その場の思いつきSS
アキトとラピス その2
作者 くま
火星の後継者達との一応の決着を付けた後のこと。
何故だか良く解らない流れで、作戦成功の祝勝会を二人でする事になったアキトとラピス。
流石に外部での祝勝会は無理があり、今はネルガル重工本社にある幹部用のバーに来ていた。
薄暗いバーのカウンターに座り、ラピス用にオレンジジュースを頼もうとした所でラピスが口を挟んだ。
「ズブロッカのロックをダブルで」
ラピスの注文を受けたバーテンダーは軽く頷いて応え、アキトとラピスからオーダーされたモノを作り始める。
「大丈夫なのか、ラピス?」
「大丈夫、その為の遺伝子強化体質。私は平気」
目をパチクリさせたアキトからの問いかけに、さらりと答えるラピス。
そしてバーテンダーによって、二人の前にグラスが二つ置かれた。
首を傾げながらもアキトはグラスを掲げ、ラピスもまた手にしたグラスを掲げた。
「二人の勝利に」 「乾杯」
どうしてこうなったのだろうか?
そう一人ごちながら頭を抱えるアキト。
15分後、アキトが居たのは相変わらずバーのカウンターで、そして隣にはラピスが居た。
だが、ラピスの様子は先ほどまでとは違い、アキトの方を向いたままやや顔を上げ目をつむっていた。
「アキト、まだー?」
そしてちらりと片目を開けたラピスからかかる催促の声。
アキトは一つため息を吐き、その重い腰をあげることにした。
事の始まりは丁度5分前の事だった。
全く顔色を変えないままに、コクコクと頷き、それでも笑みを見せながら杯を重ねるラピス。
ズブロッカと言えばクセの強い蒸留酒であり、アキトはあまり好きではないのだが、
珍しく何かを喜んで口にするラピスの姿に安堵して、アキトも自分のペースでちびちびと辛口の日本酒を口にしていた。
コトンと空にしたグラスをカウンターに置いたラピスが、唐突に宣言した。
「暑い、脱ぐ」
そして宣言どおりに、その場で衣服を脱ぎだすラピス。
会長であるアカツキの計らいで、バーは貸切状態ではあったのは不幸中の幸いといえるのか。
バーテンダー以外の他人の目はなかったが、流石にそれを容認できるほどアキトは自由奔放ではなかった。
慌ててラピスを止め、脱ぎかけたブラウスのボタンを留めて、ラピスをちゃんとした身なりに戻すアキト。
「どうして邪魔するの?
どうせアキトは、私の事なんて如何でも良いと思ってるんでしょ?」
されるがままになりながらも、そんな言葉を吐くラピス。
「そんな「だって、最近のアキトは一緒にお風呂に入ってくれないし、
一緒に寝ようってベットに入っても、朝まで一緒に居てくれないもん。
アキトはもぅ、私の事なんて嫌いになったんだ。うわああぁあん」
アキトの言葉を遮る様に一方的に告げ、そしてカウンターに突っ伏して泣き始めるラピス。
その展開に狼狽しながらも、アキトは突っ伏したラピスに声をかける。
「何時も助けてもらって本当に感謝している。
それ以上にラピスは俺の大切な人の一人だ。
決して嫌いになんてなれやしない」
それは嘘偽りのないアキトの本心からの言葉で、その言葉はカウンターに突っ伏したラピスにも届いた。
まだぐずってはいるものの、泣き止んだラピスがそのままの姿勢でアキトに問いかける。
「じゃあ、アキトは私の事好き?」
「ああ、勿論だとも」
即答するアキト。
ぴたっとぐずるのを止めたラピスが、アキトを身体ごと振り返る。
「じゃあ、ちゃんとキスして。私、アキトとちゃんとキスした事無いから、今して欲しい」
「え?」
思いもかけないラピスの言葉に、思わずそう返してしまうアキト。
「してくれないの?」
そして悲しみに色彩られた風に、表情を歪めるラピス。
「…そういうものは、好きあってる男女の間でするものだ」
「私は女でアキトが好きで、アキトは男で私が好き。何処にも問題ないよ」
アキトの言葉を即座に切り返すラピス。
一瞬、言葉につまったアキトだったが、平静を装いつつも口を開く。
「……それに、そういうものは人目の無いところでするものだ」
「今は、私とアキトだけしか居ないよ」
バーテンダーが居ただろう、とカウンターに目をやるアキト。
そこにはバーテンダーの姿は無く、代わりに一枚のプレートが提示してあった。
『ワインセラー調整の為、ただ今席を外しております。
御用の方はお手数ですが、呼び鈴をお鳴らしください』
飲食業についていた経験からしてみれば、信じられないという思いが沸き起こるアキトであったが、
同時にある意味空気を読みすぎているバーテンダーに戦慄を感じてもいた。
結果的にアキトは追い詰められていた。
ラピスの方はバッチ来いとばかりに準備万端で、目をつむってアキトの行動を待っている。
「アキト、まだー?」
片目を開けてアキトを催促するラピス。
そしてアキトは立ち上がり、ラピスをそっと抱き寄せて…。
向けられたラピスの額に口付けをした。
重なっていた影が離れていく。
「ち、ちくしょー!どうせこんな事だと思ってたもん!もう、飲む、今日は飲む!」
呼び鈴を怒涛の勢いで鳴らしたラピスは、呼び鈴の残響が消えぬ間に現れたバーテンダーにオーダーを告げる。
「キンキンに冷えたズブロッカ、ボトルごと持って来て」
ストレート用のグラスと霜が張り付くほどに冷やされたズブロッカが、即座にラピスの前に置かれる。
そして封切されたボトルからグラスへと中身を注ぎ、あおるように飲み始めるラピス。
無論、アキトには拒絶を貼り付けた背中を向けてだった。
「やあ、やってるかい?」
とそこに、今の空気を読めてない男が登場する。
この場のセッティングをした張本人のアカツキナガレだった。
差し入れなのか、手にしているのは風呂敷。
形状からするとそこには4合瓶が2本収包まれていそうだった。
悪い雰囲気が蔓延する場に、一瞬帰ろうかと考えたアカツキだったが、
自分がここに来る為にした苦労を思い返し、前に進むことにした。
会長職も色々と事後処理で大変なのだ。
持って来た風呂敷はバーテンダーに預け、ラピスの隣に座るアカツキ。
この場を何とかするには、どちらに声をかけるべきかを考えての事だった。
「さて、僕にも話を聞かせてもらえるかな?
といっても、どうせテンカワが悪いんだろう?
ま、どのみち僕は女性の味方である事には変わりないけどね」
戯けた様に、場の空気を崩さんとラピスに話しかけるアカツキ。
「そうなのよ、聞いてよ、ナガレん」
((ナガレん!?))
どうせ何時ものように反応など無いだろう。
そう考えていたアカツキに予想外のラピスの声がかかる。
そしてラピスが手にしているグラスとその中身に驚き、アキトへと視線を送る。
(飲ませたのか?)
(ああ、仕方無くな)
「さっきアキトに、私が好きならキスしてって言ったの。
そしたら、どうしたと思う?デコチューだよ、デコチュー。
今時、幼稚園児でもしないつーの」
男たちがアイコンタクトで会話を交わす中、ラピスは珍しく砕けた口調で語っていく。
(随分と豹変しているが、そんなに飲ませたのか?)
(飲ませるつもりはなかったさ。だが止める間も無く…)
(こんないたいけな少女を酔わせて、何をするつもりだったやら…)
(…アカツキ、冗談でも怒るぞ?)
ゴンと音のするほどの勢いで頭をカウンターに乗せるラピス。
アキトではなくアカツキの方を向いたまま、ラピスは愚痴めいた言葉を続ける。
「ねぇねぇ、ナガレん。私ってそんなに魅力が無い?やっぱり、遺伝子強化体質だからいけないの?」
「いやいや、そんな事は無いよ。僕から見ても君は十分にチャーミングだ。
それに遺伝子強化体質も君の魅力の一つだって、少なくとも僕はそう思ってるよ。
ただ、僕らの年代からすると、恋愛対象としての君は少し若過ぎる点は否定できないけどね」
軽いウインクまで付けてラピスに答えるアカツキ。
その答えに少しは満足したのか、のろのろと頭を上げてグラスを再び手にするラピス。
再びグラスを傾けてから再び口を開く。
「ナガレんは会長さんだけあって、いい事言うね。それに引き換え…」
ちらりと背を向けたアキトに視線を投げかけるラピス。
アカツキは思わず苦笑を浮かべてしまう。
「まあ、テンカワの優柔不断と朴念仁は、昔から変わらないそうそうだからね」
「違うよ、ナガレん。ああいうのは、タマ無しとかチキンって言うのよ」
ケラケラと笑いながらアカツキに答えるラピス。
直感的に嫌なモノを感じ取ったアカツキは、その場を逃れる言い訳を探す為に、腕時計に目を落とす。
「現に今だって、助けた奥さんに会うのが怖くって、私なんかとこんなところに居るくらいだし。
ホント、どうしようも無いくらいにビビリなのよ。
例え鎧を纏おうと心の弱さは守れないのだ、だっけ?
今考えると、あの編笠のオジさんも、的を得た事を言ってたよね。
あーあ、なんでこんなの好きになっちゃったのかな…」
再び頭をカウンターへと落とすゴンという音に紛れ、後半の呟きは周囲の者には届かなかった。
しかし、その背後では動きが在った。
ゆらりとアキトが立ち上がり、ラピスに静かに睨んでいたのだ。
「それは言い過ぎだ、ラピス」
「私は事実しか言ってないし、だから私は謝らないもん。
私みたいな小娘に言われたくないなら、ちゃんと行動すれば良いのよ」
アキトの方を振り返りもせず、カウンターに突っ伏したまま続けられるラピスの言葉。
「……」
ある種的を得ているその言葉に、アキトは何も言い返せなかった。
チッ、と舌打ちを鳴らしてラピスが、いらいらした様子でアキトの方を振り返る。
「なんでそこで黙っちゃうのよ!だから意気地無しだって言うのよ!
もういい、こうなったら勝負よ!私が直接アキトの腐った性根を叩き直してあげるんだから!
もし、アキトが勝ったら私はさっきの言葉を取り消すしちゃんと謝る。
けど私が勝ったらつべこべ言わずに奥さんと義妹さんに会いに行く。
勝負の方法はアキトの得意な格闘戦でいいわ。
10分やって私が一本取れるか取れないかで勝負よ。
まさか、この勝負まで逃げるとか言わないわよね」
アキトに咀みつかんばかりの勢いで語るラピス。
「…良いだろう、そこまで言うのなら、本気で相手をしてやる」
わずかな殺気すら泌ませて、アキトはラピスとの勝負を受けた。
そして勝負を持ちかけたラピスは椅子から降り、アキトから距離を取りつつ、床にゴロンと横になった。
「何の真似だ?」
「アキトは学が無いわね。酔っ払いが使う拳法は酔拳に決まってるでしょ」
訝しむアキトに、やや呆れたとばかりの口調で答えるラピス。
「いくらアキトでも、名前ぐらいは聞いた事あるわよね?それと、こっちは準備万端よ、いつでもどどうぞ」
馬鹿にしたような言葉を更に続け挑発するラピス。
しかしながらアキトは冷静そのもので、ゆっくりと構えを取りラピスへと意識を向ける。
そして横になっている相手に対する有効打の少なさに気付き、それでも前に出る決意を変えないアキト。
「では行くぞ」
短くアキトがそう告げたのが、アキトとラピスの勝負開始の合図となった。
「バカ、バカ、バカ。アキトのバカ。百倍バカ!」
アキトの腹の上に馬乗りになり、玩具のハンマーでアキトの頭をピコピコと叩いているラピス。
元々の勝負の条件である一本どころか、すでに100本は入れられており、結果で言えば完全に敗北したアキト。
そしてアキトは自分のバカさ加減に、自分でも心の底から呆れ返り、
暴力というにはあまりにも軽い仕打ちを伴うラピスの叱責を、大人しく甘んじて受け入れていた。
「いくらアキトが強くなっても不意打ちでもしない限り、今のアキトじゃ絶対私には勝てないんだから!」
全くの真実であるその言葉に、アキトはただ黙るしかない。
五感をナノマシンに侵されたアキトが一般人と変わらずに、
そして時にはその手のプロフェッショナルとも渡り合えたのは、
全てリンクをしているラピスの助けがあっての事なのだ。
事もあろうに、怒りに駆られたアキトはそれを失念し、
依存とも言える程の多大なる補助を受けているラピスと対峙してしまった。
当然、ラピスはアキトへの補助を絶ち、アキトは立つ事もままならぬまま倒れる事になった。
その後、バーテンダーからピコピコハンマーを受け取ったラピスに、仰向けに転がされ馬乗りに乗られ良い様に殴られ放 題だった。
「良いもん、もう解ったもん。どうせ、アキトは私の事なんて…」
ピコピコとアキトを殴りながらも、ラピスは泣いていた。
一旦手を止め、バーテンダーから差し出されたティッシュで鼻をかみ、続いて差し出されたハンカチで涙を拭う。
それらをバーテンダーに返しながら、再びハンマーを手に取るラピス。
「ありがとう、プロスさん」
そう続けられた言葉はさらにアキトを驚かせた。
トレードマークのヒゲやメガネもなく、そして髪型まで変えてあるとは言え、
確かにその顔はアキトも良く知るプロスペクターその人だったのだ。
そこでふと思い出したのが、ナデシコ時代のプロスペクターの私室がバーであったという話。
おそらくココもその延長なのだろうと納得した。
と同時に、バーテンダーがプロスペクターである事に気が付けなかった自分の腑抜け具合に愕然とした。
アキトがチラリと視線を向けると、プロスぺクターは大仰な仕草で肩を竦めてため息を吐き、
背を向けてカウンターの方へと去っていってしまった。
助け、とまで行かなくとも仲裁程度は期待したアキトの思惑は、全く通じてなかった。
そしてそんなアキトの頭にラピスのピコピコハンマーが再び振り下ろされる。
「どこ見てるのよ。もっと私をちゃんと見て!そうじゃなきゃ、酷いんだから」
滅多矢鱈とハンマーを振り回すラピス。
それこそが目の前の少女が本当に自分に望む事なのだと、アキトはようやく理解し、
そしてラピスの子供じみた振る舞いを全て受け入れる事を決めた。
が、そこに第三者からの介入があった。
「あの、お嬢さん、暴れるのもその辺にしておいて貰えますか?」
そうラピスに声をかけたのは、ネルガル重工本社に常駐する警備員達のうちの一人だった。
彼らがここに居るのは、こっそりといつの間にか姿を消したアカツキの指示によるものだった。
バーで暴れている人物がいたら大人しくさせるように。
そんな指示を受けた警備員達がバーに着くと、
アキトに馬乗りのなったラピスがピコピコハンマーを振りましており、
互いに目配せをした後、仕方無くラピスに声をかけたという次第だった。
「なによ、貴方たちは?…解った、私とアキトの仲を邪魔する気ね。そうは問屋が降ろさないんだから!」
一方的にそう決めつけ、軽やかな動きでアキトの上から降りたラピスは一目散にカウンターへと走った。
そして手にしたのは飲みかけだったズブロッカの瓶。
その瓶を片手に、やる気満々で警備員達と対峙するラピス。
再び互いに目配せをし、ため息を吐く警備員達。
「…仕方がありません、少々手荒に扱いますが、構いませんね?」
「やれるものなら、やってみなさいよ。今宵の私は血に飢えているわ」
売り言葉に、買い言葉。
ラピスと警備員は本腰で対決姿勢になっていく。、
いまだ、ラピスの補助が受けられず起き上がる事すら随ならないアキトは、
止めなければという焦躁に駆られながらもそれを見ている事しかできなかった。
そして…アキトの予想外にもラピスは強かった。
トリッキーな動きで警備員達を翻弄し、本気を出し始めた警備員達を何人か打倒してしまったのだ。
素でやっても10分在れば一本取られそうだな…。
酔拳を使うらしいラピスの腕前をそう判断したアキトは、ラピスが投げと飛ばした警備員の下敷きになり気を失った。
翌日、アキトとラピスは医務室に居た。
未だにラピスはベッドの中であり、先に目覚めたアキトは二日酔いでもないのに頭を抱えていた。
その原因はアキトが手にしている数枚の紙。
今朝方、プロスペクターに渡された請求書等だった。
昨日のバーでの代金は言うまでもなく、
ラピスが壊した店の修理費とラピスが怪我させた警備員の治療費の見積もりもそこにはあった。
「…んん」
ベッドのラピスが身じろぎし、目を抹りながら上半身を起こす。
「アキト、おはよう。けど、頭が痛い…。あと身体も…」
眉を寄せ、少し辛そうな様子のラピス。
「おはよう、ラピス。昨日は飲みすぎてたからな、頭痛は多分二日酔いだな。
あと身体の方は筋肉痛だろう。まあ、両方とも大人しくしていれば、その内に治るものだ」
「…昨日?」
アキトの言葉に首を傾げるラピス。
今度はアキトが眉を寄せ、ラピスに問いかける事になる。
「昨日、俺と一緒にネルガル重工の地下のバーに行っただろう?ラピスは何処まで覚えている?」
「……んと、2杯目を飲んだくらいまで。ふわふわしてきて、気持ちいいなー思ったのは覚えてる。あとは解らない」
あっさりとした口調で返ってきたラピスの答えに、一瞬声を失うアキト。
「そ、そうか」
そう短く答え、手の中の紙片を折りたたんだ。
そしておもむろに立ち上がり、主であるイネスが居ない事をいい事に、勝手知ったる医務室の棚をあさり始める。
そして探し出したのは発熱時などに使う冷却シート。
封を破りフィルムを剥がし、アキトはそれをぴたりとラピスの額に貼ってやる。
「気休め程度だろうが、無いよりはましになると思う。
それと、体調も悪いみたいだし、今日一日はココで大人しくしていてもらえないか?
俺の方は、…ちょっと野暮用が出来たんでな」
しゃがみこみ、ベッドの上のラピスと視線を合わせて語りかけるアキト。
「アキト、何処かに行くの?」
「ああ、一度ユリカに会いに行こうと思ってな。
昨日のアレは堪えたし、何時までも逃げてる訳にもいかないしな」
自嘲気味の笑みを浮かべるアキトに、何の事かとラピスは首を傾げて見せる。
「いや、こっちの話だ。ラピスは気にせずに、ゆっくり休んでいてくれ」
そう告げて、ラピスに横になるように促すアキト。
コテンとラピスがベッドに横になり、アキトはベッドのシーツを整えてやる。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
頭痛に響かないように優しく声をかけるアキトに、ラピスはベッドの中で手を振って答える。
そしてアキトはラピスに背を面け、少し気合を入れて歩き出す。
が、今から既に緊張しているのか、その動きには堅さが見られた。
そして、その背を見送るベッドの中のラピスが、
「よし、一つ前進」と軽くガッツポーズを取っていた事を、
鈍チンのアキトは、勿論全く気が付いていなかった。
終わり
あとがき
メッセの落書きで描かれた絵をヒントにガっと書いてみました。
どなたの落書きだったか覚えていないけど、ネタ提供、ありがとうでした。
ではまた。