機動戦艦ナデシコ小話 『とりっくおあとりぃと』 Presented by
KittKiste 「・・・おかしをくれないといたずらするぞー。」 「・・・・・・ラピス、それは何の真似だ?」 ユーチャリス艦内。 特になにをするでも無く、ベッドに腰掛けていたアキトの前にひょっこり姿を現したのは・・・かぼちゃのマスクを被ったラピス。 そう、世間ではハロウィンの季節。 「ん・・・こういう行事があるって、エリナが言ってた。」 「・・・・・・そうなのか?」 ・・・だがアキトはハロウィンを知らなかった。 よくよく考えてみると、幼少時に両親は亡くなり・・・それから一人で生きて来た。 だから、そんな行事のことを知らないのも無理はなかった。 「・・・おかし、くれないの?」 「・・・・・・。」 考える。 何かあっただろうか・・・? ・・・味覚が無くなってからは手元にあるのは固形ブロック食だけだ。 いや、キャンディーくらいは持っていたようないなかったような。 キャンディー、というか・・・ビタミン強化剤入りのサプリメントの一種なのだが。 マントの下に手を突っ込んで探してみる。 ・・・・・・ない。 そんなに頻繁に口にしていなかった所為もあり、どうやらあげられるようなお菓子の類いはなさそうだ。 「・・・すまない、ラピス。 手持ちにはないようだ。」 「そう。 じゃあいたずらする。」 そう宣言し、おもむろに座っているアキトの膝の上に座るラピス。 ・・・ただし、向かい合わせにだ。 「・・・ラピス?」 アキトの問いかけに答えず、どこから取り出したのかオレンジのポスターマーカーのキャップを外し・・・ 「な・・・ま、待てラピス・・・・・・。」 「だめ。 おかしくれなかったからいたずらするの。」 アキトの黒いバイザーに、きゅきゅっと描かれたのはかぼちゃ。 しかもひとつじゃなかった。合計3つ。 「・・・・・・。」 「・・・できた。」 「いや、できたじゃなくて・・・。」 「ん・・・かわいい。」 かわいいと言われても・・・と少々困惑気味のアキト。 ラピスはなんだか満足そうだ。 (・・・まぁいいか。) どうせユーチャリスではラピスと二人きりだ。 ・・・一週間後。 うっかり消し忘れて、補給のために立ち寄ったネルガル秘密ドックにてエリナに大爆笑されたことはまた別のお話。 |