こんにちは、衛宮士郎といいます。沙夜さんはご在宅ですか?」
『はい、帰っていますが』
「では、伝言をお願い出来ますか?」
『ええ。……どうぞ』
「OKです、是非来てください。部屋の場所は――――です。それと、食材はこちらのを使ってください。以上です」
『分かりました。伝えておきます』
「ありがとうございます。では、失礼します」
受話器を置いて、電話を切る。それにしても、事務的な感じはしたが、使い魔にしてはずいぶんとしっかりとした対応だった。使い魔といえば動物が相場らし
いけど、人の言葉を喋っていたし。
いや、それ以前にあの声、どこかで――――
「電話、終わった?」
背中越しに遠坂が後ろから声をかけてきた。
「ああ。しばらくしたら来ると思――」
ピンポーン、とチャイムが鳴る。
「……なに、まさかもう来たの?」
「それこそまさかだろ。今電話終わったばっかりだってのに」
セイバーが全力疾走して来たならともかく、着物を着た沙夜が一分と経たずにここに来れるはずがない。
そう思いながら玄関に行き、扉を開けると――
「…………」
――両手一杯に袋を引っ下げ、お辞儀をした沙夜がいた。
「……は、早いな」
沙夜は笑顔でうなずいた。息切れなんて微塵もしていない。
「まぁ、それはともかく……どうぞ、上がってくれ。あ、荷物は持つよ」
沙夜から荷物を受け取り、上がってもらう。
と、背後に誰かの気配。振り返ると、不敵な笑みを浮かべた仁王立ちのあかいあくまがいた。
「――へぇ。他人の城に真昼間から乗り込んで来ようとするんだから、どんなのかと思えば……」
「……!」
草履が擦れる音。振り返ると、心底怯えた表情の沙夜が後ずさりしていた。
「……! ……!? ……!」
「あら、遠慮することないわ。上がりなさい、沙夜」
口をパクパクさせる沙夜と、目を細くして嗤う遠坂。まるで蛇と睨まれた蛙状態。そしてその中間で意味不明な俺。
「え? なに? 遠坂、知り合いなのか?」
「ええ。わたしの後輩よ、沙夜は。第二魔法関連の研究でよく一緒になるの。でも、まさか、ねぇ?」
抑えきれないような笑みを零す遠坂。そして何かの金属音。見ると、沙夜が扉に背中をぶつけてしまった模様。つまり逃げ場なし。
遠坂は俺の横を通り過ぎ、逃げ場のない沙夜を追い詰めて行く。
「さてと。話、聞かせてもらおうかしら?」
聞こえるはずはないけど、沙夜の悲鳴が聞こえた気がした。
「……! ……! ……!」
紙に書いたり身振り手振りをして必死に説明をする沙夜。不遜な態度でそれを聞く遠坂。口出し禁止令を出されて、おとなしく座って待機中の俺。昼食お預け
でへばってるセイバー。
「ふーん。要約すると、士郎がわたしの弟子だって知らなかったし、部屋が一緒ってのも知らなかったわけね。それで今日士郎に修復をしてもらう代わりに、お
昼ご飯を作りに来たわけか」
見ていて涙ぐましくなるまでの一生懸命な身振り手振りを交えた説明がようやく通じたからか、沙夜はしきりにうなずく。
「なるほどね。それは分かったわ。でも、ダメじゃない沙夜、男の部屋に上がろうだなんて」
沙夜は何か言いたげだったが、文字通り口答え出来ない。
「あのね、士郎だって男なの。ケダモノなんだから。沙夜みたいなおとなしくて無抵抗そうな子なら、これ幸いと襲いかかるわよ」
……何やらひどい言われ様。
「なぁセイバー。なんだろうな、これ。俺何かしたっけ?」
遠坂に聞こえないよう、セイバーに小声で話しかける。
「しました。十分に」
「したって……何を?」
セイバーは呆れたような視線を向けてきた。
「シロウ。前々から思っていましたが、貴方は少々鈍すぎる。凛のことも少しは考えるべきです」
「……え。はい」
反射的に謝ったが、理解できない。俺が鈍くて遠坂が……なんなんだろう。
「士郎なんてもうアレよ。馬鹿。とんでもない大馬鹿なんだから」
当の遠坂は、沙夜に何やら俺が如何に馬鹿かを論じているし。
「遠坂、ちょっと言いすぎじゃないのかそれ」
「どこが?」
ムスッとした顔を隠そうともせず、遠坂は切り返してくる。
「いや……どこが、って」
「沙夜に、自分がわたしの弟子で部屋も一緒ってこと全ッ然説明してないのに?」
「いや、だってさ。魔術師はあんまり身内のこと喋っちゃダメなんだろ」
「……そう思うなら、なんで部屋に連れ込むのよ」
遠坂は呆れたように額に手を当てる。ていうか呆れてる。
「いや、昼食くらいならいいかなって思って。せっかく作ってくれるって言ってくれてるし」
「……ああもう」
遠坂は苛立たしそうに頭をかく。
「そもそも魔術使いの士郎に、魔術師としての在り方を期待するのが馬鹿だった……っ!」
「大丈夫か、遠坂」
「大丈夫なわけあるかー!」
遠坂は吠え立て、俺の襟首掴んでがくんがくんと揺する。
「そんな! 気を! 遣うんならあんったはもー!」
「ちょ、待っ、ストッ、とおさ」
反論も弁明も、謝罪すら許されずにひたすら揺さぶられまくる。
苦しい、苦しい、苦しい。三角締めはきついって遠坂。
と、急にそれが止まった。見ると、沙夜が遠坂の服を引っ張っていた。
「沙夜」
遠坂が声をかけると、沙夜は深々と頭を下げた。
「ちょ、待って、沙夜は悪くないわ。悪いのは全面的に超ウルトラスーパー馬鹿の士郎なんだから」
遂に最上級を3つも並び立てて馬鹿呼ばわりされました。
「それに、まぁ、うん……士郎も沙夜も、お互い大丈夫だって思ったのはある意味間違いじゃないし……わたしもその、ちょっとあれだったし……」
何やら遠坂はごにょごにょと言葉を濁す。
「遠坂?」
「……ううん、なんでもない。もういいわ。だから沙夜、顔上げて」
言われて沙夜はようやく顔を上げる。その表情はまだ申し訳なさそうというか、心配そうな感じだった。
「大丈夫よ、もう怒ってないから。沙夜はここがわたしの部屋だって知らなかったんだし、士郎は魔術師の在り方に縁遠いし。仕方ない……ってこともないけ
ど、まぁ仕方ないわ」
沙夜は心配そうに首をかしげる。
「うん、本当に怒ってない。ごめんね、せっかく作りに来てくれたのに」
遠坂は沙夜の髪に触れる。沙夜はくすぐったいのか、目を閉じて猫みたいにそれを受け入れていた。
遠坂はそれを微笑ましく眺めながら、沙夜に笑いかけた。
「昼食、お願いしていいかしら?」
沙夜はじっと遠坂を見つめて、ややあってからうなずいた。そして台所へと移動する。
「遠坂、いいのか?」
「いいわよ、今さらだし」
そう言って遠坂は、額に手を当てる。
「それにいい加減、セイバー限界に達しちゃうから」
遠坂の指差す方向を見ると、いつの間にやらテーブルにきっちり真顔で座っているセイバーがいた。その視線は全力で沙夜の動作一つ一つに注がれている。
「あのセイバー、説得できる?」
俺は答えた。
「いや、無理」
「……うわ」
思わず、感嘆の息を漏らしてしまう。だが、それも仕方が無い。
――テーブルに所狭しと並べられる、皿の数々。それらに盛られているのは、まるで今からパーティでもやるんじゃないかってくらいの量の、まるでどこぞの
一流ホテルにでも来ているような質の、視覚的にも嗅覚的にもおそらく味覚的にも素晴らしいだろう料理の数々。真昼間だってのに上等そうなワインボトルは既
に開けられていて、白くほっそりとした腕に支えられて、赤いワインが脈々とグラスに注がれている。
和装の良く似合う少女が作ってくれたのは、これでもかというくらい直球な洋食だった。
”修復”の対価とはいえ、沙夜一人に任せるのも悪いと思って手伝おうと思ったら”厨房は女の戦場ですから”と沙夜に筆記で伝えられて追い出された。出来
上がるまでヒマを持て余して席を外し、戻ってきて見ればこれだ。俺も遠坂もあっけにとられて口を半開き、気づいて慌てて閉じても、次々と運ばれてくる料理
を見るたびにまた開いてしまい、かれこれ数分そのまんまだ。セイバーは強敵というか好敵を前にしているせいか、さっきからずっと臨戦態勢で、許可が下りれ
ば今すぐにでも斬りかからん勢いだ。現に、既にナイフとフォークに手が掛かっている。
「…………」
沙夜はワインを注ぎ終えると手早くボトルを仕舞い、行儀良く一礼をして席についた。それを終わりの合図と見て取ったセイバーは、俺の方を向いて言った。
「シロウ、食べましょう」
「……え、あ、おう?」
セイバーの有無を言わさぬ迫力に圧倒されてようやく我に帰る。セイバーは曖昧な返事に一瞬眉をひそめるも、待ちきれないのか、許可が降りたと判断して即
座に手を動かし始める。その手を動かす早さは文字通り日本人離れしていて、俺には到底マネできないほど見事にフォークやナイフを操って自分の口に料理を運
びこむ。そして、その頃になってようやく「いただきます」と短く言った。俺と遠坂はそんなセイバーの様子に苦笑を零しつつ、セイバーに倣って食べ始めると
した。
――ブリテンの料理は酷評されることが多い。もちろん名物料理はあるし、ちゃんとした料理人が作れば不味いなんてことはないのだが、オーブン料理が多
く、食材には恵まれておらず、何より味付けが単純で飽きてしまう。特に、世界的に見ても味覚が優れているらしい日本人はなおのこと飽きやすい。
ブリテンにおいて大切なのは”みんなで食卓を囲んで楽しむ時間”であり、料理の味付けの善し悪しやバラエティーの多さは重要視されない。”家庭料理を食
べなければイギリス料理は語れない”という言葉の意味はこれだ。
しかし、セイバーがそれを理由に料理の味を納得するはずもない。加えてセイバーは、素材に手を余り加えず素材そのものの風味を引き立たせるような素朴な
調理方法や、口の中で味を混ぜるという日本の食べ方を知ってしまった。セイバーが故郷の料理を”不味い”ではなく”雑”と称してしまったのもここらへんに
起因している気がする。
――しかし、これは。
「……美味い、な」
なんかこう、普通に美味い。一口目だけ美味いブリテンの味付けじゃなく、何口食っても普通に美味い。やや薄めの味付けながら、しっかりと味が整ってい
て、でも深みがあるというか。噛むたびに口に入れるたびに味が染み出てくるというか。視覚的にも工夫が凝らされているし、食感も良く、食べやすい。いや、
やっぱり何より、それが最上級の褒め言葉って感じがするぐらい普通に美味い。
「前から思ってたんだけど……沙夜って、ブリテン育ち……だよな?」
沙夜はうなずき、小首をかしげる。
「いや、なんか……格好もこの味付けも完璧に日本のそれだから、ふと気になって」
沙夜は指を唇に当てて少し考えた後、紙に何か書き始めた。
【幼い頃から懇意にしてくださっている方が、日本の方なんです。料理もその方から教わりました】
「そうなのか」
沙夜はうなずく。おそらく、その日本人は相当古風な人物なんだろう。そうじゃなきゃ、ここまで見た目も中身も古風な純日本謹製の沙夜が生まれるはずもな
い。
そのまま食事は和やかに、穏やかに進んでいった。
でも、ほとんど会話が無かった。
セイバーは食べるのに夢中で、舌や顎を動かすという行為に”食べる”以外の意味を持たせたくなかったらしい。普段以上に食事という行為に集中力が注ぎ込
まれていて、ほとんど口を聞かなかった。まぁ、さすがに話を振られれば口は聞くが、常に食べ物が収まっている口で、である。噛んでるのか喋ってるのか分か
らない状態だから発する言葉は当然の如く謎ワード、たまーに自発的に言葉を発したかと思えば、
「沙夜、私は今までこれほど美味と思えるコーニッシュ・スパティを食べたことがありません」
とか、
「このホット・クロス・バンズは素晴らしいです」
なんていう、なんか微妙に作文風な料理の感想だ。まぁ雑としか思ってなかった自分の故郷の料理が、これほどの完成度で出されれば感激も一入なんだろうけ
れど、もうちょっと他に何か無いのだろうか。
遠坂は遠坂で口数が少なかった。詳しい経緯は知らないが、なにやら沙夜の謙遜の言葉を額面通りに受け取っていて、沙夜はあまり料理が出来ないものと思い
込んでいたらしい。それがフタを開けて見ればこの出来栄え、それも自分より5つも6つも年下の後輩にとあれば、料理の勝負に並々ならぬ対抗心を燃やす遠坂
にはかなりショックだったようだ。おかげで対抗心剥き出しで、料理を口に運ぶたびに考え込んだりうなずいたりを繰り返し、セイバーとは違った真剣さで食事
に取りかかっていた。
沙夜は沙夜で、やっぱり口が聞けない上に、見た目も中身も純然たる日本謹製の少女だ。食事は物静かに、が基本方針らしく、俺からしたら完璧としか思えな
い食事作法を以って、物音一つ立てずに食事をしていた。ちなみに食事作法はセイバーももちろん完璧で、遠坂もかなりこなれた感じだった。正直、たった一
人、食器を扱うのにガチャガチャ音を立てたり、嚥下に音を漏らしたりしていた俺は、なにやら情けない気持ちで一杯だった。
「はー、食べた食べた」
1時間もかけて沙夜の料理を攻略した後、俺はグロッキー気味になるまで一杯になったお腹をさすりながらそう言った。
遠坂も同じような状態みたいだったが、俺と違って焦燥感が滲み出ていた。その手が当てられているのは腹部前面ではなく脇腹。どうやら、食べ過ぎた、って
後悔している模様。
ちなみに、言うまでもなくセイバーはピンピンしていて、食後の運動とばかりに竹刀を握って素振りをしている。毎度毎度思うが、俺や遠坂以上に食べた料理
が、あの小柄な体の胃の中に雪崩れ込んだ後、一体どうなるのだろうか。
あと、意外だったのが沙夜だった。セイバー以上に小柄ながら、セイバーに負けるとも劣らぬ大食ぶりを披露した挙句、一人で皿洗いをしているのだから恐ろ
しい。まぁ、手伝おうとしても台所には近づけさせてくれないんだけれど。
「なぁ、遠坂」
「ん? なに?」
声をかけると、遠坂は脇腹に手を当てたポーズのまま、振り返った。
「魔力量ってさ、食事量と比例するのか?」
そんな質問をすると、遠坂は呆れたようにため息をついた。
「そんなわけないでしょ。まぁ、食べれば少しは回復はするし、セイバーとか沙夜見てたらそう思うのも仕方ないけど」
「なら、どこに消えるんだろうな。あの二人が食べたモノって」
「わたしが聞きたいっての」
遠坂はため息をついて肩を落とす。
「セイバーは、まぁ、なんかもう、ともかく。どうして沙夜まであんな大食家なんだか。ちっちゃい方が燃費いいのかしら……?」
遠坂がなにやら身体のサイズとエネルギー消費効率についての考察を始めようとすると、ちょうど洗物が終わったらしい沙夜がやって来た。お盆を持ってい
て、その上に湯飲みが4人分置かれている。
「ありがとう」
礼を言って、湯飲みを受け取る。入っていたのはお茶。しかしお茶と言っても紅茶ではなく、渋そうな緑茶だった。
さっきの昼食とのアンバランスさに苦笑しながら、口をつける。やや渋めだったが温度は丁度良く、飲みやすかった。
「それにしても、ずいぶんとご馳走になっちゃったわね。本当なら士郎だけのはずだったのに」
遠坂も受け取りながらそう言うと、沙夜はいいえと首を振った。沙夜はセイバーに湯飲みを渡しにいく。
「ま、これで士郎がちゃぁ〜んと修復すればいいんだけど、ねぇ?」
「む……」
遠坂が意地悪い笑みを向けてくる。
「失礼な。これでも修復は優秀な方なんだぞ」
「あら、そんなのは分かってるわよ。士郎は得意なの以外はてんでダメ、出来るか出来ないかの二択だもの。これは単にプレッシャーかけてるだけ」
遠坂はやはり、今にも楔型に尖った尻尾とか牙とか耳が生えてきそうな笑みを浮かべる。あかいあくまの降臨である。
「ふふっ。キッツイわよねー。前払いでここまでしてもらっておいて、やっぱ出来ませんでしたー、なんて、ねぇ?」
くすっ、というよりかは、ケケケ、という方が似合っているような悪質な笑み。
なんか遠坂は今日はやけに絡んでくる。もしかして、沙夜が遠坂を頼ってくれなかったのが気に食わなかったりするんだろうか。遠坂ってなんか面倒見がいい
とこあるし、ありえるかもしれない。
「それで、沙夜。とりあえず一息ついたわけだけど、いつ修復すればいいんだ?」
沙夜はセイバーとなにか話を、といっても沙夜は喋れないからセイバーが一方向でだが、話をしていたが、振り返ってなにか答えようとする。
でも、ああ、この問いはダメだな。いつ、なんて訊くと沙夜の性格からいって、いつでも、と答えるだろうから。こう尋ねるべきだろう。
「ていうか、今修復するの持ってる?」
沙夜はちいさくうなずき、うなじに手を当てる。ペンダントだろうか。沙夜は女の子らしい、どこか艶のある仕草でそれを外し、手に取って見せてくれた。
それは、途中でちぎれた黒い紐だった。
「……?」
俺は首をかしげ、セイバーや遠坂は小首をかしげ、なぜか沙夜も小首をかしげる。
「沙夜、これ……?」
訊こうとすると、沙夜は着物の上から手を当てて何かを探り始めた。
と、何かを見つけたのか、沙夜は襟元から胸の中に手を突っ込む。
何秒かそれで取ろうとしていたが、それでも取れないらしく、ついには前屈みになりながら深く腕を入れ始めた。
「ぶっ!?」
当然、そんなことをすると胸元が丸見えである。白い柔肌が覗く胸元が。着物でラインが隠れてよく分からなかったが、わりと"ある"胸元が。谷間に手が入
れられて揺れて変形する艶やかな胸――
「――痛っだぁあぁぁぁっぁ!?」
突然、目元に竹刀による一撃が入れられる。
「どこを見ているのですか、シロウ?」
激痛苛む眼前には、いつの間にやら竹刀を構え三白眼で睨みつけるセイバーが立ち塞がっていた。
「ま、待てセイバー! 俺は何も……っ!」
「沙夜、ダメじゃない、こんなケダモノの目の前でそんな無防備なことしちゃ。襲われちゃうわよ?」
そしてさらに、よく分かっていない沙夜に背を向けさせつつ、心底冷たい目で俺を睨みつける遠坂。
「ケダモノって何だよ!? 人聞きの悪いこと――」
「いい、沙夜? 士郎は万年発情期で年がら年中サカリまくってる霊長類ヒト科のオスなんだから。そんなカッコ晒しちゃ貞操の危機よ?」
「その通りです、沙夜。貴女は少々無防備すぎる。組み伏せられてからでは遅いのですよ?」
なんだかよく分かってないのか、それとも信じてくれてるのか。首を振る沙夜と、どういうわけかそれを諭そうとする遠坂とセイバー。
なんだろうこれ。新手のイジメだろうか。
とりあえず、女性陣は俺を無視して、沙夜の胸の中から取り出したらしい修復対象の話でわいわい騒いでる。
「沙夜――損傷――するのって――けど?」
「魔力――感じませんが――」
「でも――綺麗な――」
「凛――なのですから――には」
「分かってる――そこまで――」
何を話しているんだろうか。というか、ほってけぼりは止めてほしい。
「なぁ。修復、しないのか?」
そう言うと、ようやく振り返ってくれた。
「もう。せっかく見てるのに」
でも、文句を言われた。
「直してからでもいいだろ。とりあえずやってみるから、貸してくれ」
沙夜がうなずき、進み出てきて右手を伸ばしてくる。さっきので襟元が乱れたのか、襟の間から白い胸元が覗いているが、注視するとまた何か言われそうなの
で右手に視線を集めておく。
どうやら、手の中に収まる程度の大きさのものらしい。
「沙夜、士郎に触ると妊娠しちゃうわよー」
「するか!」
遠坂が茶々入れてきたせいか、沙夜は顔を赤くしておずおずと、けれどちゃんと手渡してきた。
良かった。触らないように渡されたりでもしたらかなり傷つくとこだった。
「ふーん。これか……」
手渡されたモノを眺める。楕円形の青い石だった。表面はガラスのように透明な感じで、石の奥の濃淡の濁りが綺麗に見える。
「どうですか、シロウ?」
「なにか分かる?」
セイバーと遠坂が、沙夜の横合いから尋ねてくる。
「いや……パッと見じゃ綺麗な石にしか見えないな。まぁやるだけやってみるよ」
意識を集中していく。
――イメージするは撃鉄。跳ね上げて魔術回路を起動、全神経が、否、衛宮士郎そのものが魔術のためだけのモノとなっていく。
「――――
修復
、
開始
」
行うは物の構造把握から派生する修復。
「――――基本骨子、解明」
――な、に?
「――――構成材質、解明」
――待て、これは。
「――――
修復
、
途中終了
」
魔術回路を閉じ、手元の青い石を見つめる。
「……これは、どういう……本当に?」
「ちょっと。どうしたのよ士郎?」
途中で止めたのを不思議に思ったらしく、遠坂は訊いてきた。
――どうする。こんなこと、話してもいいのか。
「沙夜……」
沙夜は、じっとこっちを見ていた。
口の利けない沙夜のその表情からは、なぜか言葉が読み取れた。
"やはり分かってしまったのか"という言葉が。
「……遠坂。真面目な話、していいか?」
「え? う、うん……」
多分話しても、いいのだろう。
沙夜は止めない。俺に相談を持ちかけた時点で、否、自らの手で修復できないと判った時点で、いつか誰かに知られてしまうと分かっていたからだろうか。
この青い石の秘密を。
「……遠坂」
一度、言葉を切る。本当に荒唐無稽な話だな、と心の中で自嘲する。
「この石、この星の物じゃない」
「……は?」
セイバーと遠坂は、一言目からあまりに突拍子も無いせいか、意味を掴み損ねて眉をひそめた。
けれど沙夜は、変わらずこちらを見つめている。どこか覚悟を秘めた表情で。
「シロウ。それは一体、どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味。この石はこの星……地球の石じゃないんだ。これ、火星の石だ」
「……ちょ、待って。士郎ちょっと待ってよ。火星ってあの火星? 地球の一個外を周ってる?」
俺は手に持った青い石を見ながら、ただうなずく。
「まさか、だって、そんなことあるわけないじゃない。火星って、この間ようやく無人機が着陸したばかりよ?
魔術師の、魔術のずっとずっと先を行っている科学のその最先端を駆使して時間もお金も人材も沢山かけてようやく!
……それなのに、普通の石ころ一つでとんでもない研究対象になってるのに、そんな綺麗な石が手に入るはずが」
ないじゃない、という続くはずの言葉は続かなかった。魔術師の手の届かない域に科学が到達してしまっているのを口にするのが許容しがたいのか、魔術師で
ある沙夜が科学でしか得られないモノを持っているのがショックだったのか。遠坂はいつになく冷静さを欠いているようだった。
でも、それも当然。セイバーだって言葉が無い様子だし、そもそもの俺自身信じられない。物の構造把握による理解で得た確たる情報だというのに、常識が蔦
のように絡みついてしまっている。
「そう、手に入るはずがない。でも……これは、火星の石だ」
否。石ですらない。これはそんなモノじゃない。
「…………」
沙夜は黙っている。でも、その視線は下を向くことなく、じっとこちらを見つめている。
強さと弱さが同居した瞳は何かを訴えかけているようで、かすかに動いた唇は何かを言い出したそうで、けれど俺にはそれは理解できない。俺はただ、自らが
得た事実を告げるだけ。
「信じられないのは、俺もそうだ。でも」
どれほど信じられないものであっても。
「この石――いや、結晶って言った方が良いか。これはずっと昔、少なくとも1000年以上も前に、現在の科学じゃ足元にも及ばないような高度な技術で人工
的に製造されたものだ」
――有史以来、人類は世界の理を理解し、科学はそれに導かれて歩んできた。
――そして科学は、いつしか魔術を追い抜き。
――かつて無数に存在した魔法を、ただの魔術へと堕とし続けてきた。
「名前は、チューリップ・クリスタル」
――科学が最後の5つの魔法をすら魔術へと堕とす日は、やがて来たり。
「機械を使って時空間跳躍を行う為の、キーだ」
――それでも科学は、人の進化と共に、歩みを、止めない。
感想 犬さんリリース・ゼロ作品以来ですねぇ〜 この作品は5月26日から6月26日までのリクエストのトップになっていた、アキトが型月の世界へという設定の作品です。 初投稿にして、複雑な設定になってしまいましたので大変かと思いますが、 どうやらFateのシロウが語りのようですね、 時代背景はFateのunlimited blade works(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)のEND後ということでしょう。 黒の醸し出す重厚な雰囲気と、アキトの存在自体の謎(ゼルリッチとか関係してたりして…) ロンドン描写など、細かなポイントで面白く作っておられます。 さて、シロウが修復する物とは何なのか非常に楽しみにしております ♪ 世界観云々はいいですが、また私が出てこないんです か? うん、多分…あくまでアキトが型月の世界にっていうだけだし… 何故なんです!? 私こそがナデシコのヒロインだと いうのに!! そうはいっても、題名もナデシコじゃないしね… この先のアキトの役どころすら読めない状況だから… メインを張らないわけはないでしょう? 少なくとも物語の主筋に係ってこないようなキャラと言う訳には行かない筈です。 でも、魔術師の園でお話が展開し続けるのか、他の展開になるのかも 判らないからね… 先の読めない感じが面白そうだと思うけどね。 型月キャラを出していたら私の出る幕は無いと言うわ けですか? もちろん、犬さん次第ではあるけどね、分りやすい展 開にしてくれているのかは後半を見てみないとね… でも、推理っぽいよさはあるよ♪ それに、キャラも立つように工夫を凝らしているしレベルが高い作品だからね… 余計先が読めない… 結局駄作家のレベルが低すぎて犬さんの考えている事 が分らないだけですか…情け無いですね。 感想追加 犬さん後編追加ってわけで、感想もこちらに追加させて頂きますね〜 さて、今回はみんなの食べっぷりと、謎の(爆)結晶チューリップクリスタルの登場ですね〜 まだアキトは出てこれないようですが、それでも糸は見えてますね。 この先は当然展開していく事でしょう。 期待大です! 所で…その沙夜さんって誰です? え、犬さんのオリキャラじゃないかな? そうなんでしょうか…って、そういうことを聞いてい るんじゃないです! ああ、もしかして… 彼女の持っているものを考えるといつも近くに居るん でしょう!? はぁ、確かにそんな感じだね… つまり、また妹 が増えたと見て間違いないんでしょうね… 多分ね。 あまつさえ、その 先に行こうとしてたりしないでしょうね? ははは、彼女の性格を考えると今のところ無いんじゃないかな… いえ、油断できません、今までそういうやからはいく らでも見てきましたから。 見つけ次第完全殲滅あるのみです!! ちょっと、それはやばいってば!! ああ、行っちゃった〜 目次 次話>> |