コードギアス  〜ゆず湯のルルーシュ〜



十二月二十一日。
 
 始業前のアッシュフォード学園生徒会室に入ってくる人物がいた。
 「おはようございます」
 名誉ブリタニア人の軍人にしてアッシュフォード学園の生徒会役員である枢木スザクである。
 「おはようスザク。あら? 手に持っているのは何」
 そのスザクに挨拶を返したこの部屋の主であるミレイ・アッシュフォードは、スザクの手に握られた袋に気がついた。
 「ああ、はい。ゆずです。同じ基地のイレブンの人からいっぱい貰いまして」
 「『ゆず』って何?」
 スザクの言葉に生徒会メンバーのシャーリー・フェネットが首をかしげる。
 「確かエリアイレブンのオレンジだったっけ?」
 シャーリーの疑問に中途半端な知識で答えるリヴァル・カルデモンドの言葉をルルーシュ・ランペルージことルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが訂正した。
 「半分当たっているが、正確には日本で流通している柑橘類の一つだ。主に調味料として使われる」
 「ふーん……」
 しかし、その説明も生徒会メンバーの眼鏡分であるニーナ・アインシュタインにはどうでもいいことだったようである。
 「見せて見せて……。うん、いい香り!」
 スザクに渡されたゆずを手に取り、香りを楽しむのはカレン・シュタットフェルトこと紅月カレンである。
 「え? カレンちゃん判るの?」
 「うん。前に言ったと思うけど私、こっちが長いからこういうのにはみんなより詳しいと思うわ」
 ニーナは自分と同じくテンションの低いタイプだと思っていたカレンの行動と知識に驚いた。
 「けどスザク、こんなにいっぱいどうすんだよ? 全部食うのか?」
 「いや、さすがにそれは無理だよ。ただ、さっきルルーシュが言った通り、調味料になるからみんなにおすそ分けしようと思って」
 リヴァルの言葉を否定するスザク。
 「調味料か……。ねぇルルーシュ。どんな調味料があるのかしら?」
 ミレイが興味を持ったのか、ルルーシュの知恵袋に尋ねる。
 「そうですね……。まあ普通に使うとして、皮の部分を乾燥させて粉にして唐辛子に混ぜるとか、柚子胡椒とかですか」
 「『柚子胡椒』? 胡椒に混ぜるの?」
 「いや、僕も名前しか知らなくて……」
 ルルーシュの言葉に、スザクのほうを向いて尋ねるミレイ。
 「『柚子胡椒』とは胡椒とは呼ぶものの、実体は柚子風味の唐辛子ペーストで、唐辛子を粗刻みにし、柚子の果皮と塩を入れて磨り潰し、軽く熟成させた調味料の一種で、九州では一般的な調味料だったはずだ」
 「うわ、辛そう」
 ルルーシュの解説にその味を想像したのか、食べてもいないのに辛そうな顔をする。
 「他にゆずを使うものと言うと、日本各地にあった『柚餅子(ゆべし)』というものだな。これは地方によりさまざまだが、大別して珍味としての柚餅子と和菓子としての柚餅子がある」
 「へえ」
 続く説明にミレイが相槌を打った。
 「珍味としての柚餅子で代表的なものは、柚子の実の上部を切り取った後、中身をくり抜き、この中に味噌、山椒、胡桃などを詰めて、切り取った上部で蓋をする。そして、これを藁等に巻いて日陰で1ヶ月〜半年ほど乾燥させる。食べる際には、藁を外して適宜に切り分け、酒の肴やご飯の副食物として用いるものがあったな」
 「あ、なんかちょっとおいしそう」
 白いご飯を合わせた時の味を想像したのだろうか? カレンが生唾を飲みこむ。
 「和菓子としての柚餅子も色々あるので一概には言えないが、『丸ゆべし 』のように柚子の実を丸々一個使うものや、『棒ゆべし』のように柚子の皮を刻んだものともち米粉、上新粉、白味噌、醤油、砂糖などを混ぜて蒸したようなものまで色々あるんだ」
 流石ルルーシュ、おそらくは妹のために仕入れた知識であろうそれを遺憾なく発揮する。
 「ちょっと食べてみたいわね……。ルルーシュ、買ってきて」
 「無茶言わんでください! あとは……ポン酢かな?」
 ミレイによるいきなりのパシリ指示に対し反論した後、おそらくゆずの使い方でもっともメジャーであろうものを教えた。
 「『ポンズ』っていうのは?」
 「『ポンズ』または『ポンス』と言い、日本の料理の一つ、『鍋物』によく使われる調味料だよ。醤油に柚子などの絞り汁を混ぜて使うんだ」
 リヴァルの質問にルルーシュが答える。
 「さっぱりして美味しいよ」
 昔食べた味を思い出したのかスザクの言葉はどこか懐かしむようだった。
 「そうね」
 それにはカレンも同意する。
 「カレンちゃん食べたことあるんだ」
 「うん。鍋をみんなでつつくと楽しいわよ」
 ニーナの問いに答えるカレン。
 「あとはゆず湯かな」
 「『ゆず湯』って言うのは?」
 スザクの言葉にシャーリーが反応する。
 「日本式の風呂の入り方は知っているか?」
 このルルーシュの質問にカレンとスザクとミレイ以外のメンバーが首を横に振る。
 「日本式の風呂の入り方というのは、まず湯船の外で体を洗ってから湯船に入って体を温める、という入り方だ」
 「イレブンって変なことするんだね」
 ルルーシュの説明にイレブン軽視の兆候のあるニーナがポツリと呟く。
 「こらこらニーナ、そんな事言っちゃ駄目でしょ。培ってきた文化が違うんだから」
 「ブリタニアだと湯船で体を洗ってシャワーで流すわよね?」
 そんなニーナを窘めるミレイと自分の入り方を比較するシャーリー。
 「その通り。体を洗うだけなんだ。しかし日本式の最大の特徴は体を洗ったあとに湯船で体を温めて血行を良くして肩こりや筋肉痛を楽にしたり、体を温めることで眠りにつき易くするというところだな」
 「スパみたいだね」
 自分の知っているものと比較して何とか理解しようとするシャーリー。
 「で、『ゆず湯』というのは最後に入る湯船の中にゆずを入れて入るものなんだ」
 「果物を湯船に入れちゃうの!?」
 しかし、続くスザクの言葉に驚くシャーリー。
 「ああ。だが、ゆずを入れる事でその成分が肌から染み込むんだ。確か効能としては、『体が温まる』だったな。だから日本では一番日照時間が短くなる冬至の日にゆず湯に入って体を温めよう、ってことだったそうだ」
 「ふーん……」
 何かを思案するミレイ。
 「実際にその後、柑橘類を入れたお湯につかると通常の風呂よりも血行が良くなり体が温まる事が実験で実証されたらしい。特にゆずはオレンジなどと比べて糖分が少ないのでべたつかずに入れるらしいな」
 「でも食べ物と一緒に入るなんて……」
 どうでもよさげなニーナだったが一応会話の中に入った。
 「女性だって『レモンパック』とかをする人もいるんだろう? 決しておかしな事じゃないってことさ」
 リヴァルがニーナの言葉に反論する。
 「その他の効能としては、『風邪を引きにくくなる』とか」
 「迷信の類ね」
 シャーリーはちょっと吹き出しそうに言う。
 「あとは……『肌が綺麗になる』だったかな?」
 その瞬間、室内の女性陣に緊張が走った。
 「ルル……、それ本当?」
 「え? 何が?」
 自分の両肩を『がっしり』と掴んだシャーリーの剣幕に思考が混乱する。
 「だから最後に言った事! その…『肌が綺麗に』ってやつ!」
 「え、ああ、迷信じゃないのか? でもまあ、さっきリヴァルが言ったようにレモンパックなどをする人もいるようだし、まったく効果が無いとは……」
 「効果あるのね!?」
 「た、多分……」
 「『多分』って何よ!? いつもみたいに断言しなさいよ!!」
 叫ぶようにいいながらルルーシュの肩を揺さぶるシャーリー。
 「ある! きっとある!!」
 その恐怖に耐えかねたルルーシュは、つい肯定してしまう。
 その言質を取ったシャーリーが見せた笑顔を……おそらくルルーシュは忘れる事は出来なかっただろう。
 その笑顔のままミレイに振り返るシャーリー。
 「会長! 今年の冬至って確か明日ですよね!?」
 その言葉を受けたミレイがカレンダーを確認して頷く。
 「え……。ええ、そう…よ(キラーン!)」
 シャーリーが何を言いたいのか気づいたミレイは台詞の途中で目を輝かせる。
 そして全員に向かって宣言した。
 「では! 明日、二十二日の夜はルルーシュの家で鍋パーティーとゆず湯を実行します!」
 「全力で拒否したいんですが!?」
 即答でミレイの言葉を拒否するルルーシュ。しかし……。
 「却下!! 大体、ルルーシュの家以外に最良のロケーションがあるとでもいうの!?」
 「最良のロケーションって?」
 リヴァルが尋ねる。
 「いいこと? ルルーシュの家には日本式の風呂があるの! そしてメイドは日本人の咲世子さん! つまり、風呂と料理の両方が揃うの!! さらに、客間の一つが和室になっていて、畳も楽しめるのよ!!」
 「あ、それいいですね」
 カレンがミレイに同意する。
 この瞬間賛成派はミレイ・シャーリー・カレン・リヴァルとなり、反対派はルルーシュひとりとなった。(ニーナとスザクはどちらでもいい)
 
 論戦の末、屁理屈を通されたルルーシュが最後の頼みの綱としてナナリーに相談したところ、『まあ、それは楽しそうですね』と言われてしまい、首を縦に振らざるを得なくなったのであった。
 
 
 さらについでなのでそのままクリスマスパーティまで居座ろうというミレイの言葉は何とか封じたものの、24日・25日はパーティーをやる事で合意せざるを得なかった。
 
 
 
 なお、ルルーシュにとって最大の理解者にして最狂の落とし穴であるC.Cにはピザを一日三十枚奢ることで26日まで黒の騎士団のアジトに隠れてもらうことに合意した。
 いざと言うときのために、扇に手錠と鎖を渡し、『これで繋いでおいてくれ』と言ったが……守られるかどうかは甚だ不安である。
 
 
 
 そして翌日の夕方、ランペルージ邸。
 「「「「「「「おっ邪魔しま〜す」」」」」」」
 現れたのはミレイ、カレン、シャーリー、リヴァル、スザク、ニーナ、そして高等部生徒会の準生徒会メンバーのアリスであった。
 「お話はルルーシュ様より伺っております。さあ、こちらへどうぞ」
 一礼した咲世子がみんなを一つの部屋に連れて行った。
 そこは和室で、しかも掘りごたつになっていた。
 「わ、コタツだ〜!」
 「カレンちゃん、『コタツ』って?」
 「うん、昔から日本にある暖房器具で、このテーブルの下に敷いた布団のなかを暖めて暖を取るのよ。冷めやすい足元が暖まるからそのまま寝ちゃいそうになるんだよね」
 「ふ〜ん……」
 そういいながら足をコタツに入れるニーナたち。
 スカートの女性陣がふやけた表情になっている事から、おそらく気に入ったのだろう。
 「お! もう料理できてるのか?」
 くつくつと音を立てている鍋を見て『待ってました』といわんばかりのリヴァル。
 「違うわよ、これから私たちでやっていくの」
 「俺たちでですか!?」
 しかし、それを否定するミレイの言葉にがっかりするリヴァル。どうやらミレイは鍋についてそれなりに調べてきたらしい。
 「いえ、私が仕切らせてもらいますのでご安心ください」
 (うわ、鍋奉行だ……)
 にこやかに微笑む咲世子に微妙な怖さを感じ取ったカレンであったがそれを口にはしなかったのだった。
 
 大鍋でワイワイやるという行為が初めてだったリヴァルやニーナ、アリスもそれなりに楽しんで済ませた食事。
 ポン酢についての感想はというと……
 「やっぱり、鍋にはポン酢よね」(ミレイ)
 「ほんとほんと」(カレン)
 「ちょっとすっぱい……」(ニーナ)
 「でも、肉も魚もこんなに一緒に煮ても旨いなんて初めて知ったぜ」(リヴァル)
 「うう……美味しすぎて太っちゃいそう……(でもルルに世話を焼けたからいいか)」(シャーリー)
 「懐かしいなあ……」(スザク)
 「美味しいのもそうだけど、楽しいね」(アリス)
 「はい」(ナナリー)
 「ナナリーが楽しめたならそれでいい」(シスコン)
 「やはり鍋はこうでないと」(咲世子)
 と、概ね良好であった。
 特に何かをやり遂げた感のある咲世子の表情が印象的だったと後にルルーシュは語った。
 
 
 
 ようやくお待ちかねのゆず湯タイム。
 ということで、まず女性陣が向かう事になった。
 
 「わあー、広ーい!」
 その広さに驚くシャーリー。今にも飛び込んで泳ぎだしそうだ。
 「このお風呂も久しぶりねー」
 ナナリーたちに深く関わっているミレイは当然何度もこの風呂に入っていた。
 「ほら、ニーナも! みんな裸なんだから大丈夫だって!」
 「でも……」
 渋るニーナを引っ張るカレン。二人ともなかなかの巨乳である(笑)。
 「いつもありがとうございます咲世子さん」
 「いいえ、これも私の役目でございます」
 「うわ、おっきー!」
 ナナリーをお姫様抱っこで抱き上げる咲世子とその後についてくるアリス。
 ちなみに咲世子は湯浴み着を着ていた。
 
 「ふあー……気持ちいい……」
 慣れているため手早く体を洗い、湯船に入るカレン。
 向こうに見える洗い場ではミレイがニーナにセクハラまがいの事をしていた。
 「うりうり〜。随分と育ちおってからに〜!」
 「や、やめてよミレイちゃん、あんっ!」
 そのそばでは誰かのために体に磨きをかけるシャーリー。
 (今夜はもしかしたらルルが夜這いに来てくれるかも知れないんだから! 磨いて磨いて磨きぬいて……)
 にへら、となるシャーリーの隣ではいつものようにナナリーを咲世子が洗っていた。
 「ナナリー様、お湯加減はどうですか?」
 「はい、ちょうどいいです」
 そして同じくすばやく体を洗ってミレイの攻撃から逃れたアリスはカレンの横にいた。
 「うあー……気持ちいー……。それにしてもカレンさん、病弱な割には綺麗に締まった腹筋してますねー。おっぱいも綺麗な形だし」
 「ちょ、やめてよ」
 乳首の先を、ちょん、とつつくアリス。
 「あたしなんて小さいから悲しくて……」
 「成長期なんだしすぐに大きくなるって!」
 自分の胸を押さえて悲しそうな目をするアリスをカレンが元気づけていた。
 
 無事……かどうかは不明だが全員が体を洗い終え、湯船に使って数分後、全員の肌はほっこり桜色に染まっていた。
 誰もなかなか出て行かないところを見ると全員が気に入った様子である。
 全員が色っぽいため息をつくその場所はまるで桃源郷とでも言うべき空間になっていたのだった……。
 
 
 
 「さて、ルルーシュ、スザク、準備はいいか?」
 「一つ聞くぞリヴァル。その格好と『準備』という言葉のどこに接点がある?」
 そう。リヴァルの格好はどこの特殊な部隊かと言わんばかりの黒尽くめの格好であった。というか黒い全身タイツである。
 さらには頭にはなぜかほっかむりをしていた。
 「決まってるだろうがよ! 今、ここの風呂に会長が入ってるんだぜ!」
 「つまり『覗き』ってこと?」
 「スザク……お前あんまりはっきり言うなよ。これは…そう! 敵情視察って奴だよ!」
 「どう考えても違うと思うんだけど……」
 スザクの突っ込みの方が正しいのだが、まったく聞き入れないリヴァル。
 「そのために一番の障害となりうるこの家のセキュリティをルルーシュに解除してもらってだな、スザクにそこまでのルートを切り開いてもらうという」
 「俺はやらんぞ」
 「僕も」
 リヴァルの提案は二人に速攻で却下された。
 「覗きなんぞしたらナナリーに嫌われるだろうが」
 「それに会長だって怒ると思うよ?」
 「ぐ……。お、男には例えそうだと判っていても引くに引けない時がある!!」
 二人の反論を力づくで押さえ込もうとするリヴァル。
 「クリスマスはいいんだな?」
 「ぐっ……!!」
 しかし次のルルーシュの言葉に黙るリヴァルだった。
 「畜生……アーサーはオスの癖に一緒に入ってるっていうのに……俺たちだけ蚊帳の外なんて……」
 「待てリヴァル、今何て言った?」
 リヴァルの呟きを聞いたルルーシュが硬直する。
 「ん? アーサーの事か? さっき風呂に行く直前にナナちゃんがアーサーを抱いて『一緒にゆず湯に入りましょうね』とか言って……」
 ゴウッ!!
 その瞬間、ルルーシュの周りに黒いオーラのようなものが立ち上ったのを二人は見た。
 「リヴァル、これがこの家の見取り図だ。セキュリティはこことこことここ。一時的に切れる時間はそれぞれ10秒だ。いいな、わき目も振らずアーサーを回収して来い」
 即座に見取り図をプリントアウトするルルーシュに、一瞬ぽかんとするも、にやりと笑うリヴァル。
 ここに同盟が成立したのだった。
 
 
 
 結論から言うと、この二人の行動はまったくの無駄であった。
 なぜなら……猫は柑橘類が嫌いなのである(笑)。
 風呂場から漂う柑橘類の香りに即座に脱出。
 メンバーの中で一番の機動力を持つアリスからも野性の本能で逃げ切り、翌日までチーズ君の陰に隠れていたのだった……。
 
 
 
 「さて……リヴァル、覚悟はいいかしら?」
 「いえ会長! これには深い訳が!!」
 後ろ手に縛られ、正座をさせられ、顔を腫らせたリヴァルの真正面に木刀を持って仁王立ちするミレイ。
 「ふえぇぇぇん! 覗かれちゃったよう〜!!」
 そのミレイの後ろにはカレンに泣きつくニーナがいたのだった。
 他のメンバーもリヴァルに白い目を向けている。
 
 ━━━湯殿に忍び込んだリヴァルは隠れていた自分に気づいた咲世子に驚いて足を滑らせて湯船に落ちてしまった。そして顔を上げたところが立ち上がったニーナの股間だったのである━━━
 当然、女性陣全員(ナナリー除く)+ルルーシュ(ナナリーの裸を覗かれた事により)からフルボッコである。
 
 「ふうん……深い訳ねぇ……。深くなかったらどうするのかしら?」
 「ルルーシュとスザクが丸坊主になります!」
 「待てリヴァル! そこは自分が丸坊主になると言うところだろうが!」
 確かにリヴァルは『自分が丸坊主になる』とは言ってない。
 「いいでしょう。話しなさいリヴァル」
 「会長!?」
 
 リヴァルの話を聞いたのち、ルルーシュに尋ねたところ『猫は柑橘系の香りが嫌いで、アーサーを風呂に無理矢理いれたりして暴れて怪我人が出ないようにするため、リヴァルに伝言を頼んだ』という矛盾の無い言い訳にリヴァルが反論したが認めてもらえるわけもなく、リヴァル一人に罰が下る事となった。
 
 
 「さてと、ルルーシュ。僕らも入ろうか?」
 「そうだな。二人であの風呂ならゆったり入れる」
 そう言って風呂に向かうルルーシュとスザク。
 リヴァルはというと……外で磔になっていた。
 「うう〜、寒いよ〜寒いよ〜」
 「駄目よ、その位しなきゃ罰にならないじゃない」
 「とはいえ冬の深夜に外へ放り出すのは流石にまずいかと」
 涙目のリヴァルを突き放すミレイだが、そこへ咲世子の擁護する声が入る。
 「でも流石に許すわけにも……」
 「誰も許せとは申しておりません」
 「じゃあ、どうするの?」
 「暖を取ってもらえばよいのです」
 ミレイと咲世子のやり取りに、もう少し楽な状況になると踏んだリヴァルは安堵の表情を浮かべる。
 「『暖を取る』って……どうやって?」
 「こうやってです」
 そう言ってリヴァルを磔てある柱の根元に薪を組み始める咲世子。
 柱を一周する様にくみ上げた後、振り向いてこう言った。
 「これで火をつければ満遍なく全身が暖められると思います」
 笑顔でそうのたまう咲世子に全員が引いてしまうのだった……。



 結局一晩中、声を嗄らして叫び続けてようやく磔から助けてもらえたリヴァルだったが、翌日のクリスマスパーティーでは誰もプレゼントをくれなかったという。




あとがき
 どうも、超お久しぶりな喜竹夏道です。
 ここのところ身体だったり精神だったり懐だったり生活環境だったりが色々と病んでまして、そちらで時間を取られ、せいぜい他の人の作品に感想を書く程度しか時間がありませんでした(汗)。
 早いところミナトさんの続きとか、ホシノ・アキトの続きなどを書いていきますので申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください。
 
 で、今回の作品ですが、6周年記念と、この時期(冬至)をかけまして、こんな作品を書いてみました。
 一年位前に某サイトの感想欄に似たようなあらすじがあったりしますが、それは別名で書いている私のものです。
 そのあらすじを今回、作品にしてみました。
 ゆず湯っていいですよね、温まって。
 でも懐が暖かくないのはいかんともしがたく……。
 今年は野菜をはじめとする食料品が軒並み値上がりし。
 愛車の修理費で貯金を使い果たし、ボーナスは出ず……。
 製作中のガレージキットを虎の子のシリコンで型取りしようとしたら失敗する。
 買い換えようとしていた冷蔵庫は十月に新製品になったとたんいきなり十万円も値上がりしてしまい、またしばらく買えなくなる。
 おまけに風呂場の換気扇が壊れて……。
 年末まで金策に走らなければまずそうです。
 皆さんが暖かい年末を迎える事が出来ることを祈りつつ……。



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