オーファン出現を聞いてから現場に直行した舞衣は、エレメントを召還して救出活動に勤しんでいた。
「これで全員ね……」
舞衣がそう言って陽子に生徒を預けた瞬間、狙ったかのように後ろからオーファンの触手(?)が攻撃を仕掛けて来た。
しかし、それは何処からとも無くバイクに乗って登場したなつきの攻撃によって防がれた。
「あかねちゃん!」
凍った触手(?)に向け、トンファー型のエレメントを持った少女――日暮 あかねが攻撃を加え、粉砕する。
「んしょ、と……わきゃ!?」
ジャンプしての攻撃だった為、地面をするように着地するが何故か転倒。
「油断しているからだ」
舞衣に向かってなつきが言う。
それを聞き、ムッとした感じでなつきを見る舞衣。
「エレメントだけでは埒が明かない。奴隷クンを―――」
なつきが言い終わる前に、新たな触手がなつきをおそう!
しかし、それもまた届く事は無かった。
何故なら―――
斬!
―――次の瞬間には細切れになってたからだ。
「油断しているからだ」
なつきに向かってそういったのは、たった今触手を切り刻んだ少女――美袋 命だ。
その手には剣型のエレメントがある。
「だから早く奴隷クンを呼んで来いと……ッ!」
若干頬が引きつりつつなつき。
「あんたチャイルドが居ないと何も出来ないの?」
走りつつ舞衣。
「なっ!?」
後ろから来た触手を撃破。
「私ならチャイルドなど居なくても大丈夫だぞ、舞衣!」
そう言うのは舞衣と並走している命だ。
「よしよし、命は良い子ねー」
並走している命の頭を撫でる。
「今はもっと協力しあいましょうよ〜〜」
そう言うのは更に隣を走るあかねだ。
しかし―――なんともシュールな光景である。
喋りつつもしっかりとオーファンの攻撃をかわしているのだから凄い。
「だったらお前の鍵を連れて来いッ!」
なつきはあかねに向かって怒鳴った。
「え……だってまだ付き合っても居ないのに……そんな、早いわっ」
顔を赤く染めてもじもじと。
「もしもし……?」
別の世界に旅立ってしまったあかねに声をかける舞衣。
「……お?」
その時、命が頭上から来る敵の攻撃に気がついた。
舞-HiME
―姫を守護する者―
第三章 初陣U
「あれがオーファンか……」
そんな中、祐一もまた現場の近くに顔を出していた。
付近では怪我人の搬送が行なわれているのが見える。
「何処と無く妖魔ににてるな」
祐一の一族は退魔を生業としている。
それ故に出た言葉だった。
「祐一さん」
じっと戦場を見ていた祐一に声がかかる。
真白だ。
「どんなもんかと思って見てたが……こりゃダメだな。連携がなってない」
「祐一さんから見ればそうでしょうね」
苦笑しながら真白。
「じゃ、そろそろ行くわ。‘一般人’でも戦える所を見せに、な」
「はい♪」
ひらひらと手を振ってその場を後にする祐一だった。
その直後、あかねの悲鳴が響き渡る。
オーファンに捕らえられたのだ。
「あかねちゃんッ!」
舞衣が呼ぶが返事は無い。
「くっ!」
それを見たなつきが銃を撃つ。
しかし、オーファンの体内に入ったかと思うと弾は威力を失った。
(耐性が出来てるのか!?)
なつきは舌打ちするが、打開策は無い。
「んああっ!」
命が剣型のエレメント――ミロクを地面に突き刺し、大技を繰り出そうとする。
「ダメよ命! あかねちゃんまで真っ二つよ!!」
其れを聞いた命は攻撃を中止。
八方塞の状態となる。
「やだ……服が!」
そんな時、あかねに異変が起こった。
正確には、あかねの着ている服に、だが。
衣服だけが綺麗にとけだしているのだ。
「絶対につかまりたくない相手ね……」
「……珍しく意見があったな」
戦闘中だというのに舞衣となつきはそう嘆息した。
そうやってる間にも事態は進行する。
遂にはあかねの体全体がオーファンの体内に入ってしまったのだ。
体が水で出来ているオーファンだ。
体内に入ってしまうと窒息の恐れがある。
舞衣は腕輪に炎を纏い、あかねを助けるべくオーファンに立ち向かった。
一方、その頃祐一はオーファンの真横に位置する教室に来ていた。
「どー見ても水系の相手だし、こりゃ俺専用の敵か?」
溜息一つ。
「―――天之尾羽張」
ポツリ、と声をこぼすと、何時の間にか祐一の左手には鞘に入った刀があった。
「抜刀」
鞘が光の粒子となって空気に溶けていく。
都合よく割れている窓を見る。
祐一は走り出すと――― 一気に外に躍り出た。
「覇ッ!」
一閃。
向かって来た触手を切り落とし、オーファンに取り込まれていたあかねを助け出す。
抱えたまま着地。
刀身についた水を払うように刀を振る。
「あ、あんたなにやってんのよっ!」
思わず舞衣が怒鳴るが、祐一は意に介さない。
命の動きが止まる。
視線は祐一に固定されている。
祐一もそれに気付いているが、勿論それも無視。
「なってない」
祐一が一言呟いた。
「奴隷クン?」
「なってない、って言ったんだ」
舞衣達にむきなおり、祐一。
「何だ、あの戦い方は。連携が全然出来てない」
「……楯?」
そこで祐一の様子が普段と違っているのに気付いた舞衣が声をかける。
「戦をなめるな」
眼光が違う。
雰囲気が違う。
何より―――その手に持つ刀はなんだ?
一同は祐一の変化に呆気に取られていた。
「手本を見せてやる」
そう言うと背を向け、オーファンに向かって歩き出す。
まるで今から散歩に行くかのような気楽さだ。
「ちょ……楯!?」
慌てて追いかけようとする舞衣だったが、命に引き止められる事でそれは叶わなかった。
「命!?」
「大丈夫だ」
一言、命はそう言った。
「大丈夫だ」
そしてもう一度。
「―――天之尾羽張」
刀の銘を呼ぶ。
「招雷」
天之尾羽張の力の一つである、雷の力が刀身に宿る。
刀身が帯電する。
大量の触手が襲い掛かるが、只の一度も当たらない。
何時の間にか祐一は走り出していた。
―――ただし、向かうのは校舎だ。
壁蹴りの要領でのぼり、屋上まで行って反転。
屋上にある手摺を蹴って加速。
一直線にオーファンの真上に躍り出る。
その間に向かってくる触手は切り伏せる。
無茶苦茶であるが、氣によって身体能力を強化してる為に苦ではない作業だ。
「―――雷」
構えを取るとより強力な帯電現象が起こる。
「―――神」
向かってくる触手は無視し、致命傷だけは避けるようにする。
「―――剣ッ!!」
渾身の突きがオーファンの頭上に突き刺さる。
直後―――
ズガァァァァン!
―――擬似的な雷が刀の切っ先発生。
オーファンに直撃する。
その衝撃でオーファンの頭にあったコア、心臓とでもいうべき場所が破壊される。
祐一は空中で体制を整え、なんなく着地する。
「封神」
ポツリ、と呟くと光の粒子が刀身に絡みつき、鞘となる。
立ち上がり、天之尾羽張を肩に担ぐようにして持つ。
その時には、既にオーファンの姿は消滅していた。
「「「………」」」
それを見ていた対オーファン部隊の面々は、命をのぞき全員が唖然としていた。
チャイルドが居ない状態だった事もあるが、四人がかりで倒せなかった相手を、祐一がたった一人で倒してしまったのだ。
そうなるのも仕方が無いといえる。
「ま、こんな感じか。今のは相性の関係もあるから楽にいったけど」
祐一が舞衣達の方を向き、言う。
「あ、あんた戦えたの!?」
「今のは何だ!?」
「すごいです!」
三人同時に喋られ、祐一はたじたじ。
「ちょ、ちょいまち! 三人いっぺんに喋りかけないでくれ!! 頼むから一人ずつ、な?」
そう言うと舞衣がずい、っと前に出た。
「あんたって戦えたの?」
「戦えない、とは一言も言ってないぞ」
確かにそうである。
理事長室での会話の時に、大丈夫、とは言ったが戦えないとは一言も言ってないのだ。
「だからあの時大丈夫って……」
「ま、そう言うわけだ」
今度はなつきが前にでる。
「今のは何だ?」
「今の、ってのはどっちだ?」
「その刀も、さっきの攻撃もだ!」
「刀についてはまだ秘密。さっきの攻撃は見たままさ。刀身に雷をまとって只単に突きを繰り出しただけ」
答えに納得できなかったのか、なつきはじろりと睨みつける。
しかし効果が無いのがわかると後ろに下がった。
あかねは特に聞きたい事も無かったのか、只眼をきらきらさせている。
と、その時、舞衣はいつもなら一番騒ぎそうな子が騒いでないのに気がついた。
「命?」
とうの本人である命は、うつむき、ふるふると震えていた。
怪訝に思った舞衣が近づこうとすると、んばっ! と命の顔が上がった。
舞衣はびっくりし、後ずさる。
そして命の顔をみて二度びっくりした。
命の頬は紅潮し、顔には満面の笑みが広がっている。
まるで恋する乙女だ。
舞衣は今までにない命の様子に、三度びっくりした。
からん、とミロクが地面に落ちるが命が気付いた様子は無い。
一気に走り出し、がっし! と祐一の体に抱きつく。
一同、唖然。
「兄上!」
命は祐一の胸にわんこのように顔をすりすり。
「おー、命。元気にしてたか?」
祐一の方は命の頭をぐりぐり。
「は、はい〜〜〜〜!?」
事態を把握した舞衣のお約束が響き渡ったのだった。
続
後書き
やってもーた感の否めない今回ですが、どうでしたか?
なんかもう祐一さん半オリキャラどころか完全なオリキャラ状態です。
いーや、もう開き直っちゃる。
と、言う事で祐一さん更にオリキャラ化。
兄上だよ兄上。
ちなみに、これに関しては次回説明します。
今回出て来た謎の刀、天之尾羽張(アメノオハバリ)ですが、これの説明は今度(次回ではないです)纏めてしようと思います。
物語の中心核に近い所にあるので、あまりいえないんですよ。
一応いえるのは天之尾羽張はエレメントだけど、祐一のエレメント、と言う訳ではないという事だけです。
まぁ感のいい人なら解ると思います。
ちなみに今回出た雷神剣ですが、まぁ、まんまテイ○ズのあれです(ちょw
であ、また次回。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
神
威さんへの感
想はこちらの方に。
掲示板で
下さるのも大歓迎です♪