――――静岡県某山中
人っ子一人寄り付かない程の山奥に、一つの村があった。
先祖代々ある一族に受け継がれて来た村で、その存在は秘匿され続けて来た。
無論、そんな場所だから地図にも載っていない。
外界から完全に遮断された村。
歴史の表舞台には出ずに、裏方に徹する一族の姿が、其処にはあった。
ちなみに、外界と遮断されてようが自給自足の生活を保ってる為、特に問題は無い。
そんな村の中でも一際立派な屋敷、その一室の前に少年の姿はあった。
「―――爺様?」
年の頃は十といった所か。
「祐一や、入って来なさい」
爺様と呼ばれた老人が少年――祐一を促す。
「爺様、話ってなぁに?」
「うむ。爺様の先見でな、アレがそろそろだと言うのが解った」
「爺様の言ってた戦姫の舞だね?」
「おぉ、そうだ。きちんと覚えておったか。偉いのぉ」
破顔させ、祐一の頭を撫でる。
「爺様の先見では、舞は五年後と言うのが見えた。その頃にはお前さんに下界に下りて貰う事になる」
「それが僕等の‘しゅくめい’だもんね」
「そうだとも。我らが天命、全うせねばなるまい」
ゆっくりと、言い聞かせるように呟く老人。
「今日お主を此処に呼んだのは、本格的に修行に取り組む事を伝える為じゃ」
「………もう、時間がないもんね」
「うむ。五年と言えど、時が流れるのは早いからのぉ」
「解ったよ、爺様」
祐一はそう言うと静かに立ち上がり、部屋を後にした。
「すまんのぉ、祐一。これも――に選ばれた宿命じゃ。許せ……」
一族の長、祐一の祖父である裕次郎には、祐一の無事を天に祈る事しか出来なかった―――。
舞-HiME
―姫を守護する者―
序章 風華の地に降り立つ
―――時は流れて五年後。
一人の青年が己が宿命を全うする為、風華の地に降り立った。
「此処が………今日から俺が住む町か」
青年の名は楯 祐一。
今日までの五年間、その全てを修行に使い、つい先日祖父の指示でこの地に降り立った。
「全く、爺様も無理を言ってくれる」
祐一が無理、と言うのも仕方が無い。
いくら自分の宿命の為といえど、一度も通った事の無い学校に通うのには些か不安があったからだ。
外界から遮断された祐一の故郷である村には、学校といった概念がない。
その為、勉強は全て家族か近所の人達に教えて貰う物なのだ。
学業のレベル的にはなんら問題は無いが、やはりはじめての場所に戸惑いは隠せない。
おまけに祐一は下界に一度も下りた事が無い。
バスや電車の乗り方は知っているが、乗った事も見た事も無いと言う状態なのだ。
そんな訳で、今現在町の入り口付近でぼーっとしているのだ。
「………ん?」
と、そんな時、祐一の視界に一人の女性の姿が入った。
(泣いている?)
丁度自分の横を通り過ぎて行った為に顔があったのだ。
結局泣いていた理由は解らなかったが、祐一は特に気にする事も無く、これから住む事になる寮へと足を進めたのだった。
―――編入して早々彼女と再会する事になるとは、神ならぬ身である祐一には、想像する事も出来なかった。
続
後書き
と、云うわけで改定版です。
原作をアニメから漫画にシフトしてお送りします。
こっちの方が何かと都合がいい物で。
基本的な設定は前作と変わりありません。
ただ、ベースが漫画になるので登場人物の性格が若干異なります。
ちなみに、今回短いのは序章だからです。
次回からはもっと長くなるので、その辺は心配なさらずに。
では、また次回に。
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