BLUE AND BLUE 

The Next Generation

作者 くま

















私の名前は、ラピラピ=ド・モ・エール=フワフワアタマ。

長くてなんとなく偉そうな名前から解る通りに、ピースランド王国の貴族である。

とは言え、今の女王である上姉様から、公爵という爵位をつい先日頂いたばかりの新参者でもあった。

王家に最も近似するという意味あいの『ド・モ・エール』の称号自体新しく作られたものだとは言え、

近年、実力主義を徹底したピースランド王国において爵位を受けたのは、

私がそれだけ認められたという証であり、実に名誉な事だと思っている。

えっへん。

そして今回、爵位を受けるのと同時に家を起こす事になったのだが、

私は新興であるフワフワアタマ公爵家の名をピースランド王国中に、しいては世界中に轟かせるつもりであった。

その為にも、私自身の見聞を広めるべく、世界へと飛び立つ事を決めていた。

と言うのは理由の半分で、もう半分は脈々と続く事になるフワフワアタマ公爵家の為、

私の子孫への遺伝子提供者を求めての旅でもある。

ぶっちゃけ、お婿さん探しの旅なのだ。

王家は上姉様と下姉様の子が継ぎ、繁栄を極める事になるだろうし(予定)、

その繁栄を支えていくのが、我がフワフワアタマ公爵家でもある(予定)。

なれば、より良き遺伝子提供者を求めるのは道理でもあろう。

箱庭の中のような王国とは違い、世界は広いと聞く。

それだけ様々な人間が居て、(遺伝子提供者として)優秀な人材も居るはずだ。

さて、フワフワアタマ公爵家に相応しい殿方はどこに居るのだろうか?

ある意味、終わり無い問の答えは、容易に見つけられそうに無かった。

そうして、旅に出ることになる私だったが、当然一人旅と言うわけではない。

今現在の世界中で、元も栄華を極めているピースランド王国で爵位を受けた身であるし、

女王である上姉様も下姉様も、私の勝手気ままな一人旅を容認するような方々ではなかった。

今回の旅立ちに際し、女王である上姉様は一隻の船をくださった。

船の名はユーチャリスV。

それはピースランド王国と火星圏の連合が共同で開発にあたった戦艦、

ユーチャリス級のスペシャルバージョンであった。

量産体制さえ整った一般のユーチャリス級の戦艦との違いは、そこに組み込まれた特殊なシステムだろう。

私もその開発に参画した、ヴォイドシステムという特殊なジャンプシステムが搭載されているのだ。

これは所謂演算ユニットと直結し、その中に潜った私が見つけた機能を発揮させる為のものだ。

通常のジャンプと違い、因果律をねじ伏せ、特異点を作り出し、捻じ曲げた運命のままに、

通常ではありえないほどにジャンプの到達地点をずらすというシロモノだ。

コレまでに発見された重力砲や湾曲斥場等とは全くの別系統の、

はっきり言って演算ユニットの中にあるはずの無い技術でもある。

それ故にヴォイドシステムと名づけられたモノでもあった。

まだ、完全に解明が済んでおらず、制御できて無い部分もあり、

実際の使い方としては、ある程度の方向性を持たせてランダムジャンプする、という程度のシロモノでしかない。

何処に跳ぼうとも帰還はできる事は実証済みだし、跳んだポイントは記録され、

次はシステムを用いずとも通常のジャンプで跳べるらしい事までは実験済み。

再ジャンプの際には、微妙に時間が経過するという観測結果は出ているが…。

ある意味、そんな適当なシステムと対を為すように設置されたユニットがあった。

木星圏から奪ったプラントを解明して作り上げた、小型プラントと呼べるシロモノも搭載されていた。

これはその名の通りに木星圏にあるプラントを模したもので、

生産性やその応用度といった性能こそオリジナルには遠く及ばないが、

材料とエネルギーさえあれば幅広い物資の供給を可能とするスグレものだ。

ただ、小型プラントの生産コストはバカにならないので、その生産自体は実験機の段階でとまってはいたが。

もちろん、それ以外にも通常のユーチャリス級にある武装などはちゃんと配備されている。

収容可能な小型機動兵器の数こそやや少なめだが、

重力砲はエネルギー効率を重視した最新のものであるし、

湾曲斥場も1ヶ月前に正規のラインに乗ったものに換装済みだ。

そして、そうした設備を統括するのが、AIのオルクスだ。

オリジナルのユーチャリスのAI、トゥリアをベースに開発されたもので、

時折人を食ったような対応をするのが特徴なのかもしれない。

まあ、私にナメた口を効いたら如何なるかはしっかりと教育してやったので、

私に対しては至って従順なのものだけど。

ああ、そう言えば忘れていた。

私とて貴族の端くれ、旅に出るのに一人の従者も無いのでは格好がつかない。

という訳でもないのだが、今回の旅には下僕の一人が同行する事を許可していた。

『マキビ=ハリ』と書いて、『下僕(繰上げ)1号』と読む男だ。

上姉様から『ド・モ・エール』の爵位をいただいた時に、

私の前で「是非私をラピラピ様の下僕にしてください」と土下座をしてきた男でもある。

正直、キモかったが、寛容な私はこの男に下僕として仕える事を許してやったのだ。

そして今回の旅立ちに際しても、ユーチャリスVが収容されているドッグの前で私を待ち、

「是非私を同行させてください」とやはり土下座をしてきたのだ。

このキモい男が旅の供になるのは正直迷ったが、やはり寛容な私はそれを許可してやったのだ。

「ちょっと何言ってるのさ、ラピラピ。一体、誰が誰の下僕だって言うんだよ!

 僕とラピラピはただのクラスメイトで、それ以外に何も無いじゃないか!

 大体、中等部1年の夏休み初日の朝っぱらから、この仕打ちはなんなのさ!

 夜が明ける前に人の事を拉致グボハッ!」と、時折訳の解らないことをほざく癖はあるが、それはそれ。

平凡なありふれた男どもよりは、多少は面白みがあるというものだ。

それにキモいこの男ではあるが、私が認めている点もある。

こやつは使い減りしない下僕バリアーとして有能だった。

そういう体質なのか、一般人と比べて随分と頑強にできているのだ。

この下僕の持つものこそが、ギャグ体質と呼ばれるものなのかもしれない。

「ててて、いきなり殴るなんてヒドイじゃないか、思わず昨日の晩ご飯が逆グゲハッ!!こ、今度は膝が…」

ただ、出立の時間が早かった事もあり、頑強な下僕も随分と眠そうだ。

こうしてブリッジの床にすら横になるのはどうかと思うが。

眠そうな下僕はそのままに放置し、オルクスから報告を受けた私は前を向く。

ユーチャリスVが格納されているドッグの扉が開き、外界へと道が繋がっていく。



「重力制御装置起動、制御アーム開放、微速前進」



私の号令を受け、オルクスが船体を少しずつ加速させ徐々にドッグから離れていく。

オリジナルと同様に、白亜で美しいフォルムの船体が、ピースランド王国の空へと舞う。

とその時、外部からダイレクトの通信が繋がった。

此処にこうして直に通信できる人物は限られていて、

そして今回通信してきたのも、予想通りに上姉様と下姉様だった。

昨日の情事のままなのか、二人とも何の衣服も身に着けていない。



「ラピラピ、こんなに早くから何処へいくのですか?」


「世界を見に行ってきます」



思わずしそうになった舌打ちを飲み込み、下姉様の問い掛けに答える私。

ピースランド王国のメインコンピューターには細工をしたはずなのに、

こうも早々に気が付かれるとは、流石、下姉様だ。



「何故?」


「そこに世界が広がっているからです」



視線を強くして咎めるような口調の下姉様の言葉に、躊躇なく答える事ができた私。

相変わらずの下姉様の迫力に、屈する事が無かったのは自分でも頑張ったと思う。



「……」



無言で更に私を威圧する下姉様。

それを涼しい顔で受け流そうとする私。

冷や汗が浮き上がっている気もするけど、そんな事はないと信じたい。



「行きなさい」



とそこで通信越しに、凛とした声で割り込んできたのは、上姉様だった。



「で、でも、ラピラピはまだ子供…」



言いかけた下姉様の口を上姉様の唇が塞ぐ。



「ルリは欲張りね、私とだけじゃ、嫌?」


「いえ、そ、そんなことは無いです。むしろ激しく大歓迎な…あ」



上姉様の言葉に慌てて答える下姉様。

その言葉も途中のままに、上姉様に押し倒されて、ウインドウのフレームの外へ…。

そして上姉様のサムズアップを最後に通信は終了した。

ありがとう、上姉様。

私は心の中で心底から上姉様に感謝をした。

そして託された想いを胸に、オルクスへと指示を出す。



「ユーチャリスV、発進!」



その号令を境に、私達の旅が始まった。









どこかで貌のないものが哂っている事には気が付かずに。










続かない



後書き

壱千万ヒットオメデトー記念SSの第2弾。

要するに、電波が来たんでちょろっと書いてみた訳ですが、いかがでしたでしょうか?

楽しんで頂けたら幸いです、つーか、まあプロローグ的なものだし、楽しむも無いかとは思いますが…

また何かが降ってきたら続きが出るかもしれませんが、期待するのは無謀というものです。

と適当に言い訳しつつ今夜はこの辺で、ではまた。



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