機動戦艦ナデシコ ナデシコ童話劇場
「赤頭巾ちゃん」の幸せ?
むかしむかしあるところにあかずきんとよばれる、たいそうかわいいがむひょうじょうなこどもがおったそうな。
「私、子供じゃありません。少女です。それに平仮名ばっかりは読みづらいので、ちゃんと漢字も併用してください」
失礼……。無表情な少女がおったそうな。
ある日、少女は母親に届けものを頼まれた。
「ルリちゃ〜ん。これ山の中のおばあちゃんの家まで届けてちょうだ〜い」
そう言って手渡されたバスケットの中には、
虹色に変色する液体が入った小瓶と注射器、そしてなにやら用途の不明な品物が入っておった。
「これを一体どうするんですか、艦長?」
「も〜、何言っているのルリちゃん。私は『艦長』じゃなくて『お母さん』でしょう?」
腰に手を当て『ぷんぷん!』という感じに怒っているユリカ(二十歳がやる仕草じゃないだろ)。
「すいません、ユリカ母さん。で、これを一体どうしろと?」
「だから山に住んでいるイネスおばあちゃんのところに届けて欲しいんだってば」
そう言って指差した先には鬱蒼と生い茂った森を持つ山がそびえ立っていた。
「あの山はたしかオオカミが出るという話でしたが?」
「大丈夫大丈夫!ルリちゃんなら心配ないって!私みたいに道に迷ったり、崖から落ちたりしないから!」
ボケボケしい母親はまぁいつもの事だが、やはり話を聞いてもらえないのは怒るルリちゃん。
「会話が噛み合ってません!オオカミはどうする気ですか!?」
「うう、ルリちゃん怖い……。えっとね、オオカミが襲うのはおっぱいの大きな美人だけだって話だから、ルリちゃんなら大丈夫だと思うんだけど……」
自分の胸を見るあかずきん。
そこは悲しいかな平坦なものだった。
比べるまでもなく母親の胸はかなり大きい。
それはもう嫌味なほどに。
「はぁ……。も、いいです。いってきます」
そう言ってバスケットを持って家を出るあかずき「『ルリ』です」…は?
「だから私の名前は『ルリ』です。『あかずきん』なんて名前じゃありません」
いや、ナレーションに突っ込まれても……。
「『ルリ』です」
いや、だから……
「『ルリ』です」
あのね……
「『ルリ』です」
……ルリちゃんはバスケットを持って家を出ました。
「それでいいんです」
山道をテクテクと歩くルリちゃん。
「はぁ…。アキトさんに会いたいなぁ……」
アキトとは山の向こうに住んでいるルリちゃんの想い人だが、交通機関の発達していないこの時代ではなかなか会いに行くことなどできないのである。
「だいたい、おばあさんもまだいい歳なんだからさっさと誰かとくっついて嫁入りすればいいのに……」
ブツブツと物騒な文句を言いながら山を登っていくルリちゃん。
って言うか、既婚者だから子供(ユリカ)とか孫(ルリ)とかが居るのでは?というツッコミは入れないほうがいいだろう……。まだ死にたくないし……。
さて、件のおばあちゃんのことであるが……
一応周囲には、病気であるので静かなところで静養していると説明してある。
しかし、おばあちゃんは結構元気なのだがあまりに周囲の人たちに『説明』したがるので山奥に隔離されていたというのが真相だった。
『説明病』とでも言えばいいのだろうか?
なにかトラブルが発生するたびにホワイトボードを持ち出して『説明』しようとするのだ。
その為、山に隔離されていたのである。
「ふう……」
艶かしい声を上げてベッドから均整の取れた裸体を起こす妙齢の美女。
「何か知らんが昨夜はやけに激しかったな、イネス……」
「何言ってるのよ、ずいぶんご無沙汰だったんだから当然でしょ?」
そう言って隣にいる男に艶やかな笑顔を向ける。
「それとももっと詳しく『説明』して欲しい?」
「いや、この後やることがあるから勘弁してくれ」
体を起こしながら答える男。
「そう?今日はこの後、私の孫が遊びに来るはずだから紹介してあげようと思ったのに……」
「そうか……。イネスの孫ならきっと美人になるな……」
「ふふ……。ありがと」
微笑んで男にキスするイネス。
着替えを終えた二人はもう一度キスをして、男は家から出て行った。
「さてと、今日はユリカが一人だから遊びに来て欲しいと言っていたな……」
そんなことを呟きながら山を降りていく男。
女を抱いたその足で別の女の家に行くのだから大した鬼畜っぷりである。
「こないだ胸は開発しきった感じになったから今度はやっぱり後ろかな〜」
他の人間に聞かれたら刺されかねない内容の発言をしながら山を降っていく。
山道を降る男の前に可愛い少女が現れた。
「えっ?アキトさん?」
「あれ?ルリちゃんどうしたのこんなところで?」
思わぬところで現れた想い人に驚くルリちゃん。
驚いているのは男、すなわちアキトも同様だった。
まさか恋人の一人(イネス)の家を出て、恋人の一人(ユリカ)に会いに行く途中で恋人候補の美少女(ルリ)に出会うとは思ってもみなかったからだ。
※アキトはまだイネスとユリカとルリが家族関係であることを知らなかった。ついでに自分が『巨乳専門のオオカミ』と呼ばれていることも知らない。
確かにこの道は彼女の村へ行く道ではあるが、『危険』といわれる山に一人で来るとは思ってもいなかった。
「私は母から頼まれたお使いで……。アキトさんはどうしてここに?」
「俺はルリちゃんの村に知り合いを尋ねに行くところでさ……。もしかして一人かい?」
「はい」
「一人は危ないよ。オオカミが出るって話しだし」
それはお前だ!(by天の声)
「私もそういったんですけど『ルリちゃんなら襲われないから大丈夫!』とか言って全然聞いてくれないんです」
「まったく……なんつー親だ(まるでユリカみたいだな)。よし、じゃあ俺がついて行ってあげるよ」
「え?でもアキトさんの用事はどうするんですか?」
アキトの提案に驚くルリちゃん。
「なあに、時間の指定は無いし女の子を危ない場所に一人でいかせるわけにはいなかいよ」
「……いいんですか?」
申し訳なさげに上目遣いのルリちゃんに微笑むアキト。
「ああ。じゃあ行こうか」
ルリちゃんの手を取って歩き出すアキト。
アキトに手をつかまれたルリちゃんは赤くなってついてきた。
しばらくして息の上がってきたルリちゃんに合わせて休憩する。
立ち寄った小川に並んで座ってお弁当を食べる二人。
「これ美味しいね。ルリちゃんが作ったの?」
「は、はい。そうです!」
緊張でガチガチのルリちゃんに対し、場慣れしているのか朴念仁なのか気楽に言うアキト。……おそらくは場慣れだろう。
「いいねぇ、こんな美味しい物を食べられるルリちゃんの彼氏が羨ましいよ」
「いっ、いません、そんな人!」
慌てて否定するルリちゃん。
目の前の男以外に自分の料理を食べさせたくない気持ちに気づいてはいるが前へ踏み出す勇気が足りない自分が悔しいルリちゃん。
「え?……ルリちゃんの村の連中は見る目がないなぁ。こんな可愛い子を放っておくなんて」
「そ、そんな事……」
愛しのアキトに『可愛い』と言われて嬉しいルリちゃん。
しかし、その反応はアキトの心に『よし、これでルリちゃんゲット!』なんて思わせるのに十分だった。
「でもルリちゃんにだって好きな男ぐらいいるんだろ?」
「は、はい。それはもう!」
「だったら告白しちゃったほうがいいよ。しないでいる後悔よりしてしまった後悔のほうがずっと気持ちの踏ん切りがつくから」
「そ、そうですか……」
「うん」
アキトの言葉に考え込むルリちゃん。
「……アキトさん」
「なに?」
真剣なルリちゃんの目を見て、サンドイッチを咀嚼することをやめるアキト。
それから三十秒くらいのタメがあって……
「私はアキトさんが大好きです!貴方をを愛しています!」
「ごふっ!」
ルリちゃんの台詞を聞いた瞬間、マンガのようにタイミングよくサンドイッチを喉を詰まらせるアキト。
それを見たルリちゃんは慌てて水の入ったコップを手渡すが、焦っているアキトはうまくコップをつかめない。
勿論これはアキトの演技であるが焦ったルリちゃんには、その見分けが付かない。
このままではアキトが危ないと思ったルリちゃんは意を決して自分で水を含み、口移して水を飲ませる!
水を飲ませるためにしっかり唇を密着させたため、ディープキスのようになってしまう。
「ん、んく……」
口移しの水を飲んで落ち着いてくるアキト。
「ぷはっ……」
どうにか人心地ついたアキトに落ち着くルリちゃん。
しかし、ルリちゃんは自分がした行動に気づいて顔が赤くなり、バッ、と身を翻して離れてしまった。
その顔は熟れたトマトのように真っ赤だった。
「あ、ああああのそのこれは!?」
恥ずかしさで後ろを向いてしまったルリちゃん。
その可愛らしさに巨乳スキーのアキトも萌えてしまった。
「ルリちゃん……」
後ろからルリちゃんを抱きしめるアキト。
「有難う。おかげで助かったよ……」
後ろから抱きしめながら、囁く様に礼を言うアキト。
実はこの時すでにアキトの理性はぶっち切れており、ルリちゃんを抱くこと以外に考えられなくなっていた。
「あ、ああああ、ああああアキトさん!?」
肩越しに振り向くルリちゃんにキスをするアキト。
それも舌まで入れるディープな奴だ。
その姿勢のまま時間にして一分少々。
やや酸欠気味でボーッとしたルリちゃんを抱き上げて自分のほうに向かせる。
「ルリちゃん。俺もルリちゃんのこと好きだよ」
酸欠気味の頭に『好きだよ』の台詞がリフレインする。
そのまま、柔らかい草の上に押し倒したルリちゃんにアキトは再度キスをする。
なすがままに性感を刺激され、我慢できなくなったルリちゃんは
「あ、アキト、さん……。お願いします……。抱いて…下さい……」
と言った。
木陰から、衣擦れの音がして……
結局、送りオオカミに食べられてしまったルリちゃんだった。
「きゃー!ジュンくーん!大丈夫ー!?」
そのころ村ではアキトに出す予定のユリカの料理を試食して死にかけるジュンの姿があった。
その後、ルリを連れたアキトはイネスの家まで行ったが、イネスは家におらず、しばらく待ったが帰ってこなかったため、一緒に村まで戻った。
この時点でもアキトはまだルリちゃんとイネスが家族であることに気づかず、『知り合いの家に届けものにきただけ』と思っていた。
手をつないで帰ってきたルリちゃんとアキトを見て変な顔をするユリカ。
「お帰りルリちゃん……って、あれ?何でアキトとルリちゃんが一緒に帰ってくるの?」
「それはもう……、ってなんでユリカ母さんがアキトさんを知っているんです?」
アキトとユリカができていることを知らないルリちゃんは質問を質問で返す。
「だってアキトは私の恋人だよ!」
「違います!アキトさんは私の恋人です!」
「何を言っているの?アキト君は私の恋人よ!」
二人の言い争いに割って入る声。
それは−−−
「「おばあちゃん(さん)!?」」
「誰が『おばあちゃん』かこの」
「いたいいたいいたい〜!ごめんなさいお母様〜!」
不用意な発言をしたユリカがイネスにこめかみをグリグリされていた。
この時点になってようやく三人が親子孫であることに気づいたアキトだった。
実際に、祖母と孫娘の年齢が十六歳しか離れていないのはさすがに珍しいため、さしもの鬼畜アキトも気づかなかったのだ。
情報交換の結果、アキトが三人に手を出していることが判明。
三人はアキトに詰め寄る。
「「「誰が一番なの(んですか)!?」」」
「え〜と……、三人一緒じゃ駄目かな?」
「「「駄目(です)!!」」」
私を一番にしなきゃ殺す!と言わんばかりの熱視線で睨まれるアキト。
「しかたない……。じゃ、三人ともちょっと来て」
ため息をつき、三人の手を引いて家の中に入るアキト。
三人から見えないその顔は『ニヤリ』と笑っていた。
そしてそれから三日間、家から誰も出てこなかった。
家から出てくるのは女性の喘ぎ声だけだった……。
四日目に出てきた時、三人は先日のいがみあいはどこ吹く風とばかりに仲良くなっていた。
そんな状態から三ヵ月ほど経ったある日、三人が妊娠しているのが発覚した。
勿論父親はあの鬼畜であるが、三人とも幸せそうなので一人を除いて特に何かを言う者はいなかった。
「ユリカ〜(涙)」
諦めろ、ジュン。お前は元々友達止まりだ。
特にイネスは『説明病』が落ち着き、ユリカは料理が上手くなり、ルリちゃんは表情が豊かになったので、むしろメリットのほうが大きいか?とさえ村人は思っ
ていたのだった。
そして山道から『巨乳専門のオオカミ』のうわさは姿を消したのだった。
その数年後、その村では仲のいい異父姉妹や異母姉妹や棒姉妹の姿が見られたそうである。
めでたしめでたし。
あとがき
ども、喜竹夏道です。
つい先日まで39度の熱を出して意識が朦朧としているときに、この短編のようにひいきにしているキャラクターたちが童話のキャラクターの代わりになって出
てくる夢を見ました。
そこで今回はこのときの夢を元に童話のキャラをナデシコのキャラに代えて書いてみました。半日で(笑)。
リビドーを織り交ぜたせいか、こんなんになりましたが。
一応短編ですが反響よければ色々な童話でシリーズ化しようと思います。
あるいは今回削除した18禁部分を入れた『裏』モードの作品に改定するのもOKです。
シリーズ化する場合は基本的にアキト×ルリ、ラピス、イネス(アイ)、ユリカ、ミナト、でいこうと思っています。メグミ、エリナ、リョーコ、サユリは女性
キャラが足りないときにってことで。
全キャラ壊れ系なんでそこんとこヨロシク、ってな感じです。
実際の『赤頭巾』というお話は、当時よく行われていた子捨て姥捨ての風習をお話にしたものである、という説があります。
つまり年を食って働けなくなった老人を養えるほどの力のある家族は多くなく、また生まれすぎた子供を養っていけるわけでもないから子供は養子や事故死の形
で、老人は事故のような形でいなくなってもらうというものだと説です。
ただ老人とは言っても当時は平均寿命が五十歳そこそこであったと言われるので孫がいてもせいぜい四十代。
十歳前後で結婚ということもそれほど珍しくはなかったと思われるので下手をすれば三十ちょい前で孫がいてもおかしくないと思われます。
さらにこの『オオカミ』とは、当時の森に一人で住む、違う言語を使用する人間を『狼男』あるいは『獣人』と呼んで蔑んでいた、という事実から鑑みて、この
『狼男』に由来されるものであると推測されます。
つまりこの当時は『子供が一人で山、あるいは深い森に行くということは野生の獣に教われるか獣人に襲われて死んでほしい』ということの表れだったいうその
説を今回採用してみました。
でもイネス:祖母、ユリカ:母、ルリ:娘の三人の年齢差はそれぞれ八歳ずつ。
当時としてもかなり早婚&早期出産だったでしょう。
そこをつけこんでかアキト君(十八歳)の親子孫の三代丼。
鬼畜です(笑)。オオカミです(笑)。っつーか送りオオカミです(大笑)。
ちなみにリアルの世界でもギネス記録で二十六歳で祖母になったという人(祖母:十四歳で出産。娘:十二歳で出産)や八歳で出産した子もいるので世の中分か
らんモンですが。
話の内容そのものは私が記憶している話の流れに出来るだけ合わせてみましたが、間違っていても勘弁してください。なんせ幼稚園児のころに読んだきりなの
で。
『赤頭巾を食べる』『おばあさんを食べる』に関してはかなり違う食べ方になってますが(笑)、まぁ笑って許してください。
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