月、地球で戦闘が起こっていた頃、各コロニーにはある噂が流れていた。

『最近各コロニーで見えない敵からの攻撃を受け防衛隊が壊滅している。』

『敵は探知されずコロニーに接近できる。』

『防衛軍が必死に真実を隠そうといている』

など、コロニーの市民は不安にかられていた。

そして、この話が始まる数日前……






〜サイド5宙域〜

「くっ、何がどうなってる!」
「か、各警備部隊が続々とシグナル消失!」
「通信、つながりません!」
そのような報告を次々とくる。
司令官は、拳をコンソールにたたきつける。
「何とかしろ!モニターで視認はできのか!」
「さっきからやってますが、味方機の爆炎によって詳しくは……」
司令官の額に、さらに青筋が増える。
「ええいセンサーを切り替えろ! 他のコロニー警備隊、サイド3に打電も忘れるな!」
「!? 艦長、あれは」
サイド5防衛部隊の指揮官は、通信兵の言葉でモニターに目を向ける。
そこには……
「な、何だ……あれは一体!?」
何を見たのか、艦長は固まり、その艦は数秒後爆発した。






第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第四話「敵は……幽霊ロボット!?」







〜サイド4宙域〜

ここサイド4の宙域に一隻の戦艦が入ろうとしていた。
その戦艦は、コロニー防衛軍旗艦、ネオ・ジオンのレウルーラであった。
「やっと着いたな」
「そうね……ミレイもがんばってるみたいね。」
そのブリッジで話しているのは二人の男女。

ネオ・ジオンのエースパイロットの一人。
サクマ・ユウイチと、艦長のレミー・ローザであった。

「三か月ぶりか……」
「ええ、でも無事みたいでよかったわ」
「しっかしまさか噂がここまで的確だと、無視できないからな」
ユウイチはコンソールの上にある脚をどけ、コロニーを見る。
だが、艦長より偉そうだ……レミーはすでにあきれを通り越していた。
「入港するわ」
サイド4の1バンチコロニーから誘導ビームが放たれ、レウルーラは入港した。




〜サイド4 1バンチコロニー〜

レウルーラが固定され、二人は艦を降りると、目の前に女性に手を振る。
「よおミレイ、久しぶりだな」
「久し振りね、ミレイ」
ミレイと呼ばれた女性は敬礼を返し、ほほ笑む。
「はい、お久しぶりです。ユウイチさん、レミーさん!」
かつてネオ・ジオン軍ニュータイプ部隊の副隊長を務めていた女性だった。
その容姿は変わらず、あのころのままである。
「それで早速だが」
「はい、ついてきてください」
ミレイが歩き出し、二人も他の兵たちに待機するよう伝え、歩いていく。



〜中央管制室〜

「でだ、さっそく本題に入るか」
「はい」
レミーは二人と向き合いながらソファーに座る。
「まず……市民が噂している、ネットなどの情報のことだけど」
「残念ですが、ここ最近コロニーで防衛部隊が襲撃される事件が連続して起こっています」
「ええ、そのことは私たちも聞いてたわ。詳しくは知らないんだけど……」
レミーの言葉にユウイチは頷く。
ユウイチは資料に目を通しながら口を開く。
「俺もレミーもセレスといっしょに地球連合本部に行ってたからな。
 コロニーの現状と防衛軍の配置などでよ……」
「そうですね、まあいつも通りだったんでしょう?」
「ああ、かったるいお話だけさ。なあレミー♪」
隣にいるレミーの肩をポンッと叩くが、



「……よく言うわねあんた、まともに出席したことあったかしら?」

「はっはっは、何をいまさら……あるわけないだろうがふっ!?」



素晴らしい笑顔で言うユウイチに裏拳を叩き込み、ユウイチは後ろに倒れる。
「笑顔で言うなこの馬鹿! あんたのサボりでストレス溜まってんのよ!」
そんな光景を見、ミレイはクスクスと笑う。
「相変わらずですね」
「こっちは苦労してるのよ」
と、ガタンと椅子を戻し
「……いってえ〜、まあとにかくだ。」
復活したユウイチが真剣な顔をする。

「その敵とやらの情報はねえのか?」

真面目な顔になり、ミレイに尋ねる。
「そのことなんですが……噂の通りなんです」
「見えない敵ってか?」
「はい、まさにその通りです。レーダーやカメラに見えず、襲われた部隊はほぼ壊滅しています」
その言葉に、二人は言葉をなくした。
「おいおいいくらなんでも見えないなんてあるのか?」
「そうね、私も同感よミレイ。本当に何も映らなかったの?」
だが、ミレイは頷くばかり。
それは……深刻そうな表情と共にある。

「私も直接立ち会ったことがないのでわかりませんが、全部の戦いは必ず奇襲を受けていて……
 このことが原因で、兵の間はこう言われています。敵は「幽霊ロボット」と」

ミレイの顔は、冗談で言ってる様子ではなかった。
「はっ…「幽霊ロボット」だ? おもしれえじゃねえか、この俺に対しても通じるかねえ?」
ユウイチは軽く言ってるが、拳は強く握られていた。
無作為に襲いかかる敵に対し、怒りを感じているのだ。
「ユウイチ、落ち着きなさい」
「……レミーよォ、襲われた部隊には俺が鍛えた奴等がいたんだ。
 あいつらがやられるなんてただごとじゃねえ」
「!?」
レミーは目を見開く。
そう、そうだったのだ……その通りである。

「あいつらはあの戦争を生き残った猛者だぜ? それがやられるなんて……普通じゃねえ」

「そうですね、私も同じパイロットなので考えです」

やはり同じパイロット同士。
そういう事情はすぐにわかるようだ。
「あいつらを倒すなら、自慢じゃねえが俺達か……ナデシコのパイロットクラスじゃねえと厳しい。
 しかも姿を見ることなくなんてな」
一旦口を閉じ、ユウイチはレミーを見据えた。
「だが気になる点もあるんだよな」
突如、ユウイチが資料を放りレミーを見る。



「……コロニーを無視してること?」

「さすがだなレミー、その通りだ」

「確かに幾度の襲撃を受けても、敵はコロニーに対し攻撃を行っていません。
 まるで……戦うことだけが目的の感じがして……気味が悪いです」



ミレイは口に手を当て考えるしぐさをする。
と、ユウイチが目をつぶりながら喋り出す。
「幽霊なんてのが機動兵器を破壊するなんて考えられねえ、あるとすりゃ」
「どこかの軍事兵器」
「そういうこったミレイ。だがそれだけの能力を持った兵器となると……」
ユウイチは指を三つ立てる。

「相当大きな組織、現状ではネルガル、フルムーン、そして……連合だ」

確かに、現勢力ではそれらが一番である。
しかし……
「まさか、ユウイチはその三つのうちのどれかだと思ってるの?」
「まだわからん。あるいはまったくの第三者かもしれねえし……
 俺達の知らない組織が活動を始めたかもしれないな」
レミーとミレイは黙り、ユウイチの言葉を待つ。
「だが、第三者でもなければ……」
「なければ?」
次に来たのは、驚きの言葉だった。



「意外とネルガルだったりしてな」



ユウイチの言葉に、ミレイは真っ先に反抗する。
「そ、そんなはずないです! ネルガルはあの後コロニーに対し援助をしてくれたじゃないですか!」
「だからさ、自分とこの会社がある場所に攻撃するわけねえだろ?」
「ユウイチ、フルムーンは?」
「それも有りうるが、現状であそこに腕のいいパイロットがいない。機体ならあるかもしれんがな」
ユウイチが言いたいことを、レミーとミレイは理解した。
「未来が視えているなら、対処しやすいだろ」
「馬鹿!何言ってるかわかってんの!?」
レミーが激高しユウイチを睨み付ける。



「だが現状で俺達の目が届かない凄腕といやあ……ハーリーだけだ」

「……本気でそう思ってるんですか?」



ミレイが恐る恐る聞く。
「いや、俺は、俺たちはあいつのことをよく知ってる。
 あくまで可能性さ……犯人だなんて考えてない」
ユウイチはレミーを見、

「だから確かめるのさ。俺達でな!」

ニヤッと笑い、二人に言う。
「あんたね……性格悪いわよ。本気で怒るとこだったわ」
「悪いな、だからこそ確かめねえとな」
「そうですね、敵が誰にしろほっとけません!」
ユウイチはスクっと立ち上がる。
そしてミレイの頭にポンと手を置き
「そういうことだ、俺も今から防衛部隊に入る。すぐ出てくればラッキーさ」
「私も行きます」
ユウイチの後に続いてミレイが言う。
それを聞き、ユウイチは頷く。
「レミーは徹底的に索敵をしてくれ……必ず来る。俺のカンはそういってるんだ」
「わかったわ、じゃあ今から始めましょう」
「おう!」



〜サイド4宙域〜

「と、言って出てみたものの……そうそう現れるはずねえよな」
フェンリルの中でユウイチはあくびをしながら宇宙を見ていた。

「(だが、襲われたコロニーは各ターミナル、サイド7、6、5だ。
  もし順番通りなら必ずここに来る)」

時折レーダーをチェックしながら、レウルーラに通信を入れる。
「レミー、そっちはどうだ?」
『こっちは特に異常なしよ、しかし本当に来るのかしら?』
「敵は規則性の行動をとってるからな、順番通りならここのはずだ。
 しかも早いペースで襲ってるから確率は高い」
レミーはその通信を聞き、呆れたような声を出す。
『戦闘のことになると真面目ね』
呆れた表情のレミーをユウイチは不敵に笑う。

「俺はこっちが性分なんでな……ミレイ、そっちはどうだ?」
「いえ、こっちも異常ありません」

反対方向のミレイもいつもどおりらしい。
ユウイチもコロニー周辺に機体を向け、フェンリルを動かしながら警戒を始めた。
「(さ〜て今日は来ないのかな……早く来い幽霊ロボット!)」



〜???〜

「……随分増えたな」
計器の光が照らす中、ぽつりとその人物は呟く。
「まあいい、テストには多いほうが都合がいいしな」
両手をコンソール上に置くと、IFSをつけているのかナノマシンが発光する。
その光が、黒のバイザーを照らしていた。
「さあ、パーティーの始まりだ」
そっと、口元を歪ませ装置を起動させた。



〜レウルーラ ブリッジ〜

「各エリアはどう?」
「異常なしです、しかし本当に来るんでしょうか?」
全機からの報告をレミーに告げ、通信兵は疑問の声をだす。

「さあね、敵さんが何を考えているのやら……エリとシズはサイド1、2。
 ローズは月のナデシコにいっちゃったし、セレスはサイド3……みんながいれば心強いのに」

そんなレミーを見ながら通信兵は苦笑いをする。
「そうですか?私はローザ艦長やサクマ少佐、ルース中尉がいるだけで心強いですよ」
「ありがと、でもセレスは何を考えてローズをナデシコに派遣したのかしら?」
「……やはり連続コロニー襲撃で、ナデシコもかりだされるからじゃないでしょうか?
 自由に行動できる唯一の艦ですし、連合に掛け合ったんでしょう」
その言葉を聞き、レミーは頷く。
間違ってはいないのだろう。
「そうね、私たちはそこまで自由の身分じゃないし(それも一つの正解ってだけでしょう)」
と、レミーは心の声を出さずそうやって話している最中に

『ぐわああああ!』

全警備機と繋ぎっぱなしにしているウインドウの一つから断末魔のような声が響き、通信が途絶える。
「!? 今のは誰!」
レミーは顔を引き締め通信兵に聞く。
「レイヤー軍曹です。第五エリア、ユウイチさんとミレイさんが担当のちょうど真ん中です!」
「くっ、索敵班何をしてたの!?」
レミーは索敵班を見るが、首を横に振っている。
「いえ、レーダーには何も映っていませんでした!」
「そんなばかなこと! いえ、ユウイチ、ミレイ!」



〜警戒宙域〜

「ああわかってる! ミレイ来い!」
「了解!」
「レミー、他の奴らも警戒レベルを最大にさせろ!」
『わかったわ!』
通信を切り、フェンリルは最高速でポイントへ向かった。

「(来たか、だが何故わからなかった? うちの艦の索敵班はトップレベルのはずだぞ!?)」

と考えているうちにポイントへ到着する。
「!? こいつは……」
そこにあったのは、無残な姿になったギラ・ドーガの姿だった。
「ひでえことしやがる、しかもコクピットを正確に……ビームサーベルを使われたのか?」
コクピットを綺麗に寸断されており、生存は不可能だった。
周りを確認するが、反応はない。
「(どこだ……どこにいやがる?)」
だが、

「ユウイチさん、今度はウェイルさんが!」
「何!?」

ミレイの通信に驚き、すぐさまそのエリアに機体を向かわせる。
見るとギラ・ドーガがやはり切り裂かれていた。
「(馬鹿な……センサーには反応が無かったぞ!?)」
ユウイチは混乱しながらも、すぐに思考を切り替える。

「姿見せねえなら……全機固まれ!」

通信ではなく信号弾を上げ、他の機体に知らせる。
それを見、各場所にいた機体が来る。
だが数は二機減り、今は全部で六機である。
「ミレイ、何か見えたか?」
「いえ、レーダーにも反応なしです!」
他のメンバーも同じらしい。
「どうやら甘く見すぎていたな、相当なステルス機能を搭載してるようだ。
 敵さん腕もかなりのものだぞ」
ユウイチの言葉に他のメンバーにも緊張がはしる。



〜???〜

「固まったか……さすがに何度も通じるはずはない、か」
その声の主は、計器が稼働し続けていることを確認し、別の操作をする。
「悪いが、小道具使わせてもらうぜ」
IFSが光り、機体がある動作を行った。



そのころ、ミレイはモニターとレーダーから目を離さなかったが……
突如エネルギー反応が真下から来る。



「!?」
それは破裂し、すさまじい光を放つ。
「閃光弾!? くっ!」
目がくらむような光から逃れるため、素早くモニターの切り替えを行っていたが……
突如左から衝撃がきて吹き飛ぶ。
「きゃあああ!?」
慌てて姿勢制御をおこない、先ほどの閃光が無くなると
「そんな!?」
自分以外の機体が破壊されていた。
先ほどの衝撃は、誰かが自分を助けるためにやったのだろうと理解した。
しかし
「ユ、ユウイチさん!」
その中にはフェンリルの姿がなく、ミレイはすぐに全周囲を確認する。
「レミーさん、答えてください!」
だがウインドウがつながっていない証拠に、雑音しか聞こえない。

「……これは、ジャマー!? そんな……」

だが、ミレイは何かを感じた。
そう……後ろに。
ヤクト・ドーガのモノアイが後ろを見る。
そこに見えたのは



漆黒に染まった何かが、持っているものを振り下ろす瞬間だった……



はずだったが、それは右側から青紫の機体に体当たりをされ吹き飛ぶ。
ユウイチのフェンリルだった。
「無事かミレイ!?」
「あっ……はい」
ユウイチのウインドウが表示され、ミレイは緊張が一気に消えたようだ。
「こいつが犯人か、好き勝手にやって……あれ?」
目の前に視線を戻すと、先ほどの機体の姿がない。
「んな馬鹿な、さっきは目の前にいたはず!?」
ユウイチは周囲を見渡すが、やはり姿を確認できない。
「逃げやがったのか?」
「いえユウイチさん、まだ殺気を感じます……近くにいるはずです」
ミレイがユウイチにいい、それに頷く。
静寂が支配する、宇宙の中……
「(……どこだ?)」
静寂の中、心臓の音だけがはっきりと聞こえていた。
だが、そのフェンリルの背後に、闇から姿を現す者がいた。
「ユウイチさん!?」
「!?」
ミレイがそれに気づき、シールドからミサイルを放つ。
しかし……あまりダメージは与えられなかったようだ。
だがその間にフェンリルは素早く後方に蹴りをいれ、右腕でファングスラッシャーを投げる。
ニュータイプに負けないほどの反応の良さである。
だが牙は敵を斬りつけず、敵が持っているシールドに防がれてしまった。
そのシールドは、まるで十字架のような模様がつけられていたのをユウイチとミレイは確認した。
敵は全身のほとんどが漆黒で染め上げられており、右手には長い竿のようなものを持っていた。
しかし、二つのモノアイだけは緑に発光しており、その姿に二人は驚愕する。
「あ、あれって……」
「いや、まさか!?」
どこか見覚えのあるシルエットだったが、敵は腰裏に左手を回し、何かを投げつけてきた。
それは強い光を放ち、二人は思わず目をそむけてしまう。

「また閃光弾か! くそったれ!」

そして光がおさまり、そこにはすでに何もいなかった。
「……今度はどこだ?」
二機はお互いの背後を守るように背中合わせになるが、襲ってくる気配はすでになかった。
「逃げた、ようですね」
「ちっ、レミー聞こえるか?」
ユウイチはすぐさまレウルーラに通信をする。
『ああ、やっと繋がったわ。そっちは無事?』
「俺達二人以外やられた。そっちはどうだ?」
『何もなかったけど、相変わらずレーダーに反応はなかったわ』
「了解、これから帰還する……やることが出来たからな」
それだけ言い、ミレイを促し二機はレウルーラに帰還した。



〜レウルーラ リビングルーム〜

帰還した二人は、レミーに話があるといい他の兵が来ないリビングルームで向き合っていた。
「とりあえず無事でよかったわ、他のパイロット達が帰ってこれなかったのは残念だけど……」
「ああ……」
「そう、ですね」
三人はやはり悲しそうな顔をしていた。

「俺達でさえ苦戦、いや下手すりゃやられてた。
 AMがなかったとはいえ、あいつらを助けられなかったのは俺の責任だ」

ユウイチはただ、悲しそうに眼を伏せる。
「ユウイチさん……」
「すまないミレイ、お前の部下を俺は」
「やめてくださいユウイチさん! それをいうなら私も同罪です……
 みなさんは立派に職務を全うしたんですから……」
場が暗くなっていく。
と、そこでパンとレミーが手を叩いた。
「二人とも気をしっかり持ちなさい、私たちはまだやるべきことがあるのよ!」
レミーが二人に喝をいれるように声を上げ、二人は頷く。
「ああ、そうだな」
「仇はとらないと」
「それで、敵の情報は何かわかったのかしら?」
ソファーに座りレミーは足を組みながらユウイチに聞いた。

「……白か」

ユウイチが言う言葉にレミーは首をかしげ、ミレイは尋ねる。
「さっきの敵は白い機体じゃなかったですよユウイチさ……」
と、そこでミレイは何かに気づく。

レミーもユウイチがじっと何かを見てることに気づき視線をたどると……
自分の組んだ足に注がれていた。

ピキッと空気が割れる音がしたと後にミレイは語る。
「普段お色気を担当しているレミーが白。俺は今新しい世界に猛烈に感動して」
「「オヤジか(ですか)!!!」」



只今粛清中です、しばらくお待ちください。



嵐が過ぎ、二人はソファーに座りなおす。
「じゃあ敵のことはわからなかったのね?」
「すみません、私は何が何だかわからないうちに」
「安心しなミレイ、俺がとった」
申しわけなそうに言うミレイの言葉を遮り、ユウイチが言う。
「……まだ生きてたのね、まあそれよりもほんとなのユウイチ?」
レミーが驚きの声で言う。
ユウイチもさっきのダメージはもうないようだ。
さらに今まで交戦した部隊は全滅ばかりなので、生き残った彼等は初といえる。
「恋人を殺す気かお前は……交戦した俺には少しだが奴の姿が見えてな、これが犯人だ。」
そうして、持ってきたディスクを再生する。
設置されたモニターに映ったものとは、
「ちょっと、これって……」
「ああ……どっかで見たことあるだろ、似た機体をよ」
それはところどころぼけていたが、輪郭と緑のモノアイがはっきりと映っていた。
「そしてこれがコンピュータで解析したものだ」
もう一度操作し、出てきたもの。
それは三人にとって驚愕のものだった……



〜月面ネルガルドック ナデシコDブリッジ〜

昨日の戦闘後、ドックは修復作業を開始し、生存者も全て救助されていた。
そして今、ナデシコDに懐かしい人物が着いていた。
「着艦許可をしていただきありがとうございます、テンカワ中将」
ナデシコDブリッジには、今一人の軍人がユリカに向かって敬礼をしていた。
「長い航路お疲れ様です……ってことで、久しぶりだねローズさん」
そう言われ、ネオ・ジオンの軍服に身を包んだ赤い長髪の女性、ローズ・クォーツは微笑んだ。
「はい、みなさんもお変わりないようで。」

彼女はかつてナデシコDのクルーと死闘を繰り広げたガンダムエピオンのパイロットであり、
今ここいない青年の恋人でもある。

「サブロウタさん、リョーコさんとお子さんはお元気ですか?」
「ああ、子供も元気一杯さ。毎日会いに行けないのがちと残念だがな」
笑いながらサブはローズに言う。
ローズもナデシコのことはよく知っているので、最初は堅苦しいが後は普段の口調でしゃべっている。
「ジュンさんとアキトさんも、お変わりないようで」
「君もね」
「一年ぶりだが、そっちも元気でなによりさ」
そして、ルリとラピスにあいさつをする。
「ルリさんにラピスさんも、お久しぶりです」
「ええ、一年ぶりですから」
「ほんとに久しぶり」
二人はローズに言い、ローズは周りを見る。
ある人物がいないことに気付いたのだ。
「そういえばアキトさん、シンさんはどうしたんですか?」
「シン君は今サンゴさんの機体整備を手伝ってるんだ」
「……ああ、あのアルストロメリアですね。だいぶ痛んでましたし……
 香織さんやウリバタケさんが動き回っていましたね……サンゴさんは新しく配属された方ですか?」
そう尋ねる。
アキトは頷く、口を開いた。
「そうだよ、あと一人通信士のユウキさんがいるんだけど、彼女は今ドックの復旧に手を貸してる。
 後で二人を紹介するよ」
そうですかと言い、ローズは本題に入ろうと思いユリカに向き直る。

「それで、私がここに来たのはセレスさんの指示なんです。
 連合には手を廻してあるのでもうすぐ辞令が来ると」

その言葉に、ユリカは首をかしげる。
「セレスさんがですか?」
「はい、詳しいことは私もよくわからないのですが……何か、焦っていた風にも見えたんです。
 ただナデシコに行ってくれと」
その言葉に、全員に疑問が浮かぶ。
「彼女って考えなしに動く人じゃないよね、どうしたのかな?」
「……最近、各コロニーが襲われている事件が起きています。みなさんもご存じだと思いますが」
「そのことか、かなり話題になってるぜ」
サブが言い、ローズは頷く。
「私がここに来る前、セレスさんはレウルーラの戦力を分散したんです。
 これは初めてのことで、少しおかしいなと」
「セレス・ダイクンには何か考えがあったのでは?」
「俺も同じ考えだよ。心配しすぎじゃないかな?」
ジュンの言うことにアキトも同意するが、
「そのことで、少し」
ローズが喋ろうとした瞬間

『ルリ、通信だよ』

オモイカネがウインドウで表示される。
「今ですか……すみませんローズさん」
「いえ、別に構わないので続きを」
「そうですか。オモイカネ、つないで」
『了解』
そうしてウインドウが変わる。

『よう、お久しぶりだな』

「あなたは……お久しぶりですね、ユウイチさん」

そう、通信をしてきたのはレウルーラのユウイチだった。
「ユウイチさんどうしたんですか?」
『ローズもそっちに着いていたか、ちょうどいいぜ』
「ユウイチ君、どうしたんだ?」
アキトが尋ねると、ユウイチは真面目な顔になった。

『みなさん、最近のコロニー襲撃事件を知っていますか?』

思った通り。
全員の顔つきが変わる。
「そのことは、今私が話していたところです」
『ナデシコのみなさん、よく聞いてくれ。さっき俺はその事件の首謀者と思われる機体と交戦した』
ブリッジメンバーに緊張が奔る。
『奴の噂は間違いじゃねえ、まったく気づかれず倒す……そのままだった』
「君は無事だったのか?」
ジュンが聞くと、ユウイチはつらそうな顔をする。
『ええ、だが多くの部下が殺されました。俺とミレイは、ほとんど何も出来なかった……』
「ユウイチさんとミレイがいてですか!?」
ローズの驚きももっともである。

ここにいる全員が、二人の実力を知っているからである。

『だが無駄でもねえ、俺は……敵の姿を捉えることができた』
「本当なの?」
『ラピスちゃん、これからそっちに画像を送る』
それを聞きラピスはオペレーターのシートに行き、データの受信を始めた。
「……受信完了、大ウインドウに」
そうして映し出されたのは、



「ガ、ガンダム……」



ルリの言葉、それは間違ってはいない。
額のアンテナやモノアイがそれを語っていた。
だが、その姿は普通とはいえない。
「まるでブラックサレナだ」
アキトが言うとおり、そのガンダムは全身を漆黒に染め上げられ、
小さい翼のようなものが背から左右に伸びている。
だが、一番驚いているのはローズだった。
「ユウイチさん、この機体……」
『ああ、似てるだろ。お前のエピオン、そして……ウイングゼロにもな』
そう、そのガンダムは明らかにエピオンやウイングゼロ系統の機体といえるほど似ているのである。
「これが犯人ってことか、まるで絵に描かれてる死神だぜ」
『サブロウタさんの言う通りです。それで、ここまで似てるってのはどうかと思ってな』
「確かにそうですね。」
ユウイチのウインドウが、今度はローズの方を向く。

『ローズ、変な質問をするが……最近、ハーリーに会ったか?』

そのユウイチの質問に、ローズは首を横に振る。
「いいえ、最近はかなり忙しいらしくあまり通信もしてません。彼がそう言っていたので」
『……もし、犯人がハーリーだったらどうする?』
その言葉にローズは目を点にし、笑った。
「何を言うかと思えば、冗談にもほどがありますよ」
『ユリカさん、あなたはどう思いますか?』
「君がそう言うのには、何か理由があるの?」
それにユウイチは頷く。
『実は、戦闘の後ミレイが俺に気になることを』



『敵の雰囲気が、ハーリーを思わせる感じだったと言っていたんです』



「それは、彼女が感じたこと……ニュータイプとしての言葉ですか?」
ルリは真剣な顔でユウイチに尋ねる。
『実は戦闘前にそのことで話していたんだが、敵は機体以前にかなりの腕を持ってる。
 俺たちが掴み切れていない人物で該当するのはハーリーだ。まあほとんど考えてすらいないが』
「ユウイチさん、あまり戯言が過ぎると身を滅ぼしますよ♪」
ローズが何やら笑顔で物騒なことを言っている。
しかし黙って聞いていたアキト。
「……ユウイチ君、君の見解はどうなんだ?」
アキトがウインドウのユウイチに目を向ける。

『俺が本気でそんなことを信じてると思いますか? 
 ただ真面目なミレイが言うなんて少しおかしいと思ったんです。
 ローズもウインドウごしに殺気をぶつけないでねマジで』

ギラっとしたローズの目がユウイチを貫いていた。
「ユウイチさん、今回の被害ってどれくらいなの?」
なんとかそらすように言うラピスの言葉に、ユウイチは顔を怒りに染めた。
『今日やられた奴らを含んで、戦艦あわせてすでに何百人も死んだ……
 奴は、確実にコクピットを狙える腕を持ってる。俺も……部下を殺されました』
ブリッジを沈黙が覆う。
『奴は危険すぎる。今はやってこないがいつコロニーにその力を向けるか……
 そんなことになれば、死者はすぐさま億を超えちまう』
「ユウイチ君、宇宙軍には僕から回しておくよ。君たちにも情報が入ったら回すよう伝えておく」
『ありがとうございますジュンさん。でも犯人を特定できない以上、どうしようもないんです』
と、突然アキトがルリの方を向く。
「……ルリちゃん、彼に連絡してみるかい?」
「彼?」
アキトが頷く。

「ハーリー君にだよ」

その言葉に、ルリは……首を横に振る。
「何故ですか?彼はもう軍人ではありません。迷惑をかけることになってしまいますよ」
「まさかアキトさん、ハリを疑ってるんですか!?」
ローズが声を荒げて詰め寄るが、アキトは首を横に振る。



「いや、俺だって彼とは長い間いっしょにいた……例え命令されてもやるような人間じゃないさ。
 アカツキもそんなことは言わないやつだ」



そう、アキトはこの中で最も二人との付き合いが深いのだ。
自信を持って言えた。
「わかりました、ネルガル専用の特別回線で連絡を」
『ルリ、また悪いけど別から通信』
再びオモイカネが知らせてきた。
「またですか……後回しにはできないのですか?」
『出ればわかるよ』
オモイカネのよくわからない言葉に疑問を抱きつつ、通信回線を回してもらった。
そしてウインドウに映ったのは

『あ、やっとつながりましたね。みなさんお久しぶりです』

今ここで話題になってるマキビ・ハリ本人だった。
「「は、ハーリー(君)!?」」
ルリとラピスが驚きの声を上げ、他のメンバーも同様だった。
『突然ですみません、実はそっちで大変な……えっ!?』
ウインドウが周りを見渡す中、ハーリーは驚きの声を上げる。

『ローズ!?ユウイチさんまで!?』

「ハリ、お久しぶり」

『よ、よう……』

ローズは笑顔で、ユウイチは少しバツが悪そうな顔で言う。
『ど、どうしてローズがナデシコに?』
「私はセレスさんに言われてここに一時配属されることになったのよ」
『配属、ね……』
「二人とも、話がしたいのはわかるが少し待ってくれ。ユウイチ君」
アキトがユウイチを促す。
ユウイチは若干戸惑った感じで、口を開く。
『え、ええ。なあハーリー、変なこと聞くが……最近宇宙に上がらなかったか?』
『……どうしたんですかいきなり?』
『真面目に答えてくれ、重要なことなんだ』
周りを見ると、全員真剣な顔をしていた。

『まさか。大体上がる用事がありませんよ。研究が大詰めですし』

右手で後頭部をかきながら、答えた。
『そっか……ならいいのさ』
ユウイチのウインドウが少し後ろに下がる。
『それよりもナデシコは大丈夫でしたか? ドックごと戦闘に巻き込まれたって本社は大騒ぎですよ』
ルリの方を向きハーリーは尋ねる。
「心配いりませんよハーリー君。ドックも修復作業に入ってますし、私たちも無傷ですよ」
「安心しなハーリー、俺たちがそうそうやられるわけねえだろ?」
『そうですか……それを聞いて安心しました』
ルリとサブの言葉を聞き、ほっとした顔でハーリーは言う。

『用事はそれだけです。今はそちらも大変でしょうから、また今度ゆっくりお話しましょう。
 それでは失礼します』

手を振りながらウインドウが閉じた。
「ハーリーは違うみたいだね」
『そっすね、俺も安心しました』
ラピスとユウイチは笑いながら言うが、ローズだけは、少々考え事をしている。
「ローズさん、どうしたんだい?」
ジュンが尋ねる。
「さっきのハリのことで」
「あっ、あまりお話できなかったからねえ。でもプライベートでなら」
「いえ、そうじゃないんですユリカさん」
ユリカは?という顔をしている中、ローズは口を開く。
「さっき、ハリは明らかに嘘をついていたんです」
「へっ?」
「……何故そう思うんですか?」
「ルリさん、ハリは何かやましいことがある時、少し間をとって後ろをかくんです。こういう風に」
先ほどのハーリーと同じ動作をする。
「そうなのか、まったく知らなかったぜ」
「俺もだ」
サブやアキトは、この中で訓練など付き合いが深かったのだが、まったく気づかなかった。
続けてローズが、若干恥ずかしそうに言う。
「私も付き合ってたら自然に気づいてて……癖はわかりにくいですから」
と、照れくさそうに言う。

「(……これが、差なんですね)」

「(やっぱり、ハーリーのことをよく見てる)」

ルリとラピスも、そのことには気づいていなかった。
『で、あいつは何で嘘なんかついたんだ?』
「宇宙に上がったことを知られたくなかった、と思います」
「何故だ? どうして俺達に知られたらまずいんだ?」
「それは私もわかりません。ああ見えてハリって溜め込む方ですし、口も堅いですから」
全員に沈黙がはしった。
「何か、嫌な予感がするな。」
アキトの呟きが、静かなブリッジに響いた。
そして、ユウイチが引き続き調査をすると言いウインドウが閉じられたが、
ナデシコDに連合本部から一つの指令が届いていた。




次回予告

宇宙の戦闘が拡大していくなか、東京では新たな勢力が動き出す。
そこに現れる新しき敵に、人機チームとハーリーは戦うことを決意する。
そして新しき戦士たちも、各々の思いを持って戦いに挑む。
だが……そこにあるのは、出会いだけではなかった。


第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第五話「新たな仲間、新たな敵」



本当に久しぶりの投稿になります、犬夜です。
ちょっと前に別の作品で新しい書き方を試し、今ここに投稿を再開させていただきました。
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