スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜
第二十三話「解き放たれしもの」
アクシズでの戦いから二日が過ぎ、現在連合、そしてネオ・ジオンでは和平への準備が始まっていた。
この和平への任はミスマル大将からのお達しでもあった。
そしてナデシコDは、現在サセボドックで整備を受けていた。
サセボドック
「では三日後の午前十時に、ニホンコアで和平会談を行うのですね。」
「うむ、そしてこの件は君達ナデシコに一任しよう。他の将兵は控えさせる。それに、セレス・ダイクンがそれを望んでおるのでな。」
「了解しました、拝命します。」
「では頼むぞユリカ。まあ彼女らもわかっておると思うがな。」
「はい、必ず成功させます。」
「うむ・・・それではな。」
ウインドウが閉じる。
「三日後かあ。」
ユリカは呟き、アキトのほうを見る。
「アキト、和平会談を今度こそ成功させようね。」
「ああ、今度こそな。」
ナデシコはトカゲ戦争でも和平を行おうとしたが、それは敵の罠だった。
だからこそ、旧ナデシコのメンバーは真剣そのものである。
「しかし今回は以前のようにはならないと思いますけど。」
「そうよね、セレスさんはもう争う気ゼロみたいだし、何かあってもハーリー君が向こうにいるからね。」
「何かあればすぐ知らせるって言ってたし、大丈夫でしょ。」
ルリ、ミナト、ユキナの三人が続けて言う。
「・・・」
だがラピスは黙々と何か作業をしている。
「ラピス、さっきから何してるの?」
疑問に思ったユリカが声をかけると、
「メール返信。」
「へっ?」
一同の頭に?マークが浮かぶ。
「だから、ハーリーにメールで返事を書いてるの。」
「・・・ちょ、ちょっと待ってくださいラピス。何故あなたがハーリー君のアドレスを知っているのですか?」
「私昨日の夜にレウルーラに通信してハーリーとお話してたの。その時に教えてもらった。」
「なっ・・・」
「ルリいなかったもんね。」
そういい再び作業にかかる。
「おや〜、ラピスちゃん行動はやいわね。」
ミナトが微笑みながら言う。
「友達としてアドレス聞いただけだもん。」
少し顔を赤らめてるのは、ご愛嬌だろう。
「でもよくローズちゃん許したよね、結構嫉妬深そうだったけど。」
ユリカの言葉をハーリーが聞いていたらコクコクと頷いているだろう。
「私、ローズとも話したけどそんなことじゃあ怒らないって言ってた。浮気しなければいいって。」
「ハーリーの野朗あんな可愛い、しかもスタイル抜群でお淑やかで性格のいい女性を落とすとは・・・リョーコにも見習って欲しいぜ。」
サブは拳を握り、羨ましそうに呟いた
「サブ、お前がそういうことをするからだろ。」
アキトが呆れたふうに言う。
「リョーコは他の女性と俺が話してるだけで怒ることもあるんだぜ。」
「今まで前科があるから、リョーコさんも敏感になってるんでしょうが。」
ユキナの咎める視線に、サブはひるむ。
「うっ・・・」
「その通りだな、サブ。」
「アキトも人のこと言えるか?だからハーリーが怒ったんだろうが。」
「うっ・・・」
今度はアキトがひるむが、
「俺は見境なしに手出ししない。」
「まあそうだけど、アキト君はね・・・」
「無意識に手を出すから。」
と、ユリカにまで言われてしまいアキトは項垂れる。
何とか話題を変えようとアキトは試みた。
「そ、そういえばサブ、リョーコちゃんは許してくれたのかい?」
「ああ、ハーリーも後で説得してくれたおかげでな。助かったぜ。」
「そうか、よかったじゃないか。」
「しっかしあの野朗いつの間にあんな映像をとってたんだよ?マジでびびったぜ。」
「サブも似たようなことをやってるじゃないか、彼が影響を受けたんだよきっと。」
「じゃあ将来ハーリーはサブロウタみたいになるってこと?・・・何か嫌ね。」
「おいおいユキナちゃん、どういうことだよ!?」
ユキナの言葉にサブが反論する。
「だってハーリー君って女性に対して一途でしょ、むしろ木連の軍人っぽいけどサブは逆だから。」
「俺だって木連軍人だぞ・・・」
「時の流れって怖いわねえ。」
サブは止めを刺されガックリとなる。
「ルリちゃん、そういえば俺のオーキスは送られてきたんだよね?」
「はい、今朝方月から来ました。」
「でもよくあんなものがもう一個あったよね。」
今まで喋らなかったジュンがアキトに言う。
「ジュン、そんな言い方ないだろ。あれは予備用らしいから運がよかったけどな。」
「オーキスは建造費に弾薬費がすごいからそう簡単には作れないってアカツキが言ってた。」
「俺はそのことで嫌味を言われ尽くしたよ、エリナとかプロスさんとかアカツキとか・・・」
「まあまあアキト君。そう落ち込むことないでしょ。」
「うう、味方はミナトさんだけです。」
あまりにも精神的にキツい仕打ちを受けたアキトに、ミナトの言葉は暖かった。
と、
「(ラピス、私にも後で教えてくださいね。)」
「(ルリならいいよ、ハーリーも構わないと思うし。)」
などという会話があったのは秘密だ。
格納庫
「よ〜し搬入終わったら点検だ。かかれ!!」
「う〜す!!」
ウリバタケの号令が響き、整備班が各機体の点検にかかる。
「ウリバタケさん、やはり問題は・・・」
「ああ、エネルギーの量は大丈夫なんだが、銃身がなあ。会長さんもよくこんな武器を作らせたもんだ。」
ウリバタケと香織が一つのブロック部の前に立ち、それを見上げていた。
「しかしテストもしてないですから、やはりデータ不足ですね。」
「まあ計算上耐えられるらしいが、試射してみんことにはなんともいえないな。以前俺も似たようなものでミスしてるからよ。」
「ミス・・・ですか?」
「ああ、パワーなどを追求しすぎて機体が耐えられない欠陥品を作っちまったのさ。Xエステバリスっていうんだけどよ。」
「そうなんですか、じゃあやはり。」
「これを使うような戦いは起こらないと思うから、時間が出来たらにするか。」
「わかりました。」
そう言い香織はスイッチを操作し、ブロック部を閉じた。
と、別の場所では・・・
「エリナさんどうですか?」
急遽こっちにオーキスや補給物資といっしょに来たエリナがデータに眼を走らせる。
「やはりサイコミュの反応が上がってるわ、素晴らしいデータよ。」
「ニュータイプ同士の接触が一因のようね、とても興味深いわ。」
イネスも手元のデータを見ながら返す。
「すでに消滅したとされるニュータイプ、人の革新ともいえる存在か。」
「でも俺はそんなすごいものじゃありません。ただの人間ですよ。」
「・・・そうね、でも少し特別な力を持ってるのは違いないわ。A級ジャンパーやマシンチャイルドと同じように。」
シンは頷きながらも、愛機に眼を向ける。
「もうこいつに乗らなくていい世界が、来てくれますかね?」
「それはわからないわ、でもあの戦いが間違いなく第一歩になったはずよ。」
イネスの言葉にシンはセレスを思い浮かべる。
「(あいつも分かってくれたんだ、人は必ず分かり合えるようになるんだ。)」
そんなシンを見てエリナは微笑む。
「あら、あなたも彼女のことを想ってるのかしら?」
「へっ!?」
「若いわね、シン君も。」
「ちょ、ちょっと何ですか?エリナさんもイネスさんも急に。」
「聞いたわよタカヤ君から。」
「なっ!?」
「お熱い会話をしていたようね、あっちこっちで言ってるわよ。」
バッとタカヤを見ると、香織と話している姿が確認できる。だが、香織がこっちを見、
「シ〜ンおめでとう、応援してるわ!」
などとのたまいやがった。
ビシッ タカヤがシンに向かってサムズアップをする。
そしてシンはというと・・・
「貴様かー!!」
激昂した叫びが格納庫に響く。
ふるふると震えながらタカヤを睨みつける。
「おいおい何言ってるのさ。ははは・・・は!?」
だがタカヤはシンを見て戦慄することになる。
眼が・・・イっていたから。
「何が楽しくて言い触らすんだよ!貴様のようなやつはクズだ!生きていてはいけないんだ!!」
若さあふれるセリフを叫び、突進していく。(BGM ゼータ○鼓動)
「死ねよやー!!」
「甘い!」
シンの飛び蹴りを軽やかに回避する。
「お前だって似たようなこと言ってただろうが!」
「香織にしか言ってねえよ!大体俺とセレスはそんなんじゃ」
「本人はまんざらじゃなさそうだったがな・・・」
「えっ?」
「喜べ馬鹿。ユウイチが脈ありだって教えてくれたぜ。」
「・・・」
怒気が消え、シンは静かになる。
「チャンスを逃すなよ、こうでもしないと奥手のお前は動かないからな。」
「・・・悪い、タカヤ。」
レウルーラ リビングルーム
一方レウルーラでは和平への資料などを整理し、シンとは違いセレスが苦労しているようだ。
忙しげにデータを見回し、引き出していく。その横にはIFSが発光しているハーリーの姿もあった。
「すまないわねハーリー君、手伝ってもらっちゃって。」
ジャラ・・・
「いえ、僕なんてこんなことしか取り得がありませんし・・・」
ジャラジャラ・・・
「そんな下卑しないで、あなたは十分強さを持ってるわ。でもね。」
ジャラジャラジャラ・・・
セレスは一旦口を閉じ、身体をプルプル震わせ前方を睨みつける。
「一番働かなきゃならない面子が何ぐーたらしてんのよ!しかもどっから持ってきたその麻雀は!!」
かなりの大声でハーリーは痛そうに耳を押さえていたが、前にいる六人はあまり聞こえていないようである。
「こ、この(怒)」
ぶち切れ寸前のセレスを横目に、
「ツモったぜ。」
「うわ、あんたイカサマしたでしょ。」
「ユウイチさん、何でそんなに引きがいいですか?」
「・・・負けた。」
もうお分かりだろう、ユウイチ、レミー、ローズ、シズだ。周りには順番を待ってるのかミレイとエリの姿があった。
と、セレスは立ち上がり、ツカツカと歩み寄り雀卓に両手を着く。
「あんたたち、仕事しなさい!!」
「何言ってんだ?俺達はもう終わってんぞ。」
「あの量を?なら手伝いなさい!」
「やなこった、俺はそんなに器用なことはできねえし。」
「くっ、レミー!」
「ごめんなさい、夜更かしは肌に悪いのよ。」
「じゃあ私は何なのよ・・・ローズ!」
「私もう手伝いましたよ。」
ローズはすでにいくつかセレスの分を手伝っていた。
「うっ・・・ミレイ、エリ、シズ!」
「これはやはり溜め込んだセレスさんが悪いかと。」
「うんうん。大体子供にやらせる仕事ではありませんよ、セレスさん。」
「・・・」
何気に酷い言い様だが、やはり総帥としての仕事は多いのである。故にそう簡単には終わらなかった。
「私の周りは、薄情な人間しかいないの・・・?」
思わず目頭を押さえて呟く。
だが、
「あの、セレスさん。何なら残りは僕がやっときますから。」
「えっ。」
「ほら、僕マシンチャイルドですし、これの倍以上の仕事したこともありますから慣れています。徹夜すれば終わりますので。」
「あ、いやその・・・」
ハーリーはにこり微笑む。
「セレスさんは女性ですし、少し休んだほうがいいです。前の戦いから働きっぱなしですよ。」
「でも、ハーリー君もそうじゃ・・・」
「僕は大丈夫ですよ、身体は丈夫なほうですから。続きは部屋でやらせてもらいます。」
それだけ言い、データを詰めたディスク数枚を持って出て行った。
「は〜、まったく仕事の虫ってやつか?」
「でも、マキビさんあの戦いからほとんど休んでないんじゃなかったですか?ウイングゼロの修理に、セレスさんの手伝いと。」
「それに食堂でお手伝い・・・」
ミレイとシズの言葉に、ローズは頷く。
「そうですよ、いくら何でも身体を壊しちゃいますよ。」
「優しいわね、彼は。・・・ところでローズ、本当に大丈夫なの?」
「何がですか、レミーさん?」
「マキビ君を狙っている他の女についてよ。」
「・・・何を突然言うんですか?」
ローズは顔を引きつらせながら言う。
「だってマキビ君、最近女性士官の間で人気高いわよ。知らないの?」
「初耳です。」
「二度にわたる戦いでね、マキビ君に助けられた兵士も多いのよ。それに彼は優しい性格、炊事も完璧、などなどでね。
レナといっしょに食堂でもがんばってるし。」
「まあ、普通は放っておかないよな。そんな男いまどきあまりいないし。」
男のユウイチが言うのもどうかと思うが、レミーは頷く。
「ユウイチは相変わらずといったところね。」
「おいおい俺だって人気あるだろ?」
「まあ、パイロットとしてはねえ。」
「・・・ひでえな。」
項垂れるユウイチを無視し、ローズに向き直る。
「冗談よユウイチ。そういうわけで気をつけなさいよ、いきなり横から掻っ攫われちゃうから。」
「か、掻っ攫うって・・・」
「略奪愛ってよくあるのよねえ。女は本気になると怖いわよ。」
「(レミーは別の意味で怖いぜ)」
ユウイチはポツリと呟く。かつての記憶がよみがえった。
「レミーさんの言うとおりですよローズさん。私達の部下やブリッジメンバーも結構マキビさんのこと話してますし。
元連合でも、もう関係ないってかんじですよ。あとは可愛いとお姉さま方が言ってますね。」
「元々ここは女性ばっかの孤児院から始まってるから、女性士官の比率が高いしね、レウルーラの中は。」
ミレイやエリの言うとおり、レウルーラのメンバーは孤児院出身が多いのだ、ヴァルキリーチームも全員そうである。
セレスがそう選定したのだが、彼女らは幼少からいっしょにいたためその絆は並大抵のものではないのである。
お互いが信じれるから、強い力を発揮できていたのだ。
「へえ、そうだったのか。」
「ユウイチはあまり知らないからね、まあ聞かれなかったからだけど。」
「まあどうでもいいが、ある意味義理の姉妹ってことか。」
「そうですね、私もミレイもエリもシズも、そしてルカも・・・」
「みんなそんな状況だったから、恋なんてほとんど無かったんですよ。あまり男性にも縁がありませんでしたし。」
ミレイは昔を思い出すふうに言う。
「だからローズ、幸せってのは自分で掴むものよ。絶対手放さないようにね。」
「・・・そうですね、私もハリと離れるなんて想像したくありません。」
「じゃあもし私がハーリー君と付き合ったらどうするの?」
セレスが意地悪そうに尋ねる。
「(ハリとセレスさんが・・・)」
その場面を想像し、眼が前髪で隠れ、微妙な影とともに無表情になる。
ゴゴゴゴゴ・・・ という擬音が浮かび上がるほどのプレッシャーを放ち始めている。
「ローズどうし、えっ!?」
それに気付いたセレスはそのシンとはまた違うプレッシャーに気圧される。
「ふ、ふふふ、あはははは。」
周りの面子はローズの乾いた笑い声にドン引きだ。
「そうですねえ・・・もしそんなことになったら、ハリを完全に拘束してお仕置きですね。
例えセレスさんでも容赦なく、ヒートロッドを浴びせて・・・ふ、ふふ。いけない悦びにはまりそうです。」
薄笑いの中、全員やばい雰囲気を感じ取っていた。
「そうして私以外見なくなるまで」
「ストップ!スト――プ!!」
危険な発言寸前でセレスが止める。
「ローズそれ以上は拙いわ。正気に戻りなさい!」
「・・・セレスさん?」
「ハーリー君はそんなことしないから、ね。あなたなら分かるでしょ?」
「そうですね。ハリが浮気なんかするはずないですし。」
頷き、納得した顔を向ける。
「じゃあ私はハリに差し入れでも作ってきます。」
そう言いドアから出て行く。
「・・・怖かったわ。」
「ありゃマジでやりそうだな、嫉妬の果てってやつか?」
ユウイチは頬をかきながら言う。
「まあローズの気持ちも分かるわよ、ねえユウイチ。」
レミーが妖艶に微笑み、ユウイチを見る。
「うっ。」
思い当たる節があるのか、ユウイチは顔を歪めた。
「女は信じていた相手に裏切られると怒りしか浮かぶなくなるのよ、セレス。」
「・・・そう。」
「まああなたもがんばんなさい、カワシマ君を落とすためにも。」
「なっ!?」
セレスは驚愕に顔を染める。
「知らないと思ってるの?あんな顔すれば一発よ、ねえみんな。」
全員が頷いていた。
「応援してますセレスさん。」
「がんばってください。」
「・・・ガンバ。」
三人が言うが、セレスは顔を伏せてしまう。
ここでユウイチが耳元でさらに余計なことを言う。
「(まあいざとなったらローズみたいに、部屋に呼び込み押したお)」
「死ね!」
回し蹴りが側頭部にクリティカルヒットした・・・吹き飛ぶユウイチを誰も助けようとしない。
「・・・馬鹿?」
レミーの言葉に床に倒れたユウイチは言葉を返す。
「最近、愛が足りないんじゃない?」
「デリカシーが足りないのよ、あんたは。」
「・・・やっぱり私がやらないと。じゃあ終わったら片付けときなさいよ。」
そう言いセレスも後を追い出て行く。
「仕方ねえ、俺達も出来ることすっか。」
ムクッと起き上がり、ユウイチは首を回した。
ハーリーの部屋
「酷いな、こんなにあるなんて。」
ハーリーはその資料の多さにうんざりしていた。
それはほとんどが連合の高官、将兵の悪事が描かれていた。
「(僕が信じていたものはあの日全て消えた・・・)」
ローズがナデシコに戦いを仕掛けた日、あの時自分の運命は変わった。
初めて仲間を裏切り、そして自らの意思で戦場に入った。
そして・・・人を殺した。
何も初めてのことではなかったが、自分の意思で機体を動かし、相手を手にかけた。
殺すという感情を込めて。
それは戦艦の、ブリッジにいる時は感じなかったことだ。殺気が立ち込める戦場で、気を許したら自分が殺られる。
「あの人を倒せなかったのは、覚悟の違いなのかな?」
アキトは自分のことを強くなったと言っていた。
でもそれは別の強さであることを。
「君の優しさを、そして強さを俺は知っている。君は、復讐に生きてはいけないんだ!!」
アキトはそう言った、復讐に生きてはならないと。
思えばいっしょに訓練していたときも、
「復讐という感情は人を狂わせ、周りに破壊と混乱を招くだけの存在になってしまうんだ。俺も、そうだったから・・・」
自分がどういう状態かも分からず、ただひたすら戦い、そして死んでいく。
「(僕も、そうなっていたかもしれないんだな・・・)」
と、
「ハリ、ちょっといい?」
「ローズ?うん、どうぞ。」
部屋に来客用のウインドウが表示され、ローズの姿が映った。
そして部屋に入って来たが、その手には大皿を持っていた。
「それは何ですか?」
「これ?シチューを作っておいたの。ハリ最近ろくに休んでないから。」
「あ、ありがとう。そういえばあまりご飯食べてなかったなあ・・・」
「だからはい、栄養満点だから。」
「う、うん。」
ローズから皿を受け取り、見た目は悪くないシチューを恐る恐るスプーンで一口すくい口に運ぶ。
「わっ、おいしい。」
「・・・その反応、何か微妙ね。」
ジト目で言うローズにハーリーは言葉を返す。
「いや、ナデシコの女性陣は、その・・・」
女性陣は現在料理禁止をだされているのだ。正確には、厨房立ち入り禁止の間違いだが。
無論出したのはアキトである(爆)
理由は・・・言わずともわかるはずだ、ハーリーは以前試作と言いユリカとリョーコの料理を食したことがある。
結婚したから頑張る二人だが、結果は尊い犠牲を生むだけに終わった。
かつてアキトの絶叫でナデシコが揺れるほどだったが、今回はそれ以上の絶叫だったらしい。
生きていただけでもまさに奇跡である。アキト曰く、「レベルが・・・威力が・・・」とのことだが、
旧クルーの中でも特に酷い料理?をつくった内の二人がいるのだから、彼はしばらく悪夢にうなされたそうだ。
もっとも、アキトには他にも脅威と呼べる人物があと二人いるらしいが、詳しく聞いたことはない。
「っていうことがあったんだ。」
「そ、そうなんですか(汗)」
「まあアキトさんはさすがに同じ過ちは繰り返さないって豪語してたしね。」
「・・・」
「他にも」
「ハリ。」
ローズがハーリーの言葉を遮る。
「?」
「さっきからナデシコの話しかしてませんね。」
ムスッとした顔でローズが言う。
「そ、そうかな?」
「そうですよ・・・戻りたいんですか?」
その言葉にハーリーは曖昧な返事を返す。
「どう、だろうね。」
「まだこっちに来て日が浅いのはわかりますけど、ハリはもうレウルーラのメンバーなんですよ。」
「・・・」
「それとも、ルリさんやラピスさんがいるからですか?」
「なっ、何で二人の名前が出るんですか?」
明らかに慌てる仕草に、確信を得たというローズの顔。
「まったくもう。」
「ち、違うよ。僕にとって二人は守りたい人なんだ。」
「・・・分かってますよ、でもルリさんやラピスさんはどうですかね?」
「えっ?」
ズイッと詰め寄る。
「あの二人はハリを」
と、
「ごめんねハーリー君、やっぱり私も・・・!?」
セレスがそこに入ってきた。しかし、タイミングが悪い。
二人はかなり顔を近づけている、そして恋人同士。そこから導き出される結論は・・・
「ごめんなさいね、でもいい加減艦内風紀を乱さないで欲しいわ。」
「あ、違います!」
「セレスさん誤解ですよ。」
「あら?二人のことだからてっきり・・・」
何を考えているのか、ニヤニヤしながら二人を見る。
「「セレスさん!!」」
「あははは、ごめんなさい。ハーリー君、私も手伝うわ。半分もらうわ。」
「大丈夫なんですか?」
「君ばかりに苦労をかけさせないわ、総帥だもの。」
と、
「しゃあねえから俺達も手伝ってやるよ。」
ユウイチ達がドアから顔を出している。
「あんた達・・・」
「ほら、戻って続きやろうぜ。」
そう言いリビングルームに戻っていく。
「セレスさん、私達だって仲間じゃないですか。もっと頼ってください。」
「そうですよ、僕だってあなたに感謝してますし。」
「二人とも・・・そうね、行きましょう。」
三人もデータをまとめるため、リビングルームに向かって行った。
???
「・・・時は満ちました。」
暗闇の中、声が響く。
「目覚めなさい、私のしもべ達。」
そして場が薄明かりに照らされ、現れたのは多くのアンデッド。
だがその中には一際大きな空戦アンデッド、そしてシンとタカヤが戦った新種、いやあれより若干大きく、もう一種類別のもいる。
もう一種は、巨大な狼のような姿をし、他とは違う威圧感がある。だが、尻尾の部分が二つの蛇みたいになっていた。
「あなたたちが身を犠牲にしたおかげで、この星の剣達を見定めることができました。
そしてアレクト、ティシポネ、メガイラ。もう一度お願いします・・・最後の仕上げを。」
そして声の主は一度黙り、再び声を出す。
「ミラの園、浮上。」
サセボドック
『ルリ、連合本部から緊急通信。』
「緊急ですか?繋いでください。」
そして再びミスマルのウインドウが表示される。
「お父様、どうしたんですか?」
「ユリカ、今しがた樺太北西部に全長一キロの浮遊物体が出現したのだ。」
「浮遊物体?」
「そうだ、そこで君たちに悪いが簡単な調査を頼みたい。今動けるのはナデシコしかいなくてな。」
「調査ですか・・・了解です。」
「うむ、ナデシコならすぐに帰ってこれるだろう、頼むぞ。」
そうして通信が切れる。
「・・・ルリちゃん、どう思う?」
「わかりません。巨大な浮遊物体となると、人口のものですが・・・突然現れたというのが。」
「・・・ともかく、これより調査に向かいます。クルーは?」
「全員に連絡終了、発進準備できました。」
「ミナトさん、お願いします。」
「りょ〜かい。」
「ナデシコD、発進!」
そして数分後、ブリッジに主要メンバーがそろっていた。
「ユリカ、浮遊物体についてのデータは?」
「本部も突然の出現に慌ててるって。だからまるでわからないみたい。」
「・・・しかし何か嫌な感じだな。」
「シン、何か感じるのか?」
シンの言葉に全員が目を向ける。
「どうもな、胸騒ぎがする。」
「・・・」
と、沈黙が起こる中、イネスがユリカに話しかける。
「ユリカさん、ちょっと私の話も聞いてもらえるかしら?」
「へっ?」
「旧ナデシコクルーは、これを覚えているかしら?」
イネスは白衣のポケットから一枚のプレートを取り出す。
「それは!?」
「私がかつて古代火星人から受け取った、プレートね。」
その言葉にサブやシン、タカヤは驚愕である。
「「「!?」」」
イネスはそんな三人を見、再び話し出す。
「あのプレート、つまり古代火星人が私に渡したものなんだけど、今までずっと解析していたのよね。」
「何かわかったんですか?」
「あれは一種の情報媒体、重要な情報を記録させておくものだとはわかってるわ。で、その結果。」
イネスは全員を見る。
「あるものの姿が記録されていたの・・・何だと思う?」
アキトを見つめながら問う。
「何ですか?」
「・・・アンデッドよ。」
「ええ!?」
全員が驚きの声を上げる。
「信じられないことだけど、古代火星人はアンデッドの存在を知っていたようね。おそらく過去の地球のことも。」
「で、でもどうしてアンデッドが?あいつらが確認されたのは前大戦直後のはずじゃあ。」
「シン君の言うことはそうだけど、あくまでそれは私達の歴史上よ。」
「じゃあ、古代火星人は何でそいつらの姿をプレートに?」
「あと映っていたのはアンデッドだけではなかったわ、これよ。」
と、モニターに映しだされたのは、
「な、何だよこれ。」
そう、それはまるで怪獣だった。それも様々な種類が映し出されている。緑色から気味の悪いピンクと、大きさも違っていた。
「これはまったく別の場所、私達でいうなら違うフォルダに記録されていたというべきかしら?みんなはこの姿をどう見る?」
「どうって・・・怪獣に見えますね。」
ルリが正直な感想を言う。
「そうね、でもアンデッドではない別のものよ。そしてこの姿に該当するものがないか探していたんだけど、存在しなかったわ。」
「では、地球の生き物ではない・・・ということですか?」
「香織さんの言うとおり、まさに宇宙怪獣といったことかしら。過去の火星で何があったのか、何となく見えてきたわ。」
イネスはもう一つ、新しいウインドウを開く。
「もうひとつある。こっちはなんて言うのか、メモみたいなものだったの。」
「メモ?」
「 ええ、解読するのが大変だったけど。内容はこうよ。
『青き星に眠りしもの、そのものは道を閉ざすもの。飛来せし厄災より守る守護者。
仕えし魔は死せず、黒き巨人は全てを滅するものなり。白き巨人の目覚めまで、外来を全て受けず、世界を閉ざす者なり』ってね。」
イネスの言葉は、一言で言えば訳がわからない。
「何だろうね、まるで日記みたいだけど。」
アカツキが感想を言う。
「そう、日記よ。私はこれを日記みたいなものと考えていたの。仕えし魔は、アンデッドのことかしら。
そして厄災というのが、あの記録されていた怪獣らしきもの・・・」
「でも、何でそんなことをプレートに?」
「提督、もしかしたら彼らは私達に警告をしてきたのかもしれない。このことをね、だからあの時私にプレートを渡した。」
「警告ですか?」
「タカヤ君、さっきの中にあった白き巨人と黒き巨人。何だと思う?」
「えっ・・・わかりません。」
「もしこの二つが実在すれば、そして私の推測では・・・古代火星人は滅びの危機にあったのかもしれない。」
「な、何だって!?」
「だからボソンジャンプの遺跡を、そしてプレートを残して行ったのかもしれないの。私達にも同様の危機が迫ることを教え、
かわすためにね。」
イネスの言葉はあまりにもSFに満ちていた。
「彼らは危機に瀕し火星を捨てさらなる外宇宙に行ったのかもしれない。まったく別の銀河、もしくは別の世界に。」
「そのためのボソンジャンプ、時空転移だったのかもしれないわ。」
そして、ユリカはしばらく口に手をあて考える仕草をしていたが、ルリに尋ねる。
「ルリちゃん、過去のデータベース、それもトップクラスの情報にないか検索できない?」
「可能ですが・・・バレたらまずいですね。」
「過去で一体何が起こったのか知る権利があるもん。電子の妖精なら、できるでしょ。」
そう言ってユリカはにっこり笑った。
「・・・悪人、ですね。わかりました、ラピスもお願いします。」
「わかった。」
「オモイカネによるデータベースへのハッキング、開始します。」
二人の妖精がハッキングを開始した。二人の周囲にウインドウが飛び交う。
「(これで少しは、何かに近づけるかな?)」
ユリカの心の中の思いは、現実となる。
十数分が経ち、ウインドウが全て閉じた。
「完了です、ダミーなどをばらまき証拠は完全に消しました。」
「少し手間取った。」
さすがはトップクラスの機密らしい。この二人でも苦労したようだ。
「で、どうだった?」
「はい、今わかりやすくスライドで出します。」
そうして大きめのウインドウが表示され、ハッキングしたデータが表示される。
「歴史では、人類が宇宙に進出した時代から七十九年後、コロニーサイド3がジオン公国を名乗り、独立戦争が始まりましたが・・・」
「おかしいのはここから。」
ラピスが言い、ウインドウに表示されたのは巨大な工場のようなもの。
「何だ、工場か??」
アキトの問いにルリは首を横に振る。
「違いますよ、これは・・・宇宙船です。」
「う、宇宙船!?」
リョーコが叫ぶ。
「だ、だってこのナデシコよりでけえじゃねえか!」
「全長は一キロを超えます。しかしこれは間違いなく百年以上前の記録です。」
「そんな馬鹿な!この時はまだ木連だって出来てないはずだぞ!」
ジュンの言葉は最もだった。これに匹敵する艦は木連以外なかったのだから。
「確かこの時代は、セカンドインパクトっていう厄災から復興してスーパーロボットがたくさんいた時代だよね、ルリちゃん。」
「はい、代表的なものは、マジンガー、ゲッター、コン・バトラーなど様々なタイプがあります。
それにタカヤさんがかつて乗っていたグルンガストシリーズも存在しています。」
タカヤはかつての愛機を思い出し、ルリに尋ねる。
「俺の四式の前ってことは、弐式、参式のことか?」
「データを見る限りそうですね、ダイゼンガーも、そしてシンさんの搭乗機、Hi−νガンダム。アキトさんのオーキス、
アカツキさんのトールギスもこの時代に活躍していました。」
「あれだけの機体のほかにスーパーロボット・・・すげえな。」
「しかしこれだけではありませんでした。他にこのような映像がありました。」
と、ウインドウが変わり、映像が流れ始める。
そこには、紫の鬼のような人型が、まさに怪物としか言いようのない人型と戦っていた。
「な、なんだ?」
「これが一際厳重にロックしてありました。他にも数点あります。」
そして次に似たような蒼い人型、紅い人型がさっきの紫の人型と共闘し、戦っているシーンが映る。
「・・・攻撃が効いてないね。」
「ええ、何かフィールドのようなものがうっすらと確認できます。しかし画質も悪く、詳しくはわかりませんでした。」
「しかし興味を引くのは敵対していた人型や怪物の方ね。あれはこの地球に潜んでいたのかしら?」
「おいおいドクター、あんな怪物が地球にいたっていうのかい?」
アカツキの言葉にも、イネスは真面目に返した。
「可能性は高いわね、この時代は地下勢力もいたのよ。今さら増えても変わらないわ。」
「・・・確かに。」
「この映像はここまでで、記録にはあの人型兵器がエヴァンゲリオンと呼ばれ、ネルフという組織にいたことしかわかりませんでした。」
「過去の地球は、今以上の戦禍があったと思う。」
ルリ、ラピスが言い、全員は考えていた。
もし同じようなことが起こったら自分達は勝てるのかと。
「・・・ここからが重要です。もう一つ一番厳重なフォルダがあり、そこには異星人との戦いの記録があったんです。」
「い、異星人だって!?」
シンが驚きの声を上げるが、それは最もである。彼らは人類は過去異星人との接触は無しと教えられていたのだから。
「まさか・・・古代火星人なの?」
「いえ、それらは様々な人種でした。バルマー、キャンベル、ボアザン、バーム、ゼーラと呼ばれていたそうです。」
「ってことは、少なくとも五つの異星人達が地球に来たってことか!?」
「そういうことになります、私達は知らなかったこと・・・いえ、先の映像と同じように歴史から消去したのでしょう。」
リョーコにルリが返し、全員が沈黙する。
「ここ百年の間、異星人は地球圏に現れていないから、ずっと隠されていたのかも。」
「そうね。ラピスの言うことが合ってるとすると、なおαナンバーズが消滅したのかが気になるわ。」
そう、地球で起こった戦いを静めたのはαナンバーズ。だが彼らはアンデッド殲滅時に消えたのだ。
「あの怪物や異星人艦隊にも打ち勝った彼らが、アンデッドに後れをとるなんて考えられないよね。」
ユリカの言葉に、ルリは頷く。
「そうです、今ある私たちよりも強い戦力を持っていたならば、ありえないことです。」
「じゃあ・・・残された答えは」
ヴィーヴィー
だが突如警報が鳴り、オモイカネのウインドウが開く。
『前方、巨大な浮遊物体を確認。』
「・・・この話はここまで。前方モニターに表示。」
『了解。』
そして映し出されたのは・・・美しい土地だった。
「な、なにこれ?」
「緑がある。水も・・・あれは、塔?」
だがその中心部らしき場所に、石垣で彩られ、高い塔がそびえていた。
「・・・常識を疑うわね。」
イネスの呟きが、ブリッジに響く。
「まるで神殿みたいだ。」
アキトには、塔が神殿に見えるらしい。
「アキト、全機を発進させて、周囲の捜査をお願い。」
「ああ・・・普通じゃないからな。」
パイロット全員が再び機体に乗り込み、出撃していく。
全機は出撃し、ナデシコの報告を待つ。
「みんな、特に異常はみられないそうよ。」
ユキナの通信が届き、アキトは指示を出す。
「よし、各機散開して捜査に!?」
だが、アキトは我が目を失った。
「アンデッド・・・」
そう、目の前に、突如アンデッドが現れたのだ。
それも一体ではない。何百という数だ。
「な、何だよ一体・・・」
リョーコが言い、シンは目を細める。
「ここがアンデッドの住みかってことでしょ。リョーコさん。」
と、
『ようこそ。』
声が響き、塔の前方に光があふれ、そこから姿を現したものは・・・
「な・・・黒い、天使?」
ユリカの言葉は合っている。
そこにいるのは、白い女性の裸体を中心に、左右に黒い翼が生え、上空に輪のようなものが浮かんでいる。
だが衣服に似たものも、黒に染まっていた。
『ようこそ、最後の楽園を守護する者たちよ・・・ミラの園はあなた達を歓迎します。』
「あれが、しゃべっているのか?」
タカヤは目の前の出来事に茫然とした。
声は、全員に聞こえるほど大きい。
ユリカは通信でなく、直接会話を試みた。
「私はナデシコD提督、テンカワ・ユリカです。」
『はじめまして、私は地球の守護者テオディア。』
「守護者?・・・あなたが、アンデッドの統治者ですか??」
『アンデッド・・・この子らの名はケロスといいます。そして。』
テオディアの前に三体の怪物が現れる。
『アレクト、ティシポネ、メガイラ・・・私と同じ、この星を守護するものです。』
「守護?」
『この青く美しい星を、外敵から守護するのが私の役目なのです。今私は完全に目覚め、あなたたちに感謝しています。
この星を守ってくれてありがとう。』
「い、いえ・・・私達は当然のことをしただけですよ。」
ユリカが照れくさそうに返す。
『これからは私があなたたちに代わり、この星を守ります。』
「守るとは、あなたがですか?」
『はい、この星を守るために・・・完全に封印を施します。』
「!?」
封印という言葉に、ナデシコクルー全員が反応する。
「ど、どういうことだ!封印だと!?」
ジュンが大きく声を出す。
『あらゆる外敵を寄せ付けず、この星への出入りを封鎖する・・・それが私の役目。』
「ま、まさか封印って・・・地球への行き帰を。」
『そうです、そしてそれこそが、この星を永久の平和に導く手なのです。』
「馬鹿な!今の時代に宇宙との行き帰ができなくなれば、人類の死活問題になるぞ!」
増えすぎた人類、それは戦争を繰り返してもいまだに増え、食糧などは農業プラントに頼る面もあるのだ。
シンの叫びも、テオディアは冷静に返す。
『そうでしょうか?人類が宇宙に出たことによって、新たな争いを生み出したのではないですか。』
「!?」
『あなたがたが一番知っているはずです。木連、火星の後継者・・・」
ブリッジクルー、アキト、リョーコ、アカツキ、サブが反応する。
『そして、ネオ・ジオン・・・』
シン、タカヤが反応する。
『人は、同じ過ちを繰り返そうとする・・・あの、αナンバーズのように。』
「何故あなたが、αナンバーズを知っているのですか?」
ルリの言葉に、テオディアは頷く。
『かつて、私と同じ役目を持ったものがいました。その名はガンエデン・・・しかしガンエデンは、αナンバーズによって倒されました。』
「!?」
『見せましょう、その時の光景を・・・』
そして、全てをテオディアの翼が広がり、強い光が生まれ包む。
全員が目をつむり、再び空けたときに飛び込んできた光景。
そう、そこにいたは伝説と呼ばれた部隊、αナンバーズだった。
多くのスーパーロボット、そしてリアルロボット達が、見たことのない機動兵器と戦い、撃破する姿が。
『彼らは勇敢に戦い、異星の人たちとも和解をしたのです・・・しかし、それゆえに多くの争いが起きてしまった。』
場面が変わり、テオディアに似た人型と戦い、撃破したシーンが見え、そこで映像は途切れた。
『私はこのガンエデンが消えたとき、初めて役目を果たすのです。そして、マシアフの血が途絶えた時も・・・』
「マシアフ?」
『それはこの楽園を守護するための巫女。強念者と呼ばれるものです。しかし彼女はガンエデンとともに自爆したとき、
私の動きを封ずるほどの念を放出したのです。私はそれによって封じられていました。』
「そのマシアフは、ニュータイプのことなのか?」
『それは違います、カワシマ・シン。あなたとはまた別の力・・・ガンエデンによって組み込まれた血。
しかしその血脈は、時の流れによって途絶えてしまった。』
テオディアは全員を見渡す。
『私は保険なのです。故に力はガンエデンほどは出せない・・・だからこそ、あなた達の力が必要なのです。』
「・・・ふざけるな!それで地球を封印するってのか!そんなもんこっちから願い下げだ!!」
『モリナリ・タカヤ、あなたも戦いのない世界を望むはずです。受け入れなさい・・・神の言葉を。』
「聞いてられるか!!」
『では何故、この戦いで和解したはずの異星の人たちはいなくなったのか、わかりませんか?』
「・・・どういうことです?」
『テンカワ・ユリカ、彼らは開発の進んでいた火星への居住を決めました・・・しかし、悲劇はその後に起きたのです。』
「約百年前の火星・・・まさか!?」
アカツキは何かに気付いた。
『そう、旧連邦軍は、月から逃げ込んだ人々といっしょに、異星の人間を抹殺したのです。』
「!?」
全員が目を見開く。
『そして、私は動きを封じられる間、αナンバーズが真にこの星を守る資格があるのか確かめるため、ケロスに仕掛けさせていたのです。』
そう、アンデッド達は無作為に攻撃はしていない。あくまで軍にしか行っていないのだ。
『だが、火星での事件が起きる前、αナンバーズを快く思わない人々がいたのでしょう・・・彼らは、
ケロスと戦っているαナンバーズもろとも、大量の核で焼き払ったのです』
「なんだって・・・」
シンは、更なる事実に愕然とした。
『私は人間に失望しました、彼らなら任せられると思っていた・・・例えマシアフがいなくとも。だが、全ては無に帰した。』
テオディアはナデシコを見つめ、言う。
『・・・私は、「この星」を守護するために造られた・・・今から、始めます。本当の平和のために。』
と、さっきまでいたアンデッド、ケロスの全てが姿を消す。
「!?消えた。」
そして、通信がブリッジに飛び込む。
「ユリカ!」
「お父様、どうしました?」
血相を変えたミスマルのウインドウが表示される。
「今しがた、全世界に突然アンデッドの大群が現れたのだ!」
「!?」×ブリッジメンバー
それは各パイロットにも伝わっていた。
「まさか・・・この「星」というのは、地球だけということなのか!?」
「テオディア、貴様!」
『・・・』
そして、テオディアの背後の塔が光り、それが先端に集まり連続で空に撃ちだされる。
「なっ!?」
それは、宇宙に飛んでいく。
「何だよ、あれ!」
「みなさん!」
リョーコの叫びを遮るように、ルリの声がコクピットに開く。
「艦長!?」
「今の光が、各ターミナルコロニーに直撃しました!」
「何だと!?」
アカツキが驚愕の声を上げる。
そして、再び撃ちだされる。
「!?今度はどこだ。」
「・・・つ、月のフォン・ブラウン、グラナダ、ネルガルドック。そして・・・ルナツー、各サイドコロニーが被弾!!」
ユキナの声に、全員が唖然とする。
「この位置からですって!?」
「・・・人類を根絶やしにする気なのか!!」
エリナ、ゴートの言葉に、テオディアは答える。
『選択を拒否したあなた達と同じ志を持つ者達、彼らも同じ選択をするでしょう・・・芽が出る前に、摘まなければならない。』
「だからって、民間人までも殺す気なのか!」
『私の封印は、完全なものではないのです。それは、時空転移・・・あなたがたの言うボソン・ジャンプは、防げない。』
アキト、ユリカ、イネスが顔をしかめる。
『故に、資格持ちし者、そして古代火星人・・・彼らも同じ。』
その言葉に、ルリは反応する。
「まさか・・・古代火星が滅びたのは。」
『私が行ったことです・・・マシアフの目覚めの前に、彼らはこの星に侵入をしようとしたから。』
「(やはり古代火星人が私にこのプレートを渡したのは、そういう理由だったのね・・・)」
「貴様、命を何だと思ってる!!」
『テンカワ・アキト、私はこの星を守護するもの・・・そうプログラムされているのです。』
「そうかよ・・・ならもう言うことはねえよな。みんな!」
タカヤが言わずとも、全員の考えは同じである。
しかし再び光があふれる。
そして、そこにはテオディアの周囲にいる三体と同じ、いや、こちらの方がサイズが小さいようだ。
全て、30メートルほどの大きさである。数は一八体。
「これが、ミラの園の戦力ってことか。」
ジュンが呟いた。
しかし、ナデシコクルーのように思ってるのは、彼らだけではなかった。
数分前 ルナツー
「ミスマル司令、一体何が起きたのですか?」
「うむ、ナデシコDが突如現れた浮遊物体に接触したのち、テオディアというものが現れアンデッドを世界中に
送り出したらしい。世界で戦闘が始まっている。」
「・・・こちらも、各コロニー、施設が攻撃され、膨大な死者が出ています。」
「ダイクン、君らは無事かね?」
「ええ、こちらも攻撃が来ましたが、何とか無事です。」
「そうか・・・すまない、和平会談を目の前にし、このようなことが・・・」
「あなたのせいではありません。」
と、セレスを遮り、一人の少年が飛び込んできた。
「ミスマル司令!」
「マキビ君か・・・」
「ナデシコは、ナデシコは無事何ですか!?」
「ナデシコDは現在樺太、アンデッド本拠地にいる。恐らく彼らも、戦闘を始めると考えられる。」
その言葉に、ハーリーは飛び出して行った。
「・・・まったく、あの子は。ミスマル司令、遺憾ながら私たちも救援に向かいます。」
「!?いいのかね。」
「はい、ようやく掴みかけてきたものを・・・得体のしれないものに壊されるわけにはいきません。
すぐに各残存艦隊を各地に降下させます。」
「頼む。」
そうして、ウインドウを閉じる。
格納庫
走ってきたハーリーは修復されたウイングゼロのコクピットに飛び込む。
すぐに火をいれ、モニターに各部の状態が表示される。
「(ゼロシステム問題なしエネルギー系統オールグリーン各部正常武器は・・・駄目か。)」
と、ケンから通信が入ってきた。
「おいハーリー!忘れもんだぜ。」
そうして指さす先には、ツイングラビティバスターライフルがあったのだ。
「ケ、ケンさん・・・どうやって?」
「俺を誰だと思ってる?以前のやつにさらに改良を加えておいた。フルパワーでも三発なら放てるぜ!」
「ありがとうございます。」
「おう、言って来い!」
そしてハッチが開かれ、ウイングゼロは飛び出し、地球に向かう。
「・・・若いねえ。」
そして、艦に放送が流され、整備班は機体のチェックを始めた。
「私とローズ、ユウイチはこのままレウルーラで樺太へ。ミレイ、エリ、シズは各ムサカに分かれてミスマル司令の指示に従って!」
「了解!!」×全員
そして時間は戻る。
地球 ミラの園
「ん?」
シンは何かを感じ上空を見る。
と、太陽に紛れてシルエットが映る。
ナデシコD ブリッジ
「上空よりグラビティブラスト!」
「へっ!?」
ラピスの報告にユリカは反応する。
そしてそのグラビティブラストは前にいるアレクト、ティシポネ、メガイラの集団に向かう。
アレクト、ティシポネ、メガイラ達は回避するが、そこに空洞ができた。
「い、今のって・・・」
見覚えのある、二筋の漆黒。そして、
「ナデシコ、フィールドを!」
「!?」
聞き覚えのある声。そしてそれを聞いた各機、ナデシコDはすぐさまフィールドを張る。
そして天から高速で降り立つ白き翼。
それは前に展開していた翼を左右に広げると同時に、両手に持っていたものを左右に向けた。
「ターゲット・ロック。」
そして二つの砲門から漆黒の光が放たれ、横に軸に沿って回るように動かし、一回転した。
それらはフィールドによってそれていくが、フィールドを持っていないアレクト、ティシポネ、メガイラの三分の一が消滅した。
そして、再び上空に舞い、ナデシコDの前に降り立つ。
「・・・来て、くれたんですね。」
モニターに映る、白き翼の機体。
ルリが言い、ラピスは微笑む。
「「ハーリー(君)。」」
まるで天から降り立つ天使のように、ウイングゼロは翼を開く。
「・・・みなさん。」
モニターにハーリーが映る。
「一度裏切った身分で言えることではありませんが・・・僕も、いっしょに戦わせてください!」
アキトと戦ったとき以上に、真剣な顔。そして、強い光を持った蒼い瞳。
「・・・当たり前だろ、ハーリー。」
「おめえは、俺達の。」
「大切な仲間さ。」
「行こうぜハーリー。」
「終わらせるためによ!」
サブロウタ、リョーコ、アカツキ、シン、タカヤが言い、
「君とこうして・・・肩を並べ戦う時が来たんだな。あの時の誓い、実現せるぞ!マキビ・ハリ!!」
「はい!アキトさん!!」
二機が再びテオディアを見、モノアイが強く点灯する。
「(ナデシコDのクルーが揃ったんだもん、負けるはずがないよ!)」
ユリカの言葉は、心の中で響く。
『運命を受け入れるのです・・・争いを忘れれぬ者達よ。』
次回予告
世界各地で始まる戦い・・・それは、人の未来を勝ち取るための戦い・・・
未来を決めるのは、神でも、運命でもない。
人の力、それこそが未来を創っていくのだから。
スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜
最終話「輝ける明日へ」
シン・アキト・ハーリー「絶対に死なない!!!」
タカヤ「神を断つ、剣だ―!!!!」
作者とキャラによる座談会
犬夜「みなさんこんにちは、犬夜です。本日はこの三人に来ていただきました。」
ユリカ「ど〜も!テンカワ・ユリカで〜す!!」
ルリ「テンカワ・ルリです。」
ラピス「テンカワ・ラピス・ラズリ・・・」
犬夜「ということで、テンカワ家の女性陣に来ていただきました・・・やっと華やかになったよ。」
ユリカ「今までほとんど男性で、女性はセレスさんとローズさんだけだったしね。」
ラピス「でも私たち、ここでは脇役扱い。」
ルリ「まったくです、全国のファンに喧嘩売ってますね。」
犬夜「でもなあ、ここはスパロボ界、ナデシコの世界ではないしね。」
ルリ「まあ、それはいいとしましょう・・・・しかし、何故私の相手はいないんですか!!」
ラピス「私もだよ。」
犬夜「いや、アキトはやはりユリカというのが自分の考え、というか決定事項?」
ユリカ「さすが作者さん、分ってる〜。」
ルリ「くっ・・・まあそれも許しましょう。私はそこまで嫉妬深くありません。」
犬夜「(他のSSではさんざんやってる気がするけどな・・・)」
ルリ「ですが!相手が一人もいないとは聞いてませんよ!!」
犬夜「だってなあ。」
ユリカ「まあまあルリちゃん、落ち着いてよ。」
ルリ「ですが私もすでに二十三です。気がついたら取り残されてるなんて嫌ですよ。」
ラピス「・・・」
ルリ「ラピス、あなたも少しは危機感を持った方が。」
ラピス「私はまだ十代だもん。年増のルリとは違う。」
ビキシッ
言ってはならないNGワードだ・・・
ルリ「な、私のどこが年増ですか!?」
ラピス「そうやって怒るところ・・・クスッ」
ルリ「〜〜〜!!」
ユリカ「(うわ〜作者さん逃げた方がよくない?)」
犬夜「(ユリカさんの言うとおりだな・・・俺もまだ十代だし、これ完結させたいから。)」
そして、そろ〜りそろ〜りと離れていくが、
ルリ「作者さん!」
犬夜「は、はいぃぃ!!」
凄みを増した顔、ギラギラと光る金の瞳・・・まさに夜叉だ。
ルリ「アキトさんとまでは言いません。ハーリー君を私に向くようにしてください!!」
犬夜「な、何故に?」
ルリ「最後に私は彼が好きということになってるんでしょう。昔なら見向きもしませんが今は別です!
彼も充分成長してますから、貴重なハリ×ルリのためにも!!」
犬夜「一度振ったくせに図々しいぞ。それならラピスとの同い年お似合いカップルの方が・・・」
ラピス「私は構わない、ハーリーは嫌いじゃない。作者の言うほうで」
ルリ「却下です!」
犬夜「元のクールキャラはどこにいったんだよ?」
ルリ「私だって結婚して幸せな家庭を持つという夢ぐらい・・・」
ユリカ「でもアキトはあげないよ。」
ルリ「・・・」
ラピス「私達がいつまでも夢を見ていたから・・・ルリ。」
犬夜「ハーリーはあきらめなさい、すでに二人は姉や友人だからね。」
ユリカ「きっと二人にも来てくれるよ、王子さまが。」
ルリ・ラピス「「(ユリカ(さん)、勝者の余裕ですね。)」」
犬夜「(でも実は、密かに考えてるんだよな、この二人とハーリーのお話。いや〜修羅場もいいかな。)」
という作者の考えに、どこかで黒髪で蒼い瞳の少年が寒気を感じ身震いしていた。
犬夜「では、いつものやつを。」
ユリカ・ルリ・ラピス「それではまた本編で!!」
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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