視点:星


「はいっ! はいっ! はいっ!」

私はルルーシュに向けて訓練用の槍で次々と突きを繰り出す。

「くっ! むっ! ぐはっ!」
「ほらほら、どうしたルルーシュ、避けねば傷が増えるばかりだぞ!」
「くそっ」
「どんどんいくぞ、はいっ! はいっ! はいっー!」

『キンッ! ガンッ! ズパッ!』

苦し紛れながらも剣で防いだり、避けたりするルルーシュ。
ふむ、かなり加減してはいるが、はじめたころに比べれば動けるようにはなってきたな。
でもまだまだ・・・

「刃の部分ばかりに集中していると」

体ごと回転するように、槍の柄でルルーシュの足を払う。

「うぁっ!」

体勢が崩れたところに

「はっ!」
「ぐはっ!」

強めの一撃をまともに腹に受けて、吹き飛ぶルルーシュ。

「がはっ ぜぇ〜はぁ〜、ぜぇ〜はぁ〜 くっ!・・・たは」

ルルーシュは倒れたまま起き上がれず、そのまま大の字になる。

「ふむ、今日はここまでにしておくか」
「ぜぇ〜 はぁ〜 あ、ああ、ぐっ」

・・・・・・少々やりすぎたか。

「鍛錬というより星が一方的に虐めているように見えますね。お水です、ルルーシュ殿」
「あ、ありがとう、稟」
「はい、星ちゃんも」

少し離れたところで私たちの鍛錬を見ていた稟と風が水を持ってきてくれた。

「ありがとう、風。たしかに文官の稟から見れば虐めているように見えるかもしれないが、これもルルーシュを鍛えるため、私も心を鬼にして槍をふるっているのだよ」

華琳殿に言われ、体力の無いルルーシュを鍛錬することになり、今日もこうして鍛えているわけで、決してルルーシュを虐めて楽しんでいるわけではない。

「そういうわりに顔がニヤついてますよ〜」
「だいたい何故体力作りの為の鍛錬のはずが武術の稽古まで、ルルーシュ殿は文官ですからそこまでする必要はないのでは?」
「文官といっても自分の身を守るぐらいの武は身につけておいたほうがよかろう、武術といっても教えているのは主に防御や回避だ」
「それにしてもですね」
「い、いいんだ稟」
「ルルーシュ殿?」

フラフラになりながらも、何とか立ち上がるルルーシュ。

「すぅ〜 はぁ〜 星の言っていることは正しい、俺が弱いのは事実だし、この世界で生きていく以上これは必要なことだ。でも心配してくれてありがとう 稟」
「い、いえ、そんな」

顔を赤くしてうつむく稟。
・・・ルルーシュのあの笑顔は反則だな。

「お兄さんは根性ありますね〜」
「辛いことにかわりはないがな、はは。 このあとは三人で仕事だったな、一旦部屋に戻って着替えてくるから先に行っててくれ。 星、警備隊の方は頼むな」
「うむ、任せておけ」

ルルーシュはそのままフラフラと自分の部屋へと歩いていった。
はじめのころは鍛錬の後、しばらく動けなかったのを考えると、体力も少しはついて来たようだ。

「あれでは仕事にも影響でるでしょうに、華琳様からはゆっくりで良いと言われているのでしょ」
「たしかにそうなのだが・・・ルルーシュを鍛えるのはなかなか楽しくてな」
「お兄さんを苛めるのがですか〜」
「うむ、あの綺麗な顔が、苦痛の表情にゆがむのを見ていると、こうゾクゾクッとくるものがあるのだよ」
「もう悪意以外の何物でもないですね」
「というのは、半分冗談でだ」
「半分は本気なんですね〜」
「さきほど風が言ったように、ルルーシュはあれでなかなか根性があってな」

今日もあれだけヘロヘロになりながらも、ルルーシュの目には力があった。

「根性無しであれば、こちらもやる気がなくなるのだが、あの目を見るともっと鍛えてやろうという気になってくるのだよ」

初日に春蘭がやり過ぎてしまったのもそういった理由からであろうな。

「まるでルルーシュ殿が悪いかのようないい方ですね」
「武官さんの理屈ですね〜」

私としてはほめているつもりなのだがな。

「あと、これは手合わせして解ったのだが、ルルーシュは貧弱なくせに戦い慣れしている感があるのだ。私の殺気をあびても、畏縮して動けなくなるようなこともない」

あんなに弱くても死線を生き抜いてきたということなのだろうか?

「お兄さんが言うには、天の国には体を鍛えなくても簡単に人を殺せる道具が沢山あるそうですよ」
「体力が無いのも、便利で快適な乗り物が沢山あって、遠くまで歩いていくことが無かったからだそうです」
「では天の国の人間は皆あんなに貧弱だと?」
「この世界の人間と比べれは、そうなのでしょうね」
「まぁ、お兄さんがそう言っているだけで、本当かどうかはわかりませんがね〜」

自分の体力の無さを生活環境のせいしている気がするな。
今は鍛えようとしているわけだから、別に良いが。

「なんにせよ、次からはもう少し気をつけて鍛錬をしてくださいね、ルルーシュ殿は天の御遣いなのですから」

・・・・・・天の御遣いか

「稟はルルーシュが本物の天の御遣いだと思うか?」
「ええ、思っています。そうでなければ私が・・・」
「ん?」
「稟ちゃんはお兄さんに象棋で負けたのがよほど悔しかったのですね〜」
「っ!そういうわけでは・・・それに負けたのは風のほうが先だったでしょう」
「二人が象棋で負けたのか」

私も象棋はうてる、それなりに強いつもりであったのだが、この二人には勝ったことが無い。
二人は華琳殿も認めたほどの才のある軍師、象棋の腕も別格だ。

「まぁ、ルルーシュほどの頭脳があれば風や稟が象棋で負けても不思議ではないと思うが」
「・・・・・・・・・そうですね。ですが今日は負けません!」
「ふふ」

稟もなかなか負けず嫌いだからな。

「象棋にかまけて仕事をさぼるなよ」
「勤務中に酒を飲むような星にだけは言われたくありませんね」
「象棋は休憩中にうってるだけなので大丈夫ですよ〜」

私も真面目な稟がさぼるとは思っていないがな・・・風は仕事中でも寝てるだろうに。

「では私はそろそろ行くとしよう」
「あ、星ちゃん。今晩また4人で飲みにいきませんか?」
「おお、もちろんかまわんよ」

私が酒の誘いを断るわけが無い。

「では、いつもの店で」
「うむ、わかった」

そう言って私は警備隊の屯所へと向う。
今晩飲みに行くのなら昼は飲まないでおこうか、ルルーシュにも頼まれたしな。






視点:風


『パチンッ』
「これでチェックだ」

お兄さんの一手で稟ちゃんの顔がさらに強張る。
チェックというのは天の国の言葉で、王手の意味らしいく、完全に詰みの時はチェックメイト。かっこいいので機会があれば風も使いたいですね〜。

ふむふむ、これは決まりですかね〜。

「むむ〜〜……はぁ、参りました。」
「ふう、なんとか勝てたな」

二人の象棋はまさに接戦、それもかなり高い次元の勝負でした。
なので負けた稟ちゃんも普通ならそれほど落ち込むようなことではないのですが、

「まさか3ヶ月で追いつかれてしまうとは」

そうなのです!お兄さんは象棋をはじめたのはここにきてから。
風も稟ちゃんも象棋は幼いころからうってきたし、お互いに出会うまでは互角に勝負できる者すらほとんどいないほどのウデなのです。
そんな風達にお兄さんは3ヶ月で追いついちゃったんです、それも仕事の合間に少しうっていただけで。
最初負けたときはさすがの風も悔しかったです、悔しくて夜もあまり寝れませんでしたね〜・・・四刻ぐらいしか。

「似たような盤上遊戯は元の世界でもよくうっていたからな、そんなに落ち込む必要はないと思うぞ」
「ではルルーシュ殿が言うちぇすで、私が勝ったとしても落ちこまないのですか?」
「それは・・・・・・・・・・・・落ち込むな」

ですよね〜。

「あら、面白そうなことをしているわね」
「象棋か」
「華琳様!それに秋蘭殿」

襖を開けっ放しでしたので、前を通った華琳様と秋蘭ちゃんに見つかってしまいました。
別に隠す必要はないのですが。

「勝ったのはルルーシュね、・・・ふ〜ん、なかなかの名勝負だったようね」

さすが華琳様、結果を見ただけわかるんですね〜

「軍師として象棋をうつのもいいが、お前達ちゃんと仕事はしているのか」
「ああ、問題ない」
「近日中に必要なものは全て終わっています」
「ぐ〜」
「・・・寝てても大丈夫なぐらいだと言いたいわけか」

おお!意味が通じちゃいました。

「ルルーシュは象棋うてたのね」
「象棋をはじめたのはここに来てからだがな」
「!っ・・・ではたった3ヶ月で」

誰でも驚きますよね。

「ルルーシュ殿は天の御遣いですから」

凛ちゃん、その言い訳もあまり意味ないですよ。

「ふふ、・・・では私も一勝負しようかしら」
「華琳が相手か、面白い」

確かにこれは面白そうな勝負ですね〜


視点:華琳


  ・
  ・
  ・
『パチンッ』
『パチンッ』

初めて3ヶ月というのは嘘ではなさそうね、駒の取り方、置き方に不慣れさが見える。
でも強い。

「華琳様がおされている!?」

秋蘭の言う通り少し分が悪い。
でも勝負はこれから。

『パチンッ』
『パチンッ』
  ・
  ・

「・・・さすがは華琳」
「盛り返えしましたね〜」
「勝負が解らなくなりましたね」
「ん〜・・・」

秋蘭が付いて来れなくなっているほど高い次元の勝負になっている。
ここからは、わずかでもあまい手をうてば、致命傷となる。

  ・
  ・
『パチンッ』

!っ

「「・・・」」

  ・
  ・
『パチンッ』

「ここね」
『パチンッ!』

「・・・む」

ルルーシュの顔が僅かに歪む。

「これは・・・」
「むむ〜、絶妙な一手ですね〜」

  ・
  ・
  ・
『パチンッ』

これで決まりね。

「・・・参りました」

ルルーシュが負けを認める。

「ふう、ちょっとした息抜きのつもりが逆に疲れてしまったわね。でもとても楽しかったわ」
「ああ、俺もだ」

・・・ふふ、顔は笑っているけど私には解るは、あれは内心かなり悔しがっているわね。

「お見事です!華琳様」
「さすがですね〜」
「手に汗握る勝負でした」

確かにどちらが勝ってもおかしくない勝負だったわ。

「先読みの速さと多さはさすがね」
「敗因は63手目か」
「そうね」
「ちぇすと象棋の規則の違いからでたお兄さんのほんの僅かなあまい一手」
「その隙を見逃さずうった華琳様の一手は見事でした」
「高い次元の話だな」

秋蘭も決して弱くは無いのだけど、軍師と比べては分が悪いわね。

「華琳様、次は私とうちませんか?」

稟が勝負に誘ってくる。
そうしたいのはヤマヤマなのだけど。

「残念だけど、まだ仕事が残っているのよ」
「そうですか、すみません」
「いいのよ、暇ができたら勝負しましょう」
「はい!」
「そのときは風ともお願いしますね〜」
「ええ、もちろんいいわよ」

いままでは配下に、私と互角に勝負できる相手はいなかったからうれしいわ。

「では秋蘭戻りましょうか」
「はい」
「ルルーシュも、またうちましょうね」
「ああ、次は負けないからな」
「ふふっ」

うちの軍師達はほんと頼もしいわ。
・・・私も勉強しておかないといけないわね


視点:風


「さて私達も仕事に戻りましょうか」
「そうですね〜」

主が働いているのに家臣が遊んでばっかりはいられませんしね〜

「お兄さんも仕事に戻りましょう」
「ああ・・・」

返事をするもお兄さんは盤の前から動こうとしません。

「ここをこううっておけば・・・」

よほど悔しかったんですね〜






視点:稟


「お疲れさまです!」
「おつかれなのですよ〜!」
「お疲れさん!」
「お疲れ!」

私達は今日は4人で飲みに来ています。
ここは陳留の街の中でもかなり人気のお店で、今日もかなり混んでいて外には行列が出来ている。
私達は星が予約しといてくれたのですぐ入れましたが。

「最近益々街に人が増えて、賑やかに成ってきましたね」

陳留は以前から活気がありましたが、ここ最近は日に日に人が増えているように思えます。

「税は安いですし、何より安全ですからね〜」

石を投げれば罪人に当たると言われるほど荒れているこの大陸で、安全というのは何よりも人を集める条件になる。
精強な軍隊によって街の外の賊どもは討伐され、街の中は、

「それも当然! ルルーシュが隊長、私が副隊長として警備しているのだ。この街に悪の栄える隙は無い!」
「確かに星の働きは大きいな、俺は隊長と言っても書類仕事ばかりで現場にはほとんど出ないし、出ても足手まといになるだけだからな」
「何を言う、ルルーシュが街の全てを把握し、的確な指揮をしているからこその活躍であろう」

ルルーシュ殿の新しい警備案と的確な指揮で犯罪者は瞬く間に発見され、抵抗する者は星の圧倒的な武によって叩き潰される。

「最近では【天の御遣いの守る街】、または星ちゃんが【陳留を舞う華麗な蝶】なんて呼ばれてますよね〜」

この風評も人を集めるのに一役買っている。

「星のはともかく、天の御遣いは方は意図的に広めたものですけどね」
「もともとそれが目的で華琳は俺を配下にした訳だからな」

華琳様がルルーシュ殿を配下にしたのは天の御遣いにして民衆の支持を得るため。
・・・確かにはじめはそうだったんでしょうけどね。

「これが嘘から出た真ってやつですかね」
「そうですね〜」
「・・・真か、そう言えば、また天の御遣いが現れたそうですな」

星が楽しそうな顔で言う。

「ああ、これで知ってるだけでも八人目か」

私達の処まで噂か届いてないだけでもっといる可能性は高い。
今大陸中には、いたるところに天の御遣いがいる、正確には天の御遣いがいるとう噂が流れているですが。

「天の御遣いを名乗って一旗上げようって輩は沢山いるようですから、ただ」
「その内半分はもうこの世にいませんけどね〜」

風の言う通り、すでに八人の内、四人は殺されたという情報が入ってきている。

「天の御遣いを名乗れば目立つのは確かですがその分狙われますし、偽者だとばれた者は皆、無残な最後を向かえています」

実力もないのに、騙して人の上に立とうした者には、当然の報いですけね。

「もし皆や華琳に出会ってなかったら、俺も同じ目に合っていたかと思うとゾッとするな」
「ルルーシュ殿ほどの才覚があれば何処ででもやっていけると思いますよ」

そうなればきっと華琳様にとって脅威となっていたでしょうね。

「お兄さんの場合、道中で体力が尽きて野垂れ死な無ければ、ですけどね〜」
「もしくは盗賊に身包みはがされ、カマをほられるかだな」
「!っ」
「ぶっ!!・・・星!恐ろしいことを言うな」

・・・・・・身包み、は、はがされた・・・ルルーシュ殿を・・・屈強な男達が・・・無理やり・・・

「・・・ぷはっ!」
「ああ〜稟ちゃん、はい、とんとんしましょうね〜」
「ふがふが、はひはほう、ふう」

つい妄想してしまって鼻血が出てしまいました。

「初めて見たときは驚いたが、本当に病気ではないのか?」
「昔からの体質ということですから、多分大丈夫なのでしょう」

それほどの量は出なかったので、料理が血で汚れずよかったです。

「話を戻すが、天の御遣い噂の中で一つ気になるのもある」
「幽州の天の御遣いですか〜」
「ああ」
「ふがふが、すっすっ、ふう・・・光る衣を纏っている、というやつですね」

天の御遣いの噂には、それを補足する噂もつく。
○○の天の御遣いは背に羽があり空を飛べる、○○の天の御遣いは天候を操れる、○○の天の御遣いは剣一振りで山を割り、一晩で万里を駆ける、など。
まぁ、大抵は信じるに値しない噂ばかりなのですが。

「光る衣・・・それが何故気になるのだ?ルルーシュの着ていた服だって光っていたであろう」
「あれは服の装飾品が光を反射しているだけだ、だがこの御遣いのは服自体が光を反射するらしい」
「ほう・・・・・・でもだからなんなのだ?服が光って何か出来るのか」
「いやどうも光るだけらしい、だがこれは実際に見た者から話を聞いた」

そう、この噂は他と違い実際に見た者がいる、幽州から来た商人の一団の何人もが見ており、会話した者もいるらしい。

「そして俺の元の世界には、光を反射する素材で出来た服も存在する」
「・・・なるほど、ルルーシュと同郷の可能性があると」
「零ではないというだけだがな」

確かのその者がルルーシュ殿と同郷の可能性は零でありませんが。

「ですが、もしその者がルルーシュ殿と同郷であろうと、別の何かであろうと、天の御遣いであるという可能性は零ですね」
「・・・何故だ?」
「天の御遣いはお兄さんですからね〜」
「ふむ、ルルーシュがここに居るのだから、他は皆偽者ということだな、ハハハハ」

何人天の御遣いがいようと、本物はルル−シュ殿なのだから関係のないことです。

「何をもって天の御遣いとするか解らぬ以上、本物など決めれないだろう」

何をもって天の御遣いとするか、ですか

「占いでは、乱世を鎮静す、ですからね〜」
「では、華琳様が大陸の王になれば、ルルーシュ殿が本物の天の御遣いということになるのでしょうかね」

華琳様が王になれば、大陸中がこの陳留のように平和になるでしょうし。

「もしくは、華琳殿の下を離れ、ルルーシュ自身が王となるかだな」
「そういう不穏当な発言はよせ、星」

ルルーシュ殿が王になるということは華琳様も討つということですからね、冗談でも言って良い事と悪いことがあります。

「安心しろ、ここ最近はルルーシュへの監視はないし、今もそのような気配はない。もし聞かれたとしても酒の席での戯言だ」

2000年以上先の未来から来た、なんて言えば怪しまれて当然。
ルルーシュ殿には密かに監視が付けられていました。
監視に気がついたは星ですが、ルルーシュ殿も予測していたのか、驚いた様子はありませんでした。

「お兄さんは普段から頑張って働いてますから、信用できると思ってもらえたんでしょうね〜」
「まぁ、風のように仕事中の居眠りしていないのは確かだな」
「ぐぅ〜」
「寝るな」
「おお! 痛いところをつかれたので、つい」
「「ハハハハ!」」
「お料理お待ちいたしました〜!!」

いつものやりとりが出たところで、料理が来ました。

「青椒肉絲、回鍋肉、麻婆豆腐、餃子、泡菜盛り盛合わせ、麺麻(メンマ)盛合わせ以上になります」

店員が料理を置いて、厨房へと戻っていく。

「麺麻盛合わせなんて品書きあったか?」
「ふふ、裏品書きという奴だよ、ルルーシュ」
「違いますよ、星が無理やり作らせたのですよ」
「星ちゃんは気に入った料理店には、これを作らせるのですよ〜」
「迷惑な客だな」

まさしく

「麺麻という最高の料理を作るのだ、喜びこそすれ、迷惑などあるわけなかろう」

無茶苦茶な言い分ですね。

「何故そんなに麺麻好きなんだ、何か思い入れでもあるのか」
「うむ、実はだな・・・・・・私の母方の祖父が、麺麻(メンマ)なのだ!」
「「「・・・・・・」」」
「そうか、それはでは仕方ないな」
「仕方ないですね」
「ですね〜」
「・・・・・・つっこんでもらえると嬉しいのだが・・・」

つっこみません。







視点:ルルーシュ

「まいどあり〜」

俺達は店を後にし、城へと向かう。

「ぐぅ」
「いつものフリかと思ったら、本当に寝ているとはわ」

風が寝てしまったので、今は俺が背負って運んでいる。

「風はあまり、お酒に強くはありませんからね」
「ルルーシュは見かけによらずかなり強いな」
「ぐぅ」
「今まであまり飲む機会もなかったから、俺自身も知らなかったがな」

皇帝になってからは、多少飲む機会もあったが、酔うほど飲むわけにもいかなかった。
だが遺伝的には強くてもおかしくない。
あの男は見た目通り酒に強く。
そして母さんは、ナイト・オブ・ラウンズが総出で掛かっても、相手にならなかった程の酒豪だったらしい。
二つ名の閃光も実は酒の飲む速さからきているとか。

「でも、こうやって飲むのは楽しいな」
「そうだな」
「星は酒が飲めればいつで楽しそうですがね」
「ぐぅ」

元の世界でもこういう機会があればよかったのだが・・・・・・生徒会が酒を飲むわけにもいかないし、ゼロのときは仮面で飲めないしな。

「・・・・・・いつまでもこういう日々が続けばいいのだがな」
「・・・そうですね」
「でも、そうはいきますまい」
「ああ、そうだな」

初めて会ったときに華琳が言っていた通りこの国は腐敗している、近いうちに俺の知っている歴史と同じ群雄割拠の時代へとなるだろう。
逆に言えばだからこそ華琳が王になる可能性ができるのだが。
華琳がこの大陸の王になるため、俺が天の御遣いとして手助けをする。
それが俺と華琳の契約・・・。

「これからさらに厳しい時代になるだろうが、大陸を平和にするためにも華琳が王になれるよう頑張らないとな」

そう、頑張って生きて

「そして大陸が平和になった後も、また四人で飲みに来よう」

「「「!っ」」」

ん、二人が何故か驚いたような顔をしている。

「あ、いえ・・・もちろん良いですよ」
「必ずな」
「約束ですよ〜・・・ぐぅ」

約束・・・・・・前は果たせなかったが、今度こそは・・・。



・・・・・・・・・・しかし風は本当に寝ているのか?



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