第十五章【連合軍とマインクラフト】
袁紹の檄文に応え、反十常侍連合に加わる諸侯が彼女の元に続々と集まっていった。
名を挙げるため、憂える国を救うため、義のため、各々の志はそれぞれだが、今は共に戦う仲間。
曹操、孫堅、袁術、公孫賛、馬超、義勇軍の劉備――名だたる将が集まるその光景は壮観だった。
「凄いわ……こんなに集まってくるなんて」
「当然です。朝廷の、陛下の危機なのですから」
背後で跪く袁紹の言葉を聞いた劉宏の表情が嬉しくも、複雑な物へと変わっていった。
(けれど今回の事で漢王朝を支持する者は完全にいなくなった……いや、それはずっと前からか)
自業自得とはいえ、改めて今回の事態を突きつけられた劉宏は己の無知と無力を恥じた。
(今日集まってくれたあの者達の中に、心から私の事を憂えた者がどれだけいるか……)
表情が暗く沈みかけた時、二人の背後から声が掛かった。田豊である。
そして彼女の後を付いてきた一刀の姿もあった。
「陛下、麗羽様。諸侯の方々が集まりました。これより軍議に移ろうかと思います」
「分かりましたわ。しかし陛下、本当によろしかったのですか?」
「何が?」
「陛下御自身が、その……戦場という野蛮な場所に赴かれるなど、私心配で……」
(劉協は天和達と一緒に麗羽様の城に残ってるものなぁ)
いつも――無駄に――自信満々な袁紹らしからぬ態度に劉宏はクスリと笑う。
そのせいか、先程の暗い気持ちも幾分か和らいだように思えた。
「いいのよ。確かにお前のところで待っているという選択肢もあったけど……」
劉宏の視線が田豊の後ろにいる一刀に移った。
「もう待っているだけなのは嫌、ハ……カクもここに居るんだもの。今の私に出来ることをしたいわ」
(……隷帝と呼ばれていた傀儡はもういない。今ようやく本当の霊帝になったのね陛下は)
袁紹が感動に打ち震える中、田豊は劉宏の評価を改めていた。
「皆を集めた檄文には天子の命と記したのだし、本人が居た方が説得力あるんじゃない? 集まった者の中には半信半疑の者も居るでしょうし」
「なるほど……確かにそうですわね」
「それに襲われたとしても守ってくれるんでしょ? 頼りにしているわ」
「お任せ下さい! 私自慢の精兵が必ずや陛下の身をお守りしますわ!」
話を終え、軍議の場に移動する一同。
当然一刀もその後を付いていこうとするのだが――
「カク、貴方は駄目よ」
田豊に抱えられて止められてしまった。
何故? と一刀は首を傾げる。
「当然でしょう。今貴方の存在を諸侯に知られる訳にはいかないの。大変なのは寧ろこの戦いが終わった後なんだから」
(ええ〜……でも俺だって戦場に出ずとも役に立てることがあるかもしれないし)
「そ、そんな見つめても駄目。ちゃんと後で軍議の内容は教えるし、貴方には仕事もあるから。だから大人しく留守番していて」
専用の幕舎に連れていかれ、一刀は田豊にそこへ置いていかれてしまった。ちょっとイジけた。
役に立つだろうと、予め地下から色々と素材や道具をインベントリに入れて持ってきている。
何かクラフトして暇を潰そうと、作業台やかまどを置いていくが――やっぱり軍議が気になる。
(好奇心は抑えられないよなぁ。バレなきゃ大丈夫だろう)
確か田豊は中心にある、一際大きな幕舎に向かっていった筈だ。
ツルハシとシャベルを手に持ち、一刀は穴を掘り始めた。
(いつもの手だ。地下から行けばバレないバレない……)
こうして一刀も地下から秘密裏に軍議に参加するのだった。
――反十常侍連合の戦いがもうすぐ始まろうとしている。
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