とあるムックの編集に参加した際に執筆した創作ガイド的なものです。
創作活動の参考になればと思い、ここに公開しておきます。
【宇宙戦争】

 そこに至る過程や形態は千差万別ですが、“戦争”というのはどこまでも陣取り合戦です。戦場が陸から海、空と拡大してもこの原則は変わりません。惑星近傍であれば衛星軌道の占有権を掛け、恒星間であれば星系単位での領有権争いになります。いつ、どこで、なにゆえ、どのように戦うのか。戦争の5W1Hですがこれはその社会が持つ技術基盤にも大きく依拠します。
 宇宙で戦争が起こる状況は以下に大別出来ます。まず、地上の戦いが宇宙空間にまで及ぶ場合。これは現代でも十分あり得るシチュエーションです。つまり戦場が前出通り偶々、衛星軌道となる状況です。
 次に、人類の生存圏が宇宙にまで拡大発展している環境での社会的事象として。そこで何らかの衝突が発生し事態打開に失敗した結果戦争に至る、という現在地上で日夜演じられている物語が舞台を宇宙に移すという場合です。その時点で人類社会が達成している成果に応じて戦争の様相は規定されます。宇宙入植初期段階であれば、月と地球の確執を描く古典にして名作『月は無慈悲な夜の女王』、地球近傍空間の入植施設と地球との対立を想定した『機動戦士ガンダム』、恒星間社会を構築しながら分裂構造に陥る『銀河英雄伝説』。ここまでつまり人類社会の“内戦”が宇宙空間で再生されるモデルです。実は本質としてあまりSF的ではありません。
 SFでの「宇宙戦争」といえば、やはり人類を含めた各種生物種を交えての戦いでしょう。当然、恒星間を舞台とした壮大なドラマが展開されます。名実共に『スター・ウォーズ』ですね。一方、戦争であればまだ交渉の手段なのですが、対話が通じない相手もいます。格下であれば一種の害獣駆除ですが、各上でしたらこれは種族の存亡を掛けた一大決戦です。宇宙怪獣相手に激戦を繰り広げる『トップをねらえ』などですね。
 そうした戦場に応じて投入される戦力、機材も様々です。発展し続ける兵器は遂に地球全土を射程に収め、火力もまた、種族を滅亡させ得る核にまで達していますが恒星という天然の核融合炉が燃え盛っている宇宙空間では可愛いものです。著名なところで、『機動戦士ガンダム』のコロニーレーザーでは真空での減衰率が低いのをいい事に巨大なレーザー砲で敵を艦隊ごと焼き払おうとしたり、果ては地球そのものを質量兵器としてぶつけるドゥーズミーユ『トップをねらえ2』などもう何でもアリという状態です。いや、銀河そのものを弾体とする『マップス』の生贄砲などという途方も無い火器……もありました。一応、大砲の一種です。宇宙同様、人間の想像力も果てがありませんが、願わくば生産的にもそうであらん事を。

【人類の進化】

 ここで言う進化の定義ですが、“生物個体群の性質が、世代を経るにつれて変化する現象”とします。進化≠進歩でありません。またこのテーマ自体がかなり重要なSF的モチーフを孕んでいますがそれは後述しましょう。第一に、単純に生物学上での見地に立つ事が出来ます。メンデルと遺伝子、については既にご承知でしょう。生物はDNA(デオキシリボ核酸deoxyribonucleic acid)という設計図から形成され、それは塩基配列で記述されます。更に、肉体のパーツとしてタンパク質、これはアミノ酸の配列ですが、これら分子構造の経時変化に注目するのが分子進化学です。これに突然変異という確率論での論拠を用いるのがいわゆるミュータントテーマですね。さて、「ミッシング・リンク」というタームを聞いた事があるかもしれません。現世人類と類人猿を結ぶ痕跡が存在しない、とされ、過去は大きなナゾの一つでした。これをして神、或いは地球外生命体の、人類創造、進化に対して干渉があったとする作品も存在しましたが、現代では人類が類人猿に近い祖先から進化した過程を示す証拠も、化石として発見されていますので注意が必要です。
 SFのテーマとする場合、社会的生物としての人類の進化もまたモチーフとなるでしょう。例えば現代では、人類社会全体が必要とする資源消費に対し供給が過小、或いは不均衡な状態ですが、(一説には既に総量としての食料生産は過剰ともされます)技術と行政機構が成熟する事でこれが解決した社会では、まず戦争は自然消滅するでしょう。すると、人類に如何なる変化が兆すか、それはどの様に実現可能であるのか。或いは逆に、技術の進歩により人類の意識が一つに統合されるかもしれません。個にして全、そこに誕生する社会は如何なる様相を示すでしょうか。
 人類の変化、その可能性を追求し、感動を見出す。正に壮大な、無限の可能性を秘めたテーマです。

【終末】

 エデンの園から追放された人類はやがて享楽の限りを尽くし、遂には神の裁きにより大洪水が発生、選ばれたノア以外は水没し滅亡した、と、創世記は告げています。そして実は方舟の木片が2010年4月27日、トルコのアララト(Ararat)山の山頂付近(標高およそ4000メートル地点)で発見されています。もしかしたら伝説は一部、事実を含んでいるのでしょうか。現代でも温暖化による海面上昇と平野部の水没の危機が警告され、一部海洋国家の国土は現に危機に瀕しています。或いは遠く、約12,000年前の最終氷期の終息による海面上昇の光景が歴史として刻まれたのかもしれません。また新約聖書の黙示録は、核戦争を想起させる世界の終末を描き出します。ここでも人類は一度滅亡したのでしょうか。その世界は如何に滅亡を迎え、その後にどんな光景が拡がったのでしょう。いや、1962年10月14日に米空軍のロッキードU-2偵察機が、北米の裏庭と言えるカリブ海のキューバにアメリカ本土を射程内とするソ連製準中距離弾道ミサイル (MRBM) の存在を確認、さらにその後3発の中距離弾道ミサイル (IRBM) を発見しました。そして28日、史実ではソ連が譲歩し危機は回避されましたが、別の世界ではこの日をゼロ・アワーに第三次世界大戦が勃発していたかもしれません。その後1976年6月、スーダンのヌザラ (Nzara) という町で男性が急に39度の高熱、頭や腹部に痛みを感じて入院しその後激しく出血して死亡。これを発端に院内感染によるパンデミック発生。感染者数284人、死亡者数151人、エボラ出血熱の致死率は50〜89%です。もし、感染者が飛行機に搭乗して世界に拡散していたら?。シバ・クレーター( Shiva crater)インドのムンバイ西海底にある約6550万年前の小惑星衝突跡。長さ600km、幅400km、白亜紀の動植物絶滅の原因?。同級の災害が明日訪れたら人類は?。
 週末ごとに終末の危機が迫る作品もけっこう簡単そうですね。どうやら私達の世界は想像以上に脆く、明日をも知れぬ運命に弄ばれる存在である様です。

【歴史改変】

 ボタンの掛け違え、という言葉があります。
 彼は人として産まれました。長じて、直ぐ龍たちとも仲良くなりました。人は、貧弱な肉体を補うかの如くに賢明でしたが、同時に自らを頼む事少なく、知は狡に通じ、猾は虐、弱者に対し暫し非道を示しました。対して龍は強靭にして明察、その性勇猛なれど矜を忘れず、名仁侠誉、自らにも他者にも寛容かつ度量を以ってする種でした。龍はそうして、大らかにしてある種無頓着に人に接し、人もこれを受け入れ両者は関係していました。しかし人は、人の同志を募り謀を進めていました。そして優秀な彼はその謀により、最先端の航時研究に従事します。強靭な龍は既に宇宙にも広く進出し、水の星、水球から進出した人龍の社会は既に次陽の周辺にまで拡大していました。大事を取ってその次陽近辺で挙行された航時実験、時間遡行は無事終了。参加組は研究成果通り、燃焼反応を開始する直前の、次陽の詳細な観測記録を携え帰還します。太陽と次陽という複数の光星から照射された水球はとても温暖な世界ですが、もし、次陽の元が今少し軽いかったら。反応は発生せず、雲星のまま。その世界では水球は今ほど温暖では無く、我々龍にはとても住み辛い世界であったろう。この発表を契機に遂に人は決起しました。龍の温情で生かされる我々は、自らの生をその手に取り戻す。もちろん龍は人に何の異趣もありませんが、鏡を恐れる様なものでしょう。人は龍に戦い挑む一方、時の流れをねじ曲げます。龍の航時機を奪い時を遡り再び燃焼開始前の次陽を訪れこれに攻撃を仕掛けます。大量の小惑星を叩き付け雲星を吹き散らし質量を減少させると、もう雲星はそのまま、発光はしませんでした。光星の一つを失った水球は少し寒く、少し重くなり元の軌道を外れます。そして、人が放った小惑星の一つが水球の衛星となり、加えて更に重くなります。重くなった水球は、かつて人が放った小惑星、太陽に捕まり巡るその幾つかを招き寄せ、打たれます。
龍の祖先は滅亡しました。
 人は自らを世界の主人とし、改めて、自らの星を地球、と名付けました。
 恐竜の化石を調べると、昔、地球は少し軽かった様です。人は未だにこの謎を解けずにいます。

(モンゴルの残照:豊田有恒 有色人種支配の世界で白人が歴史改変を行う「歴史は勝者が作る」)
(星を継ぐもの:J・P・ホーガン 月は地球外生命体が地球に移動した)

【企業】

 近代国家の社会基盤を形成する利益共同体ですね。人類社会で技術体系の進捗発展に伴い構成員の職能分離もまた加速し、現在では、食料及び各種基本資産を直接自ら生産準備せずとも社会がそれを個人に提供してくれます。企業はその中心機能を担う組織です。
 社会構造が未成熟であれば、国家がこれを維持管理し都度強権を発動する機会も生起しますが、現代の様に熟成し安定してくると、かつて国家が担った機能が更なる利得、福祉の拡充による構成員の最大幸福を目的として、サービス提供に長けた企業へと移譲、権能分与される性向は自然な流れです。民営化、と呼ばれていますね。その究極形態として、国家機能そのもの総てが民営化される事は十分な可能性に加え、様々な展望をも示します。民営国家間で仮に深刻な利害対立が生起し、遂にその解決手段として互いに実力行使に及ぶとしても、利益共同体たる民営国家は総力戦の愚に陥る事無くこれをローリスク・ハイリターンの範疇に極限すべくあらゆる努力を惜しみません。戦力は当然傭兵、戦場は会場、その勝敗は個人から第三勢力を含め実に多彩な利益機会を提供する事でしょう。
 一方逆に、国家がその存在意義を全うし、国民に完全なる機会の平等と資産の再分配を達成した場合、企業が追求する形態での利益、偏在という概念そのものが人類社会から消失します。この場合、企業の次の役割は、人類全体への奉仕活動、人類文明文化全体を増進させる様なエンジンとしての働きが求められるでしょうか。先と全く逆の向きに総ての企業が公的機関、NPO或いはNGOに準じた組織として再構成された社会かもしれません。
 また、企業の活動が社会の経済構造と不可分である事も良く認識しましょう。
 さて、あなたの作品世界で、企業はどんな活動をしていますか?。それは国家意思に沿う形ですか、或いは反逆し、王道、或いは覇道を世に示そうとしているのでしょうか。主人公はそれにどう関るのでしょう。

【組織】

 同一目的を持つ集団、で宜しいでしょうか。一般方向で価値観を同じくする最大規模の集団であれば国家、一時的な利益追求集団であれば企業、実力行使を認可され目的達成を求められるのが軍隊、その目的が現状維持であれば警察、でしょうか。
 世の中には様々な組織が存在し、架空作品世界にも登場しますが幾つか留意すべき問題があります。
 その組織が個人商店であればともかく、複数人数の構成員で形成されるのであればまず必要なのが、その組織と活動を律する“法”の存在です。無論これの作中での明示は不要であるばかりか有害ですが、作者は意識している必要があります。そうすれば、その組織と構成員の活動並びに行動について説得力と整合性が増し、読者の作品世界への理解もより深まり容易となるでしょう。例えば民間警備会社を舞台とする作品で、主人公が毎回の様に多大な損失を与える展開では、そのプロットがどれだけ読者を楽しませるものであっても上司は主人公を解雇せざるを得ません。これがもし警察組織であるなら、警察は事後対応機関であるので条件は緩和されます。「パトレイバー」などがそうですね。同様に、給与がなければ構成員の社会生活は破綻してしまいますし、資金が無ければインフラは構築出来ず機材を稼働させる事も不可能です。主人公のサラリーがいくら、というのはこれは実際に読者に見せても面白い要素です。読者と作品世界の主人公への評価、或いはそのギャップ。こんな活動でこんな薄給という悲哀或いはユーモア、高給取りであれば、彼/彼女の社会能力がアピールされるでしょう。
 実在、非実在を問わず、組織とは主人公を含め自ら有する資産を運用し活動する存在である事、主人公の活躍を的確にサポートする為にも、作者は世界に相応しい適切な組織を選定構築し巧みにこれを経営していく代表取締役の責任と責務、そして愉しむ権利があります。もちろんあなたが役員室に掲げるべき社是は「読者を期待させそれに応える」事です。同じく十訓も考えてみましょう。

【国家】

 父母が子を護り育む様はそのまま国民国家の、その関係性の原型と理想の光景です。
 都市国家の名があるように、かつて村落、集落、都市は最小単位のコミュニティにして世界、組織構成各員が安全保障を委ね、場合により自ら剣を取り戦い守る対象でもありました。経済が誕生し富が蓄積され組織は合従連衡を繰り返し近代国家として成長、行政機構や官僚組織の拡充により各種機能権限は強化される一方分限され、構成員たる国民は職能を含め細分管理の被支配を受けながらも、納税及び権利の行使により国家を支える相互関係にあります。
そうした国家の前提機能、いわゆる“夜警国家”の概念に即せば、他項でも既に類例する、国家機能の成熟による人類社会での戦争現象、事象の消滅は、国家がその存在理由、目的を成就した結果として解体、或いは変容する重大な契機、転換点の一つでしょう。もしかしたら理想は永遠に概念上に留まり、ただ徒に物理空間を拡張するのみで星系、恒星間、銀河で人類は対峙し内戦、経済に弄ばれながら戦争と平和の永劫回帰に流転するのみであるやもしれませんが。
 国家から開放された国民は次に何処を目指すのか。完全なる個人の充足、個人主義は極限まで先鋭化するのででしょうか。或いは個々の欲望を追求した末にその我執すら撥ね退け、技術からの援用にもより人は至高、至福を共感、共有し永遠の安寧立命、幸せの地を目指すのでしょうか。
 最小努力と最大幸福、もしくはその対偶。作者が思い描く理想若しくは悪夢を描き読者の感動を呼び覚ます、作品世界で国家はその実現を主人公と共に目指す、敵対者であれば強固に阻害する最大の機能であり装置です。上手に物語を駆動する様に入念な設計と配慮をしましょう。

(日本沈没:小松左京 国家と国土が災害により消失する状況で、国民とは、民族とは何か)
(銀河英雄伝説:田中芳樹 最悪の民主国家は、最上の専制国家に優るのか。奴隷の幸福、国民主権の意義とは)

【戦争】
 軍事学者クラウゼヴィッツ曰くの「政治の延長」。余りに有名な比喩表現ですがこれは「戦争論」中で論じられる大戦略という机上の理想空間でのみ実現する特殊解であり、一般則としては誤りです。即ち、関与する複数者による実力行使の相互作用が実現する結果としての社会的事象、並びに現象がその答えとなります。光が周波数により電磁波や紫外線といった性質を示す様に、可視化されれば一般的な武力衝突、不可視状態では情報戦として社会に作用します。
 蓄財の成果を外部から収奪する原始経済の従構造として発生し、やがて発達した国家が両者を従え、国際関係に於いて戦勝賠償金の獲得という外交、同時に経済活動の原動力として利用されます。ナポレオンの登場により
総力戦が出現しますがモデルは変わらず第一次世界大戦まで継承され、二次大戦で破綻します。核まで用いて敵対プレーヤを破壊しては資産価値まで消滅し、戦勝による回収は不可能です。代わりに世界規模まで拡大した量的変化は経済活動に特需を与え、戦場を国外に限定する事に成功した米国は大成功を収め軍産複合体なる都市伝説を胚胎するに至ります。無論、戦争の副次的経済効果は当然にして純粋な経済活動に大きく劣り、イデオロギーに名を借りたヘゲモニーを戦う米ソ両雄は国力を吐き出し続けてまずソ連が倒れ、緩みきったドルがデフォルト(ニクソンショック)を経てプラザ合意に達し、これを尻目に経済へ特化した日本が台頭したのは歴史の必然です。冷戦の終息と東西両陣営による世界に対する不安化工作の後処理として、現在も各地で継続する不正規、非対称戦の様相については単なる時事ですのでここでは割愛します。
 さて、社会と戦争の関係については既に各項で語り尽くした感もありますが具象として一歩踏み込みます。
 兵器単価の高騰に代表される様に、現代の戦争は完全に大赤字です。山田正紀の傑作ポリティカル・フィクション「虚栄の都市」は軍隊の運用を指して、札束を焼いて沸かしたお湯でカップ麺を喰う、と実に的確にこれを直喩します。人命は更に暴騰し、兵士、士官の育成維持コストは10年単位で減価償却可能な耐用年数を持つ正面装備の比ではありません。技術が実現せしめる戦場の無人化圧力は現在進行形で、もはや必須にして逆行はあり得ません。前線と指揮中枢は実現可能範囲の最大限に於いて着実にその距離を拡大し続け、無限遠の投射能力を有する情報戦力は正に実戦と表裏一体となり前線、後方、銃後といった区分を無効化し全世界を標的とします。その将来像については既に、量的、質的な表層の差異も内戦という本質は違えないと要約する通りで、時々の戦争は作者が規定する社会構造に準ずるのみです。
 最後に、小川一水「時砂の王」を紹介します。時間戦争を描いた恐らく唯一の作品です。敵対陣営は歴史改変では無く、過去の時間軸に向け戦力投射を行い、人類存在の可能性を時間軸上から抹殺して行きます。後手に回った人類はやはり過去に向け現在から増援を投入しますがその“現在”は着実に蝕まれ、過去を失い消滅していくのです。戦場は銀河宇宙から遂に古代地球の邪馬台国まで後退します。果たして人類は。

【宗教】

 人、何処より来たりて往く者ぞ。
 この余りにプリミティブな問に応えて宗教は発生しました。約5万年前、ネアンデルタール人は既に呪術的祭祀を授けられ、未知にして不可避な死という個の終末、その恐怖に対峙しています。大地を照らす天光に、雄大なる恵みの海に、鳴動し発火する大地に、人々はその時々神の姿を見出し、崇拝し、安らかなれ、健やかなれと祈念します。やがて社会が形成され拡大する過程で宗教はこれに取り込まれ、或いは併呑し、統治機能として、または権威そのものと化し人類に君臨します。神の存在、否定の証明に人は全智を賭し、異なる神を抱く異教徒はこれを排撃殲滅し、内部から揺さぶる異端に対してはそれ以上に徹底的な処置を施す。同じ神を戴く共同体を統御する機構として宗教は、原初、悩める人を救済するその姿から遠く離れ、現世利益を騙り、覇権を賭け激突し、無知に付け込み搾取し、荒ぶる神の姿そのままに人類社会を思うが様に翻弄します。数知れ得ぬ戦争を巻き起こして来ました。聖なる言葉の元虐殺を繰り広げました。西洋は未だに神に呪縛されています。神の存在証明を求め発展した神学たる数学は皮肉にも、その希求に背反する証明不可能性を立証するに至り(ゲーデルの不確定性定理)、他方神の死を宣言しながら発展した近代科学は、今日に至るまでその使命たる神の否定を完遂出来ず、自ら辿り着いた宇宙論の果てと東洋宗教に立ち上がる神の姿に怯えています。神を否定し彼らが獲得した新たなる神、マネーは、既に誰もがご存知の通りにもはや人間の手を離れ、自らの意思で自走し、膨張し、世界を縦横無尽に荒廃させています。正に西洋はお望み通りの新たなる神を創造しました。
 翻って我が日本は随分と自由なものです、流石は八百万の神々が住まう無節操無宗教国家、日本といったところでしょうか。ネットには神動画が溢れ、戦車やギネヤアブラヤシが偶像崇拝の対象となり、相変わらず年末年始は人と神と仏がこぞって繁忙期を迎えます。あまつさえこの戯画的日本の光景をそのままコミカライズした作品まで出版されました。(中村光:「聖☆おにいさん」)「かみちゅ!」などと称し女子中学生までが神と化し、ラノベには様々な神が入れ替わり立ち代り降臨しては読者を萌えの彼岸に導きます。同人SSでも転生、神を恫喝して無敵化してのオレツエーは大人気、やりたい放題です。時代は正に神!!。想像力の限りを尽くし貴方の世界を創造して下さい。
天は自ら助くる者を助けます。本書を手にした貴方は既に自らの意思を自覚しています。貴方が世に問う最高傑作を完成する事は事実ですが、しかし確定させ実現させるのは貴方自身の力のみです。さあ、実行の時です。



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