−ピグマリオ−
ジャック&ベティの大冒険!
作者:出之
3.
「ああ屋根があるって幸せ!文明バンザイ!」
彼女は叫ぶとばふっと寝床に身を横たえた。
寝床、といっても敷かれているのは寝藁だ。
手持ちの金は無いではないが、先行き不明なだけになるべく節約することにした。
ああ、ようやく人心地付いた。
そう安堵しつつ。
彼は同時に、違和感を覚えていた。
これは、本当の感覚では無い。
おれは。
あの原野で、布きれ一つまとわず。
いつまでも。
いつまでも。
あのままで。
煩悶しつつ、隣の青女を眺め。
「どうしたんだ」
彼女は。
「あの、あのね、私」
笑っていた。
「ホントは、街についたら」
同時に。
「何でもいいから、あなたと別れようと思ってたの」
声を詰まらせる。
「貴方の事、考えたら」
しゃくりあげた。
「胸が詰まって」
「おい」
「堪らなくて」
彼は身体を起こしていた。
「なんで、なんでなの、なんでこんな……」
自然と、手が伸びた。
「こんな気持ちで……別れられないよ!」
抱きしめた。
「離れられないよ!!」
いつか、彼もまた、共に。
夜が明けた。
「お早う」
「おはよー」
二人、何となく気まずくて
顔を見合わせ、互いに苦笑い。
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